説明

スクリーンボード用積層フィルム

【課題】筆記性、消字性、及び防眩性を兼ね備え、かつ、フッ素樹脂の使用量を減らして、経済的に作製することができ、また、接着剤を使用したラミネート作業を少なくして、作業性よく製造することができる、スクリーンボード用積層フィルムを提供する。
【解決手段】金属表面に被覆してスクリーンボードとするための金属被覆用積層フィルムにおいて、基材樹脂層、エンボス付与可能層、変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物層、ポリアミド樹脂からなる層、及び、接着性フッ素樹脂からなる層をこの順に積層する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マーカーボードとしての機能と、OHP用等のスクリーンとしての機能を併せ持ったスクリーンボード用積層フィルム被覆金属板、及びこれに用いるスクリーンボード用積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスクリーンボードとしては、白色基材の表面にフッ素フィルムをラミネートしたものがある。このスクリーンボードにおいては、フッ素フィルムの表面に専用のマーカーで筆記し、そして、この筆記したものを消去することができる構成となっている。
【0003】
また、OHP等のスクリーン用として使用するためには、防眩性を有することが必要とされる。この防眩性を付与するためには、表面のフッ素フィルムに凹凸を付与する必要がある。凹凸を付与する方法として、フッ素フィルムにシリカ粒子等を含有させたり、フィルム成形直後にエンボスロールによりフィルムの表面に凹凸形状を形成したりする方法が行われていた。
【0004】
特許文献1には、フッ素フィルムと白色基材とが貼り合わせられたラミネートフィルムのフッ素フィルムの表面に、エンボス版のエンボス面を押し付けることによってエンボスを転写するホワイトボード用シートの製造方法が記載されている。
【特許文献1】特開平11−254885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スクリーンボードに防眩性を付与するために、フッ素フィルムの表面に付与した凹凸は、高さや、ピッチが一定である必要がある。これらが一定でないと、凹凸のピッチが狭い部分等においてインキの目詰まりが生じてしまい、筆記した文字等がきれいにふき取りにくいという消字性の問題が生じる。
【0006】
しかし、上記した凹凸の付与方法のうち、シリカ粒子等を含有させる場合は、粒子の位置によって、凹凸が決まるため、凹凸の位置を一定に調整することは困難であり、凹凸の高さやピッチを一定にすることはできなかった。また、フィルム成形直後にエンボスロールによりフィルムの表面に凹凸形状を形成する場合は、フィルム成形後の急激な温度差によってフッ素フィルムが収縮してしまうことから、凹凸の高さやピッチを一定にすることはできなかった。
【0007】
また、凹凸のピッチを広げる等によって、インキの目詰まりを防ぐことができるが、この場合は、防眩処理が不十分となり、フッ素フィルムの表面に防眩性を付与することができなかった。また、フッ素フィルムの表面に凹凸を形成しない場合は、マーカーのインキをはじいてしまい、フッ素フィルムの表面に筆記することができない。よって、ある程度の凹凸は、筆記性の点からも要求されている。
【0008】
特許文献1に記載の製造方法は、上記の問題点を解決することを目的とするものである。しかし、特許文献1に記載の製造方法においては、フッ素フィルムと白色基材とを、接着剤を用いて貼り合わせているため、フィルムを張り合わせる際の作業性の観点から、フィルムにある程度のコシが必要とされ、フッ素フィルムがある程度の膜厚を有している必要がある。
【0009】
ここで、フッ素樹脂は、一般に高価であるので、フッ素フィルムをできるだけ薄くして、フッ素樹脂の使用量を減らすことが要求されている。しかし、特許文献1に記載の方法では、上記理由のために、フッ素樹脂の使用量を減らし、経済的にスクリーンボードを製造することができないという問題があった。また、フィルムを貼り合せる工程があるので、作業性が悪いという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、筆記性、消字性、及び防眩性を兼ね備え、かつ、フッ素樹脂の使用量を減らして、経済的に作製することができ、また、接着剤を使用したラミネート作業を少なくして、作業性よく製造することができ、層間接着性に優れた構成のスクリーンボード用積層フィルム、及びスクリーンボード用積層フィルム被覆金属板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0012】
第一の本発明は、金属表面に被覆してスクリーンボードとするための金属被覆用積層フィルムであって、基材樹脂層(10)、エンボス付与可能層(20)、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有率が58〜73重量%である飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーを、ラジカル発生剤の存在下、不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性処理して得られる、変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物層(30)、ポリアミド樹脂からなる層(40)、及び、接着性フッ素樹脂からなる層(50)をこの順に積層した、スクリーンボード用積層フィルム(100)である。
【0013】
第二の本発明は、金属表面に被覆してスクリーンボードとするための金属被覆用積層フィルムであって、基材樹脂層(11)、エンボス付与可能層(21)、エンボス加工温度で弾性率が10Pa以下、鋼板積層時のフィルム温度での弾性率が10Pa以上である樹脂からなる層(25)、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有率が58〜73重量%である飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーを、ラジカル発生剤の存在下、不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性処理して得られる、変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物層(31)、ポリアミド樹脂からなる層(41)、及び、接着性フッ素樹脂からなる層(51)をこの順に積層した、スクリーンボード用積層フィルム(101)である。
【0014】
上記第二の本発明において、エンボス加工温度で弾性率が10Pa以下、鋼板積層時のフィルム温度での弾性率が10Pa以上である樹脂は、ポリカーボネート樹脂であることが望ましい。
【0015】
上記のスクリーンボード用積層フィルム(100、101)において、接着性フッ素樹脂からなる層(50、51)におけるポリアミド樹脂からなる層(40、41)が積層された面とは反対の面に、さらにフッ素樹脂からなる層(60、61)が積層されていてもよい。
【0016】
上記のスクリーンボード用積層フィルム(100、101)において、エンボス付与可能層(20、21)は、示差走査熱量計(DSC)による測定において、昇温時に明確な結晶融解ピークが観測されない実質的に非晶性のポリエステル系樹脂を、前記エンボス付与可能層全体の質量を100質量%として、50質量%以上含む層であることが好ましい。
【0017】
上記のスクリーンボード用積層フィルム(100、101)において、基材樹脂層(10、11)は、示差走査熱量計(DSC)による測定において、昇温時に明確な結晶融解ピークが観測される、実質的に結晶性のポリエステル系樹脂を、前記基材樹脂層全体の質量を100質量%として、50質量%以上含む層であり、この実質的に結晶性のポリエステル系樹脂の結晶融解ピーク温度(Tm)とガラス転移温度(Tg)との関係が、Tm(℃)>(Tg+30)(℃)であることが好ましい。
【0018】
上記のスクリーンボード用積層フィルム(100、101)において、エンボス付与可能層(20、21)の製膜時における、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるスチレン換算の重量平均分子量は、65000〜140000の範囲にあることが好ましい。
