スイッチング電源装置
【課題】追加する電子部品の部品点数を低減でき、製造コストを低減できるスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】スイッチング電源装置1は、一対の電力ライン10,11と、直流負荷2と、コンデンサCと、スナバ用トランスTsと、パルス電流発生回路5と、直列体12とを備える。直列体12は、スナバ用トランスTsの二次コイル42とスナバ用ダイオードDsとを直列接続してなる。直列体12はコンデンサCに並列接続されている。スナバ用ダイオードDsのアノード端子は二次コイル42に接続している。また、スナバ用ダイオードDsのカソード端子はコンデンサCの高電位側の電極端子に接続している。パルス電流発生回路5によって発生したパルス電流Ipは一次コイル41に流れる。一次コイル41は、パルス電流Ipを平滑化する平滑リアクトルである。一次コイル41には、整流ダイオード53が直列接続している。
【解決手段】スイッチング電源装置1は、一対の電力ライン10,11と、直流負荷2と、コンデンサCと、スナバ用トランスTsと、パルス電流発生回路5と、直列体12とを備える。直列体12は、スナバ用トランスTsの二次コイル42とスナバ用ダイオードDsとを直列接続してなる。直列体12はコンデンサCに並列接続されている。スナバ用ダイオードDsのアノード端子は二次コイル42に接続している。また、スナバ用ダイオードDsのカソード端子はコンデンサCの高電位側の電極端子に接続している。パルス電流発生回路5によって発生したパルス電流Ipは一次コイル41に流れる。一次コイル41は、パルス電流Ipを平滑化する平滑リアクトルである。一次コイル41には、整流ダイオード53が直列接続している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スナバ用トランスを有するスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子機器への入力電圧等を調節する装置として、スイッチング素子を用いたスイッチング電源装置が知られている(下記特許文献1、2参照)。スイッチング電源装置の一例を図10に示す。
図10に示すスイッチング電源装置9aは、直流電源930に接続したブリッジ回路910と、電源トランスT1と、整流回路920と、平滑コンデンサC1と、平滑リアクトルL1とを備える。
【0003】
ブリッジ回路910は、4個のスイッチング素子940からなる。ブリッジ回路910は、電源トランスT1の一次コイル91に接続している。また、整流回路920は4個のダイオードD1〜D4からなる。整流回路920は、電源トランスT1の二次コイル92に接続している。
【0004】
ブリッジ回路910は、スイッチング素子940をオンオフ動作することにより、直流電圧Vinを交流電圧に変換している。この交流電圧は、電源トランスT1の一次コイル91に一次電圧Vaとして加わる。整流回路920は、二次コイル92から出力される二次電圧Vbを整流する。また、平滑コンデンサC1は整流後の二次電圧を平滑化し、平滑リアクトルL1は、二次電流を平滑化する。
【0005】
スイッチング素子940をオンオフすると、電源トランスT1の漏れインダクタンス等が原因となって、二次電圧Vbにサージ電圧が発生することがある。サージ電圧は、ダイオードDに逆バイアスとなって加わるため、サージ電圧が大きくなると、ダイオードDが破損しやすくなる。この不具合を防止するため、従来のスイッチング電源装置9aは、スナバ回路950を設け、サージ電圧からダイオードDを保護している。
【0006】
スナバ回路950は、スナバコンデンサCsと、第1スナバダイオードDs1と、スナバリアクトルLsと、第2スナバダイオードDs2とからなる。スナバコンデンサCsと第1スナバダイオードDs1とは直列に接続され、第1スナバ直列体960を構成している。また、スナバリアクトルLsと第2スナバダイオードDs2とは直列接続され、第2スナバ直列体970を構成している。第1スナバ直列体960は、平滑リアクトルL1に並列接続されている。また、スナバコンデンサCsおよび第1スナバダイオードDs1の接続点980と、負側電力ライン990との間に、上記第2スナバ直列体970が設けられている。
【0007】
サージ電圧が発生すると、スナバコンデンサCsがサージ電圧を吸収する。スナバコンデンサCsが蓄えた電荷は、負荷995、第2スナバ直列体970等を流れ、回生される。これにより、サージ電圧を低減し、ダイオードDの破損を防止している。また、回生することで入力からのエネルギーを効率よく出力できる。
【0008】
別のスイッチング電源装置9bの例を図11に示す。同図に示すごとく、このスイッチング電源装置9bは、電源トランスT1と、スイッチング素子Q1と、第1コンデンサC1と、第1ダイオードD1とを備える。
このスイッチング電源装置9bにも、スナバ回路98が設けられている。スナバ回路98は、スナバ用トランスT2と、第2コンデンサC2と、第2ダイオードD2とからなる。スナバ用トランスT2の一次コイル93と第2コンデンサC2は直列接続され、第1直列体97を構成している。第1直列体97は、第1ダイオードD1に並列接続されている。また、スナバ用トランスT2の二次コイル94と第2ダイオードD2は直列接続され、第2直列体99を構成している。第2直列体99は、第1コンデンサC1に並列接続されている。
【0009】
スナバ回路98を用いることにより、サージ電圧を第1コンデンサC1に吸収させ、第1ダイオードD1に大きなサージ電圧が加わることを防止している。
なお、スナバ回路98の第2コンデンサC2は、第一ダイオードD1の両端が短絡することを防止するために設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平1−295675号公報
【特許文献2】特開2010−166651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、図10に示す従来のスイッチング電源装置9aは、電子部品の数が多く、スイッチング電源装置の製造コストが上昇したり、大型化しやすくなったりする問題がある。
【0012】
また、図11に示す従来のスイッチング電源装置9bは、スナバ回路98に必要な電子部品(スナバ用トランスT2、第2コンデンサC2、第2ダイオードD2)の数が多いという問題がある。
【0013】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、追加する電子部品の部品点数を低減でき、製造コストを低減できるスイッチング電源装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様は、一対の電力ラインと、
該一対の電力ラインの間に接続された直流負荷と、
該直流負荷に並列接続され、該直流負荷に加わる電圧を平滑化するコンデンサと、
一次コイルおよび二次コイルを有するスナバ用トランスと、
スイッチング素子を有し、該スイッチング素子のオンオフ動作によってパルス電流を発生するパルス電流発生回路とを備え、
上記一次コイルは、上記一対の電力ラインのうち高電位側の電力ラインに、上記コンデンサに対して直列になるよう接続され、
上記二次コイルとスナバ用ダイオードとを直列接続してなる直列体が、上記コンデンサに並列接続され、上記スナバ用ダイオードのアノード端子は上記二次コイルに接続し、上記スナバ用ダイオードのカソード端子は上記コンデンサの高電位側の電極端子に接続しており、
上記パルス電流発生回路によって発生した上記パルス電流は上記一次コイルに流れ、
該一次コイルは、上記パルス電流を平滑化する平滑リアクトルであり、
上記一対の電力ラインに流れる電流を整流する整流ダイオードが上記一次コイルに直列接続されていることを特徴とするスイッチング電源装置にある(請求項1)。
【0015】
また、本発明の他の態様は、上記スイッチング電源装置を有することを特徴とする車両用電力変換装置にある(請求項6)。
【0016】
上記スイッチング電源装置は、上記特許文献1に記載のスイッチング電源装置9a(図10参照)と比較して、スイッチング電源装置全体に必要な部品点数を低減できる。そのため、スイッチング電源装置を小型化することができる。
【0017】
また、上記スイッチング電源装置は、上記パルス電流を平滑化する平滑リアクトルを備えており、上記スナバ用トランスの上記一次コイルが、この平滑リアクトルを兼ねている。そのため、サージ電圧を低減するための回路(スナバ回路)を構成するために、1個のスナバ用トランス全てを追加する必要がなくなり、スナバ用トランスのうち一次コイルを除いた部分(コアと二次コイル)を追加するだけで良くなる。
【0018】
