スクリーン印刷機およびスクリーン印刷方法
【課題】スクリーン印刷機において印刷剤ロールからの印刷剤の引出しを抑制しつつスキージを印刷剤ロールから離間させることを課題とする。
【解決手段】スキージをスクリーンに接触させ、スクリーン上のクリーム状はんだをローリングさせつつ押送し、回路基板に印刷した後、スキージを小距離上昇させ、はんだロールには接触しているがスクリーン20からは離間させた後(S1a〜S1d)、後退させてはんだロールから離間させる(S2)。上昇,後退のいずれも速度を低く規制し、クリーム状はんだのはんだロールからの引出しを抑制しつつスキージを移動させ、はんだロールから引き出されたクリーム状はんだの倒れ込みにより、はんだロールとの間に空気が封じ込められることを回避する。スキージを、速度を低く規制した上昇によりスクリーン20,はんだロールから離間させてもよい。
【解決手段】スキージをスクリーンに接触させ、スクリーン上のクリーム状はんだをローリングさせつつ押送し、回路基板に印刷した後、スキージを小距離上昇させ、はんだロールには接触しているがスクリーン20からは離間させた後(S1a〜S1d)、後退させてはんだロールから離間させる(S2)。上昇,後退のいずれも速度を低く規制し、クリーム状はんだのはんだロールからの引出しを抑制しつつスキージを移動させ、はんだロールから引き出されたクリーム状はんだの倒れ込みにより、はんだロールとの間に空気が封じ込められることを回避する。スキージを、速度を低く規制した上昇によりスクリーン20,はんだロールから離間させてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン印刷機およびスクリーン印刷方法に関するものであり、特に、スキージの印刷剤からの離間に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スクリーン印刷機においては、スクリーン上に載せられた印刷剤がスキージにより押送され、スクリーンの貫通孔を通して被印刷材に印刷される。例えば、下記の特許文献1に記載のスクリーン印刷機は、スキージを1対備え、それらスキージのうちの一方がスクリーンに接触させられ、スクリーン上に載せられたクリーム状はんだを押しつつスクリーンに沿って移動させ、貫通孔に押し込み、回路基板に印刷する。印刷後、スキージは上昇させられ、スクリーンから離間させられるとともにクリーム状はんだから離間させられてスキージが交替させられるのであるが、その際、スキージの先端部にクリーム状はんだが付着し、印刷回数を重ねるとスキージから垂れ下がるようになる。そのため、特許文献1に記載のスクリーン印刷機においては、印刷が所定回数行われる毎に、スキージに付着したクリーム状はんだを除去するようにされている。スキージを上昇させ、クリーム状はんだから離間させた後、スクリーンの貫通孔形成領域外の部分であって、印刷に使用されない部分において下降させ、接触させるとともに、印刷方向とは逆方向に移動させ、付着したクリーム状はんだをスクリーンにこすりつけて除去するのである。
【特許文献1】特開平10−193565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載のスクリーン印刷機においては、印刷品質が低下する問題がある。クリーム状はんだは、スクリーン上に、スキージの移動方向と直交する方向に帯状に載せられ、スキージにより押されてスクリーン上をローリングしつつ移動させられ、貫通孔に充填される。そのため、クリーム状はんだはロール状を成し、貫通孔への押込みによりロール表面に生じた凹凸が滑らかに整えられ、貫通孔への充填に備えるのであるが、印刷終了後、スキージが上昇させられ、クリーム状はんだから離間させられる際に、はんだロールを形成しているクリーム状はんだの一部がスキージに付着してスキージにより引っ張られ、はんだロールから引き出される。この引出し部分はやがて重力に基づいて倒れ、スキージから離れるが、スクリーンの、スクリーン上に載っているはんだロールから離れた部分に落ち、はんだロールとの間に空気を封じ込める状態となる。それにより、次に印刷のためにはんだロールがスキージによって押送されるとき、封じ込められた空気がはんだロールの中に巻き込まれて、はんだロール中に空洞が形成され、はんだロールの空洞を含む部分が貫通孔に至れば、空洞分、貫通孔にクリーム状はんだが充填されず、回路基板にクリーム状はんだが印刷されず、あるいは印刷量が不足する。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、スクリーン印刷機において印刷剤ロールからの印刷剤の引出しを抑制しつつスキージを印刷剤ロールから離間させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題は、スキージによりスクリーン上を押送した場合にロール状を成す印刷剤を、スクリーンの貫通孔を通して被印刷材に印刷するスクリーン印刷機を制御する制御装置を、前記押送によりロール状となった印刷剤である印刷剤ロールからスキージを離間させる際の離間速度を、印刷剤ロールを形成している印刷剤の一部がスキージに付着して印刷剤ロールから引き出された後、重力に基づいて倒れ、印刷剤ロールとの間に空気を封じ込める状態となることがない範囲の規制速度に規制する離間速度規制部を含むものとすることにより解決される。
【発明の効果】
【0005】
印刷剤が、例えば、クリーム状はんだのように、変形させられる速度が速いほど粘度が低くなる性質を有するものである場合、スキージの印刷剤ロールからの離間速度が速いほど、離間時における印刷剤の粘度が低くなり、その一部が印刷剤ロールから引き出され易い。そのため、スキージの印刷剤ロールからの離間速度を低くすれば、印刷剤の粘度の低下が抑制され、延び難く、印刷剤ロールから引き出され難くなり、印刷剤ロールとの間に空気が封じ込められる状態となることが回避される。それにより、印刷量の不足等、印刷不良の発生が回避され、印刷が安定して行われる。
【発明の態様】
【0006】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0007】
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(2)項が請求項2に、(3)項が請求項3に、(4)項が請求項4に、(5)項が請求項5に、(8)項が請求項6に、(12)項が請求項7に、(13)項が請求項8に、それぞれ相当する。
【0008】
(1)スキージによりスクリーン上を押送した場合にロール状を成す印刷剤を、前記スクリーンの貫通孔を通して被印刷材に印刷するスクリーン印刷機であって、
そのスクリーン印刷機を制御する制御装置が、前記押送によりロール状となった印刷剤である印刷剤ロールから前記スキージを離間させる際の離間速度を、印刷剤ロールを形成している印刷剤の一部がスキージに付着して印刷剤ロールから引き出された後、重力に基づいて倒れ、印刷剤ロールとの間に空気を封じ込める状態となることがない範囲の規制速度に規制する離間速度規制部を含むスクリーン印刷機。
本項のスクリーン印刷機は、例えば、スキージを印刷剤ロールから離間させるためにスキージとスクリーンとを相対移動させる離間用相対移動装置を含むものとされる。その場合には、離間速度規制部は離間用相対移動装置の作動速度を規制することにより、印刷剤ロールからスキージを離間させる際の離間速度を規制速度に規制することとなる。
(2)前記スキージを前記スクリーンから離間する向きに上昇させることにより前記印刷剤ロールから離間させる上昇離間装置を含み、前記離間速度規制部が、その上昇離間装置による前記スキージの上昇速度を前記規制速度に規制する上昇速度規制部を含む(1)項に記載のスクリーン印刷機。
例えば、スキージが1対設けられ、交替で印刷に使用される場合、印刷を終えたスキージはスクリーンから離間させられるとともに印刷剤ロールから離間させられるのであるが、スクリーンからの離間のための上昇を利用して印刷剤ロールから離間させられる。その際、上昇速度が規制されることにより、印刷剤ロールとの間に空気が封じ込められた状態となることが回避されつつ、スキージが印刷剤ロールから離間させられる。
