説明

スクリーンおよび遠心分離機

【課題】遠心分離機用のスクリーンの表面と裏面とのスリット幅の差を適正に保ち、使用時の目詰まりを防止しつつ、摩耗による目開きを防止する。また、そのようなスクリーンを容易で安価に製造する。
【解決手段】スリット18をレーザ加工された帯状の板材19を、レーザ照射側であった面19aを外側にして円筒状に巻いて形成されるスクリーン4である。スリット18は、帯状の板材19の長手方向に等間隔で形成されると共に、それぞれ帯状の板材19の幅方向に沿って形成されるのがよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーンおよび遠心分離機に関するものである。たとえば、切削加工にて排出される切削屑と切削液とを分離するのに用いるスクリーンと、それを有する遠心分離機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遠心分離機として、切削屑遠心分離脱油機が知られている。この装置は、切削加工にて排出される切削屑と切削液とを分離したい場合に用いられ、回転するバスケット内に被処理物として切削液の付いた切削屑が投入され、バスケットに設けたスクリーンに被処理物を遠心力により沿わせて、スクリーンのスリットから切削液を排出することで、切削屑と切削液とを分離する。
【0003】
この種の遠心分離機では、スクリーンは、目詰まりを防止するために、スクリーンの表面(バスケット内側に配置される通過物入口面)より裏面(バスケット外側に配置される通過物出口面)においてスリット幅が大きくなるように形成される。そのため、従来、スクリーンは、たとえばウェッジワイヤスクリーンから形成される。ウェッジワイヤスクリーンは、等間隔に配置されたロッドに、断面三角形状の多数のスクリーンワイヤを架け渡して構成される。この際、各スクリーンワイヤは、断面が二等辺三角形状とされ、その頂角をロッドに向けると共に、底面間に微小隙間をあけて設けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウェッジワイヤスクリーンは、スクリーンの表面より裏面のスリット幅が大きいので目詰まりは防止できるが、スクリーンの表面と裏面とでスリット幅の差が大きいため、使用に伴う摩耗による目開きが激しくなる。また、ウェッジワイヤスクリーンは、ロッドに多数のスクリーンワイヤを微小間隔で設ける必要があるため、製造が困難で、価格も高くなる。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、スクリーンの表面と裏面とのスリット幅の差を適正に保ち、使用時の目詰まりを防止しつつ、摩耗による目開きも防止できるスクリーンとそれを用いた遠心分離機を提供することにある。また、そのようなスクリーンを容易で安価に製造することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、スリットをレーザ加工された帯状の板材を、レーザ照射側であった面を外側にして円筒状に形成されることを特徴とする遠心分離機用スクリーンである。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、スクリーンのスリットはレーザ加工により開けられる。この場合、レーザ加工の性質により、レーザの入口側から出口側へ行くに従い幅寸法の狭いスリットが形成される。そして、レーザ照射側(レーザ入口側)であった面を外側にして湾曲させて、円筒状のスクリーンが形成される。このようにして形成されたスクリーンは、スクリーンの内周面より外周面のスリット幅が大きくなり、しかもその差はウェッジワイヤスクリーンよりも小さい。このようにして、スクリーンの表面と裏面とのスリット幅の差を適正に保ち、使用時の目詰まりを防止しつつ、摩耗による目開きも防止することができる。しかも、このようなスクリーンを容易で安価に製造することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記スリットは、前記帯状の板材の長手方向に等間隔で形成されると共に、それぞれ前記帯状の板材の幅方向に沿って形成され、レーザ照射側であった面を外側にして円筒状に形成されることを特徴とする請求項1に記載の遠心分離機用スクリーンである。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、スリットは、帯状の板材の長手方向に等間隔で形成されると共に、それぞれ帯状の板材の幅方向に沿って、レーザ加工により形成される。