【0019】
上記のスクリーンボード用積層フィルム(100、101)において、エンボス付与可能層(20、21)は、結晶性のポリブチレンテレフタレート系樹脂を含み、示差走査熱量計(DSC)による昇温時に明確な結晶融解ピーク温度(Tm)を示し、その結晶融解熱量(△Hm(J/g))が10〜60であることが好ましい。
【0020】
上記のスクリーンボード用積層フィルム(100、101)において、接着性フッ素樹脂は、カーボネート基及び/又はマレイン酸基を含有するものであることが好ましい。
【0021】
上記のスクリーンボード用積層フィルム(100、101)において、変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物層(30、31)、ポリアミド樹脂からなる層(40、41)、及び接着性フッ素樹脂からなる層(50、51)の各層の合計厚みは10μm以下であることが好ましい。
【0022】
上記のスクリーンボード用積層フィルム(100、101)において、各層が共押出により積層フィルムとされていることが好ましく、接着性フッ素樹脂からなる層(50、51)側あるいはフッ素樹脂からなる層(60、61)側に、エンボスロールによって凹凸が形成されていることが好ましい。
【0023】
エンボスロールによって凹凸を形成された表面の粗さは、Ra(中心線平均粗さ)が0.7μm以上5μm以下、Rmax(最大高さ)が4μm以上40μm以下、Rz(十点平均粗さ)が3μm以上30μm以下、Rp(平均深さ)が1.5μm以上20μm以下、Pc(山数)が7以上50以下/8mmであり、光沢度が50以下であることが好ましい。
【0024】
ここに、「光沢度」とは、JIS K7105により測定された光沢度をいう。
【0025】
第三の本発明は、上記のスクリーンボード用積層フィルム(100、101)、及び、この積層フィルムにおける基材樹脂層(10、11)側を貼り付けた金属板(90、91)からなる、スクリーンボード用積層フィルム被覆金属板(200、201)である。
【0026】
第四の本発明は、上記のスクリーンボード用積層フィルム被覆金属板(200、201)を備えたスクリーンボードである。
【発明の効果】
【0027】
本発明のスクリーンボード用積層フィルムは、筆記性、消字性、及び防眩性を兼ね備え、かつ、フッ素樹脂の使用量を減らして、経済的に作製することができ、また、本発明のスクリーンボード用積層フィルム被覆金属板は、接着剤を使用したラミネート作業を少なくして、作業性よく製造することができる。さらに、本発明のスクリーンボード用積層フィルムによれば、加工時に問題となるエンボス戻りの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0029】
1.スクリーンボード用積層フィルム
図1(a)、及び図2(a)に、第一の本発明にかかるスクリーンボード用積層フィルム100の層構成を模式的に示した。図1(a)において示したスクリーンボード用積層フィルム100Aは、基材樹脂層10、エンボス付与可能層20、変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物層30、ポリアミド樹脂からなる層40、及び接着性フッ素樹脂からなる層50がこの順で積層された構成を有している。また、図2(a)に示したように、第一の本発明にかかる他の形態のスクリーンボード用積層フィルム100Bでは、接着性フッ素樹脂からなる層50におけるポリアミド樹脂からなる層40が積層された面とは反対の面に、さらにフッ素樹脂からなる層60が積層されている。
【0030】
図1(b)及び図2(b)には、第二の本発明にかかるスクリーンボード用積層フィルム101の層構成を模式的に示している。図1(b)において示したスクリーンボード用積層フィルム101Aは、基材樹脂層11、エンボス付与可能層21、エンボス加工温度で弾性率が10Pa以下、鋼板積層時のフィルム温度での弾性率が10Pa以上である樹脂からなる層(以下において、「エンボス戻り防止層25」という。)、変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物層31、ポリアミド樹脂からなる層41、及び接着性フッ素樹脂からなる層51がこの順で積層された構成を有している。また、図2(b)に示したように、第二の本発明にかかる他の形態のスクリーンボード用積層フィルム101Bでは、接着性フッ素樹脂からなる層51におけるポリアミド樹脂からなる層41が積層された面とは反対の面に、さらにフッ素樹脂からなる層61が積層されている。
【0031】
以下にこれら、第一及び第二の本発明にかかる各形態のスクリーンボード用積層フィルム100又は101を構成する各層について詳述する。なお、以下において、一の語句について、カッコなしの参照符号と、カッコつきの参照符号とを併記する場合があるが、この場合において、カッコ内の参照符号は第二の本発明にかかるものであることを、その前に記載したカッコなしの参照符号は第一の本発明にかかるものであることを意味する。
【0032】
1.1.基材樹脂層
基材樹脂層10(11)は、ポリエステル系樹脂を主成分として含む無延伸層である。ここで、「無延伸」とは、意図して延伸操作を付与しないことを意味し、例えば、押出し製膜時にキャスティングロールによる引取りで発生する配向等が存在しないことまでを意味するものではない。また、「主成分として」とは、そのものを含む層全体を基準(100質量%)として、そのものを50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上含むことをいう(以下、本明細書において同様である。)。この基材樹脂層10(11)は、積層フィルム100(101)にコシを与え、また、金属板90(91)と接着するという役割を有する。
【0033】
ポリエステル系樹脂としては、特に限定されず、各種のものを用いることができる。代表的なものとして、エチレングリコールや、プロピレングリコール、ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール等から選ばれる一又は複数のアルコール成分、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸等から選ばれる一又は複数の酸成分、からなる重合体、あるいはこれらの重合体のブレンドを用いることができる。
【0034】
基材樹脂層10(11)は、示差走査熱量計(DSC)による測定において、昇温時に明確な結晶融解ピークが観測される、実質的に結晶性のポリエステル系樹脂を、基材樹脂層10(11)全体の質量を100質量%として、好ましくは50質量%以上、より好ましくは50質量%以上、80質量%以下含む層である。
また、実質的に結晶性のポリエステル系樹脂の結晶融解ピーク温度(Tm)とガラス転移温度(Tg)との関係は、Tm(℃)>(Tg+30)(℃)であることが好ましい。基材樹脂層10をこのような層とすることによって、エンボスを付与するために、本発明のスクリーンボード用積層フィルム100(101)を加熱してエンボスロールに通した際に、基材樹脂層10(11)と金属ロールとが粘着性を示さず、エンボス付与工程をスムーズに行うことができる。
【0035】
このような実質的に結晶性のポリエステル系樹脂としては、結晶性のポリブチレンテレフタレート系樹脂(以下、「PBT」と省略することがある。)を用いることができる。結晶性のポリブチレンテレフタレート系樹脂としては、酸成分としてテレフタル酸、アルコール成分として1、4−ブタンジオールのみを用いた、いわゆるホモ・ポリブチレンテレフタレートを、好適に用いることができる。また、金属板90(91)とのラミネート時において、金属板90(91)の表面温度を下げて接着することができるものとするため、酸成分の一部をイソフタル酸で置換したポリブチレンテレフタレートを用いることもできる。
【0036】
1.2.エンボス付与可能層
エンボス付与可能層20(21)は、ポリエステル系樹脂を主成分として含む無延伸層である。なお、ポリエステル系樹脂を主成分として含む無延伸層とは、上記の基材樹脂層10(11)におけるものと同様である。
【0037】
エンボス付与可能層20(21)は、示差走査熱量計(DSC)による測定において、昇温時に明確な結晶融解ピークが観測されない実質的に非晶性のポリエステル系樹脂を、前記エンボス付与可能層20(21)全体の質量を100質量%として、50質量%以上含む層であることが好ましい。
