説明

スイッチング電源

【課題】トランスの発振音が可聴帯域となるときにも、トランスの発振音を聞こえないようにする。
【課題解決手段】スイッチングトランジスタQ1が間欠スイッチングを行うときには、一次コイルL1に流れる電流32の最大値を、誤差検出回路3の出力に対応して定まる電流の最大値より少ない電流値に制限する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、直流出力の電圧誤差に従ってスイッチングトランジスタのスイッチングを制御することにより、直流出力の電圧を安定化するスイッチング電源に係り、詳細には、スイッチングトランジスタが間欠スイッチングを行うときには、スイッチングトランジスタの電流の最大値を、誤差検出回路の出力によって定まる電流値より少ない電流値に制限するスイッチング電源に関するものである。
【0002】
【従来の技術】テレビジョン受信機等の電源部に使用されるスイッチング電源の1つに、RCC方式のスイッチング電源がある。しかし、RCC方式のスイッチング電源では、負荷が極めて軽くなったことから、一次側が供給する電力より、二次側が消費する電力が少なくなる場合、数mS〜数100μSの周期でもって、スイッチングが停止するという、間欠スイッチングが生じる。このため、トランスからは、可聴帯域の不快な発振音が発生するという不具合を生じる。
【0003】このような不具合を解消するための従来技術が、特開平7−163143号として提案されている。すなわち、この技術では、負荷への電力の供給が停止されたことを示すスタンバイ信号が送出されると、可聴範囲外の設定周期でスイッチング回路を間欠駆動する第2の発振停止指令部を設けている。従って、スイッチング回路は、第2の発振停止指令部の出力に従い、周期が強制された間欠的なスイッチング動作を行う。このため、間欠の周期は、可聴帯域外の周期となるので、トランスから生じる発振音も可聴帯域外の周波数となり、不快な発振音の発生が防止されることになる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記構成を用いた場合では、以下に示す問題が生じていた。すなわち、第2の発振停止指令部がスイッチング回路を間欠駆動するときの周期は、平滑用コンデンサと、時定数用の抵抗とからなる時定数回路によって設定される。従って、間欠駆動の周期を可聴帯域外とするためには、時定数を小さくする必要がある。一方、時定数を小さくする方法には、平滑用コンデンサの容量を小さくする方法と、抵抗値を小さくする方法との2種がある。しかし、平滑用コンデンサの容量を小さくする場合では、負荷に所定値の電流を供給するときでは、容量不足となり、リップルの多い直流出力が負荷に供給されることになる。一方、抵抗値を小さくする場合では、抵抗に流れる電流値が多くなるため、損失が増加するという問題を招く。
【0005】本発明は上記課題を解決するため創案されたものであって、請求項1記載の発明の目的は、スイッチングトランジスタが間欠スイッチングを行うときには、一次コイルの電流の最大値を、電圧誤差に対応した値より少ない値とすることにより、トランスの発振音が可聴帯域となるときにも、トランスの発振音を聞こえないものとすることのできるスイッチング電源を提供することにある。
【0006】また請求項2記載の発明の目的は、上記目的に加え、制御トランジスタの入力端子に補助制御信号を与えることによって、制御トランジスタが、スイッチングトランジスタをオフ状態に移行させるタイミングを、電圧誤差に基づくタイミングより速いタイミングとすることにより、一次コイルの電流の最大値を少なくするための制御回路を簡単化することのできるスイッチング電源を提供することにある。
【0007】また請求項3記載の発明の目的は、上記目的に加え、スイッチングトランジスタが間欠スイッチングを行うときには、補助コイルから送出される出力を、抵抗を介して、制御トランジスタの入力端子に導くことにより、制御トランジスタがオンとなるタイミングを速めるための制御回路を簡単化することのできるスイッチング電源を提供することにある。
【0008】また請求項4記載の発明の目的は、上記目的に加え、スイッチングトランジスタが間欠スイッチングを行っているかどうかを検出するための回路の構成を簡単なものとすることのできるスイッチング電源を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため請求項1記載の発明に係るスイッチング電源は、トランスに巻回された一次コイルに流れる電流をスイッチングするスイッチングトランジスタと、前記トランスに巻回された二次コイルの出力を整流平滑する整流平滑回路と、前記整流平滑回路より送出される直流出力の電圧誤差を検出する誤差検出回路とを備え、前記誤差検出回路の出力に基づいて前記スイッチングトランジスタのスイッチングを制御することにより、前記直流出力の電圧を安定化するスイッチング電源に適用し、前記スイッチングトランジスタが間欠スイッチングを行うときには、前記一次コイルに流れる電流の最大値を、前記誤差検出回路の出力に対応して定まる電流の最大値より少ない電流値に制限する構成としている。
