説明

スイッチ装置

【課題】空気溜まり室の異物が接点室に吸込まれ難い構成にして、異物による接点不良の低減を図る。
【解決手段】スイッチ装置は固定接点を有する基板とラバーシート13とを備える。ラバーシート13は、接点ドーム部19と可動接点20と第一窪み部21と第二窪み部22と誘導溝23と逆止部24と通気溝25とを有し、基板との間に接点室26と空気溜まり室27と異物溜まり室28と誘導路29と通気路30とを形成する。誘導路29は空気溜まり室27と異物溜まり室28とを連通する。通気路30は接点ドーム部19と誘導路29とを連通する。可動接点20は接点ドーム部19の弾性変形に伴い固定接点と接離する。このとき接点室26は呼吸をし、これにより空気溜まり室27から誘導路29に吸い込まれた異物は誘導路29に誘導されて異物溜まり室28へ入り、逆止部24によって逆流が防がれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作力を受けて弾性変形するラバーシートを有したスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などで使用されるスイッチ装置として、例えば一面に固定接点を有する基板と、弾性を有する材料で形成されて基板の固定接点側の面を覆うラバーシートと、を備えたものがある。ラバーシートは、基板上の固定接点を覆う接点ドーム部を有し、この接点ドーム部の基板側に可動接点が設けられている。この場合、ラバーシートの接点ドーム部は、基板との間に中空状の空間である接点室を形成している。そして、接点室は、この接点室よりも容積の大きい空気溜まり室に連通されている。
【0003】
このような構成のスイッチ装置において、ラバーシートの接点ドーム部は操作力を受けて弾性変形する。これにより接点ドーム部に設けられた可動接点は基板上に設けられた固定接点に接触する。このとき接点室内の空気はラバーシートの接点ドーム部に圧縮されて空気溜まり室に押し出される。その後操作力が解除されると、ラバーシートは、接点ドーム部が復元して接点ドーム部の可動接点が基板上の固定接点から離反する。すると空気溜まり室に押し出された空気は接点室へ吸い込まれる。このように、スイッチ装置は、その操作の際、接点室内の空気が空気溜まり室に出入りするいわゆる呼吸をする。これにより操作時の空気の圧縮による反発を防いで操作を容易にしている。
【0004】
しかし上記構成のものでは、空気溜まり室は接点室よりも容積を大きく確保する必要がある。このため、空気溜まり室は、基板上において例えばコネクタの端子や電子部品などが実装されている部分に亘って設けられることが多い。この場合、接点室は、呼吸によって空気溜まり室に残ったはんだ屑などの異物を吸い込んでしまうおそれがある。すると、この異物は、固定接点と可動接点との間に挟まってこれら接点の接触不良を引き起こしてしまうという事情があった。
【0005】
このような事情から、接点室と空気溜まり室との間に異物溜まり室を設けた構成が開示されている(例えば特許文献1)。このようなものでは、接点室は、空気溜まり室に直接連通されていない。このため、空気溜まり室にある異物は、操作により接点室が呼吸すると異物溜まり室に一旦吸い込まれる。これにより、空気溜まり室にある異物が接点室に直接入り込んでしまうことを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−40490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この異物溜まり室は接点室と直接連通している。このため、接点室は、異物溜まり室に一旦集められた異物を吸い込んでしまうおそれがあった。
そこで、本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、空気溜まり室の異物が接点室に吸込まれ難い構成にして、異物による接点不良の低減が図られるスイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のスイッチ装置は、一面に固定接点を有する基板と、弾性を有する材料で形成されて前記基板の前記固定接点側の面を覆うラバーシートと、を備える。