(3)前記スキージを前記スクリーンに平行でかつ前記印刷剤ロールから離間する向きに後退させることにより前記印刷剤ロールから離間させる後退離間装置を含み、前記離間速度規制部が、その後退離間装置による前記スキージの後退速度を前記規制速度に規制する後退速度規制部を含む(1)項に記載のスクリーン印刷機。
本項に記載のスクリーン印刷機には、スキージをスクリーンに接触させたままの状態で後退させ、印刷剤ロールから離間させる態様と、次項に記載のスクリーン印刷機におけるように、スキージのスクリーンへの接触を解消した状態で後退させる態様とが含まれる。
いずれにしても、スキージの後退速度が規制されることにより、スキージによる印刷剤の印刷剤ロールからの引出しが抑制され、空気が封じ込められる状態となることが回避されつつ、スキージが印刷剤ロールから離間させられる。
本項に記載のスクリーン印刷機は、スキージが昇降装置によって昇降させられるが、昇降装置が昇降速度の制御が行われない装置である場合に適している。
(4)前記後退離間装置による前記スキージの後退前にそのスキージの前記スクリーンへの接触を解消する接触解消装置を含む(3)項に記載のスクリーン印刷機。
スキージのスクリーンへの接触の解消により、スキージの後退時にスクリーンがスキージに抵抗を与えることがなく、後退がスムーズに行われる。この際、制御装置が接触解消速度規制部を含むものとされて、接触解消速度が規制されることが、不可欠ではないが望ましい。接触解消速度が規制されるようにすれば、スキージのスクリーンからの離間時に印刷剤がスキージにより引っ張られて粘度が低下し、スキージの後退時に印刷剤ロールから引き出され易くなることが防止される。
スキージのスクリーンへの接触を解消するためのスキージのスクリーンからの離間距離は、接触の解消に必要な最小限の距離とされることが望ましい。それにより、接触解消装置が速度制御機能を有さないものである場合、あるいは速度制御精度が比較的低いものである場合でも、スキージのスクリーンからの離間時における印刷剤の印刷剤ロールからの引出しが最小限に抑えられる。
(5)前記制御装置が、前記スキージの前記印刷剤ロールからの離間を検出する離間検出部を備え、その離間検出部による離間検出から予め設定された設定距離だけ前記スキージを離間させる離間距離制御部を含む(1)項ないし(4)項のいずれかに記載のスクリーン印刷機。
スキージの印刷剤ロールからの離間の検出により、スキージの印刷剤ロールからの離間が確実に捉えられ、スキージが印刷剤ロールから離間するまで確実に離間速度を規制することができ、印刷剤の印刷剤ロールからの引出しを回避することができる。また、スキージを速度を規制しつつ印刷剤ロールから離間させる距離を最小限に抑え、離間に要する時間の延びを抑制することができる。さらに、離間検出から設定距離だけスキージを離間させれば、スキージが印刷剤ロールから離間した状態がより確実に得られる。
(6)前記離間速度規制部が、前記スキージの前記印刷剤ロールからの離間速度を離間末期において離間初期より大きくするものである(1)項ないし(5)項のいずれかに記載のスクリーン印刷機。
離間速度の規制による離間所要時間の延びを抑制することができ、印刷サイクルタイムを節約することができる。
(7)前記スキージとして、互いに対向して配設され、交互に前記印刷剤を逆向きに押送して印刷を行う第一スキージと第二スキージとを含み、前記離間速度規制部が、少なくとも第一スキージと第二スキージとの交替時に作動する(1)項ないし(6)項のいずれかに記載のスクリーン印刷機。
第一スキージと第二スキージとは、被印刷材1枚毎に交替させられ、印刷を行う。そのため、1回、印刷が行われる毎にスキージの印刷剤ロールからの離間が行われ、空気の封じ込め状態が発生する機会が多く、スキージの印刷剤ロールからの離間速度の規制による効果を有効に享受することができる。
(8)前記スキージを前記印刷剤ロールから離間させるために前記スキージと前記スクリーンとを相対移動させる離間用相対移動装置と、
その離間用相対移動装置により前記スキージが前記印刷剤ロールから離間させられる場合に印刷剤ロールからスキージに加えられる負荷を検出する負荷検出装置と
を含み、かつ、前記制御装置が、前記負荷検出装置により検出された負荷に基づいて前記印刷剤の粘度に対応する粘度対応量を取得する粘度対応量取得部を含む(1)項ないし(7)項のいずれかに記載のスクリーン印刷機。
印刷剤は粘度を有するため、スキージが印刷剤ロールから離間する際、スキージに付着している間、スキージに離間方向とは逆向きの負荷を加える。この負荷は印刷剤の粘度が大きいほど大きくなり、負荷と粘度との間には対応関係があるが、対応精度はそれほど高くなく、粘度の絶対値を取得することは容易ではない場合が多い。しかし、粘度対応量は取得可能であり、その取得に基づいて、例えば、粘度の変化量を取得したり、変化勾配を取得したりすることは可能である。粘度に対応する粘度対応量が得られれば便利であり、本項のスクリーン印刷機によれば、スキージの印刷剤ロールからの離間を利用して粘度対応量が得られる。
負荷検出装置は、例えば、ロードセルあるいはストレンゲージを備え、それらに加えられる荷重を検出する装置としてもよく、あるいは離間用相対移動装置が電動モータを駆動源とする場合、電動モータへの供給電流を検出する装置としてもよい。印刷剤がスキージに付着して付与する抵抗に抗するため、電動モータへの供給電流は大きくされ、印刷剤の付着の有無,印刷剤の粘度に応じて供給電流の大きさが異なり、その検出に基づいてスキージに対する負荷が検出される。
(9)前記制御装置が、前記粘度対応量取得部により取得された前記粘度対応量の変化に応じて当該スクリーン印刷機の制御を変更する粘度対応制御変更部を含む(8)項に記載のスクリーン印刷機。
スクリーン印刷機の制御は、例えば、スクリーン印刷機内の温度調節,印刷時におけるスキージのスクリーンに平行な方向の移動速度,印刷終了後、回路基材をスクリーンから離間させる際の離間速度,スキージのスクリーンへの接触力,スクリーン印刷機内の湿度等、印刷パラメータを変更することにより変更される。
印刷剤の粘度は、スクリーン印刷機内の温度が高いほど低くなり、スキージの移動速度が大きいほど低くなるため、粘度が高くなった場合には、スクリーン印刷機内の温度を高くすることにより、あるいはスキージの移動速度を速くすることにより、あるいはそれらを組み合わせて行うことにより、粘度を下げることができる。
また、スキージのスクリーンへの接触力を大きくすれば、粘度が高くなっても印刷剤を貫通孔に十分に充填することができる。
さらに、印刷終了後、回路基材をスクリーンから離間させ、貫通孔に充填された印刷剤を貫通孔から抜け出させる際に、離間速度が速過ぎると、印刷剤が弾性領域から粘性領域へ移行し、一旦変形させられたものが元の形状に復帰しなくなる性質の印刷剤の場合、粘度対応量の変化に応じて離間速度を変更することにより、印刷剤が弾性領域から粘性領域へ移行しない速度で回路基材をスクリーンから離間させることができる。印刷剤の粘度が高くなった場合には、回路基材のスクリーンからの離間速度を上げる。
また、スクリーン印刷機内の湿度を高くすれば、印刷剤からの水分の気化が抑制され、粘度が高くなり過ぎることが防止される。
したがって、粘度対応量の変化に応じてスクリーン印刷機の制御を変更することにより、印刷剤の粘度変化を抑制したり、粘度変化にかかわらず印刷が適切に行われるようにしたりすることが可能である。印刷パラメータは、例えば、粘度対応量の変化量が許容範囲を超えた場合に変更される。この許容範囲を規定する許容値は、例えば、予め印刷品質と印刷剤の粘度対応量との関係を測定し、その測定結果に基づいて設定される。
(10)前記制御装置が、前記粘度対応量取得部により取得された前記粘度対応量に基づいて印刷剤を交換すべきことを指示する印刷剤交換指示部を含む(8)項または(9)項に記載のスクリーン印刷機。
例えば、粘度対応量の変化が大きく、スクリーン印刷機の制御を変更しても、印刷剤の粘度を印刷に適切した大きさに戻すことができない場合や、制御の変更により粘度を調節すれば、印刷剤の性状が変化し、印刷が適切に行われない恐れがある場合等、スクリーン印刷機の制御の変更により粘度対応量の変化に対処することができない場合に印刷剤の交換が指示され、印刷が良好に行われるようにされる。
(11)前記印刷剤としてのクリーム状はんだを、前記被印刷材としての回路基材に印刷するものである(1)項ないし(10)項のいずれかに記載のスクリーン印刷機。
