説明

スクリュー押出機または押出過程を予測し,最適化するためのデータに基づくモデル

本発明は、スクリュー押出機およびスクリュー押出機と押出過程の最適化に関する。本発明の対象は、スクリュー押出機の幾何学形状を最適化するための方法および押出過程を最適化するための方法である。また、本発明の対象は、本発明による方法を実行できるコンピュータシステムおよびコンピュータプログラム製品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュー押出機およびスクリュー押出機と押出過程の最適化に関する。本発明の対象は、スクリュー押出機の最適化のための方法および押出過程の最適化のための方法である。また、本発明の対象は、スクリュー押出機を作る方法である。さらに、本発明の対象は、本発明による方法を実行できるコンピュータシステムおよびコンピュータプログラム製品である。
【背景技術】
【0002】
連続した過程の最適化と製品特性の改善は、工業における研究と開発のための主たる駆動力の1つである。この点から、支援となる数学的方法の適用は、長年に亘って従来技術の一部に数えられる。
【0003】
最適化は、例えば高価な原料および実験で生じるごみの処理を伴う複雑な実験を大幅に避けるべく、シミュレーションの助けで行われることが益々増えつつある。
【0004】
シミュレーションは、とりわけスクリュー押出機の最適化に適用される。スクリュー押出機は、例えば、プラスチックや食料の製造,加工,処理に用いられる。ここで、同じ方向に回転し,互いに密に噛合するツインスクリュー軸は、押出機の中で主要な特徴である。同じ方向に回転し,互いに密に噛合するツインスクリューの,単軸のスクリューに対する本質的利点は、ツインスクリューが、必要なあそびに至るまで互いに正確に拭き取り合い(abschaben)、従って互いに掃除し合うことである。スクリュー押出機は、非特許文献1に詳しく述べられている。この非特許文献1には、ツインおよびマルチスクリュー押出機の構造,機能,動作が詳しく説明されている。
【非特許文献1】「同じ方向に回転するツインスクリュー押出機」,K. Kohlgrueber 著、 Hanser書店2007年版
【0005】
スクリュー押出機の最適化のため、品質を実験的に試験すべく多数の異なったスクリュー押出機を製造することは、商業的理由から望ましくないことは容易に理解できる。なぜなら、スクリューの製造には、高い費用がかかるからである。従って、スクリュー押出機および押出過程の最適化には、シミュレーションが重要な役割を果たすのである。
【0006】
非特許文献1の第147〜168頁には、押出機および押出過程の最適化におけるフローシミュレーションとその役割がより詳しく説明されている。
【0007】
フローシミュレーションの目的は、押出機内で起きている流れ過程をより深く理解するとともに、少数の実験でもって経済的で確実な押出機の設計を確保することである。
【0008】
従って、シミュレーションは、実験的に測定できない,あるいは測定が難しい過程を記録する役割を果たすことを企図している。例えば、ツイン軸押出機の分野では、軸のトルクおよびダイの圧力と温度などの不可欠な変数だけが測定でき得る。他方、フローシミュレーションは、コンピュータによる全範囲において特定場所の圧力,速度,温度の情報を提供する。勾配の計算によって剪断速度や熱伝導率に関する情報が追加的に得られる。コンピュータによるモデルでは、モデルの複雑性が段階的に増加し得る。これは、どの過程変数が製品品質を得るために決定的であるかに関する情報を可能にする。押出過程は、動作状態を変更することによって最適化することができる。
【0009】
この点で、各問題に対してコンピュータによる別々のモデルを一般に作らなければならないとは、不利である。加えて、既に実行されたシミュレーションを再使用することが、関連する問題や他の問題によって、困難か或いは全く不可能になる。
【0010】
このことは、非特許文献1の第151〜165頁に記載されたスクリュー押出機におけるシミュレーション計算からも明らかになる。各問題は、3段階の過程で対処される。第1の過程(プレ-プロセッシング)で、スクリューの幾何学形状が定義され、フロー-シミュレーション(グリッド生成)が可能な形式に変換される。第2のステップ(フロー-シミュレーション)で、フローモデルを定義した後、対応する微分方程式を解くべく、材料と動作データを入力する。第3のステップ(ポスト-プロセッシング)で、計算されたフロー領域の先行する問題に関する包括的な解析が行われる。新たなまたは変更された問題の場合、総てのステップおよび時間の掛かる計算をもう一度しなければならない。その結果は、同様の問題に対して再利用できるように形成されていない。一度シミュレートした過程を記憶し、より少ないコンピュータによる労力で類似の問題に将来対処するために、上記過程を再利用できるように記憶するシステムは今のところ存在しない。
【0011】
これに加えて、特にスクリュー押出機の最適化については、過程を定義するパラメータが自由に選択できず、完全に拭き取り合う一対のスクリュー要素の構造的設計が相当な問題となるという問題がある。これをより詳細に述べると、非特許文献1(151頁)によれば、エルトメンガー(Erdmenger)型のスクリュー要素の幾何学形状は、次の6つの項によって一意的に定義できる。即ち、6つの項とは、
スクリュー数(Gangzahl)、バレル直径、中心線距離、スクリュー-バレル間あそび、隣接スクリュー間あそび、およびピッチである。非特許文献1の151頁に記載されたパラメータの組を用いてシミュレーションを行うものとする。スクリュー数は2、初期温度は300℃であった。シミュレーションの始めの温度を例えば310または320℃と設定して、新たなシミュレーションを行うことが容易にできる。しかし、スクリュー数を2から3または4に増やすことはそれほど容易ではない。もし、スクリュー数が一連の幾何学形状のパラメータに基づいて増やされたら、一対のスクリューはどのようなるか。他のパラメータを保持したまま、スクリュー数を本来変更できるのか。(例えばスクリュー数などの)1つのパラメータを変更しても、完全拭き取り合いプロファイルのスクリュー要素を維持できるのか。
【0012】
スクリュー要素に関する問題は、一対の完全に拭き取り合うプロファイルの所望のスクリューを製造するための一般的設計仕様が、今までなかったということである。設計仕様があるスクリュー要素は少ない。例えば、自己清掃型エルトメンガースクリューのプロファイルは、円弧から構成することができることが知られている(非特許文献1,第96〜98頁)。エルトメンガースクリューのプロファイルを作る他の方法は、非特許文献2に述べられている。
【非特許文献2】「完全拭き取り合い型ツインスクリューの幾何学形状」, Booy著、ポリマー・エンジニアリング&サイアンス 18 (1978) 12, p.973-984
【0013】
既述の非特許文献において、スクリュープロファイルは、2つの軸の各静止軸周りの同一方向への回転は、他の軸,この場合静止の軸の周りの一方の軸の「回転のない並進運動」と運動学的に同一であるという特定の運動学的現象を用いることによって作られる。この現象は、スクリュープロファイルの段階的生成に用いることができる。ここで、第1のスクリュー(「生成された(erzeugte)」スクリュー)は、静止しており、第2のスクリュー(「生成する(erzeugende)」スクリュー)は、第1スクリューの周りの円弧上を並進運動的に動かされるとする。すると、第2のスクリュー上にプロファイルの一部を規定することができ、これによって第1のスクリュー上にどのようなプロファイルが生成されたかを調べることができる。生成されたスクリューは、生成するスクリューによってある程度「切り取」られる。しかし、非特許文献1では、規定された第2のスクリュー自身がどのような方法によって生成されたかが特定されていない。非特許文献2では、基礎として用いることができ,残りのプロファイルを生成することができるプロファイル部分を作ることがどうすれば可能かについての可能なアプローチが述べられている。しかし、このアプローチは、数学的に非常に複雑で、とりわけ普遍的に適用できない,つまりスクリュー要素のための所望のプロファイルを生成できないのである。
【0014】
要するに、シミュレーション計算は、スクリュー押出機と押出過程の最適化に用いることができると言える。しかし、従来技術に記載された手順は、各問題に対して時間を費やす新たなシミュレーションを行わねばならないので、非常に効率的とは言えない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、従来技術は、スクリュー押出機および押出過程を最適化するためのより効率的な方法を提供するという目的を提起した。達成しようとする方法は、押出機のための最適化された幾何学形状を特定するのに特に適するように企図されている。この限りにおいて、最適化されたスクリュー押出機のための方法を提供するという目的もある。
【0016】