【0010】すなわち、一次コイルに流れる電流の最大値が減少するときには、トランスを振動させようとする力が減少する。このため、トランスから発生する発振音の音量が減少する。
【0011】また請求項2記載の発明に係るスイッチング電源は、上記構成に加え、前記スイッチングトランジスタの入力端子に与えられる入力信号を、前記誤差検出回路の出力が導かれた制御トランジスタを用いて制御することにより、前記直流出力の電圧を安定化するスイッチング電源に適用し、前記間欠スイッチング時には、前記制御トランジスタの入力端子に補助制御信号を送出する補助制御回路を備え、前記制御トランジスタは、前記誤差検出回路の出力が導かれた入力端子に前記補助制御信号が与えられたときには、前記スイッチングトランジスタをオフ状態に移行させるタイミングを、前記誤差検出回路の出力に対応して定まるタイミングより速いタイミングに変える構成としている。
【0012】すなわち、制御トランジスタの入力端子に与えるレベルを、誤差検出回路の出力変化に対応して変化すると共に、誤差検出回路の出力に対応したレベルより高いレベルとすれば、制御トランジスタは、スイッチングトランジスタをオフ状態に移行させるタイミングを、誤差検出回路の出力に対応して定まるタイミングより速いタイミングに変える。従って、誤差検出回路の出力と補助制御信号とを合成(例えば加算による合成)した信号を制御トランジスタの入力端子に印加すればよい。
【0013】また請求項3記載の発明に係るスイッチング電源は、上記構成に加え、トランスには、前記スイッチングトランジスタに正帰還を与える補助コイルが巻回され、前記制御トランジスタの入力端子にはコンデンサが接続されたスイッチング電源に適用し、前記補助制御回路は、一方の端子が前記補助コイルに接続された抵抗を備えると共に、前記間欠スイッチングを行っていることを示す間欠信号が与えられたときには、前記抵抗の他方の端子から送出される出力を、前記補助制御信号として、前記制御トランジスタの入力端子に送出する構成としている。
【0014】すなわち、制御トランジスタがオンとなるタイミングを速めるための補助制御回路は、1つの抵抗と、間欠信号が与えられたとき接続を閉じるスイッチ素子とでもって構成することができる。
【0015】また請求項4記載の発明に係るスイッチング電源は、上記構成に加え、前記スイッチングトランジスタがオフとなるとき前記補助コイルに発生する電圧に基づいて前記間欠スイッチングを検出すると共に、検出結果を前記間欠信号として前記補助制御回路に送出する間欠検出回路を備えた構成としている。
【0016】すなわち、スイッチングトランジスタがオフとなるとき、補助コイルに発生する電圧は、出力電圧にのみ依存して変化する。また、間欠スイッチング時では、スイッチングが行われる期間の割合は、例えば、40%等のように、少ない割合となる。従って、スイッチングトランジスタがオフとなるとき、補助コイルに発生する電圧を平均化すれば、平均化された電圧の変化により、間欠スイッチングの生じたことが示される。
【0017】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施例の形態を、図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明に係るスイッチング電源の第1の実施形態の電気的接続を示す回路図である。
【0018】本実施形態は、RCC方式のスイッチング電源となっていて、トランス1には、スイッチングトランジスタQ1に正帰還を与える補助コイルL3が巻回されている。そして、直流出力12の電圧誤差を検出する誤差検出回路3の出力に基づいて、スイッチングトランジスタQ1のスイッチングを制御することにより、直流出力12の電圧を安定化する構成となっている。このため、スイッチングトランジスタQ1のベース(請求項記載の入力端子)に導かれる入力信号(補助コイルL3からの正帰還出力)を制御する制御トランジスタQ2を備えている。また、制御トランジスタQ2のベース(請求項記載の入力端子)には、誤差検出回路3の出力が導かれている。
