説明

スイッチ構造

【課題】プッシュスイッチのストローク距離を長くしてスイッチ動作の安定化を図るとともに、部品数を少なく、組立て工数を減少し、かつ、前記スイッチに押圧のダメージを与えないようにする。
【解決手段】ケース10aの挿通孔18から突出する押圧操作部25とプッシュスイッチ40の押圧部41と当接する当接部26との間に緩衝部27を積層して一体化した延長アダプター30をケース本体10aの裏面とプッシュスイッチ40との間に備える。前記延長アダプター30は、前記押圧操作部25に押圧がかかり押し下げられたとき、前記緩衝部27は、前記プッシュスイッチ40が導通状態となるまで縮まず、前記プッシュスイッチ40の導通状態からさらに押圧がかったときに縮むことで、前記スイッチ40のストローク距離を長くし、導通状態となった前記プッシュスイッチ40に過大な押圧がかかることを防止する。また、延長アダプター30は、一体化されて構成することで部品点数を一つにし、部品点数と組立て工数の減少を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、延長アダプターを備えたプッシュスイッチのスイッチ構造と延長アダプターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プッシュスイッチは、操作用として用いるばかりでなく、センサとしても用いられる。例えば、(特許文献1)のように、プリント基板に搭載したプッシュスイッチの押圧部をケースの挿通孔から突出させ、突出させた押圧部が充電池を装着した際に作動するようにして、充電池の装着の有無を検出して充電回路を作動するのに使用される。
【0003】
しかし、上記のように、プッシュスイッチをセンサとして用いる場合、プッシュスイッチの押圧部を直接ケースの挿通孔から突出させているものでは、組立て時にプッシュスイッチの押圧部をケースに設けた小さな挿通孔に通さねばならず、プッシュスイッチを搭載したプリント基板の取り付けが難しくなる問題がある。また、プッシュスイッチの押圧部がケースに設けられた挿通孔から突出するような位置にプリント基板を設けなければならないため、プリント基板のプッシュスイッチが搭載された面には、プッシュスイッチより高さの高い部品を搭載することができないといった問題もある。
【0004】
そのため、図5のように、樹脂などで形成された延長アダプター1をプッシュスイッチ3に取り付ければ、延長アダプター1の挿通孔から突出する部分の大きさを変更することが可能であるため、組立作業をある程度容易化することができる。また、プリント基板のプッシュスイッチが搭載された面に、プッシュスイッチより高さの高い部品の搭載も可能となる。
【0005】
ところで、先のように延長アダプター1を使用する場合に、例えば、タクティールスイッチなどのストローク距離の小さなものを用いると、前記アダプター1のケースの挿通孔からの突出部分が短く(少なく)なり、充電池が少しでも浮いてしまうと、ケースと充電池の係合が外れて、スイッチがオフとなってしまう。そのため、充電池が浮いていることに気付かずに充電に失敗したり、また、充電池の浮き方によっては、前記スイッチ3のオン・オフ動作を繰り返させてしまい、充電池や充電回路に過負荷をかけたりする問題がある。
【0006】
このような問題を解決する一つの方法として、例えば、図6の(特許文献2)に示すように、押圧操作ノブ2とプッシュスイッチ3の押圧部4との間に弾性スペーサ5を介在させることが考えられる。このような方法を採用することにより、例えば、押圧操作ノブを突起(ピン)としてケースの挿通孔から突出させるようにし、プッシュスイッチの押圧面との間に弾性スペーサを介在させて突起に押圧を加えると、撓んだ弾性スペーサ5の反発荷重によりプッシュスイッチの押圧部が押圧され、図示しないプッシュスイッチ内の導電性薄板バネを反転させると同時に、弾性スペーサ5の撓みが解除されることによって伸長してプッシュスイッチの押圧部を押すので、その撓む分だけケースの挿通孔からの突出量(長さ)を長くしてスイッチのストローク距離を長くできる。そのため、例えば、充電池が少し浮いても、プッシュスイッチがオンの状態を保持できるので、充電の失敗を防止したり、充電池や充電回路への過負荷を防止したりできるというものである。
【特許文献1】特開2001−16796号公報
