説明

スクリーニング方法、スクリーニング装置およびプログラム

【課題】半導体装置の特性がウエハ上の位置に応じて変動する場合においても、半導体装置の不良品を高い精度で検出できるようにすること。
【解決手段】スクリーニング方法は、ウエハに含まれる複数の半導体装置のそれぞれの電気的特性値を測定する工程と、前記ウエハ上における前記複数の半導体装置のそれぞれの位置情報を取得する工程と、前記複数の半導体装置の電気的特性値の変動のうちの前記ウエハ面上で相対的に緩やかに変動する成分を、前記複数の半導体装置のそれぞれの電気的特性値から差し引いて、前記複数の半導体装置のそれぞれの電気的特性値を補正する工程と、前記補正後の電気的特性値の分布を前記複数の半導体装置に対して生成する工程と、前記分布に基づいて、前記補正後の電気的特性値が外れ値となる半導体装置を前記複数の半導体装置の中から検出する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスクリーニング方法、スクリーニング装置およびプログラムに関し、特に、半導体装置の特性を測定して、その特性の特異値(外れ値、Outlier)を検出することで半導体装置のスクリーニングを行うスクリーニング方法、スクリーニング装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置のスクリーニング装置は、半導体装置に内在する不良を検出し、その半導体装置をスクリーニングするために用いられる。例えば、特許文献1に記載されたスクリーニング装置は、ウエハ上の半導体装置の物理量を観測し、その物理量の分布を検査して分布から外れている物理量(すなわち、外れ値、異常値)を示す半導体装置を特定することで、スクリーニングを行う。このような技術は、異常値スクリーニング(Outlier Screening)ともいう。
【0003】
図12は、特許文献1に記載されたスクリーニング装置の構成を示すブロック図である。ウエハ4上に作製された半導体装置は、プローバ2を介してLSIテスタ1に電気的に接続されている。これにより、半導体装置の種々の物理量が測定される。測定された物理量は、半導体装置を特定する情報とともにデータファイル3に格納される。計算機5は、測定された物理量の分布を計算し、分布から外れている物理量を示す半導体装置を特定し、結果6として出力する。
【0004】
また、特許文献2には、良品と判定された半導体チップを判定対象として選択し、選択した半導体チップの周辺の所定サイズの算出範囲を定義し、算出範囲に含まれる半導体チップのうちの良品と判定された半導体チップの電気的特性を用いて、算出範囲内の電気的特性分布を作成し、選択した半導体チップが電気的特性分布において規定外となるか否かを判定する半導体試験方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−002900号公報
【特許文献2】特開2007−123623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以下の分析は、本発明者によってなされたものである。
【0007】
特許文献1に記載された方法では、半導体装置に内在する不良要因に基づく物理量の変動を、ウエハ上に設けられたすべての半導体装置に対する当該物理量の分布からの外れ値として検出する。しかし、半導体装置の特性を示す物理量は、不良要因にのみ基づいて変動するとは限らない。
【0008】
ウエハ上に製造される半導体装置の特性を示す物理量は、ウエハ上の位置に応じて、変動することが知られている。このような物理量の変動は、半導体製造装置による半導体装置の製造条件がウエハ上において不均一であることに起因する。検出すべき不良要因による物理量の変動が、位置による物理量の変動によって相殺された場合には、不良品として検出すべき半導体装置が良品と判定されるおそれがある。実際、位置による物理量の変動は物理量の分布の幅を広げるように働くことから、不良要因による物理量の変動を外れ値(異常値)として検出することが困難となる。
【0009】
また、特許文献2に記載された半導体試験方法によると、定義された算出範囲ごとに電気的特性の平均値や分布が変動してしまい、外れ値(異常値)を適切に設定することが困難となるという問題がある。
【0010】
そこで、半導体装置の特性がウエハ上の位置に応じて変動する場合においても、半導体装置の不良品を高い精度で検出できるようにすることが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の視点に係るスクリーニング方法は、