この目的は、本発明によってシミュレーション計算を実際の最適化から切り離すことによって達成される。本発明によれば、前に定義されたパラメータ空間において、まず多数のシミュレーション計算が行われる。シミュレーション計算の結果は、このパラメータ空間のためのデータに基づくモデルを作るために用いられる。データに基づくモデルは、定義されたパラメータ空間を記述し、記憶したパラメータに対して関係する総ての値の組み合わせの予測値を提供する。
【0017】
従って、シミュレーション計算の結果は、多数の異なった問題のために利用でき、具体的問題に答えるために更なるシミュレーション計算を行う必要がない。データに基づくモデルに基づいて、具体的問題のための予測を、シミュレーション計算が必要とされる場合に比して、非常に少ない時間で行うことができる。データに基づくモデルは、押出機および押出過程のためのパラメータ値を最適化するためにも用いることができる。
【0018】
本発明によれば、具体的問題のための時間を費やす個々のシミュレーションは、それ故1回だけ作れば済む全体モデルによって置き換えられる。シミュレーションの結果が、後に提起される問題に利用できるデータに基づくモデルという形で記憶されるということが決定的なのである。個々のシミュレーション計算は、データに基づくモデルのこの格別な性質のお陰で、個々の各シミュレーションに用いられるのみならず、シミュレーション計算に含まれない値の組み合わせに対する結果をも補間によって決定できる手段(Werkzeug)を作ることができる。
【0019】
問題があると、データに基づくモデルに対応する値が入力され、結果の予測値を、個々のシミュレーションに比して非常に速く決定することができる。問題に対して、対応するシミュレーションを構成し、対応するシミュレーション計算を実行する必要は最早ない。
【課題を解決するための手段】
【0020】
従って、本発明の第1の対象は、スクリュー押出機または押出過程のための予測手段を作る方法であって、少なくとも次のステップ、即ち
(a) パラメータ空間を定義し、
(b) このパラメータ空間内で代表的な値の組み合わせを選択し、
(c) シミュレーション計算の助けで選択した上記値の組み合わせに対して結果の特徴を計算し、
(d) 選択した上記値の組み合わせおよび計算した結果の特徴に基づいて、データに基づくモデルを生成し、
(e) 場合によって、上記(a)〜(e)のステップの1つ以上を、結果の特徴が、データに基づくモデルの助けで十分な精度で計算されることができるまで繰り返す
という各ステップを含む方法である。
【0021】
本発明による上記ステップ(a)〜(e)は、好ましくは特定の順序で行われる。
【0022】
本発明による上記ステップ(a)において、パラメータ空間が定義される。これは、まず押出過程のシミュレーションに必要なパラメータを決定することを含む。パラメータは、3つの組、即ちスクリュー押出機の幾何学形状を記述するパラメータ、押し出される材料を記述するパラメータ、および過程(プロセス)パラメータに分類される。
【0023】
既述の如く、完全に拭き取り合う一対のスクリュー押出機に対する一般的設計仕様がなく、それ故、完全に拭き取り合うプロファイルの一対のスクリュー押出機の総てを一意的に記述する一般に知られたパラメータがないため、スクリュー押出機の幾何学形状の記述は、相当な問題である。
【0024】
しかし、驚くべきことに、完全に拭き取り合う一対のスクリュープロファイルの幾何学形状の基礎となる基本的原理が見つかった。この基本的原理は、本出願の一部を成す付録1に記載されている。
【0025】
この基本的原理は、完全に拭き取り合う一対のスクリュー押出機を一意的に記述し、完全に拭き取り合う一対のスクリュー押出機のための設計仕様を作成するパラメータの定義を可能にする。
【0026】
この基本的原理によって、完全に拭き取り合う一対のスクリュー押出機の断面プロファイル(回転軸に直交する断面のプロファイル)は、円弧によって記述できる。従って、プロファイルは、中心点、半径、および円弧の角度を特定することによって正確に定義される。混合,混練,搬送,遷移の各要素を作るための上記プロファイルの回転軸方向,つまり3次元方向への連続に依存して、例えばねじ要素の場合はピッチなどの一対の押出機の幾何学形状を記述する更なるパラメータが定義できる。また、あそび(スクリュー-バレル間のあそび,隣接するスクリュー間のあそび)を特定することが必要とされる。
【0027】
このようにして、スクリューの幾何学形状は、正確に定義される。しかし、スクリューは、パラメータとして述べた座標と円弧の変数で必ずしも定義する必要はなく、これに代えて例えば導き出された変数を用いて定義できる。実際の物理的影響を実際持つと予期されるような導き出された変数を記述変数(パラメータ)として用いることが好ましい。例えば、スクリューがバレルを拭き取るカム幅(Breite des Kamms)は、可能なパラメータとして定義することができる。カム幅は、輸送される材料にエネルギを導入することに影響し、それ故、スクリュー押出機を特徴づける重要な変数である。
【0028】
搬送される材料を記述するパラメータは、例えば、密度,熱容量,熱伝導率,粘度などである。押し出される材料を記述するパラメータは、過程パラメータの値に度々依存する。例えば、粘度はプロセス温度に依存する。
【0029】
過程を特徴づけるパラメータ(プロセスパラメータ)は、例えば圧力,温度,スクリュー押出機の回転速度,駆動軸のトルクなどである。
【0030】
一旦、パラメータ自体が定義されると、パラメータ空間が定義される。これは、シミュレーションのための基礎として取られる各パラメータの値の範囲が定義されることを意味する。押出における初期温度のパラメータの値の範囲は、例えば、0〜500℃である。
【0031】
輸送される材料が異なり、或いはスクリュー押出機の型が異なって、シミュレーションにおいて全く異なった挙動が予期され、或いは見つかった場合は、異なる材料または異なる型のスクリュー押出機に対してデータに基づく異なったモデルを作ることが推奨される。この異なったモデルは、必要に応じて後で単一のモデルに組み合わせられる。
【0032】
例えば、輸送される材料は、ニュートン流体の挙動を示すものと、非ニュートン流体の挙動を示すものに区別して、別々のシミュレーションを行い、別々のモデルを作ることが推奨される。
【0033】
さらに、スクリュー押出機の型を別々に考えることが推奨される。1つの型は、例えばエルトメンガープロファイルをもつスクリュー数が2のスクリュー要素(非特許文献1の151〜168頁)であり、他の型は、例えば減少したカム角(Kammwinkel)をもつスクリュー数が1の特許文献1に記載のようなスクリュー要素である。
【特許文献1】PCT/EP2009/004251
【0034】
本発明による方法のステップ(b)において、パラメータ空間内の値の代表的組み合わせが選択される。値の代表的組み合わせとは、パラメータ空間をできるだけ理解できるように記述し、パラメータ空間のできるだけ異なった領域を覆うような値の組み合わせであると理解される。その目的は、これらの値の組み合わせを(シミュレーション計算の結果と共に)格納するデータに基づくモデルが、他の値を予測させ得るほどうまくパラメータ空間を記述するような値の組み合わせを見つけ出すことである。
【0035】
この目的のため、実験設計から当業者に知られた例えば実験の統計学的設計に基づく実験的設計方法などの方法が、目的に叶って用いられる。この実験的設計法は、例えばPlacket-Burmannの実験的設計、中央-合成設計、Box-Behnkenの実験的設計、D-最適設計、均衡ブロック設計、ShaininまたはTaguchi等の考案した方法である。実験的設計方法は、とりわけHans Bendermer著「実験の最適設計(Optimale Versuchungsplanung)」,ドイツポケットブックシリーズ DTB 23巻(ISBN 3-87144-278-X)、または、Wilhelm Kleppmann著「実験的設計ポケットブック, 製品および製法の最適化(Taschenbuch Versuchsplanung, Produkte und Prozesse optimieren)」に記載されている。また、特に特許文献WO2003/075169Aを参照されたい。
【0036】
本発明による方法が、値の組み合わせの選択がパラメータ空間を十分に代表していない(ステップ(d)参照)ことが後で分かる可能性がある。この場合、他の,または更なる値の組み合わせを選択することが要求される(ステップ(e)参照)。
【0037】
本発明による方法のステップ(c)において、選択された値の組み合わせについてシミュレーション計算が行われる。選択された種々のシナリオが計算され、異なったプロセスパラメータ下または異なった材料(押出材料)の使用下でスクリュー押出機がどのように異なって挙動するかがシミュレートされる。
【0038】
このようなシミュレーションのために、3次元のスクリュー外形は、コンピュータによる数学的計算が可能になるような形でなければならない。コンピュータ内でのスクリューの仮想(バーチャル)表現は、非特許文献1の149〜150頁に記載された所謂コンピュータによるグリッドの形で有利に行われる。
