説明

スイッチ装置

【課題】スイッチ装置への組み込み時に可動接点が変形しにくく、組み立て性が良好なスイッチ装置を提供すること。
【解決手段】複数の固定接点32a,31a,33aが周方向に離間して設けられた絶縁基体2と、絶縁基体2に対して有限角度の回転操作領域内で操作されるように配設された操作部材4と、操作部材4に設けられ複数の固定接点32a,31a,33a間の導通状態の切り換えを行うとともに固定接点32a,31a,33aを挟持するように形成された可動接点5とを備えたスイッチ装置において、複数の固定接点32a,31a,33aのうち両端に位置する少なくともいずれか一方の固定接点32aの端部には可動接点5の移動経路の延長上で可動接点5を案内可能なガイド部32cが設けられており、回転操作領域外にある操作部材4を回転すると、可動接点5がガイド部32cを経由して固定接点32aを挟持するように案内可能であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作部材を有限角度の回転操作領域内で回転操作することによって可動接点を固定接点に接触させるスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスイッチ装置は、回転操作可能なレバーの下方スペースに作動部材や接点切り換え機構などが組み込まれており、操作者によってレバーが回転操作されると、作動部材を介して接点切り換え機構の可動接点が固定接点に接触して所定の電気信号が出力されるよう構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平6−48697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のスイッチ装置では、クリップ状の可動接点によって固定接点を挟み込むように取り付けてスイッチ装置に組み込む構造をとる。このため、組み込み時に可動接点が固定接点に当接し、可動接点が変形するおそれがあるという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、スイッチ装置への組み込み時に可動接点が変形しにくく、組み立て性が良好なスイッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスイッチ装置は、複数の固定接点が周方向に離間して設けられた絶縁基体と、前記絶縁基体に対して有限角度の回転操作領域の範囲内で操作されるように配設された操作部材と、前記操作部材に設けられ前記複数の固定接点間の導通状態の切り換えを行うとともに前記固定接点を挟持するように形成された可動接点とを備えたスイッチ装置において、前記複数の固定接点のうち両端に位置する少なくともいずれか一方の前記固定接点の端部に、前記回転操作領域の範囲内における前記可動接点の移動経路の延長上で前記可動接点を案内可能なガイド部を設けたことを特徴とする。
【0007】
このスイッチ装置によれば、回転操作領域の外側にある操作部材を回転すると、可動接点がガイド部を経由して固定接点を挟持するように案内されることから、固定接点に対して可動接点が当接するのを防止できるので、スイッチ装置への組み込み時において可動接点が変形しにくく、組み立て性を良好にすることが可能となる。
【0008】
また、上記スイッチ装置において、前記ガイド部は先端から徐々に厚みが増していくテーパー部を有し、前記テーパー部を前記可動接点の移動経路の延長上と交差するように配置することが好ましい。この場合には、テーパー形状のガイド部が操作部材の回転に伴って、固定接点に対応する厚みまで接点部間の隙間を無理なく広げるので、より円滑に可動接点を組み込むことができる。
【0009】
また、上記スイッチ装置において、前記可動接点は、基部と、前記基部から延出した互いに対向する弾性腕部と、前記弾性腕部の先端側にそれぞれ設けられた接点部とを有し、前記操作部材を前記回転操作領域の外側から回転すると、前記ガイド部が前記基部側から前記接点部間に入り込むことが好ましい。この場合には、可動接点を固定接点に引っ掛かりにくくできるので、より円滑に可動接点を固定接点に挟持させることができ、スイッチ装置の組み込み時における可動接点の変形をさらに抑制することが可能となる。
【0010】