前記ラバーシートは、前記固定接点を覆って前記基板との間に中空状の接点室を形成し操作力を受けて弾性変形する接点ドーム部と、前記接点ドーム部の前記基板側に設けられて前記接点ドーム部が弾性変形することに伴って前記固定接点と接離する可動接点と、前記基板との間に中空状の空気溜まり室を形成する第一窪み部と、前記基板との間に中空状の異物溜まり室を形成する第二窪み部と、前記第一窪み部に接続する直線部および該直線部の延長線上から外れた位置で前記第二窪み部に接続する円弧部を有し前記基板との間に前記空気溜まり室と前記異物溜まり室とを連通する誘導路を形成する誘導溝と、前記第二窪み部と前記誘導溝の前記円弧部との接続部分において前記円弧部の内側に設けられる逆止部と、前記接点ドーム部および前記誘導溝に接続して前記基板との間に前記接点室と前記誘導路とを連通する通気路を形成する通気溝と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
上記構成によれば、操作力が解除されて接点ドーム部の弾性変形が復元すると、空気溜まり室の空気は誘導路から通気路を通って接点室へ吸い込まれる。このとき、空気溜まり室にある異物が、空気溜まり室の空気とともに誘導路に吸い込まれることがある。ここで誘導路は、直線状から円弧状になって異物溜まり室へ接続されている。このため誘導路に吸い込まれた異物は、誘導路の直線部分に沿って異物溜まり室へ誘導され易くなる。したがって誘導路へ吸い込まれた異物は、誘導路に接続されている通気路を通って接点室へは入り込み難くなる。そして異物溜まり室に入った異物は、逆止部によって異物溜まり室からの流出が防がれている。このようにスイッチ装置は、空気溜まり室にある異物が接点室に吸い込まれ難い構成となっており、この結果、異物による接点不良の低減が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第一実施形態によるスイッチ装置の縦断正面図
【図2】図1のA−A線に沿う縦断側面図
【図3】ラバーシートを裏側から見た斜視図
【図4】ラバーシートの底面図
【図5】スイッチ装置の分解斜視図
【図6】第二実施形態によるラバーシートの第二窪み部周辺を示す図
【図7】第三実施形態を示す図6相当図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、複数の実施形態によるスイッチ装置について図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0012】
(第一実施形態)
図1は、例えば車両に設けられてデフォッガーのオンまたはオフ状態を操作するスイッチ装置10を示している。以下、図1の上側をスイッチ装置10の上方とし、下側をスイッチ装置10の下方として説明する。
スイッチ装置10は、図1、図2、および図5に示すように、基台11と、基板12と、ラバーシート13と、ケース14と、操作部材15と、を備えている。基台11は、主体部111と、支持部112と、コネクタ部113と、を有している。主体部111は矩形板状に形成されている。支持部112は、主体部111の一方の面、すなわち上側の面に設けられ、上方が開口した矩形箱状に形成されている。コネクタ部113は、主体部111の他方の面、すなわち支持部112とは反対側である下側の面に設けられ、下方が開口した矩形箱状に形成されている。これら主体部111と支持部112とコネクタ部113とは樹脂などにより一体に形成されている。
【0013】
基板12は、基台11の支持部112の上側に設けられている。基板12は、例えばプリント配線基板により矩形板状に形成されている。基板12は、その一面、具体的には基台11とは反対側の面、すなわち上側の面に固定接点16および電子部品17などが設けられている。固定接点16は、図5に示すように、電気的に切断された一対の接点から構成されている。この固定接点16は、例えば導電性に優れる金属で形成され、基板12の上面に非絶縁の状態で露出している。電子部品17は、例えば抵抗素子などであり、図1に示すように基板12にはんだ付けによって固定されている。
【0014】
基板12は、電子部品17の近傍に端子18を有している。端子18は、導電性を有する金属の棒で構成されている。この端子18は、基板12を厚さ方向に貫き、その一端部が基板12の固定接点16側の面に突出している。端子18は、この一端部がはんだ付けされて基板12に固定されている。この場合、端子18の周囲には、はんだ部181が形成されている。また、固定接点16、電子部品17、端子18などは、図示しない配線パターンによって電気的に接続されて、図示しない回路が形成されている。
