説明

スイングレジスタ装置

【課題】構造を簡素化できると共に装置の小型化を図ることができるスイングレジスタ装置を提供する。
【解決手段】スイングレジスタ装置10は、下流端が空調風の吹出口26Aとして開口された通風路26を有するレジスタケース12と、通風路26に回動可能に設けられたブレード14と、ブレード14を往復回動(スイング動作)させるための駆動ユニット18及び伝達機構22とを備える。駆動ユニット18には、一対の電極30,31が通電された場合に長手方向に収縮し、一対の電極30,31への通電が停止された場合に長手方向に伸長可能となるように構成された可動部材32と、この可動部材32を長手方向に伸長させるように付勢するスプリング34とを備える。この構成によれば、ブレード14を往復回動させる構成として、一つの可動部材32が用いられている。従って、従来の構成に比して、構造を簡素化できると共に装置の小型化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイングレジスタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スイングレジスタ装置としては、通電加熱により収縮する二本の形状記憶合金を備え、この二本の形状記憶合金の伸縮に応じてブレードを往復回動させるように構成されたものが知られている(例えば、特許文献1〜特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2007−155148号公報
【特許文献2】特開2007−155149号公報
【特許文献3】特開2008−155870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記各スイングレジスタ装置では、いずれも二本の形状記憶合金が用いられていると共に、各形状記憶合金にそれぞれ付随する構成が備えられている。このため、構造が複雑化すると共に装置が大型化するという問題がある。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、構造を簡素化できると共に装置の小型化を図ることができるスイングレジスタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、請求項1に記載のスイングレジスタ装置は、下流端が空調風の吹出口として開口された通風路を有するレジスタケースと、前記通風路に回動可能に設けられ、前記吹出口から吹き出される空調風の風向を変更するブレードと、長手方向に離間した位置に一対の電極が接続されると共に、前記一対の電極が通電された場合に長手方向に収縮し、前記一対の電極への通電が停止された場合に長手方向に伸長可能となるように構成された可動部材と、前記可動部材を長手方向に伸長させるように付勢する付勢部材と、前記可動部材の長手方向の伸縮に応じて前記ブレードを往復回動させる伝達機構と、を備えている。
【0006】
この請求項1に記載のスイングレジスタ装置では、一対の電極が通電されると、可動部材が長手方向に収縮する。一方、一対の電極への通電が停止されると、可動部材が長手方向に伸長可能となり、付勢部材の付勢力によって可動部材が長手方向に伸長される。そして、このようにして可動部材が長手方向に伸縮されると、ブレードが伝達機構によって往復回動(スイング動作)され、吹出口から吹き出される空調風の風向が変更される。
【0007】
ここで、請求項1に記載のスイングレジスタ装置では、上述のように、ブレードを往復回動させる構成として、一つの可動部材が用いられている。従って、従来の構成に比して、構造を簡素化できると共に装置の小型化を図ることができる。
【0008】
請求項2に記載のスイングレジスタ装置は、請求項1に記載のスイングレジスタ装置において、前記ブレードに所定以上の外力が加えられた場合に前記可動部材と前記ブレードとの接続を切り離すためのクラッチ機構をさらに備えたものである。
【0009】
この請求項2に記載のスイングレジスタ装置によれば、ブレードに所定以上の外力が加えられた場合には、可動部材とブレードとの接続がクラッチ機構により切り離される。これにより、例えば、操作者がブレードを手動で回動させることにより、吹出口から吹き出される空調風の風向を変更させることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
以上詳述したように、本発明によれば、従来の構成に比して、構造を簡素化できると共に装置の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明のスイングレジスタ装置の一実施形態について説明する。
【0012】
図1には、本発明の一実施形態に係るスイングレジスタ装置10を備えた空調システムSの全体構成が示されている。空調システムSは、例えば、乗用自動車等の車両に好適に装備されるものであり、空調ユニット2と、ECU4と、コントローラ6と、複数のスイングレジスタ装置10とを備えている。スイングレジスタ装置10はいずれも同一構成とされている。
【0013】
図2には、このスイングレジスタ装置10が詳細に示されている。スイングレジスタ装置10は、レジスタケース12と、ブレード14,16と、駆動ユニット18,20と、伝達機構22,24とを備えている。
【0014】
レジスタケース12は、筒状に構成されており、その内部は、通風路26として形成されている。この通風路26は、上流端が図示しないダクト等を介して上述の空調ユニット2の送風口と連通されると共に、下流端が空調風の吹出口26Aとして開口されている。
【0015】
ブレード14は、吹出口26Aから吹き出される空調風の風向を左右に変更するためのものであり、通風路26における吹出口26A側の領域に配置されている。このブレード14は、後述する伝達機構22の回動レバー52に形成された回動軸58によってレジスタケース12に回動可能に支持されている。
