説明

スイッチ装置

【課題】光源を追加したり、専用の制御回路を追加したりすることなく、なされた操作に基づいて機械的に照明によるフィードバックを行うことができ、さらに、誤検出を防止することができるスイッチ装置を提供する。
【解決手段】スイッチ装置1は、主に、光を出射するLED12と、LED12から出射された光を内部に伝達させるライトガイド10と、ライトガイド10になされた押し下げ操作に基づいて弾性変形を行ってライトガイド10の内部に伝達する光を、自身の内部に伝達させて光の進行方向をライトガイド10の表面100方向に変更させる光路変更部24と、ライトガイド10になされた押し下げ操作を検出する電極130を有するタッチセンサ部13と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、半透明のカバーと、カバーの下に設けられたタッチパッドと、タッチパッドの下に設けられた発光層と、を備えたタッチパッド装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このタッチパッド装置は、さらに、なされた操作を検出するようにタッチパッドを制御するタッチパッドセンサコントローラと、発光するように発光層を制御する照明コントローラと、を備えている。照明コントローラは、タッチパッドコントローラに接続され、操作がなされた位置に関する情報がタッチパッドコントローラから照明コントローラに出力される。照明コントローラは、この位置に関する情報に応じて発光層を発光させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−312116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のタッチパッド装置は、照明コントローラによる電子制御により、操作された位置の発光が制御されるので、処理能力の高いCPU(Central Processing Unit)を使用しなければならず製造コストが高くなる。また、従来のタッチパッド装置は、例えば、カバーに水滴が付着した場合、水滴の寄生容量により、指を誤検出する可能性がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、光源を追加したり、専用の制御回路を追加したりすることなく、なされた操作に基づいて機械的に照明によるフィードバックを行うことができ、さらに、誤検出を防止することができるスイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、光を出射する光源と、光源から出射された光を内部に伝達させるライトガイドと、ライトガイドになされた押し下げ操作に基づいて弾性変形を行ってライトガイドの内部に伝達する光を、自身の内部に伝達させて光の進行方向をライトガイドの表面方向に変更させる光路変更部と、ライトガイドになされた押し下げ操作を検出する電極を有するタッチセンサ部と、を備えたスイッチ装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光源を追加したり、専用の制御回路を追加したりすることなく、なされた操作に基づいて機械的に照明によるフィードバックを行うことができ、さらに、誤検出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1(a)は、第1の実施の形態に係るスイッチ装置の上面図であり、(b)は、(a)のI(b)-I(b)線で切断した断面を矢印方向から見た断面図であり、(c)は、スイッチ装置のタッチセンサ部のブロック図である。
【図2】図2(a)は、第1の実施の形態に係る光路変更部の上面図であり、(b)は、光路変更部の側面図であり、(c)及び(d)は、押し下げ操作の前後で光の進行方向が変更される様子を説明するための模式図である。
【図3】図3(a)及び(b)は、第2の実施の形態に係る押し下げ操作の前後で光の進行方向が変更される様子を説明するための模式図であり、(c)は、変形例に係る光路変更部と基板に形成されたパターンとの接続を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態の要約)
実施の形態に係るスイッチ装置は、光を出射する光源と、光源から出射された光を内部に伝達させるライトガイドと、ライトガイドになされた押し下げ操作に基づいて弾性変形を行ってライトガイドの内部に伝達する光を、自身の内部に伝達させて光の進行方向をライトガイドの表面方向に変更させる光路変更部と、ライトガイドになされた押し下げ操作を検出する電極を有するタッチセンサ部と、を備える。