さらに、上記スイッチ装置において、前記可動接点は、前記操作部材の回転平面に対して交差する方向に可動可能な状態で前記操作部材に保持されることが好ましい。この場合には、組み込み時にガイド部と可動接点の中心がずれていても、可動接点がそのずれを解消する方向に可動可能なため、より確実に可動接点をガイド部で案内することが可能となる。また、操作時に均等な接点荷重が固定接点に加わるため、接触安定性を向上でき、スイッチ装置を長寿命とすることが可能となる。
【0011】
さらに、上記スイッチ装置において、隣接する前記固定接点間には絶縁部材が設けられ、前記固定接点および前記絶縁部材の表面は同一平面となるように形成されることが好ましい。この場合には、可動接点の接点部の移動を絶縁部材で案内させることができるので、接点切り換えのタイミングの精度を高めることが可能となる。また、接点切り換え時に可動接点が固定接点の端部に引っ掛かる事態を防ぐことができるので、可動接点の変形を抑制することが可能となる。
【0012】
さらに、上記スイッチ装置において、前記操作部材は、回転軸方向に延伸すると共に回転軸方向と交差する方向に突出する突出片を有する軸部を有し、前記絶縁基体は、前記軸部を回転可能に支持すると共に前記突出片と係合する係合部が設けられた軸受部を有し、前記回転操作領域の外側からの前記操作部材の回転動作に伴って前記可動接点が前記ガイド部に到達する前に前記突出片が前記係合部と係合して当該操作部材の脱落を防止することが好ましい。この場合には、可動接点がガイド部に到達する前に突出片が係合部と係合して操作部材の脱落を防止することができるので、ガイド部による可動接点の案内を精度よく行うことが可能となる。また、スイッチ装置の組み立て性をさらに良好にすることが可能となる。
【0013】
さらに、上記スイッチ装置において、前記絶縁基体には、前記操作部材の一部が挿通されて前記操作部材の回転操作領域を有限角度内に制限するストッパーを設けたケースが結合されていることが好ましい。この場合には、スイッチ装置自体で操作部材の回転操作領域を有限角度内に制限することができるので、スイッチ装置の組立て後に操作部材が不用意に回転操作領域外に移動することを防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、回転操作領域の外側にある操作部材を回転すると、可動接点がガイド部を経由して固定接点を挟持するように案内されることから、固定接点に対して可動接点が当接するのを防止できるので、スイッチ装置への組み込み時において可動接点が変形しにくく、組み立て性を良好にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施の形態に係るスイッチ装置を前方から見たときの分解斜視図である。
【図2】上記実施の形態に係るスイッチ装置を後方から見たときの分解斜視図である。
【図3】固定接点が埋設された絶縁基体の(a)正面図、(b)背面図、(c)左側面図である。
【図4】ガイド部が形成された切替接点の斜視図である。
【図5】操作部材の(a)正面図、(b)背面図、(c)可動接点が組み込まれた状態を下方から見たときの斜視図である。
【図6】上記実施の形態に係るスイッチ装置を組み立てた状態の斜視図である。
【図7】図6に示すスイッチ装置からケースを取り外した場合の斜視図である。
【図8】図6に示すスイッチ装置からケースを取り外した場合の背面図である。
【図9】絶縁基体に操作部材を組み込む初期状態の(a)前面側、(b)背面側を示す図である。
【図10】絶縁基体に操作部材を組み込む途中の状態を示す図である。
【図11】上記実施の形態に係るスイッチ装置の初期状態を示す動作説明図である。
【図12】上記実施の形態に係るスイッチ装置の第1動作状態を示す動作説明図である。
【図13】上記実施の形態に係るスイッチ装置の第2動作状態を示す動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。本発明の実施の形態に係るスイッチ装置は、例えば、自動車のドアロックの検出等に好適な車載用のスイッチ装置として利用可能である。
【0017】
図1は、本発明の一実施の形態に係るスイッチ装置1を前方から見たときの分解斜視図である。図2は、本実施の形態に係るスイッチ装置1を後方から見たときの分解斜視図である。なお以下においては、説明の便宜上、図1,図2に示す上下方向を「スイッチ装置1の上下方向」と呼ぶものとする。また、図1に示す手前側を「スイッチ装置1の前方側」と呼び、図1に示す奥側を「スイッチ装置1の後方側」と呼ぶものとする。
【0018】