【0015】
また、端子18は、基台11の主体部111を貫き、その他端部がコネクタ部113側に突出している。この場合、コネクタ部113と端子18とはいわゆるオス型のコネクタを構成している。コネクタ部113には、詳細は図示しないが、いわゆるメス型のコネクタが嵌め込まれる。これにより、スイッチ装置10は、デフォッガーを制御する図示しない制御装置に接続される。そして、スイッチ装置10から固定接点16の通電または断電などの信号が制御装置へ送られる。
【0016】
ラバーシート13は、基板12の上面、すなわち基板12の固定接点16側の面に設けられている。ラバーシート13は、弾性を有する材料、例えばシリコーンゴムなどで形成されている。このラバーシート13は、図3に示すように、平坦な取付面131の周囲に周壁132を有している。この場合、周壁132は、図1に示すように上下方向の寸法が基板12の厚さ方向の寸法よりも大きく設定されている。これにより、ラバーシート13は、取付面131が基板12の上面に配置されて基板12の固定接点16側の面全体を覆っている。
【0017】
このラバーシート13は、図3および図4に示すように、一個の接点ドーム部19と、一個の可動接点20と、一個の第一窪み部21と、二個の第二窪み部22と、二本の誘導溝23と、二個の逆止部24と、二本の通気溝25と、を有している。接点ドーム部19は、図1に示すように、基板12に設けられた固定接点16に対応して配設されている。この接点ドーム部19は、変形部191および被押圧部192を有している。接点ドーム部19の変形部191は、ラバーシート13の取付面131から上方向、すなわち基板12とは反対方向へ椀状または半球状に窪んでいる。この変形部191は、ラバーシート13の表面133から上方向、すなわち基板12とは反対方向へ突出している。この場合、変形部191は、取付面131の厚さに比べて薄く形成されている。そして接点ドーム部19は、基板12との間に中空状の接点室26を形成して固定接点16を覆っている。
【0018】
接点ドーム部19の被押圧部192は、変形部191の中央部に設けられている。被押圧部192は、円柱形状に形成されて、ラバーシート13の取付面131に対してほぼ垂直方向に変形部191を貫いている。この場合、被押圧部192は、一端部が変形部191の基板12側に突出し、他端部が変形部191の基板12とは反対側に突出している。
【0019】
可動接点20は、被押圧部192の一端部に設けられている。この可動接点20は、導電性を有する材料、例えば金属膜や導電性樹脂などで形成されている。この可動接点20は、被押圧部192が操作力を受けて変形部191が弾性変形することに伴って基板12上の固定接点16と接離する。これにより、固定接点16は、通電または断電状態が切替えられる。
【0020】
第一窪み部21は、図1に示すように、基板12に設けられた電子部品17および端子18に対応して配設されている。第一窪み部21は、図1および図2に示すように、ラバーシート13の取付面131から上方向、すなわち基板12とは反対方向へ矩形箱状に窪んでいる。そして第一窪み部21は、ラバーシート13の表面133から上方向、すなわち基板12とは反対方向へ突出している。この場合、第一窪み部21は、表面133から上方向へ突出した上壁211が弾性変形する。そして第一窪み部21は、図1に示すように、基板12との間に中空状の空気溜まり室27を形成して基板12上の電子部品17および端子18を覆っている。本実施形態の場合、第一窪み部21の寸法は、空気溜まり室27の容積が接点室26の容積よりも十分に大きくなるように設定されている。また、空気溜まり室27は、第一窪み部21の上壁211が弾性変形することによって内容積が若干変化する。
【0021】
また、図4に示すように、ラバーシート13に設けられた二個の第二窪み部22と、二本の誘導溝23と、二個の逆止部24と、二本の通気溝25とは、それぞれ接点ドーム部19の中心を通ってラバーシート13の長手方向へ貫く中心軸に対して線対称に配置されている。具体的には、二個の第二窪み部22は、ラバーシート13の長手方向において、接点ドーム部19に対して第一窪み部21の反対側に設けられている。つまり、接点ドーム部19は、ラバーシート13の長手方向において第一窪み部21と第二窪み部22との間に配置されている。また第二窪み部22は、ラバーシート13の短手方向において、接点ドーム部19の両外側に一個ずつ設けられている。この第二窪み部22は、全体として矩形状に形成されているとともに、一辺に案内壁221を有している。この案内壁221は、第二窪み部22を形成する周囲の壁うち接点ドーム部19から遠い部分が円弧状に外側へ膨らんで形成されている。