回路基材には、例えば、回路基板であるプリント配線板,一方の面に電子回路部品が搭載されるとともに電気的に接合され、他方の面には電子回路部品が未装着であるプリント回路板,ベアチップが搭載され、チップ付基板を構成する基材,ボールグリッドアレイを備えた電子回路部品が搭載される基材等が含まれる。
クリーム状はんだは、スキージによる押送によりロール状を成し、スキージの離間速度が高いほど粘度が低くなる印刷剤の代表的な一例であり、クリーム状はんだが被印刷材に印刷されるスクリーン印刷機において本発明に係る効果を特に有効に享受することができる。
(12)スキージによりスクリーン上を押送した場合にロール状を成す印刷剤を、前記スクリーンの貫通孔を通して被印刷材に印刷するスクリーン印刷機であって、
前記押送によりロール状となった印刷剤である印刷剤ロールから前記スキージを離間させるために前記スキージと前記スクリーンとを相対移動させる離間用相対移動装置と、
その離間用相対移動装置により前記スキージが前記印刷剤ロールから離間させられる場合に印刷剤ロールからスキージに加えられる負荷を検出する負荷検出装置と、
その負荷検出装置により検出された負荷に基づいて前記印刷剤の粘度に対応する粘度対応量を取得する粘度対応量取得装置と
を含むスクリーン印刷機。
(9)項ないし(11)項の各々に記載の特徴は、本項のスクリーン印刷機にも適用可能である。
前記(8)項に関する説明が本項のスクリーン印刷機にも当てはまる。
(13)スキージによりスクリーン上を押送した場合にロール状を成す印刷剤を、前記スクリーンの貫通孔を通して被印刷材に印刷するスクリーン印刷方法であって、
前記押送によりロール状となった印刷剤である印刷剤ロールから前記スキージを離間させる際の離間速度を、印刷剤ロールを形成している印刷剤の一部がスキージに付着して印刷剤ロールから引き出された後、重力に基づいて倒れ、印刷剤ロールとの間に空気を封じ込める状態となることがない範囲の規制速度に規制するスクリーン印刷方法。
(2)項ないし(11)項の各々に記載の特徴は、本項のスクリーン印刷方法にも適用可能である。
前記(1)項に関する説明が本項のスクリーン印刷方法にも当てはまる。
【実施例】
【0009】
以下、請求可能発明のいくつかの実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、上記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更を施した態様で実施することができる。
【0010】
図1に一実施例としてのスクリーン印刷機を示す。本スクリーン印刷機は、図1に示すように、被印刷材たる回路基材としての回路基板10に印刷剤としてのクリーム状はんだを印刷する。本スクリーン印刷機において回路基板10は、被印刷材搬送装置としての基板搬送装置11(図3参照)により、図1において紙面に直角な方向に搬送され、スクリーン印刷機に搬入,搬出される。基板搬送装置11による基板搬送経路の途中に被印刷材保持装置としての基板保持装置12が設けられ、回路基板10を保持する。基板保持装置12は、印刷装置本体14に設けられ、例えば、支持部材により回路基板10を下方から支持する基板支持装置と、回路基板10を搬送方向に直角な両側から挟んでクランプするクランプ装置とを備え、基板保持装置昇降装置16により昇降させられ、保持した回路基板10をスクリーン保持装置18に保持されたスクリーン20に接近,離間させる。
【0011】
スクリーン20には、図2に示すように、複数の貫通孔22が形成され、矩形のスクリーン枠24(図1参照)に取り付けられている。スクリーン保持装置18は、例えば、印刷装置本体14に設けられたスクリーン支持台26(図1参照)と、スクリーン20をスクリーン支持台26に固定する固定装置(図示省略)とを備え、スクリーン20を基板保持装置12の上方において水平な姿勢で保持する。回路基板10は、基板保持装置12の上昇によりスクリーン20に接近させられ、スクリーン20の下面に接触させられ、あるいは接触可能とされ、下降によりスクリーン20から離間させられる。基板保持装置昇降装置16は、基板保持装置12とスクリーン保持装置18とをスクリーン20に直角な方向に相対移動させ、接近,離間させる相対移動装置たる接近・離間装置を構成している。
【0012】
印刷装置本体14にはまた、図1に示すように、スキージ装置38が設けられ、そのスキージユニット40により回路基板10にクリーム状はんだが印刷される。スキージユニット40は一対設けられ、スキージ保持装置42により保持される。スキージ保持装置42は、相対移動装置たるスキージ保持装置移動装置44により、基板保持装置12およびスクリーン保持装置18に対してスクリーン20に平行な方向に移動させられる。スキージ保持装置移動装置44は、可動部材としてのスライダ50と、スライダ移動装置52とを含む。スライダ移動装置52は、駆動源たるスライダ移動用モータ54(図3参照)と、ボールねじ56およびナット58を含む送りねじ装置60(図1参照)とを含み、スライダ50を案内部材としてのガイドレール(図示省略)に案内させつつ、スクリーン20に平行な方向であって、水平面内において基板搬送方向と直交する方向において任意の位置に移動させる。スライダ移動用モータ54は、例えば、エンコーダ付サーボモータにより構成される。サーボモータは、回転角度の正確な制御が可能な電動モータである。サーボモータに代えてステップモータを用いてもよく、リニアモータを用いてもよい。
【0013】
本スキージ保持装置42は、図2に示すように、スライダ50に設けられ、スライダ50が移動させられることにより、スキージ保持装置42に保持されたスキージユニット40がスクリーン保持装置18に保持されたスクリーン20に沿って移動し、基板保持装置12に保持された回路基板10にクリーム状はんだを印刷する。基板保持装置12に保持された回路基板10の被印刷面たる上面に平行な平面である水平面内において基板搬送方向と直交する方向が印刷方向(図1および図2においては左右方向)である。
【0014】
本スキージ保持装置42は、図2に示すように、一対の保持ヘッド70および保持ヘッド昇降装置72を含む。保持ヘッド昇降装置72は、流体圧アクチュエータの一種である流体圧シリンダとしてのエアシリンダ73により構成され、スライダ50に下向きに設けられている。このエアシリンダ73のピストンロッド74の延出端部である下端部に、一対のロードセル80を介して一対の保持ヘッド70が取り付けられている。一対のロードセル80の下側に取り付けられた連結部材82の下端部に支持部材としての支持板84が水平に取り付けられ、支持板84に一対の保持ヘッド70が印刷方向に平行な方向に並んで設けられており、保持ヘッド昇降装置72により一斉に昇降させられ、スクリーン20に直角な方向に移動させられる。一対の保持ヘッド70の昇降の案内は、支持板84に鉛直に立設された一対の被案内部材としてのガイドロッド(図示省略)がスライダ50に設けられた一対の案内部材としてのガイドブロック(図示省略)に鉛直方向に相対移動可能に嵌合されることにより行われる。
【0015】
保持ヘッド昇降装置72を構成するエアシリンダ73は複動シリンダであり、2つのエア室はそれぞれ、電磁弁装置たる電磁方向切換弁86の切換えにより、正圧ポンプ等のエア源88に連通させられる状態と、大気に解放される状態と、いずれにも連通させられない状態とに制御される。また、エアシリンダ73の下側のエア室と電磁方向切換弁86との間には、流量制御弁たる比例電磁流量調整弁89が設けられ、下側のエア室に供給されるエアの流量が制御され、保持ヘッド70の上昇速度が制御される。
【0016】
一対の保持ヘッド70はそれぞれ、図2に示すように、ユニット保持部材90と、ユニット選択装置92とを含む。本ユニット選択装置92はエアシリンダにより構成され、上記支持板84に下向きに設けられている。このエアシリンダのシリンダハウジング94は支持板84に固定され、ピストンロッド96は支持板84から下方へ延び出させられ、その延出端部に設けられた取付部材98にユニット保持部材90が印刷方向に平行な軸線まわりに揺動可能に取り付けられている。ユニット保持部材90は長手形状を成し、印刷方向と直交する方向に平行に設けられている。