そして、レーザ照射側(入口側)であった面を外側にして湾曲させて、円筒状のスクリーンが形成される。このようにして形成されたスクリーンは、レーザ加工の影響と円筒状に湾曲させた影響とにより、スクリーンの内周面より外周面のスリット幅が大きくなり、しかもその差はウェッジワイヤスクリーンよりも小さい。このようにして、スクリーンの表面と裏面とのスリット幅の差を適正に保ち、使用時の目詰まりを防止しつつ、摩耗による目開きも防止することができる。しかも、このようなスクリーンを容易で安価に製造することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のスクリーンを備え、前記スクリーンが設けられたバスケットを回転させ、このバスケット内に投入される被処理物を前記スクリーンにおいて固体分と液体分とに分離することを特徴とする遠心分離機である。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、使用時の目詰まりを防止しつつ、摩耗による目開きは最小限に抑えたスクリーンを有する遠心分離機を実現することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記被処理物として切削液の付いた切削屑が前記バスケット内に投入され、前記スクリーンにおいて切削屑と切削液との分離を図ることを特徴とする請求項3に記載の遠心分離機である。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、切削工程にて排出される切削屑と切削液とを遠心分離することができる。このようにして分離された切削屑および切削液は、それぞれ所望により再利用を図ることもできる。
【0014】
さらに、請求項5に記載の発明は、上方へ開口するバスケットと、このバスケットの上部開口に設けられる円筒状のスクリーンと、前記バスケットを回転させるモータとを備え、前記スクリーンは、設定間隔でスリットをレーザ加工された帯状の板材を、レーザ照射側であった面を外側にして円筒状に形成され、切削液の付いた切削屑が前記バスケット内に投入され、前記バスケットの回転による遠心力により、前記スクリーンのスリットを介して切削液を排出すると共に、そのようにして切削液の除去を図られた切削屑を前記スクリーンの上部開口から排出することを特徴とする遠心分離機である。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、スクリーンのスリットはレーザ加工により開けられる。この場合、レーザ加工の性質により、レーザの入口側から出口側へ行くに従い幅寸法の狭いスリットが形成される。そして、レーザ照射側(レーザ入口側)であった面を外側にして湾曲させて、円筒状のスクリーンが形成される。このようにして形成されたスクリーンは、スクリーンの内周面より外周面のスリット幅が大きくなり、しかもその差はウェッジワイヤスクリーンよりも小さい。このようにして、スクリーンの表面と裏面とのスリット幅の差を適正に保ち、使用時の目詰まりを防止しつつ、摩耗による目開きも防止することができる。しかも、このようなスクリーンを容易で安価に製造することができる。そして、このようなスクリーンを用いることで、遠心分離機は、切削屑からの切削液の分離除去を効率的に図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、スクリーンの表面と裏面とのスリット幅の差を適正に保ち、使用時の目詰まりを防止しつつ、摩耗による目開きも防止できる。また、そのようなスクリーンを容易で安価に製造することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の遠心分離機の実施例1を示す概略構成図であり、一部を断面にして示している。
【図2】図1の遠心分離機の部分拡大図であり、スクリーンの取付構造を示している。
【図3】図1の遠心分離機に用いられるスクリーンの一例を示す斜視図であり、一部を切り欠いて示している。
【図4】図3のスクリーンの製作途中を示す概略断面図であり、一部のみを拡大して示している。
【図5】本発明の遠心分離機の実施例2を示す概略構成図であり、一部を断面にして示している。
【図6】図5におけるXI−XI断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の遠心分離機の実施例1を示す概略構成図であり、一部を断面にして示している。また、図2は、図1の遠心分離機の部分拡大図である。