【0019】ダイオードD7とコンデンサC6とからなるブロック2は、トランス1の一次コイルL1に流れる電流をスイッチングするとき、二次コイルL2から送出される出力を整流平滑する整流平滑回路となっている。また、トランジスタQ6、発光ダイオードD8、ツェナーダイオードD9、および、3つの抵抗R15〜R17からなるブロックは、直流出力12の電圧誤差を検出する誤差検出回路となっている。そして、検出した電圧誤差を、フォトトランジスタQ3を介して、制御トランジスタQ2のベースに送出する。
【0020】トランジスタQ7、ダイオードD10、および、3つの抵抗R18〜R20からなるブロック4は、負荷装置(例えばテレビ等)の動作を停止させるときには、直流出力12の電圧を、約1/3の電圧に低下させる降圧指示回路となっている。このため、降圧指示回路4は、負荷装置を制御するマイクロコンピュータからの出力13が、動作停止(待機状態)を示すLレベルとなるときには、誤差検出回路3内に設けられた分圧回路の分圧比を変更する。
【0021】トランジスタQ4、ダイオードD4、および、3つの抵抗R9〜R11からなるブロック5は、補助制御回路となっており、間欠スイッチング時には、スイッチングトランジスタQ1がオフ状態に移行するタイミングを、フォトカプラ7の出力(誤差検出回路3の出力)に対応したタイミングより速いタイミングに変える。すなわち、補助制御回路5は、間欠検出回路6から間欠信号22が与えられたときには、制御トランジスタQ2のベースに補助制御信号23を送出し、制御トランジスタQ2がオンとなるタイミングを速める。従って、制御トランジスタQ2は、スイッチングトランジスタQ1がオフに移行するタイミングを速めることになる。
【0022】トランジスタQ5、ダイオードD5,D6、コンデンサC5、および、3つの抵抗R12〜R14からなるブロックは、スイッチングトランジスタQ1がオフとなるとき、補助コイルL3に発生する電圧に基づいて、スイッチングトランジスタQ1が間欠スイッチングを行っているかどうかを検出する間欠検出回路6となっている。そして、スイッチングトランジスタQ1が間欠スイッチングを行っていることを検出したときには、間欠信号22を補助制御回路5に送出する。
【0023】上記構成からなる実施形態をより詳細に説明すると、直流入力P+と直流入力P−とは、商用電源を整流平滑することにより得られた直流源となっている。このため、直流入力P+は、一次コイルL1の一方の端子に導かれている。また、一次コイルL1の他方の端子は、スイッチングトランジスタQ1のコレクタに接続されている。また、スイッチングトランジスタQ1のエミッタは、エミッタ電流を電圧として検出するための抵抗R5を介して、直流入力P−に接続されている。
【0024】一方の端子が直流入力P+に接続された抵抗R1は、スイッチングトランジスタQ1に起動電流を供給する素子となっている。このため抵抗R1の他方の端子は、スイッチングトランジスタQ1のベースに接続されている。また、スイッチングトランジスタQ1のベースとエミッタとの間には、負荷が極めて軽くなるとき、間欠スイッチングを生じ易くさせるため、コンデンサC3と抵抗R4とからなる直列回路が接続されている。
【0025】制御トランジスタQ2は、誤差検出回路3から送出され、電圧誤差を示す出力に従ったタイミングでもって、スイッチングトランジスタQ1をオン状態からオフ状態に移行させることにより、直流出力12の電圧を安定化するための素子となっている。このため、制御トランジスタQ2のコレクタは、スイッチングトランジスタQ1のベースに接続されている。また、制御トランジスタQ2のベースには、フォトトランジスタQ3のエミッタが接続されている。
【0026】また、制御トランジスタQ2のベースと直流入力P−との間には、ベース電位の上昇を遅らせるためのコンデンサC2が接続されている。そして、コンデンサC2には、コンデンサC2の電荷を放電させるため、抵抗R6が並列に接続されている。また、電源投入時にスイッチングトランジスタQ1に流れる電流を制限するため、抵抗R5により検出された電圧が、ダイオードD2を介して、制御トランジスタQ2のベースに与えられている。また、制御トランジスタQ2のエミッタは直流入力P−に接続されている。
【0027】一方の端子が直流入力P−に接続された補助コイルL3は、スイッチングトランジスタQ1に正帰還を与えるためのコイルとなっている。このため、補助コイルL3の他方の端子は、ダイオードD1と、ベース電流を制限する抵抗R2とを介して、スイッチングトランジスタQ1のベースに導かれている。また、ダイオードD1には、スイッチングトランジスタQ1のターンオフを速めるため、コンデンサC1が並列に接続されている。また、補助コイルL3の他方の端子は、抵抗R3を介して、制御トランジスタQ2のベースに接続されている。
