説明

スカム除去装置

【課題】パイプスキマを独自の回動装置を備えることなく回動できるようにしたスカム除去装置を提供する。
【解決手段】 パイプスキマ本体1と、そのパイプスキマ本体1の設置されている沈殿池bに沈降・堆積した汚泥を排出するフライトFに当接したときに上方へ持ち上げられ、そのフライトFから外れたときに降下する作動桿11と、上端部が前記パイプスキマ本体の案内部4に回動自在に設けられている連結桿12と、一端部が前記作動桿11の途中に回動自在に設けられるとともに、他端部が前記連結桿12の下端部に回動自在に設けられ、かつ、中間の一部分が回転自在に軸支されているレバー桿13とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプスキマを備えたスカム除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のパイプスキマを備えたスカム除去装置は、そのパイプスキマはスカムが発生する水槽の下流側の水面に一部が水没する形で設置されている。例えば、その水槽が下水処理施設の沈殿池の場合、パイプスキマは、沈殿池の原水流入側と反対側に設けられている沈殿処理水の取出側の手前に一部が水没する形で設置されている。
【0003】
この従来のパイプスキマは、沈殿池の水流方向と直交する方向の水路幅に等しい長さのパイプ材からなり、そのパイプ材には、軸心方向に開口した開口部(切欠部)が設けられている。そして、このパイプスキマは、長手方向の軸心を中心にして回転駆動装置により回転されるように構成されていて、スカム除去時に開口部の一部が水中に没するように回転される。この回転により水が開口部に流れ込む際、スカムはその流れ込む水に同伴されてパイプスキマ内に流入される。上記回転駆動装置は、減速装置付きモータや回転角度を制御するスイッチ等により構成されている。
【0004】
上述のように、スカムの排出を水の流れだけで行う場合は、水の流れが速くないので、特許文献1には、スカム除去時にパイプスキマの開口部の一部が水中に没するように回転されたときに、その開口部の位置よりも上流側の水中に設けられているノズル管からその開口部に向けて空気を噴出させ、スカムの移動を高めるようにすることが開示されている。また、特許文献2には、スカムの上方位置にスプレーノズルを設け、そのスプレーノズルから斜め下方に圧力水を噴出させてスカムに移動力を付与せることが開示されている。
【0005】
しかしながら、生成される水面に浮かぶスカムが薄膜状の場合、例えば、下水処理施設の最終沈殿池に生成する薄膜状のスカムのような場合は、上記特許文献1又は特許文献2に示されるようなスカム移動手段は全く使用することができない。
【0006】
例えば、特許文献1のパイプスキマの開口部に上流側の水中に設けられているノズル管から空気を噴出させてスカムの移動を高めることは困難である。なぜならば、水面上に浮かんでいる薄膜状のスカムは、極めて微妙な力関係で浮遊しているので、スカムの下方から空気が噴出されると水流に乱流が発生し、スカムはフロック化して水中に混入し、その水中に混入したスカムはパイプスキマの下方を移動した位置で再度浮上して処理水に含まれて排出され、放流水質の低下を招来するからである。
【0007】
同様に、上記特許文献2に示されるスカムの上面に移送用の圧力水を噴出させても、水流に乱流を生じさせてスカムをフロック化させるので採用することは困難である。
【0008】
そこで、本出願人は、上記欠点を解決するために、特許文献3に示されるスカム除去装置を提案している。このスカム除去装置は、パイプスキマに設けられている開口部を形成する下辺に、その開口部が水面上に位置しているときに、先端部が水面に生成されるスカムの下方に位置する深さを保って水流の上流側に所定長さ伸びる流動板を設けるとともに、その流動板の先端部位置よりも水流の上流側の所定位置には、その開口部の一部が水中に位置したときに、その開口部に向けて噴出ノズルから水を噴出するようにしている。
【0009】
この提案に係るスカム除去装置によれば、流動板の上面側には開口部に向く周辺に比して流速の速い水流を生成することができ、その速い水流に同伴させてスカムをフロック化させることなく短時間で、かつ、確実に開口部に移動させることができる。
【0010】