【0011】
[第1の実施の形態]
(スイッチ装置1の構成)
図1(a)は、第1の実施の形態に係るスイッチ装置の上面図であり、(b)は、(a)のI(b)-I(b)線で切断した断面を矢印方向から見た断面図であり、(c)は、スイッチ装置のタッチセンサ部のブロック図である。なお、実施の形態に係る各図において、部品と部品との比率は、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
このスイッチ装置1は、一例として、車両に搭載され、押し下げ操作前には、照明されていなかった後述するフィードバックマーク19aが、押し下げ操作後に照明されることで、操作者に操作を受け付けたことをフィードバックする、つまり、操作フィードバックを操作者に与えるように構成されている。また、スイッチ装置1は、例えば、水滴が付着した場合、水滴による寄生容量に起因する誤検出を防止することができるように構成されている。なお、本実施の形態に係るスイッチ装置1は、一例として、車両に取り付けられるが、これに限定されない。また、以下における押し下げ操作前とは、押し下げ操作を行う前を示し、押し下げ操作後とは、押し下げ操作を行って光路変更部24が最も押しつぶれている時点を示すものとする。
【0013】
スイッチ装置1は、主に、光を出射する光源としてのLED(Light Emitting Diode)12と、LED12から出射された光を内部に伝達させるライトガイド10と、ライトガイド10になされた押し下げ操作に基づいて弾性変形を行ってライトガイド10の内部に伝達する光を、自身の内部に伝達させて光の進行方向をライトガイド10の表面100方向に変更させる光路変更部24と、ライトガイド10になされた押し下げ操作を検出する電極130を有するタッチセンサ部13と、を備える。
【0014】
また、スイッチ装置1は、例えば、図1(a)及び(b)に示すように、ライトガイド10の表面100に接着剤14を介してシート16が設けられている。
【0015】
スイッチ装置1は、例えば、図1(b)に示すように、筐体4に形成された凹部40の底部である設置面41に配置される。
【0016】
(ライトガイド10の構成)
ライトガイド10は、例えば、表面100及び裏面101が矩形となる板形状を有する。また、ライトガイド10は、例えば、裏面101から窪んだ段差部102が形成されている。
【0017】
ライトガイド10は、例えば、光を透過させるアクリル、ポリカーボネート等の合成樹脂を用いて形成される。ライトガイド10の内部を進行する光は、ライトガイド10の側面104に設けられた反射部材20と衝突又は相互作用して散乱する(以下では散乱すると記載する。)。
【0018】
この散乱された光の一部は、シート16とライトガイド10との間に形成される空気層5との境界、光路変更部24とライトガイド10との間に形成される空気層6との境界、及び側面103等に接する空気7との境界で反射する。これは、ライトガイド10の屈折率が、空気層5、空気層6及び空気7の屈折率よりも大きいので、全反射が起こり易いことに起因している。
【0019】
シート16に形成されたマーク19bに対応するライトガイド10の裏面101の段差部102には、光をマーク19b方向に散乱させる散乱部材22が設けられている。この散乱部材22によって、光の一部は、マーク19bを介してライトガイド10の外に放出されるので、操作者からは、マーク19bが照明されているように見える。段差部102は、例えば、ライトガイド10の裏面101と、散乱部材22の光路変更部24に接触する側の面と、が同じ平面上、つまり、フラットになるように構成されている。
【0020】
ここで、反射部材20及び散乱部材22は、例えば、アルミニウム、銀等の金属材料、酸化チタン(チタンホワイト)等を用いた塗装、及び光を反射する白色シート等を用いて形成される。
【0021】
(LED12の構成)
LED12は、例えば、車両の電源がオン状態にされると点灯するように構成されている。
【0022】
LED12は、例えば、図1(a)に示すシート16の上面視において横中央の線(例えば、I(a)-I(a)線)を中心線として筐体4の凹部40の側面42に設けられている。LED12の側面42における位置は、例えば、図1(b)に示すように、ライトガイド10の側面103の中央に向けて光を出射可能な位置である。従って、LED12から出射された光は、ライトガイド10の側面103から内部へ進行し、側面104に設けられた反射部材20により散乱する。