【0022】
第二窪み部22は、図2および図4に示すように、ラバーシート13の取付面131から上方向、すなわち基板12とは反対方向へ窪んでいる。この場合、第二窪み部22の深さは、第一窪み部21の深さよりも浅く設定されている。本実施形態の場合、第二窪み部22は、ラバーシート13の表面133から上方向へは突出していない。そして、この第二窪み部22は、基板12との間に中空状の異物溜まり室28を形成している。この場合、第二窪み部22の周囲の壁は弾性変形し難い。そのため、異物溜まり室28は、内容積が変化し難くなっている。また、本実施形態の場合、第二窪み部22の寸法は、異物溜まり室28の容積が接点室26および空気溜まり室27の容積よりも十分に小さくなるように設定されている。
【0023】
誘導溝23は、図4に示すように、接点ドーム部19に対してラバーシート13の短手方向の両外側に一本ずつ設けられている。本実施形態の場合、誘導溝23は、図2および図3に示すように、第二窪み部22の深さとほぼ同じ深さに設定されている。また、誘導溝23は、その幅および深さがほぼ同じ寸法に設定されている。この誘導溝23は、第一窪み部21と第二窪み部22との間に配置されてこれら第一窪み部21と第二窪み部22とを接続している。
【0024】
具体的には、誘導溝23は、図4に示すように直線部231および円弧部232を有している。誘導溝23の直線部231は、第一窪み部21に接続されている。誘導溝23の円弧部232は、第二窪み部22に接続されている。この場合、円弧部232は、円弧部232を形成する径方向外側の壁が第二窪み部22の案内壁221に滑らかに接続されている。このように誘導溝23の円弧部232は、直線部231の延長線上から外れた位置で第二窪み部22に接続されている。また第二窪み部22は、誘導溝23の直線部231に対してラバーシート13の短手方向の内側、すなわち接点ドーム部19側に設けられている。そして、ラバーシート13の誘導溝23は、図2に示すように基板12との間に誘導路29を形成している。この誘導路29は、空気溜まり室27と異物溜まり室28とを連通する。本実施形態の場合、円弧部232を形成する径方向外側の壁および第二窪み部22の案内壁221はほぼ同じ曲率半径に設定されている。
【0025】
二個の逆止部24は、図4に示すように、それぞれ第二窪み部22と誘導溝23の円弧部232との接続部分において円弧部232の内側に設けられている。つまり、第二窪み部22は、その後部が誘導溝23の円弧部232に接続されている。そして、第二窪み部22は、円弧部232との接続部分から誘導溝23の直線部231とほぼ平行に接点ドーム部19側へ延びている。逆止部24は、この第二窪み部22を形成する周壁の一部、すなわち第二窪み部22と誘導溝23との間の壁によって形成されている。
【0026】
通気溝25は、図4に示すように、接点ドーム部19に対してラバーシート13の短手方向の両外側に一本ずつ設けられている。この通気溝25はほぼ直線に形成されている。通気溝25は、一方の端部がラバーシート13の長手方向における接点ドーム部19の中央付近に接続され、他方の端部が誘導溝23の直線部231に対して斜めに接続されている。この場合、通気溝25の他方の端部は、第一窪み部21に比して第二窪み部22の近傍で誘導溝23に接続されている。これにより、ラバーシート13の通気溝25は、基板12との間に接点室26と誘導路29とを連通する通気路30を形成している。
【0027】
本実施形態の場合、図3に示すように、通気溝25の深さは誘導溝23の深さとほぼ同じ寸法に設定されている。そして、通気溝25の幅は誘導溝23の幅と同じかそれよりも小さく設定されている。また、図4に示すように、誘導溝23と通気溝25の接続部分において誘導溝23と通気溝25のなす角度は、第二窪み部22側に比べて第一窪み部21側の方が小さく設定されている。
【0028】