【0017】
前記一対のスキージユニット40はそれぞれ、図2に示すように、スキージ100およびスキージ保持部材102を含む。スキージ100およびスキージ保持部材102はそれぞれ長手形状を成し、スキージ保持部材102はスキージ100を着脱可能に保持した状態でユニット保持部材90に着脱可能に取り付けられる。このスキージ100は金属製であり、薄い板状を成し、可撓性を有し、弾性変形可能である。一対のスキージユニット40の各スキージ100はそれぞれスキージ保持部材102により、長手方向が印刷方向と直交する方向に平行となるとともに、スクリーン20に直角な平面に対して下方ほど互いに離間する向きに傾斜し、対向した姿勢で保持される。なお、符号106は、スキージ100の長手方向の両側にそれぞれ配設され、スキージ保持部材102に取り付けられた掻取部材であり、スキージ100の側方のクリーム状はんだを掻き取ってスキージ100側へ戻す。図2には、スキージ100の一方の側に設けられた掻取部材106が図示されている。
【0018】
一対のスキージユニット40はそれぞれ、ユニット保持部材90がユニット選択装置92によって昇降させられることにより、ロードセル80に対する下降端位置であって、印刷に使用される使用位置と、ロードセル80に対する上昇端位置であって、印刷に使用されない非使用位置とに移動させられる。このスキージユニット40の昇降の案内は、例えば、取付部材98に鉛直方向に立設された被案内部材たる一対のガイドロッド(図示省略)が、支持板84に設けられた案内部材たる一対のガイドブロック(図示省略)に相対移動可能に嵌合されることにより行われる。一対のスキージユニット40は、それらのうちの一方が選択的に使用位置に位置させられ、クリーム状はんだの印刷に使用される。一方のスキージユニット40が使用位置へ下降させられた状態では、他方のスキージユニット40は非使用位置に位置させられ、一対の保持ヘッド70が保持ヘッド昇降装置72によって昇降させられることにより、一対のスキージユニット40が昇降させられるが、使用位置に下降させられたスキージユニット40は、そのスキージ100がスクリーン20に接触する接触位置と、スキージ100がスクリーン20から離間した離間位置とに移動させられ、非使用位置に上昇させられたスキージユニット40はスクリーン20に接触しない状態に保たれる。一対の保持ヘッド70が保持ヘッド昇降装置72による昇降の上昇端位置に位置させられる状態では、一対のスキージユニット40はいずれもスクリーン20から離間した離間位置に位置させられると考えることができる。本スクリーン印刷機においては、保持ヘッド昇降装置72がスキージ100とスクリーン20とをスクリーン20に直角な方向に相対移動させる相対移動装置の一種であり、スキージ100をスクリーン20に接触,離間させる接離装置を構成している。
【0019】
前記ロードセル80は、例えば、特許第3343284号公報に記載の荷重センサと同様に構成され、弾性変形部を有する本体と、弾性変形部に貼り付けられた複数枚のストレンゲージとを備え、図2に示すように、保持ヘッド昇降装置72のピストンロッド74と連結部材82との間に、それらの上下方向の相対移動を許容し、上下方向に力が加えられたとき、弾性変形部が弾性変形し、ストレンゲージに歪が生じるように設けられている。ストレンゲージの歪は、ブリッジ回路により電気信号に変換されるとともに、図示しない信号処理回路を経て制御装置120(図3参照)に供給される。この歪はロードセル80に加えられる負荷に対応している。ロードセル80には、後述するように、クリーム状はんだからスキージ100に加えられる負荷も加えられ、その負荷もロードセル80により検出される。ロードセル80が負荷検出装置を構成している。ロードセル80により検出される負荷に基づいて、スキージユニット40のスクリーン20に対する接触力が検出され、その接触力が常に適切な大きさとなるように保持ヘッド昇降装置72等が制御される。
【0020】
また、本スクリーン印刷機はハウジング(図示省略)を備え、前記基板保持装置12,スクリーン保持装置18およびスキージ装置38等はハウジング内に設けられている。ハウジング内の温度は、温度調節装置110(図3参照)により調節される。
【0021】
制御装置120は、図3に示すように、CPU122,ROM124,RAM126およびそれらを接続するバスを含むコンピュータ130を主体とするものであり、入出力部132にはロードセル80の検出信号およびエンコーダ133の検出信号等が入力される。エンコーダ133は、スライダ移動用モータ54等、本スクリーン印刷機の構成要素であるモータに設けられたものであり、1つを代表的に示す。入出力部132にはまた、基板搬送装置11等、種々のアクチュエータおよび温度調節装置110等が駆動回路134を介して接続されるとともに、制御回路136を介して報知装置138および表示画面140が制御される。報知装置138は、例えば、ブザーの鳴動により作業者に異常の発生を報知する装置とされる。表示画面140には文字,図形等により情報が表示され、制御回路136と共に表示装置142を構成している。また、ROM124およびRAM126には、図示を省略するメインルーチン,回路基板10にクリーム状はんだを印刷するための印刷プログラム,図6および図7にそれぞれフローチャートで示すスキージ離間速度規制制御ルーチンおよび粘度対応制御ルーチン等、種々のプログラムおよびデータが記憶させられている。これらルーチンはそれぞれ、設定時間間隔で実行される。
【0022】
一対のスキージユニット40がそれぞれ有するスキージ100は同じ種類のものであり、回路基板10へのクリーム状はんだの印刷は、それらスキージ100により交互に行われる。一対のスキージユニット40のうち、印刷時におけるスライダ50の移動方向において上流側に位置するスキージユニット40が使用位置へ下降させられるとともに、保持ヘッド昇降装置72により接触位置へ下降させられ、スクリーン20に弾性変形させられた状態で接触させられる。スキージ100がスクリーン20に接触するまでの間は、一対ずつの保持ヘッド70およびスキージユニット40の重量の全部がロードセル80に下向きに加えられ、それらの総重量が検出されるが、スキージ100がスクリーン20に接触させられた後は、2組の保持ヘッド70およびスキージユニット40の重量がスクリーン20によって受けられる状態となり、それらに基づいてロードセル80に加えられる力が、スキージユニット40とスクリーン20との接触力分、小さくなる。
【0023】
換言すれば、接触力は2組の保持ヘッド70およびスキージユニット40の総重量から実際にロードセル80に加えられる力を差し引いた大きさ、つまりスキージユニット40等の重量とロードセル80からスキージユニット40等に加えられる反力(ロードセル80に加えられる力とは逆向きの力)との和となる。本スクリーン印刷機において制御装置120は、ロードセル80の検出信号に基づいて、ロードセル80に下向きに加えられる負荷を負の値で算出し、上向きに加えられる負荷を正の値で算出するように構成されている。したがって、ロードセル80により検出される負荷は、2組の保持ヘッド70およびスキージユニット40がロードセル80に下向きの力を加える状態では負の値となり、それらの重量の全部がスクリーン20によって受けられる状態では0となり、その状態から更にスキージユニット40が下降させられてスクリーン20を押し、ロードセル80に上向きの力が加えられる状態では正の値となって、スキージ100が上記総重量に加えてスクリーン20を押す押付力を表し、図4に示すように、2組の保持ヘッド70およびスキージユニット40の重量(正の値)に算出された押付力を加えることにより接触力が取得される。スキージ100がスクリーン20に接触しない状態では、2組のスキージユニット40および保持ヘッド70の重量の全部がロードセル80に加えられ、負荷は負の値で算出され、その絶対値は2組のスキージユニット40および保持ヘッド70の総重量と等しくなる。この総重量は、予め取得され、RAM126に記憶させられている。スキージユニット40が離間位置に位置させられている状態においてロードセル80に加えられる負荷を算出し、上記総重量としてRAM126に記憶させてもよい。
【0024】
