説明

スイッチング電源装置

【課題】製造コストを低減でき、小型化しやすいスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】スイッチング電源装置1は、電子回路基板2と、ベースプレート3と、冷却器4とを備える。電子回路基板2は、複数の電子部品5を搭載している。電子部品5には、スイッチング素子を内蔵した半導体モジュール5aと、ベースプレート3の法線方向(Z方向)における長さが半導体モジュール5aよりも長い大型電子部品5bとがある。冷却器4と電子回路基板2との間の隙間d1は、ベースプレート3と電子回路基板2との間の隙間d2よりも狭い。半導体モジュール5aは冷却器4と電子回路基板2との間に介在して冷却器4に接触している。大型電子部品5bは電子回路基板2とベースプレート3との間に介在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却器を備えたスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電源と負荷との間に設けられ、負荷に加える電圧の変更等を行うスイッチング電源装置が知られている(下記特許文献1参照)。このスイッチング電源装置は、図6に示すごとく、複数の電子回路基板92(92a〜92c)と、該電子回路基板92に取り付けられた電子部品95,96と、複数の電子回路基板92を電気的に接続するワイヤ97とを備える。また、スイッチング電源装置91は、冷媒980が流れる冷媒流路940を有する冷却器94と、該冷却器94と一体に形成されたベースプレート93とを備える。
【0003】
電子部品95,96には、IGBT素子等のスイッチング素子を内蔵した半導体モジュール95と、ベースプレート93の法線方向(Z方向)における長さが半導体モジュール95よりも長い大型電子部品96とがある。大型電子部品96には、コイルやトランス、コンデンサ等がある。半導体モジュール95は、スイッチング電源装置91の使用時における発熱量が大きい。そのため、半導体モジュール95を冷却器94に接触させて冷却するようになっている。
【0004】
また、大型電子部品96(コイル、トランス、コンデンサ等)は、半導体モジュール95と比較して発熱量が少ないので、冷却器94を使って積極的に冷却する必要性が少ない。そのため、大型電子部品96は、ベースプレート93や冷却器94の端部99等の、冷却効率があまり高くない場所に設けられている。また、ベースプレート93と大型電子部品96との間および、端部99と大型電子部品96との間には、電子回路基板92a,92cがそれぞれ介在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3730968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のスイッチング電源装置91は、複数の電子回路基板92a〜92cを備えるため、これらの電子回路基板92a〜92cを、ワイヤ97を使って互いに接続する必要があった。そのため、スイッチング電源装置91の部品点数や製造工数が増え、製造コストが上昇しやすいという問題があった。また、複数の電子回路基板92a〜92c間の隙間dには電子部品を配置できないため、スイッチング電源装置91を小型化しにくいという問題があった。
【0007】
ワイヤ97を削減するためには、図7に示すごとく、複数の電子回路基板92a〜92cをまとめて1枚にすることが考えられる。しかしながら、単に電子回路基板92を一枚にしただけでは、スイッチング電源装置91の、Z方向の長さHが長くなってしまい、スイッチング電源装置91が大型化しやすいという問題が生じる。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、製造コストを低減でき、小型化しやすいスイッチング電源装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数の電子部品を搭載した電子回路基板と、
該電子回路基板に平行に配置されたベースプレートと、
該ベースプレートと一体に形成され、上記電子回路基板に対して所定の間隔をおいて対向配置されると共に、内部に冷媒が流れる冷媒流路を備えた冷却器とを備え、
上記冷却器と上記電子回路基板との間の隙間は、上記ベースプレートと上記電子回路基板との間の隙間よりも狭く、