【特許文献2】特開平11−40000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の弾性スペーサを介在させるものでは、押圧操作ノブと弾性スペーサの2つの部品を組み付けて(そのため、押圧操作ノブに弾性スペーサを嵌める押圧端部を設けている)、その組み付けた部品をプッシュスイッチの押圧部に当接させて取り付けねばならず、部品数の増加や組立て工数の増加が問題である。
【0008】
また、上記のものでは、押圧後は、弾性スペーサは撓んだ状態となるので、撓んだ状態のスペーサが元の状態にもどるための復元力が常にスイッチに加わることになり、スイッチにダメージを与えることも考えられる。
【0009】
そこで、この発明の課題は、部品数を少なく、組立て工数を減少しつつ、スイッチのストローク距離を長くできるようにすることである。また、押圧後の復元力がスイッチにダメージを与えないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明では、押下自在な押圧操作部が突出する挿通孔を備えたケースと、押下自在に設けられた押圧部の押圧操作によって動作されるプッシュスイッチと、前記挿通孔から突出する押下自在な押圧操作部を構成する第1の剛性体と、前記プッシュスイッチの押圧部と当接する第2の剛性体と、前記第1の剛性体と前記第2の剛性体との間に弾性体を積層して一体化した延長アダプターを前記ケースの裏面と前記プッシュスイッチとの間に備えた構成を採用したのである。
【0011】
このような構成を採用することにより、延長アダプターは押下自在な押圧操作部を構成する第1の剛性体と、プッシュスイッチの押圧部と当接する第2の剛性体と、第1の剛性体と第2の剛性体との間に弾性体を積層して一体化した構成なので、部品数が一つになる。また、この延長アダプターをケースの孔とスイッチの押圧部の間に取り付ければ組立てが完了し、組立て工数も少なくて済む。さらに、第1の剛性体と第2の剛性体との間の弾性体は、押圧操作部を押し下げたときに、プッシュスイッチが導通状態となるまで収縮せず、プッシュスイッチが導通状態となり押圧部がフルストロークまで押し下げられたのち、収縮可能となる弾性力を有した緩衝部として働く。また、延長アダプターに押圧が加わると、プツシュシュスイッチの押圧部を押してプッシュスイッチが導通したのち、緩衝部が縮むので緩衝部が縮む分だけ前記スイッチのストローク距離を長くできる。さらに、緩衝部は縮んで、押圧操作部を介してプッシュスイッチの押圧部へかかる押圧を吸収するので、導通後のスイッチに過大な押圧が加わることもない。また、押圧後は、例えば、充電池が少し浮いてもプッシュスイッチが導通状態のまま、前記緩衝部が伸長してプッシュスイッチの導通状態を維持できるので、充電の失敗を防止したり、充電池や充電回路への過負荷を防止したりできる。
【0012】
請求項2の発明では、延長アダプターを支持するガイド部材をさらに備え、前記延長アダプターを取り囲んで配置した構成を採用することにより、延長アダプターをケースの挿通孔とスイッチの押圧部だけで支持するよりも安定して支持できるので、延長アダプターの転倒を防止できる。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、上記のように構成したことにより、部品数や組立て工数を少なくして、プッシュスイッチのストローク距離を拡大できる。そのため、スイッチ動作を安定にできる。また、押圧後の復元力がスイッチに加わらないようしてダメージを与えないようにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1に、この発明のスイッチ構造を適用した無線機用の充電器10を示す。
【0015】
前記充電器10は、図2に示すように、充電回路用のプリント基板11を収容したケース本体10aの上部に携帯式の無線機12を載置する装着部10bを形成した構造となっている。
【0016】
ケース本体10aは、図2のように、底面全体を開口13として開放し、その開放した開口13に金属製の裏蓋14をネジ止めする構造となっている。また、この開口13横のケース本体10aの前面に、表示用のLED素子15を取り付ける取り付け孔16が設けられている。
【0017】
一方、ケース本体10a上部の装着部10bは、図1のように、両側と背面に支持壁19を設け、前方を開放した形状となっている。
【0018】