【0038】
実質的に非晶性のポリエステル系樹脂としては、非晶性あるいは低結晶性のポリエステル系樹脂を使用することができる。具体的には、原料の安定供給性や生産量が多いことから低コスト化が図られているイ−ストマンケミカル社の「イースター・6763」や、それに類する樹脂を用いることが好ましい。ただし、これに限定されるものではなく、ネオペンチルグリコール共重合PETで結晶性を示さないものや、特殊な冷却条件では融点を示すものの、一般的には非結晶性樹脂として取り扱うことが可能なイ−ストマンケミカル社の「PCTG・5445」等を用いてもよい。
【0039】
エンボス付与可能層20(21)を形成するポリエステル系樹脂の、製膜時における、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるスチレン換算の重量平均分子量は、65000〜140000の範囲にあることが好ましく、75000〜120000の範囲にあることがさらに好ましい。
【0040】
分子量が低すぎる場合は、積層フィルム被覆金属板の耐久性が劣ったものとなってしまう。また、分子量が高すぎる場合は、シートに製膜した時点では耐久性向上効果は飽和するのみでなく、製膜時の所要エネルギーが多くなる。
【0041】
エンボス付与可能層20(21)は、結晶性のポリブチレンテレフタレート系樹脂を含み、示差走査熱量測定により、JIS K7121に準じて、加熱温度10℃/分で測定した一次昇温時に明確な結晶融解に起因する吸熱ピークを示し、その結晶融解熱量(ΔHm(J/g))は、10〜60であることが好ましい。
【0042】
示差走査熱量測定は、具体的には、パーキンエルマー社製DSC−7を用いて、試料10mgをJIS K7121「プラスチックの転移温度測定方法・融解温度の求め方」に準じて、加熱速度10℃/分で測定して、一次昇温時の結晶融解熱量を求める。
【0043】
ここで、結晶融解に起因する吸熱ピークが、「明確」であるとは、このピークが10J/g以上の結晶融解に起因するピークであることをいう。
【0044】
1.3.変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物層
変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物層30(31)とは、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有率が58〜73重量%である飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーを、ラジカル発生剤の存在下、不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性処理して得られる接着性重合体組成物を主成分として含む層をいう。このような接着性重合体組成物を用いることにより、従来は困難であった、ポリエステル樹脂と、ポリアミド樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体樹脂等とを強固かつ安定的に接着することができる。ここで「変性」とは、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーの不飽和カルボン酸又はその誘導体によるグラフト変性、末端変性及びエステル交換反応による変性、分解反応による変性等をいう。具体的に、不飽和カルボン酸又はその誘導体が結合している部位としては、末端官能基やアルキル鎖部分が考えられ、特に末端カルボン酸、末端水酸基及びポリアルキレンエーテルグリコールセグメントのエーテル結合に対してα位やβ位の炭素が挙げられる。特に、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントのエーテル結合に対してα位に多く結合しているものと推定される。
【0045】
本発明の接着性重合体組成物は、JIS−D硬度(JIS K 6253に従い、デュロメータ タイプDによる硬度)が10以上80以下、好ましくは15以上70以下、特に好ましくは20以上60以下の範囲のものが好適である。JIS−D硬度が、上記の範囲内では、耐熱性・ゴム弾性・接着性が良好になる傾向となる。さらに、該接着性重合体組成物のMFR(JIS K7210準拠、230℃、2.16kg)は、40〜300(g/10分)、好ましくは42〜150(g/10分)、さらに好ましくは、45〜100(g/10分)である。
【0046】
上記変性ポリエステル系エラストマーの赤外吸収スペクトル法による変性量は、
1786/(Ast×r)
[但し、A1786は、変性ポリエステル系エラストマーの厚さ20μmのフィルムについて測定された、1786cm-1のピーク強度であり、Astは、標準試料(ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有量が65重量%である飽和ポリエステル系エラストマー)の厚さ20μmのフィルムについて測定された、規準波数のピーク強度であり、rは、変性ポリエステル系エラストマー中のポリエステルセグメントのモル分率を、上記標準試料中のポリエステルセグメントのモル分率で除した値である。]
なる式から求められた値で0.01〜15であることが望ましく、好ましくは、0.03〜2.5であり、より好ましくは、0.1〜2.0であり、特に好ましくは、0.2〜1.8である。変性ポリエステル系エラストマーの赤外吸収スペクトル法による変性量の値を求める方法は、次の通りである。すなわち、厚さ20μmのフィルム状の試料を100℃で15時間減圧乾燥し未反応物を除去し、赤外吸収スペクトルを測定する。得られたスペクトラムから、1786cm-1に現れる酸無水物由来のカルボニル基の伸縮振動による吸収ピーク(1750〜1820cm-1の範囲にある該吸収帯の両側の山裾を結んだ接線をベースラインとする)のピーク高さを算出して「ピーク強度A1786」とする。一方、標準試料(ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有量が65重量%である飽和ポリエステル系エラストマー)の厚さ20μmのフィルムについて、同様に赤外線吸収スペクトルを測定する。得られたスペクトラムから、規準波数のピーク、例えばベンゼン環を含む芳香族ポリエステル系エラストマーの場合は、872cm-1に現れるベンゼン環のC−Hの面外変角による吸収ピーク(850〜900cm-1の範囲にある該吸収帯の両側の山裾を結んだ接線をベースラインとする)のピーク高さを算出して「ピーク強度Ast」とする。なお、この規準波数のピークについては、変性による影響を受けず、かつ、その近傍に重なり合うような吸収ピークのないものから選択すればよい。これら両ピーク強度から、前記式に従って赤外吸収スペクトル法による変性量を算出する。その際、rとしては、変性量を求める変性ポリエステル系エラストマー中のポリエステルセグメントのモル分率を、上記標準試料中のポリエステルセグメントのモル分率で除した値を使用する。また、各試料のポリエステルセグメントのモル分率mrは、ポリエステルセグメント及びポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの重量分率(w1 及びw2 )と両セグメントを構成する単量体単位の分子量(e1 及びe2 )とから、次式によって求める。
mr=(w1 /e1 )/[(w1 /e1 )+(w2 /e2 )]
【0047】
1.3.1.成分(A):飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマー
飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有するソフトセグメントと芳香族ポリエステルを含有するハードセグメントとからなる、ブロック共重合体である。ソフトセグメントは、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメント又はこれを含有するセグメントであることが、接着性重合体組成物の物性、特に、接着性の発現上重要である。