完全に拭き取り合う一対のスクリューのコンピュータにおける構造的設計は、まず断面プロファイル(以後、短縮してプロファイルとも称す)を定義すること、つまりに生成する(erzeugende)スクリューのプロファイルと生成された(erzeugte)スクリューのプロファイルを定義することによって始まる。これらのプロファイルは、好ましくは中心点,半径,円弧の角度を特定することによって定義される。その際、付録1に記載された基礎的原理および付録1に記載されまたはこれに由来する設計仕様が用いられる。
【0039】
次に、2次元のプロファイルに基づいて、このプロファイルを3次元へ,即ち回転軸の方向へ連続させることが行われる。輸送要素のモデルは、例えばプロファイルを軸方向へ螺旋状に回転させることで生成される。混練要素のモデルは、例えば、プロファイルを部分的に軸方向に連続させることによって作られ、その際、部分は互いにずらされて、互いにずれた盤が作られる。
【0040】
コンピュータにおけるスクリュー押出機の表現は、コンピュータによるグリッドの形で行われる。バレルの内面とスクリュー押出機の表面の間の体積は、例えば四面体または六面体などの多面体からなるコンピュータによるグリッドで分割される(非特許文献1参照)。
コンピュータによるグリッド、押し出される材料の材料データ、およびスクリュー押出機および押し出される材料が用いられるスクリュー押出機の動作データが、フローシミュレーションのためのプログラムに入力され、流れ状態がシミュレートされる(非特許文献1参照)。
【0041】
フローシミュレーションの結果は、例えば流れ,圧力,温度の各域で利用できる(非特許文献1の147〜168頁参照)。非特許文献1のこれらの頁に記載されているように、輸送および出力特性は、フローシミュレーションから決めることができる。本発明によれば、結果の特性は、シミュレーションの結果から決定され、用いられる各値の組み合わせに関連して設定される。輸送および出力の特性(非特許文献1の158頁参照)は、軸部分および直線の傾斜(体積流量の関数としての圧力差)を計算するために用いられるのが好ましい。
【0042】
シミュレーション計算が実行され、結果の特性が決定されると、データに基づくモデルが作られる(ステップd)。このようなモデルは、入力変数(入力パラメータ)である値の組み合わせを対応する結果の特性(出力パラメータ)に関連して設定することを企図している。このモデルは、データ間に実際の物理的関係が知られていることや流れ込むことを要さず、利用できるデータ(値の組み合わせ,結果の特性)に基づいて上述の関連を求めるので、データに基づくモデルと称される。
【0043】
利用できる入力変数と出力変数からデータに基づくモデルを作ることは、従来技術の1つである。公知のデータに基づくモデルは、例えば、線型および非線型回帰モデル(例えば, Hastie, Tibshirani, Friedman共著: "The Elements of Statistical Learning", Springer書店, 2001参照)、(パーセプトロン回帰ネットワークなどの)線型近似法, 人工ニューラル・ネットワーク(例えば, Andreas Zell著, "Simulation neuronaler Netze", ISBN 3-486-24350-0 またはRaul Rojas著: "Theorie der Neuronalen Netze", ISBN 3-540-56353-9 または McKay, David J. C. 共著, "Information Theory, Inference and Learning Algorithms", Cambridge: Cambridge University Press, ISBN 0-521-64298-1, September 2003参照)、サポート・ベクトル・マシン(例えば, B. Scholkopf, A. Smola共著: "Learning with Kernels", MIT Press, 2002参照)、ハイブリッド・モデル(例えば, A.A. Schuppert著: "Extrapolability of structured hybrid models: a key to optimization of complex processes"; B. Fiedler, K. Groger. J. Sprekels 共著: "Proceedings of EquaDiff" 99, 2000, pp. 1135-1151 または G. Mogk, T. Mrziglod, A. Schuppert共著: "Application of hybrid models in chemical industry"; in: J. Grievink, J. van Schijndel 共著, Proceedings of European Symposium on Computer Aided Process Engineering, vol. 12, The Hague, The Netherlands, May 26-29, 2002, Elsevier Science B.V., pp. 931-936 or EP-A1253491)
【0044】
ハイブリッド・モデルを用いるのが好ましい。
【0045】
モデルの総ての型は、モデルの入力-出力挙動が定義された意味で最適になるように、作られたシミュレーションデータ(トレーニング)の助けで決定されたパラメータを含んでいる。種々のモデルに特有のトレーニング法は、引用文献に見ることができる。例えば、2層パーセプトロンの効率的トレーニング法は、F. Barmann, F. Biegler-Konig共著," Neural Networks" 1992, 5(1), 139-144頁に記載されている。
【0046】
さらに、ステップ(d)では、モデルの品質の評価が行われる。これは、例えば、検証データを用いて予測の信頼性を検査することによって行われる(例えば, Chiles, J.-P. and P. Delfiner 共著: (1999) "Geostatistics, Modeling Spatial Uncertainty", Wiley Series in Probability and statistics参照)。パラメータ空間の種々の領域における依存性の妥当性の検査は、既知の知識を用いて行うのが好ましい。
【0047】
従って、シミュレーション計算が行われたが,データに基づくモデル(検証データ)の作成には用いられなかった値の組み合わせは、モデルの品質の評価のために用いるのが好ましい。データに基づくモデルがどの程度「未知の」シナリオの結果をも予測できるかが調査される。この場合、個々に企図された使用がモデルに要求される品質を決定する。モデルの品質は、例えば、計算されたシミュレーション結果とモデルによって予測されたモデル結果との最大偏差によって測定される。押出過程のモデリングでは、5%,好ましくは2%の最大偏差が、モデルの品質として十分であることが見つけ出された。
【0048】
モデルの品質が十分でない場合、本発明によれば、パラメータ空間が新たに定義され、他のまたは更なる値の組み合わせが選択される。従って、本発明によれば、データに基づくモデルによって十分な精度で結果の特性が計算できるまで、ステップ(e)においてステップ(a)〜(e)のうちの1つ以上の実行が繰り返される。
【0049】
本発明による方法の結果は、予測手段として用いることができる最適化されたデータに基づくモデルである。
【0050】
上記予測手段は、機械で読み取ることができる例えばフロッピーディスク(登録商標),CD,DVD,ハードディスク,メモリスティックなどのデータ担体上のプログラムコードとして利用することができる。機械で読み取ることができるデータ担体上の予測手段は、コンピュータのメインメモリに読み込まれることができる。コンピュータとこれに接続された入,出力装置によって、ユーザはこの予測手段を操作する、つまりデータに基づくモデルに値を入力し,結果の特性を計算させることができる。この際、ユーザは、グラフィックユーザインターフェイスによって支援されるのが好ましい。予測手段を、適切な周辺機器(入,出力機器)で操作され、プログラムと類似の方法でコンピュータに読み込むことができるマイクロチップとして実現できる。
【0051】
本発明の目的は、スクリュー押出機のための予測手段およびこの予測手段を作るための方法によって作られた押出過程である。
【0052】
予測手段は、例えば、新たなまたは変更されたスクリュー押出機の押出過程中の挙動を計算する。予測手段は、例えば、過程パラメータの値の変更が押出材料に与える影響を決めるために用いられる。
【0053】
本発明の更なる目的は、押出材料の押し出しにおいてスクリュー押出機の挙動を予測するための方法である。この方法は、少なくとも次のステップを含む、即ち
(I) 予測手段としてデータに基づくモデルを作り、
(II) スクリュー押出機,押出過程,押出材料の特徴値を上記データに基づくモデルに入力し、
(III) 上記データに基づくモデルによる結果の特徴を計算し、
(IV) 結果を出力する
という各ステップを含む方法である。
【0054】