前記支持壁19は、両側に位置決め用の突部20を形成し、背面に嵌入溝21を形成して、前記突部20が装着した無線機12と係合し、無線機12の端子と背面の嵌入溝21に挿通する充電端子22とが接触するようにしてある。この背面の嵌入溝21は、下方のケース本体10aに貫通孔23で連通しており、図2のように、プリント基板11に立設した充電端子22を挿通するようになっている。
【0019】
また、装着部10bの装着面には、挿通孔18を設けて、無線機12が載置されたことでかかる荷重によって押し下げられる押圧操作部25が突出させてある。前記押圧操作部25は、特許請求の範囲に記載の第1の剛性体に対応し、挿通孔18から突出する押圧操作部を構成する。また、延長アダプター30は、この押圧操作部25と当接部26との間に緩衝部27を設けた構造となっている。前記当接部26は、特許請求の範囲に記載の第2の剛性体に対応する。
【0020】
この押圧操作部25は、挿入孔18から突出される部分をピン状とし、ピンの周囲に四角形の鍔状のストッパを設けた逆T字型のものとなっている。また、当接部26は、ここでは平板を採用し、後述する検出スイッチ(タクティールスイッチ)40の押圧部41に当接し易いようにしてある。緩衝部27は、この形態では、押圧で収縮する弾性体としてスポンジを立方体に成型したものを使用しており、前記押圧操作部25の鍔状のストッパと当接部26の平板間に、接着剤や粘着テープで固定されている。延長アダプター30は、前記押圧操作部25と緩衝部27と当接部26を積層したサンドイッチ構造を有している。そのため、押圧操作部25に押圧が加わると前記スポンジが収縮してクッションのように作用する。
【0021】
この延長アダプター30は、先に述べたとおり、図2のように、ケース10の装着部10bの挿通孔18に押圧操作部25のピン状部分を挿入し、当接部26を検出スイッチ40の押圧部41に当接させる。このとき、この形態では、挿通孔の周囲にガイドとしてガイド壁45を設け、延長アダプター30を嵌入しても転倒しないようにしてある。
【0022】
検出スイッチ40は、ストローク距離の短いノンロック式のタクティールスイッチで、プリント基板11上に取り付けられている。また、前記スイッチ40のオン・オフによって、無線機12が装着部10bに載置されているか否かが検出され、プリント基板11上の充電回路の作動が制御される。
【0023】
プリント基板11は、ケース本体10aの開口13と同じ形状で、開口13よりも少し小さく形成されており、ケース本体10a内に設けられたスペーサ46で支持(固定)するようになっている。また、このプリント基板11は、パターン面11bに充電回路用の回路素子(図示せず)を搭載し、部品面11aに先述の検出スイッチ40の他、LED素子15、充電端子や電源(ACアダプター)アダプターポート(図示せず)を搭載したものである。なお、図中符号50は、電源(ACアダプター)アダプターポートへのアクセス孔である。
【0024】
この形態は、上記のように構成されており、この延長アダプター30は、先のガイド壁45に囲まれた中に、前記押圧操作部25のピン状部分を先にして嵌入し、プリント基板11を検出スイッチ40が取り付けられた部品面11a側をケース本体10aの開口13側に対向させて嵌入する。すると、検出スイッチ40の押圧部41が延長アダプター30の当接部26に当接し、延長アダプター30の前記押圧操作部25のストッパが挿通孔18の周囲に当接し、挿通孔18から前記押圧操作部25のピン状部分が突出して取り付けが完了する。
【0025】
このように、取り付けの完了した延長アダプター30は、ガイド壁45に支持されるので転倒することはない。また、延長アダプター30は、押圧操作部25と当接部26との間に緩衝部27を積層して一体化しているので、部品数が一つになり、延長アダプター30をケース本体10aの挿通孔18と検出スイッチ40の押圧部41の間に取り付ければ組立てが完了するので、組立て工数も少なくて済む。
【0026】