上記複数の電子部品には、スイッチング素子を内蔵した半導体モジュールと、上記ベースプレートの法線方向における長さが上記半導体モジュールよりも長い大型電子部品とがあり、
上記半導体モジュールは上記冷却器と上記電子回路基板との間に介在して該冷却器に接触し、上記大型電子部品は上記電子回路基板と上記ベースプレートとの間に介在していることを特徴とするスイッチング電源装置にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0010】
上記スイッチング電源装置においては、ベースプレートと電子回路基板との間の隙間を、冷却器と電子回路基板との間の隙間よりも広くした。そして、電子回路基板と冷却器との間に半導体モジュールを介在させると共に、電子回路基板とベースプレートとの間に大型電子部品を介在させた。このようにすると、スイッチング電源装置を小型化することが可能になる。すなわち、電子回路基板を一枚にした場合に、仮に、図7に示すごとく、電子回路基板92におけるベースプレート93とは反対側の表面920に大型電子部品96を配置したとすると、法線方向(Z方向)におけるスイッチング電源装置91の長さHが長くなってしまい、小型化が困難になる。
しかしながら、ベースプレートと電子回路基板との間の隙間を広げ、この隙間に大型電子部品を配置すれば、電子回路基板を一枚にした場合でも、法線方向におけるスイッチング電源装置の長さを短くすることができる。これにより、スイッチング電源装置を小型化することができる。
【0011】
また、電子回路基板を一枚にすることにより、複数の電子回路基板92a〜92c(図6参照)を接続するワイヤ97が不要になり、部品点数を低減できると共に、スイッチング電源装置の製造コストを低減することが可能になる。また、複数の電子回路基板92a〜92cの間の隙間dがなくなるため、上記法線方向から見た場合のスイッチング電源装置の面積を小さくすることができる。
【0012】
以上のごとく、製造コストを低減でき、小型化しやすいスイッチング電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1における、スイッチング電源装置の一部透視斜視図。
【図2】実施例1における、スイッチング電源装置の断面図であって、図4のC−C断面図。
【図3】図2のA矢視図。
【図4】図2のB−B断面図。
【図5】実施例1における、スイッチング電源装置の回路図。
【図6】従来例における、スイッチング電源装置の断面図。
【図7】従来例における、電子回路基板を一枚にしたスイッチング電源装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上述した本発明における好ましい実施の形態につき説明する。
上記大型電子部品は、例えばコイル、コンデンサ、トランス等の、半導体モジュールに比べて単位体積あたりの発熱量が小さい電子部品であることが好ましい。
【0015】
上記スイッチング電源装置において、上記冷却器は、上記冷媒流路に上記冷媒を導入する導入パイプと、上記冷媒流路から上記冷媒が導出する導出パイプとを備え、上記導入パイプ及び上記導出パイプは、上記ベースプレートに平行な方向に延出していることが好ましい(請求項2)。
この場合には、導入パイプと導出パイプとが、ベースプレートに平行な方向に延出しているため、ベースプレートの法線方向における、スイッチング電源装置の長さを短くすることができる。スイッチング電源装置は、ベースプレートに平行な方向から見た面積の方が、ベースプレートの法線方向から見た面積よりも小さい場合が多い。そのため、導入パイプおよび導出パイプは、上記法線方向に延出させた場合よりも、ベースプレートに平行な方向に延出させた方が、スイッチング電源装置をコンパクトにすることができ、小型化しやすくなる。
【0016】