スイッチ装置10の基台11、基板12、およびラバーシート13は、図1および図2に示すように、ケース14に収容されている。このケース14は、下ケース部141および上ケース部142を有している。下ケース部141は、下側が開口する矩形箱状に形成されている。そして下ケース部141は、下方から順に基台11、基板12、およびラバーシート13を収容している。また上ケース部142は、図5に示すように、上側が開口する角筒状に形成されている。そして下ケース部141は、上部が上ケース部142の下部に接続されている。これら下ケース部141および上ケース部142は樹脂などで一体に形成されている。この場合、ケース14は上下が開口して連通している。
【0029】
ケース14は、上ケース部142に操作部材15が設けられている。具体的には、操作部材15は、図1、図2および図5に示すように、ケース14の上ケース部142よりも一回り程大きい矩形箱状に形成されている。そして操作部材15は、ケース14の上ケース部142の外側に摺動可能に嵌め込まれている。これにより操作部材15は、ケース14の上ケース部142に対して上下方向へ移動する。また、操作部材15は伝達部151を有している。伝達部151は、操作部材15の天井面152の中央付近に位置して角柱状に形成されて、天井面152からラバーシート13側へ垂直に突出している。この伝達部151は、下面がラバーシート13に設けられた接点ドーム部19の被押圧部192上面に接している。このため、操作部材15に入力された操作力は、伝達部151を通して被押圧部192に伝わる。
【0030】
次に、上記構成の作用について説明する。
スイッチ装置10において使用者が操作部材15を押圧操作すると、操作部材15は下方向へ移動する。するとラバーシート13に形成された接点ドーム部19の被押圧部192は、操作部材15の伝達部151によって下方向へ押される。このときラバーシート13に形成された接点ドーム部19の変形部191は、下方向へ押し潰されて弾性変形する。すると被押圧部192の下面に設けられた可動接点20は、接点ドーム部19の変形部191が押し潰されて弾性変形することに伴って基板12上の固定接点16に接触する。これにより、固定接点16は、電気的に切断された一対の接点間が導通する。
【0031】
この場合スイッチ装置10はオン状態となり、基板12の電子部品17などによって処理されたオン信号が端子18を介して図示しないデフォッガーの制御装置へ送られる。この結果デフォッガーは駆動される。その後、使用者が操作部材15の押圧操作を解除すると、弾性変形した接点ドーム部19の変形部191は変形前の椀状に復元される。この場合、被押圧部192の下面に設けられた可動接点20は、接点ドーム部19の変形部191が復元することに伴って基板12上の固定接点16から離反する。そして、操作部材15は、この変形部191の復元に伴って上方へ押されて、操作前の初期位置に戻される。
【0032】
このような操作の際、基板12とラバーシート13との間に形成された空間、すなわち接点室26と、空気溜まり室27と、異物溜まり室28と、誘導路29と、通気路30との間には空気の流れが生じる。以下、この操作時の空気の流れについて図4を主に参照して説明する。
【0033】
ラバーシート13の接点ドーム部19は、操作部材15の伝達部151によって被押圧部192が下方向へ押されると、変形部191が押し潰されて弾性変形する。すると、接点室26は、この接点ドーム部19の変形部191の弾性変形に伴って内容積が減少する。そのため接点室26内部の空気は押し出される。接点室26から押し出された空気は、通気路30を通って誘導路29へ流れる。この場合、誘導路29は、空気溜まり室27および異物溜まり室28へ接続されているが、空気溜まり室27は異物溜まり室28に比べて内容積が十分に大きい。そのため、誘導路29へ流れた空気の大部分は空気溜まり室27へ流れ込む。
【0034】
次に、操作部材15の押圧操作が解除されると、ラバーシート13の接点ドーム部19は、変形部191がその弾性力によって元の椀状に復元される。すると接点室26は、接点ドーム部19の変形部191の復元に伴って内容積が増大する。そのため接点室26は、周囲の空気すなわち空気溜まり室27、異物溜まり室28、誘導路29、通気路30内の空気を内部へ吸い込む。この場合、接点ドーム部19の変形部191の復元は短時間のうちに行われる。そのため、接点室26周囲の空気は、変形部191が復元する短時間のうちに接点室26内部へ吸い込まれる。
【0035】