このため、排出される処理水質の悪化を防止することができるとともに、スカム排出に伴う水の量も少なくて済み、省エネルギー化を図ることができる。すなわち、この提案に係るスカム除去装置は、いわゆるエコ対策に大きく貢献することができる性質を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実開昭53−88071号公報
【特許文献2】特開平9−276860号公報
【特許文献3】特開2010−46622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来のパイプスキマを備えたスカム除去装置は、モータ等を備えた回転機構装置でパイプスキマを回転駆動させるように構成されているので、設備コストが嵩むとともに、運転コストが嵩むという欠点があった。
【0013】
本発明は、上記欠点を解決するためになされたものであって、その目的は、パイプスキマをモータ等からなる特別な回転機構装置を用いることなく回転駆動させることのできるスカム除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るスカム除去装置は、上記目的を達成するために、例えば以下の構成を備える。即ち、開口部が水面上に位置するとともに、その水面上に位置している開口部の一部が水面下に位置するように回動するパイプスキマ本体と、そのパイプスキマ本体を回動させる回動機構とからなるスカム除去装置であって、前記回動機構は、前記パイプスキマ本体の設置されている沈殿池に沈降・堆積した汚泥を排出するフライトに当接したときに上方へ持ち上げられ、そのフライトから外れたときに降下する作動桿と、その作動桿の上下動をそのパイプスキマ本体の回転動に転換する転換機構とからなることを特徴としている。
【0015】
そして例えば、前記転換機構は、パイプスキマに設けられている開口部が水面上に位置しているときに、基部がその開口部の下辺に位置し、先端部が水面に生成されるスカムの下方に位置する深さを保って水流の上流側に所定長さ伸びる案内部に回動自在に設けられている連結桿と、一端部が作動桿の途中に回動自在に設けられるとともに、他端部が前記連結桿の下端部に回動自在に設けられ、かつ、中間の一部分が回転自在に軸支されているレバー桿とからなることを特徴としている。
【0016】
また例えば、転換機構は、先端部がパイプスキマ本体の開口部近くに回動自在に設けられている連結桿と、一端部が作動桿の途中に回動自在に設けられるとともに、他端部が前記連結桿の下端部に回動自在に設けられ、かつ、中間の一部分が回転自在に軸支されているレバー桿とからなることを特徴としている。
【0017】
更に例えば、転換機構は、作動桿の途中の一部分とパイプスキマ本体の周囲の一部分とが回動自在に連結されて構成されることを特徴としている。
また例えば、作動桿の上下動はフライトに設けられているローラで上下動させられる当接部を介して行われることを特徴としている。
【0018】
更に例えば、作動桿の途中には内ネジを有する連結桿が設けられ、その連結桿に対するその作動桿のねじ込み量によりその作動桿の長さが調整されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、パイプスキマ本体を独自の回動装置を備えることなく回動することができ、設備費及び運転費の低減を図ることができる。したがって、いわゆるエコ対策に大きく貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る第一の実施の形態例に係るスカム除去装置の概略構成図である。
【図2】第一の実施の形態例スカム除去装置のパイプスキマ本体を回転させる回動機構を説明するための模式図である。
【0021】
【図3】第一の実施の形態例スカム除去装置のパイプスキマ本体が回転した状態を示す説明図である。
【図4】本発明に係る第二の実施の形態例のスカム除去装置のパイプスキマ本体を回転させる回動機構を説明するための模式図であり、(a)は開口部が水面上に位置した状態、(b)は開口部の一部が水面下に位置した状態を示している。
【0022】
【図5】本発明に係る第三の実施の形態例スカム除去装置のパイプスキマ本体を回転させる回動機構を説明するための模式図であり、(a)は開口部が水面上に位置した状態、(b)は開口部の一部が水面下に位置した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第一の実施の形態例)
