説明

スイッチ及び接点取付方法

【課題】かしめ等の結合の接点部材による接点圧を安定させることを可能とする。
【解決手段】締結用の孔31を備えた基板部25aと、基板部25aから傾斜するように突設され先端に接点が形成された弾性アーム27と、基板部25aから弾性アーム27の突出方向へ延設された延長板部25bとを設けた可動接点部材9を備え、基板部25aをディテント・プレート13側の面13bに沿って配置させると共に孔31を面13b側のかしめピン13dに嵌合させて面13bに対し基板部25aを締結するトランスミッション用スイッチ1であって、延長板部25bに、面13bから離反する方向の曲げ部25dを設け、締結により曲げ部25dを面13bに対して撓めつつ基板部25a側と延長板部25bの縁部25e側とを面13bに当接させたこことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機の変速位置を電気的に検出するトランスミッション用スイッチ等のスイッチ及び接点取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のトランスミッション用スイッチとしては、例えば図5、図6に示すようなものがある。図5は、可動接点部材を反転させて見た斜視図、図6は、トランスミッション用スイッチに係り、(a)は、可動接点部をムービング・ブロックへかしめる前の要部断面図、(b)は、かしめ後の要部断面図である。
【0003】
図5、図6のように、接点部材である可動接点部材101が、ムービング・ブロック103のプレート面103aにかしめにより取付結合されたものである。
【0004】
可動接点部材101は、接点ベース・プレート105と弾性アーム107と接点109とから成っている。
【0005】
接点ベース・プレート105は、平面から見てコ字形枠状に形成され、かしめ用の孔105aを備えた基部としての基板部105b、弾性アーム107に沿った延長部としての延長板部105c、延長板部105c先端の先端板部105dからなっている。弾性アーム107は、接点ベース・プレート105のコ字形枠内において傾斜するように突設されている。接点109は、弾性アーム107の先端に形成されている。
【0006】
この可動接点部材101は、前記接点ベース・プレート105をムービング・ブロック103のプレート面103aに沿って配置させると共に前記孔105aを前記プレート面103aから突出するかしめピン103bに嵌合させてかしめる取付構造となっている。
【0007】
このような可動接点部材101は、前記ムービング・ブロック103の回動と共に前記接点109が固定接点側に対して摺動し該固定接点に弾性的に接触する。
【0008】
かかるトランスミッション用スイッチでは、接点109が固定接点に対して弾性的に接触するための接点圧が一定値であることが確実なトランスミッション用スイッチとして機能する上で肝要である。
【0009】
しかし、かしめピン103bの図6(b)のような矢印方向からのかしめにより、接点ベース・プレート105にかしめ押圧力が働くと接点ベース・プレート105が歪むことになる。この接点ベース・プレート105の歪みにより孔105aの両側で接点ベース・プレート105がプレート面103aから浮き上がる問題があった。
【0010】
接点109の固定接点に対する接点圧には、弾性アーム107のみならず接点ベース・プレート105も関与するため、前記のような浮き上がりが生じると弾性アーム107によって設定されるべき接点圧が一義的に決まらず、安定しないという不具合を招いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−319329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
解決しようとする問題点は、かしめ等の締結によって浮き上がりを生じ、弾性アームによって設定されるべき接点圧が一義的に決まらず、安定しないという不具合を招いていた点である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、かしめ等の締結による接点部材による接点圧を安定させるために、締結用の孔を備えた基部と、前記基部から傾斜するように突設され先端に接点が形成された弾性アームと、前記基部から前記弾性アームの突出方向へ延設された延長部と、を設けた接点部材を備え、前記基部を取付相手側の面に沿って配置させると共に前記孔を前記面側の締結部に嵌合させて前記面に対し前記基部を締結するスイッチであって、前記基部と延長部との間に、又は前記延長部に、前記面から離反する方向の曲げ部を設け、前記締結により前記曲げ部を前記面に対して撓めつつ前記基部側と前記延長部の縁部側とを前記面に当接させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のスイッチでは、上記手段により、締結により曲げ部を取付相手側の面に対して撓めつつ基部側と延長部の縁部側とを前記面に当接させ、浮き上がりを抑制することができる。