スキージ100のスクリーン20への接触力が適切な大きさに制御されれば、スキージユニット40がスクリーン20に沿って移動させられ、クリーム状はんだを貫通孔22に押し込み、プリント基板10に印刷する。スキージ100はスクリーン20に直角な平面に対して傾斜させられ、スクリーン20に対して移動方向へ前傾する姿勢で傾斜させられているため、スクリーン20に沿って移動させられるとき、図5(a)に示すように、スクリーン20との間にクリーム状はんだを挟み、スクリーン20上に、スキージ100の移動方向と直交する方向に帯状に載せられたクリーム状はんだをローリングさせつつ移動させ、クリーム状はんだはロール形状を成すようになる。このはんだロール150の外周側の部分が貫通孔22に押し込まれ、回路基板10に塗布される。
【0025】
スキージユニット40がスクリーン20に平行な方向において印刷終了位置へ移動させられ、クリーム状はんだの印刷が終了したならば、スキージ100はスクリーン20およびはんだロール150から離間させられ、他方のスキージ100と交替させられる。この際、まず、スキージユニット40が上昇させられ、図5(b)に示すように、スキージ100がスクリーン20から僅かに離間させられ、スクリーン20への接触が解消された状態で停止させられる。そして、スキージヘッド40がスクリーン20に平行でかつスキージ100がはんだロール150から離間する向き(図5(c)において矢印で示す方向)に後退させられ、図5(c)に示すように、はんだロール150から離間させられる。
【0026】
スキージ100が上昇させられるとき、その速度は規制され、低速でスクリーン20から離間させられる。また、スキージ100のはんだロール150からの離間速度(後退速度)は、スキージ100がはんだロール150から離間し、その状態から更に設定距離後退させられるまで低く規制され、その後、加速されて高速で予め設定された後退端位置まで後退させられる。この後退端位置は、次に印刷に使用されるスキージ100が下降させられてスクリーン20に接触させられるとき、はんだロール150に対して適切な相対位置となる位置である。
【0027】
後退開始時には、図5(b)に示すように、クリーム状はんだの一部がスキージ100の先端部に付着しており、スキージ100が後退させられるとき、はんだロール150から引き出される。この引き出し量が多ければ、スキージ100がクリーム状はんだから離間した後、重力に基づいて倒れ、図5(c)に二点鎖線で示すように、はんだロール150との間に空気を封じ込める状態となる。
【0028】
このクリーム状はんだの引出し量の多少は、スキージ100のクリーム状はんだからの離間速度によって変わる。クリーム状はんだは、貫通孔22への転移性(充填性)と、スクリーン20に付着させられたクリーム状はんだの貫通孔22からの抜け性との両方を満たすためにチキソ剤が加えられ、チキソ性が高められ、変形速度が速いほど粘度が低くなり、変形しなくなれば急速に粘度が回復し、高くなるようにされている。そのため、スキージ100のはんだロール150からの離間速度であって、後退速度が速いほど、クリーム状はんだの粘度が低くなってスキージ100に付いて来易く、はんだロール150からの引出し量が多くなる。したがって、スキージ100のはんだロール150からの後退速度を低く規制し、クリーム状はんだの粘度の低下を抑制してスキージ100に付いて来難くし、はんだロール150からの引出しを抑制する。この後退速度は、クリーム状はんだがスキージ100についてきて重力に基づいて倒れ、はんだロール150との間に空気を封じ込める状態となることがない範囲の速度に規制される。
【0029】
また、クリーム状はんだは、変形速度が遅い状態では弾性領域に止まり、スキージ100が離間すれば、はんだロール150から引き出された部分が元の状態に戻るのに対し、変形速度が速ければ粘性領域へ移行し、スキージ100が離間しても、はんだロール150から引き出された部分が元に戻らない性質を有する。クリーム状はんだのこれらの性状に鑑み、スキージ100のはんだロール150からの後退速度は、50mm/sec以下であればよく、35mm/sec以下とすることが望ましく、15mm/sec以下、8mm/sec以下とすることがさらに望ましい。従来、スキージを上昇させてはんだロールから離間させる場合についてであるが、離間速度は90mm/sec程度とされ、はんだロールから引き出されたクリーム状はんだの倒れによって空気の封じ込めが生じていたのに対し、後退速度の規制によりクリーム状はんだの引き出しが抑制され、はんだロールとの間への空気の封じ込めが回避される。また、スキージ100をスクリーン20から離間させるべく上昇させるとき、スキージ100はクリーム状はんだから離間させられないが、上方へ引っ張り、はんだロールを変形させることとなるため、スキージ100の上昇速度も離間速度と同様に規制され、クリーム状はんだの粘度を低下させないようにされる。
【0030】
このように、はんだロール150の変形を抑制する観点からは離間速度が低いのが良いのであるが、作業能率の点からは高いことが望ましく、0.5mm/sec以上、1mm/sec以上、3mm/sec以上とされることが望ましい。ただし、離間速度を低くすれば、はんだロール150の変形量が少なくなり、スキージ100をはんだロール150から低速で離間させるために必要なスキージ100の移動距離も小さくて済むようになるため、離間速度の低下がそのまま作業能率の低下につながるわけではない。
因みに、粘度200±50パスカル・秒のクリーム状はんだを使用し、1mm/secから50mm/secの離間速度で実験をしたが、この範囲であればはんだロールに空気が巻き込まれることがなく、また、印刷に要する時間が過大になることもないことを確認できた。
【0031】
図6に示すスキージ離間速度規制制御ルーチンに基づいて、スキージ100のはんだロール150からの離間を説明する。
本ルーチンは、1枚の回路基板10へのクリーム状はんだの印刷が終了する毎に行われ、基板保持装置12が下降させられ、回路基板10がスクリーン20から離間させられた後に実行される。印刷が終了した回路基板10のスクリーン印刷機からの搬出および次にクリーム状はんだが印刷される回路基板10のスクリーン印刷機への搬入と並行して行われるのである。まず、ステップ1a(以後、S1aと略記する。他のステップについても同じ。)が実行され、スキージユニット40の上昇が開始させられ、スキージ100のスクリーン20からの離間が開始させられる。スキージユニット40の上昇時には、エアシリンダ73の下側のエア室にエアが供給され、上側のエア室は大気に解放されるのであるが、上昇速度を規制速度とし、低く制御する指令が出力され、比例電磁流量調整弁89への供給電流の制御によりエアの流量が制御され、スキージ100の上昇速度が予め設定された速度に規制される。次いでS1bが実行され、ロードセル80の検出信号が読み込まれ、ロードセル80に加えられる負荷が算出され、検出される。続いてS1cが実行され、スキージ100が上昇位置へ上昇したか否かが判定される。この判定は、エアシリンダ73へエアが設定時間、供給されたか否かにより行われる。上昇位置は、スキージ100が、はんだロール150に接触しつつスクリーン20から僅かに離れた状態となる位置であり、スキージユニット40が上昇位置へ上昇するために要するエアシリンダ73へのエアの供給時間は予め設定され、スキージユニット40は規制された低い速度で、スキージ100がはんだロール150には接触しているが、スクリーン20から僅かに離れた状態となる位置へ上昇させられる。S1cの判定結果は、スキージ100が上昇位置へ上昇するまでNOであり、S1b,S1cが繰返し実行される。
【0032】
設定時間が経過すれば、S1cの判定結果がYESになってS1dが実行され、スキージユニット40の上昇が停止させられる。電磁方向切換弁86がエアシリンダ73の2つのエア室をエア源88および大気の両方から遮断する状態に切り換えられるのである。そして、S2が実行され、スキージユニット40が規制された速度で後退させられ、はんだロール150から離間させられる。この後退速度は予め設定されており、その設定速度でのスライダ50の移動指令が出力され、スライダ移動用モータ54が制御される。次いでS3が実行され、ロードセル80の検出信号が読み込まれ、ロードセル80に加えられる負荷が算出され、負荷が検出された後、S4が実行され、スキージ100がはんだロール150から離間したか否かが判定される。この判定は、S3において算出されたロードセル80に加えられる負荷の絶対値が2組の保持ヘッド70およびスキージユニット40の総重量と等しくなったか否かにより行われる。