使用に際しては、図3(a)のように、装着部10bに何も置かれていないときは、延長アダプター30の押圧操作部25には、押圧が加わらないので、緩衝部27は収縮しない。このため、前記押圧操作部25は、例えば、挿通孔18の周囲に、押圧操作部25の鍔状のストッパが当接し、挿通孔18から突出した状態で保持される。この状態で、装着部10bに無線機12が装着されると、図3(b)のように、押圧操作部25が無線機12の底部に押されて延長アダプター30が下降し、検出スイッチ40の押圧部41を押してオンにする。こののち、無線機12によって押圧操作部25が、さらに押されると、図3(c)のように、緩衝部27がクッションのように収縮し、押圧を吸収して過大な押圧が検出スイッチ40に加わるのを防止する。また、充電後に装着部10bに装着した無線機12を取外すと、オンの場合と逆に、押圧された図3(c)の延長用アダプター30は、収縮した緩衝部27が無線機12の押圧から解放されて、図3(b)のように、もとの大きさに伸長し、検出スイッチ40の押圧部41が上昇して延長アダプター30を持ち上げ、図3(a)の状態に戻る。
【0027】
このため、充電中に無線機12が、例えばグラついて、装着部10bから一瞬浮いて離れた場合でも、緩衝部27が伸長する間はオン状態を維持できるので、不用意に検出スイッチ40をオフさせることはない。
【0028】
このように延長アダプター30は、緩衝部27が収縮と伸長をすることにより、検出スイッチ40の押圧部41のストローク距離を大きくできるので、スイッチ動作を安定させることができる。
【実施例1】
【0029】
この実施例1は、図4(a)、(b)に示すように、延長アダプター30の転倒を防止するガイド45の他の態様を示すものである。
【0030】
図4(a)は、プリント基板11にガイド45としてガイド壁を設けて、延長アダプター30を支持できるようにしたものである。また、図4(b)は、ガイド45をカバーとして延長アダプター30を被うようにしたもので、前記カバー45は、ケース10の挿通孔18と係合して延長アダプター30の転倒を防止する。また、この場合、延長アダプター30の検出部25は、ピンを除いて邪魔にならないようにしてある。他の構成及び作用効果は、実施形態と同じなので、図1〜図2と同一符号を付して説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0031】
この発明は、延長アダプターを使用することで、部品数の減少と組立て工数の減少を図りつつ、ストローク距離の短いプッシュスイッチの動作を安定させることができるので、機器の装着の有無を検出するセンサばかりでなく、転倒スイッチや着座センサなど他の電気機器にも応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態の斜視図
【図2】実施形態の断面図
【図3】(a)、(b)、(c)実施形態の作用説明図
【図4】(a)、(b)実施例1の作用説明図
【図5】従来例の作用説明図
【図6】他の従来例の作用説明図
【符号の説明】
【0033】
10a ケース本体
25 押圧操作部
26 当接部
27 緩衝部
30 延長アダプター
40 検出スイッチ
41 押圧部
45 ガイド壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押下自在な押圧操作部が突出する挿通孔を備えたケースと、
押下自在に設けられた押圧部の押圧操作によって動作されるプッシュスイッチと、
前記挿通孔から突出する押下自在な押圧操作部を構成する第1の剛性体と、
前記プッシュスイッチの押圧部と当接する第2の剛性体と、
前記第1の剛性体と前記第2の剛性体との間に弾性体を積層して一体化した延長アダプターを前記ケースの裏面と前記プッシュスイッチとの間に備え、
前記弾性体は、前記押圧操作部を押し下げたときに、前記プッシュスイッチが導通状態となるまでは収縮せず、前記プッシュスイッチが導通状態となり前記押圧部がフルストロークまで押し下げられたのち収縮可能となる弾性力を有した緩衝部として働くように構成したことを特徴とするスイッチ構造。
【請求項2】
上記延長アダプターを支持するガイド部材をさらに備え、前記ガイド部材は、前記延長アダプターを取り囲んで配置されたことを特徴とする請求項1に記載のスイッチ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−152126(P2009−152126A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330514(P2007−330514)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】