本発明による上記ステップ(I)〜(IV)は、特定の順序で行われるのが好ましい。
【0055】
ステップ(I)におけるデータに基づくモデルの作成は、スクリュー押出機および押出過程のための予測手段を作る方法に関して上に述べたように行われる。
【0056】
ステップ(II)において、予測がされるべきシナリオを記述する値の入力が行われる。これらの値は、スクリュー押出機の幾何学形状,押し出される材料を特徴付ける値,押出過程を定義する値である。
【0057】
入力は、予測手段がソフトウェア・プログラムとして起動するコンピュータ・システム上のマウスやキーボードによって行われる。
【0058】
ステップ(III)では、データに基づくモデルによる結果の特徴の計算が行われる。計算は、通常、単一のシミュレーションに必要な時間の一部内で行われる。
【0059】
最後にステップ(IV)では、結果の出力が行われる。結果は、計算された結果の特徴そのものである。これらは、値としてコンピュータの画面に表示される。結果の特徴に由来する値や変数も、同様に表示される。結果の表示は、グラフィックや色コーディングで行われるのが好ましい。
【0060】
押出過程でのスクリュー押出機の挙動を純粋に予測することと並んで、スクリュー押出機や押出過程の最適化も、予測手段によって可能である。本発明の更なる目的は、それ故スクリュー押出機や押出過程の幾何学形状を最適化する方法である。
【0061】
この方法は、少なくとも次のステップを含む、即ち、
(A) 予測手段としてデータに基づくモデルを作り、
(B) スクリュー押出機または押出過程のための目標プロファイルを定義し、
(C) 定義した目標プロファイルを満たすまたはこれに最も近い値の組み合わせを識別し、
(D) ステップ(C)で決定した値の組み合わせを出力する
という各ステップを含む方法である。
【0062】
本発明による方法の上記ステップ(A)〜(D)は、特定の順序で行われるのが好ましい。
【0063】
ステップ(A)において、データに基づくモデルの作成は、スクリュー押出機や押出過程に関して予測手段を作るための方法で既に述べたように行われる。
【0064】
ステップ(B)では、スクリュー押出機や押出過程の目標プロファイルが定義される。目標プロファイルの定義は、捜し求める値の組み合わせ(入力)によって満たされるべき総ての結果の特徴(出力)に対する規則を作成する。例えば、押出機を通って押出材料を輸送するに必要な押出材料の最大温度増加または最小圧力上昇を定義することができる。
【0065】
予め定義された目標プロファイルを満たし,或いはこの目標プロファイルに最も近い値の組み合わせの探し出しは、データに基づくモデルを用いてステップ(C)で行われる。データに基づくモデルの助けで、多数の値の組み合わせ(入力パラメータ)に対する結果の特徴(出力パラメータ)を非常に短時間で計算することができる。入力パラメータの値の特定の変化および出力パラメータの値を目標プロファイルと比較することによって、目標プロファイルを満たし,或いはこれに最も近い入力パラメータが求まるという結果になる。この予め定義されたプロファイルを満たす「最適の」値の組み合わせの探し出しは、例えばモンテカルロ法,進化的アルゴリズム(遺伝子的アルゴリズム),疑似焼き鈍し法などの公知の最適化方法によって支援できる。最適化方法の概説は、例えばM. Berthold 等著,"Intelligent Data Analysis", Springer書店, Heidelberg 1999に述べられている。
【0066】
最後に、ステップ(D)で、定義された目標プロファイルを満たし,或いはこの目標プロファイルに最も近い値の組み合わせの出力が行われる。計算された結果のパラメータおよび計算された結果のパラメータの目標プロファイルからの偏差の出力が更に行われるのが好ましい。出力は、コンピュータの画面またはプリンタ上の図やグラフィックスの形で行われる。
【0067】
上記予測手段は、新たなスクリュー押出機の製造にも用いられる。本発明の更なる目的は、新たなスクリュー押出機の製造する方法であり、この方法は、少なくとも次のステップを含む、即ち、
(i) 予測手段としてデータに基づくモデルを生成し、
(ii) スクリュー押出機や押出過程のための目標プロファイルを定義し、
(iii) 定義された目標プロファイルを満たし,或いはこの目標プロファイルに最も近いスクリュー押出機のための値の組み合わせを識別し、
(iv) ステップ(iii)で決まった値の組み合わせを出力し,記憶し、
(v) ステップ(iii)で決まった値の組み合わせに基づいて、スクリュー押出機を製造する
という各ステップを含む方法である。
【0068】
本発明による方法のステップ(i)〜(v)は、特定の順序で行われるのが好ましい。
【0069】
ステップ(i)〜(iii)は、記述のスクリュー押出機や押出過程の幾何学形状を最適化する方法のステップ(A)〜(C)に対応する。従って、所定の適用例に対して最適化されたスクリュー押出機の幾何学形状が決定される。コンピュータで計算されたこの幾何学形状は、実際のスクリュー押出機の製造に用いられる(ステップ(v))。スクリュー押出機の幾何学的形状のデータは、スクリュー要素を製造するCNC(コンピュータ数値制御)工作機械に直接入力できるフォーマットに変換される。このようなァフォーマットは、当業者に公知である。
【0070】
上述の如く幾何学形状が生成されれば、例えばフライス盤、旋盤、回転盤などによってスクリュー押出機を製造することができる。スクリュー押出機を製造するための好ましい材料は、特に窒化鋼,クロム鋼,工具鋼,特殊鋼などの鋼、鉄,ニッケル,コバルト系の粉末冶金製金属化合物材料、例えばジルコニアや炭化ケイ素などのエンジニアリング・セラミックス材料である。
【0071】
ここで開示する本発明による総ての方法は、コンピュータ上で行われるのが好ましい。本発明の目的は、本発明による方法の1つを行うためのコンピュータシステムである。更に、本発明の目的は、本発明による方法の1つをコンピュータ上で行うためのプログラムコーディング手段をもつコンピュータプログラム製品である。
【0072】
本発明は、以下に実施形態に基づいてより詳細に説明されるが、実施形態は本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1a】図1aは、自己清掃型で密に噛合するエルトメンガースクリューのプロファイルを示す図である。
【図1b】図1bは、図1aのプロファイルと、このプロファイルから導き出され,八角形スクリューバレル内にあそびをもつスクリュープロファイルを示す図である。
【図2】図2は、選択されたパラメータ空間における無次元中心線距離Aと無次元ピッチTの値の組の組み合わせを示す図である。
【図3】図3は、選択したパラメータ空間における無次元中心線距離Aと無次元ピッチTの値の組み合わせを示す図である。
【図4】図4は、図3の値の組み合わせに基づいて、無次元中心線距離A(水平軸)と無次元ピッチT(縦軸)に依存する輸送要素の予測カム角を示す図である。
【図5】図5は、図3の値の組み合わせに基づいて、無次元中心線距離Aと無次元ピッチTに依存するスクリュー要素の予測圧力生成パラメータを示す図である。
【図6a】図6aは、自己清掃型で密に噛合するRitaスクリューのプロファイルを示す図である。
【図6b】図6bは、図6aのスクリュープロファイルと、このプロファイルから導き出され,八角形スクリューバレル内にあそびをもつスクリュープロファイルを示す図である。
【図7】図7は、選択されたパラメータ空間における無次元中心線距離Aと関連カム角Rの値の組の組み合わせを示す図である。
【図8】図8は、図7の値の組み合わせに基づいて、無次元中心線距離A(水平軸)と無次元ピッチT(縦軸)に依存するRita輸送要素の予測動作点を示す図である。
【図9】図9は、関係カム角R=0.5をもつRita輸送要素の予想動作点を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
実施形態1:エルトメンガープロファイルをもつスクリュー数が2のスクリュー要素の予測手段の製造
この実施形態は、スクリュー押出機や押出過程のための予測手段を作る方法を開示し、この方法は、次のステップ、即ち、
(a) パラメータ空間を定義し、
(b) このパラメータ空間内で代表的な値の組み合わせを選択し、
(c) シミュレーション計算の助けで選択した上記値の組み合わせに対して結果の特徴を計算し、
(d) 選択した上記値の組み合わせおよび計算した結果の特徴に基づいて、データに基づくモデルを生成し、
(e) 場合によって、上記(a)〜(e)のステップの1つ以上を、結果の特徴が、データに基づくモデルの助けで十分な精度で計算されることができるまで繰り返す
という各ステップを含む方法である。
【0075】
ステップ(a):パラメータ空間を定義する
