説明

スイッチング電源

【課題】パルス負荷に対して、必要なパルスのみに大きな電力を供給することができ、しかも、簡易な構成により、自由にスイッチング素子のON幅を決定できる。
【解決手段】商用電源を整流する整流回路と、整流回路の出力をトランスの一次コイルに接続し、スイッチング素子を駆動してトランスの二次コイルから直流電力を出力するスイッチング電源であって、スイッチング素子の駆動を制御する制御回路を備え、制御回路が、スイッチング素子のON時間幅を電圧値により制御する制御端子を有し、パルス負荷に対して、パルス幅に応じた時間だけ時定数を有するコンデンサを含む時定数回路を備えるとともに、制御端子の電圧によりコンデンサの充放電を行い、コンデンサの端子電圧が所定の閾値を超えたときに、制御端子電圧を低くして、スイッチング素子のON時間幅を狭くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源に関し、特に、フライバックコンバータ方式のスイッチング電源において、モータ起動時等に発生するパルス負荷に対して、必要なパルスのみに大きな電力を供給できるスイッチング電源に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータ用のスイッチング電源やオーディオアンプのスイッチング電源では、必要とする電流のピークが平均負荷に対して、倍以上と高く、必要なピーク電流を常に供給できるスイッチング電源の性能を確保するためには、電源の大型化とコストアップが避けられないという問題があった。
【0003】
上記の問題に対して、特許文献1に記載の技術では、オーディオアンプのスイッチング電源に関して、図6に示すように、以下の技術を開示している。
【0004】
図6に示すように、特許文献1に記載のオーディオアンプ用スイッチング電源は、入力端子Vinと出力端子Voutの間に一次巻線Pと二次巻線Sとを有したトランスT1と、該トランスT1の一次巻線Pに接続したスイッチング素子Q1と、該スイッチング素子Q1に接続した電流検出回路2とドライブ回路3と、該ドライブ回路3に接続したPWMコンパレータ4と、該PWMコンパレータ4に接続した発振器5とエラーアンプ6とを備え、前記電流検出回路2と前記エラーアンプ6との間にタイマー回路1aと過電流検出回路1bと基準電圧可変回路1cとを接続した過電流保護回路1を備えている。
【0005】
過電流保護回路1は、オーディオアンプ用スイッチング電源の入力端子Vinと出力端子Voutの間にトランスT1を設け、トランスT1は一次巻線Pと二次巻線Sを有しているものであり、一次巻線Pは一方を入力端子Vinに接続すると共に他方は後述するスイッチング素子Q1と接続しており、一対の入力端子Vinの間にはコンデンサC1を設け、出力端子Voutの片方はダイオードD1と平滑コイルL1とを直列させて二次巻線Sとに接続させると共に、他方は二次巻線Sに接続させており、更に、夫々の入力端子Voutの間にはダイオードD2とコンデンサC2とを並列に接続されている。
【0006】
そして、スイッチング素子Q1はトランスT1の一次巻線Pと接続すると共に、後述する電流検出回路2とドライブ回路3に接続されている。
【0007】
次に、ドライブ回路3の出力はスイッチング素子Q1と接続され、ドライブ回路3の入力は後述するPWMコンパレータ4の出力に接続させている。
【0008】
次いで、PWMコンパレータ4は出力をドライブ回路3の入力に接続させると共に、PWMコンパレータ4の反転入力を発振器5に接続させており、PWMコンパレータ4の非反転入力は後述するエラーアンプ6の出力に接続させており、発振器5から出力される三角波とエラーアンプ6から出力される電圧を比較して、ドライブ回路3に出力している。
【0009】
さらに、エラーアンプ6は、過電流保護用のもので、エラーアンプ6の出力をPWMコンパレータ4の非反転入力と接続させると共に、エラーアンプ6の反転入力は後述する過電流保護回路1の基準電圧可変回路1cに接続されており、エラーアンプ6の非反転入力は電流検出回路2と接続させると共に、エラーアンプ6と電流検出回路2の間に分岐点を設けて後述する過電流保護回路1のタイマー回路1aと接続させている。そして、出カ電圧と後述する過電流保護回路1の基準電圧可変回路1cからの電圧との差を増幅してPWMコンパレータ4に供給するものである。