【0028】また、補助コイルL3の他方の端子は、コンデンサC4と抵抗R7とからなる直列回路と、抵抗R8とを介して、フォトトランジスタQ3のコレクタに接続されている。そして、抵抗R7と抵抗R8との接続点と直流入力P−との間には、コンデンサC4に蓄積された電荷を放電させるための電流経路となるダイオードD3が接続されている。
【0029】抵抗R9は、間欠スイッチングが行われるときには、制御トランジスタQ2のベースに供給される電流を増加させるための素子となっている。すなわち、制御トランジスタQ2のベースに補助制御信号23を送出する素子となっている。このため、抵抗R9の一方の端子は、補助コイルL3の他方の端子に接続されている。また、トランジスタQ4は、間欠スイッチング時には接続が閉じられるスイッチ素子となっている。このため、抵抗R9の他方の端子は、トランジスタQ4のエミッタに接続されている。そして、トランジスタQ4のコレクタは、補助制御信号23として、制御トランジスタQ2のベースに導かれている。
【0030】また、トランジスタQ4のエミッタとベースとの間には、ベース電位をエミッタ電位に引き上げるため、抵抗R10とダイオードD4とからなる直列回路が接続されている。また、トランジスタQ4のベースには、抵抗R11を介して、間欠信号22が導かれている。このため、トランジスタQ4がオンとなるときには、抵抗R9の他方の端子から送出される電流が、補助制御信号23として、制御トランジスタQ2のベースに流れることになる。
【0031】抵抗R12と抵抗R13とからなり、直流入力P+と直流入力P−との間に接続された直列回路は、直流入力P+の電圧を分圧する分圧回路となっている。そして、抵抗R12と抵抗R13との接続点は、トランジスタQ5のベースに導かれている。また、ダイオードD5は、補助コイルL3の出力を整流することにより、マイナス電圧を取り出すための素子となっている。このため、ダイオードD5のカソードは、補助コイルL3の他方の端子に接続されている。
【0032】一方、コンデンサC5は、ダイオードD5の出力を平均化するための素子となっている。このため、ダイオードD5のアノードは、抵抗R14を介して、コンデンサC5の一方の端子に接続されている。また、コンデンサC5の他方の端子は、直流入力P−に接続されている。また、抵抗R14とコンデンサC5との接続点は、トランジスタQ5のベースに接続されている。また、トランジスタQ5のエミッタは、ダイオードD6を介して、直流入力P−に接続されている。
【0033】間欠検出回路6は、上記した構成となっている。このため、トランジスタQ5のベースには、抵抗R12と抵抗R13との接続点から送出される電圧と、スイッチングトランジスタQ1のオフ時に補助コイルL3から出力され、コンデンサC5により平均化された出力との加算値が印加される。従って、トランジスタQ5のベースに印加される電圧は、補助コイルL3の他方の端子(経路21)に生じるマイナスレベルの電圧が低いときでは、プラスレベルとなり、トランジスタQ5はオンとなる。一方、経路21に生じるマイナスレベルの電圧が、マイナス方向に高いときでは、トランジスタQ5のベース電位はマイナスとなり、トランジスタQ5はオフとなる。
【0034】二次コイルL2の一方の端子には、ダイオードD7のアノードが接続され、ダイオードD7のカソードには 一方の端子が接地されたコンデンサC6の他方の端子が接続されている。また、二次コイルL2の他方の端子は接地されている。なお、整流平滑回路2から送出される直流出力12の電圧は約120Vとなっていて、テレビの水平出力回路の動作電源となっている。
【0035】トランジスタQ6は、直流出力12の電圧誤差を検出し、検出した電圧誤差に対応する電流でもって、発光ダイオードD8を駆動する素子となっている。このため、トランジスタQ6のエミッタには、ツェナーダイオードD9が発生する基準電圧が与えられている。また、トランジスタQ6のベースには、抵抗R16と抵抗R17とからなり、直流出力12の電圧を分圧する分圧回路の出力が与えられている。また、トランジスタQ6のコレクタには、発光ダイオードD8のカソードが接続され、発光ダイオードD8のアノードは、抵抗R15を介して、直流出力12に接続されている。
【0036】抵抗R18は、誤差検出回路3に設けられ、抵抗R16,R17からなる分圧回路の分圧比を変更するための素子となっている。このため、抵抗R18の一方の端子は、直流出力12に接続されている。また、抵抗R18の他方の端子は、ダイオードD10を介して、抵抗R16と抵抗R17との接続点に導かれている。また、トランジスタQ7は、分圧比を変更するときには接続が開かれ、分圧比を変更しないときには、接続が閉じられるスイッチ素子となっている。このため、トランジスタQ7のコレクタは、抵抗R18の他方の端子に接続されている。また、エミッタは接地されている。そして、トランジスタQ7のベースには、抵抗R20を介して、テレビの動作を制御するマイクロコンピュータの出力13が導かれている(抵抗R19は、トランジスタQ7のベースが開放となることを防止する)。