また、上記スイッチング電源装置においては、上記整流ダイオードが、上記一次コイルに直列接続されている。このようにすると、従来のスイッチング電源装置9(図11参照)のように、通電を防止するための部品(第2コンデンサC2)を設ける必要がなくなる。
【0019】
このように、上記スイッチング電源装置は、スナバ用トランスのうち一次コイルを除いた部分(コアと二次コイル)を追加するだけでスナバ回路を構成でき、第2コンデンサC2(図11参照)を設ける必要もない。そのため、上記特許文献2に記載のスイッチング電源装置9bと比較して、スナバ回路に必要な電子部品の部品点数を低減でき、スナバ回路を低コスト化および少部品化することができる。
【0020】
なお、上記スナバ用トランスと上記スナバ用ダイオードとによってスナバ回路を構成することにより、上記パルス電流が発生する際に生じるサージ電圧を低減でき、パルス電流発生回路に含まれる電子部品を保護することができる。サージ電圧を低減する原理については、後述する。
【0021】
また、上記車両用電力変換装置は、上記スイッチング電源装置を備える。車両用電力変換装置は小型化や低コスト化が特に要求されているので、上記スイッチング電源装置を用いることによる効果が大きい。
【0022】
以上のごとく、本発明によれば、追加する電子部品の部品点数を低減でき、製造コストを低減できるスイッチング電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1における、スイッチング電源装置を用いた充電器の回路図。
【図2】比較例における、仮にサージ電圧が発生した場合の、パルス電流発生回路の出力電圧の波形。
【図3】比較例における、仮にサージ電圧が発生した場合の、スナバ用トランスの二次電圧の波形。
【図4】実施例1における、スナバ用トランスの二次電圧の波形。
【図5】実施例1における、コンデンサ電圧の波形。
【図6】実施例1における、スナバ用トランスの一次電圧の波形。
【図7】実施例1における、パルス電流発生回路の出力電圧の波形。
【図8】実施例2における、スイッチング電源装置の回路図。
【図9】実施例3における、スイッチング電源装置の回路図。
【図10】従来例における、スイッチング電源装置の回路図。
【図11】図10とは異なる従来例における、スイッチング電源装置の回路図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
上記スイッチング電源装置において、上記パルス電流発生回路は、上記スイッチング素子と、電源トランスと、上記整流ダイオードによって構成された整流回路とを備え、上記電源トランスは一次巻線と二次巻線とを有し、上記スイッチング素子のオンオフ動作によって発生した交流電流を上記一次巻線に流し、上記二次巻線に発生した二次電流を上記整流回路によって整流することにより、上記パルス電流を発生するよう構成されていてもよい(請求項2)。
この場合には、上記スナバ回路によってサージ電圧を低減し、上記整流ダイオードをサージ電圧から保護することができる。そのため、耐圧の高い整流ダイオードを使用する必要がなくなる。すなわち、耐圧が低く製造コストが低い整流ダイオードを用いて、整流回路を構成することができる。これにより、スイッチング電源装置を低コストで製造することが可能になる。
【0025】
また、上記パルス電流発生回路は、上記スイッチング素子と、センタータップ付トランスと、整流回路とを備え、上記センタータップ付トランスは一次巻線と二次巻線とを有し、該二次巻線にセンタータップが設けられ、該センタータップは上記コンデンサの低電位側の電極端子に接続しており、上記整流回路は上記二次巻線の両端にそれぞれ設けられた上記整流ダイオードからなり、上記スイッチング素子のオンオフ動作によって発生した交流電流を上記一次巻線に流し、上記二次巻線に生じた二次電流を上記整流回路によって整流することにより、上記パルス電流を発生するよう構成されていてもよい(請求項3)。
この場合には、センタータップ付トランスを用いて全波整流するスイッチング電源装置に、スナバ回路を設けることができる。そのため、整流回路を構成する2個の上記整流ダイオードをサージ電圧から保護することができる。これにより、耐圧が低く製造コストが低い整流ダイオードを用いて整流回路を構成することができ、スイッチング電源装置の製造コストを下げることが可能になる。
【0026】
また、上記一対の電力ラインは直流電源に接続しており、上記パルス電流発生回路は、上記一対の電力ラインのうち少なくとも一方の電力ラインに設けられた上記スイッチング素子からなり、上記一対の電力ラインの間に、上記一次コイルの還流電流が流れる上記整流ダイオードが設けられ、上記スイッチング素子をオンオフ動作させることにより上記パルス電流を発生し、該パルス電流を上記一次コイルに流すことにより上記直流電源の電圧を降圧する降圧回路を構成していてもよい(請求項4)
この場合には、上記スナバ用トランスの一次コイルを、上記降圧回路のチョークコイルとして使用することができる。また、仮にスナバ回路を設けなかったとすると、スイッチング素子をオンオフ動作させた場合に大きなサージ電圧が発生し、このサージ電圧が上記整流ダイオードに加わって、整流ダイオードが破損しやすくなるが、上記スナバ用トランスと上記スナバ用ダイオードとによって上記スナバ回路を構成することにより、サージ電圧を低減でき、整流ダイオードをサージ電圧から保護することが可能になる。そのため、耐圧が低く製造コストが低い整流ダイオードを用いることができ、スイッチング電源装置を低コストで製造することが可能となる。
【0027】
また、上記一次コイルに加わる一次電圧VL1と、上記コンデンサの両端電圧VOと、上記一次コイルの巻数n1と、上記二次コイルの巻数n2との間に、以下の式
VL1・n2/n1>VO
が成立することが好ましい(請求項5)。
この場合には、後述するように、パルス電流の発生に伴って生じるサージ電圧を、確実に除去することができる。
【実施例】
【0028】
(実施例1)
本発明の実施例にかかるスイッチング電源装置につき、図1〜図7を用いて説明する。図1に示すごとく、本例のスイッチング電源装置1は、一対の電力ライン10,11と、直流負荷2(直流電源)と、コンデンサCと、スナバ用トランスTsと、パルス電流発生回路5と、スナバ用ダイオードDsとを備える。直流負荷2は、一対の電力ライン10,11の間に接続されている。コンデンサCは、直流負荷2に並列接続されており、直流負荷2に加わる電圧を平滑化する。
スナバ用トランスTSは、一次コイル41および二次コイル42を有する。パルス電流発生回路5はスイッチング素子51を有し、該スイッチング素子51のオンオフ動作によってパルス電流Ipを発生する。
【0029】
一次コイル41は、高電位側の電力ライン10に、コンデンサCに対して直列になるよう接続されている。
二次コイル42とスナバ用ダイオードDsとは直列接続され、直列体12を構成している。直列体12はコンデンサCに並列接続されている。スナバ用ダイオードDsのアノード端子は二次コイル42に接続している。また、スナバ用ダイオードDsのカソード端子はコンデンサCの高電位側の電極端子に接続している。
パルス電流発生回路5によって発生したパルス電流Ipは一次コイル41に流れる。
一次コイル41は、パルス電流Ipを平滑化する平滑リアクトルである。
また、電力ライン10,11に流れる電流を整流する整流ダイオード53が一次コイル41に直列接続されている。
【0030】
また、パルス電流発生回路5は、スイッチング素子51と、電源トランスTpと、整流回路52とを備える。整流回路52は、4個の整流ダイオード53からなる。電源トランスTpは、一次巻線54と二次巻線55とを有する。一次巻線54はスイッチング素子51に接続しており、二次巻線55は整流回路52に接続している。スイッチング素子51のオンオフ動作によって発生した交流電流Iaを一次巻線54に流し、二次巻線55に発生した二次電流を整流回路52によって整流することにより、パルス電流Ipを発生するよう構成されている。
【0031】
本例のスイッチング電源装置1は、車両用電力変換装置において用いられる。より具体的には、家庭用の交流電源14を使って、車両に搭載した直流電源2を充電するための車両用充電器100に用いられる。車両用充電器100は、スイッチング電源装置1の他に、入力用整流回路20と、PFC回路13を備える。
【0032】
入力用整流回路20は4個のダイオードからなり、交流電源14に接続されている。この入力用整流回路20を使って、交流電源14から入力される交流電圧を整流する。また、PFC回路13は、リアクトル16と、スイッチング素子17と、PFC用ダイオード18とからなる。スイッチング素子17をオンオフ動作させることにより、リアクトル16に流れる電流ILの波形を正弦波に近づけ、歪みを矯正している。これにより、入力電流Isの波形を理想的な正弦波に近づけ、入力電力の力率を向上させている。
【0033】