このとき空気溜まり室27内の空気は誘導路29へ吸い込まれる。ここで空気溜まり室27にゴミやはんだ屑などの異物が残っていると、この異物も一緒に誘導路29へ吸い込まれることがある。この場合、誘導路29へ吸い込まれた異物は誘導路29内を直線部231に沿って直線状に進む。そしてこの異物は、矢印Bで示すように、惰性で誘導路29と通気路30との接続部分を通過して円弧部232に沿って進み、さらに異物溜まり室28を形成する第二窪み部22の案内壁221に沿って異物溜まり室28内へ入る。
【0036】
ここで本実施形態の場合、誘導路29を形成する円弧部232の径方向外側の壁および異物溜まり室28を形成する第二窪み部22の案内壁221はほぼ同じ曲率半径に設定されている。このため、異物は、円弧部232の壁と案内壁221に沿って滑らかに異物溜まり室28へと案内される。また、誘導路29および通気路30について、空気溜まり室27側の誘導路29と通気路30とのなす角度は、異物溜まり室28側の誘導路29と通気路30とのなす角度より小さく設定されている。このため、誘導路29へ吸い込まれた異物は通気路30へ入り難くなっている。
【0037】
その後さらにスイッチ装置10が操作されると、再び接点室26と、空気溜まり室27と、異物溜まり室28と、誘導路29と、通気路30との間に空気の流れが生じる。この場合、異物溜まり室28へ入り込んだ異物は、空気の流れによって誘導路29へ入り込もうとするが、逆止部24によって誘導路29への逆流が止められる。このため異物は、一旦異物溜まり室28に集められた後は異物溜まり室28から逆流し難い。
【0038】
また本実施形態の場合、異物溜まり室28は、空気溜まり室27に比べて内容積が十分に小さい。さらに、異物溜まり室28は、周囲を形成する壁が弾性変形し難いため内容積が変化し難い。そのため、異物溜まり室28は、接点室26から押し出された空気が内部に入り込み難く、これにより内部に空気の流れが生じ難い構成となっている。その結果、異物溜まり室28に入り込んだ異物は、空気の流れによって撹拌され難く、より効果的に誘導路29へ逆流を防ぐことができる。
【0039】
このように、本実施形態によれば、接点室26内部の空気は、操作部材15が押圧操作されると、接点ドーム部19の変形部191が弾性変形することに伴い空気溜まり室27へ押し出される。そして、操作力が解除されて接点ドーム部19の変形部191が復元されると、接点室26は空気溜まり室27内部の空気を吸い込む。このように、スイッチ装置10は、操作の際いわゆる呼吸をすることにより、操作時の接点室26内の空気に圧縮による反発を防いで操作を容易にしている。
【0040】
この場合、呼吸によって空気溜まり室27から誘導路29へ吸い込まれた異物は、誘導路29から分岐する通気路30へは入り込み難い。つまり誘導路29へ吸い込まれた異物は、惰性で誘導路29を通って異物溜まり室28へ誘導される。そして、異物溜まり室28へ入った異物は、逆止部24によって異物溜まり室28からの流出が防がれる。このように、スイッチ装置10は、空気溜まり室27に残った異物が接点室26へ吸い込まれ難い構成となっており、この結果、固定接点16と可動接点20との間に異物が入り込んで生じる接点不良の低減が図られる。
【0041】
さらに本実施形態によれば、接点室26と誘導路29とを連通する通気路30は、空気溜まり室27に比べて異物溜まり室28の近傍で誘導路29に接続されている。このため、空気溜まり室27から誘導路29へ入り込んだ異物は、誘導路29と通気路30との接続部分の近辺で止まることなく異物溜まり室28へ誘導される。このため、空気溜まり室27から誘導路29へ入り込んだ異物は、より確実に異物溜まり室28へ誘導される。その結果、異物による接点不良の低減がより効果的に図られる。
【0042】
ここで、接点室26は、操作部材15への操作力が解除されて接点ドーム部19の変形部191が復元する短時間のうちに周囲の空気を吸い込む。つまり、接点室26が周囲の空気を吸い込む吸い込み力は、操作部材15への操作力が解除されてから短時間のうちに弱まる。そのため、空気溜まり室27から誘導路29へ入り込んだ異物は、誘導路29と通気路30との接続部分までの移動距離すなわち移動時間が長いほど、この接続部分から接点室26へ吸い込まれ難い。本実施形態では、通気路30は空気溜まり室27に比べて異物溜まり室28の近傍で誘導路29に接続されている。このため、異物が誘導路29と通気路30との接続部分を通過するまでの距離を確保することができる。その結果、スイッチ装置10は、異物がより接点室26へ吸い込まれ難い構成となっている。