【0037】なお、本実施形態は、複数種の電圧の直流出力を送出する構成となっている。このため、トランス1には、その他の直流出力のための二次コイルが巻回されると共に、各二次コイルには整流平滑回路が接続されているが、これらの二次コイルと整流平滑回路とは、図示が省略されている。
【0038】図2は、補助コイルL3の他方の端子(経路21)のレベルと、トランジスタQ5のベース電位との変化を示す説明図である。また、図3は、実施形態の主要点の状態を示す説明図である。必要に応じて同図を参照しつつ、実施形態の動作を説明する。
【0039】負荷に所定の動作を行わせるとき(通常動作時)には、マイクロコンピュータの出力13はHレベルに設定される。従って、トランジスタQ7はオンとなり、トランジスタQ7のコレクタ電位は、トランジスタQ6のベース電位より低くなる。このため、抵抗R18は、トランジスタQ6のベースから切り離される。従って、トランジスタQ6のベースには、抵抗R16,R17により分圧された電圧が印加される。その結果、発光ダイオードD8は、定格値(約120V)に対する直流出力12の電圧誤差に対応した電流でもって駆動される。このとき、補助コイルL3の他方の端子から送出される電圧の変化を、図2の41によって示す。
【0040】一方、テレビの動作を待機状態とするときには、出力13はLレベルに設定される。このため、トランジスタQ7はオフになる。その結果、トランジスタQ6のベースには、抵抗R16と抵抗R18との並列回路の抵抗値と、抵抗R17の抵抗値とにより分圧された電圧が印加される。その結果、直流出力12の電圧が、定格値(約120V)の約1/3の電圧(約40V)となるように、スイッチングトランジスタQ1のスイッチングが制御される。このときでは、その他の直流出力(図示を省略)の電圧も1/3となるため、水平発振が停止し、直流出力12の負荷電流は0近傍となる。そして、直流出力12の電圧が1/3となり、負荷電流が0近傍となるときには、二次側が消費する電力より、一次側から供給される電力が多くなる。その結果、間欠スイッチングが生じる。
【0041】すなわち、負荷電流が0近傍になった結果として、発光ダイオードD8の電流が極めて多くなり、フォトトランジスタQ3の出力電流も、極めて多くなる。従って、制御トランジスタQ2のベース電流も極めて多くなるので、スイッチングの1周期を過ぎたときにも、コンデンサC2に蓄積された電荷の影響により、制御トランジスタQ2はオン状態を続ける。このため、スイッチングの1周期を過ぎたときにも、スイッチングトランジスタQ1はオン状態に移行しない。その結果、スイッチング動作が停止する。
【0042】スイッチング動作が停止すると、経路21の電圧が0Vとなり、フォトトランジスタQ3の出力電流が0となるので、制御トランジスタQ2は、短時間のうちに、オフ状態に移行する。しかし、スイッチングトランジスタQ1は、制御トランジスタQ2がオフに移行したときにも、経路21の電圧が0Vとなっているので、直ちにオン状態に移行することができない。そして、起動抵抗R1を流れる電流がコンデンサC3を充電し、スイッチングトランジスタQ1のベース電位が、スイッチングトランジスタQ1に電流を流すことが可能となるレベルまで上昇したとき、スイッチングトランジスタQ1は、オフ状態からオン状態に移行し、スイッチングが再開される。そして、複数回のスイッチングが行われたときには、上記と同様に、制御トランジスタQ2がオン状態を続けることになり、スイッチングが停止する。つまり、間欠スイッチングとなる。
【0043】上記した間欠スイッチング時には、直流出力12の電圧は、定格値の1/3に安定化されている。また、経路21に生じるマイナスレベルの電圧は、直流出力12の電圧に対応する。このため、補助コイルL3の他方の端子に生じる電圧の変化は、42に示すような変化とする。すなわち、間欠スイッチング時の経路21のマイナスレベルは、通常動作時のマイナスレベルの1/3となる。従って、ダイオードD5とコンデンサC5とからなる回路の出力電圧は、マイナス値が1/3以下の値になる(スイッチング時の電圧が1/3であり、かつ、スイッチング停止時では0Vとなる。従って平均値は1/3より少ない)。一方、抵抗R12,R13の分圧電圧は、通常動作時と待機状態時とで変化しない。従って、トランジスタQ5のベース電位は、通常動作時では、43に示すようにマイナスレベルとなるので、トランジスタQ5はオフとなる。一方、待機状態時では、ベース電位は、44に示すようにプラスレベルとなるので、トランジスタQ5はオンとなる。