ウエハに含まれる複数の半導体装置のそれぞれの電気的特性値を測定する測定工程と、
前記ウエハ上における前記複数の半導体装置のそれぞれの位置情報を取得する工程と、
前記複数の半導体装置の電気的特性値の変動のうちの前記ウエハ面上で相対的に緩やかに変動する成分を、前記複数の半導体装置のそれぞれの電気的特性値から差し引いて、前記複数の半導体装置のそれぞれの電気的特性値を補正する補正工程と、
前記補正後の電気的特性値の分布を前記複数の半導体装置に対して生成する生成工程と、
前記分布に基づいて、前記補正後の電気的特性値が外れ値となる半導体装置を前記複数の半導体装置の中から検出する工程と、を含む。
【0012】
本発明の第2の視点に係るスクリーニング装置は、
ウエハに含まれる複数の半導体装置のそれぞれの電気的特性値、および、該ウエハ上における該複数の半導体装置のそれぞれの位置情報を入力とし、該複数の半導体装置の電気的特性値の変動のうちの該ウエハ面上で相対的に緩やかに変動する成分を、該複数の半導体装置のそれぞれの電気的特性値から差し引いて、該複数の半導体装置のそれぞれの電気的特性値を補正する補正部と、
前記補正後の電気的特性値の分布を前記複数の半導体装置に対して生成する分布作成部と、
前記分布に基づいて、前記補正後の電気的特性値が外れ値となる半導体装置を前記複数の半導体装置の中から検出する外れ値検出部と、を備える。
【0013】
本発明の第3の視点に係るプログラムは、
ウエハに含まれる複数の半導体装置のそれぞれの電気的特性値、および、該ウエハ上における前記複数の半導体装置のそれぞれの位置情報を取得する処理と、
前記複数の半導体装置の電気的特性値の変動のうちの前記ウエハ面上で相対的に緩やかに変動する成分を、前記複数の半導体装置のそれぞれの電気的特性値から差し引いて、前記複数の半導体装置のそれぞれの電気的特性値を補正する処理と、
前記補正後の電気的特性値の分布を前記複数の半導体装置に対して生成する処理と、
前記分布に基づいて、前記補正後の電気的特性値が外れ値となる半導体装置を前記複数の半導体装置の中から検出する処理と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るスクリーニング方法、スクリーニング装置およびプログラムによると、半導体装置の特性がウエハ上の位置に応じて変動する場合においても、半導体装置の不良品を高い精度で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るスクリーニング方法の概略を一例として示すフローチャートである。
【図2】本発明に係るスクリーニング装置の概略構成を一例として示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態に係るスクリーニング装置の構成を一例として示すブロック図である。
【図4】第1の実施形態に係るスクリーニング装置における計算機の構成を一例として示すブロック図である。
【図5】第1の実施形態に係るスクリーニング装置による作用・効果について説明するための図である。
【図6】第1の実施形態に係るスクリーニング装置の動作を一例として示すフローチャートである。
【図7】第2の実施形態に係るスクリーニング装置における計算機の構成を一例として示すブロック図である。
【図8】第2の実施形態に係るスクリーニング装置の動作について説明するための図である。
【図9】第2の実施形態に係るスクリーニング装置の動作について説明するための図である。
【図10】第2の実施形態に係るスクリーニング装置の動作を一例として示すフローチャートである。
【図11】第3の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図12】特許文献1に記載されたスクリーニング装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
はじめに、本発明の概要について説明する。なお、この概要に付記する図面参照符号は、専ら理解を助けるための例示であり、本発明を図示の態様に限定することを意図するものではない。
【0017】