また、上記電子回路基板には、交流電源から供給される電力の力率を高めるPFC回路と、該PFC回路に接続したDC−DC変換回路とが形成され、上記電子回路基板には、上記冷却器に対向した冷却器対向領域と、上記ベースプレートに対向したプレート対向領域とがあり、上記PFC回路と上記DC−DC変換回路とは上記半導体モジュールおよび上記大型電子部品をそれぞれ有し、上記PFC回路および上記DC−DC変換回路は、上記冷却器対向領域と上記プレート対向領域とに渡って形成されていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、PFC回路およびDC−DC変換回路が、上記冷却器対向領域と上記プレート対向領域とに渡って形成されている。すなわち、PFC回路およびDC−DC変換回路において、半導体モジュールが搭載されている領域(冷却器対向領域)と、大型電子部品が搭載されている領域(プレート対向領域)とが隣接している。そのため、半導体モジュールと大型電子部品とを、電子回路基板上において短い配線を使って接続することができる。これにより、電子回路基板における、配線の占める割合が減り、電子回路基板2の面積を小さくしやすくなる。
【0017】
また、上記電子回路基板には、上記交流電源と上記PFC回路との間に介在する入力フィルタと、上記DC−DC変換回路に接続した出力フィルタとが形成され、上記入力フィルタと上記出力フィルタとは上記プレート対向領域にのみ形成されていることが好ましい(請求項4)。
この場合には、フィルタに含まれる大型電子部品を、ベースプレートの法線方向における隙間が狭い領域(冷却器対向領域)ではなく、該法線方向における隙間が広い領域(プレート対向領域)に配置することが可能になる。
【0018】
また、上記PFC回路と上記DC−DC変換回路とは互いに隣接するように形成され、上記冷却器は上記冷媒流路に上記冷媒を導入する導入パイプと、上記冷媒流路から上記冷媒が導出する導出パイプとを備え、上記導入パイプと上記導出パイプとは、上記PFC回路および上記DC−DC変換回路における上記冷却器対向領域と上記プレート対向領域とが隣接する隣接方向であって、該プレート対向領域とは反対方向に延出しており、上記PFC回路および上記DC−DC変換回路を上記隣接方向に直交する方向から挟む位置に、上記入力フィルタと上記出力フィルタとが形成されていることが好ましい(請求項5)。
この場合には、導入パイプおよび導出パイプは、入力フィルタ及び出力フィルタが形成されているプレート対向領域を通過せず、また、PFC回路及びDC−DC変換回路に含まれるプレート対向領域も通過しなくなる。そのため、プレート対向領域により多くの大型電子部品を搭載することが可能となり、スイッチング電源装置を小型化しやすくなる。
【実施例】
【0019】
(実施例1)
本発明の実施例にかかるスイッチング電源装置につき、図1〜図5を用いて説明する。
図1、図2に示すごとく、本例のスイッチング電源装置1は、電子回路基板2と、ベースプレート3と、冷却器4とを備える。
電子回路基板2は、複数の電子部品5を搭載している。ベースプレート3は、電子回路基板2に平行に配置されている。冷却器4は、ベースプレート3と一体に形成されている。冷却器4は、電子回路基板2に対して所定の間隔をおいて対向配置されると共に、内部に冷媒10が流れる冷媒流路40を備える。
【0020】
冷却器4と電子回路基板2との間の隙間d1は、ベースプレート3と電子回路基板2との間の隙間d2よりも狭い。また、複数の電子部品5には、スイッチング素子を内蔵した半導体モジュール5aと、ベースプレート3の法線方向(Z方向)における長さが半導体モジュール5aよりも長い大型電子部品5bとがある。
半導体モジュール5aは冷却器4と電子回路基板2との間に介在して冷却器4に接触している。大型電子部品5bは電子回路基板2とベースプレート3との間に介在している。
【0021】
図1に示すごとく、電子回路基板2は平板状であり、長方形状に形成されている。ベースプレートには、電子回路基板2を支持するための支柱30が設けられている。支柱30は複数本あり、電子回路基板2をその四隅等で支持している。
【0022】
また、図2に示すごとく、電子回路基板2における、ベースプレート3側または冷却器4側の表面250に、半導体モジュール5aおよび大型電子部品5bが取り付けられている。大型電子部品5bには、コイル、コンデンサ、トランス等がある。大型電子部品5bのうち、トランス58のみは、ベースプレート3に接触している。
【0023】
図4に示すごとく、ベースプレート3は、Z方向から見たときの形状が、大きい長方形の一つの長辺から小さい長方形の凹部をくり抜いたような形状となっている。そして、この凹部の輪郭を構成する3辺から、図2に示すごとく、Z方向に壁部31が立設している。また、壁部31における電子回路基板2側の端部301には、複数の半導体モジュール5aが接触するモジュール搭載板32が、ベースプレート3と平行になるように形成されている。これらベースプレート3と、壁部31と、モジュール搭載板32とは一枚の金属板からなる。