以下、本発明に係る第一の実施形態例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る第一の実施の形態例に係るスカム除去装置a1の概略構成図であり、下水処理施設の最終沈殿池(以下、「沈殿池」と称す。)bに設置されている状態が示されている。
【0024】
この沈殿池bでは、水は左側から右側方向へ流れるように構成されている(後述の図3、図4(a),(b)及び図5(a),(b)においても同じ)。そしてこの沈殿池bには、周知の沈殿池bと同様に、沈降した汚泥を水の流れの上流側(図1において左側)の底部に設けられている図示しないピットに排出する汚泥掻取機構が設けられているが、ここでは、図面を簡略化するために汚泥掻取機構の中の一個のフライトFのみが示されている。なお、以下、水が流れてくる方を上流側、水が流れて行く方を下流側として説明する。
【0025】
フライトFは、周知の汚泥掻取機構と同様に、水中においては沈殿池bの底面b1に沿って下流側から上流側に向って移動し、水面上においては上流側から下流側に向って移動する図示しない一対の無端チェーン間に所定の間隔を保って設けられている。すなわち、フライトFは、沈殿池bの底面b1側ではその底面が底面b1上に当接するように設けられるとともに、その長手方向が水の流れと直交するように設けられている。
【0026】
したがって、一対の無端チェーンが図示しない駆動源により駆動されると、フライトFは、図1の白抜きの矢印に示されるように移動して、底面b1に沈降・堆積した汚泥をピットに排出させることができる。
【0027】
上記フライトFの中の一部のフライトFには、ローラRが設けられている。このローラRは、フライトFの長手方向の一端部側でそのフライトFと同方向に伸びる支軸に回転自在に設けられていて、そのローラRの上面位置はフライトFの上面位置より突出するように設けられている。
【0028】
そして、このローラRの設置位置は、後述する当接部14に対向するように決められているとともに、フライトFを駆動する一対のチェーンの中の一方のチェーン近くに設けられている。
スカム除去装置a1は、パイプスキマ本体1と回動機構10とから構成されている。
【0029】
パイプスキマ本体1は、沈殿池bの下流側の水面部分で、一部が水没する形で、かつ、その水流方向と直交する方向の水路幅全体にわたって設けられている。このパイプスキマ本体1は、断面形状が円形のパイプ材からなるパイプ部2を有している。このパイプ部2は、一端部が沈殿池bの一方の槽壁を貫通してその槽壁の外側に設けられている図示しないスカムピット内に位置し、その開口されている一端部からスカムを含む水をスカムピット内に排出できるように構成されている。そして、パイプ部2の他端部は閉止状に形成されているとともに、沈殿池bの他方の槽壁に回転自在に設けられている。
【0030】
すなわち、このパイプ部2は、沈殿池bの両槽壁間に回転自在に設けられている。また、このパイプ部2には、軸心方向に開口した開口部(切欠部)3が設けられている。なお、このパイプ部2の内径は、開口部3から取り入れられたスカムを含む水をスカムピット内に速やかに流出させることができるように決められている。
【0031】
このパイプスキマ本体1は案内部4を備えている。この案内部4は、鋼製又は合成樹脂製からなる平面形状が長方形の板状の流動板5を有していて、パイプ部2の開口部3を形成する下辺の位置から上流側に向って所定距離(図1においては左側に向って長方形の短辺長さに相当する距離)伸びるように設けられている。
【0032】
すなわち、この流動板5は、流動板5の基部に相当する一端辺側(図1においては右辺側)は開口部3を形成する下辺に接合されている。そして、この流動板5の他端辺(流動板5の先端部)側は、下向きに湾曲して形成され、その湾曲の下端部はパイプスキマ本体1の回転位置にかかわらず、常時、水面近くに位置するように決められている(図1及び図3参照)。
【0033】
案内部4の流動板5の先端部とパイプ部2の下部との間には、扁平な板材からなるカバー6が設けられている。図示の例では、流動板5及びカバー6は、別体に構成されているが、流動板5及びカバー6は、流動板5の先端部を折り返して一体的に形成するようにしてもよい。
【0034】
このように、流動板5の下側にカバー6が設けられていると、流動板5の下面側に水の流れのよどみが無くなり、案内部4の下面におけるスカムの滞留を抑制することができる。
【0035】
回動機構10は、作動桿11と、連結桿12と、レバー桿13と、当接部14とを含んで構成されている。なお、連結桿12及びレバー桿13は、本発明の転換機構に相当している。