非特許文献1の第5頁に記載のように、エルトメンガープロファイルをもつ輸送要素の幾何学形状は、6つの幾何学的パラメータによって一意的に定義される。6つのパラメータは、スクリュー数(Gangzahl)、バレル直径、中心線距離、スクリュー-バレル間あそび(Spiel)、隣接スクリュー間あそび、およびピッチである。パラメータの数を減らし、一般的に通用する表記を得るため、無次元幾何学パラメータが目的に叶って導入された。バレル直径は、参照変数として選ばれた。このことから、エルトメンガー・スクリュー・プロファイルをもつ輸送要素の幾何学形状は、5つの無次元幾何学パラメータを特定することによって一意的に定義できる。これら5つのパラメータは、スクリュー数Z、無次元中心線距離A、スクリュー-バレル間無次元あそびD、隣接スクリュー間無次元あそびS,無次元ピッチTである。
【0076】
実際には、スクリュー数Zが1,2または3である輸送要素が一般に用いられる。スクリュー数毎に別々の予測手段が目的に叶って作られる。この実施形態では、スクリュー数が2の輸送要素を取り上げる。従って、Z=2である。それ故、値の範囲を定めるべき無次元のパラメータは、4つである。無次元中心線距離Aの範囲は0.72≦A≦0.93、スクリュー-バレル間無次元あそびDの範囲は0.002≦D≦0.024、隣接スクリュー間無次元あそびSの範囲は0.004≦S≦0.006、無次元ピッチTの範囲は0.3≦T≦0.4に夫々選ばれた。
【0077】
図1aは、自己清掃型で密に噛合するエルトメンガースクリューのプロファイルを示している。エルトメンガースクリューのプロファイルは、90°で互いに交差する2つの対称軸を有する。従って、スクリュープロファイルの1/4だけを作って、対称軸に関する鏡像によって完全なスクリュープロファイルを得れば足る。
【0078】
図1aについて、次により詳しく説明する。図の中央にxy座標系がある。スクリュープロファイルの円弧は、構成円弧の数の太い実線で描かれ、複数の円弧の各中心は、小さな円で示されるとともに、関連する円弧の始点と終点に向かう細い実線で互いに接続されている。直線FPは、細い破線で示されている。
【0079】
エルトメンガースクリュープロファイルの1/4は、互いに対応する2×2個の円弧で得られる。2つの対応する円弧(1と1'、2と2')の半径の合計は、中心線距離に等しい。半径1,1'は、外半径またはコア半径に等しい。半径2,2'は、零または中心線距離に等しい。2つの対応する円弧の中心角は同じである。円弧1,2の中心角の合計はπ/4である。円弧1,1'の中心点は、座標の原点にある。総ての円弧は、互いに接線方向に結合する。円弧2,2'は、共通点において直線FPと接する。直線FPの原点からの距離は、中心線距離の半分で、直線FPの勾配は、-1である。
【0080】
図1aにおいて、無次元中心線距離AはA=0.8333、無次元外半径RAはRA=0.5、無次元コア半径RKはRK=0.3333である。対応する円弧1,1'と2,2'は、ラジアンで測った中心角が夫々0.1997と0.5857である。
【0081】
例えば非特許文献1の第27〜30頁に示されるように、スクリュー要素とバレルからなる構造は、実際、あそびとして知られているものを常に有する。当業者は、自己清掃型で密に噛合するスクリューの予め定められたプロファイルから、あそびをもつスクリュープロファイルを導き出す方法を知っている。そのための知られている方法は、例えば非特許文献1の第28頁以降に記載された中心線距離の増加、長手方向断面の等距離および空間的等距離の可能性である。中心距離を増加させる場合、より小さい直径のスクリュープロファイルが作られて、隣接スクリュー間あそびの量だけ引き離される。長手方向断面の等距離の場合、長手方向断面のプロファイル曲線(各要素の回転軸に平行な)が、プロファイル曲線に垂直内側に変位させられ、回転軸方向に隣接スクリュー間あそびの半分だけ変位させられる。空間的等距離の場合、スクリュー要素が拭き取り合う空間曲線から出発して、スクリュー要素が、完全に拭き取り合うプロファイルの面に垂直に隣接スクリュー間あそびの半分だけ寸法を減らされる。この実施形態では、空間的等距離が用いられる。
【0082】
図1bは、図1aの自己清掃型で密に噛合するエルトメンガースクリューのプロファイルと、このプロファイルから導き出され,八角形スクリューバレル内にあそびをもつスクリュープロファイルを示している。スクリューバレルは、細い破線で示される。2つのバレル穴の貫通部内で2つの穴は、細い点線で示される。2つのバレル穴の中心点は、スクリュープロファイルの2つの回転中心点に等しく、小さい円で示されている。自己清掃型で密に噛合するスクリューのプロファイルは、太い実線で示される。あそびをもつスクリュープロファイルは、細い実線で示される。あそびをもつスクリュープロファイルは、空間的等距離の方法によって得られた。2つのスクリュー間の無次元あそびSはS=0.02、スクリュー-バレル間無次元あそびDはD=0.01、関連するスクリュー要素の無次元ピッチTはT=1(空間的等距離の方法の場合、あそびをもつスクリュープロファイルはピッチに依存する)であった。
【0083】
ステップ(b):パラメータ空間内で代表的な値の組み合わせを選択する
図2は、選択されたパラメータ空間における無次元中心線距離Aと無次元ピッチTの値の225組の組み合わせを示している。値の組み合わせは、種々の方法で定義できる。パラメータ空間内で特定の値に関心がある場合、この値に特に多数の値の組み合わせを割り当てることができる。例えば、通常のスクリュー押出機は、無次元中心線距離A=0.82を正確に有するので、A=0.82に特に関心があり、その場合、T=0.3〜T=0.2の仮想線の間でA=0.82において特に多数の値の組み合わせを割り当てる。同様にA=0.8〜A=0.9の間でT=2.0において特に多数の値の組み合わせを割り当てる。さらに、値の組み合わせは、例えば、個々の値の組み合わせができる限り互いに隔たるように分布させることができる。A=0.91〜0.93の範囲で、最初は値の組み合わせが全くないようにできる。図2に示した値の組み合わせの2次元距離は、4次元パラメータ空間における真の距離を表す
ことができない。
図3は、選択したパラメータ空間における無次元中心線距離Aと無次元ピッチTの1015組の値の組み合わせを示している。この図では、値の組み合わせの数を普通に増やすことに並んで、値の組み合わせを特にパラメータ空間の周辺であるA=0.91〜0.93の範囲に置いている。データに基づくモデルは、非常に限られた外挿しか許さないので、パラメータ空間の周辺に至るまでの内挿を確保すべく、値の組み合わせを特にパラメータ空間周辺に供給することが重要である。
【0084】
ステップ(c):選択した値の組み合わせに対してシミュレーション計算を用いて結果の特徴を計算する
選択した値の組み合わせに基づいて、シミュレーション計算を用いて結果の特徴の計算が行われる。
結果の特徴は、例えば、幾何学的特徴である。幾何学適特徴は、例えば、スクリュー要素のカム角(Kammwinkel)、スクリュー要素の外半径に対するピッチ角、スクリュー要素のコア半径に対するピッチ角、スクリュー要素の断面積、スクリュー要素のスクリュー表面積、バレル表面積(Gehaeuseoberflaeche)、スクリュー表面積とバレル表面積の合計、スクリュー要素の自由断面積(即ち、スクリュー要素とバレルの間の流れが通過できる断面積)、およびスクリュー要素のピッチに関する既に述べた面積(即ち、例えばピッチに関するスクリュー表面積)である。上記幾何学適特徴は、特に輸送要素,捏ね要素,混合要素,遷移要素などのスクリュー要素の幾何学形状を生成するためのシミュレーションプログラムにおいて有利に計算される。
【0085】
結果の特徴は、例えば、スクリュー要素における流れ過程を計算するために用いる計算グリッドのグリッド品質を評価するための特徴である。コンピュータグリッドのグリッド品質を評価するための特徴は、例えば、歪み、アスペクト比、反り(Gambit's User's Guide, Fluent Inc, Lebanon, NH, USA, 2006参照)である。上記グリッド品質の特徴は、特に輸送要素,捏ね要素,混合要素,遷移要素などのスクリュー要素のためのコンピュータによるグリッドを生成するためのシミュレーションプログラムにおいて有利に計算される。
【0086】
結果の特徴は、例えば、スクリュー要素の動作挙動を特徴づける特徴である。当業者に公知で、非特許文献1の第129〜146頁に記載されているように、輸送,捏ね,混合など用のスクリュー要素の動作挙動は、圧力差/スループット(処理能力)特性および出力(パワー)/スループット特性によって記述される。異なった大きさの押出機への遷移性を容易にするため、圧力差,出力,スループットといった変数が無次元の形で度々用いられる。ニュートン流挙動を呈するプラスチック混合物の場合、圧力差とスループットの間および出力とスループットの間には、線形関係がある。圧力差/スループット特性において、座標軸との交点は、A1とA2で表示される(非特許文献1の第133頁参照)。動作点A1は、スクリュー要素の本来のスループットを示し、動作点A2は、スループットなしの圧力生成能力を示す。出力/スループット特性において、座標軸との交点は、B1とB2で表示される(非特許文献1の第136頁参照)。動作点B1は、タービン点として知られている。スループットがB1よりも大きければ、出力はスクリュー軸に出力される。動作点B2は、スループットなしのパワー要求を示す。
【0087】