図1に示すように、本実施の形態に係るスイッチ装置1は、絶縁基体2と、絶縁基体2に設けられた複数の外部接続端子3と、スイッチ装置1の上下方向に延在し有限角度の回転操作領域内で回転操作可能に設けられた操作部材4と、操作部材4に取り付けられるクリップ状の可動接点5と、操作部材4に取り付けられる弾性部材6と、これらを収容するケース7とを含んで構成される。
【0019】
絶縁基体2は、合成樹脂などの絶縁体で形成され、概して直方体形状を有する基部2aを備えている。基部2aの上面であって後方側の側端部には、一対の腕部により支持された支持壁部2bが設けられている。支持壁部2bは、概して円盤形状を有し、基部2aよりわずかに上方側の位置に配置されている。基部2aの短手方向中央には、その長手方向に沿って複数の(本実施の形態では3つ)外部接続端子3が並設されている。これら外部接続端子3は、上方側および下方側の一部が露出するようにインサート成形により埋設される。図3は、外部接続端子3が埋設された絶縁基体2の(a)正面図、(b)背面図、(c)左側面図である。
【0020】
図3に示すように、基部2aの対向する前面、後面には、後述するケース7のスナップ孔7aに係合可能な突起2cがそれぞれ突出形成されている。また、基部2aの左方側端部の近傍には、前後方向に貫通する貫通孔2dが形成されている。さらに、基部2aの右方側側面には、半円柱状の凹部2eが形成されている。基部2aの上面には、円弧形状を有する凹部2fが設けられている。後述する複数の固定接点31a,32a,33aは、この凹部2fの中央に配置されている。支持壁部2bの中央には、概して円筒形状を有する軸受け2gが前面側に突出するように形成されている。軸受け2gの中央には、孔2hが設けられている。軸受け2gの一部には、切り欠き部2iが形成されている。軸受け2gの後面であって、孔2hの周囲には、係合部2jが設けられている。
【0021】
外部接続端子3は、各々が導電性の金属板で形成された、コモン端子31および切替端子32,33から構成される。コモン端子31は、基部2aの中央に配置され、切替端子32,33は、それぞれコモン端子31の左方側、右方側に配置される。コモン端子31は、埋設部分から絶縁基体2の基部2aの上部に突出する固定接点31aと、基部2aの下部に突出する接続部31bとから構成される。切替端子32(33)も同様に、固定接点32a(33a)および接続部32b(33b)から構成される。金属板からなる固定接点31a,32a,33aは互いに離間しつつ、軸受け2gの孔2hの中心から同一半径上に配置され、全体として略円弧状に形成されている。隣接する固定接点31a,32a,33a間には絶縁部材2kが設けられ、コモン端子31および切替端子32,33は互いに絶縁している。なお、固定接点31a,32a,33aおよび絶縁部材2kの表面は、同一平面となるように形成されている。
【0022】
固定接点32aの先端部には、ガイド部32cが形成されている。ガイド部32cは、外部接続端子3を形成する金属板につぶし加工を施すことにより形成される。
【0023】
図4は、ガイド部32cが形成された切替端子32の斜視図である。切替端子32の固定接点32aは、後述する可動接点5が移動する経路の延長上の外周に位置する端部が鋭角形状であり、この先端部にガイド部32cが形成される。図4に示すように、ガイド部32cは、固定接点32aと比較して厚みが薄く、ガイド部32c全体としてほぼ均一の厚みであるが、固定接点32aとの接続部においては徐々に厚みが増すテーパー形状となるように形成されている。接続部32b(31b,33b)は、略U字状の折り返し部32dと、下に凸の円弧状に湾曲した第1弾性部32eおよび上に凸の円弧状に湾曲した第2弾性部32fと、から構成される。
【0024】
図1に示すように、操作部材4は、樹脂材料などで形成され、スイッチ装置1の上下方向に延びる操作軸部4aと、操作軸部4aを有する基部4bとから構成される。図5は、操作部材4の(a)正面図、(b)背面図、(c)可動接点5が組み込まれた状態を下方から見たときの斜視図である。図5に示すように、操作軸部4aの下端部には、左右対称な上に凸の円弧形状の腕部4cが設けられている。操作軸部4aは、腕部4cの後方側の一部で基部4bに連結される。基部4bは、正面視にて概して矩形状を有する。基部4bの前面には、前方側に突出するように、円柱状の支持軸4dが形成されている。支持軸4dは、円柱の下半分を斜めに切り取った形状である。支持軸4dは、後述する弾性部材6の巻回部6cに挿入されて、これを支持する。
【0025】