図1を参照すると、本発明のスクリーニング方法は、ウエハに含まれる複数の半導体装置のそれぞれの電気的特性値を測定する工程(ステップS1)と、前記ウエハ上における前記複数の半導体装置のそれぞれの位置情報を取得する工程(ステップS2)と、前記複数の半導体装置の電気的特性値の変動のうちの前記ウエハ面上で相対的に緩やかに変動する成分を、前記複数の半導体装置のそれぞれの電気的特性値から差し引いて、前記複数の半導体装置のそれぞれの電気的特性値を補正する工程(ステップS3)と、前記補正後の電気的特性値の分布を前記複数の半導体装置に対して生成する工程(ステップS4)と、前記分布に基づいて、前記補正後の電気的特性値が外れ値となる半導体装置を前記複数の半導体装置の中から検出する工程(ステップS5)と、を含む。
【0018】
また、図2を参照すると、本発明に係るスクリーニング装置(18)は、ウエハに含まれる複数の半導体装置のそれぞれの電気的特性値、および、該ウエハ上における該複数の半導体装置のそれぞれの位置情報を入力とし、該複数の半導体装置の電気的特性値の変動のうちの該ウエハ面上で相対的に緩やかに変動する成分を、該複数の半導体装置のそれぞれの電気的特性値から差し引いて、該複数の半導体装置のそれぞれの電気的特性値を補正する補正部(19)と、前記補正後の電気的特性値の分布を前記複数の半導体装置に対して生成する分布作成部(21)と、前記分布に基づいて、前記補正後の電気的特性値が外れ値となる半導体装置を前記複数の半導体装置の中から検出する外れ値検出部(22)と、を備える。
【0019】
また、本発明に係るスクリーニング方法(図1)のうちのステップS3ないしS5の各工程、および、本発明に係るスクリーニング装置(図2)の各部(19、21、22)における処理は、コンピュータ(計算機)読み取り可能なプログラムのモジュールとして実現した上で、かかるプログラムをコンピュータに実行させるようにしてもよい。
【0020】
本発明に係るスクリーニング装置、スクリーニング方法およびプログラムは、ウエハ上に作製された半導体装置の特性を示す物理量情報(例えば、テスタによって計測可能な電気的特性である電流値、電圧値、周波数値等)から、半導体装置のウエハ上の位置による物理量の変動成分を除外、または、最小化することで、不良要因の内在による半導体装置の特性を示す物理量変動の検出精度を向上させる。
【0021】
図4を参照すると、スクリーニング装置に相当する計算機15は、ウエハ上の半導体装置の特性を示す物理量のうちの、半導体装置のウエハ上の位置による変動成分を除外するために、物理量の空間周波数における低域カットを実施する2次元フィルタ部(20)を有していてもよい。また、スクリーニング方法は、ウエハ上の半導体装置の位置に応じて定められる前記物理量に対し、2次元フィルタ、特に、空間周波数の低域カットを行うステップを有していてもよい。さらに、プログラムは、ウエハ上の半導体装置の物理量に対し、その位置情報に基づいて2次元フィルタ、特に、空間周波数の低域カットを実行する処理をコンピュータに実行させるようにしてもよい。
【0022】
図5は、本発明に係るスクリーニング装置、スクリーニング方法およびプログラムの作用・効果について説明するための図である。グラフ30(実線)は、半導体装置の特性を示す物理量と、半導体装置のウエハ上における位置との関係を表す。図5の縦軸は物理量を示し、横軸は位置を示す。横軸の位置は、例えば、ウエハを適当な方向に横切る直線上の位置を表す。図5を参照すると、物理量は位置に応じて緩やかに変動している。すなわち、物理量の変動には、位置に依存する成分と、それ以外の変動要因による成分とが含まれる。グラフ31(破線)は、位置に依存する成分を示す。一方、グラフ32は、位置に依存しない成分を示す。なお、グラフ30〜32は連続的な曲線によって表されているが、これらの曲線は、半導体装置の離散的な位置(例えば、半導体装置の中央をその位置とする)に対する半導体装置の物理量を示す点を互いに線分で結んで得られた曲線である。
【0023】
半導体装置の特徴として、ウエハ上において近接する半導体装置の特性は、互いに近い値をとるという特徴がある。図5のグラフ31に示すように、位置に依存する物理量の変動はゆるやかな連続的な変動である。一方、図5のグラフ32に示すように、位置に依存しない物理量の変動は急激で不連続な変動となる。
【0024】
空間周波数の観点から見ると、半導体装置の位置に依存する物理量の変動は、比較的低い周波数領域に存在する。一方、位置に依存しない物理量の変動は、比較的高い周波数領域に存在する。したがって、観測された半導体装置の特性を表す物理量をウエハ上の位置の関数とみなすと、2次元フィルタによる空間周波数によるフィルタリングを実施すれば、物理量を位置に依存する成分(低域側の成分)と、位置に依存しない成分(高域側の成分)とに分離することが可能となる。