また、PFC回路13には平滑用コンデンサ19が接続している。この平滑用コンデンサ19を用いることにより、整流後の電圧を平滑化している。
【0034】
平滑コンデンサ19には、4個のスイッチング素子51からなるH型ブリッジ回路59が接続している。また、H型ブリッジ回路59には、電源トランスTpの一次巻線54が接続している。スイッチング素子51をオンオフ動作させることにより、平滑用コンデンサ19に加わる直流電圧を交流電圧に変換し、一次巻線54に印加している。
【0035】
一次巻線54に交流電圧が加わると、二次巻線55に二次電流が発生する。この二次電流を、4個の整流用ダイオード53からなる整流回路52を使って整流する。そして、整流した電圧を、コンデンサCによって平滑化する。このようにして、直流電源2に直流電圧を加えている。
【0036】
なお、H型ブリッジ回路59のデューティーを変更することにより、直流電源2に加わる電圧の値を調整できるようになっている。例えば、直流電源2の蓄電量が少ない場合は、低い電圧を加え、蓄電量が多い場合は高い電圧を加える。
【0037】
上述したように、本例のスイッチング電源装置1は、スナバ用トランスTsの一次コイル41を平滑リアクトルとして利用している。すなわち、一次コイル41によって、直流電源2に流れる電流を平滑化している。
また、上述したように本例では、スナバ用トランスTsの二次コイル42とスナバ用ダイオードDsとが直列に接続され、直列体12を構成している。直列体12は、コンデンサCに並列接続されている。スナバ用トランスTsとスナバ用ダイオードDsとによって、スナバ回路43が形成されている。
【0038】
ここで仮に、スナバ回路43を設けなかったとすると、電源トランスTpの漏れインダクタンス等が原因となってサージ電圧Vsが発生することがある(図2参照)。サージ電圧Vsは整流回路52の整流ダイオード53に対して逆バイアスとなって加わるため、整流ダイオード53が破損しやすくなるという問題が生じる。また、サージ電圧Vsに耐えられるように高耐圧用の整流ダイオード53を用いると、製造コストが上昇するという問題が生じる。このような問題を解決するため、スナバ回路43が設けられている。
【0039】
スナバ回路43の動作について説明する。パルス電流発生回路5の出力電圧をVDとし、コンデンサCの電圧をVOとし、スナバ用トランスTsの一次コイル41の巻数をn1とし、二次コイル42の巻数をn2とする。一次コイル41にパルス電流Ipが流れると、このパルス電流Ipの変化を妨げるように一次電圧VL1(逆起電圧)が発生する。一次電圧VL1とコンデンサ電圧VOとを足した値は、出力電圧VDと等しいため、以下の式が成立する。
VD=VL1+VO ・・・(1)
【0040】
コンデンサ電圧VOは短時間内に大きく変動しないため、ほぼ定数とみなすことができる。ここで仮に、図2に示すごとく、パルス電流発生回路5の出力電圧VDのパルスが立ち上がる際にサージ電圧Vsが発生したとすると、上記数式(1)が成立するため、一次電圧VL1にもサージ電圧Vsが発生する。これに伴って、図3に示すごとく、二次コイル42の二次電圧VL2にもサージ電圧Vs’が発生する。
【0041】
二次電圧VL2の波形は、図3に示すようになる。すなわち、パルスの立ち上がり時にサージ電圧Vs’が発生し、その後、電圧Vfが大きく変動しない状態が続く。その後、パルスが立ち下がる。
【0042】
サージ電圧Vs’が発生した後における二次電圧VL2の値(Vf)は、以下の式により表される。
Vf=VL1・n2/n1
また、本例では、以下の式が成立するようにしてある。
Vf=VL1・n2/n1>VO ・・・(2)
このようにすると、二次電圧VL2がコンデンサ電圧VOよりも高くなった場合に、その高くなった分が、スナバ用ダイオードDsを通ってコンデンサCに吸収される。すなわち、二次電圧VL2からサージ電圧Vs’を除去することができる。そのため図4に示すごとく、二次電圧VL2は、サージ電圧Vs’を含まず最大値がVOの矩形波となる。
【0043】
一次電圧VL1の波形と、二次電圧VL2の波形とは、電磁誘導によって相互に関連している。すなわち、一次電圧VL1の波形が変化すると、二次電圧VL2の波形も変化し、一次電圧VL1と同様の波形になる。また、二次電圧VL2が変化すると、一次電圧VL1も変化し、二次電圧VL2と同様の波形になる。
そのため、二次電圧VL2からサージ電圧Vs’が除去されると、一次電圧VL1からもサージ電圧Vsが除去される。図6に、一次電圧VL1の波形を示す。このように一次電圧VL1は、サージ電圧Vsを含まず、最大値がVD−VOで、最小値が−(VO−VD)の矩形波となる。
【0044】
また、図5に示すごとく、コンデンサ電圧VOは、時間によって大きく変動しない直流電圧である。そして、上記数式(1)が成立するため、パルス電流発生回路5の出力電圧VDの波形は、コンデンサ電圧VOと一次電圧VL1の波形をそれぞれ足し合わせたものとなる。そのため、図7に示すごとく、出力電圧VDにもサージ電圧Vsが発生しなくなる。
【0045】
本例の作用効果について説明する。
本例のスイッチング電源装置1は、特許文献1に記載のスイッチング電源装置9a(図10参照)と比較して、スイッチング電源装置1全体に必要な部品点数を低減できる。そのため、スイッチング電源装置1を小型化することができる。
【0046】
また、図1に示すごとく、本例のスイッチング電源装置1は、パルス電流Ipを平滑化する平滑リアクトルを備えており、スナバ用トランスTsの一次コイル41が、この平滑リアクトルを兼ねている。そのため、サージ電圧Vsを低減するための回路(スナバ回路43)を構成するために、1個のスナバ用トランスTs全てを追加する必要がなくなり、スナバ用トランスTsのうち一次コイル41を除いた部分(コア44と二次コイル42)を追加するだけで良くなる。
【0047】
また、本例のスイッチング電源装置1は、整流ダイオード53が、一次コイル41に直列接続されている。このようにすると、従来のスイッチング電源装置9(図11参照)のように、通電を防止するための部品(第2コンデンサC2)を設ける必要がなくなる。
【0048】
このように、本例のスイッチング電源装置1は、スナバ用トランスTsのうち一次コイル41を除いた部分(コア44と二次コイル42)を追加するだけでスナバ回路43を構成でき、第2コンデンサC2(図11参照)を設ける必要もない。そのため、上記特許文献2に記載のスイッチング電源装置9bと比較して、スナバ回路43に必要な電子部品の部品点数を低減でき、スナバ回路43を低コスト化および少部品化することができる。
【0049】
また、スナバ用トランスTsとスナバ用ダイオードDsとによってスナバ回路43を構成することにより、パルス電流発生回路5の出力電圧VDを、図7に示す波形にすることができる。そのためサージ電圧Vsを低減でき、パルス電流発生回路5に含まれる電子部品をサージ電圧Vsから保護することができる。
【0050】
また、本例のパルス電流発生回路5は、スイッチング素子51と、電源トランスTpと、整流回路52とを備える。電源トランスTpは一次巻線54と二次巻線55とを有する。そして、スイッチング素子51のオンオフ動作によって発生した交流電流Iaを一次巻線54に流し、二次巻線55に発生した二次電流を整流回路52によって整流することにより、パルス電流Ipを発生するよう構成されている。
このようにすると、スナバ回路43によってサージ電圧Vsを低減し、整流回路52を構成する整流ダイオード53をサージ電圧Vsから保護することができる。そのため、耐圧の高い整流ダイオード53を使用する必要がなくなる。すなわち、耐圧が低く製造コストが低い整流ダイオード53を用いて、整流回路52を構成することができる。これにより、スイッチング電源装置1を低コストで製造することが可能になる。
【0051】
また、一次コイル41に加わる一次電圧VL1と、コンデンサCの両端電圧VOと、一次コイル41の巻数n1と、二次コイル42の巻数n2との間に、以下の式
VL1・n2/n1>VO ・・・(2)
が成立するよう構成されている。
この場合には、サージ電圧Vsを確実に除去することができる。すなわち、数式(2)を満たすようにすると、図3、図4に示すごとく、二次コイル42にコンデンサ電圧VOよりも大きな電圧が発生しても、スナバ用ダイオードDsを通って電圧がコンデンサCに吸収される。そのため、二次電圧VL2からサージ電圧Vs’を除去することが可能になる。これにより、図6に示すごとく、一次電圧VL1からもサージ電圧Vsを除去でき、パルス電流発生回路5の出力電圧VD(一次電圧VL1とコンデンサ電圧VOとを足し合わせた電圧)からも、サージ電圧Vsを除去することが可能になる。これにより、整流回路52を構成する整流ダイオード53をサージ電圧Vsから保護することができる。
【0052】