【0044】トランジスタQ5がオン状態となるときでは、トランジスタQ4がオンとなる。このため、制御トランジスタQ2のベースに、経路23を介して、抵抗R9からの電流が流れる。その結果、制御トランジスタQ2のベース電位の上昇速度が速くなる。従って、制御トランジスタQ2がオフ状態からオン状態に移行するタイミングは、抵抗R9の経路を設けない場合のタイミング(誤差検出回路3の出力に基づくタイミングであり、T2により示す)に比したときには、速いタイミング(図3R>3のT1により示す)となる。
【0045】一方、スイッチングトランジスタQ1は、制御トランジスタQ2がオフからオンに移行したとき、オン状態からオフ状態に移行する。従って、スイッチングトランジスタQ1は、抵抗R9の経路が形成される場合では、タイミングT1において、オン状態からオフ状態に移行する。一方、一次コイルL1に流れる電流は、一次的な増加を示す。従って、タイミングT1においてスイッチングトランジスタQ1がオフ状態に移行する場合、一次コイルL1に流れる電流の最大値i1は、タイミングT2においてオフ状態に移行する場合の最大値i2に比すると、減少した値となる。
【0046】図4の32bは、一次コイルL1の電流の最大値がi1となるときの、一次コイルL1の電流変化を概略的に示している。すなわち、補助制御信号23が送出されないときの間欠スイッチング時の電流変化(最大値がi2となるときの電流変化)32aと比較すると、電流の最大値が制限されている。また、間欠の1周期のそれぞれにおいて、スイッチングの回数が増加している。
【0047】一次コイルL1に流れる電流の最大値が減少するときには、トランス1を振動させようとする力が減少するので、トランス1から発生する発振音の音量が減少する。従って、タイミングT1においてスイッチングトランジスタQ1がオフ状態に移行する場合の音量は、タイミングT2においてスイッチングトランジスタQ1がオフ状態に移行する場合の音量に比したときには、抑制された音量となる。従って、通常の使用状態における距離から聴く場合では、トランス1から発生する発振音は、聞き取ることが困難な音量となる。つまり、トランス1からの発振音が聞こえなくなる。
【0048】以下に、本発明に係るスイッチング電源の第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態は、図1に示す第1の実施形態から、降圧指示回路4を省略した構成となっている。また、間欠検出回路の構成を、図5に示す構成に変更している。なお、その他の部分については、回路図として示すときには、第1の実施形態の構成と第2の実施形態の構成とは、同一となっている。従って、本実施形態は、通常動作時と待機状態時との双方において、直流出力12の電圧が同一となるように制御される。
【0049】以下に、第2の実施形態の間欠検出回路の構成について説明するが、第1の実施形態の間欠検出回路6との対応関係を分かりやすいものとするため、構成または機能が同一となる素子については、図1における符号と同一符号を付与している。
【0050】本実施形態の間欠検出回路の構成は、図1に示す間欠検出回路6に、ツェナーダイオードD14を追加した構成となっている。すなわち、抵抗R14とコンデンサC5との接続点27には、ツェナーダイオードD14のアノードが接続されている。また、抵抗R12と抵抗R13との接続点28には、ツェナーダイオードD14のカソードが接続されている。従って、ツェナーダイオードD14にツェナー電流が流れる場合では、接続点28の電圧は、接続点27の電圧に対し、ツェナー電圧分だけ高い電圧に維持される。
【0051】図6は、本実施形態の主要点のレベル変化を示す説明図である。必要に応じて同図を参照しつつ、実施形態の動作を説明する。
【0052】待機状態となり、直流出力12の電流が0近傍となるときには、既に述べた理由と同一の理由により、スイッチングトランジスタQ1は、間欠スイッチングを行う。一方、接続点27の電圧は、ダイオードD5のカソードの電圧を平均化した電圧となる。このため、接続点27の電圧は、経路21がマイナスレベルになる時間的比率が変化すると、レベルが変化する。一方、連続的なスイッチング動作が行われているときには、経路21がマイナスレベルとなる時間的比率が大きく、間欠スイッチングとなるときには、経路21がマイナスレベルとなる時間的比率が小さい。従って、通常動作時の連続的なスイッチング動作が行われているときには、接続点27の電圧は、51に示すように、マイナスレベルの大きい電圧となるが、間欠スイッチングとなるときには、接続点27の電圧は、52に示すように、マイナスレベルの小さい電圧となる。