【0025】
特許文献1に記載されたスクリーニング装置では、半導体装置の特性を示す物理量をそのまま用いて分布図を作成し、その分布から外れている物理量を示す半導体装置を特定する。しかし、上述のように、半導体装置の特性を示す物理量には、ウエハ上の位置に依存する成分と、位置に依存しない成分とが含まれており、不良要因が存在することによる物理量の変動は位置に依存しない成分に含まれている。物理量の位置に依存する成分の大きさが大きくなると、位置に依存しない成分に含まれる不良要因に起因する物理量の変動が隠蔽され、検出することが困難となる。
【0026】
図5を参照すると、分布34は、半導体装置の特性を示す物理量の分布を示す。また、物理量33は、不良要因を有する半導体装置について測定された物理量を示す。分布34は、半導体装置の特性を示す物理量のうちの、位置に依存する変動と位置に依存しない変動とを足し合わせた分布を示す。物理量35は、物理量33の分布34に対する位置を示す。このとき、位置に依存する変動成分により、不良要因に起因する物理量の変動が隠蔽されてしまい、物理量33を分布34からの外れ値として検出することは困難となる。
【0027】
一方、分布36は、半導体装置の特性を表す観測された物理量30から、位置に依存する成分31を除去するようにして補正した物理量、すなわち、位置に依存しない成分32の分布を示す。分布36は、分布34と比較して分布の幅が狭くなっている。物理量37は、不良要因を有する半導体装置の補正後の物理量38の分布36に対する位置を示す。このとき、物理量38を外れ値として容易に検出することが可能となる。
【0028】
上述のように、半導体装置の特徴として、ウエハ上において互いに近接する半導体装置同士の特性値は極めて近い値をとることが知られている。したがって、半導体装置の特性を示す物理量を半導体装置のウエハ上の位置の関数とみなすと、関数は変動値31に示すように緩やかに変化する。この関数は、空間周波数の観点から、比較的低い周波数領域に存在する。一方、半導体装置の位置に依らない物理量の変動は、グラフ32に示すようにランダムである。グラフ32は、半導体装置の位置の関数とみなすと、空間周波数の観点から、比較的高い周波数領域に存在する。この両関数の特徴から、半導体装置の特性を示す物理量の変動30を半導体装置の位置の関数とみなすと、空間周波数の観点から、低域をカットする操作を行うことで、位置に依らない物理量の変動のみを取り出すことが可能となる。
【0029】
このように、半導体装置の特性のうちのウエハ面上において緩やかに変動する成分(低周波成分)を除去するために、図1のスクリーニング装置(18)は補正部(19)を備え、図4の計算機(15)は2次元フィルタ部(20)を備えている。また、本発明のスクリーニング方法は、空間周波数の観点から低域をカットするために、2次元フィルタにより低域をカットするステップを有する。さらに、本発明のプログラムは、空間周波数の観点から2次元フィルタにより低域をカットする処理をコンピュータに実行させる。
【0030】
(実施形態1)
第1の実施形態に係るスクリーニング装置について、図面を参照して説明する。図3は、本実施形態のスクリーニング装置を計算機15として含むスクリーニングシステムの構成を一例として示すブロック図である。図3を参照すると、スクリーニングシステムは、計算機15以外に、LSIテスタ11、プローバ12、データファイル13、および、記録媒体17を備えている。また、図3には、被測定対象である半導体装置が設けられたウエハ14、および、計算機15から出力される結果16も、併せて示されている。
【0031】
半導体装置は、ウエハ14上に作製されている。半導体装置は、プローバ12を介してLSIテスタ11に電気的に接続されている。プローバ12は、計算機15に接続されている。計算機15は、定められた手順に従ってプローバ12を制御する。プローバ12は、ウエハ14上の半導体装置の位置情報をLSIテスタ11または計算機15に送信する。LSIテスタ11は、定められた手順に従ってウエハ14上の半導体装置の特性を観測し、観測した物理量(例えば、電流値、電圧値、周波数等)、観測結果に基づく半導体装置のGO/NOGO、および、被測定半導体装置のウエハ14での位置情報を含む観測結果をデータファイル13に出力する。なお、図3には明示しないものの、LSIテスタ11の動作を計算機15が制御するようにしてもよい。