また、図1に示すごとく、本例のスイッチング電源装置1は、車両用充電器100(車両用電力変換装置)に用いられている。車両用電力変換装置は小型化や低コスト化が特に要求されているので、本例のスイッチング電源装置1を用いることによる効果が大きい。
【0053】
以上のごとく、本発明によれば、追加する電子部品の部品点数を低減でき、製造コストを低減できるスイッチング電源装置を提供することができる。
【0054】
(実施例2)
本例は、パルス電流発生回路5を変更した例である。図8に示すごとく、本例のパルス電流発生回路5は、スイッチング素子51と、センタータップ付トランスTcと、整流回路52とを備える。センタータップ付トランスTcは一次巻線54と二次巻線55とを有する。二次巻線55には、センタータップ58が設けられている。センタータップ58はコンデンサCの低電位側の電極端子に接続している。
【0055】
整流回路52は、二次巻線55の両端にそれぞれ設けられた整流ダイオード53からなる。そして、スイッチング素子51のオンオフ動作によって発生した交流電流Iaを一次巻線54に流し、二次巻線55に生じた二次電流を整流回路52によって整流することにより、パルス電流Ipを発生するよう構成されている。
【0056】
パルス電流Ipは、スナバ用トランスTsの一次コイル41に流れる。スナバ用トランスTsの二次コイル42とスナバ用ダイオードDsは直列接続され、直列体12を構成している。この直列体12は、コンデンサCに並列接続している。また、本例では、スナバ用トランスTsとスナバ用ダイオードDsとによって、スナバ回路43が構成されている。
その他、実施例1と同様の構成を備える。
【0057】
本例の作用効果について説明する。上記構成にすると、センタータップ付トランスTcを用いて全波整流するスイッチング電源装置1に、スナバ回路43を設けることができる。スナバ回路43を設けないと、パルス電流Ipの発生に伴ってサージ電圧Vsが発生し、整流ダイオード53にサージ電圧Vsが逆バイアスとなって加わる。そのため、整流ダイオード53が破損しやすくなるが、上記スイッチング電源装置1は、スナバ回路43によってサージ電圧Vsを低減できるため、整流ダイオード53をサージ電圧Vsから保護することができる。これにより、耐圧が低く製造コストが低い整流ダイオード53を用いて整流回路52を構成することができ、スイッチング電源装置1の製造コストを下げることが可能になる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0058】
(実施例3)
本例は、スイッチング電源装置1によって降圧回路6を構成した例である。図9に示すごとく、本例の電力ライン10,11は直流電源80に接続している。パルス電流発生回路5は、正側の電力ライン10に設けられたスイッチング素子51からなる。また、一対の電力ライン10,11の間に整流ダイオード53が接続されている。整流ダイオード53には、一次コイル41の還流電流Icが流れる。整流ダイオード53は、スイッチング素子51と一次コイル41とを接続する接続点400と、負側の電力ライン11との間に接続されている。整流ダイオード53のアノード端子は、負側の電力ライン11に接続されている。また、整流ダイオード53のカソード端子は、接続点400に接続されている。
本例では、スイッチング素子51をオンオフ動作させることによりパルス電流Ipを発生している。このパルス電流Ipを一次コイル41に流すことにより、直流電源80の電圧を降圧し、直流負荷2に加えるようになっている。直流負荷2には、他の電子機器や電子部品等、任意の負荷が用いられる。
【0059】
スナバ用トランスTsの二次コイル42とスナバ用ダイオードDsは直列接続され、直列体12を構成している。この直列体12は、コンデンサCに並列接続している。また、本例では、スナバ用トランスTsとスナバ用ダイオードDsとによって、スナバ回路43が構成されている。
その他、実施例1と同様の構成を備える。
【0060】
本例の作用効果について説明する。上記構成にすると、スナバ用トランスTsの一次コイル41を、降圧回路6のチョークコイルとして使用することができる。また、スナバ回路43を設けない場合は、スイッチング素子51をオンオフ動作させた場合に大きなサージ電圧Vsが発生し、このサージ電圧Vsが整流ダイオード53に加わって破損しやすくなるが、本例はスナバ回路43を備えるため、サージ電圧Vsを低減でき、整流ダイオード53をサージ電圧Vsから保護することができる。
【0061】
すなわち、パルス電流発生回路5の出力電圧をVdとし、一次コイル41の電圧をVL1とし、コンデンサCの電圧をVOとした場合、以下の式が成立する。
Vd=VL1+VO ・・・(3)
出力電圧Vdにサージ電圧Vsが発生すると、上記(3)式が成立するため、一次電圧VL1にもサージ電圧Vsが発生する。また、サージ電圧Vsは整流ダイオード53に加わるため、整流ダイオード53が破損しやすくなる。しかしながら本例では、スナバ回路43によって、一次電圧VL1からサージ電圧Vsを除去できるため、出力電圧Vdからもサージ電圧Vsを除去できる。そのため、整流ダイオード53に大きなサージ電圧Vsが加わることを防止できる。これにより、耐圧が低く製造コストが低い整流ダイオード53を用いることができ、スイッチング電源装置1を低コストで製造することが可能となる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【符号の説明】
【0062】
1 スイッチング電源装置
2 直流負荷
10,11 電力ライン
12 直列体
13 スナバ用ダイオード
3 コンデンサ
4 スナバ用トランス
41 一次コイル
42 二次コイル(平滑リアクトル)
5 パルス電流発生回路
51 スイッチング素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、スナバ用トランスを有するスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子機器への入力電圧等を調節する装置として、スイッチング素子を用いたスイッチング電源装置が知られている(下記特許文献1、2参照)。スイッチング電源装置の一例を図10に示す。
図10に示すスイッチング電源装置9aは、直流電源930に接続したブリッジ回路910と、電源トランスT1と、整流回路920と、平滑コンデンサC1と、平滑リアクトルL1とを備える。
【0003】
ブリッジ回路910は、4個のスイッチング素子940からなる。ブリッジ回路910は、電源トランスT1の一次コイル91に接続している。また、整流回路920は4個のダイオードD1〜D4からなる。整流回路920は、電源トランスT1の二次コイル92に接続している。
【0004】
ブリッジ回路910は、スイッチング素子940をオンオフ動作することにより、直流電圧Vinを交流電圧に変換している。この交流電圧は、電源トランスT1の一次コイル91に一次電圧Vaとして加わる。整流回路920は、二次コイル92から出力される二次電圧Vbを整流する。また、平滑コンデンサC1は整流後の二次電圧を平滑化し、平滑リアクトルL1は、二次電流を平滑化する。
【0005】
スイッチング素子940をオンオフすると、電源トランスT1の漏れインダクタンス等が原因となって、二次電圧Vbにサージ電圧が発生することがある。サージ電圧は、ダイオードDに逆バイアスとなって加わるため、サージ電圧が大きくなると、ダイオードDが破損しやすくなる。この不具合を防止するため、従来のスイッチング電源装置9aは、スナバ回路950を設け、サージ電圧からダイオードDを保護している。
【0006】
スナバ回路950は、スナバコンデンサCsと、第1スナバダイオードDs1と、スナバリアクトルLsと、第2スナバダイオードDs2とからなる。スナバコンデンサCsと第1スナバダイオードDs1とは直列に接続され、第1スナバ直列体960を構成している。また、スナバリアクトルLsと第2スナバダイオードDs2とは直列接続され、第2スナバ直列体970を構成している。第1スナバ直列体960は、平滑リアクトルL1に並列接続されている。また、スナバコンデンサCsおよび第1スナバダイオードDs1の接続点980と、負側電力ライン990との間に、上記第2スナバ直列体970が設けられている。
【0007】
サージ電圧が発生すると、スナバコンデンサCsがサージ電圧を吸収する。スナバコンデンサCsが蓄えた電荷は、負荷995、第2スナバ直列体970等を流れ、回生される。これにより、サージ電圧を低減し、ダイオードDの破損を防止している。また、回生することで入力からのエネルギーを効率よく出力できる。
【0008】
別のスイッチング電源装置9bの例を図11に示す。同図に示すごとく、このスイッチング電源装置9bは、電源トランスT1と、スイッチング素子Q1と、第1コンデンサC1と、第1ダイオードD1とを備える。