【0033】
スキージ100が後退させられ、はんだロール150から離間させられるとき、クリーム状はんだの一部がスキージ100に付着している間、クリーム状はんだは、その粘度により、スキージ100に後退方向とは逆方向の力を加える。スキージ100は傾斜して設けられており、スキージ100の後退時にも、クリーム状はんだがスキージ100に加える力に基づいて、ロードセル80に下向きの負荷が加えられ、ロードセル80には、図8のグラフに示すように、スキージ100がはんだロール150から離間するまで、2組の保持ヘッド70およびスキージユニット40の総重量と、クリーム状はんだによる引張力とが加えられることとなる。
【0034】
このクリーム状はんだによる負荷は、図8のグラフに示すように、スキージ100が後退させられ、はんだロール150から離れるに従って小さくなり、離間が完了すれば、ロードセル80に作用しなくなるため、ロードセル80に加えられる負荷が上記総重量と等しくなれば、スキージ100がはんだロール150から離間したことがわかる。
【0035】
スキージ100がはんだロール150から離間するまでS3,S4が繰り返し実行され、離間すれば、S4の判定結果がYESになってS5が実行され、スキージ100が更に小距離、はんだロール150から離間する向きに予め設定された距離、後退させられたか否かの判定が行われる。この距離は予め設定され、スキージ100のはんだロール150からの離間後、スライダ移動用モータ54のエンコーダの検出値に基づいてS5の判定が行われる。後退距離がエンコーダの値により設定され、エンコーダの検出値が設定値分、変化したか否かによりS5の判定が行われるのである。スキージ100が設定距離後退させられれば、S5の判定結果がYESになってS6が実行され、スキージユニット40の高速での後退指令が出力される。この指令に基づいてスライダ移動用モータ54が制御されてスライダ50の移動速度が加速され、S7においてスキージ100が後退端位置へ到達したか否かの判定が行われる。この判定は、スライダ移動用モータ54のエンコーダの検出値に基づいて行われる。スキージ100が上記設定距離後退させられた位置から後退端位置までの距離は予め設定され、その距離に相当するエンコーダの値分、エンコーダの検出値が変化したか否かがS7において判定されるのであり、スキージ100が後退端位置へ到達すれば、S7の判定結果はYESになってS8が実行され、スキージユニット40が停止させられる。
【0036】
このようにスキージ100が速度を規制されつつ上昇,後退させられてはんだロール150から離間させられることにより、クリーム状はんだははんだロール150から引き出され難く、引き出されても少量である。そのため、スキージ100がクリーム状はんだから離間すれば、その弾性力により、図5(c)に実線で示すように崩れのないロール形状に戻り、次の印刷が支障なく行われる。
【0037】
また、クリーム状はんだがはんだロール150から引き出され難くなることにより、はんだロール150の外周面から突起が長く延び出して形成されることがなく、はんだロール150が滑らかに形成され、貫通孔22への充填が良好に行われる。さらに、スキージ先端部へのクリーム状はんだの付着が抑制され、スキージ100に付着したクリーム状はんだがスキージ100と共に移動させられてスクリーン20の貫通孔形成領域外の部分に落下し、スキージ100のスクリーン20への接触時にスキージ100に付着してスキージ先端部を汚し、クリーム状はんだの貫通孔22への押込みを妨げ、印刷不良の原因となることが回避される。
また、空気の封じ込めによるはんだロール150の形状の崩れ,クリーム状はんだのスキージ100への付着およびスクリーン20上への落下が抑制されることにより、スクリーン20やスキージ100の清掃が容易になる。
【0038】
スキージユニット40は後退端位置へ移動させられた後、非使用位置へ上昇させられるとともに、他方のスキージユニット40が使用位置へ下降させられ、次の回路基板10へのクリーム状はんだの印刷時にスクリーン20に接触させられ、クリーム状はんだを逆向きに押送して回路基板10に印刷する。この他方のスキージユニット40のスキージ100についても、印刷終了後、一方のスキージ100との交替時に同様に規制された速度で上昇,後退させられ、はんだロール150からのクリーム状はんだの引き出しを抑制しつつ離間させられる。なお、スキージユニット40が後退端位置へ後退させられた後、非使用位置へ上昇させるとともに、1対のスキージユニット40を離間位置へ上昇させ、その状態から、次に印刷に使用されるスキージユニット40を使用位置へ下降させるとともに、スクリーン20に接触させてもよい。
【0039】
このようにスキージ100がはんだロール150から離間させられるとき、はんだロール150は、その一部がスキージ100に付着し、スキージ100を介してロードセル80に下向きの力(以下、引下ろし力と称することがある)を加える。この引下ろし力の大きさはクリーム状はんだの粘度が大きいほど大きく、ロードセル80により検出される負荷の絶対値が大きくなる。クリーム状はんだの粘度は、ロードセル80に加えられる負荷と対応しているのであるが、精度良くは対応せず、負荷に基づいて粘度そのものを正確に数値で求めることは困難である。しかし、負荷と粘度とは対応しており、負荷に基づいて粘度対応量を取得することができる。
【0040】
前述のように、所定の接触力を得るためにスキージ100がスクリーン20に押し付けられ、印刷終了後、上昇させられるとき、図8に示すように、押付力が減少し、0になった後、2組の保持ヘッド70およびスキージユニット40の重量がロードセル80を引き下ろす向きに作用するとともに、スキージ100に付着したクリーム状はんだによっても引き下ろし力が作用し、それらの和がロードセル80に下向きに作用する負荷となる。この負荷はスキージ100がスクリーン20から離れる上昇開始時に最大となり、その最大負荷は、2組の保持ヘッド70およびスキージユニット40の総重量と、はんだロール150からスキージ100に加えられる負荷の最大負荷との和である。エアシリンダ73は、下側のエア室にエアが供給され、スキージ100を上昇させるように作動させられるが、エア供給開始後、その作動力が、ロードセル80に下向きに作用する負荷の最大負荷に打ち勝つまでスキージ100はスクリーン20に接触している。上記クリーム状はんだがロードセル80に作用させる引き下ろし力は、スキージ100がスクリーン20から離間した後、上昇位置へ上昇させられてから後退させられ、はんだロール150から離間させられるに従って減少し、スキージ100がはんだロール150から離間すれば、ロードセル80には2組の保持ヘッド70およびスキージユニット40の総重量のみが作用する状態となり、その後、負荷は一定の値となる。
【0041】
上記ロードセル80に対する下向きの負荷の最大値と、2組の保持ヘッド70およびスキージユニット40の総重量との差が、クリーム状はんだからスキージ100に加えられ、クリーム状はんだがロードセル80に下向きに作用させる最大の負荷(引き下ろし力)の大きさであり、この引き下ろし力の大きさがクリーム状はんだの粘度に対応し、図8に二点鎖線で示すように、粘度が高いほど大きくなる。そこで、印刷が1回行われ、スキージ100がスクリーン20およびはんだロール150から離間させられる毎に、負荷検出値の絶対値の最大値が取得され、RAM126に記憶させられる。この最大値には、2組の保持ヘッド70およびスキージユニット40の総重量が含まれるが、一定であり、本実施例においては、クリーム状はんだの粘度に対応する負荷として扱われる。例えば、前記スキージ離間速度規制制御ルーチンのS1bにおいて負荷が検出される際に、その検出された負荷の絶対値を、RAM126に設けられた負荷最大値メモリに記憶させられている負荷最大値(前回のS1b実行時までの最大値)と比較し、その負荷最大値より大きいのであれば、その負荷最大値に替えて、検出された負荷の絶対値が負荷最大値として記憶され、負荷最大値が更新される。但し、クリーム状はんだのスクリーン20上への投入後、1回目に行われる印刷時に取得された負荷検出値の絶対値の最大値、あるいは投入後複数回の印刷時に取得された負荷検出値の絶対値の最大値の平均値が基準値として記憶され、次にクリーム状はんだが新たにスクリーン20上へ投入されるまで残される。この負荷最大値の取得は、ロードセル80に上向きに加えられる負荷が負荷最大値として取得される可能性を排除するために、ロードセル80に下向きに加えられる負荷についてのみ、すなわち制御装置120において負の値で算出される負荷についてのみ行われてもよい。