【0032】
計算機15は、データファイル13に接続されている。計算機15は、半導体装置の観測された物理量情報と、位置情報とをデータファイル13から読み出し、定められた手順に従って、外れ値となる物理量を有する半導体装置の位置情報を算出し、結果16に出力する。
【0033】
なお、一連の動作は、全体を制御する計算機プログラムとして計算機15に接続された記録媒体17に記録されていてもよい。
【0034】
図4は、本実施形態に係るスクリーニング装置における計算機15の構成を一例として示すブロック図である。図4を参照すると、計算機15は、2次元フィルタ部20、分布作成部21、外れ値検出部22、および、デバイス特定部23を備えている。
【0035】
2次元フィルタ部20は、データファイル13から送られたデータを受け取る。データは、半導体装置について観測された物理量情報と位置情報を含む。なお、データは、GO判定がなされた半導体装置に関するものに限定されている。2次元フィルタ部20は、物理量をウエハ上の位置の関数とみなし、空間周波数における低域カット操作を施し、補正された物理量を算出する。2次元フィルタ部20は、補正後の物理量情報を分布作成部21に送信する。
【0036】
分布作成部21は、補正後の物理量情報の分布図を作成する。このとき、分布図を作成する母集団として、同一のウエハ上に存在する半導体装置、または、同一のロットの半導体装置等の予め定められた母集団とする。分布作成部21は、作成した分布図の情報を外れ値検出部22に送る。
【0037】
外れ値検出部22は、予め定められた手順、規格値によって、分布図を解析し、GO/NOGO判定を行う。外れ値検出部22は、例えば、分布図における平均値、標準偏差を求め、予め定められたZ値を下回る値または上回る値を外れ値として検出する。外れ値検出部22は、判定結果をデバイス特定部23に送信する。
【0038】
デバイス特定部23は、受信した判定結果に基づいて、外れ値を示す半導体装置の位置情報を特定し、特定した位置情報を出力する。
【0039】
図6は、図3および図4に示した本実施形態のスクリーニング装置(計算機15)の動作を一例として示すフローチャートである。図6を参照して、本実施形態のスクリーニング装置の動作について説明する。
【0040】
被測定装置である半導体装置は、ウエハ14上に作製されている。半導体装置は、プローバ12を介してLSIテスタ11に電気的に接続されている。LSIテスタ11は、半導体装置に対して、電源の供給、信号の印加、および、電気的特性の測定を行う。プローバ12は、予め定められた手順に従い、ウエハ14上の半導体装置のそれぞれについてLSIテスタ11との接続を構成し、LSIテスタ11による半導体装置の観測を可能とする。これらの一連の動作は、計算機15による指示に従って行うようにしてもよい。
【0041】
LSIテスタ11は、予め定められた手順に従って、接続された半導体装置に対して、電源および電気信号を供給し、種々の物理量(電圧値、電流値、周波数等)を観測する(ステップS11)。また、LSIテスタ11は、予め定められた方法、規格値により、半導体装置のGO、NOGOを判定する。
【0042】
プローバ12は、半導体装置のウエハ14上における位置情報をLSIテスタ11に送信する(ステップS12)。LSIテスタ11は、物理量、GO/NOGO結果等の観測結果を、半導体装置のウエハ14上での位置情報とともに、データファイル13に格納する。
【0043】
データファイル13は、半導体装置の観測値である物理量を、半導体装置の位置情報、半導体装置のGO/NOGO結果に紐付けして保存する(ステップS13)。ウエハ14上の一連の半導体装置の観測が全て完了した後、データファイル13に格納された観測値である物理量および位置情報が計算機15に送られる。ただし、送信される物理量および位置情報は、GO判定された半導体装置に関するもののみである。なお、注目する複数の物理量のうちの少なくともいずれかについてNOGOと判定された半導体装置に関しては、物理量および位置情報を計算機15に送信すべき対象から除外するようにしてもよい。
【0044】
計算機15において、2次元フィルタ部20は、データファイル13から送られた物理量情報を位置の関数とみなして、空間周波数の観点から低域カット処理を行う(ステップS14)。2次元フィルタ特性として、予め定められた適当な値を使用する。例えば、ウエハ面内で直交する2方向のそれぞれの方向についての空間周波数の下限値fx、fyを定義し、物理量の変動成分のうちのfx、fyよりも空間周波数の低い成分をフィルタリングによって除去するようにしてもよい。