支持軸4dの周囲には、後述する弾性部材6の巻回部6cを収容可能な収容部4eが設けられている。この収容部4eの前方側には、収容した弾性部材6の前方側への移動を規制する矩形状を有するばね係止片4fが形成されている。また、腕部4cの底部平面には、後述する弾性部材6の、一端部6aに対向する位置にばね係止部4gが、他端部6bに対向する位置にばね係止部4hが、それぞれ形成されている。基部4bの後面中央には、円形状の凹部4iが形成されている。凹部4iの中央には、後方側に突出するように、軸部4jが設けられている。軸部4jは、図2に示すように、基部4bの後面より後方側の位置まで突出している。軸部4jの先端には、操作部材4の回転軸芯と交差する方向に突出する突出片4kが設けられている。
【0026】
基部4bの下面には、後述する可動接点5を保持可能な接点収納部4lが形成されている。接点収納部4lには、複数本(本実施の形態では4本)の爪部4mおよび突起4nが形成されている。複数の爪部4mは、後方側(図5(c)に示す下方側)の一端部が接点収納部4lにおける基部4bの底面と接続され、前方側に延伸して設けられている。突起4nは、後述する可動接点5のスナップ孔5fに対応した形状である矩形状に形成されている。
【0027】
図1に示すように、可動接点5は、リン青銅板などの弾性を有する金属板を折り曲げて形成される。可動接点5は、スイッチ装置1の左右方向に延在する基部5aと、基部5aの前方側および後方側の側縁部から延出し、互いに対向する弾性腕部5b(5d)と、弾性腕部5bの先端側に設けられた曲面状の接点部5c(5e)とから構成される。なお、可動接点5には、先端側に接点部5cを有する弾性腕部5bと、先端側に接点部5eを有する弾性腕部5dとの二対の弾性腕部が設けられており、接点部5c(5e)同士も対向配置されている。また、基部5aの中央部には、操作部材4の接点収納部4lにおける突起4nとスナップ係合させるための概して矩形状を有するスナップ孔5fが形成されている。
【0028】
可動接点5は、基部4bの接点収納部4lに組み込まれる。接点収納部4lに可動接点5を組み込むには、基部4bの底面と爪部4mとの間に可動接点5の基部5aを図5(c)に示す上方から差し込み、突起4nとスナップ孔5fをスナップ係合させればよい。これにより、可動接点5が操作部材4に保持される。なお、爪部4mの上端は開放されているため、可動接点5は、基部4bの底面に対して図5(c)に示す上下方向に可動可能な状態で組み込まれる。ただし、可動接点5の可動可能範囲は、スナップ係合する突起4nとスナップ孔5fに設けられた遊びの範囲に限られる。
【0029】
また、可動接点5は、操作部材4が回転操作領域内を移動するときには、固定接点31aを挟んで固定接点32aと固定接点33aを両端とする移動経路内で固定接点31a〜33a上を移動する。
【0030】
図1に示すように、弾性部材6は、巻回部6cを有するねじりコイルばねであり、一端部6aと他端部6bとが略180°となるように外側に導出形成されている。巻回部6cの内径は、操作部材4の支持軸4dを収容可能な寸法に設けられている。一方、巻回部6cの外径は、操作部材4の収容部4eに収容可能な寸法に設けられている。一端部6aおよび他端部6bは、それぞれわずかに内側に折り曲げられ、同一直線上に位置するように構成されている。
【0031】
ケース7は、樹脂材料などで形成され、概して略直方体状を有している。また、ケース7は、内部に空洞部が形成され、下方が開放されている。ケース7の前面および後面の所定位置には、絶縁基体2の突起2cそれぞれに係合可能なスナップ孔7aが形成されている。また、ケース7の上面であって前方側の位置には、操作部材4の操作軸部4aが挿通可能な操作軸挿通孔7bが形成されている。この操作軸挿通孔7bの開口両端には、操作部材4における操作軸部4aの回転操作領域を有限角度内に規定するためのストッパー部7cが形成されている。すなわち、操作軸部4aの回転操作領域とは、操作軸部4aが一方のストッパー部7cに当接した状態から他方のストッパー部7cに当接するまでの回転操作可能領域を意味している。また、ケース7には、絶縁基体2の貫通孔2dと重なる位置決め孔7dと、絶縁基体2の凹部2eと重なる切り欠き部7eが形成されている。さらに、ケース7には、外部接続端子3の接続部31b,32b,33bと重なり、外部接続部材が挿通可能な挿通孔7fが形成されている。そして、ケース7内の空洞部上方には、弾性部材6の一端部6aおよび他端部6bと当接する図示しないばね係止部7g(図11参照)が形成されている。