【0023】
この散乱された光の一部が、さらに、散乱部材22により散乱する。この散乱した光の一部が、臨界角よりも小さい角度で空気層5との境界に入射するので、ライトガイド10と空気層5の境界で反射せずに、マーク19bを照明する光となる。
【0024】
このLED12は、例えば、スイッチ装置1を照明する目的で設けられた光源を、照明フィードバックとしても用いている。つまり、スイッチ装置1は、照明用のLED12以外に照明フィードバック用の光源を追加する必要がない。
【0025】
(タッチセンサ部13の構成)
タッチセンサ部13は、例えば、図1(c)に示すように、電極130と、静電容量IC(Integrated Circuit)131と、を備えて概略構成されている。
【0026】
電極130は、例えば、ライトガイド10と対向する光路変更部24の面、つまり、後述する光路変更部24の表面241、及び凸部242の表面、に形成される。また、電極130は、例えば、光路変更部24の側面にも設けられている。この電極130は、例えば、酸化インジウム系、酸化スズ系及び酸化亜鉛系の透明電極が用いられる。なお、電極130は、例えば、光路変更部24の全面に設けられ、基板26に設けられたパターンと裏面側で電気的に接続されても良い。
【0027】
この電極130は、例えば、基板26に形成されたパターン260と電気的に接続するように構成されている。このパターン260は、静電容量IC131と電気的に接続されている。また、基板26は、例えば、電子部品等が搭載されたプリント配線基板である。
【0028】
静電容量IC131は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、半導体メモリであるRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等から構成されるマイクロコンピュータである。この静電容量IC131は、例えば、電極130から取得した静電容量信号から求められる静電容量と、ROMに格納されたしきい値と、を比較することで、押し下げ操作がなされたか否かを判定するように構成されている。このタッチセンサ部13は、一例として、指による押し下げ操作により、後述する光路変更部24の厚みがhからおよそhとなるときの静電容量が、静電容量IC131に格納されたしきい値よりも大きくなるように構成されている。ここで、光路変更部24の厚みがhのとき、一例として、電極130を介したライトガイド10と光路変更部24との接触面積が最大になるものとする。
【0029】
ここで、静電容量は、例えば、主に、検出対象物と電極130の距離に反比例し、検出対象物とシート16との接触面積、及び電極130とライトガイド10の接触面積に比例する。操作者の指と水滴とを比較した場合、接触面積は、指の方が大きいといえる。また、電極130は、押し下げ操作前であっても、ライトガイド10と点で接していることから、シート16に接する検出対象物との距離は、ライトガイド10を押し下げたときと変化しない。しかし、電極130がライトガイド10に接触する接触面積は、押し下げ操作を行っているときの方が大きくなる。つまり、検出される静電容量は、押し下げ操作前よりも押し下げ操作を行っているときの方が大きくなる。従って、指で押し下げ操作を行って光路変更部24の厚みがhとhの間で、hよりの厚みとなるときの静電容量がしきい値を超えるように、しきい値を定めることにより、静電容量IC131は、精度良く、押し下げ操作の判定を行うことが可能となる。また、静電容量IC131は、光路変更部24の厚みがhで接触面積が指よりも小さい水滴の静電容量がしきい値を越えることはないので、誤検出を行うことはない。なお、以下では、説明を簡略化するため、例えば、押し下げ操作の検出に関する記載において、厚みがhとなるときの静電容量がしきい値を超える等の表現を用いるものとする。
【0030】
(シート16の構成)
シート16は、例えば、フィルム形状のPC(ポリカーボネート)等の合成樹脂を用いて形成される。このシート16は、例えば、遮蔽部としての印刷部18と、透過部としてのフィードバックマーク19a及びマーク19bと、が形成されている。なお、1枚のシートの下に、複数のスイッチ装置が配置される場合、押し下げ操作により局所的にシートが変形しなければ、それぞれの光路変更部24を弾性変形させることができないので、シート16は、ポリカーボネートのような局所的な変形が可能な合成樹脂であることが望ましい。