【0010】
さらに、過電流保護回路1は、電流検出回路2とエラーアンプ6との間に設けられ、電流検出回路2の出力にエラーアンプ6の非反転入力が接続され、電流検出回路2の出力とエラーアンプ6の非反転入力との間に分岐点を設けてタイマー回路1aの入力と接続され、エラーアンプ6の反転入力は基準電圧可変回路1cに接続されており、過電流保護回路1はタイマー回路1aと過電流検出回路1bと基準電圧可変回路1cとを接続されている。
【0011】
次に、タイマー回路1aは入力に電流検出回路2とエラーアンプ6の非反転入力とが接続され、出力に後述する過電流検出回路1bに接続させているもので、電流検出回路2の働きで、電流から変換された電圧により一定時間をかけて充電された電圧を過電流検出回路1bに出力するものである。
【0012】
次いで、過電流検出回路1bは入力にタイマー回路1aが接続され、出力に後述する基準電圧可変回路1cに接続させているもので、タイマー回路1aより出力された電圧が設定された検出閾値以上の値に成った場合に後述する基準電圧可変回路1cに基準を切り換える信号を出力するものである。
【0013】
さらに、基準電圧可変回路1cは入力に過電流検出回路1bが接続され、出力に過電流保護用のエラーアンプ6の反転入力に接続され、過電流検出回路1bからの信号により、基準電圧を低く可変することにより、過電流保護の設定値を低く設定変更するものである(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−261141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記のスイッチング電源では、基準電圧可変回路1cの切り替え回路が作動して、過電流保護の設定値を低く設定変更するものであるが、これと同時に、スイッチQ1の電流が小さくなり、電流検出回路の出力電圧が低下することにより、基準電圧可変回路1cの切り替え回路の動作を解除するように働き、再度、繰り返しの動作が発生するため、タイマー回路1a及び過電流回路1cの動作の設定が非常に困難であるという問題がある。
【0015】
また、スイッチング素子Q1のON幅制御が、PWMコンパレータ回路により、予め決められているため、基準電圧可変回路1cを追加するためには、PWMコンパレータ回路自体を変更する必要があるという問題があった。
【0016】
そこで、本発明は、上述の課題を鑑みてなされたものであり、パルス負荷に対して、必要なパルスのみに大きな電力を供給することができ、しかも、簡易な構成により、パルス負荷に対する制御条件を設定できるスイッチング電源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の課題を解決するために、本発明は、以下の事項を提案している。
【0018】
(1)本発明は、商用電源を整流する整流回路(例えば、図1の整流回路10に相当)と、該整流回路の出力をトランスの一次コイル(例えば、図1のNpに相当)に接続し、スイッチング素子(例えば、図1のスイッチングトランジスタQ1に相当)を駆動して前記トランスの二次コイル(例えば、図1のNsに相当)から直流電力を出力するスイッチング電源であって、前記スイッチング素子の駆動を制御する制御回路(例えば、図1の制御回路20に相当)を備え、該制御回路が、前記スイッチング素子のオン時間幅を電圧値により制御するフィードバック制御端子(例えば、図1のF/B端子に相当)を有し、パルス負荷に対して、前記フィードバック制御端子にかかる電圧値およびパルス幅を検出するためのコンデンサを含む時定数回路(例えば、図1のコンデンサCt1に相当)を備えるとともに、該フィードバック制御端子の電圧によりコンデンサの充放電を行い、該コンデンサの端子電圧が所定の閾値を超えたときに、前記フィードバック制御端子電圧を低くして、前記スイッチング素子のオン時間幅を狭くする過負荷保護回路(例えば、図1の過負荷保護回路30に相当)を備えたことを特徴とするスイッチング電源を提案している。
【0019】
