説明

スキミング防止カード

【課題】本発明は、非接触型のカードからデータを盗む、いわゆるスキミングを防止するためのスキミング防止カードに関するものである。
【解決手段】スキミング防止カードは、鉄系金属粉体からなるシートと、前記シートの全面を覆った、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等からなる熱融着層とから構成されている。前記鉄系金属粉体からなるシートは、鉄系金属粉体に少なくとも珪素が含有されている。前記鉄系金属粉体等の粒径は、平均直径が50μmから75μmのものを採用した。前記鉄系金属粉と珪素との混合比は、鉄系金属粉体が80%から90%で、珪素は、5%から15%とした。また、前記鉄系金属粉体の粒径は、平均直径が50μmから75μmのものを使用した。さらに、前記鉄系金属粉体と珪素とは、アクリルエラストマーからなるバインダによってシート状に成形されている。前記鉄系金属粉の練り込みシートの厚さは、300μm以上に成形されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触型のカードからデータを盗む、いわゆるスキミングを防止するためのスキミング防止カードに関するものである。本発明は、スキミング防止カードとカード読取装置との間で、データ通信ができ、かつ、スキミングを防止することができるスキミング防止カードに関するものである。本発明は、非接触式カード、交通機関の改札カード、金融機関のキャッシュカード、クレジットカード、入退室管理カード、商品券、在庫管理、その他、非接触による商品、サービス、現金の提供または個人・商品認識、料金の徴収・払い出しができるシステムに用いられるスキミング防止カードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来例として、特開2006−288989号公報におけるスキミング防止カードは、カード入れ付き財布の裏地にアルミ箔を接着剤で全面的に貼り付け固定している。
【特許文献1】特開2006−288989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許公開公報に記載されているスキミング防止カードは、財布にアルミ箔を接着剤により全面的に貼り付けたものであり、スキミングに対して有効であるが、カードの読み取りができなくなるという問題があった。また、前記スキミング防止カードは、財布にカードが入っていない場合であっても、アルミ箔があり、財布として、違和感があり、高級な財布に適用することができない。
【0004】
以上のような課題を解決するために、本発明は、非接触型のカードと磁性材シートを用い、所望のカード読取装置によるデータ通信が可能で、不所望のスキミングができないスキミング防止カードを提供することを目的とする。本発明は、カードの背面に金属板があっても、カード読取装置と通信が可能であり、かつ、スキミングが防止できるスキミング防止カードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(第1発明)
第1発明のスキミング防止カードは、鉄系金属粉練り込みシートと、前記金属粉練り込みシートの全面を覆った合成樹脂部材からなる熱融着層とから構成されている。
【0006】
(第2発明)
第2発明のスキミング防止カードは、第1発明の鉄系金属粉に鉄および少なくとも珪素が含有されていることを特徴とする。
【0007】
(第3発明)
第3発明のスキミング防止カードは、第1発明または第2発明の鉄系金属粉が80%から90%で、珪素が5%から15%であることを特徴とする。
【0008】
(第4発明)
第4発明のスキミング防止カードにおいて、第1発明から第3発明の鉄系金属粉の粒径は、平均直径が50μmから75μmであることを特徴とする。
【0009】
(第5発明)
第5発明のスキミング防止カードにおいて、第1発明から第4発明の鉄系金属粉は、アクリルエラストマーを主成分とするバインダによってシートとして成形されていることを特徴とする。
【0010】
(第6発明)
第6発明のスキミング防止カードにおいて、第1発明から第5発明の鉄系金属粉の練り込みシートの厚さは、300μm以上であることを特徴とする。
【0011】
(第7発明)
第7発明のスキミング防止カードにおいて、第1発明から第6発明の熱融着層は、ポリエステルテレフタレートであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、鉄系金属粉練り込みシートを熱融着層により全面を覆ったスキミング防止カードは、カード読取装置とのデータ通信距離が拡大されるとともに、背面に金属板が存在していても、通信可能である。
【0013】
本発明によれば、薄肉で、嵩張らず、折り曲げに強い、単層構造のスキミング防止カードを得ることができた。
【0014】
本発明によれば、鉄系粉体に珪素およびアクリルエラストマーを混合して成形されたシートの全面を覆った合成樹脂部材で構成される熱融着層からなるスキミング防止カードとしたため、読取装置との通信距離を拡大するとともに、読取時間を短縮することができた。
【0015】
本発明によれば、複数枚のカードが重なっていても、読取装置との通信が可能であり、かつ、スキミングを防止することができた。
【0016】
本発明によれば、鉄系粉体に珪素およびアクリルエラストマーを混合して成形されたシートを熱融着層であるPETからなるシートにより覆っているため、薄く作製することができ、脆くて破損することがないスキミング防止カードとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は本発明の鉄系金属粉体からなる練り込みシートを熱融着層で覆ったスキミング防止カードを説明するための図である。図1において、スキミング防止カード11は、鉄系金属粉体からなるシート111と、前記シート111の全面を覆った、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等からなる熱融着層112とから構成されている。前記鉄系金属粉体からなるシート111は、鉄系金属粉体に少なくとも珪素が含有されている。前記鉄系金属粉体等の粒径は、平均直径が50μmから75μmのものを採用した。