圧力生成領域では、導入されたパワーの幾らかだけが流れパワーに変換される。導入されたパワーの残りは、消散する。流れパワーは、スループットと圧力差の積で計算される。座標軸との交点A1,A2における流れパワーは、圧力差が零(A1)であるか,スループットが零(A2)であるので、いずれも零であることを当業者は容易に理解している。A1とA2の間の領域では、圧力差とスループットの両方が零より大きいので、流れパワーは正になる。スループットによって与えられる動作点の流れパワーを、この動作点でスクリュー軸が出力するパワーで除算すれば、この動作点における圧力生成効率が求められる。スループットに基づいて効率を求め、次いで根を求めれば、スクリュー要素の最大効率を見つけることができる。
【0088】
K. Kohlgrueber, Co-Rotation Twin-Screw Extruders, Hanser Verlag, 2007, ISBN 978-3-446-41372-6の第126頁に記載されているように、1回転当たりのスループット が動作点A1より小さく、逆圧がない場合、スクリュー要素で部分充填が生じる。充填度が零になりがちな場合、スクリュー要素のパワー要求は、動作点B4で示される。この動作状態のとき、軸とバレルは、溶融体で濡れるが、生産物は輸送されない。動作点A1で達成されるスクリュー要素の完全な充填まで、充填度と共にパワー要求は増加する。動作点A1で要求されるパワー要求は、B5で示される。
スクリュー要素の動作挙動を特徴づける特性は、例えば動作点A1,A2,B1,B2,B4,B5であり、さらに所定のせさんぶつスループットでの圧力生成効率および達成可能な最大圧力生成効率である。特に輸送要素,捏ね要素,混合要素,遷移要素などのスクリュー要素の動作挙動を特徴づける上記特性は、流れシミュレーション・プログラム(CFDプログラム)において有利に計算される。
【0089】
ステップ(d):選択した値の組み合わせと計算の結果である特徴に基づいてデータに基づくモデルを作成する
利用できる入力変数と出力変数からデータに基づくモデルを作成することは、従来技術である。公知のデータに基づくモデルは、例えば、線形および非線形回帰法、線形近似法、人工ニューラル・ネットワーク、サポート・ベクトル・マシン、ハイブリッド・モデルである。
【0090】
エルトメンガープロファイルをもつスクリュー数が2のスクリュー要素の予測手段を作成するには、ハイブリッド・モデルを用いる。
【0091】
図3による値の組み合わせに基づいて、無次元中心線距離A(水平軸)と無次元ピッチT(縦軸)に依存してスクリュー数が2の輸送要素の予測されたカム角を図4に示している。隣接スクリュー間無次元あそびは、S=0.02に設定されている。スクリュー-バレル間遊びは、D=0.01に設定されている。
【0092】
図3による値の組み合わせに基づいて、無次元中心線距離Aと無次元ピッチTに依存してスクリュー数が2のスクリュー要素の予測された圧力生成パラメータA2が図5に示されている。隣接スクリュー間無次元あそびは、S=0.02に設定されている。スクリュー-バレル間遊びは、D=0.01に設定されている。
【0093】
計算された圧力生成パラメータと予測された圧力生成パラメータA2の比較の結果は、次のとおりである。値の組み合わせの総てが比較に含まれていると、計算と予測の圧力生成パラメータの間の平均偏差は、11.3%の標準偏差でもって6.75%であった。値の組み合わせの範囲を正のカム角をもつスクリュー要素に限定すれば、計算と予測の圧力生成パラメータの間の平均偏差は、5.16%の標準偏差でもって4.04%であった。値の組み合わせの範囲を更にパラメータ空間の限界からの距離が5%に維持(パラメータの長さは100%)されるように限定すれば、計算と予測の圧力生成パラメータの間の平均偏差は、3.59%の標準偏差でもって3.22%であった。
【0094】
図4,5を比較すれば、特にカム角が零以下の場合、圧力生成パラメータA2は非常に大きく変化することが明らかである。結果として、値の組み合わせの密度が同じなら、上記場合、予測精度は劣っている。さらに、予測精度は、パラメータ空間の周辺において値の組み合わせを追加設定しても周辺に向かうほど幾分減少する。
【0095】
ステップ(e):場合によって、上記(a)〜(e)のステップの1つ以上を、結果の特徴が、データに基づくモデルの助けで十分な精度で計算されることができるまで繰り返す
この実施形態の過程では、ステップ(b)〜(d)が繰り返された。3.59%の標準偏差でもって平均偏差が3.22%という予測精度は、スクリュー押出機にとっては度々受け入れられない。値の組み合わせの数が総数3358まで増加された。更なる値の組み合わせは、パラメータ空間内で可能な限り均一に分布させた一方、他方でパラメータ空間の周辺で再び追加設定させた。局所偏差変数または結果の特徴の局所勾配に対応するような値の組み合わせの更なる設定の可能性は取り上げなかった。結果の特徴を計算し、データに基づく新たなモデルを作成した後、計算された圧力生成パラメータと予測された圧力生成パラメータA2の比較が再度行われた。総ての値の組み合わせが比較に含まれている場合、計算された圧力生成パラメータと予測された圧力生成パラメータの平均偏差は、4.74%の標準偏差でもって3.07%であった。値の組み合わせの範囲を正のカム角をもつスクリュー要素に限定すれば、計算と予測の圧力生成パラメータの間の平均偏差は、2.41%の標準偏差でもって1.91%であった。値の組み合わせの範囲を更にパラメータ空間の限界からの距離が5%に維持(パラメータの長さは100%)されるように限定すれば、計算と予測の圧力生成パラメータの間の平均偏差は、1.55%の標準偏差でもって1.52%であった。平均偏差と標準偏差には、58%までの減少がある。
【0096】
1.55%の標準偏差でもって平均偏差が1.52%という予測精度は、スクリュー押出機に
とって十分である。
【0097】
実施形態2:エルトメンガースクリュープロファイルに比して小さいカム角をもつスクリュー数が2のスクリュー要素の予測手段の製造
【0098】
ステップ(a):パラメータ空間を定義する
以後Ritaスクリュー要素(Rita=reduced tip angle)と称するカム角の小さいスクリュー要素は、エルトメンガースクリュープロファイルに比して小さいカム角を有する。関連カム角Rは、この場合、Ritaスクリュープロファイルのカム角を、自己清掃型で密に噛合するエルトメンガースクリュープロファイルのカム角で除算した商で定義される。関連カム角Rに対して、0≦R≦1のパラメータ空間が選択される。Ritaスクリュー要素の更なる無次元パラメータおよび関連パラメータの空間は、実施形態1のエルトメンガー要素に対応する。
【0099】
図6aは、自己清掃型で密に噛合するRitaスクリューのプロファイルを示している。図6aの基本構造は、図1aの基本構造に対応している。Ritaスクリュープロファイルの1/4は、互いに対応する2×3個の円弧で得られる。図6aにおいて、無次元中心線距離AはA=0.8333である。半径1,1'は、夫々無次元外半径RA=0.5,無次元コア半径RK=0.3333に等しい。半径3,3'は、夫々中心線距離0.9,中心線距離0.1に等しい。対応する円弧1,1'と2,2'と3,3'は、ラジアンで測った中心角が夫々0.0999と0.4035と0.2820である。円弧1,1'の中心点は、座標の原点にある。総ての円弧は、互いに接線方向に結合する。円弧3,3'は、共通点において直線FPと接する。
【0100】
図6bは、図6aの自己清掃型で密に噛合するRitaスクリュープロファイルと、このプロファイルから導き出され,八角形スクリューバレル内にあそびをもつスクリュープロファイルを示している。図6bの構造は、図1bの構造に対応している。あそびをもつスクリュープロファイルは、空間的等距離の方法によって得られた。2つのスクリュー間の無次元あそびSはS=0.01、スクリュー-バレル間無次元あそびDはD=0.01、関連するスクリュー要素の無次元ピッチTはT=1であった。
【0101】
ステップ(b):パラメータ空間内で代表的な値の組み合わせを選択する
図7は、選択されたパラメータ空間における無次元中心線距離Aと関連カム角Rの値の6005組の組み合わせを示している。これらのうち3358組の値の組み合わせは、関連カム角R=1をもつ実施形態1から引き継いでいる。更なる2647組の値の組み合わせは、関連カム角が1未満のものを示している。値の組み合わせの選択は、実施形態1で述べた方法によって行われた。
【0102】
エルトメンガースクリュー要素に基づいて、新たなスクリュー要素を、スクリュー押出機や押出過程のための予測手段に途切れなく統合することができる。予測手段は、新たなRitaスクリュー要素とエルトメンガースクリュー要素からなる。これに代えて、関連カム角Rが1以下の2647組だけの値の組み合わせからなる予測手段を作ることができる。
【0103】
ステップ(c):選択した値の組み合わせに対してシミュレーション計算を用いて結果の特徴を計算する
選択した値の組み合わせに基づいて、シミュレーション計算を用いて結果の特徴の計算が行われる。
【0104】