【0020】
本実施例の遠心分離機1は、各種の切削加工にて排出される切削屑と切削液とを分離するのに好適に用いられる。分離された切削屑および切削液は、それぞれ所望により再利用するのがよい。なお、切削屑は、切り粉または切り屑と呼ばれることもあり、また、切削液は、典型的には切削油であるが水溶性のものもある。
【0021】
本実施例の遠心分離機1は、モータ2と、このモータ2により回転されるバスケット3と、このバスケット3に設けられるスクリーン4と、これらを収容するよう設けられるケーシング5とを備える。
【0022】
モータ2は、出力軸6を上方へ向けて設けられる。モータ2の出力軸6は、上方へ行くに従ってやや小径となるよう形成されている。また、図1において、モータ2のケースの上部には、段付き円筒状のモータフランジ7が設けられる。モータフランジ7は、小径部8を下方に配置されると共に大径部9を上方に配置されて、モータ2の出力軸6と同軸に設けられる。また、モータフランジ7は、小径部8がモータ2の出力軸6を取り囲むように設けられ、小径部8の上部が大径部9内に突出するよう形成されている。
【0023】
モータ2の出力軸6には、バスケット3が着脱可能に設けられる。バスケット3は、上方へ開口した容器であり、その内周面は径方向外側へ行くに従って上方へ向かう円弧状に形成されている。バスケット3の下部には、下方へ突出してボス10が形成されている。そして、このボス10を貫通して、バスケット3の底部中央には、出力軸6への取付穴(11,12)が形成されている。この取付穴は、上方へ行くに従って小径となるテーパ穴11を有し、このテーパ穴11の上端部には段付き円形穴12が形成されている。なお、バスケット3のテーパ穴11は、モータ2の出力軸6のテーパと適合するよう形成されている。
【0024】
モータ2の出力軸6にバスケット3を取り付けるには、モータ2の出力軸6にバスケット3のテーパ穴11をはめ込んで、バスケット3の上部から段付き円板状のバスケットカバー13を介して、六角穴付きの取付ボルト14を出力軸6の先端面のボルト穴にねじ込めばよい。出力軸6のテーパとバスケット3のテーパ穴11とのはめ合いにより、バスケット3は出力軸6と同軸に取り付けられる。また、出力軸6とテーパ穴11との間に設けられるキー15により、バスケット3は出力軸6と一体回転可能とされる。なお、バスケットカバー13は、バスケット3の段付き円形穴12に収まるよう設けられる。また、バスケットカバー13に形成されるボルト挿通穴は上方が大径穴に形成されており、この大径穴に取付ボルト14の頭部が収容される。
【0025】
バスケット3の外周面上部には、円筒壁16が形成されている。モータ2の出力軸6にバスケット3を取り付けた状態で、円筒壁16の下部開口は、モータフランジ7の小径部8の上端部を取り囲むように近接して配置される。一方、円筒壁16の上部には、上端縁から設定距離だけ下がった位置に、フランジ17が形成されている。円筒壁16には、このフランジ17より上方への突出部に、円筒状のスクリーン4の下端部がはめ込まれる。
【0026】
図3は、本実施例の遠心分離機1に用いられるスクリーン4の一例を示す斜視図であり、一部を切り欠いて省略して示している。また、図4は、スクリーン4の製作途中を示す概略断面図であり、一部のみを拡大して示している。
【0027】
スクリーン4は、複数のスリット18をレーザ加工された帯状の板材19を、レーザ照射側であった面19aを外側にして円筒状に形成される。具体的には、本実施例のスクリーン4は、たとえばステンレスのような金属製で、細長い長方形状の板材19から形成され、この板材19には、設定間隔でスリット18がレーザ加工される。典型的には、図示例のように、スリット18は、帯状の板材19の長手方向に等間隔で形成されると共に、それぞれ帯状の板材19の幅方向に沿って形成される。なお、スリット18の幅寸法(A)は、特に問わないが、たとえば0.15〜0.5mmの範囲で設定される。
【0028】
一般に、レーザ加工で板材に穴を開けると、板材の表面から入るレーザ光は裏面へ行くに従ってエネルギを失うので、裏面へ行くに従って小さくなるテーパに形成される。従って、板材19にスリット18をレーザ加工すると、レーザの入口側(19a)から出口側(19b)へ行くに従い幅寸法の狭いスリット18が形成される。なお、通常、板面に対し垂直にレーザが当てられるので、スリット18の幅方向の断面は対称形状となる。
【0029】