【0015】
この浮き上がりの抑制によって弾性アームにより接点圧を一義的に決めることができ、接点圧が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】トランスミッション用スイッチの分解斜視図である。(実施例1)
【図2】トランスミッション用スイッチの平面図である。(実施例1)
【図3】可動接点部材を反転させて見た斜視図である。(実施例1)
【図4】トランスミッション用スイッチに係り、(a)は、可動接点部をムービング・ブロックへかしめる前の要部断面図、(b)は、かしめ後の要部断面図である。(実施例1)
【図5】可動接点部材を反転させて見た斜視図である。(従来例)
【図6】トランスミッション用スイッチに係り、(a)は、可動接点部をムービング・ブロックへかしめる前の要部断面図、(b)は、かしめ後の要部断面図である。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0017】
かしめ等の結合の接点部材による接点圧を安定させるという目的を、曲げ部により実現した。
【実施例1】
【0018】
[スイッチ]
図1、図2は、本発明の実施例1に係り、図1は、トランスミッション用スイッチの分解斜視図、図2は、同平面図である。
【0019】
トランスミッション用スイッチ1は、樹脂製のターミナル・ブロック3及びムービング・ブロック5を備えている。前記ターミナル・ブロック3には、固定接点部材7が備えられている。前記ムービング・ブロック5には、可動接点部材9が設けられている。固定接点部材7及び可動接点部材9は、トランスミッション変速用の接点回路を構成する。
【0020】
前記ムービング・ブロック5は、金属製の円筒状部材11を備え、この円筒状部材11が金属製のディテント・プレート13の穴部13aに挿入されかしめ結合されている。
【0021】
ディテント・プレート13のプレート面13b(取付相手側の面、図1において下面)には、前記可動接点部材9が後述するようにかしめ結合されている。可動接点部材9には、後述する接点の他に矩形形状部9aを可動接点部材9の回転方向の前後位置に形成している。
【0022】
円筒状部材11の軸穴部11aには、シフトレバーの操作に連動するマニュアル・シャフト(図示せず)が貫通配置され、円筒状部材11のピン穴11bに嵌入されたスプリング・ピン15により固定される。
【0023】
ターミナル・ブロック3は、極盤17を備え、極盤17に前記固定接点部材7が配置されている。
【0024】
固定接点部材7は、複数の固定接点7aを備え、固定接点7aは、隣り合う高さに交互に差が設けられている。固定接点部材7は、一次成形体7bに樹脂成形されたのち、二次成形体の極盤17が形成される。極盤17の固定接点7aの配置個所17aは、隣り合う高さに交互に差が設けられるように段差をもって樹脂成形が施されている。
【0025】
この極盤17の穴部17bに円筒状部材11が回転自在に支持され、円筒状部材11の端部に座金19、Cクリップ21がこの順に挿入され、Cクリップ21が溝部11cに係合して円筒状部材11の軸方向位置決めが行なわれる。
【0026】
この円筒状部材11の極盤17に対する位置決めにより固定接点部材7及び可動接点部材9の電気的な安定接触を得ることができる。可動接点部材9の矩形形状部9aは、その先端が固定接点部材7の各固定接点7aに近接する。
【0027】
極盤17の外周部には、極盤17の側面穴部17cに、金属部材23のコの字部23aが圧入されている。金属部材23には、樹脂成形部23bが設けられ、この樹脂成形部23bがディテント・プレート13の表面13cに接触してディテント・プレート13を押さえる。
[接点部材]
図3は、可動接点部材を反転させて見た斜視図、図4は、トランスミッション用スイッチに係り、(a)は、可動接点部をムービング・ブロックへかしめる前の要部断面図、(b)は、かしめ後の要部断面図である。
【0028】
なお、図4では、説明を簡単にするため、図1で示した矩形形状部9aを省略して図示し、又かしめによる締結を説明するものであり各部寸法の比率は無視している。
【0029】
図1、図3、図4のように、接点部材である可動接点部材9は、接点ベース・プレート25と複数の弾性アーム27と複数の接点である可動接点29とを備えている。
【0030】
接点ベース・プレート25は、可動接点部材9のフレームを形成するものであり、平面から見てコ字形枠状に形成され、基部としての基板部25a、延長部としての延長板部25b、延長板部25b先端の先端板部25cからなっている。延長板部25bは、基板部25aから前記弾性アーム27の突出方向へ延設され可動接点部材9の平面から見て弾性アーム27に沿っている。
【0031】