【0036】
作動桿11は、パイプスキマ本体1のパイプ部2の下流側で、上端部側が水面上に位置し、下端側が沈殿池bの底面b1近くに位置して垂直状に設けられている。そして、この作動桿11は、水面上において、フレーム15に開けられている垂直方向に伸びる開孔に移動自在に設けられているとともに、作動桿11の下端部が底面b1から所定距離保てるようにストッパ16が設けられている。
【0037】
そして、この作動桿11の長手方向の一部には、所定の間隔を保って沈殿池bの槽壁に基部が固定され、かつ、作動桿11の上下動を自在にして支持する複数(図示の例では3個)の振れ止め部材11a、11a…が設けられている。
【0038】
また、この作動桿11の下端近くには、内部に内ネジの設けられているとともに、外部にレバー桿13の連結部を有する連結管17が設けられている。したがって、連結管17の位置より上方の作動桿11のその連結管17に対するねじ込み量を調節することにより、あるいは、連結管17の位置より下方の作動桿11のその連結管17に対するねじ込み量を調節することにより、作動桿11の実質的な長さを調整することができる。さらに、この作動桿11の下端には、後に詳述する当接部材14が設けられている。
【0039】
連結桿12は、上端部がパイプスキマ本体1の案内部4の側面で、その先端側近くに回動自在に設けられているとともに、その下端部は下方に所定距離伸びて構成されている。そして、連結桿12の長手方向の一部には、所定の間隔を保って沈殿池bの槽壁に基部が固定され、かつ、連結桿12の上下動を自在にして支持する複数(図示の例では2個)の振れ止め部材12a、12a…が設けられている。
【0040】
すなわち、この連結桿12の上端部は、連結桿12が振れ止め部材12a、12a…中を垂直方向に移動したときに案内部4の長手方向(図1において水平方向)に移動できるように構成されていて、パイプスキマ本体1を回動できるように構成されている。
【0041】
レバー桿13は、一端部が作動桿11の途中に設けられている連結管17に回動自在に設けられるとともに、他端部が連結桿12の下端部に回動自在に設けられ、かつ、その中間の一部分が沈殿池bの槽壁に設けられている支軸18に回転自在に軸支されている。このレバー桿13の一端部及び他端部も、上記連結桿12の上端部と同様に、連結桿12が振れ止め部材12a、12a…中を垂直方向に移動したときにレバー桿13の長手方向(図1において水平方向)に移動できるように連結されていて、パイプスキマ本体1を回動できるように構成されている。また、このレバー桿13の一端部も、作動桿11が垂直方向に移動したときに連結管17の連結部がレバー桿13の長手方向に沿って移動できるようにして連結されている。
【0042】
当接部14は、水の流れる方向に関して逆台形の立方体により形成されている。すなわち、この当接部14は、下面及び上面が沈殿池bの底面b1にそれぞれ平行し、かつ、水の流れる方向において下面の長さが上面の長さより短く形成されている。したがって、当接部14の下流側は下流側から上流側に行くに従って下方に向く斜面に形成され、当接部14の上流側は下流側から上流側に行くに従って上方に向く斜面に形成されている。
【0043】
そして、この当接部14の底面位置は、ローラRの軸部位置より少し上で、かつ、ローラRの上面位置より下になるように決められている。さらに、この当接部14の上面の中心位置には、作動桿11の下端部が設けられている。またこの当接部14は、上述したようにローラRの設置位置に対向するように決められている。
【0044】
したがって、フライトFの移動に伴ってローラRが当接部14に当接すると、当接部14が持ち上げられて作動桿11が上方へ持ち上げられ、ローラRが当接部14から外れると、当接部14が下降して作動桿11も降下することができる。この当接部14及び作動桿11の重量は、パイプスキマ本体1を十分に回動できるように決められている。
【0045】
図2は、上記構成からなる回動機構10の模式図で、パイプスキマ本体1を回転させる機構の動作を簡略的に示している。以下、図1の他にこの図2も用いて回動機構10の動作を説明する。
【0046】
当接部14は、ローラR(図2では図示を省略)で上昇させられると、作動桿11は当接部14が上昇した分だけ上昇させられる。作動桿11の上昇は、レバー桿13を支軸18を中心にして回動させ、レバー桿13の先端側、すなわち連結桿12と回動自在に接続されている側を下方に移動させることとなる。