このスイッチング電源装置9bにも、スナバ回路98が設けられている。スナバ回路98は、スナバ用トランスT2と、第2コンデンサC2と、第2ダイオードD2とからなる。スナバ用トランスT2の一次コイル93と第2コンデンサC2は直列接続され、第1直列体97を構成している。第1直列体97は、第1ダイオードD1に並列接続されている。また、スナバ用トランスT2の二次コイル94と第2ダイオードD2は直列接続され、第2直列体99を構成している。第2直列体99は、第1コンデンサC1に並列接続されている。
【0009】
スナバ回路98を用いることにより、サージ電圧を第1コンデンサC1に吸収させ、第1ダイオードD1に大きなサージ電圧が加わることを防止している。
なお、スナバ回路98の第2コンデンサC2は、第一ダイオードD1の両端が短絡することを防止するために設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平1−295675号公報
【特許文献2】特開2010−166651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、図10に示す従来のスイッチング電源装置9aは、電子部品の数が多く、スイッチング電源装置の製造コストが上昇したり、大型化しやすくなったりする問題がある。
【0012】
また、図11に示す従来のスイッチング電源装置9bは、スナバ回路98に必要な電子部品(スナバ用トランスT2、第2コンデンサC2、第2ダイオードD2)の数が多いという問題がある。
【0013】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、追加する電子部品の部品点数を低減でき、製造コストを低減できるスイッチング電源装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様は、一対の電力ラインと、
該一対の電力ラインの間に接続された直流負荷と、
該直流負荷に並列接続され、該直流負荷に加わる電圧を平滑化するコンデンサと、
一次コイルおよび二次コイルを有するスナバ用トランスと、
スイッチング素子を有し、該スイッチング素子のオンオフ動作によってパルス電流を発生するパルス電流発生回路とを備え、
上記一次コイルは、上記一対の電力ラインのうち高電位側の電力ラインに、上記コンデンサに対して直列になるよう接続され、
上記二次コイルとスナバ用ダイオードとを直列接続してなる直列体が、上記コンデンサに並列接続され、上記スナバ用ダイオードのアノード端子は上記二次コイルに接続し、上記スナバ用ダイオードのカソード端子は上記コンデンサの高電位側の電極端子に接続しており、
上記パルス電流発生回路によって発生した上記パルス電流は上記一次コイルに流れ、
該一次コイルは、上記パルス電流を平滑化する平滑リアクトルであり、
上記一対の電力ラインに流れる電流を整流する整流ダイオードが上記一次コイルに直列接続されていることを特徴とするスイッチング電源装置にある(請求項1)。
【0015】
また、本発明の他の態様は、上記スイッチング電源装置を有することを特徴とする車両用電力変換装置にある(請求項6)。
【0016】
上記スイッチング電源装置は、上記特許文献1に記載のスイッチング電源装置9a(図10参照)と比較して、スイッチング電源装置全体に必要な部品点数を低減できる。そのため、スイッチング電源装置を小型化することができる。
【0017】
また、上記スイッチング電源装置は、上記パルス電流を平滑化する平滑リアクトルを備えており、上記スナバ用トランスの上記一次コイルが、この平滑リアクトルを兼ねている。そのため、サージ電圧を低減するための回路(スナバ回路)を構成するために、1個のスナバ用トランス全てを追加する必要がなくなり、スナバ用トランスのうち一次コイルを除いた部分(コアと二次コイル)を追加するだけで良くなる。
【0018】
また、上記スイッチング電源装置においては、上記整流ダイオードが、上記一次コイルに直列接続されている。このようにすると、従来のスイッチング電源装置9(図11参照)のように、通電を防止するための部品(第2コンデンサC2)を設ける必要がなくなる。
【0019】
このように、上記スイッチング電源装置は、スナバ用トランスのうち一次コイルを除いた部分(コアと二次コイル)を追加するだけでスナバ回路を構成でき、第2コンデンサC2(図11参照)を設ける必要もない。そのため、上記特許文献2に記載のスイッチング電源装置9bと比較して、スナバ回路に必要な電子部品の部品点数を低減でき、スナバ回路を低コスト化および少部品化することができる。
【0020】
なお、上記スナバ用トランスと上記スナバ用ダイオードとによってスナバ回路を構成することにより、上記パルス電流が発生する際に生じるサージ電圧を低減でき、パルス電流発生回路に含まれる電子部品を保護することができる。サージ電圧を低減する原理については、後述する。
【0021】
また、上記車両用電力変換装置は、上記スイッチング電源装置を備える。車両用電力変換装置は小型化や低コスト化が特に要求されているので、上記スイッチング電源装置を用いることによる効果が大きい。
【0022】
以上のごとく、本発明によれば、追加する電子部品の部品点数を低減でき、製造コストを低減できるスイッチング電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1における、スイッチング電源装置を用いた充電器の回路図。
【図2】比較例における、仮にサージ電圧が発生した場合の、パルス電流発生回路の出力電圧の波形。
【図3】比較例における、仮にサージ電圧が発生した場合の、スナバ用トランスの二次電圧の波形。
【図4】実施例1における、スナバ用トランスの二次電圧の波形。
【図5】実施例1における、コンデンサ電圧の波形。
【図6】実施例1における、スナバ用トランスの一次電圧の波形。
【図7】実施例1における、パルス電流発生回路の出力電圧の波形。
【図8】実施例2における、スイッチング電源装置の回路図。
【図9】実施例3における、スイッチング電源装置の回路図。
【図10】従来例における、スイッチング電源装置の回路図。
【図11】図10とは異なる従来例における、スイッチング電源装置の回路図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
上記スイッチング電源装置において、上記パルス電流発生回路は、上記スイッチング素子と、電源トランスと、上記整流ダイオードによって構成された整流回路とを備え、上記電源トランスは一次巻線と二次巻線とを有し、上記スイッチング素子のオンオフ動作によって発生した交流電流を上記一次巻線に流し、上記二次巻線に発生した二次電流を上記整流回路によって整流することにより、上記パルス電流を発生するよう構成されていてもよい(請求項2)。
この場合には、上記スナバ回路によってサージ電圧を低減し、上記整流ダイオードをサージ電圧から保護することができる。そのため、耐圧の高い整流ダイオードを使用する必要がなくなる。すなわち、耐圧が低く製造コストが低い整流ダイオードを用いて、整流回路を構成することができる。これにより、スイッチング電源装置を低コストで製造することが可能になる。
【0025】
また、上記パルス電流発生回路は、上記スイッチング素子と、センタータップ付トランスと、整流回路とを備え、上記センタータップ付トランスは一次巻線と二次巻線とを有し、該二次巻線にセンタータップが設けられ、該センタータップは上記コンデンサの低電位側の電極端子に接続しており、上記整流回路は上記二次巻線の両端にそれぞれ設けられた上記整流ダイオードからなり、上記スイッチング素子のオンオフ動作によって発生した交流電流を上記一次巻線に流し、上記二次巻線に生じた二次電流を上記整流回路によって整流することにより、上記パルス電流を発生するよう構成されていてもよい(請求項3)。
この場合には、センタータップ付トランスを用いて全波整流するスイッチング電源装置に、スナバ回路を設けることができる。そのため、整流回路を構成する2個の上記整流ダイオードをサージ電圧から保護することができる。これにより、耐圧が低く製造コストが低い整流ダイオードを用いて整流回路を構成することができ、スイッチング電源装置の製造コストを下げることが可能になる。
【0026】
また、上記一対の電力ラインは直流電源に接続しており、上記パルス電流発生回路は、上記一対の電力ラインのうち少なくとも一方の電力ラインに設けられた上記スイッチング素子からなり、上記一対の電力ラインの間に、上記一次コイルの還流電流が流れる上記整流ダイオードが設けられ、上記スイッチング素子をオンオフ動作させることにより上記パルス電流を発生し、該パルス電流を上記一次コイルに流すことにより上記直流電源の電圧を降圧する降圧回路を構成していてもよい(請求項4)