この発明によれば、スイッチング素子の駆動を制御する制御回路が、スイッチング素子のオン時間幅を電圧値により制御するフィードバック制御端子を有し、パルス負荷に対して、フィードバック制御端子にかかる電圧値およびパルス幅を検出するためのコンデンサを含む時定数回路を備え、フィードバック制御端子の電圧によりコンデンサの充放電を行い、コンデンサの端子電圧が所定の閾値を超えたときに、過負荷保護回路が、フィードバック制御端子電圧を低くして、スイッチング素子のオン時間幅を狭くする。したがって、モータ起動時のパルス負荷のように、瞬時に大きな電力を必要とするパルス負荷には、時定数回路の設定により、必要な電力を供給する。また、出力短絡や過負荷状態が連続するような出力電力が大きい場合には、フィードバック制御端子の電圧が高く制御されるため、コンデンサがすばやく充電され、短時間で、過負荷保護回路が作動して、出力電力を低下させる。
【0020】
(2)本発明は、(1)のスイッチング電源について、前記フィードバック制御端子が、定電流源(例えば、図2の定電流源に相当)に接続されるとともに、前記過負荷保護回路に接続され、前記過負荷保護回路により、前記フィードバック端子から吸い込む電流を変化させて、前記フィードバック制御端子の電圧を変動させ、この生じた電圧によって、前記スイッチング素子のオン時間幅を可変することを特徴とするスイッチング電源を提案している。
【0021】
この発明によれば、フィードバック制御端子が、電流源に接続されるとともに、過負荷保護回路に接続され、過負荷保護回路により、フィードバック端子から吸い込む電流を変化させて、フィードバック制御端子の電圧を変動させ、この生じた電圧によって、スイッチング素子のオン時間幅を可変する。したがって、過負荷保護回路が過負荷状態を検出して、適切にフィードバック端子から吸い込む電流を変化させることにより、スイッチング素子のオン時間幅を適切にコントロールすることができる。
【0022】
(3)本発明は、(1)または(2)のスイッチング電源について、前記過負荷保護回路が、前記フィードバック制御端子電圧と基準電圧とを比較する比較器(例えば、図1のコンパレータIC1に相当)を備え、前記時定数回路により設定した時間が経過したときに、前記比較器がスイッチを動作させて、前記フィードバック制御端子から吸い込む電流を変化させることにより、前記スイッチング素子のオン時間幅を狭くすることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源を提案している。
【0023】
この発明によれば、フィードバック制御端子電圧と基準電圧とを比較する比較器を備え、時定数回路により設定した時間が経過したときに、比較器がスイッチを動作させて、フィードバック制御端子から吸い込む電流を変化させることにより、スイッチング素子のオン時間幅を狭くする。したがって、時定数回路により設定した時間により、所望のパルスを通過させるとともに、それ以降は、スイッチング素子のオン時間幅を狭くして、出力電力を制限することにより、電源の安全性を確保することができる。
【0024】
(4)本発明は、(1)または(2)のスイッチング電源において、前記過負荷保護回路が、前記フィードバック制御端子電圧と基準電圧とを比較するシャントレギュレータ(例えば、図5のIC11に相当)を備え、前記時定数回路により設定した時間が経過したときに、前記シャントレギュレータがスイッチを動作させて、前記フィードバック制御端子から吸い込む電流を変化させることにより、前記フィードバック制御端子電圧を低下させて、前記スイッチング素子のオン時間幅を狭くすることを特徴とするスイッチング電源を提案している。
【0025】
この発明によれば、フィードバック制御端子電圧と基準電圧とを比較するシャントレギュレータを備え、時定数回路により設定した時間が経過したときに、シャントレギュレータがスイッチを動作させて、フィードバック制御端子から吸い込む電流を変化させることにより、フィードバック制御端子電圧を低下させて、スイッチング素子のオン時間幅を狭くする。したがって、時定数回路により設定した時間により、所望のパルスを通過させるとともに、それ以降は、スイッチング素子のオン時間幅を狭くして、出力電力を制限することにより、電源の安全性を確保することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、負荷異常による過電流状態であっても、時定数回路において設定した時間内で出力電流が制限されるため、高い安全性を確保できるという効果がある。また、時定数回路においてパルス負荷電流が流れている期間に対し、最適にパルス供給可能期間(ピーク電力が供給可能な時間)を設定することにより、電流を供給し続けた場合に比べて、出力リップル電圧幅を同じレベルに保ちつつ、実効電流の低減が可能となるため、損失が削減されるという効果がある。