【0024】
また、スイッチング電源装置1は、冷却器4の底部をなす底壁部45と、底壁部45の一端450からZ方向に立設したパイプ接続壁部46とを備える。底壁部45とベースプレート3とのZ方向における位置は略同じである。また、底壁部45の板厚とベースプレート3の板厚は略同一である。底壁部45の両面45a,45bと、ベースプレート3の両面3a,3bはそれぞれ略同一平面上に存在している。底壁部45とパイプ接続壁部46とは一枚の金属板からなる。そして、壁部31と、モジュール搭載板32と、底壁部45と、パイプ接続壁部46とによって、その内側に冷媒流路40を有する冷却器4が構成されている。
【0025】
図1〜図4に示すごとく、パイプ接続壁部46には、冷媒流路40に冷媒10を導入するための導入パイプ41と、冷媒流路40から冷媒10が導出する導出パイプ42とが接続している。これら導入パイプ41および導出パイプ42は、ベースプレート3に平行な方向(X方向)に延出している。また、導入パイプ41と導出パイプ42とは、X方向とY方向との双方に直交する方向(Y方向)に、所定間隔をおいて互いに平行になるよう設けられている。
【0026】
また、図4に示すごとく、冷媒流路40には冷却フィン47が配置されている。導入パイプ41から冷媒流路40内に導入された冷媒10は、冷却フィン47を通り、導出パイプ42から導出される。冷却フィン47を使って冷媒10との接触面積を増やすことにより、半導体モジュール5aの冷却効率を高めるようになっている。
【0027】
ベースプレート3は、Z方向から見た場合の形状が略コ字状である。冷却器4は、Z方向から見た場合の形状が長方形である。ベースプレート3と冷却器4とが結合した結合体8の、Z方向から見た場合の形状は長方形である。また、図1に示すごとく、結合体8と電子回路基板2とは、Z方向から見た場合の外縁形状が略等しい。
【0028】
図4に示すごとく、ベースプレート3から、3つの壁部31(31a〜31c)がZ方向に立設している。第1の壁部31aは、長方形状をなす結合体8の一方の長辺L1から、他方の長辺L2へ向かってX方向に延びている。第1の壁部31aのX方向の長さは、結合体8のX方向における長さよりも短く、複数の半導体モジュール5aを取り付けることができる長さである。また、第1の壁部31aは、結合体8の一方の短辺L3から、Y方向に所定の間隔D1だけ離れた位置に形成されている。
【0029】
第2の壁部31bは、結合体8の一方の長辺L1から、他方の長辺L2へ向かってX方向に延びている。第2の壁部31bのX方向の長さは、第1の壁部31aと略同一である。また、第2の壁部31bは、結合体8の他方の短辺L4から、Y方向に所定の間隔D2だけ離れた位置に形成されている。
【0030】
第1の壁部31aにおける他方の長辺L2側の端部315と、第2の壁部31bにおける他方の長辺L2側の端部316との間を繋ぐように、第3の壁部31cが形成されている。
【0031】
これら3つの壁部31a〜31cと、底壁部45(図2参照)と、モジュール搭載板32と、パイプ接続壁部46とによって、冷媒流路40を内側に備えた冷却器4が形成されている。なお、パイプ接続壁部46における冷媒流路40とは反対側の主面460は、ベースプレート3の、長辺L1における端面350と略面一である。
【0032】
図3に示すごとく、電子回路基板2には、入力フィルタ11と、PFC回路12と、DC−DC変換回路13と、出力フィルタ14とが形成されている。入力フィルタ11は、交流電源16(図5参照)に接続しており、ノイズ等を除去する役割をしている。また、PFC回路12は、交流電源16から供給される電力の力率を高めるための回路である。DC−DC変換回路は、PFC回路12に接続されており、直流電圧を変圧している。また、出力フィルタ14は、平滑コンデンサや平滑リアクトル等からなる。
【0033】
入力フィルタ11と、PFC回路12と、DC−DC変換回路13と、出力フィルタ14とは、それぞれ略四角形状に形成されており、Y方向に向かって、この順に一列に並んでいる。電子回路基板2には、冷却器4に対向した冷却器対向領域21と、ベースプレート3に対向したプレート対向領域22とがある。PFC回路12およびDC−DC変換回路13は、冷却器対向領域21とプレート対向領域22とに渡って形成されている。また、入力フィルタ11および出力フィルタ14は、プレート対向領域22にのみ形成されている。