【0042】
クリーム状はんだは、印刷最適粘度を中間粘度とする印刷許容粘度範囲のうちの粘度であって、印刷最適粘度よりやや軟らかい粘度に調整されてスクリーン20上に載せられるが、印刷が繰り返し行われるに従って、水分等液体の気化等により粘度が高くなる。したがって、印刷開始時にスキージ100をはんだロール150から離間させる際の負荷を検出し、負荷検出値の絶対値の最大値あるいは最大値の平均値を取得して基準値とし、現に取得される負荷検出値の絶対値の最大値を基準値と比較することにより、粘度対応量の変化量を取得し、粘度が印刷許容粘度範囲内にあるか否かを判定し、その範囲から外れている場合には粘度を調整することにより、クリーム状はんだの粘度を印刷に適した大きさに保って回路基板10への印刷を行うことができる。
【0043】
図7に示す粘度対応制御ルーチンに基づいてクリーム状はんだの粘度に対応するスクリーン印刷機の制御の変更を説明する。本ルーチンは、1回、印刷が行われる毎に実行され、例えば、印刷終了後、例えば、印刷を終えたスキージユニット40が非使用位置へ上昇させられた後に行われる。まず、S21においてクリーム状はんだの粘度に対応する負荷、すなわちスキージ離間速度規制制御ルーチンのS1bの実行により取得されて記憶させられている負荷検出値の絶対値の最大値が読み込まれる。最前の印刷時に取得された粘度対応負荷が読み込まれるのである。
【0044】
次いでS22が実行され、粘度対応負荷が許容範囲内にあるか否かが判定される。この判定は、S21において読み込まれた粘度対応負荷と、クリーム状はんだの投入後、印刷開始時に取得された粘度対応負荷である基準値との差の絶対値、すなわち粘度の変化量が設定値以下であるか否かが判定される。この設定値は正の値であり、例えば、粘度と印刷品質との関係に基づいて予め設定されている。例えば、回路基板10上に設定された複数の印刷剤印刷箇所のうち、印刷が行われなかったり、印刷量が不足する等の印刷不良が発生する率と粘度との関係が調べられ、印刷不良発生率が許容範囲に収まる粘度の範囲が求められ、それに基づいて設定値が設定される。上記差の絶対値が設定値以下であれば、クリーム状はんだの粘度の変化は小さく、適正な大きさにあり、S22の判定結果はYESになってルーチンの実行は終了する。この場合、クリーム状はんだの粘度は調整が必要なほど変化しておらず、そのまま次の印刷に使用されるのである。
【0045】
それに対し、粘度対応負荷と基準値との差の絶対値が設定値より大きいのであれば、S22の判定結果がNOになってS23が実行され、粘度対応負荷の基準値に対する外れ量が大きいか否かが判定される。この判定は、上記差の絶対値が別の設定値を超えているか否かにより行われる。この別の設定値は、S22の判定に使用される設定値より大きい正の値であって、本スクリーン印刷機では、粘度変化の、スクリーン印刷機内の温度調節により粘度を適正な大きさに調整することができる限界を規定する値に設定されている。粘度対応負荷の変化量の設定範囲からの外れ量が小さく、限界設定値以下であれば、S23の判定結果はNOになってS24が実行され、クリーム状はんだの粘度が調整される。本スクリーン印刷機においては、スクリーン印刷機内の温度を調節することによりクリーム状はんだの粘度が調整される。スクリーン印刷機内の温度が高いほどクリーム状はんだの粘度は低くなる。そのため、温度調節装置110が制御され、温度が調節されるのであるが、S21において読み込まれた粘度対応負荷が基準値より大きいのであれば、スクリーン印刷機内の温度が高くされ、基準値より小さいのであれば、スクリーン印刷機内の温度が低くされる。温度調節量は、粘度対応負荷と基準値との差の絶対値に応じて設定され、その差の絶対値が大きいほど大きくされ、段階的に、あるいは連続して設定される。また、粘度対応負荷の変化量の外れ量が大きく、限界設定値を超えるのであれば、S23の判定結果がYESになってS25が実行され、クリーム状はんだの交換が指示される。例えば、表示装置142の表示画面140にクリーム状はんだの交換指示が表示される。
【0046】
以上の説明から明らかなように、本スクリーン印刷機においては、スキージ保持装置移動装置44が後退離間装置を構成し、保持ヘッド昇降装置72が接触解消装置を構成している。また、制御装置120のS2を実行する部分が後退速度規制部を構成し、S6を実行する部分と共に離間速度規制部を構成している。制御装置120のS1cを実行する部分が接触解消検出部を構成し、S1aを実行する部分が接触解消速度規制部を構成し、比例電磁流量調整弁89が接触解消装置の接触解消速度規制装置を構成している。また、制御装置120のS4を実行する部分が離間検出部を構成し、S5を実行する部分が離間距離制御部を構成している。さらに、保持ヘッド昇降装置72およびスキージ保持装置移動装置44が離間用相対移動装置を構成し、S1bにおいて粘度対応負荷の絶対値の最大値を取得する部分が粘度対応量取得部ないし粘度対応量取得装置を構成し、S24を実行する部分が粘度対応制御変更部を構成し、S25を実行する部分が印刷剤交換指示部を構成している。
【0047】
スキージをスクリーンから離間する向きに上昇させることにより、はんだロールから離間させてもよい。その実施例を図9および図10に基づいて説明する。本スクリーン印刷機の機械的な構成は、前記実施例のスクリーン印刷機と同じであり、説明を省略し、スキージ100のはんだロール150からの離間時における速度の規制を説明する。
【0048】
本スクリーン印刷機においては、スキージ100をスクリーン20から離間する向きに上昇させることにより、はんだロール150から離間させるため、印刷終了後、図10(a)に示す状態からスキージ100が上昇させられるとき、スクリーン20から離れても、クリーム状はんだの一部がスキージ100の先端部に付着しており、クリーム状はんだからスキージ100を介してロードセル80に下向きの力が作用する。そのため、図10(b)に示すように、スキージ100の上昇に伴ってクリーム状はんだの一部がスキージ100に付いて上がり、はんだロール150から引き出されれば、その後、図10(c)に二点鎖線で示すように、重力に基づいてスキージ100から離れ、スクリーン20上に倒れてはんだロール150との間に空気を封じ込める状態となる。そのため、スキージ100の上昇速度が規制され、はんだロール150からの離間速度が規制される。
【0049】
本スクリーン印刷機においても、スキージ100がスクリーン20から離れる向きに上昇させられ、はんだロール150から離間させられるとき、前記実施例のスクリーン印刷機について図8に基づいて説明したのと同様に下向きの力が作用し、スキージ100がはんだロール150から離間するまで、クリーム状はんだの粘度に基づく引下ろし力が作用する。そのため、スキージ100の上昇速度は、スキージ100の上昇制御が開始された後、スキージ100がはんだロール150から離間するとともに、離間後、設定距離上昇するまでの間は規制され、遅く、その後は高速で離間位置まで上昇させられるように制御される。
【0050】
以下、図9に示すスキージ離間速度規制制御ルーチンに基づいて、スキージ100のはんだロール150からの離間を説明する。
スキージ離間速度規制制御ルーチンのS31において、スキージユニット40の上昇指令が出力されるとともに、上昇速度を規制速度とし、低く制御する指令が出力される。これら上昇開始指令および速度規制指令に基づいて、電磁方向切換弁86がエアシリンダ73の下側のエア室にエアを供給し、上側のエア室を大気に開放する位置に切り換えられるとともに、比例電磁流量調整弁89への供給電流の制御により、規制速度が得られるようにエアシリンダ73の下側のエア室へのエアの供給流量が調整される。