【0031】
印刷部18は、印刷によるインクが塗布された領域であり、ライトガイド10から放出された光を遮蔽する。一方、フィードバックマーク19a及びマーク19bは、インクが塗布されていない領域であるので、ライトガイド10から放出された光が透過する。
【0032】
上述したように、ライトガイド10は、マーク19bに対応する段差部102に散乱部材22が形成されているので、マーク19bが照明される。
【0033】
一方、フィードバックマーク19aに対応する裏面101には、電極130を介して光路変更部24が接触しているが、押し下げ操作前、その面積は小さい。つまり、光路変更部24に対応するライトガイド10の領域では、ライトガイド10の屈折率と、空気層6の屈折率と、によって後述する臨界角が決まるので、ほとんどの光が反射し、フィードバックマーク19aは、照明されない。なお、電極130は、光の透過率が高い(一例として、ガラスの光透過率を100%として平均透過率が80%以上)ので、ライトガイド10及び電極130を介して光路変更部24へ入射する光の臨界角は、ライトガイド10と光路変更部24の屈折率で決まるものとする。また、電極130は、光の透過率が高いので、ライトガイド10と電極130との接触面積をライトガイド10と光路変更部24との接触面積と近似するものとする。
【0034】
なお、フィードバックマーク19a及びマーク19bは、ライトガイド10の表面100に、直接印刷することで形成されても良い。しかし、例えば、黒色で印刷した場合、ライトガイド10の内部を反射して印刷部分に到達する光が吸収され、照明の輝度が下がる。一方、本実施の形態のように、ライトガイド10とシート16の間に空気層5がある場合、空気層5とシート16との境界で反射が発生し、ライトガイド10に進行する光や、ライトガイド10とシート16とで反射を繰り返す光が発生するので、光が吸収される場合と比べると、照明の輝度が向上する。なお、空気層5の厚みは、一例として、1μm程度である。
【0035】
(光路変更部24の構成)
図2(a)は、第1の実施の形態に係る光路変更部の上面図であり、(b)は、光路変更部の側面図であり、(c)及び(d)は、押し下げ操作の前後で光の進行方向が変更される様子を説明するための模式図である。
【0036】
光路変更部24は、例えば、図2(a)及び(b)に示すように、本体240と、複数の凸部242と、を備えて概略構成されている。光路変更部24は、一例として、図2(c)に示すように、厚みhが1.5mmであり、押し下げ操作後の厚みhが1.0mmとなる。
【0037】
また、光路変更部24は、例えば、図1(b)に示すように、ライトガイド10と基板26の間に設けられ、ライトガイド10の裏面101と、ライトガイド10の段差部102の散乱部材22と、に後述する凸部が接触している。つまり、光路変更部24は、ライトガイド10を支持している。なお、スイッチ装置1は、例えば、ライトガイド10の移動を案内するガイド等が設けられても良いし、光路変更部24以外にライトガイド10を支持する機構を有していても良い。
【0038】
光路変更部24は、例えば、光が透過し、さらに、弾性を有するシリコーンゴム、アクリルゴム等の合成樹脂性ゴムを用いて形成される。光路変更部24には、例えば、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム等の光拡散剤が混合されている。光は、主に、この光拡散剤により散乱する。なお、光路変更部24は、例えば、ライトガイド10等の重さにより、弾性変形し難い材料を用いて形成されるのが望ましい。
【0039】
光路変更部24の本体240は、例えば、図2(a)及び(b)に示すように、表面241が正方形となる板形状を有する。光路変更部24は、例えば、ライトガイド10と対向する面に、先端が先細りとなる少なくとも1つの凸部242を有する。本実施の形態に係る光路変更部24は、例えば、その表面241上に、円錐形状となる複数の凸部242が設けられている。この凸部242の先端が、ライトガイド10の裏面101に、電極130を介して接触しているので、操作がなされていないときは、凸部242がライトガイド10に電極130を介して接触する接触面積は、表面241の面積よりも小さい。これは、操作前に、フィードバックマーク19aを照明させないためである。以下では、フィードバックマーク19aの照明について説明する。