【0032】
図6は、本実施の形態に係るスイッチ装置1を組み立てた状態の斜視図である。なお、図6においては、操作部材4に操作を受けていない初期状態のスイッチ装置1について示している。図6に示すように、このような構成のスイッチ装置1を組み立てると、ケース7の操作軸挿通孔7bから操作部材4の操作軸部4aが露出する。また、ケース7のスナップ孔7aに絶縁基体2の突起2cがスナップ係合することにより、ケース7が固定される。このとき、ケース7の位置決め孔7dと絶縁基体2の貫通孔2d、切り欠き部7eと凹部2e、挿通孔7fと外部接続端子3の接続部31b,32b,33bがそれぞれ重なった状態で、ケース7内の空洞部に各構成部品が収容される。
【0033】
図7は、図6に示すスイッチ装置1からケースを取り外した場合の斜視図である。ケース7内においては、図7に示すように、絶縁基体2の軸受け2gに操作部材4の支持軸4dが挿通された状態で取り付けられる。操作部材4の接点収納部4lに保持された可動接点5の接点部5c,5eは、それぞれ絶縁部材2kを挟み込んでいる。操作部材4の支持軸4dには弾性部材6が取り付けられている。弾性部材6は、巻回部6cが収容部4eに収容され、ばね係止片4fによって前側への移動が規制された状態となっている。弾性部材6の一端部6aおよび他端部6bは、それぞれ操作部材4のばね係止部4g,4hに係止された状態となっている。
【0034】
図8は、図6に示すスイッチ装置1からケースを取り外した場合の背面図である。背面側においては、図8に示すように、操作部材4における軸部4jに形成された突出片4kは、絶縁基体2の係合部2jに対応する位置に配置されている。このため、絶縁基体2からの脱落が規制され、絶縁基体2に保持された状態となっている。
【0035】
次に、このような構成のスイッチ装置1の組み立て工程について説明する。まず、上述のとおり、操作部材4の接点収納部4lに可動接点5を組み込む(図5(c)参照)。続いて、操作部材4の支持軸4dに弾性部材6を取り付け、ばね係止片4fによって巻回部6cを固定することで操作部材4に弾性部材6を組み込む。なお、操作部材4に可動接点5を組み込む前に、弾性部材6を操作部材4に組み込んでも構わない。
【0036】
続いて、絶縁基体2に操作部材4を組み込む。図9は、絶縁基体2に操作部材4を組み込む初期状態の(a)前面側、(b)背面側を示す図である。まず、図9(b)に示すように、絶縁基体2における軸受け2gの一部に形成された切り欠き部2iと、操作部材4における軸部4jの先端部に形成された突出片4kとが重なるように、軸部4jを軸受け2gに挿入する。このとき、絶縁基体の前面側から突出する軸受け2gの一部は、操作部材4の背面側に設けられた凹部4iに収容される。切り欠き部2iと突出片4kとガイド部32cとの位置関係は、切り欠き部2iと突出片4kとが重なった状態で、図9(a)に示すように、可動接点5の接点部5eが、ガイド部32cに対して、有限角度内に制限された回転操作領域内における移動経路の延長線上に離間するように設定されている。なお、図9(a)において、回転操作領域内における可動接点5の接点部5eの移動経路を点線で、この移動経路の回転操作領域外における延長線を1点鎖線でそれぞれ示している。そのため、操作部材4の軸部4jを軸受け2gと重なるように位置合わせして挿入した時点では、操作部材4は回転操作領域外にあり、固定接点32aと可動接点5はまだ接触していない。
【0037】
図9(a)に示す状態から、操作部材4を反時計回りに回転させると、軸部4jの先端部に突出形成された突出片4kと切り欠き部2iとの相対的な位置が変更され、操作部材4は絶縁基体2に対して抜け止めされる。さらに、操作部材4を反時計回りに回転させると、切替端子32におけるガイド部32cの先端が鋭角形状に形成されていることから、可動接点5の基部5a側から接点部5e間に入り込む。ガイド部32cの構造は、先端部が切替端子32の固定接点32aより薄く、固定接点32aとの境界において徐々に厚みが固定接点32aの板厚まで増していくテーパー形状である。そして、このテーパー形状のガイド部32cは、可動接点5の接点部5e(5c)が固定接点31a〜33a上を移動する経路の延長線と交差するように配置してある。そのため、さらに操作部材4を回転すると、接点部5e間に入り込んだガイド部32cによって、接点部5e間の隙間は徐々に広がり、固定接点32aに対応する厚みまで接点部5e間の隙間を無理なく広げ、接点部5eによって固定接点32aを表裏の両面から挟持することが可能となる。