【0027】
さらに、コンデンサを含む時定数回路で、時間を設定するとともに、フィードバック制御端子の電圧値の状態により、パルス供給可能期間が制御されるため、簡単な構成で、自由度の高い制御を行うことができるという効果がある。例えば、出力ピーク電力が比較的小さいパルス負荷の場合には、パルス供給可能期間を広くし、出力ピーク電力が大きなパルス負荷の場合には、パルス供給可能期間を狭くするといったように、負荷電力値によりパルス供給可能期間が自動で制御され、スイッチング電源の保護を適切に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。 なお、本実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、本実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0029】
<第1の実施形態>
以下、図1から図4を用いて、本発明に係る第1の実施形態について説明する。
【0030】
<スイッチング電源の構成>
本実施形態に係るスイッチング電源は、主として、図1に示すように、整流回路10と、チョークコイルNpおよび制御巻線Ncとからなる一次巻線と、二次巻線Nsと、制御回路20と、過負荷保護回路30と、出力平滑回路40と、出力電圧検出回路50と、スイッチングトランジスタQ1と、電流制限抵抗R1と、フォトカプラPH1とから構成されている。
【0031】
整流回路10は、商用電源の交流を全波整流して得られる脈流を一次巻線のチョークコイルNpに供給する。一次巻線のチョークコイルNpは、スイッチングトランジスタQ1がONの場合に、Np端子間に印加される電圧により、電磁エネルギーを蓄積し、スイッチングトランジスタQ1がOFFの場合に、蓄積した電磁エネルギーを負荷に供給する。
【0032】
制御巻線Ncは、チョークコイルNpを流れる電流に対応した信号を制御回路20のZ/C端子に供給する。この信号は、制御回路30におけるスイッチングトランジスタQ1をONするためのトリガ信号となる。二次巻線Nsの一端は、整流ダイオードD2のアノードに接続され、この整流ダイオードD2が平滑コンデンサC4に接続され、出力電圧となる。
【0033】
制御回路20は、Z/C端子およびF/B端子に入力される信号により、スイッチングトランジスタQ1のONタイミングとON時間幅とを制御する。具体的には、Z/C端子には、ONタイミング調整抵抗R2を介して、制御巻線Ncが接続されている。そして、Z/C端子に「Hi」から「Low」に遷移するトリガ信号を入力すると、DR端子からスイッチングトランジスタQ1のゲートにON信号を出力し、スイッチングトランジスタQ1をONする。
【0034】
また、F/B端子には、フォトカプラPH1の一部をなすフォトトランジスタが接続され、出力電圧検出回路50に設けられた発光ダイオードから射出される光を受光して、スイッチングトランジスタQ1のON時間幅を制御する。なお、本実施形態では、スイッチングトランジスタQ1が、MOSFETにより構成されているが、IGBTFET(Insulated Gate Bipolar Transistor)やバイポーラトランジスタ等でも構成することができる。
【0035】
過負荷保護回路30は、F/B端子の電圧で抵抗Rt1、コンデンサCt1からなる時定数回路のコンデンサCt1を充放電し、コンデンサCt1の端子電圧を基準電圧Vrefと比較し、時定数回路における所定の設定時間の経過後、比較結果に応じて、制御回路20のF/B端子電圧を可変する。なお、詳細な構成に関しては、後述する。また、本実施形態では、コンデンサCt1に供給する電流を設定するために、抵抗Rt1を例示したが、これに限らず、定電流源やツェナーダイオード等を用いてもよい。
【0036】
出力平滑回路40は、二次巻線Nsから供給される電圧波形を平滑化して出力電圧を得る。出力電圧検出回路50は、出力電圧を検出するための抵抗R3、R4の分圧値を基準電圧と比較して、その比較結果に応じて、フォトカプラPH1の一部をなす発光ダイオードを点灯させる。発光ダイオードから射出される光は、制御回路20のF/B端子に接続されたフォトトランジスタにおいて受光され、スイッチングトランジスタQ1のON時間幅を制御する。