【0047】
連結桿12の下方への移動は、連結桿12の上端部の下方への移動となり、その上端部に回動自在に接続されている案内部4に対して下方へ移動させる力が作用することになる。案内部4に対して下方へ移動させる力が作用すると、この案内部4に接続されているパイプスキマ本体1は、パイプ部2の軸心を中心にして回動することとなる。
【0048】
図3は、パイプスキマ本体1が回動したときの状態を示している。この回動の程度は、水面位置がパイプ部2の開口部3の略中間となるように、レバー桿13の支軸18の位置、作動桿11における連結桿17の位置等が決められている。
【0049】
ローラRの移動が進み、ローラRが当接部14から外れると、作動桿11は自重により降下し、上述とは逆に作用してパイプスキマ本体1は、パイプ部2の軸心を中心にして回動し、図1に示される状態に復帰される。
【0050】
上述の当接部14の上下動、すなわちパイプスキマ本体1の回動は、沈殿池bに流入する水質等によって発生するスカムが一様でないのでこれまでのスカム発生状況によって決められるが、特定の一つのフライトFが一回転する時間でスカムの排出が足りないときには、ローラRは複数のフライトFに取り付けられる。
【0051】
次に、図3も参照してスカム除去動作について説明する。
今、沈殿池(下水処理施設の最終沈殿池)bが沈殿処理を行っていて、ローラRが当接部14に当接してパイプ部2の開口部3の一部分が水中に位置したとする。これと同時に、流動板5の上流側で、かつ、水中に設けられ、噴出方向が開口部3に向けられている図示しない噴出ノズルから圧力水が噴射され、これにより、流動板5の上面側では、開口部3に向う水の流れが促進される。
【0052】
そして、スカムSは、フロック化されることなく、薄膜状を保った状態で流れの速められた水に同伴されてパイプ部2内に移動され、パイプ部2内に吸い込まれる。すなわち、この流動板5の上面には、開口部3に向けた整流が生成され、この流動板5は流動装置の役目を果たしている。
なお、噴出ノズルからの圧力水の噴出が無くともスカム排出が良好に行われるときは、上述の噴出ノズルを省略することができる。
【0053】
パイプ部2内に流入したスカムSは、パイプ部2内を移動してスカムピットに排出され、このスカムピット内のスカムSは、図示しない汚泥処理機等の処理手段により処理される。また、沈殿池bで沈殿処理された処理水は、河川等の水系に放流される。
【0054】
ローラRの移動が進み、ローラRが当接部14から外れると、作動桿11は降下し、上述とは逆に作用してパイプスキマ本体1は、パイプ部2の軸心を中心にして回動し、開口部3が水面上に位置するとともに、噴出ノズルから圧力水の噴射が停止される。
【0055】
上述の例は、スカム除去装置a1が下水処理施設の最終沈殿池に設置されたときであるが、下水処理施設の最初沈殿池に設置されるような場合は、上述の水中に設けられた噴出ノズルの代わりに、流動板5の上流側で、かつ、水面上に設けられ、噴出方向が開口部3に向けられているスプレーノズルが設けられる。
【0056】
そして、当接部14が上昇している間、すなわちパイプ部2の開口部3の一部分が水中に位置している間、スプレーノズルから斜め下方に圧力水を噴出させてスカムSに移動力が付与される。もちろん、スプレーノズルからの圧力水の噴出が無くともスカム排出が良好に行われるときは、スプレーノズルを省略することができる。
【0057】
上述したように、本実施の形態例に係るスカム除去装置a1は、パイプスキマ本体1と、そのパイプスキマ本体1の設置されている沈殿池bに沈降・堆積した汚泥を排出するフライトFに当接したときに上方へ持ち上げられ、そのフライトFから外れたときに降下する作動桿11と、上端部がパイプスキマ本体の案内部4に回動自在に設けられている連結桿12と、一端部が作動桿11の途中に回動自在に設けられるとともに、他端部が連結桿12の下端部に回動自在に設けられ、かつ、中間の一部分が回転自在に軸支されているレバー桿13とで構成されているので、パイプスキマ本体1の回転を独自の回動装置によらずに回動させることができ、設備費及び運転費の低減をはかることができる。したがって、本実施例に係るスカム除去装置は、いわゆるエコ対策に大きく貢献することができる性質を有している。
【0058】
(第二の実施の形態例)