【0034】
PFC回路12とDC−DC変換回路13は、Y方向に互いに隣接している。PFC回路12およびDC−DC変換回路13において、冷却器対向領域21とプレート対向領域22とはX方向に隣接している。
また、上述したように、冷却器4は導入パイプ41と導出パイプ42とを有する。これら導入パイプ41と導出パイプ42とは、PFC回路12およびDC−DC変換回路13における冷却器対向領域21とプレート対向領域22とが隣接する隣接方向(X方向)であって、プレート対向領域22とは反対方向に延出している。
【0035】
図5に示すごとく、本例では、スイッチング電源装置1を充電装置100として使用している。充電装置100は、電気自動車やハイブリッド車等に搭載されるバッテリー17を、家庭に配された商用電源(交流電源16)を使って充電するための装置である。スイッチング電源装置1の入力フィルタ11は入力コイル52と入力コンデンサ53とからなる。これら入力コイル52と入力コンデンサ53とは大型電子部品5bであり、電子回路基板2(図3参照)の、入力フィルタ11を形成した領域(プレート対向領域22a)に配置されている。
【0036】
また、図5に示すごとく、PFC回路12は、複数の整流ダイオード54からなる整流回路540と、チョークコイル55と、スイッチング素子510と、放電防止用ダイオード56と、平滑コンデンサ57とからなる。整流ダイオード54と、チョークコイル55と、放電防止用ダイオード56と、平滑コンデンサ57とは大型電子部品5bであり、電子回路基板2(図3参照)の、PFC回路12におけるプレート対向領域22bに配置されている。また、本例ではスイッチング素子510としてIGBT素子を使用している。スイッチング素子510は、半導体モジュール5aに含まれる部品である。半導体モジュール5aは、電子回路基板2(図3参照)の、PFC回路12における冷却器対向領域21aに配置されている。
【0037】
整流回路540は、交流電流を整流する。また、スイッチング素子510のゲート端子は制御回路18に接続している。制御回路18がスイッチング素子510のオンオフ制御をすることにより、チョークコイル55に流れるリアクトル電流Iを、正弦波に近い波形に矯正している。これにより、交流電源16の入力電流Isを正弦波に近づけ、電力の力率を高めている。
【0038】
また、DC−DC変換回路13は、複数のスイッチング素子511からなるフルブリッジ回路550と、トランス58と、複数の整流ダイオード59からなるダイオードブリッジ590とを備える。トランス58の一次コイルはフルブリッジ回路550に接続し、二次コイルはダイオードブリッジ590に接続している。
【0039】
トランス58および整流ダイオード59は大型電子部品5bであり、電子回路基板2(図3参照)の、DC−DC変換回路13におけるプレート対向領域22cに配置されている。また、スイッチング素子511は半導体モジュール5aに含まれる部品である。この半導体モジュール5aは、電子回路基板2の、DC−DC変換回路13における冷却器対向領域21bに配置されている。
【0040】
スイッチング素子511のゲート端子は制御回路18に接続している。制御回路18がスイッチング電源511のオンオフ動作を制御することにより、フルブリッジ回路550に印加された直流電圧を交流電圧に変換している。そして、トランス58を使って変圧し、ダイオードブリッジ590によって全波整流している。
【0041】
また、出力フィルタ14は、平滑リアクトル501と、平滑コンデンサ502とからなる。平滑リアクトル501と平滑コンデンサ502とを使って、全波整流した交流電圧を平滑化している。そして、得られた直流電圧を使ってバッテリー17を充電している。
【0042】
平滑リアクトル501及び平滑コンデンサ502は、大型電子部品5bである。平滑リアクトル501及び平滑コンデンサ502は、電子回路基板2(図3参照)における出力フィルタ14を形成した領域(プレート対向領域22d)に配置されている。
【0043】
本例の作用効果について説明する。