【0037】
また、スイッチングトランジスタQ1には、ソースに電流検出抵抗R1が接続されるとともに、並列にダンパコンデンサC1が接続されている。
【0038】
<スイッチング電源の動作>
本実施形態に係るスイッチング電源はRCC方式を基本回路としているため、スイッチングトランジスタQ1がONすると、チョークコイルNpにより電磁エネルギーが蓄積される。そして、F/B端子により設定された時間に達し、スイッチングトランジスタQ1がOFFすると、チョークコイルNpにより蓄えられた電磁エネルギーが出力平滑回路40を経て出力に供給される。そして、チョークコイルNpにより蓄えられた電磁エネルギーが、すべて供給されるとダイオードD2の導通がなくなり、二次巻線Nsの電流がゼロになると、制御巻線Ncに発生する電圧も正から負へと反転する。
【0039】
これにより、制御回路20のDR端子から、スイッチングトランジスタQ1へON信号が出力され、スイッチングトランジスタQ1がONする。すなわち、チョークコイルNpから出力する電磁エネルギーが小さい場合にはON期間、OFF期間とも短く(発振周波数が高く)、出力する電磁エネルギーが大きい場合は周期が長く(発振周波数が低く)なるよう動作する。
【0040】
<過負荷保護回路の構成>
本実施形態に係る過負荷保護回路30は、図1に示すように、F/B端子に接続されたR5、R6と、F/B端子に接続され、時定数回路を形成する抵抗Rt1、コンデンサCt1と、プラス端子がコンデンサCt1に接続され、マイナス端子に基準電圧が接続されたコンパレータIC1と、抵抗R7を介して、コンパレータIC1の出力がベースに接続され、コレクタが抵抗R5に接続されたスイッチングトランジスタQ2とから構成されている。なお、本実施形態では、コンデンサCt1に供給する電流を設定するために、抵抗Rt1を例示したが、これに限らず、定電流源やツェナーダイオード等を用いてもよい。
【0041】
<F/B端子部の構成および動作>
過負荷保護回路の動作を説明する前に、F/B端子部の構成および動作について、図2および図3を用いて説明する。
【0042】
F/B端子部は、図2に示すように、定電流源と最大ON幅を設定するためのR6とに接続されて構成されている。また、F/B端子部には、フォトトランジスタPH1が接続されている。フォトトランジスタPH1は、出力電圧検出回路50内に設けられたフォトダイオードとともに、フォトカプラを形成している。
【0043】
出力電圧検出回路50内に設けられたフォトダイオードは、出力電圧が所定の閾値を超えたときに、その電圧値に応じた光量で点灯する。フォトトランジスタPH1は、フォトダイオードからの光を受光してONし、受光量に応じた電流を定電流源から引き抜くように動作する。これにより、F/B端子の電圧は低下する。つまり、F/B端子電圧は、フォトトランジスタPH1がOFFのとき、定電流源からの電圧値とR6の抵抗で決まる定電圧を維持し、フォトトランジスタPH1がONすると、その受光量に応じた電圧だけ低下して変動する。
【0044】
また、F/B端子電圧(VFB)とスイッチングトランジスタQ1のON幅とは、図3に示されるような関係がある。つまり、F/B端子電圧(VFB)が、一定の電圧値から低下すると、その電圧に比例して、スイッチングトランジスタQ1のON幅を狭くする。
【0045】
<過負荷保護回路の動作>
F/B端子の電圧は、抵抗Rt1、コンデンサCt1とからなる時定数回路に供給される。ここで、時定数回路の時定数は、モータ起動時のパルス負荷のように、瞬時に大きな電力を必要とするパルスに必要な電力を供給できるように設定される。F/B端子の電圧は、上記のように、フォトトランジスタPH1の受光量に応じて変動するため、コンデンサCt1は、この電圧により充放電される。
【0046】
そして、コンパレータIC2により、コンデンサCt1の端子電圧と基準電圧とが比較され、時定数回路における所定の設定時間の経過後、コンデンサCt1の端子電圧が基準電圧よりも高くなると、スイッチングトランジスタQ2のベースに駆動信号が与えられ、F/B端子からQ2のコレクタに電流が流れる。これにより、F/B端子の電圧が低下して、スイッチングトランジスタQ1のON幅を制御する。