【0040】
例えば、ライトガイド10が、屈折率n(1.490)のアクリルから形成され、光路変更部24が、屈折率n(1.465)のアクリルゴムから形成されている場合の臨界角θは、次のように算出される。なお、以下の計算では、電極130の影響は小さいとしている。
【0041】
押し下げ操作がなされる前、ライトガイド10に接触する光路変更部24の凸部242の面積は、わずかであることから、臨界角θは、ライトガイド10と空気層6との屈折率を用いて算出される。従って、スネルの法則より、臨界角θは、arcsin(n/n)であるから、臨界角θは、約42°(42.155°)と計算される。つまり、ライトガイド10の内部を反射しながら進行する光は、図2(c)に示す入射角θが約42°よりも小さくならないとライトガイド10の外に放出されないこととなる。
【0042】
一方、押し下げ操作がなされた後、光路変更部24の凸部242が弾性変形することでつぶれ、ライトガイド10と光路変更部24の接触面積が増大する。この場合の臨界角θは、ライトガイド10と光路変更部24の屈折率を用いて算出される。従って、スネルの法則より、臨界角θは、約80°(79.489°)と計算される。つまり、ライトガイド10の内部を反射しながら進行する光は、図2(d)に示す入射角θが約80°よりも小さいものが、光路変更部24内に進行することとなる。これは、押し下げ操作がなされた場合の光が、押し下げ操作がなされる前の光よりも容易に光路変更部24内に進行することを意味する。
【0043】
以上の結果により、ライトガイド10の屈折率nと光路変更部24の屈折率nは、近いほうが望ましいことが分かる。つまり、スネルの法則より、例えば、ライトガイド10の屈折率nと光路変更部24の屈折率nが等しい場合、臨界角θが90°となり、光路変更部24上に達したほとんどの光は、光路変更部24に進行する。一方、ライトガイド10の屈折率n(アクリルの場合1.490)と空気層の屈折率n(1.000)から算出される臨界角θは、前述のように約42°であるからその差は歴然としている。
【0044】
光路変更部24に進行した光は、光路変更部24内で散乱し、散乱光としてライトガイド10内に進行する。この散乱光のうち、ライトガイド10と空気層5により定まる臨界角より入射角が小さくなる光の一部が、フィードバックマーク19aを透過するので、操作者からは、フィードバックマーク19aが照明されたように見える。
【0045】
以下に、本実施の形態に係るスイッチ装置1の動作について、各図を参照して説明する。
【0046】
(第1の実施の形態の動作)
・マーク19bの照明
LED12は、車両の電源がオン状態にされると、点灯する。LED12から出射された光は、スイッチ装置1のライトガイド10の側面103からライトガイド10内に進行し、側面103の反対側の側面104に設けられた反射部材20により散乱する。
【0047】
反射部材20によって散乱した光は、ライトガイド10と空気層5、空気層6及び空気7との境界で反射を繰り返し、その一部は、ライトガイド10の裏面101に設けられた散乱部材22により散乱する。この散乱した光の一部が、ライトガイド10の屈折率と空気層5の屈折率で決まる臨界角θよりも小さい入射角となるので、マーク19bを透過してマーク19bを照明する。
【0048】
・フィードバックマーク19aの照明
操作者は、スイッチ装置1を操作するため、マーク19b部分を押し下げる。
【0049】
スイッチ装置1は、この押し下げ操作の操作力により、ライトガイド10が押し下げ操作方向に移動して光路変更部24の厚みをhからhに弾性変形させる。また、押し下げ操作に基づく静電容量が静電容量IC131に格納されたしきい値よりも大きくなるので、静電容量IC131は、押し下げ操作がなされたと判定し、押し下げ操作がなされたことを示す操作信号を出力する。
【0050】
また、光路変更部24は、この押し下げ操作により、厚みhから厚みhに弾性変形すると、凸部242がつぶれて、電極130を介したライトガイド10との接触面積が増大する。
【0051】
光路変更部24が弾性変形することにより、電極130を介したライトガイド10と光路変更部24の接触面積が、弾性変形前と比べて大きくなり、臨界角θが、ライトガイド10の屈折率と、光路変更部24の屈折率と、により決まることとなる。上記に計算したように、この場合の臨界角θは、約80°となり、ライトガイド10と光路変更部24との境界に到達した光で、臨界角θが80°以下のものは、光路変更部24に進行する。