【0043】
(第二実施形態)
第二実施形態では、図6に示すように、第二窪み部31が全体として円形状すなわち半円状に形成されている点において上記第一実施形態とは異なっている。この場合、第二窪み部31の案内壁311は、円弧状に形成されて逆止部24に繋がっている。この構成によれば、矢印Cで示すように、異物溜まり室28内へ入った異物は、案内壁311に沿って進み逆止部24によって止められる。そのため、より効果的に異物の逆流を防ぐことができる。
【0044】
(第三実施形態)
第三実施形態では、図7に示すように、第二窪み部31が全体として円形状すなわち半円状に形成されているとともに逆止部32が第二窪み部31の内側へ曲がった鉤状に形成されている点において上記各実施形態とは異なっている。この構成によれば、矢印Dで示すように、異物溜まり室28内へ入った異物は、案内壁311に沿って進み逆止部32の内側に回り込んで止められる。そのため、さらに効果的に異物の逆流を防ぐことができる。
【0045】
なお、上記各実施形態では、ラバーシート13は、一個の接点ドーム部19に対して、二個の第二窪み部22または第二窪み部31と、二本の誘導溝23と、二個の逆止部24または逆止部32と、二本の通気溝25とを有する構成とした。しかしこれに限らず、接点ドーム部19に対する第二窪み部22または第二窪み部31、誘導溝23、逆止部24または逆止部32、通気溝25の数は適宜増減することができる。また、第一窪み部21は、接点ドーム部19よりも容積が小さいものを複数個連通させて構成してもよい。さらに、ラバーシート13は、複数個の接点ドーム部19を有する構成としてもよい。この場合、一個の第一窪み部21に対して複数の接点ドーム部19を連通させてもよい。
【0046】
そして、上記実施形態は、車両のデフォッガーに用いるスイッチ装置を示したが、これに限らず、車両以外に用いるスイッチ装置としても広く適用することができる。
そのほか、本発明は上記しかつ図面に示した実施例にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。
【符号の説明】
【0047】
図面中、10はスイッチ装置、12は基板、13はラバーシート、16は固定接点、19は接点ドーム、20は可動接点、21は第一窪み部、22、31は第二窪み部、23は誘導溝、231は直線部、232は円弧部、24、32は逆止部、25は通気溝、26は接点室、27は空気溜まり室、28は異物溜まり室、29は誘導路、30は通気路を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に固定接点を有する基板と、
弾性を有する材料で形成されて前記基板の前記固定接点側の面を覆うラバーシートと、を備え、
前記ラバーシートは、
前記固定接点を覆って前記基板との間に中空状の接点室を形成し操作力を受けて弾性変形する接点ドーム部と、
前記接点ドーム部の前記基板側に設けられて前記接点ドーム部が弾性変形することに伴って前記固定接点と接離する可動接点と、
前記基板との間に中空状の空気溜まり室を形成する第一窪み部と、
前記基板との間に中空状の異物溜まり室を形成する第二窪み部と、
前記第一窪み部に接続する直線部および該直線部の延長線上から外れた位置で前記第二窪み部に接続する円弧部を有し前記基板との間に前記空気溜まり室と前記異物溜まり室とを連通する誘導路を形成する誘導溝と、
前記第二窪み部と前記誘導溝の前記円弧部との接続部分において前記円弧部の内側に設けられる逆止部と、
前記接点ドーム部および前記誘導溝に接続して前記基板との間に前記接点室と前記誘導路とを連通する通気路を形成する通気溝と、を有することを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
前記通気溝は、前記第一窪み部に比して前記二窪み部の近傍で前記誘導溝に接続していることを特徴とする請求項1記載のスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−142128(P2012−142128A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292713(P2010−292713)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】