また、飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマー中のポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有量は、該ポリエステル系エラストマー中の58〜73重量%であることが必要であり、好ましくは60〜70重量%である。
【0048】
上記ソフトセグメントを構成するポリアルキレンエーテルグリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2及び1,3−プロピレンエーテル)グリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンエーテル)グリコール等が挙げられる。特に好ましいものは、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールである。本発明において、ポリアルキレンエーテルグリコールとしては、数平均分子量が400〜6,000のものが通常使用されるが、600〜4,000のものが好ましく、特に1,000〜3,000のものが好適である。
なお、ここでいう「数平均分子量」とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されたものである。GPCのキャリブレーションには、英国POLYMERLABORATORIES社のPOLYTETRAHYDROFURANキャリブレーションキットを使用すればよい。
【0049】
上記飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、i)炭素原子数2〜12の脂肪族及び/又は脂環式ジオールと、ii)芳香族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸又はそれらのアルキルエステル、及びiii)数平均分子量が400〜6,000のポリアルキレンエーテルグリコールとを原料とし、エステル化反応又はエステル交換反応により得られたオリゴマーを重縮合させて得ることができる。
【0050】
炭素原子数2〜12の脂肪族及び/又は脂環式ジオールとしては、ポリエステルの原料、特にポリエステル系熱可塑性エラストマーの原料として通常用いられるものが使用できる。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、中でも1,4−ブタンジオール、エチレングリコールが好ましく、特に1,4−ブタンジオールが好ましい。これらのジオールは、一種又は二種以上の混合物を使用することができる。
【0051】
芳香族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸としては、ポリエステルの原料、特にポリエステル系熱可塑性エラストマーの原料として一般的に用いられているものが使用でき、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。これらの中では、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく、特にテレフタル酸が好適である。また、これらのジカルボン酸は2種以上を併用してもよい。芳香族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸のアルキルエステルを用いる場合は、上記のジカルボン酸のジメチルエステルやジエチルエステル等が用いられる。好ましいものは、ジメチルテレフタレート及び2,6−ジメチルナフタレートである。
【0052】
また、上記の成分以外に3官能性のトリオールやトリカルボン酸又はそれらのエステルを少量共重合させてもよく、さらにアジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸又はそのジアルキルエステルも共重合成分として使用できる。ポリアルキレンエーテルグリコールの種類や好適な分子量範囲としては、上記の項で説明したものと同様なものが使用できる。このようなポリエステル系熱可塑性エラストマーの市販品としては、三菱化学株式会社製「プリマロイ」、東洋紡績株式会社製「ペルプレン」、東レ・デュポン株式会社製「ハイトレル」等が挙げられる。
【0053】
1.3.2.成分(B):不飽和カルボン酸又はその誘導体
不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸等の不飽和カルボン酸;コハク酸2−オクテン−1−イル無水物、コハク酸2−ドデセン−1−イル無水物、コハク酸2−オクタデセン−1−イル無水物、マレイン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、ブロモマレイン酸無水物、ジクロロマレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、1−ブテン−3,4−ジカルボン酸無水物、1−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物、exo−3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、endo−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸無水物等の不飽和カルボン酸無水物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、グリシジルメタクリレート、マレイン酸ジメチル、マレイン酸(2−エチルへキシル)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の不飽和カルボン酸エステル等があげられる。この中では、不飽和カルボン酸無水物が好適である。これらの不飽和結合を有する化合物は、変性すべきポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する共重合体や、変性条件に応じて適宜選択すればよく、また二種以上を併用してもよい。この不飽和結合を有する化合物は有機溶剤等に溶解して加えることもできる。
【0054】
1.3.3.成分(C):ラジカル発生剤
変性処理に際し、ラジカル反応を行うために用いられるラジカル発生剤としては、例えばt−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチルへキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ターシャリーブチルオキシ)ヘキサン、3,5,5−トリメチルへキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジブチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、過酸化カリウム、過酸化水素等の有機及び無機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(イソブチルアミド)ジハライド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、アゾジ−t−ブタン等のアゾ化合物、及びジクミル等の炭素ラジカル発生剤等が例示できる。これらのラジカル発生剤は、変性処理に用いるポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーの種類や、不飽和カルボン酸又はその誘導体の種類や、変性条件に応じて適宜選択すればよく、また二種以上を併用してもよい。このラジカル発生剤は有機溶剤等に溶解して加えることもできる。また、接着性をさらに向上させるために、成分(C)だけでなく、変性助剤として、不飽和結合を有する化合物(成分(D))を併用することもできる。
【0055】
1.3.4.成分(D):不飽和結合を有する化合物
不飽和結合を有する化合物とは、前記成分(B)以外の炭素−炭素多重結合を有する化合物のことをいい、具体的には、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、フェニルスチレン、o−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、o−クロロスチレン、o−クロロメチルスチレン等のビニル芳香族単量体等が挙げられる。これらの配合により、変性効率の向上が期待できる。
【0056】
1.3.5.任意成分