ステップ(d):選択した値の組み合わせと計算の結果である特徴に基づいてデータに基づくモデルを作成する
Ritaスクリュープロファイルをもつスクリュー数が2のスクリュー要素のための予測手段を作るためにハイブリッドモデルが用いられる。作られたデータに基づくモデルは、所望の結果の特徴の予測を可能にする。
【0105】
図7による値の組み合わせに基づいて、無次元中心線距離A(水平軸)と無次元ピッチT(縦軸)に依存して、関連カム角Rが1をもつ -エルトメンガースクリュー要素に対応する- スクリュー数が2のRita輸送要素の予測された動作点B2が図8に示されている。隣接スクリュー間無次元あそびは、S=0.01に設定されている。スクリュー-バレル間無次元遊びは、D=0.01に設定されている。図9は、関係カム角R=0.5をもつスクリュー数が2のRita輸送要素の予想された動作点B2を示している。より小さい関係カム角Rは、押出機に導入されるエネルギがより小さいことが比較して分かる。
【0106】
図8,9の左下に夫々影付け表示した領域は、負のカム角の領域を示している。予測手段は、例えばカム角などに対する更なる要求と組み合わせた例えばB2に対する要求をもつスクリュー要素の予測を可能にする。
【0107】
計算された動作点と予測された動作点B2の比較は、次のような結果をもたらした。カム角が正で、パラメータ空間の限界からの距離が5%に維持(パラメータの長さは100%)されるような値の組み合わせを総て含む比較では、計算された動作点と予測された動作点の平均偏差は、0.97%の標準偏差でもって0.93%であった。
【0108】
ステップ(e):場合によって、上記(a)〜(e)のステップの1つ以上を、結果の特徴が、データに基づくモデルの助けで十分な精度で計算されることができるまで繰り返す
予測精度が高いという理由で、更なる特徴の組み合わせを繰り返す必要はなかった。
付録
【0109】
同じ方向に回転する完全に拭き取り合う一対のスクリュー押出機を作るための設計仕様
驚くべきことに、完全に拭き取り合う一対のスクリュープロファイルの幾何学形状の基礎となる基本的原理が見つかっている。この基本的原理は、国際特許出願PCT/EP2009/003549およびPCT/EP2009/004249に記載されていて、完全に拭き取り合う一対のスクリュー押出機のための設計仕様を作成することを可能にし、従って完全に拭き取り合う一対のスクリュー押出機を明確に記述するパラメータのための設計仕様を定義することを可能にする。
【0110】
基本的原理は、次の1.〜4.からなる。即ち、
1.生成するスクリュープロファイルと生成されたスクリュープロファイルの両者は、常に円弧からなる。
円弧の寸法は、その中心角と半径によって与えられる。以降、円弧の中心角は、略して円弧の角と称する。円弧の位置は、その中心点の位置とその始点の位置または終点の位置によって定義でき、円弧は時計回りまたは反時計回りに始点から始まって終点で終わるように構成できるから、どちらが始点で,どちらが終点であるかは固定しない。従って、始点と終点は交換できる。
【0111】
2.プロファイルの複数の円弧は、それらの始点および終点で互いに接線方向に合流(結合)する。
【0112】
3.基本的原理2は、半径が零の円弧でキンクが記述されている場合は、「キンク」をもつプロファイルにも適用される。
「キンクの寸法」は、半径零の円弧の対応する角によって与えられ、即ち、キンクの場合、第1円弧から半径零の第2円弧の角の周りの回転を経て第3円弧への移行がある。或いは、言い換えれば、半径零の第2円弧の中心点における第1円弧への接線が、この第2円弧の中心点における第3円弧への接線と第2円弧の角に対応する角度で交差する。第2円弧を考えれば、隣接する総ての円弧は、接線方向に互いに第1→第2→第3と合流する。半径零の円弧は、目的に叶って、半径がeps(eps<<1, eps→0)、即ち,非常に小さい正の実数である円弧のように取り扱われる。
【0113】
生成するスクリュープロファイルの円弧は、生成されたスクリュープロファイルの円弧に夫々「対応」する。ここで「対応」するは次のように理解される。
・対応する円弧の角は等しい。
・対応する円弧の半径の和は中心線距離aに等しい。
・生成するスクリュープロファイルの円弧の中心点と終点を結ぶ線の1つは、対応する生成されたスクリュープロファイルの円弧の中心点と終点を結ぶ線の1つに平行である。
・生成するスクリュープロファイルの円弧の中心点から見た終点の方向は、対応する生成されたスクリュープロファイルの円弧の中心点から見た終点の方向と反対である。
・生成するスクリュープロファイルの円弧の中心点は、対応する生成されたスクリュープロファイルの円弧の中心点から中心線距離に対応する距離にある。
・生成するスクリュープロファイルの円弧の中心点と対応する生成されたスクリュープロファイルの円弧の中心点を結ぶ線は、生成するスクリュープロファイルの回転点と生成されたスクリュープロファイルの回転点を結ぶ線に平行である。
・生成するスクリュープロファイルの円弧の中心点が、対応する生成されたスクリュープロファイルの円弧の中心点と一致するために変位すべき方向は、生成するスクリュープロファイルの回転点が、生成されたスクリュープロファイルの回転点に一致するために変位すべき方向と同じである。
【0114】
これらの基本的原理に基づいて、完全に拭き取り合う一対のスクリュー軸のプロファイルのための設計方法を公式化することができる。
【0115】
この場合、複数のプロファイルは、1つの平面に含まれる。生成するスクリュープロファイルの回転軸と生成されたスクリュープロファイルの回転軸は、上記平面に夫々垂直であり、両回転軸の上記平面との交点は、回転点と称される。両回転点の間隔は、中心線距離aと称される。以下、πは、円周率(π=3.14159)を表すものと理解されなければならない。
【0116】
第1のステップにおいて、生成するスクリュープロファイルが作られ、生成するスクリュープロファイルが生成されたスクリュープロファイルを決定する。
― 生成するスクリュープロファイルを形成することを企図したn個の円弧が選択される。ここで、nは、1または1以上の整数である。
― 外半径raが選択される。raは、0を超えかつ中心線距離a以下の値をとり得る(0<ra≦a)。
― 内半径riが選択される。riは、0以上かつra以下の値をとり得る(0≦ri≦ra)。
― n個の円弧は、生成するスクリュープロファイルの回転軸の周りに時計回りまたは反時計回りに次の規則に従って配置される。
○ n-1個の円弧の寸法は、選ばれた角α_1, α_2, …, α_(n-1)と選ばれた半径r_1, r_2, …, r_(n-1)によって決まり、角は、ラジアンで測られて0以上かつ2π以下であり、半径は、0以上かつ中心線距離a以下である。
○ 最後の円弧の角α_nは、n個の円弧の夫々の角の合計で得られ、2πに等しい。
○ 最後の円弧の半径r_nは、プロファイルを閉じるこの最後の円弧によって得られる。
○ 総ての円弧は、凸なプロファイルが得られるように互いに接線方向に合流する。
○ 半径0の円弧は、好ましくは、半径がeps(eps<<1, eps→0)、即ち,非常に小さい正の実数である円弧のように取り扱われる。
○ 各円弧は、生成するスクリュープロファイルの回転点に中心があり,内半径がri,外半径がraの円環の内部または線上にある。
○ 少なくとも1つの円弧は、外半径raと接する。
○ 少なくとも1つの円弧は、内半径riと接する。
【0117】
生成されたスクリュープロファイルを形成するn'個の円弧は、その角が、α_1', α_2', …, α_n'で、その半径が、r_1, r_2, …, r_n'であり、次のようにして得られる。
○ n'=n
○ α_1'=α_1; α_2'=α_2; …; α_n'=α_n
○ r_1'=a-r_1; r_2'=a-r_2; …; r_n'=a-r_n
【0118】
生成されたスクリュープロファイルを形成するn'個の円弧の位置は、次のようにして得られる。
○ 生成されたスクリュープロファイルのi'番目の円弧の中心点は、生成するスクリュープロファイルのi番目の円弧の中心点から中心線距離aと等しい距離だけ隔たる。
○ 生成されたスクリュープロファイルのi'番目の円弧の中心点は、生成されたスクリュープロファイルの回転点から、生成するスクリュープロファイルのi番目の円弧の中心点が生成するスクリュープロファイルの回転点から離れている距離に対応する距離だけ隔たる。
○ 生成されたスクリュープロファイルのi’番目の円弧の中心点と生成するスクリュープロファイルのi番目の円弧の中心点を結ぶ線は、生成されたスクリュープロファイルの回転点と生成するスクリュープロファイルの回転点を結ぶ線に平行である。
○ 生成されたスクリュープロファイルのi'番目の円弧の中心点に対して生成されたスクリュープロファイルのi'番目の円弧の始点が成す方向は、生成するスクリュープロファイルのi番目の円弧の中心点に対して生成するスクリュープロファイルのi番目の円弧の始点が成す方向と逆である。
iおよびi'は、夫々1から円弧の数nおよび1から円弧の数n'までの任意の整数である。
【0119】