本発明に係る第二の実施の形態例を図4を参照して以下に説明する。第二の実施の形態例においても上述した第一の実施の形態例と同様構成には同一番号を附し、詳細説明を省略する。図4は本発明に係る第二の実施の形態例のスカム除去装置a2のパイプスキマ本体1を回転させる回動機構を説明するための模式図で、(a)は開口部が水面上に位置した状態、(b)は開口部の一部が水面下に位置した状態を示している。
【0059】
このスカム除去装置a2において、上述した第一の実施の形態例のスカム除去装置a1と異なる点は、パイプスキマ本体1が案内部4を有していないので、連結桿12の上端部をパイプスキマ本体1の開口部3近くに回動自在に設けていることである。
【0060】
第二の実施の形態例のスカム除去装置a2においては、案内部4を有していないため、より簡単な構造とすることが出来ながら、第一の実施の形態例のスカム除去装置a1と同様に、パイプスキマ本体1の回転を独自の回動装置によらずに回動することができ、設備費及び運転費の低減を図ることができるという特長を有している。
【0061】
(第三の実施形態例)
本発明に係る第三の実施の形態のスカム除去装置a3を図5を参照して以下に説明する。第三の実施の形態例においても上述した実施の形態例と同様構成には同一番号を附し、詳細説明を省略する。
【0062】
図5は本発明に係る第三の実施の形態例のパイプスキマ本体1を回転させる回動機構を説明するための模式図であり、図5の(a)は開口部が水面上に位置した状態、(b)は開口部の一部が水面下に位置した状態を示している。
【0063】
第三の実施の形態例のスカム除去装置a3において、第一の実施の形態例のスカム除去装置a1と異なる点は、パイプスキマ本体1が案内部4を有していないこと、さらに、連結桿12及びレバー桿13を有していないことである。そして、作動桿11の途中の一部分とパイプスキマ本体1の周囲の一部分とが回動自在に連結されていることである。
【0064】
すなわち、このスカム除去装置a3においては、作動桿11の上下動を直接パイプスキマ本体1に伝えるようにしている。第三の実施の形態例のスカム除去装置a3によれば、第二の実施の形態例に比し更に簡単な構造とでき、かつ上記実施の形態例のスカム除去装置a1,a2と同様に、パイプスキマ本体1の回転を独自の回動装置によらずに回動することができ、設備費及び運転費の低減を図ることができるという特長を有している。なお、このこのスカム除去装置a3においても、パイプスキマ本体1に上述したと同様の案内部4を設けるようにしてもよい。
【0065】
以上、本発明に係る発明の実施の形態例のスカム除去装置について図面を参照して詳説したが、具体的な構成は、上記実施の形態例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において設計変更等が可能である。
例えば、上述の例では、ローラRはフライトFの長手方向の一端部側のみに設けられたが、ローラRをフライトFの長手方向の他端部側、すなわち、一対のチェーンの中の他方のチェーン近くにも設けるとともに、そのローラRに対しても上述と同様の回動機構10を設けるようにしてもよい。
【0066】
以上説明したように各実施の形態例によれば、パイプスキマ本体を回動させる回動機構は、パイプスキマ本体の設置されている沈殿池に沈降・堆積した汚泥を排出するフライトに当接したときに上方へ持ち上げられ、そのフライトから外れたときに降下する作動桿とその作動桿の上下動をそのパイプスキマ本体の回転動に転換する転換機構とからなるので、パイプスキマ本体を独自の回動装置を備えることなく回動することができ、設備費及び運転費の低減を図ることができる。したがって、この提案に係るスカム除去装置は、いわゆるエコ対策に大きく貢献することができる性質を有している。
【0067】
更に、転換機構は、パイプスキマに設けられている開口部が水面上に位置しているときに、基部がその開口部の下辺に位置し、先端部が水面に生成されるスカムの下方に位置する深さを保って水流の上流側に所定長さ伸びる案内部に回動自在に設けられている連結桿と、一端部が作動桿の途中に回動自在に設けられるとともに、他端部が前記連結桿の下端部に回動自在に設けられ、かつ、中間の一部分が回転自在に軸支されているレバー桿とからなるので、パイプスキマ本体を独自の回動装置によらずに容易に回動することができる。
【0068】
また、転換機構は、先端部がパイプスキマ本体の開口部近くに回動自在に設けられている連結桿と、一端部が作動桿の途中に回動自在に設けられるとともに、他端部が前記連結桿の下端部に回動自在に設けられ、かつ、中間の一部分が回転自在に軸支されているレバー桿とからなるので、パイプスキマ本体を独自の回動装置によらずに容易に回動することができる。