本発明の接着性重合体組成物層には、上記の成分(A)〜(D)以外にも、本発明の目的・効果を損なわない範囲で、目的に応じて任意の成分を配合することができる。具体的には、樹脂成分、ゴム成分、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ガラス繊維等のフィラー、パラフィンオイル等の可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、架橋剤、架橋助剤、着色剤、難燃剤、分散剤、帯電防止剤、防菌剤、蛍光増白剤等の各種添加物を添加することができる。中でも、フェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系、芳香族アミン系等の各種酸化防止剤の少なくとも一種を添加することが好ましい。
【0057】
1.3.6.配合割合
接着性重合体組成物を構成する各成分の配合割合は、成分(A)飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマー100重量部に対して、成分(B)不飽和カルボン酸又はその誘導体が0.01〜30重量部、好ましくは、0.05〜5重量部、より好ましくは、0.1〜2重量部、特に好ましくは、0.1〜1重量部の配合比となるものであり、成分(C)ラジカル発生剤が0.001〜3重量部、好ましくは、0.005〜0.5重量部、より好ましくは、0.01〜0.2重量部、特に好ましくは、0.01〜0.1重量部の配合比となるものである。このような配合割合とすることによって、変性が不十分となる虞がなく、良好な接着性を発現し、また生成する熱可塑性エラストマー溶融粘度が低下して、成型性が悪化する等の虞もない。
【0058】
1.3.7.配合方法
上記成分(A)、成分(B)及び成分(C)、並びに、必要に応じて添加される成分(D)等の配合成分を用いて、熱可塑性エラストマー組成物を得るための配合方法は、溶融法、溶液法、懸濁分散法等があり、特に限定されない。実用的には溶融混練法が好ましい。溶融混練のための具体的な方法としては、粉状又は粒状の成分(A)、成分(B)及び成分(C)、並びに、必要であれば、成分(D)、前記付加的配合材料(任意成分)として挙げた、その他の配合剤を、所定の配合割合にて、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等を用いて均一に混合した後、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、一軸又は二軸等の多軸混練押出機等の通常の混練機を用いて混練する方法が例示できる。各成分の溶融混練の温度は、100℃〜300℃の範囲、好ましくは120℃〜280℃の範囲、特に好ましくは150℃〜250℃の範囲である。さらに、各成分の混練順序及び方法は、特に限定されるものではなく、成分(A)、成分(B)及び成分(C)と、成分(D)等の付加的配合材料とを一括して混練する方法、成分(A)〜成分(D)の内の一部を混練した後、付加的な配合材料を含めた残りの成分を混練する方法でもよい。ただし、成分(C)を配合する場合は、これを成分(B)及び成分(D)と、同時に添加することが接着性向上の点から好ましい。
【0059】
本実施形態のスクリーンボード用積層フィルム100A、100Bにおいては、変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物層30により、エンボス付与可能層20と、ポリアミド樹脂からなる層40とが接着されている。
【0060】
変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物の具体例としては、三菱化学社製の「プリマロイ−AP」、「プリマロイ−IF203」等を挙げることができる。
【0061】
1.4.エンボス戻り防止層
本発明におけるスクリーンボード用積層フィルム100A、100Bには、必要に応じてエンボス戻り防止層25を、エンボス付与可能層20と変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物層30との間に配して、スクリーンボード用積層フィルム101A、101Bとすることができる。エンボス戻り防止層25を、エンボス付与可能層21と変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物層31との間に配することにより、スクリーンボード用積層フィルム100A、100Bのエンボス戻り防止性をより高めた、スクリーンボード用積層フィルム101A、101Bを得ることができる。
【0062】
エンボス戻り防止層25を構成する樹脂としては、ポリカーボネート樹脂を主成分とする樹脂が好ましい。
【0063】
1.5.ポリアミド樹脂からなる層
ポリアミド樹脂からなる層40(41)とは、ポリアミド樹脂を主成分として含む層をいう。ポリアミド樹脂としては、ジアミンとジカルボサンの重縮合で得られる「−CORCONHR’NH−」(「R」、「R’」は炭化水素基を表す。以下においても同様である。)形のものであってもよいし、ラクタムの開環重合、又は、アミノカルボン酸の重縮合などで得られる「−CORNH−」形のものであってもよい。
【0064】
中でも、ポリアミド樹脂としては、成形性の観点から、Rがメチレン基の直鎖脂肪族ポリアミドであるナイロンであることが好ましい。具体的には、6ナイロン、66ナイロン、69ナイロン、6−66ナイロン、12ナイロン、11ナイロン、610ナイロン、612ナイロン、6I−6Tナイロン、MXD6ナイロン等を挙げることができる。また、これらの二種以上を縮合単位とした共重合体であってもよいし、二種以上を混合した混合体であってもよい。また、中でも、特に、6ナイロンや6−66ナイロンを用いることが好ましい。
【0065】
ポリアミド樹脂からなる層40(41)を、変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物層30(31)と、接着性フッ素樹脂からなる層50(51)の間に配置することで、各層間の接着が可能となる。
【0066】
1.6.接着性フッ素樹脂からなる層
接着性フッ素樹脂からなる層50(51)とは、接着性フッ素樹脂を主成分として含む層をいう。本発明における接着性フッ素樹脂とは、融点が150℃〜250℃であって、変性ポリオレフィン樹脂の一種であるレクスパール RA3150(日本ポリエチレン社製)とフッ素樹脂とを、4×10〜5×10Paの試料圧で、240℃で、10分間プレスして、積層シートを作製し、幅2.5cm、長さ25cmに切断して採取したサンプルを、JIS Z0237に準じた方法にて、剥離速度5mm/分、温度23℃で、180度剥離強度の測定を行った時の180度剥離強度が4N/cm以上であるフッ素樹脂のことをいう。
【0067】
また、本発明における接着性フッ素樹脂のIRスペクトルは、1780cm−1〜1880cm−1の間に吸収ピークを有している。好ましくは、接着性フッ素樹脂のIRスペクトルは、1790cm−1〜1800cm−1の間及び1845cm−1〜1855cm−1の間に、無水マレイン酸基等の無水物に起因する吸収ピークを有し、あるいは、1800cm−1〜1815cm−1の間に末端カーボネート基に起因する吸収ピークを有し、あるいは、1790cm−1〜1800cm−1の間、1845cm−1〜1855cm−1の間及び1800cm−1〜1815cm−1の間に、無水マレイン酸基等の無水物及び末端カーボネート基の混合物に起因する吸収ピークを有している。
【0068】
この中でも、接着性フッ素樹脂のIRスペクトルは、1790cm−1〜1800cm−1の間及び1845cm−1〜1855cm−1の間に、無水マレイン酸基等の無水物に起因する吸収ピークを有し、あるいは、1800cm−1〜1815cm−1の間に末端カーボネート基に起因する吸収ピークを有しているものが好ましい。
【0069】
また、主鎖のCH基に起因する2881cm−1付近における吸収ピークの高さに対する、無水マレイン酸基等の無水物に起因する1790cm−1〜1800cm−1の間の吸収ピークの高さの比は、0.5〜1.5、好ましくは0.7〜1.2、さらに好ましくは0.8〜1.0である。
【0070】
また、主鎖のCH基に起因する2881cm−1付近における吸収ピークの高さに対する、末端カーボネート基に起因する1800cm−1〜1815cm−1の間の吸収ピークの高さの比は、1.0〜2.0、好ましくは1.2〜1.8、さらに好ましくは1.5〜1.7である。