このようにして多数のスリット18を形成した板材19を、レーザ照射側(レーザ入口側)であった面19aを外側にして巻くことで、円筒状のスクリーン4が形成される。帯状の板材19の幅方向に沿ってスリット18を形成した場合、その後に帯状の板材19を円筒状に巻くことでも、スクリーン4の内周面より外周面のスリット幅が大きくなる。
【0030】
実際の寸法変化を調べたところ、次のような結果を得た。
【0031】
《スクリーンA》
厚さ2.0mmのステンレス(SUS304)の板材19に、幅0.15mmのスリット18を、それぞれ板材19の幅方向へ沿って形成した後、レーザ照射側(レーザ入口側)であった面19aを外側にして内径200mmの円筒にロール加工した。この場合、ロール加工の前後におけるスリット18の幅寸法は、以下のとおりであった。なお、板材19の幅寸法は50mm、スリット18の長さは40mmで、スリット18は板材19の幅方向中央部に形成した。また、スリット18は、3mm間隔で板材19に形成され、全周に形成した。
【0032】
以下において、スクリーン裏面とは、レーザ照射側の面19aであり、円筒の外周面を構成する面である。また、ロール加工後において、スクリーン表面におけるスリット幅も増しているのは、ロール加工で板材19が引っ張られた影響と考えられる。
【0033】
〈ロール加工前〉
スクリーン表面(通過物入口):A=0.15mm
スクリーン裏面(通過物出口):B=0.3mm
〈ロール加工後〉
スクリーン表面(通過物入口):A´=0.16〜0.19mm
スクリーン裏面(通過物出口):B´=0.31〜0.34mm
【0034】
《スクリーンB》
厚さ3.0mmのステンレス(SUS304)の板材19に、幅0.5mmのスリット18を、それぞれ板材19の幅方向へ沿って形成した後、レーザ照射側(レーザ入口側)であった面19aを外側にして内径288mmの円筒にロール加工した。この場合、ロール加工の前後におけるスリット18の幅寸法は、以下のとおりであった。なお、板材19の幅寸法は57mm、スリット18の長さは41mmで、スリット18は板材19の幅方向中央部に形成した。また、スリット18は、3mm間隔で板材19に形成され、全周に形成した。
【0035】
〈ロール加工前〉
スクリーン表面(通過物入口):A=0.5mm
スクリーン裏面(通過物出口):B=0.7mm
〈ロール加工後〉
スクリーン表面(通過物入口):A´=0.51〜0.54mm
スクリーン裏面(通過物出口):B´=0.71〜0.74mm
【0036】
但し、スクリーン4およびスリット18の寸法は、これらに限らず適宜に変更可能である。すなわち、帯状の板材19の幅寸法、スリット18の幅および長さ、スリット18の形成位置および形成間隔、ロール加工後の直径などは、適宜に変更可能である。また、上述した各スクリーン4において、スリット幅Aは、0.15mm、0.3mm、および0.5mmなどにしてもよい。また、スリット幅などの異なる複数種のスクリーン4を用意しておき、所望によりスクリーン4を付け替えて使用できるようにしてもよい。
【0037】
いずれにしても、円筒状のスクリーン4の下端部は、バスケット3の円筒壁16の上端部にはめ込まれ、スクリーン4の下端面がバスケット3のフランジ17に保持される。一方、スクリーン4の上端部は、バスケット3に対し着脱可能なスクリーン押え20にて保持される。
【0038】
スクリーン押え20は、円環状の部材であり、周方向複数個所に段付き穴21(図2)が上下方向に貫通して形成されている。そして、六角穴付きの取付ボルト22が、スクリーン押え20の段付き穴21と、スペーサとしてのパイプ23を通されて、バスケット3のフランジ17のボルト穴にねじ込まれる。スクリーン押え20の内周側上端部には、径方向内側へ突出して円環状突部24が形成されているので、この円環状突部24とフランジ17とでスクリーン4が上下に挟まれて保持される。
【0039】
このようにして、スクリーン押え20によりスクリーン4をバスケット3に取り付けることができ、その状態では、取付ボルト22の頭部は、スクリーン押え20の段付き穴21の大径部内に収容される。また、スクリーン押え20の外周側下端面に形成された円環状溝25内に、モータフランジ7の大径部9の上端部が差し込まれた状態となる。
【0040】
モータ2、バスケット3およびスクリーン4などは、中空のケーシング5内に収容される。本実施例のケーシング5は、上下へ開口する円筒状で、上端部にはフランジ26が設けられる。ケーシング5の内周面には、周方向複数箇所において径方向内側へ突出してリブ27が設けられている。そして、このリブ27にモータフランジ7を介してモータ2が保持される。この際、モータ2、バスケット3およびスクリーン4は、ケーシング5と同軸に配置される。