延長板部25bの前記弾性アーム27の突出方向の幅は、前記基板部25aのその幅よりも長く設定されている。この基板部25a側で延長板部25bには、前記プレート面13bから離反する方向の曲げ部25dが形成されている。本実施例において曲げ部25dを、基板部25aに隣接したものとしている。延長板部25bに対する曲げ部25dの形成位置は、特に限定されず、延長板部25bの中間部の何れかの位置に曲げ部を形成することもできる。また、基板部25aと延長板部25bとの間、すなわち両者の境界に曲げ線を設定した曲げ部とすることもできる。
【0032】
そして、曲げ部25dに対し、前記基板部25aの縁部、すなわち孔31よりも外側の縁部は、前記延長板部25bの縁部25eよりも距離が短く設定されている。
【0033】
前記矩形形状部9aは、基板部25a及び先端板部25cに対して切り起こし突設され、固定接点7aの隣り合う高さの交互の差に応じて交互に突設長が異なっている。
【0034】
各弾性アーム27の基部側で接点ベース・プレート25の基板部25aにかしめ用の孔31が相互に一定間隔で設けられている。なお、基板部25aに対する孔31の形成箇所は限定されない。
【0035】
弾性アーム27は、接点ベース・プレート25から一体に切り起こされたものであり、接点ベース・プレート25のコ字形枠内において傾斜するように突設形成されている。
【0036】
接点である可動接点29は、各弾性アーム27の先端に一体に湾曲形成されている。可動接点29は、湾曲外面で固定接点7aに接触する。この接触の接点圧は、弾性アーム27によって設定される。
【0037】
かかる可動接点部材9は、接点ベース・プレート25が取付相手側の面であるディテント・プレート13のプレート面13bに沿って配置されると共に前記孔31が前記プレート面13bから突出するかしめピン13dに嵌合され、かしめ固定される。
[接点取付方法]
前記接点ベース・プレート25を前記プレート面13bに沿って配置させると共に前記孔31を前記プレート面13bから突出するかしめピン13dに嵌合させてかしめ、前記曲げ部25dを挟んで前記接点ベース・プレート25の縁部25e側と基板部25a側とを前記プレート面13bに当接させる。
【0038】
図4(a)のように、可動接点部材9のディテント・プレート13のプレート面13bへの固定(かしめ)前は、曲げ部25dの角度が小さい。かしめピン13dによるかしめ固定で図4(b)のように延長板部25bの曲げ部25dが弾性的に潰れ、孔31周辺で可動接点部材9がプレート面13b方向に密着する。このため、曲げ部25dを挟んで接点ベース・プレート25の先端板部25cの縁部25e側と孔31を含めた基板部25a側とがプレート面13bに当接する。
【0039】
したがって、曲げ部25aが復元しようとする力(プレート面13bと反対方向に発生する力)により可動接点部材9の接点ベース・プレート25の基板部25a及び延長板部25bが、ディテント・プレート13のプレート面13bへ固定的に支持される。この固定的な支持により可動接点29の固定接点7aに対する接点圧を、固定的な基板部25aに支持された弾性アーム27によってほぼ一義的に設定させることができる。
【0040】
本実施例では特に、曲げ部25dの位置が基板部25aに隣接している(曲げ部25dの位置が縁部25eから離れている)ため、曲げ部25dの変形による反力が基板部25aに大きく働き、基板部25aのプレート面13bに対する当接力を高めることができる。
[実施例の効果]
本発明実施例のスイッチでは、締結用の孔31を備えた基板部25aと、前記基板部25aから傾斜するように突設され先端に接点29が形成された弾性アーム27と、前記基板部25aから前記弾性アーム27の突出方向へ延設された延長板部25bとを設けた可動接点部材9を備え、前記基板部25aをディテント・プレート13のプレート面13bに沿って配置させると共に前記孔31を前記プレート面13b側のかしめピン13dに嵌合させて前記プレート面13bに対し前記基板部25aを締結するトランスミッション用スイッチ1であって、前記基板部25aと延長板部25bとの間に、又は前記延長板部25bに、前記プレート面13bから離反する方向の曲げ部25dを設け、前記締結により前記曲げ部25dを前記プレート面13bに対して撓めつつ前記基板部25a側と前記延長板部25bの縁部25e側とを前記プレート面13bに当接させた。
【0041】
このため、弾性アーム27の基板部25a側に形成された曲げ部25dを挟んで接点ベース・プレート25の先端板部25cの縁部25e側と孔31側とを前記プレート面13bに当接させ、接点ベース・プレート25の浮き上がりを抑制することができる。
【0042】
この浮き上がりの抑制によって弾性アーム27により接点圧を決めることができ、接点圧が安定する。
【0043】
特に、曲げ部25dを、基板部25aに隣接したものにすると(曲げ部25dを、縁部25eから離すと)、曲げ部25dの変形による反力が基板部25aに、延長板部25bの縁部25eよりも大きく働き、基板部25aのプレート面13bに対する当接力を高めることができる。また、基板部25aのプレート面13bに対する当接力の調整も容易となる。