【0071】
このような接着強度を有するフッ素樹脂として、例えば、テトラフルオロエチレン単位を有するホモポリマーやコポリマーであって、末端あるいは側鎖に、カーボネート基、カルボン酸ハライド基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基等の官能基を有する樹脂が挙げられる。上記融点と接着強度を発現するのであれば、複数の樹脂を混合してもよい。市販品で上記のような接着強度を有するフッ素樹脂としては、例えば、ネオフロンEFEP(ダイキン工業社製)、フルオンLM−ETFE AH2000(旭硝子社製)が挙げられる。
【0072】
ポリアミド樹脂からなる層30(31)の上側にフッ素樹脂からなる層40(41)を配置することにより、密着力が良好で表面にフッ素樹脂の特徴である消字性を付与することができる。
【0073】
1.7.フッ素樹脂からなる層
フッ素樹脂からなる層60(61)とは、フッ素樹脂を主成分として含む層をいう。フッ素樹脂としては、特に限定されず、各種のものを用いることができる。代表的なものとして、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン−ポリビニリデンフルオロエチレン共重合体(PVdF)、フッ化エチレンプロピレン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフロライド共重合体(THV)等、これらの共重合体、混合体を用いることができる。中でも、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)が、防汚性、機械的特性、加工性等の点から好ましい。エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)は、市販品として容易に入手でき、例えば、アフロンCOP(旭硝子社製)、Tefzel(デュポン社製)、ネオフロンETFE(ダイキン工業社製)等を入手することができる。
【0074】
フッ素樹脂からなる層60(61)を最外層に配することにより、密着力が良好で表面にフッ素樹脂の特徴である消字性を付与することができる。
【0075】
上記した、変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物層30(31)、ポリアミド樹脂からなる層40(41)、及び接着性フッ素樹脂からなる層50(51)の合計厚みは、10μm以下であることが好ましく、さらには、5μm以下であることがより好ましい。合計厚みを調整することで、エンボス付与可能層20(21)に付与されたエンボスが積層フィルム100(101)の表面に明確に現れるようになる。また、材料コストを低くすることができる。なお、接着性フッ素樹脂からなる層50(51)の上に、フッ素樹脂からなる層60(61)を積層する場合も同様の理由から、10μm以下が好ましい。また、変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物層(31)、ポリアミド樹脂からなる層40(41)、接着性フッ素樹脂からなる層50(51)、及びフッ素樹脂からなる層60(61)の合計厚みが、10μm以下であることが好ましい。
【0076】
2.積層フィルムの製造方法
基材樹脂層10(11)、エンボス付与可能層20(21)、エンボス戻り防止層25、変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物層30(31)、ポリアミド樹脂からなる層40(41)、及び接着性フッ素樹脂からなる層50(51)は、共押出することにより、積層フィルム100A(101A)とされる。この共押出成形においては、それぞれの樹脂層に対応する五種類又は六種類の樹脂材料を五台又は六台の押出機を使用して、一体に組み合わせてなる押出ダイに導いて、ダイ内部又はダイ開口部にて接触させて単一押出製品である積層フィルム100A(101A)とする。なお、フッ素樹脂からなる層60(61)を積層する場合は、六種類又は七種類の樹脂材料を六台又は七台の押出機を使用して、同様に共押出成形して、積層フィルム100B(101B)とする。
【0077】
3.エンボス柄の付与
本発明のスクリーンボード用積層フィルム100(101)には、エンボス柄が付与される。以下、スクリーンボード用積層フィルム100に例をとって説明する。エンボス柄を付与する方法としては、例えば、図3に示したエンボス付与機300によって付与する方法がある。エンボス付与機300において、積層フィルム100Aは、接着性フッ素樹脂からなる層50がエンボスロール5と接するようにして、加熱ロール1、テイクオフロール2を経て、赤外ヒーター3により所定の処理をされ、さらに、ニップロール4、エンボスロール5、冷却ロール6へと送られる。また、フッ素樹脂からなる層60を積層して積層フィルム100Bとする場合は、フッ素樹脂からなる層60がエンボスロール5と接するようにして、上記と同様の処理がなされる。
【0078】
エンボス柄を付与した、本発明のスクリーンボード用積層フィルム100の表面の粗さは、Ra(中心線平均粗さ)が0.7μm以上5μm以下であることが好ましく、Rmax(最大高さ)が4μm以上40μm以下であることが好ましく、Rz(十点平均粗さ)が3μm以上30μm以下であることが好ましく、Rp(平均深さ)が1.5μm以上20μm以下であることが好ましく、Pc(山数)が7以上50以下/8mmであることが好ましく、光沢度が50以下であることが好ましい。ここに、Ra(中心線平均粗さ)、Rmax(最大高さ)、Rz(十点平均粗さ)、Rp(平均深さ)、及びPc(山数)は、JIS B0601(製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−用語,定義及び表面性状パラメータ)に順じて測定するものとし、例えば小坂研究所社製SE−3FK試験機を使用して、2μmRダイヤモンド針を使用して測定することができる。また、光沢度は、JIS Z8741−1997(鏡面光沢度−測定方法)に順じて測定するものとし、例えば、スガ試験機社製のUGV−5DP試験機を使用して測定することができる。なお、光沢度測定における光源の入射角は60°に設定するものとする。
【0079】
4.積層フィルム被覆金属板
図4に、本発明のスクリーンボード用積層フィルム被覆金属板200の層構成を模式的に示した。図4(a)に示すように、本発明のスクリーンボード用積層フィルム被覆金属板200は、スクリーンボード用積層フィルム100Bにおける、基材樹脂層10側を金属板90に貼り付けることによって作製することができる。また、図4(b)に示すように、本発明のスクリーンボード用積層フィルム被覆金属板201は、スクリーンボード用積層フィルム101Bにおける、基材樹脂層11側を金属板90に貼り付けることによって作製することができる。貼り付ける方法としては、例えば、熱融着あるいはドライラミネートを挙げることができる。ドライラミネートに使用する接着剤としては、特に限定されず、各種のものを用いることができる。代表的なものとして、ポリエステル系、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系等の接着剤を挙げることができる。具体例としては、ポリエステル系熱硬化型接着剤として、タケラックA310 100質量部に、タケネートA3 5質量部(共に、三井武田ケミカル社製)をブレンドしたものを挙げることができる。また、ドライラミネートする場合は、ドライラミネートする面には、表面処理や下塗り処理を施すことができる。
【0080】
5.スクリーンボード
本発明のスクリーンボードは、例えば、上記のスクリーンボード用積層フィルム被覆金属板を600mm×900mmの長方形に切断し、周辺部分にプラスチック製の枠を取付けることにより作製することができる。スクリーンボードには壁に掛けるためのフックや、キャスター等の移動手段を取り付けることができる。
【実施例】
【0081】
(実施例1)
以下の樹脂を使用し、口金温度260℃で、5層マルチマニホールドダイにより共押出成形を行い、以下に示す各層を有する積層フィルムを得た。なお、第1層〜第3層の合計厚みは、5μmである。
第1層:接着性フッ素樹脂 ネオフロンEFEP RP4020(ダイキン工業社製)
第2層:ポリアミド樹脂 6ナイロン(宇部興産社製1030B)