この場合には、上記スナバ用トランスの一次コイルを、上記降圧回路のチョークコイルとして使用することができる。また、仮にスナバ回路を設けなかったとすると、スイッチング素子をオンオフ動作させた場合に大きなサージ電圧が発生し、このサージ電圧が上記整流ダイオードに加わって、整流ダイオードが破損しやすくなるが、上記スナバ用トランスと上記スナバ用ダイオードとによって上記スナバ回路を構成することにより、サージ電圧を低減でき、整流ダイオードをサージ電圧から保護することが可能になる。そのため、耐圧が低く製造コストが低い整流ダイオードを用いることができ、スイッチング電源装置を低コストで製造することが可能となる。
【0027】
また、上記一次コイルに加わる一次電圧VL1と、上記コンデンサの両端電圧VOと、上記一次コイルの巻数n1と、上記二次コイルの巻数n2との間に、以下の式
VL1・n2/n1>VO
が成立することが好ましい(請求項5)。
この場合には、後述するように、パルス電流の発生に伴って生じるサージ電圧を、確実に除去することができる。
【実施例】
【0028】
(実施例1)
本発明の実施例にかかるスイッチング電源装置につき、図1〜図7を用いて説明する。図1に示すごとく、本例のスイッチング電源装置1は、一対の電力ライン10,11と、直流負荷2(直流電源)と、コンデンサCと、スナバ用トランスTsと、パルス電流発生回路5と、スナバ用ダイオードDsとを備える。直流負荷2は、一対の電力ライン10,11の間に接続されている。コンデンサCは、直流負荷2に並列接続されており、直流負荷2に加わる電圧を平滑化する。
スナバ用トランスTSは、一次コイル41および二次コイル42を有する。パルス電流発生回路5はスイッチング素子51を有し、該スイッチング素子51のオンオフ動作によってパルス電流Ipを発生する。
【0029】
一次コイル41は、高電位側の電力ライン10に、コンデンサCに対して直列になるよう接続されている。
二次コイル42とスナバ用ダイオードDsとは直列接続され、直列体12を構成している。直列体12はコンデンサCに並列接続されている。スナバ用ダイオードDsのアノード端子は二次コイル42に接続している。また、スナバ用ダイオードDsのカソード端子はコンデンサCの高電位側の電極端子に接続している。
パルス電流発生回路5によって発生したパルス電流Ipは一次コイル41に流れる。
一次コイル41は、パルス電流Ipを平滑化する平滑リアクトルである。
また、電力ライン10,11に流れる電流を整流する整流ダイオード53が一次コイル41に直列接続されている。
【0030】
また、パルス電流発生回路5は、スイッチング素子51と、電源トランスTpと、整流回路52とを備える。整流回路52は、4個の整流ダイオード53からなる。電源トランスTpは、一次巻線54と二次巻線55とを有する。一次巻線54はスイッチング素子51に接続しており、二次巻線55は整流回路52に接続している。スイッチング素子51のオンオフ動作によって発生した交流電流Iaを一次巻線54に流し、二次巻線55に発生した二次電流を整流回路52によって整流することにより、パルス電流Ipを発生するよう構成されている。
【0031】
本例のスイッチング電源装置1は、車両用電力変換装置において用いられる。より具体的には、家庭用の交流電源14を使って、車両に搭載した直流電源2を充電するための車両用充電器100に用いられる。車両用充電器100は、スイッチング電源装置1の他に、入力用整流回路20と、PFC回路13を備える。
【0032】
入力用整流回路20は4個のダイオードからなり、交流電源14に接続されている。この入力用整流回路20を使って、交流電源14から入力される交流電圧を整流する。また、PFC回路13は、リアクトル16と、スイッチング素子17と、PFC用ダイオード18とからなる。スイッチング素子17をオンオフ動作させることにより、リアクトル16に流れる電流ILの波形を正弦波に近づけ、歪みを矯正している。これにより、入力電流Isの波形を理想的な正弦波に近づけ、入力電力の力率を向上させている。
【0033】
また、PFC回路13には平滑用コンデンサ19が接続している。この平滑用コンデンサ19を用いることにより、整流後の電圧を平滑化している。
【0034】
平滑コンデンサ19には、4個のスイッチング素子51からなるH型ブリッジ回路59が接続している。また、H型ブリッジ回路59には、電源トランスTpの一次巻線54が接続している。スイッチング素子51をオンオフ動作させることにより、平滑用コンデンサ19に加わる直流電圧を交流電圧に変換し、一次巻線54に印加している。
【0035】
一次巻線54に交流電圧が加わると、二次巻線55に二次電流が発生する。この二次電流を、4個の整流用ダイオード53からなる整流回路52を使って整流する。そして、整流した電圧を、コンデンサCによって平滑化する。このようにして、直流電源2に直流電圧を加えている。
【0036】
なお、H型ブリッジ回路59のデューティーを変更することにより、直流電源2に加わる電圧の値を調整できるようになっている。例えば、直流電源2の蓄電量が少ない場合は、低い電圧を加え、蓄電量が多い場合は高い電圧を加える。
【0037】
上述したように、本例のスイッチング電源装置1は、スナバ用トランスTsの一次コイル41を平滑リアクトルとして利用している。すなわち、一次コイル41によって、直流電源2に流れる電流を平滑化している。
また、上述したように本例では、スナバ用トランスTsの二次コイル42とスナバ用ダイオードDsとが直列に接続され、直列体12を構成している。直列体12は、コンデンサCに並列接続されている。スナバ用トランスTsとスナバ用ダイオードDsとによって、スナバ回路43が形成されている。
【0038】
ここで仮に、スナバ回路43を設けなかったとすると、電源トランスTpの漏れインダクタンス等が原因となってサージ電圧Vsが発生することがある(図2参照)。サージ電圧Vsは整流回路52の整流ダイオード53に対して逆バイアスとなって加わるため、整流ダイオード53が破損しやすくなるという問題が生じる。また、サージ電圧Vsに耐えられるように高耐圧用の整流ダイオード53を用いると、製造コストが上昇するという問題が生じる。このような問題を解決するため、スナバ回路43が設けられている。
【0039】
スナバ回路43の動作について説明する。パルス電流発生回路5の出力電圧をVDとし、コンデンサCの電圧をVOとし、スナバ用トランスTsの一次コイル41の巻数をn1とし、二次コイル42の巻数をn2とする。一次コイル41にパルス電流Ipが流れると、このパルス電流Ipの変化を妨げるように一次電圧VL1(逆起電圧)が発生する。一次電圧VL1とコンデンサ電圧VOとを足した値は、出力電圧VDと等しいため、以下の式が成立する。
VD=VL1+VO ・・・(1)
【0040】
コンデンサ電圧VOは短時間内に大きく変動しないため、ほぼ定数とみなすことができる。ここで仮に、図2に示すごとく、パルス電流発生回路5の出力電圧VDのパルスが立ち上がる際にサージ電圧Vsが発生したとすると、上記数式(1)が成立するため、一次電圧VL1にもサージ電圧Vsが発生する。これに伴って、図3に示すごとく、二次コイル42の二次電圧VL2にもサージ電圧Vs’が発生する。
【0041】
二次電圧VL2の波形は、図3に示すようになる。すなわち、パルスの立ち上がり時にサージ電圧Vs’が発生し、その後、電圧Vfが大きく変動しない状態が続く。その後、パルスが立ち下がる。
【0042】
サージ電圧Vs’が発生した後における二次電圧VL2の値(Vf)は、以下の式により表される。
Vf=VL1・n2/n1
また、本例では、以下の式が成立するようにしてある。
Vf=VL1・n2/n1>VO ・・・(2)
このようにすると、二次電圧VL2がコンデンサ電圧VOよりも高くなった場合に、その高くなった分が、スナバ用ダイオードDsを通ってコンデンサCに吸収される。すなわち、二次電圧VL2からサージ電圧Vs’を除去することができる。そのため図4に示すごとく、二次電圧VL2は、サージ電圧Vs’を含まず最大値がVOの矩形波となる。
【0043】
一次電圧VL1の波形と、二次電圧VL2の波形とは、電磁誘導によって相互に関連している。すなわち、一次電圧VL1の波形が変化すると、二次電圧VL2の波形も変化し、一次電圧VL1と同様の波形になる。また、二次電圧VL2が変化すると、一次電圧VL1も変化し、二次電圧VL2と同様の波形になる。
そのため、二次電圧VL2からサージ電圧Vs’が除去されると、一次電圧VL1からもサージ電圧Vsが除去される。図6に、一次電圧VL1の波形を示す。このように一次電圧VL1は、サージ電圧Vsを含まず、最大値がVD−VOで、最小値が−(VO−VD)の矩形波となる。
【0044】
また、図5に示すごとく、コンデンサ電圧VOは、時間によって大きく変動しない直流電圧である。そして、上記数式(1)が成立するため、パルス電流発生回路5の出力電圧VDの波形は、コンデンサ電圧VOと一次電圧VL1の波形をそれぞれ足し合わせたものとなる。そのため、図7に示すごとく、出力電圧VDにもサージ電圧Vsが発生しなくなる。