【0038】
図10は、絶縁基体2に操作部材4を組み込む途中の状態を示す図である。図10に示す状態は、操作部材4が絶縁基体2に対して抜け止めされ、可動接点5の接点部5eをガイド部32cで固定接点32aに案内した状態から、さらに反時計回りに操作部材4を回転させた状態である。このとき、操作部材4はいまだ回転操作領域外にある。
【0039】
図10に示す状態から、操作部材4を反時計回りに回転すると、接点部5eの場合と同様に、切替端子32におけるガイド部32cが、可動接点5の基部5a側から接点部5c間に入り込む。さらに操作部材4を回転すると、接点部5c間に入り込んだガイド部32cによって、接点部5c間の隙間は徐々に広がり、固定接点32aに対応する厚みまで接点部5c間の隙間を無理なく広げ、接点部5cによって固定接点32aを表裏の両面から挟持することが可能となる。
【0040】
このように、可動接点5の接点部5e(5c)が外部接続端子3を構成する切替端子32におけるガイド部32cを経由して固定接点32aに案内される構成とすることで、可動接点5の接点部5e(5c)が固定接点32aに引っ掛かることなく円滑に、可動接点5によって外部接続端子3を挟持できる。
【0041】
また、ガイド部32cの先端形状は鋭角形状に限らず、接点部5e(5c)の移動方向に対してテーパー部(テーパー形状の部分)が直交する方向から接触するようにしてもよい。ガイド部32cの先端部を鋭角形状に形成した場合は、接点部5e(5c)の移動経路に対してテーパー部が傾斜して接触するので、直交する方向からの接触に比べてテーパー部との摺動距離を増すことができ、接点部5e(5c)間の隙間をよりスムーズに広げることができる。
【0042】
また、可動接点5は、操作部材4の回転平面に対して交差する方向(図10に示す紙面手前−奥方向)に可動可能な状態で操作部材4に保持されているため、可動接点5を固定接点32aに取り付ける際に、ガイド部32cと可動接点5の中心がずれていたとしても、そのずれを解消する方向に可動接点5を可動させることができる。したがって、ガイド部32cによる可動接点5の案内を確実に施すことが可能となる。
【0043】
最後に、絶縁基体2にケース7を取り付けると、スイッチ装置1の組み立てが完了する。ケース7は絶縁基体2および操作部材4の上方から操作軸部4aが操作軸挿通孔7bを介して外部に突出するように被せ、ケース7のスナップ孔7aに絶縁基体2の突起2cをスナップ係合させて、ケース7を固定する。これにより、操作軸部4aはケース7の操作軸挿通孔7bに形成されたストッパー部7cによって回転操作領域が一方のストッパー部7cから他方のストッパー部7cまでの有限角度内に制限される。すなわち、スイッチ装置1自体で操作部材4の回転操作領域を有限角度内に制限することができるので、スイッチ装置1の組立て後に操作部材4が不用意に回転操作領域外に移動することを防止することが可能となる。
【0044】
次に、図11〜図13に基づいてスイッチ装置1の動作について説明する。図11は、スイッチ装置1の初期状態を示す図である。図11に示すように、スイッチ装置1の初期状態において、弾性部材6の一端部6aおよび他端部6bがそれぞれケース7のばね係止部7gに当接した状態で、弾性部材6の弾性力によって、操作部材4の操作軸部4aが操作軸挿通孔7bの中央位置に付勢されて保持されている。また、操作部材4の接点収納部4lに収納されたクリップ状の可動接点5の接点部5c,5eは、コモン端子31および切替端子32,33の間にそれぞれ位置する絶縁部材2kを挟持している。なお、スイッチ装置1は、コモン端子31および切替端子32が可動接点5を介して導通状態となると第1の回路がオンし、コモン端子31および切替端子33が可動接点5を介して導通状態となると第2の回路がオンする構成となっている。図11に示す初期状態では、コモン端子31および切替端子32または切替端子33が非導通状態のため、スイッチはオフ状態となっている。
【0045】