第3層:変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物層(プリマロイ−IF203 三菱化学社製)
第4層:エンボス付与可能層(イースター・6763 イーストマンケミカル社製)
第5層:基材樹脂層(ノバデュラン5020S 三菱エンジニアリングプラスチック社製)
【0082】
そして、図3に示したエンボス付与装置300を用いて、フィルム加熱温度180℃、ロール線圧1.8MPaの一対のロール間にて10m/分の速度で、製造した積層フィルムに対してエンボス加工Aを行った。ここで、「エンボス加工A」とは、Raが2.3μm、Rmaxが13.2μm、Rzが11.0μm、Rpが5.8μm、Pcが18、グロスが30%以下である、エンボス加工である。
【0083】
次に、亜鉛めっき鋼板(厚み0.45mm)に、乾燥後の接着剤膜厚が2〜4μm程度になるように、ポリエステル系接着剤(SC611(ソニーケミカル社製))を塗布し、この鋼板の塗布面をその表面温度が235℃になるように、熱風乾燥炉及び赤外線ヒーターにより乾燥・加熱した。その後、ロールラミネーターを用いて、鋼板における接着剤の塗布面を本発明の積層フィルムにおける基材樹脂層側で被覆し、自然空冷冷却することで、本発明の積層フィルムによって被覆されたスクリーンボード用積層フィルム被覆金属板を得た。
【0084】
(実施例2)
実施例1において、第1層〜第3層の合計厚みを8μmとした以外は、実施例1と同様にして、スクリーンボード用積層フィルム及びスクリーンボード用積層フィルム被覆金属板を得た。
【0085】
(実施例3)
実施例1において、第3層(変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物層)と第4層(エンボス付与可能層)との間に、ポリカーボネート樹脂からなる層を設けた以外は、実施例1と同様にして、スクリーンボード用積層フィルム及びスクリーンボード用積層フィルム被覆金属板を得た。
【0086】
(実施例4)
実施例2において、第3層(変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物層)と第4層(エンボス付与可能層)との間に、ポリカーボネート樹脂からなる層を設けた以外は、実施例1と同様にして、スクリーンボード用積層フィルム及びスクリーンボード用積層フィルム被覆金属板を得た。
【0087】
(実施例5)
実施例1において、第1層〜第3層の合計厚みを12μmとして、エンボス加工Bを施した以外は、実施例1と同様にして、スクリーンボード用積層フィルム及びスクリーンボード用積層フィルム被覆金属板を得た。ここで、「エンボス加工B」とは、Raが0.2、Rmaxが3.5、Rzが1.7、Rpが0.8、Pcが11、グロスが50%以上である、エンボス加工である。
【0088】
(実施例6)
実施例1において、エンボス加工Bを施した以外は、実施例1と同様にして、スクリーンボード用積層フィルム及びスクリーンボード用積層フィルム被覆金属板を得た。
【0089】
(比較例1)
マット処理されたエチレン−テトラフルオロエチレンからなるフィルム25μm(フルオンETFE、C−88AXP、旭硝子社製)を、ポリエチレンテレフタレートからなる白色フィルム50μmにラミネートして、積層フィルムを得た。ラミネートには、接着剤としてポリエステル系熱硬化型接着剤として、タケラックA310:100質量部に、タケネートA3:5質量部(共に、三井武田ケミカル社製)をブレンドしたもの、を使用した。その後、実施例1と同様にして、亜鉛メッキ鋼板に貼り付けて積層フィルム被覆金属板を得た。
【0090】
(比較例2)
口金温度260℃で、2層マルチマニホールドダイにより共押出成形を行い、実施例1において使用したエンボス付与可能層及び基材樹脂層からなる2層の積層フィルムを得た。そして、エンボス加工Aを施した。その後、実施例1と同様にして、亜鉛メッキ鋼板に貼り付けて積層フィルム被覆金属板を得た。
【0091】
(評価方法)
上記で得た積層フィルム及び積層フィルム被覆金属板に対して、以下の基準により評価を行った。
【0092】
(エンボス加工性)
エンボスを付与したシートを、目視で観察し、きれいにエンボス柄が転写しているものを「○」、これに比べてやや転写が浅い場合を「△」、エンボス加工がなく評価対象外のものを「−」で示した。
【0093】
(エンボス戻り有無)
亜鉛メッキ鋼板への積層直後のシート表面を目視で観察し、エンボス戻りがないものを「○」、若干エンボス戻りが認められるものを「△」、エンボス加工がなく評価対象外のものを「−」として記録した。
【0094】
(消字性)
油性フェルトペンで表面に文字を書き、60秒後に表面をタオルでふき取った際のインクの残り具合から、以下の基準により判断した。
○:きれいにふき取ることができる。
×:一部でもインクが残存している部分がある。
【0095】
(防眩性)
表面に40Wのハロゲンランプを斜め45度から30cm離して入射させた場合において、積層フィルム被覆金属板の表面を目視で観察して以下の基準により評価した。
○:光の反射がなく、表面を視認できる。
△:若干光の反射があるが、表面を視認できる。
×:光が反射して、表面を視認できない。
【0096】
(鉛筆硬度)
積層フィルム被覆金属板について、JIS K5600−5−4:1999(塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第4節:引っかき硬度(鉛筆法))に従い、東洋精機 No.431 試験機を使用し、荷重9.807N(1000gf)にて実施した。23℃の恒温室内で、80mm×60mmに切り出した積層フィルム被覆金属板の樹脂シート面に対し45°の角度を保ちつつ9.8Nの荷重を掛けた状態で線引きをできる治具を使用して線引きを行った。該部分の積層フィルムの面状態を目視で以下の基準により判定した。
○:2Bの鉛筆で全く傷が付かなかった。
△:2Bでは傷が入るが、3Bの鉛筆では全く傷が付かなかった。
×:3Bの鉛筆でも傷が付いた。
【0097】
(経済性)
積層フィルム及び積層フィルム被覆金属板を作製する時のコストを評価した。
○:比較的コストが低い。
×:比較的コストが高い。
【0098】
(評価結果)
上記評価から得られた結果を表1に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
本発明のスクリーンボード用積層フィルム及びスクリーンボード用積層フィルム被覆金属板(特に実施例1〜5)は、いずれの評価項目においても良好な結果を示した。その中でも特に、エンボス加工Aを施した実施例1〜4のスクリーンボード用積層フィルム被覆金属板は、エンボス加工性、消字性、防眩性に優れ、なかんずく、第3層(変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物層)と第4層(エンボス付与可能層)との間に、ポリカーボネート樹脂からなる層を設けた実施例3及び実施例4は、エンボス戻り性にも優れていることが認められた。実施例5においては、第1層〜第3層の合計厚みが厚すぎるため、エンボス加工性がやや劣っていた。また、実施例5及び6においては、エンボス加工が本発明の好ましい範囲から外れたものであり、防眩性の点でやや劣ることが認められた。また、実施例6においてはエンボス加工が浅く、表層が薄くPC層の影響が大きいため、鉛筆硬度がやや劣る結果となった。
【0101】
また、比較例1においては、マット化されたフッ素樹脂層を用いていることから、消字性が劣っており、また、フッ素樹脂層の層厚が厚いこと、及び、積層フィルムを作製するのにラミネート作業が必要なことから経済性が劣っていた。比較例2においては、表層にフッ素樹脂からなる層を有していないので、消字性が劣っていた。
【0102】