【0053】接続点28の電圧は、接続点27の電圧を、ツェナーダイオードD14のツェナー電圧分だけ、プラス側にシフトさせた電圧となる。従って、連続的なスイッチング動作時では、接続点28の電圧は、接続点27の電圧(51により示す)を、ツェナー電圧分だけシフトさせた電圧(破線53により示す)となる。また、間欠スイッチング時では、接続点28の電圧は、接続点27の電圧(52により示す)を、ツェナー電圧分だけシフトさせた電圧(破線54により示す)となる。
【0054】破線53により示す電圧は、マイナスレベルの電圧となっている。従って、トランジスタQ5はオフに設定される。従って、トランジスタQ4はオフとなるので、補助制御信号23は送出されない。しかし、破線54により示す電圧は、0.6Vを越える電圧となっている。従って、トランジスタQ5はオンに設定される。従って、トランジスタQ4がオンとなるので、補助制御信号23が送出されることになる。
【0055】すなわち、連続的なスイッチング時では、補助制御信号23は送出されず、間欠スイッチングが生じたときにのみ、補助制御信号23が送出されることになる。従って、補助制御信号23が送出される場合、制御トランジスタQ2がオフからオンに移行するタイミングは、誤差検出回路3の出力に基づくタイミングT2より速いタイミングT1となる。このため、一次コイルL1に流れる電流の最大値はi1となり、誤差検出回路3の出力に基づく最大値i2より減少する。そして、一次コイルL1に流れる電流の最大値が減少するときには、トランス1を振動させようとする力が減少するので、トランス1から発生する発振音の音量が減少する。その結果、トランス1からの発振音は聞こえなくなる。
【0056】以上説明したように、第2の実施形態を用いる場合では、補助コイルL3の他方の端子に発生する電圧を平均化した値が、連続的なスイッチング時と間欠スイッチング時とで、変化幅が狭くなるときにも、トランジスタQ5のオンオフを制御することが可能となっている。
【0057】なお、本発明は上記実施形態に限定されず、トランジスタQ4のオンオフの制御については、間欠検出回路6から送出される間欠信号22によって行う構成とした場合について説明したが、その他の構成として、例えば、負荷装置を制御するマイクロコンピュータの出力を、フォトカプラ等の絶縁素子を介して、トランジスタQ4のベースに導くことにより、マイクロコンピュータを用いて、トランジスタQ4のオンオフを制御する構成、等とすることが可能である。
【0058】
【発明の効果】請求項1記載の発明に係るスイッチング電源は、スイッチングトランジスタが間欠スイッチングを行うときには、一次コイルに流れる電流の最大値を、誤差検出回路の出力に対応して定まる電流の最大値より少ない電流値に制限する構成としている。このため、間欠スイッチング時には、一次コイルに流れる電流の最大値が減少するので、トランスを振動させようとする力が減少する。その結果、トランスから発生する発振音の音量が減少するので、トランスの発振音が可聴帯域となるときにも、トランスの発振音を聞こえないものとすることが可能になっている。
【0059】また請求項2記載の発明に係るスイッチング電源は、間欠スイッチング時には、制御トランジスタの入力端子に補助制御信号を送出する補助制御回路を備え、前記制御トランジスタは、前記誤差検出回路の出力が導かれた入力端子に前記補助制御信号が与えられたときには、前記スイッチングトランジスタをオフ状態に移行させるタイミングを、前記誤差検出回路の出力に対応して定まるタイミングより速いタイミングに変える構成としている。すなわち、制御トランジスタの入力端子に与えるレベルを、誤差検出回路の出力変化に対応して変化すると共に、誤差検出回路の出力に対応したレベルより高いレベルとすれば、制御トランジスタは、スイッチングトランジスタをオフ状態に移行させるタイミングを、誤差検出回路の出力に対応して定まるタイミングより速いタイミングに変える。従って、誤差検出回路の出力と補助制御信号とを合成した信号を制御トランジスタの入力端子に印加すればよいので、一次コイルの電流の最大値を少なくするための制御回路を簡単化することが可能になっている。
【0060】また請求項3記載の発明に係るスイッチング電源は、前記制御トランジスタの入力端子にはコンデンサが接続されたスイッチング電源に適用し、前記補助制御回路は、一方の端子が補助コイルに接続された抵抗を備えると共に、前記間欠スイッチングを行っていることを示す間欠信号が与えられたときには、前記抵抗の他方の端子から送出される出力を、前記補助制御信号として、前記制御トランジスタの入力端子に送出する構成としている。従って、補助制御回路は、1つの抵抗と、間欠信号が与えられたとき接続を閉じるスイッチ素子とでもって構成することができるので、制御トランジスタがオンとなるタイミングを速めるための制御回路を簡単化することが可能になっている。