【0045】
分布作成部21は、2次元フィルタ部によって得られた補正された物理量の分布を求める(ステップS15)。分布の母集団として、単一のウエハ上の半導体装置、または、単一のロットに含まれる全部もしくは一部のウエハ上の半導体装置等の予め定められた母集団を用いることができる。
【0046】
外れ値検出部22は、分布作成部21で作成された分布から、予め定められた方法で外れ値となる補正後の物理量を特定する(ステップS16)。
【0047】
デバイス特定部23は、外れ値となった物理量に紐付けられた位置情報を特定し、結果16に出力する(ステップS17)。
【0048】
本実施形態に係るスクリーニング装置は、半導体装置の特性のうちの、半導体のウエハ上の位置に応じて緩やかに変動する成分を除去する。したがって、本実施形態のスクリーニング装置によると、半導体装置の特性がウエハ上の位置に応じて変動する場合においても、半導体装置の不良品を高い精度で検出することが可能となる。
【0049】
(実施形態2)
第2の実施形態に係るスクリーニング装置について、図面を参照して説明する。図7は、本実施形態に係るスクリーニング装置に相当する計算機25の構成を一例として示すブロック図である。図7を参照すると、計算機25は、平均値作成部24、分布作成部21、外れ値検出部22およびデバイス特定部23を備えている。本実施形態の計算機25は、第1の実施形態における計算機15(図4)の2次元フィルタ部20の代わりに、平均値算出部24を備えている。
【0050】
平均値算出部24は、半導体装置の特性を示す物理量に関し、着目する半導体装置を含む、周囲の半導体装置の物理量の平均値を算出し、着目する半導体装置の物理量から該平均値を差し引いた値を補正された物理量として出力する。
【0051】
図8および図9は、本実施形態のスクリーニング装置(計算機25)の動作について説明するための図である。図8および図9は、ウエハ上に作製された半導体装置を模式的に示す。また、図10は、本実施形態のスクリーニング装置(計算機25)の動作を一例として示すフローチャートである。
【0052】
図8ないし図10を参照して、図7に示した計算機25の動作について説明する。
【0053】
図8は、ウエハ上に作製された半導体装置を模式的に示す。図8において、中央の半導体装置は、着目する半導体装置40である。半導体装置40の周囲には、半導体装置40と同種の半導体装置が作製されている。
【0054】
はじめに、GO判定された半導体装置のいずれかを、着目する半導体装置40とする(ステップS21)。
【0055】
次に、着目する半導体装置40を含む周囲の半導体装置(図8の模式図においては9個の半導体装置)のうちの、GO判定された半導体装置を選択する(ステップS22)。
【0056】
次に、選択された半導体装置の物理量の平均値を求める(ステップS23)。
【0057】
着目する半導体装置40の物理量から、求めた平均値を引いた値を、補正された物理量として、位置情報とともに出力する(ステップS24)。
【0058】
ステップS22では、一例として、自身を含む9個の半導体装置を、周囲の半導体装置とした。しかし、図9に示すように、自身を含む25個の半導体装置を、周囲の半導体装置としてもよい。また、着目する半導体装置40から予め設定された距離以内に存在する半導体装置を、周囲の半導体装置としてもよい。
【0059】
本実施形態に係るスクリーニング装置は、上記のように、各半導体装置の特性から周囲の半導体装置の特性の平均値を差し引くことで、半導体装置の特性のうちの、半導体のウエハ上の位置に応じて緩やかに変動する成分を除去する。したがって、本実施形態のスクリーニング装置によると、半導体装置の特性がウエハ上の位置に応じて変動する場合においても、半導体装置の不良品を高い精度で検出することが可能となる。
【0060】
(実施形態3)
第3の実施形態に係るスクリーニング装置について、図面を参照して説明する。
【0061】
図11は、本実施形態に係るスクリーニング装置の動作を一例として示すフローチャートである。本実施形態では、第2の実施形態に係るスクリーニング装置の動作(図10)のステップS23の代わりに、ステップS33を含む。
【0062】