以上説明したように、本発明のスクリーンボード用積層フィルム及びスクリーンボード用積層フィルム被覆金属板は、消字性、防眩性、筆記性の全てを満足するものである。この発明のスクリーンボード用積層フィルム及びスクリーンボード用積層フィルム被覆金属板は、エンボス版の押し付けによるエンボス転写面を有するので、凸部間のピッチ(つまり、凹部の広さ)や凸部の高さ(つまり、凹部の深度)が一定したものとなる。また、この発明のスクリーンボード用積層フィルム及びスクリーンボード用積層フィルム被覆金属板の表面に形成される凹凸はエンボス版の押し付けによるので、従来法に比べて比較的低い温度で凹凸が形成できるとともに、フッ素フィルムに貼りあわされた白色基材による冷却効果が期待できるため、従来法に比べてフィルム成形時とフィルム成形後との間の温度差が少なく、フッ素フィルムの表面の凹凸が潰れたり、細かくなったりしにくい。したがって、この発明のスクリーンボード用積層フィルム及びスクリーンボード用積層フィルム被覆金属板は、インキの目詰りが発生しにくいので、消字性が優れている。また、この発明のスクリーンボード用積層フィルム及びスクリーンボード用積層フィルム被覆金属板は、凹凸形成にエンボス版を使用するので、凸部間のピッチを大きくしたり、凸部の高さを低くしたりするまでもなく、インキの目詰りが発生しにくい。したがって、この発明のスクリーンボード用積層フィルム及びスクリーンボード用積層フィルム被覆金属板は、フッ素フィルムの表面の光沢が生じ難いので、防眩性が優れ、会議等での使用に耐えるものとなる。この結果、この発明のスクリーンボード用積層フィルム及びスクリーンボード用積層フィルム被覆金属板は、ビデオプロジェクター(VP)やオーバーヘッドプロジェクター(OHP)等の投影機器用の反射型スクリーン用としても使用することができる。
【0103】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うスクリーンボード用積層フィルム及びスクリーンボード用積層フィルム被覆金属板もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明のスクリーンボード用積層フィルムの層構成を示した模式図である。
【図2】本発明のスクリーンボード用積層フィルムの他の層構成を示した模式図である。
【図3】エンボス付与機の概要を示す説明図である。
【図4】本発明のスクリーンボード用積層フィルム被覆金属板の層構成を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0105】
100A、100B、101A、101B スクリーンボード用積層フィルム
200、201 スクリーンボード用積層フィルム被覆金属板
10 基材樹脂層
20 エンボス付与可能層
25 エンボス戻り防止層
30 変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物層
40 ポリアミド樹脂からなる層
50 接着性フッ素樹脂からなる層
60 フッ素樹脂からなる層
90 金属板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属表面に被覆してスクリーンボードとするための金属被覆用積層フィルムであって、
基材樹脂層、
エンボス付与可能層、
ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有率が58〜73重量%である飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーを、ラジカル発生剤の存在下、不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性処理して得られる、変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物層、
ポリアミド樹脂からなる層、及び、
接着性フッ素樹脂からなる層、
をこの順に積層した、スクリーンボード用積層フィルム。
【請求項2】
金属表面に被覆してスクリーンボードとするための金属被覆用積層フィルムであって、
基材樹脂層、
エンボス付与可能層、
エンボス加工温度で弾性率が10Pa以下、鋼板積層時のフィルム温度での弾性率が10Pa以上である樹脂からなる層、
ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有率が58〜73重量%である飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーを、ラジカル発生剤の存在下、不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性処理して得られる、変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物層、
ポリアミド樹脂からなる層、及び、
接着性フッ素樹脂からなる層、
をこの順に積層した、スクリーンボード用積層フィルム。
【請求項3】
前記エンボス加工温度で弾性率が10Pa以下、鋼板積層時のフィルム温度での弾性率が10Pa以上である樹脂は、ポリカーボネート樹脂である請求項2に記載のスクリーンボード用積層フィルム。
【請求項4】
前記接着性フッ素樹脂からなる層における前記ポリアミド樹脂からなる層が積層された面とは反対の面に、さらにフッ素樹脂からなる層が積層されている、請求項1〜3のいずれかに記載のスクリーンボード用積層フィルム。
【請求項5】
前記エンボス付与可能層が、示差走査熱量計(DSC)による測定において、昇温時に明確な結晶融解ピークが観測されない実質的に非晶性のポリエステル系樹脂を、前記エンボス付与可能層全体の質量を100質量%として、50質量%以上含む層である、請求項1〜4のいずれかに記載のスクリーンボード用積層フィルム。
【請求項6】
前記基材樹脂層が、示差走査熱量計(DSC)による測定において、昇温時に明確な結晶融解ピークが観測される、実質的に結晶性のポリエステル系樹脂を、前記基材樹脂層全体の質量を100質量%として、50質量%以上含む層であり、この実質的に結晶性のポリエステル系樹脂の結晶融解ピーク温度(Tm)とガラス転移温度(Tg)との関係が、Tm(℃)>(Tg+30)(℃)である、請求項1〜5のいずれかに記載のスクリーンボード用積層フィルム。
【請求項7】
前記エンボス付与可能層の製膜時における、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるスチレン換算の重量平均分子量が、65000〜140000の範囲にある、請求項1〜6のいずれかに記載のスクリーンボード用積層フィルム。
【請求項8】
前記エンボス付与可能層が、結晶性のポリブチレンテレフタレート系樹脂を含み、示差走査熱量計(DSC)による昇温時に明確な結晶融解ピーク温度(Tm)を示し、その結晶融解熱量(△Hm(J/g))が10〜60である、請求項1〜7のいずれかに記載のスクリーンボード用積層フィルム。
【請求項9】
前記接着性フッ素樹脂がカーボネート基を含有する、請求項1〜8のいずれかに記載のスクリーンボード用積層フィルム。
【請求項10】
前記接着性フッ素樹脂がマレイン酸基を含有する、請求項1〜9のいずれかに記載のスクリーンボード用積層フィルム。
【請求項11】
前記変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物層、前記ポリアミド樹脂からなる層、及び前記接着性フッ素樹脂からなる層の各層の合計厚みが10μm以下である、請求項1〜10のいずれかに記載のスクリーンボード用積層フィルム。
【請求項12】
共押出により積層フィルムとされ、接着性フッ素樹脂からなる層側あるいはフッ素樹脂からなる層側に、エンボスロールによって凹凸を形成した、請求項1〜11のいずれかに記載のスクリーンボード用積層フィルム。
【請求項13】
エンボスロールによって凹凸を形成された表面の粗さが、
Ra(中心線平均粗さ):0.7〜5μm、
Rmax(最大高さ) :4〜40μm、
Rz(十点平均粗さ) :3〜30μm、
Rp(平均深さ) :1.5〜20μm、
Pc(山数) :7〜50/8mm
であり、光沢度が50以下である、請求項12に記載のスクリーンボード用積層フィルム。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載のスクリーンボード用積層フィルム、及び、この積層フィルムにおける基材樹脂層側を貼り付けた金属板からなる、スクリーンボード用積層フィルム被覆金属板。
【請求項15】
請求項14に記載のスクリーンボード用積層フィルム被覆金属板を備えた、スクリーンボード。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−297972(P2009−297972A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153565(P2008−153565)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】