【0041】
ケーシング5の上部開口には、ケーシングカバー28が設けられる。ケーシングカバー28は円板状とされ、ケーシング5のフランジ26に重ね合わされてボルトナット29により着脱可能に取り付けられる。ケーシングカバー28の中央部には、逆円錐台状の筒状のホッパ30が設けられる。ホッパ30の下端部は、円筒状のスクリーン4の中空部に差し込まれ、ホッパ30の下端縁は、バスケット3の上端縁と対応した高さに配置される。
【0042】
モータフランジ7やスクリーン押え20は、ケーシング5やケーシングカバー28との間に、十分な隙間が確保される。さらに、モータフランジ7の大径部9の下部には、周方向の所望位置に、外方へ行くに従って下方へ傾斜するパイプ31が設けられる。このパイプ31は、ケーシング5を貫通して外方へ突出される。
【0043】
本実施例の遠心分離機1は、典型的には、切削加工にて出される切削屑の遠心分離脱油機として用いられる。たとえば、各種工作機械において切削液を使いつつ金属材料を切削加工した際に出される切削屑を集めて、切削屑と切削液とを分離するのに用いられる。
【0044】
遠心分離機1は、モータ2を回転させると、スクリーン4付きのバスケット3が回転する。その状況下で、ホッパ30からバスケット3内に切削屑を投入すると、遠心力により切削屑はバスケット3の内壁に沿ってスクリーン4に達し、切削液はスクリーン4の各スリット18を介して、スクリーン4付きのバスケット3とモータフランジ7の大径部9との隙間に排出され、さらにパイプ31を介して排出される。パイプ31から排出される切削液は、タンクなどに集めて再利用することができる。なお、スクリーン4のスリット18を通過した切削液を、所望によりフィルターを介してさらにろ過してもよい。
【0045】
一方、スクリーン4において切削液の分離が図られた切削屑は、遠心力により円筒状のスクリーン4の上部開口からあふれるように排出され、モータフランジ7付きのモータ2とケーシング5との隙間を介して、ケーシング5の下部開口から排出される。ケーシング5の下部に、適宜のボックスを設けておけば、そのボックス内に切削屑を集めることができる。その切削屑は、いわゆる鉄屑(金属屑)として再利用を図ることができる。
【0046】
ところで、バスケット3の円筒壁16には、フランジ17より下方位置に、板状のブレード32を径方向外側へ突出して設けてもよい。このブレード32は、バスケット3の周方向複数箇所(たとえば直径方向に対向した二ヶ所)に設けられる。スクリーン4のスリット18を通過する切削液中に細かな金属屑が残る場合、その砂状の金属屑がモータフランジ7の大径部9内に万一残留しようとしても、バスケット3の外周部にブレード32を設けておけば、ブレード32の回転によりそのような残留を防止することができる。
【実施例2】
【0047】
図5は、本発明の遠心分離機1の実施例2を示す概略構成図であり、一部を断面にして示している。また、図6は、図5におけるXI−XI断面図である。本実施例2の遠心分離機1およびそのスクリーン4も、基本的には前記実施例1と同様である。そこで、以下においては、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0048】
本実施例2は、バスケット3の駆動機構において、前記実施例1と相違する。本実施例2では、モータ2の出力は、ベルト33を介してバスケット3に伝達される。具体的には、モータ2は、ケーシング5の外側に配置されると共に、出力軸6を下方へ向けて配置され、出力軸6の下端部には駆動プーリ34が設けられている。一方、モータフランジ7の小径部8内には、上下に離隔してベアリング35が配置され、その上下のベアリング35にシャフト36が回転自在に保持される。そして、そのシャフト36には、上端部にバスケット3が設けられる一方、下端部に従動プーリ37が設けられる。そして、駆動プーリ34と従動プーリ37とにVベルト33が架け回される。
【0049】
従って、モータ2を回転させると、Vベルト33を介してシャフト36を回転させ、スクリーン4付きのバスケット3を回転させることができる。Vベルト33による駆動機構はカバー38で覆われるが、このカバー38上に切削屑が落ちて堆積しないように、カバー38の上部には三角屋根39が設けられている。
【0050】