【0018】
前記鉄系金属粉と珪素との混合比は、鉄系金属粉体が80%から90%で、珪素は、5%から15%とした。また、前記鉄系金属粉体の粒径は、平均直径が50μmから75μmのものを使用した。さらに、前記鉄系金属粉体と珪素とは、アクリルエラストマーからなるバインダによってシート状に成形されている。前記鉄系金属粉の練り込みシートの厚さは、300μm以上に成形されている。
【0019】
図2は本発明におけるスキミング防止カード無しとスキミング防止カードの厚さに対して、スキミング防止カード単体、スキミング防止カードと金属板がある場合、ICカードが複数枚の場合を比較した例を説明するための図である。図2において、テスト内容は、スキミング防止カードが無い、前記スキミング防止カードの厚さが80μm(S80)、厚さが130μm(S130)、厚さが260μm(S260)、厚さが300μm(S300)の場合に対して、ICカード単体の場合、スキミング防止カードと金属板とがある場合、スキミング防止カードが複数枚の場合で、有効性を確認した。前記磁性粉シートは、単体、金属板がある場合、複数のスキミング防止カードがある場合のテストを行った結果、厚さが300μm以上において、有効性が確認できた。
【0020】
図3(イ)から(ハ)は本発明におけるスキミング防止カードの試験方法を詳細に説明するための図である。図3(イ)から(ハ)において、aはスキミング防止カード(ICカードアクセス制御体)、bは非接触ICカード、cはカード読取装置(たとえば、ソニー社製 RC−S320)、dは金属板、eはbの非接触ICカードと異なる非接触ICカードである。図3(イ)において、非接触ICカードbは、スキミング防止カードaとカード読取装置cとの間に置かれている。図3(ロ)において、非接触ICカードbは、スキミング防止カードaの外側に金属板dが設けられている。図3(ハ)において、前記金属板dの代わりに別の非接触ICカードeが設けられている。
【0021】
図4は本発明のスキミング防止カードについて、各種テストを行った際の通信距離を比較した例である。図3(イ)に示すテストを行った結果、図4における「単体」と記載されている棒グラフであり、通信距離が約12mmから14mmであった。図3(ロ)に示すテストを行った結果、図4における「金属板テスト条件」と記載されている棒グラフであり、スキミング防止カードの厚さが130μm以上必要であった。図3(ハ)に示すテストを行った結果、80μm、130μm、260μmでは2枚目のカードを読み込んでしまい誤動作するが、スキミング防止カードの厚さが300μm以上で、通信距離が8mmとなり、読み取ることが可能になった。
【0022】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではない。そして、本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。本発明の鉄系金属粉体および熱融着層は、本発明と同等の作用を行うことができる材質であれば、任意に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の鉄系金属粉体からなる練り込みシートを熱融着層で覆ったスキミング防止カードを説明するための図である。(実施例1)
【図2】本発明におけるスキミング防止カード無しとスキミング防止カードの厚さに対して、スキミング防止カード単体、スキミング防止カードと金属板がある場合、スキミング防止カードが複数枚の場合を比較した例を説明するための図である。
【図3】(イ)から(ハ)は本発明におけるスキミング防止カードの試験方法を詳細に説明するための図である。
【図4】本発明のスキミング防止カードについて、各種テストを行った際の通信距離を比較した例である。
【符号の説明】
【0024】
11・・・スキミング防止カード
111・・・鉄系金属粉体
112・・・熱融着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄系金属粉練り込みシートと、
前記金属粉練り込みシートの全面を覆った合成樹脂部材からなる熱融着層と、 から構成されているスキミング防止カード。
【請求項2】
前記鉄系金属粉は、鉄および少なくとも珪素が含有されていることを特徴とする請求項1に記載されたスキミング防止カード。
【請求項3】
前記鉄系金属粉は、80%から90%で、珪素は、5%から15%であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたスキミング防止カード。
【請求項4】
前記鉄系金属粉の粒径は、平均直径が50μmから75μmであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載されたスキミング防止カード。
【請求項5】
前記鉄系金属粉は、アクリルエラストマーを主成分とするバインダによってシートとして成形されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載されたスキミング防止カード。
【請求項6】
前記鉄系金属粉の練り込みシートの厚さは、300μm以上であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載されたスキミング防止カード。
【請求項7】
前記熱融着層は、ポリエステルテレフタレートであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載されたスキミング防止カード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−32054(P2009−32054A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−195822(P2007−195822)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000106726)シーアイ化成株式会社 (267)
【Fターム(参考)】