【0052】
光路変更部24に進行した光は、光路変更部24内で反射を繰り返す。光路変更部24からライトガイド10に進行した光の一部は、ライトガイド10と空気層5の境界に入射角が臨界角より小さくなるように入力したものが、フィードバックマーク19aを透過するので、操作者からは、フィードバックマーク19aが照明されたように見える。
【0053】
操作者が操作を終了すると、光路変更部24の復元力により、ライトガイド10は、押し下げ操作方向とは逆向きに移動し、押し下げ操作がなされる前の初期位置に復帰する。この際、光路変更部24の形状が元の形状に戻るので、ライトガイド10と光路変更部24との接触面積が小さくなり、この領域の臨界角θは、再び、ライトガイド10の屈折率と、空気層6の屈折率と、により決まるので、ライトガイド10内の光は、光路変更部24に進行し難くなる。従って、フィードバックマーク19aを通過する光が少なくなるため、操作者からは、フィードバックマーク19aが照明されていないように見える。
【0054】
(第1の実施の形態の効果)
本実施の形態に係るスイッチ装置1は、光路変更部24が弾性変形することにより、この領域の臨界角θが大きくなってフィードバックマーク19aを照明することができるので、フィードバックマークを照明する専用の光源と制御回路を追加する場合と比べて、簡素で機械的な構造により操作フィードバックを与えることができ、また、部品点数が少なくなって製造コストが抑制される。
【0055】
スイッチ装置1は、押し下げ操作に基づく静電容量がしきい値を超えるように構成されているので、シート16に水滴が付着したことに起因する誤検出を防止することができる。
【0056】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態は、光源を追加することなく、フィードバックマーク19aとマーク19bの照明の色を変更することができる点で第1の実施の形態と異なっている。
【0057】
図3(a)及び(b)は、第2の実施の形態に係る押し下げ操作の前後で光の進行方向が変更される様子を説明するための模式図である。なお、以下の実施の形態において、第1の実施の形態と同じ機能及び構成を有する部分は、第1の実施の形態と同じ符号を付し、その説明は省略するものとする。
【0058】
第2の実施の形態に係るスイッチ装置1は、主に、第1の色の光を出射する光源としてのLED12と、LED12から出射された第1の色の光を内部に伝達させるライトガイド10と、光路変更部24aと、タッチセンサ部13と、を備え、光路変更部24aは、第1の色の光を、第1の色の光の色と異なる第2の色の光として放出する蛍光体243を含み、ライトガイド10を介して第1の色の光と第2の色の光とが混合された光を放出するように概略構成されている。
【0059】
(LED12の構成)
LED12は、一例として、青色の光(第1の色の光)を出射する発光ダイオードである。なお、LED12が出射する光の色は、青色に限定されず、フィードバックマーク19aとマーク19bを照明する光の色に合わせて変更される。
【0060】
(光路変更部24aの構成)
第2の実施の形態に係る光路変更部24aは、第1の実施の形態に係る光路変更部24に蛍光体243を含有させて形成される。具体的には、光路変更部24aは、一例として、光拡散剤を含有する白色アクリルゴムと、黄色に発光する蛍光体243と、を備えて概略構成されている。
【0061】
この蛍光体243は、一例として、セリウムをドープしたイットリウムアルミニウム酸化物(YAG:Ce)である。蛍光体243は、LED12より出射された青色の光が蛍光体243により励起し、黄色の光(第2の色の光)を出射するものである。
【0062】
以下に、第2の実施の形態に係るスイッチ装置1の動作について、各図を参照して説明する。
【0063】
(第2の実施の形態の動作)
・マーク19bの照明
LED12は、車両の電源がオン状態にされると、点灯する。LED12から出射された青色光は、スイッチ装置1のライトガイド10の側面103からライトガイド10内に進行し、側面103の反対側の側面104に設けられた反射部材20により散乱する。
【0064】