【0047】
<出力特性>
図4は、縦軸が出力電圧、横軸を出力電流としてプロットした出力特性例で、実線は、過負荷保護回路が動作していない状態の出力特性を示している。
【0048】
過負荷状態が継続して、過負荷保護回路が動作する場合には、上述のように、F/B端子のインピーダンスが低くなることにより、F/B端子の電圧が低下するため、図4の点線部のような出力特性となる。したがって、過負荷が継続するような異常状態が発生した場合は、出力電力を制限して、安全性を高めることができる。
【0049】
以上、説明したように、本実施形態によれば、過負荷状態が継続して、過負荷保護回路が動作する場合には、上述のように、F/B端子のインピーダンスが低くなることにより、F/B端子の電圧が低下するため、図4の点線部のような出力特性となる。したがって、過負荷が継続するような異常状態が発生した場合は、出力電力を制限して、安全性を高めることができる。
【0050】
<第2の実施形態>
本実施形態に係るスイッチング電源について、図5を用いて、説明する。
【0051】
本実施形態に係るスイッチング電源は、第1の実施形態に係るスイッチング電源に対して、過負荷保護回路31の構成が異なっている。具体的には、F/B端子に接続されたR11、R12と、同様に、F/B端子に接続され、コンデンサCt11と時定数回路を形成するRt11と、コンデンサCt11の端子電圧が入力され、一端がトランジスタQ12のベース―エミッタ間抵抗R15に直列に接続される抵抗R14に接続されるシャントレギュレータIC11と、トランジスタQ12のエミッタとGND間に設けられた基準電源と、トランジスタQ12のエミッタとトランジスタQ11のベースの間に設けられた抵抗R16と、トランジスタQ11のベース―エミッタ間抵抗R17と、トランジスタQ11とから構成されている。なお、本実施形態では、コンデンサCt1に供給する電流を設定するために、抵抗Rt1を例示したが、これに限らず、定電流源やツェナーダイオード等を用いてもよい。
【0052】
次に、本実施形態に係る過負荷保護回路31の動作について説明する。
F/B端子の電圧は、抵抗Rt11、コンデンサCt11とからなる時定数回路に供給される。ここで、時定数回路の時定数は、モータ起動時のパルス負荷のように、瞬時に大きな電力を必要とするパルスに必要な電力を供給できるように設定される。F/B端子の電圧は、上記のように、フォトトランジスタPH1の受光量に応じて変動するため、コンデンサCt11は、この電圧により充放電される。
【0053】
そして、コンデンサCt11が接続されるシャントレギュレータIC11により、コンデンサCt11の端子電圧がシャントレギュレータIC11の閾値を超えると、トランジスタQ12のベース―エミッタ間に所定の電圧が印加され、ONする。トランジスタQ12がONすると、トランジスタQ11がONして、F/B端子からQ2のコレクタに電流が流れる。これにより、F/B端子の電圧が低下して、スイッチングトランジスタQ1のON幅を制御する。
【0054】
したがって、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様、過負荷状態が継続して、過負荷保護回路が動作する場合には、上述のように、F/B端子のインピーダンスが低くなることにより、F/B端子の電圧が低下するため、図4の点線部のような出力特性となる。したがって、過負荷が継続するような異常状態が発生した場合は、出力電力を制限して、安全性を高めることができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】第1の実施形態に係るスイッチング電源の一実施例を示した回路図である。
【図2】第1の実施形態に係るF/B端子部の構成を示す図である。
【図3】F/B端子電圧とスイッチングトランジスタQ1のON幅との関係を示した図である。
【図4】第1の実施形態に係るスイッチング電源の図出力特性図である。
【図5】第2の実施形態に係る過負荷保護回路の構成を示す図である。
【図6】従来例に係るスイッチング電源の構成を示した図である。
【符号の説明】
【0057】
Np 一次巻線
Nc 制御巻線
Ns 二次巻線
Q1 スイッチングトランジスタ
Q2 過負荷保護回路30内のスイッチ