【0045】
本例の作用効果について説明する。
本例のスイッチング電源装置1は、特許文献1に記載のスイッチング電源装置9a(図10参照)と比較して、スイッチング電源装置1全体に必要な部品点数を低減できる。そのため、スイッチング電源装置1を小型化することができる。
【0046】
また、図1に示すごとく、本例のスイッチング電源装置1は、パルス電流Ipを平滑化する平滑リアクトルを備えており、スナバ用トランスTsの一次コイル41が、この平滑リアクトルを兼ねている。そのため、サージ電圧Vsを低減するための回路(スナバ回路43)を構成するために、1個のスナバ用トランスTs全てを追加する必要がなくなり、スナバ用トランスTsのうち一次コイル41を除いた部分(コア44と二次コイル42)を追加するだけで良くなる。
【0047】
また、本例のスイッチング電源装置1は、整流ダイオード53が、一次コイル41に直列接続されている。このようにすると、従来のスイッチング電源装置9(図11参照)のように、通電を防止するための部品(第2コンデンサC2)を設ける必要がなくなる。
【0048】
このように、本例のスイッチング電源装置1は、スナバ用トランスTsのうち一次コイル41を除いた部分(コア44と二次コイル42)を追加するだけでスナバ回路43を構成でき、第2コンデンサC2(図11参照)を設ける必要もない。そのため、上記特許文献2に記載のスイッチング電源装置9bと比較して、スナバ回路43に必要な電子部品の部品点数を低減でき、スナバ回路43を低コスト化および少部品化することができる。
【0049】
また、スナバ用トランスTsとスナバ用ダイオードDsとによってスナバ回路43を構成することにより、パルス電流発生回路5の出力電圧VDを、図7に示す波形にすることができる。そのためサージ電圧Vsを低減でき、パルス電流発生回路5に含まれる電子部品をサージ電圧Vsから保護することができる。
【0050】
また、本例のパルス電流発生回路5は、スイッチング素子51と、電源トランスTpと、整流回路52とを備える。電源トランスTpは一次巻線54と二次巻線55とを有する。そして、スイッチング素子51のオンオフ動作によって発生した交流電流Iaを一次巻線54に流し、二次巻線55に発生した二次電流を整流回路52によって整流することにより、パルス電流Ipを発生するよう構成されている。
このようにすると、スナバ回路43によってサージ電圧Vsを低減し、整流回路52を構成する整流ダイオード53をサージ電圧Vsから保護することができる。そのため、耐圧の高い整流ダイオード53を使用する必要がなくなる。すなわち、耐圧が低く製造コストが低い整流ダイオード53を用いて、整流回路52を構成することができる。これにより、スイッチング電源装置1を低コストで製造することが可能になる。
【0051】
また、一次コイル41に加わる一次電圧VL1と、コンデンサCの両端電圧VOと、一次コイル41の巻数n1と、二次コイル42の巻数n2との間に、以下の式
VL1・n2/n1>VO ・・・(2)
が成立するよう構成されている。
この場合には、サージ電圧Vsを確実に除去することができる。すなわち、数式(2)を満たすようにすると、図3、図4に示すごとく、二次コイル42にコンデンサ電圧VOよりも大きな電圧が発生しても、スナバ用ダイオードDsを通って電圧がコンデンサCに吸収される。そのため、二次電圧VL2からサージ電圧Vs’を除去することが可能になる。これにより、図6に示すごとく、一次電圧VL1からもサージ電圧Vsを除去でき、パルス電流発生回路5の出力電圧VD(一次電圧VL1とコンデンサ電圧VOとを足し合わせた電圧)からも、サージ電圧Vsを除去することが可能になる。これにより、整流回路52を構成する整流ダイオード53をサージ電圧Vsから保護することができる。
【0052】
また、図1に示すごとく、本例のスイッチング電源装置1は、車両用充電器100(車両用電力変換装置)に用いられている。車両用電力変換装置は小型化や低コスト化が特に要求されているので、本例のスイッチング電源装置1を用いることによる効果が大きい。
【0053】
以上のごとく、本発明によれば、追加する電子部品の部品点数を低減でき、製造コストを低減できるスイッチング電源装置を提供することができる。
【0054】
(実施例2)
本例は、パルス電流発生回路5を変更した例である。図8に示すごとく、本例のパルス電流発生回路5は、スイッチング素子51と、センタータップ付トランスTcと、整流回路52とを備える。センタータップ付トランスTcは一次巻線54と二次巻線55とを有する。二次巻線55には、センタータップ58が設けられている。センタータップ58はコンデンサCの低電位側の電極端子に接続している。
【0055】
整流回路52は、二次巻線55の両端にそれぞれ設けられた整流ダイオード53からなる。そして、スイッチング素子51のオンオフ動作によって発生した交流電流Iaを一次巻線54に流し、二次巻線55に生じた二次電流を整流回路52によって整流することにより、パルス電流Ipを発生するよう構成されている。
【0056】
パルス電流Ipは、スナバ用トランスTsの一次コイル41に流れる。スナバ用トランスTsの二次コイル42とスナバ用ダイオードDsは直列接続され、直列体12を構成している。この直列体12は、コンデンサCに並列接続している。また、本例では、スナバ用トランスTsとスナバ用ダイオードDsとによって、スナバ回路43が構成されている。
その他、実施例1と同様の構成を備える。
【0057】
本例の作用効果について説明する。上記構成にすると、センタータップ付トランスTcを用いて全波整流するスイッチング電源装置1に、スナバ回路43を設けることができる。スナバ回路43を設けないと、パルス電流Ipの発生に伴ってサージ電圧Vsが発生し、整流ダイオード53にサージ電圧Vsが逆バイアスとなって加わる。そのため、整流ダイオード53が破損しやすくなるが、上記スイッチング電源装置1は、スナバ回路43によってサージ電圧Vsを低減できるため、整流ダイオード53をサージ電圧Vsから保護することができる。これにより、耐圧が低く製造コストが低い整流ダイオード53を用いて整流回路52を構成することができ、スイッチング電源装置1の製造コストを下げることが可能になる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0058】
(実施例3)
本例は、スイッチング電源装置1によって降圧回路6を構成した例である。図9に示すごとく、本例の電力ライン10,11は直流電源80に接続している。パルス電流発生回路5は、正側の電力ライン10に設けられたスイッチング素子51からなる。また、一対の電力ライン10,11の間に整流ダイオード53が接続されている。整流ダイオード53には、一次コイル41の還流電流Icが流れる。整流ダイオード53は、スイッチング素子51と一次コイル41とを接続する接続点400と、負側の電力ライン11との間に接続されている。整流ダイオード53のアノード端子は、負側の電力ライン11に接続されている。また、整流ダイオード53のカソード端子は、接続点400に接続されている。
本例では、スイッチング素子51をオンオフ動作させることによりパルス電流Ipを発生している。このパルス電流Ipを一次コイル41に流すことにより、直流電源80の電圧を降圧し、直流負荷2に加えるようになっている。直流負荷2には、他の電子機器や電子部品等、任意の負荷が用いられる。
【0059】
スナバ用トランスTsの二次コイル42とスナバ用ダイオードDsは直列接続され、直列体12を構成している。この直列体12は、コンデンサCに並列接続している。また、本例では、スナバ用トランスTsとスナバ用ダイオードDsとによって、スナバ回路43が構成されている。
その他、実施例1と同様の構成を備える。
【0060】
本例の作用効果について説明する。上記構成にすると、スナバ用トランスTsの一次コイル41を、降圧回路6のチョークコイルとして使用することができる。また、スナバ回路43を設けない場合は、スイッチング素子51をオンオフ動作させた場合に大きなサージ電圧Vsが発生し、このサージ電圧Vsが整流ダイオード53に加わって破損しやすくなるが、本例はスナバ回路43を備えるため、サージ電圧Vsを低減でき、整流ダイオード53をサージ電圧Vsから保護することができる。
【0061】
すなわち、パルス電流発生回路5の出力電圧をVdとし、一次コイル41の電圧をVL1とし、コンデンサCの電圧をVOとした場合、以下の式が成立する。
Vd=VL1+VO ・・・(3)