反射部材20によって散乱した青色光は、ライトガイド10と空気層5、空気層6及び空気7との境界で反射を繰り返し、その一部は、ライトガイド10の裏面101に設けられた散乱部材22により散乱する。この散乱した青色光の一部が、ライトガイド10の屈折率と空気層5の屈折率で決まる臨界角θよりも小さい入射角となるので、マーク19bを透過してマーク19bを青色光で照明する。
【0065】
・フィードバックマーク19aの照明
操作者は、スイッチ装置1を操作するため、マーク19b部分を押し下げる。
【0066】
スイッチ装置1は、この押し下げ操作の操作力により、押し下げ操作方向に移動し、ライトガイド10を介して光路変更部24aを弾性変形させる。また、静電容量IC131は、押し下げ操作に基づく静電容量がしきい値よりも大きくなることに基づいて、押し下げ操作がなされたと判定して操作信号を出力する。
【0067】
光路変更部24aは、この押し下げ操作により、図3(a)及び(b)に示すように、厚みhから厚みhに弾性変形すると、凸部242がつぶれて、電極130を介したライトガイド10との接触面積が増大する。
【0068】
光路変更部24aが弾性変形することにより、電極130を介したライトガイド10と光路変更部24aの接触面積が、弾性変形前と比べて大きくなり、臨界角θが、ライトガイド10の屈折率と、光路変更部24aの屈折率と、により決まることとなる。上記に計算したように、この場合の臨界角θは、約80°となり、ライトガイド10と光路変更部24aとの境界に到達した青色光で、臨界角θが80°以下の入射角θの青色光は、光路変更部24aに進行する。
【0069】
この光路変更部24aに進行した青色光は、例えば、図3(b)に示すように、一部の青色光が光拡散剤により散乱し、他の青色光が蛍光体243により励起され、黄色光として出射される。
【0070】
従って、光路変更部24aからライトガイド10に進行した青色光と黄色光は、ライトガイド10と空気層5の境界に入射角が臨界角より小さくなるように入力したものが、フィードバックマーク19aを透過するので、操作者からは、フィードバックマーク19aが青色光と黄色光とで照明されたように、つまり、2色が混合された白色光で照明されたように見える。
【0071】
操作者が操作を終了すると、光路変更部24aの復元力により、ライトガイド10は、押し下げ操作方向とは逆向きに移動し、押し下げ操作がなされる前の初期位置に復帰する。この際、光路変更部24aの形状が元の形状に戻るので、電極130を介したライトガイド10と光路変更部24aとの接触面積が小さくなり、この領域の臨界角θは、再び、ライトガイド10の屈折率と、空気層6の屈折率と、により決まるので、ライトガイド10内の青色光は、光路変更部24aに進行し難くなる。従って、フィードバックマーク19aを通過する光が少なくなるため、操作者からは、フィードバックマーク19aが照明されていないように見える。
【0072】
なお、他の変形例として、フィードバックマーク19aを白色で照明するためには、例えば、青色光を出射するLED12と、赤色光及び緑色光を出射する蛍光体243、又は紫外線を出射するLED12と、赤色光、緑色光及び青色光を出射する蛍光体243の組み合わせであっても良い。
【0073】
(第2の実施の形態の効果)
第2の実施の形態に係るスイッチ装置1は、光源を追加することなく、押し下げ操作前にはマーク19bを第1の色の光(青色光)により照明し、押し下げ操作後にはフィードバックマーク19aを第1の光と第1の光と異なる第2の光(黄色光)とが混合した第3の光(白色光)で照明することができる。
【0074】
スイッチ装置1は、蛍光体243が発光するので、光路変更部24に蛍光体が含まれない場合と比べて、輝度が向上する。
【0075】
以下では、光路変更部24の変形例について図面を参照しながら説明する。
【0076】
(変形例)
変形例は、光路変更部24bを導電性ゴムで形成することにより、電極としての機能を持たせる点で上記の実施の形態と異なっている。
【0077】
図3(c)は、変形例に係る光路変更部と基板に形成されたパターンとの接続を説明するための模式図である。
【0078】
変形例に係る光路変更部24bは、例えば、基板26に設けられたパターン261とライトガイド10の間に配置され、タッチセンサ部13の電極としての機能を有するように構成されている。具体的には、光路変更部24bは、例えば、カーボンブラック、銀等の導電性粒子と、光拡散剤と、を天然ゴム又は合成樹脂性ゴム等に混合した導電性ゴムを用いて形成される。
【0079】