本例では、図2に示すごとく、ベースプレート3と電子回路基板2との間の隙間d2を、冷却器4と電子回路基板2との間の隙間d1よりも広くした。そして、電子回路基板2と冷却器4との間に半導体モジュール5aを介在させると共に、電子回路基板2とベースプレート3との間に大型電子部品5bを介在させた。このようにすると、スイッチング電源装置1を小型化することが可能になる。すなわち、電子回路基板2を一枚にした場合に、仮に、図7に示すごとく、電子回路基板92におけるベースプレート93とは反対側の表面920に大型電子部品96を配置したとすると、法線方向(Z方向)におけるスイッチング電源装置91の長さHが長くなってしまい、小型化が困難になる。
しかしながら、本例のようにベースプレート3と電子回路基板2との間の隙間d2を広げ、この隙間d2に大型電子部品5bを配置すれば、電子回路基板2を一枚にした場合でも、法線方向(Z方向)におけるスイッチング電源装置1の長さを短くすることができる。これにより、スイッチング電源装置1を小型化することが可能になる。
【0044】
また、電子回路基板を一枚にすることにより、複数の電子回路基板92a〜92c(図6参照)を接続するワイヤ97が不要になり、部品点数を低減できると共に、スイッチング電源装置1の製造コストを低減することが可能になる。また、複数の電子回路基板92a〜92cの間の隙間dがなくなるため、Z方向から見た場合のスイッチング電源装置1の面積を小さくすることができる。
【0045】
また、本例では、導入パイプ41と導出パイプ42とが、ベースプレート3に平行な方向(X方向)に延出している。そのため、ベースプレート3の法線方向(Z方向)における、スイッチング電源装置1の長さを短くすることができる。スイッチング電源装置1は、ベースプレート3に平行な方向(X方向)から見た面積の方が、ベースプレート3の法線方向(Z方向)から見た面積よりも小さい場合が多い。そのため、導入パイプ41および導出パイプ42は、法線方向(Z方向)に延出させた場合よりも、ベースプレート3に平行な方向(X方向)に延出させた方が、スイッチング電源装置1をコンパクトにすることができ、小型化しやすくなる。
【0046】
また、本例では図3に示すごとく、PFC回路12およびDC−DC変換回路13は、冷却器対向領域21とプレート対向領域22とに渡って形成されている。
このようにすると、PFC回路12およびDC−DC変換回路13において、半導体モジュール5aが搭載されている領域(冷却器対向領域21)と、大型電子部品5bが搭載されている領域(プレート対向領域22)とが隣接するため、半導体モジュール5aと大型電子部品5bとを、電子回路基板2上において短い配線を使って接続することができる。そのため、電子回路基板2における、配線の占める割合が減り、電子回路基板2の面積を小さくしやすくなる。
【0047】
また、本例では、図3に示すごとく、入力フィルタ11と出力フィルタ14とを、プレート対向領域22にのみ形成している。
この場合には、フィルタ11,14に含まれる大型電子部品5bを、ベースプレート3の法線方向(Z方向)における隙間が狭い領域(冷却器対向領域21)ではなく、法線方向(Z方向)における隙間が広い領域(プレート対向領域22)に配置することが可能になる。
【0048】
また、本例では図3に示すごとく、導入パイプ41と導出パイプ42とは、X方向における、プレート対向領域22とは反対側に延出している。そして、PFC回路12およびDC−DC変換回路13をY方向から挟む位置に、入力フィルタ11と出力フィルタ14とが形成されている。
このようにすると、導入パイプ41および導出パイプ42は、入力フィルタ11及び出力フィルタ14が形成されているプレート対向領域22a,22dを通過せず、また、PFC回路12及びDC−DC変換回路13に含まれるプレート対向領域22b,22cも通過しなくなる。そのため、プレート対向領域22により多くの大型電子部品5bを搭載することが可能となり、スイッチング電源装置1を小型化しやすくなる。
【0049】
以上のごとく、本例によると、製造コストを低減でき、小型化しやすいスイッチング電源装置を提供することができる。
【0050】