【0044】
したがって、基板部25aの確実な当接により、可動接点29の固定接点7aに対する接点圧を弾性アーム27によってほぼ一義的に設定させることができる。
【0045】
また、可動接点部材9の矩形形状部9aがその回動により油中の金属粉、金属片を固定接点7a上から排除するため電気的安定性が確保され、且つ可動接点部材9に矩形形状部9aを一体化したため樹脂成形した場合に比べ樹脂成形工程が省略され、コスト低減に繋がる。
【0046】
上記実施例構造では、固定接点7aを高さ方向に交互に差を付けてターミナル・ブロック3を樹脂成形し、極盤17を成形しているため、固定接点7a間の電気的絶縁を確保できる。
【0047】
本発明実施例の接点取付方法では、かしめ用の孔31を備えた基板部と、前記基板部25aから傾斜するように突設され先端に接点が形成された弾性アーム27と、前記基板部25aから前記弾性アーム27の突出方向へ延設された延長板部25bと、を設けた可動接点部材9を備え、前記基板部25aと延長板部25bとの間に、又は前記延長板部25bに、前記プレート面13bから離反する方向の曲げ部25dを設け、前記基板部25aをディテント・プレート13のプレート面13bに沿って配置させると共に前記孔31を前記プレート面13b側のかしめピン13dに嵌合させて前記プレート面13bに対し前記基板部25aを締結し、この締結により前記曲げ部25dを前記プレート面13bに対して撓めつつ前記基板部25a側と前記延長板部25bの縁部25e側とを前記プレート面13bに当接させる。
【0048】
このため、単なるかしめにより接点ベース・プレート25の浮き上がりを抑制することができる。
【0049】
この浮き上がりの抑制によって弾性アーム27により一義的に接点圧を決めることができ、接点圧を安定させることができる。
【0050】
なお、可動接点部材9のディテント・プレート13のプレート面13bへの固定はかしめを用いて説明したが、ねじやリベットで固定しても良い。
【符号の説明】
【0051】
1 トランスミッション用スイッチ
9 可動接点部材(接点部材)
13 ディテント・プレート(取付相手側)
13b プレート面(面)
13d かしめピン
25 接点ベース・プレート
25a 基板部(基部)
25b 延長板部(延長部)
25d 曲げ部
25e 縁部
27 弾性アーム
29 可動接点
31 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
締結用の孔を備えた基部と、
前記基部から傾斜するように突設され先端に接点が形成された弾性アームと、
前記基部から前記弾性アームの突出方向へ延設された延長部と、
を設けた接点部材を備え、前記基部を取付相手側の面に沿って配置させると共に前記孔を前記面側の締結部に嵌合させて前記面に対し前記基部を締結するスイッチであって、
前記基部と延長部との間に、又は前記延長部に、前記面から離反する方向の曲げ部を設け、
前記締結により前記曲げ部を前記面に対して撓めつつ前記基部側と前記延長部の縁部側とを前記面に当接させた
ことを特徴とするスイッチ。
【請求項2】
請求項1記載のスイッチであって、
前記面は、トランスミッション用スイッチのディテント・プレートのプレート面であり、
前記接点部材は、前記ディテント・プレートの回動と共に前記接点が固定接点側に対して摺動し該固定接点に弾性アームによる接点圧で接触可能な可動接点部材である、
ことを特徴とするスイッチ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のスイッチであって、
前記面側の締結部は、前記面から突出するかしめピンであり、
前記締結は、前記基部の孔を前記かしめピンに嵌合させてかしめピンのかしめにより行う、
ことを特徴とするスイッチ。
【請求項4】
締結用の孔を備えた基部と、
前記基部から傾斜するように突設され先端に接点が形成された弾性アームと、
前記基部から前記弾性アームの突出方向へ延設された延長部と、
を設けた接点部材を備え、
前記基部と延長部との間に、又は前記延長部に、前記面から離反する方向の曲げ部を設け、
前記基部を取付相手側の面に沿って配置させると共に前記孔を前記面側の締結部に嵌合させて前記面に対し前記基部を締結し、
この締結により前記曲げ部を前記面に対して撓めつつ前記基部側と前記延長部の縁部側とを前記面に当接させる、
ことを特徴とする接点取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−138735(P2011−138735A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262(P2010−262)
【出願日】平成22年1月4日(2010.1.4)
【出願人】(390001236)ナイルス株式会社 (136)
【Fターム(参考)】