【0069】
更にまた転換機構は、作動桿の途中の一部分とパイプスキマ本体の周囲の一部分とが回動自在に連結されて構成されるので、パイプスキマ本体の回転を独自の回動装置によらずに容易に、かつ、簡単な機構で回動することができる。
あるいは、作動桿の上下動がフライトに設けられているローラで上下動させられる当接部を介して行われるので、作動桿の上下動が円滑に行われる特長がある。
また、作動桿の途中には内ネジを有する連結桿が設けられ、その連結桿に対するその作動桿のねじ込み量によりその作動桿の長さが調整されるので、パイプスキマ本体の回転角度の調整を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0070】
a1,a2,a3……スカム除去装置
b……沈殿池
b1……底面
F……フライト
R……ローラ
1……パイプスキマ本体
2……パイプ部
3……開口部
4……案内部
5……流動板
6……カバー
10……回動機構
11……作動桿
11a……振れ止め部材
12……連結桿
12a……振れ止め部材
13……レバー桿
14……当接部
15……フレーム
16……ストッパ
17……連結管
18……支軸
S……スカム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が水面上に位置するとともに、その水面上に位置している開口部の一部が水面下に位置するように回動するパイプスキマ本体と、そのパイプスキマ本体を回動させる回動機構とからなるスカム除去装置であって、
前記回動機構は、
前記パイプスキマ本体の設置されている沈殿池に沈降・堆積した汚泥を排出するフライトに当接したときに上方へ持ち上げられ、そのフライトから外れたときに降下する作動桿と、
前記作動桿の上下動をそのパイプスキマ本体の回転動に転換する転換機構と、からなることを特徴からなるスカム除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスカム除去装置において、
前記転換機構は、
パイプスキマに設けられている開口部が水面上に位置しているときに、基部がその開口部の下辺に位置し、先端部が水面に生成されるスカムの下方に位置する深さを保って水流の上流側に所定長さ伸びる案内部に回動自在に設けられている連結桿と、
一端部が前記作動桿の途中に回動自在に設けられるとともに、他端部が前記連結桿の下端部に回動自在に設けられ、かつ、中間の一部分が回転自在に軸支されているレバー桿と、
からなることを特徴とするスカム除去装置。
【請求項3】
請求項1に記載のスカム除去装置において、
前記転換機構は、
先端部が前記パイプスキマ本体の開口部近くに回動自在に設けられている連結桿と、
一端部が前記作動桿の途中に回動自在に設けられるとともに、他端部が前記連結桿の下端部に回動自在に設けられ、かつ、中間の一部分が回転自在に軸支されているレバー桿と、
からなることを特徴とするスカム除去装置。
【請求項4】
請求項1に記載のスカム除去装置において、
前記転換機構は、
前記作動桿の途中の一部分と前記パイプスキマ本体の周囲の一部分とが回動自在に連結されて構成される、
ことを特徴とするスカム除去装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のスカム除去装置において、前記作動桿の上下動は、前記フライトに設けられているローラで上下動させられる当接部を介して行われることを特徴とするスカム除去装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のスカム除去装置において、前記作動桿の途中には、内ネジを有する連結桿が設けられ、その連結桿に対するその作動桿のねじ込み量によりその作動桿の長さが調整されることを特徴とするスカム除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−152662(P2012−152662A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11751(P2011−11751)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(504036291)宇都宮工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】