なお、本例では、図2に示すごとく、大型電子部品5bのうち、トランス58のみはベースプレート3に接触しているが、これに接触しないようにしてもよい。また、トランス58以外の大型電子部品5bを、ベースプレート3や壁部31に接触させてもよい。また、本例では、ベースプレート3と底壁部45との、Z方向における位置が略同一であるが、必ずしも同一にする必要はない。また、本例では、ベースプレート3と、壁部31と、モジュール搭載板とを一枚の金属板によって形成したが、別々の金属板を使って形成してもよい。例えば、冷却器4とベースプレート3とを別部材として用意しておき、これらを溶接等によって接続してもよい。また、本例では、図4に示すごとく、冷媒流路40には冷却フィン47が配置されているが、必ずしも冷却フィンを構成する必要はない。
【符号の説明】
【0051】
1 スイッチング電源装置
2 電子回路基板
21 冷却器対向領域
22 プレート対向領域
3 ベースプレート
4 冷却器
41 導入パイプ
42 導出パイプ
5 電子部品
5a 半導体モジュール
5b 大型電子部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電子部品を搭載した電子回路基板と、
該電子回路基板に平行に配置されたベースプレートと、
該ベースプレートと一体に形成され、上記電子回路基板に対して所定の間隔をおいて対向配置されると共に、内部に冷媒が流れる冷媒流路を備えた冷却器とを備え、
上記冷却器と上記電子回路基板との間の隙間は、上記ベースプレートと上記電子回路基板との間の隙間よりも狭く、
上記複数の電子部品には、スイッチング素子を内蔵した半導体モジュールと、上記ベースプレートの法線方向における長さが上記半導体モジュールよりも長い大型電子部品とがあり、
上記半導体モジュールは上記冷却器と上記電子回路基板との間に介在して該冷却器に接触し、上記大型電子部品は上記電子回路基板と上記ベースプレートとの間に介在していることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチング電源装置において、上記冷却器は、上記冷媒流路に上記冷媒を導入する導入パイプと、上記冷媒流路から上記冷媒が導出する導出パイプとを備え、上記導入パイプ及び上記導出パイプは、上記ベースプレートに平行な方向に延出していることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のスイッチング電源装置において、上記電子回路基板には、交流電源から供給される電力の力率を高めるPFC回路と、該PFC回路に接続したDC−DC変換回路とが形成され、上記電子回路基板には、上記冷却器に対向した冷却器対向領域と、上記ベースプレートに対向したプレート対向領域とがあり、上記PFC回路と上記DC−DC変換回路とは上記半導体モジュールおよび上記大型電子部品をそれぞれ有し、上記PFC回路および上記DC−DC変換回路は、上記冷却器対向領域と上記プレート対向領域とに渡って形成されていることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項4】
請求項3に記載のスイッチング電源装置において、上記電子回路基板には、上記交流電源と上記PFC回路との間に介在する入力フィルタと、上記DC−DC変換回路に接続した出力フィルタとが形成され、上記入力フィルタと上記出力フィルタとは上記プレート対向領域にのみ形成されていることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項5】
請求項4に記載のスイッチング電源装置において、上記PFC回路と上記DC−DC変換回路とは互いに隣接するように形成され、上記冷却器は上記冷媒流路に上記冷媒を導入する導入パイプと、上記冷媒流路から上記冷媒が導出する導出パイプとを備え、上記導入パイプと上記導出パイプとは、上記PFC回路および上記DC−DC変換回路における上記冷却器対向領域と上記プレート対向領域とが隣接する隣接方向であって、該プレート対向領域とは反対方向に延出しており、上記PFC回路および上記DC−DC変換回路を上記隣接方向に直交する方向から挟む位置に、上記入力フィルタと上記出力フィルタとが形成されていることを特徴とするスイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−210002(P2012−210002A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71766(P2011−71766)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】