続いて、図12に示すように、弾性部材6の付勢力に抗して操作部材4の操作軸部4aを図示左方向(反時計回り)へ回転操作させると、弾性部材6の一端部6aがケース7のばね係止部7gから離れ、操作部材4のばね係止部4gに接触し、そのままばね係止部4gに押されるように一端部6a側の腕がたわむ。一方、他端部6bは、ケース7のばね係止部7gに当接した状態を保っている。操作部材4は、軸受け2g内に支持された軸部4jの中心を回転支点として回転し、基部4bが中央位置から図示右方向へ回転移動する。これに伴って、操作部材4の接点収納部4lに収納された可動接点5も、コモン端子31の固定接点31a、切替端子33の固定接点33aおよび絶縁部材2k上を図示右方向へ摺動する。これにより、可動接点5の接点部5cがコモン端子31の固定接点31aと接触し、可動接点5の接点部5eが切替端子33の固定接点33aと接触するため、コモン端子31および切替端子33が可動接点5を介して導通状態となる。したがって、スイッチがオン状態となり、第2の回路がオン状態となる。
【0046】
ここで、固定接点31a,32a,33aおよび絶縁部材2kの表面は同一平面となるように形成されているため、可動接点5の接点部5c,5eは、固定接点31a,32a,33aの端部に引っ掛かることなくスムーズな摺動が可能である。したがって、操作時における可動接点5の変形を抑制することが可能となる。
【0047】
また、可動接点5は、操作部材4の回転平面に対して交差する方向(図12に示す紙面手前−奥方向)に可動可能な状態で操作部材4に保持されているため、ガイド部32cと可動接点5との中心にずれが生じていたとしても、絶縁基体2への操作部材4の組み込み時にそのずれは解消されている。したがって、操作時には均等な接点荷重が固定接点31a,32a,33aに加わるため、接触安定性を向上できる。これにより、スイッチ装置1を長寿命とすることが可能となる。
【0048】
続いて、この状態から、図13に示すように、弾性部材6の付勢力に抗してさらに操作部材4の操作軸部4aを図示左方向へ回転操作させると、操作軸部4aは、ケース7の操作軸挿通孔7bの開口端に設けられたストッパー部7cに接触することでその回転操作を停止する。このとき、操作部材4のばね係止部4gに接触する一端部6a側の腕はさらにたわむ。一方、他端部6bは、ケース7のばね係止部7gに当接した状態を保っている。
【0049】
この操作部材4の回転移動に伴って、可動接点5も図示右方向に摺動するが、可動接点5の接点部5cがコモン端子31の固定接点31aと接触し、可動接点5の接点部5eが切替端子33の固定接点33aと接触した状態を維持するため、コモン端子31および切替端子33の導通状態が維持される。
【0050】
この状態から、操作軸部4aへの押圧操作力を解除すると、操作部材4が弾性部材6の弾性力によって図示右方向へ付勢され操作軸部4aが操作軸挿通孔7bの中央位置へと回転移動する。これに伴って、可動接点5も図示左方向に摺動し、接点部5c,5eが、それぞれ絶縁部材2kと接触する状態となるため、コモン端子31および切替端子33が非導通状態となり、スイッチがオフ状態となる。
【0051】
なお、図示右方向に操作軸部4aを回転操作される場合の動作については、上記と同様なためその説明は省略する。図示右方向(時計回り)に操作軸部4aを回転操作した場合には、可動接点5の接点部5cが切替端子32の固定接点32aと接触し、可動接点5の接点部5eがコモン端子31の固定接点31aと接触するため、コモン端子31および切替端子32が可動接点5を介して導通状態となり、第1の回路がオン状態となる。
【0052】
以上説明したように、本実施の形態に係るスイッチ装置1においては、回転操作領域外にある操作部材4を回転すると、可動接点5がガイド部32cを経由して外部接続端子3を挟持するように案内されることから、固定接点に対して可動接点が当接するのを防止できるので、スイッチ装置1への組み込み時において可動接点5が変形しにくく、組み立て性を良好にすることが可能となる。
【0053】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、さまざまに変更して実施可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更が可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施可能である。
【0054】
例えば、上記実施の形態においては、切替端子32の固定接点32aにガイド部32cが形成される構成について説明しているが、この構成に限定されず、適宜変更が可能である。ガイド部は、固定接点32a,33aの少なくとも一方の端部に形成される構成であればよい。
【0055】