出力電圧Vdにサージ電圧Vsが発生すると、上記(3)式が成立するため、一次電圧VL1にもサージ電圧Vsが発生する。また、サージ電圧Vsは整流ダイオード53に加わるため、整流ダイオード53が破損しやすくなる。しかしながら本例では、スナバ回路43によって、一次電圧VL1からサージ電圧Vsを除去できるため、出力電圧Vdからもサージ電圧Vsを除去できる。そのため、整流ダイオード53に大きなサージ電圧Vsが加わることを防止できる。これにより、耐圧が低く製造コストが低い整流ダイオード53を用いることができ、スイッチング電源装置1を低コストで製造することが可能となる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【符号の説明】
【0062】
1 スイッチング電源装置
2 直流負荷
10,11 電力ライン
12 直列体
13 スナバ用ダイオード
3 コンデンサ
4 スナバ用トランス
41 一次コイル
42 二次コイル(平滑リアクトル)
5 パルス電流発生回路
51 スイッチング素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電力ラインと、
該一対の電力ラインの間に接続された直流負荷と、
該直流負荷に並列接続され、該直流負荷に加わる電圧を平滑化するコンデンサと、
一次コイルおよび二次コイルを有するスナバ用トランスと、
スイッチング素子を有し、該スイッチング素子のオンオフ動作によってパルス電流を発生するパルス電流発生回路とを備え、
上記一次コイルは、上記一対の電力ラインのうち高電位側の電力ラインに、上記コンデンサに対して直列になるよう接続され、
上記二次コイルとスナバ用ダイオードとを直列接続してなる直列体が、上記コンデンサに並列接続され、上記スナバ用ダイオードのアノード端子は上記二次コイルに接続し、上記スナバ用ダイオードのカソード端子は上記コンデンサの高電位側の電極端子に接続しており、
上記パルス電流発生回路によって発生した上記パルス電流は上記一次コイルに流れ、
該一次コイルは、上記パルス電流を平滑化する平滑リアクトルであり、
上記一対の電力ラインに流れる電流を整流する整流ダイオードが上記一次コイルに直列接続されていることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチング電源装置において、上記パルス電流発生回路は、上記スイッチング素子と、電源トランスと、上記整流ダイオードによって構成された整流回路とを備え、上記電源トランスは一次巻線と二次巻線とを有し、上記スイッチング素子のオンオフ動作によって発生した交流電流を上記一次巻線に流し、上記二次巻線に発生した二次電流を上記整流回路によって整流することにより、上記パルス電流を発生するよう構成されていることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項3】
請求項1に記載のスイッチング電源装置において、上記パルス電流発生回路は、上記スイッチング素子と、センタータップ付トランスと、整流回路とを備え、上記センタータップ付トランスは一次巻線と二次巻線とを有し、該二次巻線にセンタータップが設けられ、該センタータップは上記コンデンサの低電位側の電極端子に接続しており、上記整流回路は上記二次巻線の両端にそれぞれ設けられた上記整流ダイオードからなり、上記スイッチング素子のオンオフ動作によって発生した交流電流を上記一次巻線に流し、上記二次巻線に生じた二次電流を上記整流回路によって整流することにより、上記パルス電流を発生するよう構成されていることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項4】
請求項1に記載のスイッチング電源装置において、上記一対の電力ラインは直流電源に接続しており、上記パルス電流発生回路は、上記一対の電力ラインのうち少なくとも一方の電力ラインに設けられた上記スイッチング素子からなり、上記一対の電力ラインの間に、上記一次コイルの還流電流が流れる上記整流ダイオードが設けられ、上記スイッチング素子をオンオフ動作させることにより上記パルス電流を発生し、該パルス電流を上記一次コイルに流すことにより上記直流電源の電圧を降圧する降圧回路を構成していることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項5】
請求項2または請求項3に記載のスイッチング電源装置において、上記一次コイルに加わる一次電圧VL1と、上記コンデンサの電圧VOと、上記一次コイルの巻数n1と、上記二次コイルの巻数n2との間に、以下の式
VL1・n2/n1>VO
が成立することを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置を有することを特徴とする車両用電力変換装置。
【請求項1】
一対の電力ラインと、
該一対の電力ラインの間に接続された直流負荷と、
該直流負荷に並列接続され、該直流負荷に加わる電圧を平滑化するコンデンサと、
一次コイルおよび二次コイルを有するスナバ用トランスと、
スイッチング素子を有し、該スイッチング素子のオンオフ動作によってパルス電流を発生するパルス電流発生回路とを備え、
上記一次コイルは、上記一対の電力ラインのうち高電位側の電力ラインに、上記コンデンサに対して直列になるよう接続され、
上記二次コイルとスナバ用ダイオードとを直列接続してなる直列体が、上記コンデンサに並列接続され、上記スナバ用ダイオードのアノード端子は上記二次コイルに接続し、上記スナバ用ダイオードのカソード端子は上記コンデンサの高電位側の電極端子に接続しており、
上記パルス電流発生回路によって発生した上記パルス電流は上記一次コイルに流れ、
該一次コイルは、上記パルス電流を平滑化する平滑リアクトルであり、
上記一対の電力ラインに流れる電流を整流する整流ダイオードが上記一次コイルに直列接続されていることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチング電源装置において、上記パルス電流発生回路は、上記スイッチング素子と、電源トランスと、上記整流ダイオードによって構成された整流回路とを備え、上記電源トランスは一次巻線と二次巻線とを有し、上記スイッチング素子のオンオフ動作によって発生した交流電流を上記一次巻線に流し、上記二次巻線に発生した二次電流を上記整流回路によって整流することにより、上記パルス電流を発生するよう構成されていることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項3】
請求項1に記載のスイッチング電源装置において、上記パルス電流発生回路は、上記スイッチング素子と、センタータップ付トランスと、整流回路とを備え、上記センタータップ付トランスは一次巻線と二次巻線とを有し、該二次巻線にセンタータップが設けられ、該センタータップは上記コンデンサの低電位側の電極端子に接続しており、上記整流回路は上記二次巻線の両端にそれぞれ設けられた上記整流ダイオードからなり、上記スイッチング素子のオンオフ動作によって発生した交流電流を上記一次巻線に流し、上記二次巻線に生じた二次電流を上記整流回路によって整流することにより、上記パルス電流を発生するよう構成されていることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項4】
請求項1に記載のスイッチング電源装置において、上記一対の電力ラインは直流電源に接続しており、上記パルス電流発生回路は、上記一対の電力ラインのうち少なくとも一方の電力ラインに設けられた上記スイッチング素子からなり、上記一対の電力ラインの間に、上記一次コイルの還流電流が流れる上記整流ダイオードが設けられ、上記スイッチング素子をオンオフ動作させることにより上記パルス電流を発生し、該パルス電流を上記一次コイルに流すことにより上記直流電源の電圧を降圧する降圧回路を構成していることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項5】
請求項2または請求項3に記載のスイッチング電源装置において、上記一次コイルに加わる一次電圧VL1と、上記コンデンサの電圧VOと、上記一次コイルの巻数n1と、上記二次コイルの巻数n2との間に、以下の式
VL1・n2/n1>VO
が成立することを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置を有することを特徴とする車両用電力変換装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−59199(P2013−59199A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195894(P2011−195894)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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