Q11 過負荷保護回路31内のスイッチ
Q12 過負荷保護回路31内のスイッチ
D2 出力平滑回路40内のダイオード
C1 ダンパ用コンデンサ
C2 ONトリガ用のタイミング調整コンデンサ
C4 出力平滑回路40内の平滑コンデンサ
C7 入力平滑化用コンデンサ
Ct1、Ct11 過負荷保護回路30、31内で時定数回路を形成するコンデンサ
C11 過負荷保護回路31内で時定数回路を形成するコンデンサ
R1 スイッチングトランジスタQ1電流検出用の抵抗
R2 ONトリガ用のタイミング調整抵抗
R3,R4 出力電圧設定用抵抗
R6 スイッチングトランジスタQ1のON幅調整抵抗
Rt1、Rt11 過負荷保護回路30、31内で時定数回路を形成する抵抗
R13 過負荷保護回路31内で時定数回路を形成する抵抗
GND グランド
Vi 入力電圧
Vo 出力電圧
IC1 コンパレータ
IC11 シャントレギュレータ
10 整流回路
20 スイッチングトランジスタQ1の制御回路
30 過負荷保護回路
31 過負荷保護回路
40 出力平滑回路
50 出力電圧検出回路
Z/C 制御回路20内のONトリガ入力端子
F/B 制御回路20内のON幅制御入力端子
DR 制御回路20内のスイッチングトランジスタQ1のゲート・ドライブ出力
OCP 制御回路20内の過電流検出端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源を整流する整流回路と、該整流回路の出力をトランスの一次コイルに接続し、スイッチング素子を駆動して前記トランスの二次コイルから直流電力を出力するスイッチング電源であって、
前記スイッチング素子の駆動を制御する制御回路を備え、
該制御回路が、前記スイッチング素子のオン時間幅を電圧値により制御するフィードバック制御端子を有し、
パルス負荷に対して、前記フィードバック制御端子にかかる電圧値およびパルス幅を検出するためのコンデンサを含む時定数回路を備えるとともに、該フィードバック制御端子の電圧によりコンデンサの充放電を行い、該コンデンサの端子電圧が所定の閾値を超えたときに、前記フィードバック制御端子電圧を低くして、前記スイッチング素子のオン時間幅を狭くする過負荷保護回路を備えたことを特徴とするスイッチング電源。
【請求項2】
前記フィードバック制御端子が、電流源に接続されるとともに、前記過負荷保護回路に接続され、前記過負荷保護回路により、前記フィードバック端子から吸い込む電流を変化させて、前記フィードバック制御端子の電圧を変動させ、この生じた電圧によって、前記スイッチング素子のオン時間幅を可変することを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源。
【請求項3】
前記過負荷保護回路が、前記フィードバック制御端子電圧と基準電圧とを比較する比較器を備え、
前記時定数回路により設定した時間が経過したときに、前記比較器がスイッチを動作させて、前記フィードバック制御端子から吸い込む電流を変化させることにより、前記フィードバック制御端子電圧を低下させて、前記スイッチング素子のオン時間幅を狭くすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスイッチング電源。
【請求項4】
前記過負荷保護回路が、前記フィードバック制御端子電圧と基準電圧とを比較するシャントレギュレータを備え、
前記時定数回路により設定した時間が経過したときに、前記シャントレギュレータがスイッチを動作させて、前記フィードバック制御端子から吸い込む電流を変化させることにより、前記フィードバック制御端子電圧を低下させて、前記スイッチング素子のオン時間幅を狭くすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスイッチング電源。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−247073(P2009−247073A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88924(P2008−88924)
【出願日】平成20年3月29日(2008.3.29)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【Fターム(参考)】