設計方法は、原理的に紙の上で直角定規とコンパスを用いて行うことができる。例えば、スクリュー要素のプロファイルのi番目とi+1番目の円弧の間の接線方向の移行は、次のように行われる。即ち、i番目の円弧の終点を中心にして半径r_(i+1)の円を描き、この円とi番目の円弧の中心点と終点を結ぶ直線との交点であってスクリュー要素の回転点の近い交点が、i+1番目の円弧の中心点になる。引き抜きブロックに代えて、実用的な具合に直角定規とコンパスによりコンピュータの助けでプロファイルをバーチャルで作ることができる。
【0120】
国際特許出願PCT/EP2009/003549には、完全に拭き取り合う一対のスクリュープロファイルのための更なる設計仕様が記載されている。この記載は、構造が例えば直交座標系を用いて行われ、或いはスクリュープロファイルが所定の対称性を呈する場合、得られる変数について議論している。
【0121】
上記基本的原理およびこれに基づく設計仕様は、まず自己清掃型のスクリュー要素のプロファイルを殆ど完全に自由に設計することを可能にし、それ故、パラメータの副次的変更によって応用に最適化させることを可能にする。加えて、円弧で構成されず,従って自己清掃型でないスクリュープロファイルを、所望の精度でもって十分に多くの円弧によって近似することができる。この場合、円弧で近似されたプロファイルは、勿論自己清掃型である。
【0122】
これにより、本発明による最適化のスクリュー押出機の幾何学形状は、データに基づくモデルの使用によって近づけるようになった。この目的のため、まず、2次元プロファイルから3次元プロファイルを作らなければならない。考えられる総てのスクリュー要素と移転要素は、設計されたスクリュープロファイルから作ることができる。
【0123】
知られているように(非特許文献1の第227〜248頁参照)、輸送要素は、スクリュープロファイルが螺旋状に連続的に回転し、軸方向に連続することで差別化される。この場合、輸送要素は、右回りまたは左回りである。輸送要素のピッチは、中心線距離の0.1〜10倍であるのが好ましい。ピッチは、スクリュープロファイルが完全な回転に要する軸方向長さを意味すると解され、中心線距離の0.1〜10倍であるのが好ましい。
【0124】
知られているように(非特許文献1の第227〜248頁参照)、捏ね要素は、スクリュープロファイルが軸方向へ捏ね盤の形のオフセットを伴って連続することで差別化される。捏ね版の配置は、右回り,左回り,または中立である。捏ね盤の軸方向長さは、中心線距離の0.05〜10倍であるのが好ましい。隣接する捏ね盤の軸方向間隔は、中心線距離の0.002〜0.1倍であるのが好ましい。
【0125】
知られているように(非特許文献1の第227〜248頁参照)、混合要素は、輸送要素のスクリューカム(Schneckenkaemmen)に開口が設けられていることで差別化される。混合要素は、右回りまたは左回りである。ピッチは、中心線距離の0.1〜10倍であり、軸方向長さは、中心線距離の0.1〜10倍であるのが夫々好ましい。開口は、反輸送方向または軸に平行に配置されたU字状またはV字状の溝であるのが好ましい。
【0126】
遷移要素は、2つの異なるスクリュープロファイルの間で連続的な遷移が可能で、遷移の各点で自己清掃型の一対のスクリュープロファイルが存在するにするスクリュー要素の呼称である。種々のスクリュープロファイルは、例えば異なったスクリュー数を持つことができる。遷移要素は、右回りまたは左回りである。遷移要素のピッチおよび軸方向長さは、いずれも中心線距離の0.1〜10倍であるのが好ましい。
【0127】
直接拭き取り型のスクリュープロファイルがツイン・スクリュー押出機に直接用いることができないことを、当業者は知っている。当業者は、予め定められた完全拭き取り型スクリュープロファイルからあそびをもつスクリューを導き出す方法を知っている。この方法は、例えば、非特許文献1の第28頁以降に記載された中心線距離の増加、長手方向断面の等距離および空間的等距離の可能性である。中心線距離の増加の場合は、より小さい直径のスクリュープロファイルが作られて、隣接スクリュー間あそびの量だけ引き延ばされる。長手方向断面の等距離法の場合は、長手方向断面のプロファイル曲線(各要素の回転軸に平行)が、プロファイル曲線に対して垂直内側へ回転軸の方向へ隣接スクリュー間あそびの半分だけ変位させられる。空間的等距離法の場合は、スクリュー要素が互いに拭き取り合うような空間曲線から出発して、スクリュー要素の寸法が隣接スクリュー間あそびの半分だけ完全に拭き取り合うときの表面に対して垂直方向に減じられる。長手方向断面の等距離法と空間的等距離法は、好んで用いられるが、特に空間的等距離法が好まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリュー押出機または押出過程のための予測手段を作る方法であって、少なくとも次のステップ、即ち
(a) パラメータ空間を定義し、
(b) このパラメータ空間内で代表的な値の組み合わせを選択し、
(c) シミュレーション計算の助けで選択した上記値の組み合わせに対して結果の特徴を計算し、
(d) 選択した上記値の組み合わせおよび計算した結果の特徴に基づいて、データに基づくモデルを生成し、
(e) 場合によって、上記(a)〜(e)のステップの1つ以上を、結果の特徴が、データに基づくモデルの助けで十分な精度で計算されることができるまで繰り返す
というステップを含む方法。
【請求項2】
押出材料の押し出しにおいてスクリュー押出機の挙動を予測するための方法であって、少なくとも次のステップ、即ち
(I) 予測手段としてデータに基づくモデルを作り、
(II) スクリュー押出機,押出過程,押出材料の特徴値を上記データに基づくモデルに入力し、
(III) 上記データに基づくモデルによる結果の特徴を計算し、
(IV) 結果を出力する
というステップを含む方法。
【請求項3】
スクリュー押出機の幾何学形状または押出過程を最適化するための方法であって、少なくとも次のステップ、即ち、
(A) 予測手段としてデータに基づくモデルを作り、
(B) スクリュー押出機または押出過程のための目標プロファイルを定義し、
(C) 定義した目標プロファイルを満たす値の組み合わせまたは目標プロファイルに最も近い値の組み合わせを識別し、
(D) ステップ(C)で決定した値の組み合わせを出力する
というステップを含む方法。
【請求項4】
スクリュー押出機を製造する方法であって、少なくとも次のステップ、即ち、
(i) 予測手段としてデータに基づくモデルを生成し、
(ii) スクリュー押出機または押出過程のための目標プロファイルを定義し、
(iii) 定義された目標プロファイルを満たすスクリュー押出機のための値の組み合わせ、或いはこの目標プロファイルに最も近いスクリュー押出機のための値の組み合わせを識別し、
(iv) ステップ(iii)で決まった値の組み合わせを出力し,記憶し、
(v) ステップ(iii)で決まった値の組み合わせに基づいて、スクリュー押出機を製造する
というステップを含む方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の方法において、スクリュー要素の断面プロファイルは、円弧によって記述されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の方法において、プロファイルを記述する円弧は、その始点および終点で互いに接線方向に合流し、プロファイル中のキンクは、半径が零の円弧によって記述されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1,5,6のいずれか1つに記載の方法によって生成されたスクリュー押出機または押出過程のための予測手段。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1つに記載の方法を実行するためのコンピュータシステム。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれか1つに記載の方法をコンピュータ上で実行するためのプログラムコーディング手段を備えたコンピュータプログラム製品。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−514205(P2013−514205A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543680(P2012−543680)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069608
【国際公開番号】WO2011/073181
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(512137348)バイエル・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (91)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Intellectual Property GmbH
【Fターム(参考)】