本実施例2では、スクリーン4付きのバスケット3は、ケーシング5の上部開口からやや上方へ突出して配置される。それに対応して、ケーシングカバー28は、中央部が上方へ突出して円筒状に形成されている。また、本実施例2では、ケーシングカバー28にはホッパ30の設置が省略されており、ケーシングカバー28の中央部に形成した穴40から、バスケット3内に直接に被処理物が投入される。その他の構成および運転方法は、前記実施例1と同様のため、説明は省略する。
【0051】
本発明のスクリーン4および遠心分離機1は、前記各実施例の構成に限らず適宜変更可能である。特に、スリット18をレーザ加工された板材19からなり、レーザ照射側であった面19aを外側にして湾曲して形成されるスクリーン4、あるいはそのようなスクリーン4を有する遠心分離機1であれば、前記各実施例の構成に限らず適宜変更可能である。
【0052】
たとえば、前記各実施例では、スクリーン4のスリット18は、帯状の板材19の幅方向に沿って形成されたが、場合により帯状の板材19の長手方向に沿って形成したり、斜め形成したりしてもよい。また、前記各実施例において、円筒状のスクリーン4は、半円筒状の二つの部品を組み合わせて構成するなど、所望により周方向複数箇所で分割して構成されてもよい。さらに、前記各実施例では、切削屑と切削液とを分離するのに用いたが、用途は適宜に変更可能である。
【0053】
さらに、本発明のスクリーン4は、前記各実施例で述べた遠心分離機1に限らず、その他の構成の遠心分離機1にも同様に適用可能である。また、従来公知の遠心分離機(たとえば販売中または販売済の遠心分離機や、既に現場に設置されている遠心分離機)のスクリーンを本発明のスクリーン4に付け替えてもよい。
【0054】
なお、本発明の原理を用いて、遠心分離機以外の用途の各種のスクリーンを構成することもできる。すなわち、スリットを通過するか否かで被処理物を分離するためのスクリーンであって、スリットをレーザ加工された板材からなり、レーザ照射側であった面をスリット通過物の出口側とするスクリーン、を実現することもできる。この場合、スクリーンは、必ずしも円筒状でなくても、平板状などであってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 遠心分離機
2 モータ
3 バスケット
4 スクリーン
5 ケーシング
18 スリット
19 帯状の板材
19a レーザ照射側であった面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリットをレーザ加工された帯状の板材を、レーザ照射側であった面を外側にして円筒状に形成される
ことを特徴とする遠心分離機用スクリーン。
【請求項2】
前記スリットは、前記帯状の板材の長手方向に等間隔で形成されると共に、それぞれ前記帯状の板材の幅方向に沿って形成され、
レーザ照射側であった面を外側にして円筒状に形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の遠心分離機用スクリーン。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のスクリーンを備え、
前記スクリーンが設けられたバスケットを回転させ、このバスケット内に投入される被処理物を前記スクリーンにおいて固体分と液体分とに分離する
ことを特徴とする遠心分離機。
【請求項4】
前記被処理物として切削液の付いた切削屑が前記バスケット内に投入され、前記スクリーンにおいて切削屑と切削液との分離を図る
ことを特徴とする請求項3に記載の遠心分離機。
【請求項5】
上方へ開口するバスケットと、このバスケットの上部開口に設けられる円筒状のスクリーンと、前記バスケットを回転させるモータとを備え、
前記スクリーンは、設定間隔でスリットをレーザ加工された帯状の板材を、レーザ照射側であった面を外側にして円筒状に形成され、
切削液の付いた切削屑が前記バスケット内に投入され、前記バスケットの回転による遠心力により、前記スクリーンのスリットを介して切削液を排出すると共に、そのようにして切削液の除去を図られた切削屑を前記スクリーンの上部開口から排出する
ことを特徴とする遠心分離機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−212814(P2011−212814A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84862(P2010−84862)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(310008631)株式会社ミタカテック (1)
【Fターム(参考)】