【0016】
一方、ブレード16は、吹出口26Aから吹き出される空調風の風向を上下に変更するためのものであり、通風路26におけるブレード14に対する吹出口26A側の領域に配置されている。このブレード16は、後述する伝達機構24の回動レバー72に形成された回動軸78によってレジスタケース12に回動可能に支持されている。
【0017】
駆動ユニット18は、上述の左右風向変更用のブレード14を往復回動(スイング動作)させるためのものであり、レジスタケース12の上壁に固定されている。
【0018】
図3には、この駆動ユニット18の外観構成が示されており、図4には、この駆動ユニット18の分解斜視図が示されている。これらの図に示されるように、駆動ユニット18は、ケース28と、一対の電極30,31と、可動部材32と、付勢部材としてのスプリング34と、ピン46とを備えている。
【0019】
ケース28は、上側のケース36と下側のケース38とを有して構成されており、上側のケース36には、直線状のガイド溝40が形成され、下側のケース38には、渦巻状の保持溝41、固定穴42、保持壁43が形成されている。
【0020】
一方の電極30は、固定穴42に挿入されると共に、ネジ45及びナット47により下側のケース38に固定されている。一方、他方の電極31は、下側のケース38に形成された側壁49と保持壁43との間に挟持されている。この一対の電極30,31は、上述のECU4から延びるワイヤーハーネス44と接続されており、ECU4によって通電される構成とされている。
【0021】
可動部材32は、例えば、チタン・ニッケル系合金等の形状記憶合金により構成されると共に、渦巻状に形成されており、上述の保持溝41に収容されている。この可動部材32の長手方向一端側は、上述の一方の電極30とネジ45及びナット47により接続され、可動部材32の長手方向他端側は、スプリング34及びピン46を介して他方の電極31と接続されている。
【0022】
また、この可動部材32は、一対の電極30,31が通電された場合に、この一対の電極30,31によって加熱されて長手方向に収縮し、一対の電極30,31への通電が停止されて冷却された場合に、長手方向に伸長可能となるように構成されている。
【0023】
スプリング34は、他方の電極31と可動部材32の長手方向他端側との間に設けられており、可動部材32を長手方向に伸長させるように付勢している。また、ピン46は、スプリング34と可動部材32の長手方向他端側とを接続すると共に、上述のガイド溝40に移動可能に挿入されている。
【0024】
そして、この駆動ユニット18では、一対の電極30,31が通電された場合、可動部材32が長手方向に収縮してピン46がX1方向に移動し、一対の電極30,31への通電が停止された場合、可動部材32が長手方向に伸長可能となり且つスプリング34の付勢力によって可動部材32が伸長されてピン46がX2方向に移動する構成とされている。
【0025】
図2に示される駆動ユニット20は、上述の上下風向変更用のブレード16を往復回動(スイング動作)させるためのものであり、レジスタケース12の側壁に固定されている。なお、この駆動ユニット20は、上述の駆動ユニット18と同一の構成とされており、その説明は省略する。
【0026】
伝達機構22は、上述の駆動ユニット18の駆動力をブレード14に伝達するためのものであり、連結部材48と、スライド部材50と、回動レバー52とを備えている。
【0027】
連結部材48は、その長手方向に延びる連結溝54を有して構成されており、この連結溝54には、上述のピン46が移動可能に挿入されている。
【0028】
スライド部材50は、連結部材48の長手方向と直交する方向に延びる長手状に構成されており、連結部材48と固定されている。
【0029】
回動レバー52は、一端側に設けられた回動軸56を介してスライド部材50に回動可能に連結されている。また、この回動レバー52の他端側には、回動軸58が一体に形成されており、この回動軸58は、上述のブレード14の延在方向における中央部に一体回動可能に固定されている。
【0030】
伝達機構24は、上述の駆動ユニット20の駆動力をブレード16に伝達するためのものであり、上述の伝達機構22と同様に、連結部材68と、スライド部材70と、回動レバー72とを備えている。この連結部材68、スライド部材70、回動レバー72は、上述の伝達機構22における連結部材48、スライド部材50、回動レバー52と同様な構成とされており、その説明は省略する。
【0031】
次に、本発明の一実施形態に係るスイングレジスタ装置10の動作と併せてその作用及び効果について説明する。
【0032】
本発明の一実施形態に係るスイングレジスタ装置10では、一対の電極30,31が通電されると、可動部材32が長手方向に収縮する。一方、一対の電極30,31への通電が停止されると、可動部材32が長手方向に伸長可能となり、スプリング34の付勢力によって可動部材32が長手方向に伸長される。そして、このようにして可動部材32が伸縮されることにより、ピン46がガイド溝40を往復移動する。
【0033】
また、ピン46がガイド溝40を往復移動すると、連結部材48及びスライド部材50がピン46と共に往復移動され、回動レバー52が回動軸58を支点として揺動される。そして、これにより、ブレード14が往復回動(スイング動作)され、吹出口26Aから吹き出される空調風の風向が左右に変更される。
【0034】
同様に、駆動ユニット20に備えられた図示しない一対の電極が通電された状態と一対の電極への通電が停止された状態とに切り替えられると、同じく図示しない可動部材が伸縮され、この可動部材の長手方向他端側に設けられたピン66がガイド溝60を往復移動する。
【0035】