この光路変更部24bは、例えば、図3(c)に示すように、基板26に形成されたパターン261上に配置される。このパターン261は、静電容量IC131と電気的に接続されているので、光路変更部24bは、パターン261を介して静電容量IC131と電気的に接続されている。
【0080】
静電容量は、例えば、主に、操作者の指と、ライトガイド10の裏面101に接触する光路変更部24bの接触面積と、に基づいて決まる。
【0081】
従って、静電容量IC131は、押し下げ操作に基づく静電容量をしきい値と比較して、操作がなされたことを示す操作信号を出力する。
【0082】
(変形例の効果)
変形例に係るスイッチ装置1は、光路変更部24bが電極となるので、光路変更部24bの表面に電極を形成する場合と比べて、電極の剥がれや断裂による導通不良が発生し難い。
【0083】
以上、本発明のいくつかの実施の形態及び変形例を説明したが、これらの実施の形態及び変形例は、一例に過ぎず、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。これら新規な実施の形態及び変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更等を行うことができる。また、これら実施の形態及び変形例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない。さらに、これら実施の形態及び変形例は、発明の範囲及び要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0084】
1…スイッチ装置
4…筐体
5、6…空気層
7…空気
10…ライトガイド
12…LED
13…タッチセンサ部
14…接着剤
16…シート
18…印刷部
19a…フィードバックマーク
19b…マーク
20…反射部材
22…散乱部材
24、24a、24b…光路変更部
26…基板
40…凹部
41…設置面
42…側面
100…表面
101…裏面
102…段差部
103、104…側面
130…電極
131…静電容量IC
240…本体
241…表面
242…凸部
243…蛍光体
260、261…パターン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する光源と、
前記光源から出射された前記光を内部に伝達させるライトガイドと、
前記ライトガイドになされた押し下げ操作に基づいて弾性変形を行って前記ライトガイドの内部に伝達する前記光を、自身の内部に伝達させて前記光の進行方向を前記ライトガイドの表面方向に変更させる光路変更部と、
前記ライトガイドになされた前記押し下げ操作を検出する電極を有するタッチセンサ部と、
を備えたスイッチ装置。
【請求項2】
前記電極は、前記ライトガイドと対向する前記光路変更部の面に形成される請求項1に記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記光路変更部は、導電性ゴムを用いて形成され、基板に設けられたパターンと前記ライトガイドの間に配置され、前記電極としての機能を有する請求項1に記載のスイッチ装置。
【請求項4】
前記光路変更部は、前記ライトガイドと対向する面に、先端が先細りとなる少なくとも1つの凸部を有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスイッチ装置。
【請求項5】
前記ライトガイドの表面には、前記光を遮蔽する遮蔽部と、前記光を透過させる透過部と、を有するシートが設けられ、
前記光は、前記押し下げ操作に基づく前記光路変更部の前記弾性変形により前記透過部を通過して前記ライトガイドの外に放出される請求項1乃至4のいずれか1項に記載のスイッチ装置。
【請求項6】
前記光源は、第1の色の光を出射し、
前記光路変更部は、前記第1の色の光を、前記第1の色の光と異なる第2の色の光として放出する蛍光体を含み、
前記ライトガイドを介して前記第1の色の光と前記第2の色の光とが混合された光を放出する請求項1乃至5のいずれか1項に記載のスイッチ装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−93155(P2013−93155A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233649(P2011−233649)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】