ここでは、着目する半導体装置に対する物理量の平均値として、第2の実施形態のステップS23における単純平均の代わりに、着目する半導体装置との距離に応じた重み付けに基づく加重平均を用いている。例えば、着目する半導体装置により近くにある半導体装置の物理量により大きな重みを付与して加重平均を算出する(ステップS33)
【0063】
着目する半導体装置40の物理量から、算出した加重平均を差し引いた値を求め、補正された物理量として出力する(ステップS24)。
【0064】
本実施形態に係るスクリーニング装置は、上記のように、各半導体装置の特性から周囲の半導体装置の特性の加重平均値を差し引くことで、半導体装置の特性のうちの、半導体のウエハ上の位置に応じて緩やかに変動する成分を除去する。したがって、本実施形態のスクリーニング装置によると、半導体装置の特性がウエハ上の位置に応じて変動する場合においても、半導体装置の不良品を高い精度で検出することが可能となる。
【0065】
上記第1ないし第3の実施形態に係るスクリーニング装置によると、半導体装置に内在する不良要因の存在による半導体装置の特性を表す物理量の変動を高精度に検出することができ、不良要因をもつ半導体装置を高精度にスクリーニングすることが可能となる。
【0066】
その理由は、次のとおりである。半導体装置の特性を示す物理量は、半導体装置のウエハ上の位置に依存する成分と、位置に依存しない成分とから成り、不良要因による物理量の変動は、位置に依存しない成分に含まれる。位置に依存する物理量成分は、物理量を半導体装置の位置による関数とみなしたとき、空間周波数の観点から低域成分に相当する。したがって、2次元フィルタ部20または平均値作成部24によって、空間周波数として低域部分をカットすれば、位置に依存しない物理等変動成分のみを抽出することが可能となる。位置に依存しない物理量の分布は、元々の物理量の分布と比較して十分に狭い幅となり、不良要因の内在による物理量変動を容易に検出することが可能となるからである。
【0067】
なお、上記の特許文献等の先行技術文献の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0068】
1、11 LSIテスタ
2、12 プローバ
3、13 データファイル
4、14 ウエハ
5、15、25 計算機
6、16 結果
7、17 記録媒体
18 スクリーニング装置
19 補正部
20 2次元フィルタ部
21 分布作成部
22 外れ値検出部
23 デバイス特定部
24 平均値作成部
30 観測された物理量
31 観測された物理量のうちの位置に依存する成分
32 観測された物理量のうちの位置に依存しない成分
33、35 不良要因を有する半導体装置の補正前の物理量
34 観測された物理量の分布
36 位置に依存しない物理量の分布
37、38 不良要因を有する半導体装置の補正後の物理量
40 着目する半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハに含まれる複数の半導体装置のそれぞれの電気的特性値を測定する測定工程と、
前記ウエハ上における前記複数の半導体装置のそれぞれの位置情報を取得する工程と、
前記複数の半導体装置の電気的特性値の変動のうちの前記ウエハ面上で相対的に緩やかに変動する成分を、前記複数の半導体装置のそれぞれの電気的特性値から差し引いて、前記複数の半導体装置のそれぞれの電気的特性値を補正する補正工程と、
前記補正後の電気的特性値の分布を前記複数の半導体装置に対して生成する生成工程と、
前記分布に基づいて、前記補正後の電気的特性値が外れ値となる半導体装置を前記複数の半導体装置の中から検出する工程と、を含むことを特徴とするスクリーニング方法。
【請求項2】
前記補正工程において、前記ウエハ面上の直交する2つの方向について、空間周波数の低い成分をフィルタリングによって除去することを特徴とする、請求項1に記載のスクリーニング方法。
【請求項3】
前記補正工程において、前記複数の半導体装置のそれぞれについて、該半導体装置の周囲の半導体装置であって該半導体装置を含む複数の半導体装置を選択し、選択した複数の半導体装置の電気的特性値の平均値を算出し、該半導体装置の電気的特性値から該平均値を差し引くことを特徴とする、請求項1に記載のスクリーニング方法。
【請求項4】