また、ピン66がガイド溝60を往復移動すると、連結部材68及びスライド部材70がピン66と共に往復移動され、回動レバー72が回動軸78を支点として揺動される。そして、これにより、ブレード16が往復回動(スイング動作)され、吹出口26Aから吹き出される空調風の風向が上下に変更される。
【0036】
ここで、本発明の一実施形態に係るスイングレジスタ装置10では、上述のように、ブレード14,16をそれぞれ往復回動させる構成として、各駆動ユニット18,20に可動部材32が一つずつ用いられている。従って、従来の構成に比して、構造を簡素化できると共に、装置の小型化、低コスト化、低質量化を図ることができる。
【0037】
また、本発明の一実施形態に係るスイングレジスタ装置10では、駆動ユニット18,20、伝達機構22,24を省くことで、ブレード14,16を電動でスイングさせない仕様とすることもできる。従って、複雑な構造変更や部品追加等を伴うことなく、ブレード14,16を電動でスイングさせる仕様と、ブレード14,16を電動でスイングさせない仕様との切替を容易に行うことができる。
【0038】
次に、本発明の一実施形態に係るスイングレジスタ装置10の変形例について説明する。
【0039】
図5,図6には、本発明の一実施形態における駆動ユニット18の変形例が示されている。この変形例では、上述の駆動ユニット18が次のように変更されている。
【0040】
つまり、図5に示されるように、ケース28には、膨出部77が形成され、ガイド溝40は、この膨出部77に形成されている。
【0041】
また、図6に示されるように、可動部材32には、クラッチ機構80が一体に設けられている。クラッチ機構80は、ブレード14に所定以上の外力が加えられた場合に可動部材32とブレード14との接続を切り離すためのものであり、上述の膨出部77に収容されている。このクラッチ機構80は、第一スライドプレート82と、第二スライドプレート84と、スプリング86とを備えている。
【0042】
第一スライドプレート82は、可動部材32の長手方向他端側に一体移動可能に固定されており、山型の突起部90を有して構成されている。
【0043】
第二スライドプレート84は、第一スライドプレート82と対向して配置されており、上述のピン46に加え、突起部90と係止される凹部92を有して構成されている。また、この第二スライドプレート84は、下側のケース38に形成されたガイド溝94に移動可能に挿入されている。
【0044】
スプリング86は、第二スライドプレート84と共にガイド溝94に収容されており、第二スライドプレート84を第一スライドプレート82側に付勢している。
【0045】
このような構成によれば、例えば操作者がブレード14を手動で回動させる等によりブレード14に所定以上の外力が加えられた場合には、突起部90と凹部92との係止状態が解除され、可動部材32とブレード14との接続が切り離される。これにより、例えば、操作者がブレード14を手動で回動させることにより、吹出口26Aから吹き出される空調風の風向を左右に変更させることが可能となる。
【0046】
なお、駆動ユニット20についても、上記と同様にクラッチ機構80が追加されても良いことは勿論である。
【0047】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【0048】
また、上記実施形態において、可動部材32は、形状記憶合金により構成されていたが、その他にも、例えば、形状記憶樹脂等により構成されていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態に係るスイングレジスタ装置を備えた空調システムの全体構成を示す図である。
【図2】図1に示されるスイングレジスタ装置の斜視図である。
【図3】図2に示される駆動ユニットの斜視図である。
【図4】図3に示される駆動ユニットの分解斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態における駆動ユニットの変形例を示す図である。
【図6】図5に示される駆動ユニットの分解斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
10 スイングレジスタ装置
12 レジスタケース
14,16 ブレード
18,20 駆動ユニット
22,24 伝達機構
26A 吹出口
26 通風路
30,31 電極
32 可動部材
34 スプリング(付勢部材)
80 クラッチ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下流端が空調風の吹出口として開口された通風路を有するレジスタケースと、
前記通風路に回動可能に設けられ、前記吹出口から吹き出される空調風の風向を変更するブレードと、
長手方向に離間した位置に一対の電極が接続されると共に、前記一対の電極が通電された場合に長手方向に収縮し、前記一対の電極への通電が停止された場合に長手方向に伸長可能となるように構成された可動部材と、
前記可動部材を長手方向に伸長させるように付勢する付勢部材と、
前記可動部材の長手方向の伸縮に応じて前記ブレードを往復回動させる伝達機構と、
を備えたスイングレジスタ装置。
【請求項2】
前記ブレードに所定以上の外力が加えられた場合に前記可動部材と前記ブレードとの接続を切り離すためのクラッチ機構を備えた、
請求項1に記載のスイングレジスタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−78209(P2010−78209A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245908(P2008−245908)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】