また、上記実施の形態においては、ケース7にストッパー部7cを設けることで、回転操作領域を有限角度内に制限する構成をスイッチ装置1自体が有する構成について説明しているが、この構成に限定されず、適宜変更が可能である。例えば、スイッチ装置1自体はストッパーを有さずに、スイッチ装置1が組み込まれる上位装置の筐体や基板側に、スイッチ装置1が組み込まれることで操作部材と対向して回転操作領域を有限角度内に制限するボスなどのストッパーを設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 スイッチ装置
2 絶縁基体
2a 基部
2b 支持壁部
2c 突起
2d 貫通孔
2e 凹部
2f 凹部
2g 軸受け
2h 孔
2i 切り欠き部
2j 係合部
2k 絶縁部材
3 外部接続端子
31 コモン端子
32,33 切替端子
31a,32a,33a 固定接点
31b,32b,33b 接続部
32c ガイド部
32d 折り返し部
32e 第1弾性部
32f 第2弾性部
4 操作部材
4a 操作軸部
4b 基部
4c 腕部
4d 支持軸
4e 収容部
4f 係止片
4g,4h 係止部
4i 凹部
4j 軸部
4k 突出片
4l 接点収納部
4m 爪部
4n 突起
5 可動接点
5a 基部
5b,5d 弾性腕部
5c,5e 接点部
5f スナップ孔
6 弾性部材
6a 一端部
6b 他端部
6c 巻回部
7 ケース
7a スナップ孔
7b 操作軸挿通孔
7c ストッパー部
7d 位置決め孔
7e 切り欠き部
7f 挿通孔
7g 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の固定接点が周方向に離間して設けられた絶縁基体と、前記絶縁基体に対して有限角度の回転操作領域の範囲内で操作されるように配設された操作部材と、前記操作部材に設けられ前記複数の固定接点間の導通状態の切り換えを行うとともに前記固定接点を挟持するように形成された可動接点とを備えたスイッチ装置において、
前記複数の固定接点のうち両端に位置する少なくともいずれか一方の固定接点の端部に、前記回転操作領域の範囲内における前記可動接点の移動経路の延長上で前記可動接点を案内可能なガイド部を設けたことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
前記ガイド部は先端から徐々に厚みが増していくテーパー部を有し、前記テーパー部を前記可動接点の移動経路の延長上と交差するように配置したことを特徴とする請求項1記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記可動接点は、基部と、前記基部から延出した互いに対向する弾性腕部と、前記弾性腕部の先端側にそれぞれ設けられた接点部とを有し、
前記操作部材を前記回転操作領域の外側から回転すると、前記ガイド部が前記基部側から前記接点部間に入り込むことを特徴とする請求項1または請求項2記載のスイッチ装置。
【請求項4】
前記可動接点は、前記操作部材の回転平面に対して交差する方向に可動可能な状態で前記操作部材に保持されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のスイッチ装置。
【請求項5】
隣接する前記固定接点間には絶縁部材が設けられ、前記固定接点および前記絶縁部材の表面は同一平面となるように形成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のスイッチ装置。
【請求項6】
前記操作部材は、回転軸方向に延伸すると共に回転軸方向と交差する方向に突出する突出片を有する軸部を有し、前記絶縁基体は、前記軸部を回転可能に支持すると共に前記突出片と係合する係合部が設けられた軸受部を有し、前記回転操作領域の外側からの前記操作部材の回転動作に伴って前記可動接点が前記ガイド部に到達する前に前記突出片が前記係合部と係合して当該操作部材の脱落を防止することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のスイッチ装置。
【請求項7】
前記絶縁基体には、前記操作部材の一部が挿通されて前記操作部材の回転操作領域を有限角度内に制限するストッパーを設けたケースが結合されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−190750(P2012−190750A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55378(P2011−55378)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】