前記補正工程において、前記複数の半導体装置のそれぞれについて、該半導体装置の周囲の半導体装置であって該半導体装置を含む複数の半導体装置を選択し、選択した複数の半導体装置のうちの該半導体装置により近い半導体装置にはより大きい重みを与えつつ、選択した複数の半導体装置の電気的特性値の重み付け平均値を算出し、該半導体装置の電気的特性値から該重み付け平均値を差し引くことを特徴とする、請求項1に記載のスクリーニング方法。
【請求項5】
前記補正工程において、前記複数の半導体装置のそれぞれについて、該半導体装置の周囲の半導体装置であって該半導体装置を含む複数の半導体装置として、該半導体装置から所定の距離以内の半導体装置を選択することを特徴とする、請求項3または4に記載のスクリーニング方法。
【請求項6】
前記補正工程において、前記複数の半導体装置のそれぞれについて、該半導体装置の周囲の半導体装置であって該半導体装置を含む複数の半導体装置として、該半導体装置を中心とする矩形の領域内に含まれる半導体装置を選択することを特徴とする、請求項3または4に記載のスクリーニング方法。
【請求項7】
前記補正工程の前に、前記測定工程において測定された電気的特性値が所定の規格値以内でない半導体装置を前記複数の半導体装置から除去する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
【請求項8】
前記測定工程において、単一のロットに含まれる複数のウエハのそれぞれに含まれる複数の半導体装置のそれぞれの電気的特性値を測定し、
前記生成工程において、前記補正後の電気的特性値の分布を前記複数のウエハに含まれる複数の半導体装置に対して生成することを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
【請求項9】
ウエハに含まれる複数の半導体装置のそれぞれの電気的特性値、および、該ウエハ上における該複数の半導体装置のそれぞれの位置情報を入力とし、該複数の半導体装置の電気的特性値の変動のうちの該ウエハ面上で相対的に緩やかに変動する成分を、該複数の半導体装置のそれぞれの電気的特性値から差し引いて、該複数の半導体装置のそれぞれの電気的特性値を補正する補正部と、
前記補正後の電気的特性値の分布を前記複数の半導体装置に対して生成する分布作成部と、
前記分布に基づいて、前記補正後の電気的特性値が外れ値となる半導体装置を前記複数の半導体装置の中から検出する外れ値検出部と、を備えることを特徴とするスクリーニング装置。
【請求項10】
前記補正部は、前記ウエハ面上の直交する2つの方向について、空間周波数の低い成分をフィルタリングによって除去することを特徴とする、請求項9に記載のスクリーニング装置。
【請求項11】
前記補正部は、前記複数の半導体装置のそれぞれについて、該半導体装置の周囲の半導体装置であって該半導体装置を含む複数の半導体装置を選択し、選択した複数の半導体装置の電気的特性値の平均値を算出し、該半導体装置の電気的特性値から該平均値を差し引くことを特徴とする、請求項9に記載のスクリーニング装置。
【請求項12】
前記補正部は、前記複数の半導体装置のそれぞれについて、該半導体装置の周囲の半導体装置であって該半導体装置を含む複数の半導体装置を選択し、選択した複数の半導体装置のうちの該半導体装置により近い半導体装置にはより大きい重みを与えつつ、選択した複数の半導体装置の電気的特性値の重み付け平均値を算出し、該半導体装置の電気的特性値から該重み付け平均値を差し引くことを特徴とする、請求項9に記載のスクリーニング装置。
【請求項13】
ウエハに含まれる複数の半導体装置のそれぞれの電気的特性値、および、該ウエハ上における前記複数の半導体装置のそれぞれの位置情報を取得する処理と、
前記複数の半導体装置の電気的特性値の変動のうちの前記ウエハ面上で相対的に緩やかに変動する成分を、前記複数の半導体装置のそれぞれの電気的特性値から差し引いて、前記複数の半導体装置のそれぞれの電気的特性値を補正する処理と、
前記補正後の電気的特性値の分布を前記複数の半導体装置に対して生成する処理と、
前記分布に基づいて、前記補正後の電気的特性値が外れ値となる半導体装置を前記複数の半導体装置の中から検出する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−55092(P2013−55092A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190262(P2011−190262)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】