【0061】また請求項4記載の発明に係るスイッチング電源は、前記スイッチングトランジスタがオフとなるとき前記補助コイルに発生する電圧に基づいて前記間欠スイッチングを検出すると共に、検出結果を前記間欠信号として前記補助制御回路に送出する間欠検出回路を備えた構成としている。すなわち、スイッチングトランジスタがオフとなるとき、補助コイルに発生する電圧を平均化すれば、平均化された電圧の変化により、間欠スイッチングの生じたことが示される。このため、スイッチングトランジスタが間欠スイッチングを行っているかどうかを検出する検出回路の構成を簡単なものとすることが可能になっている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るスイッチング電源の第1の実施形態の電気的接続を示す回路図である。
【図2】補助コイルの出力レベルと接続点24のレベルとの変化を示す説明図である。
【図3】主要点の状態を示す説明図である。
【図4】間欠スイッチング時の一次コイルの電流変化を示す説明図である。
【図5】第2の実施形態の間欠検出回路の電気的接続を示す回路図である。
【図6】補助コイルの出力および接続点27,28のレベル変化を示す説明図である。
【符号の説明】
2 整流平滑回路
3 誤差検出回路
4 降圧指示回路
5 補助制御回路
6 間欠検出回路
12 直流出力
22 間欠信号
23 補助制御信号
i1 補助制御信号が送出されるときの一次コイルの電流の最大値
i2 補助制御信号が送出されないときの一次コイルの電流の最大値
L1 一次コイル
L2 二次コイル
L3 補助コイル
Q1 スイッチングトランジスタ
Q2 制御トランジスタ
T1 補助制御信号によって速められたタイミング
T2 誤差検出回路の出力により定まるタイミング

【特許請求の範囲】
【請求項1】 トランスに巻回された一次コイルに流れる電流をスイッチングするスイッチングトランジスタと、前記トランスに巻回された二次コイルの出力を整流平滑する整流平滑回路と、前記整流平滑回路より送出される直流出力の電圧誤差を検出する誤差検出回路とを備え、前記誤差検出回路の出力に基づいて前記スイッチングトランジスタのスイッチングを制御することにより、前記直流出力の電圧を安定化するスイッチング電源において、前記スイッチングトランジスタが間欠スイッチングを行うときには、前記一次コイルに流れる電流の最大値を、前記誤差検出回路の出力に対応して定まる電流の最大値より少ない電流値に制限することを特徴とするスイッチング電源。
【請求項2】 前記スイッチングトランジスタの入力端子に与えられる入力信号を、前記誤差検出回路の出力が導かれた制御トランジスタを用いて制御することにより、前記直流出力の電圧を安定化するスイッチング電源において、前記間欠スイッチング時には、前記制御トランジスタの入力端子に補助制御信号を送出する補助制御回路を備え、前記制御トランジスタは、前記誤差検出回路の出力が導かれた入力端子に前記補助制御信号が与えられたときには、前記スイッチングトランジスタをオフ状態に移行させるタイミングを、前記誤差検出回路の出力に対応して定まるタイミングより速いタイミングに変えることを特徴とする請求項1記載のスイッチング電源。
【請求項3】 前記トランスには、前記スイッチングトランジスタに正帰還を与える補助コイルが巻回され、前記制御トランジスタの入力端子にはコンデンサが接続されたスイッチング電源において、前記補助制御回路は、一方の端子が前記補助コイルに接続された抵抗を備えると共に、前記間欠スイッチングを行っていることを示す間欠信号が与えられたときには、前記抵抗の他方の端子から送出される出力を、前記補助制御信号として、前記制御トランジスタの入力端子に送出することを特徴とする請求項2記載のスイッチング電源。
【請求項4】 前記スイッチングトランジスタがオフとなるとき前記補助コイルに発生する電圧に基づいて前記間欠スイッチングを検出すると共に、検出結果を前記間欠信号として前記補助制御回路に送出する間欠検出回路を備えたことを特徴とする請求項3記載のスイッチング電源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2000−217352(P2000−217352A)
【公開日】平成12年8月4日(2000.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−10955
【出願日】平成11年1月19日(1999.1.19)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】