【0051】
次いでS32が実行され、ロードセル80の検出信号に基づいて、ロードセル80に加えられる負荷が算出された後、S33が実行され、スキージ100がはんだロール150から離間したか否かの判定が行われる。この判定は、前記スキージ離間速度規制制御ルーチンのS4と同様に行われる。スキージ100がはんだロール150から離間し、ロードセル80に加えられる負荷の絶対値が2組の保持ヘッド70およびスキージユニット40の総重量と等しくなるまで、S33の判定結果はNOとなり、S32,S33が繰り返し実行される。
【0052】
スキージ100がはんだロール150から離間すれば、S33の判定結果がYESになってS34が実行され、離間後、スキージ100が設定距離、上昇したか否かが判定される。この判定は、例えば、スキージ100がはんだロール150から離間した後、設定時間が経過したか否かにより行われる。スキージ100が設定距離上昇するまで、S34が繰り返し実行される。
【0053】
スキージ100がはんだロール150からの離間後、設定距離上昇すれば、S34の判定結果がYESになってS35が実行され、スキージユニット40の高速での上昇指令が出力され、それにより比例電磁流量調整弁89が制御され、エアシリンダ73の下側のエア室へのエアの供給流量が増加させられる。次いでS36が実行され、スキージユニット40が離間位置へ上昇させられたか否かが判定される。この判定は、例えば、エアシリンダ73のピストンがストロークエンドまで上昇させられたか否かにより行われる。ピストンのストロークエンドへの到達は、例えば、エアシリンダのシリンダハウジングに設けられたセンサ(図示省略)により検出される。S36の判定結果はスキージユニット40が離間位置へ上昇するまでNOであり、S36が繰り返し実行される。スキージユニット40が離間位置へ上昇すれば、S36の判定結果がYESになってS37が実行され、スキージユニット40の上昇が停止させられる。その後、このスキージユニット40が非使用位置へ上昇させられる一方、他方のスキージユニット40が使用位置へ下降させられ、次の回路基板10に対するクリーム状はんだの印刷に使用される。
【0054】
このようにスキージ100がはんだロール150から離間させられるとき、クリーム状はんだの一部がスキージ100に付着してスキージ100に下向きの力を作用させる。そのため、ロードセル80に加えられる負荷に基づいて、S32において前記実施例のスクリーン印刷機におけると同様にクリーム状はんだの粘度対応負荷(負荷検出値の絶対値の最大値)が取得され、粘度対応負荷が許容範囲から外れていれば、スクリーン印刷機内の温度が調整され、調整不可能であれば、クリーム状はんだの交換が指示される。
【0055】
以上の説明から明らかなように、本スクリーン印刷機においては、保持ヘッド昇降装置72が上昇離間装置,離間用相対移動装置を構成し、制御装置120のS31を実行する部分が上昇速度規制部を構成し、S35を実行する部分と共に離間速度規制部を構成している。また、制御装置120のS33を実行する部分が離間検出部を構成し、S34を実行する部分が離間距離制御部を構成している。
【0056】
保持ヘッド昇降装置は、電動モータを駆動源とする装置としてもよい。その実施例であるスクリーン印刷機を図11に示す。
本スクリーン印刷機の保持ヘッド昇降装置200は、駆動源たるヘッド昇降用モータ202と、送りねじたるボールねじ204およびナット206を含む送りねじ機構208とを含む。ヘッド昇降用モータ202は、例えば、エンコーダ付サーボモータにより構成されている。ヘッド昇降用モータ202およびボールねじ204はスライダ50に設けられ、ナット206が設けられた支持部材210によりロードセル80を介してスキージ保持装置42およびスキージユニット40が支持され、上下方向の任意の位置へ任意の速度で移動させられる。その他の構成は上記実施例と同じであり、同じ作用を為す構成要素には同一の符号を付して対応関係を示し、説明を省略する。
【0057】
本スクリーン印刷機においては、印刷終了後、スキージ100がはんだロール150から離間させられるとき、例えば、図1ないし図8に示す実施例のスクリーン印刷機と同様に、スキージ100がスクリーン20から離れる向きに上昇させられ、スクリーン20から離れて僅かに上昇した状態から後退させられてはんだロール150から離間させられる。このスキージ100のスクリーン20からの離間のための上昇速度が、ヘッド昇降用モータ202の制御により低く規制される。なお、図9および図10に示す実施例のスクリーン印刷機と同様に、上昇によりスキージ100をスクリーン20から離間させるとともに、はんだロール150から離間させることもできる。その際、ヘッド昇降用モータ202が制御され、スキージ100はエアシリンダ73によって上昇させられる場合と同様に、はんだロール150から離間し、更に設定距離上昇するまで上昇速度が低く規制される。ヘッド昇降用モータ202はサーボモータにより構成されており、速度制御が精度良く行われる。
【0058】
負荷検出装置は、スキージの弾性変形量の検出に基づいてクリーム状はんだ(はんだロール150)がスキージに加える負荷を検出する装置としてもよい。その一例を図12に基づいて説明する。
本スクリーン印刷機においては、前記ロードセル80は設けられず、スキージ保持装置42は、エアシリンダ73のピストンロッド74の下端部に直接保持される。スキージ保持部材102には、図12(a)に示すように、スキージ100の背面に対して一対のロードセル250が取り付けられている(図12(a)には、一方のロードセル250のみが図示されている)。一対のロードセル250は、スキージ100の長手方向に距離を隔てて設けられ、各検出子252が常時、スキージ100に接触した状態となるように設けられている。スキージ100がスクリーン20から離間させられた状態、スクリーン20に接触させられた状態、クリーム状はんだの一部が付着した状態のいずれの状態においても検出子252がスキージ100に接触した状態に保たれるように設けられているのである。
【0059】
回路基板10にクリーム状はんだを印刷すべく、一対のスキージユニット40の一方が使用位置に位置させられ、スクリーン20に接触させられるとき、スキージ100は、図12(a)に二点鎖線で示すように弾性変形させられ、湾曲させられた状態でスクリーン20に接触させられ、スキージ100の湾曲により検出子252が押される。そのため、ロードセル250により検出される負荷は、スキージ100の弾性変形量に対応し、スキージ100のスクリーン20に対する接触力に1対1に対応し、制御装置120はロードセル250の検出信号に基づいて接触力を算出し、スキージ100が適切な接触力でスクリーン20に接触させられるように、スキージ100の下降を制御する。制御装置は、ロードセル250により検出される負荷を、例えば、スキージ100に力が作用しない状態では0とし、印刷時におけるスキージ100の湾曲により検出子252が押される際には正の値で算出し、スキージ100が印刷時の湾曲とは逆向きに弾性変形させられ、検出子252がスキージ100に追従して延び出させられる際には負の値で算出する。
【0060】
印刷終了後、スキージユニット40は、例えば、図1〜図8に示す実施例のスクリーン印刷機と同様に、規制された速度で上昇位置へ上昇させられた後、規制された速度で後退させられ、はんだロール150から離間させられる。この際、スキージ100はスクリーン20への押付けにより湾曲させられた状態が解消されるとともに、クリーム状はんだの一部のスキージ100への付着およびクリーム状はんだの粘度によってスキージ100に加えられる負荷により、スキージ100は図12(b)に二点鎖線で示すように、印刷時とは逆向きに弾性変形させられ、ロードセル250の検出子252はスキージ100に追従して延び出させられ、ロードセル250の負荷検出値が減少(絶対値は増大)する。スキージ100がはんだロール150から離間し始めれば、クリーム状はんだの付着による弾性変形が減少し、ロードセル250の負荷検出値が増大(絶対値は減少)する。この負荷検出値の変化に基づいて粘度対応負荷を取得し、その変化量を取得してスクリーン印刷機の粘度対応制御を行うことができる。また、ロードセル250の負荷検出値に基づいて、スキージ100のはんだロール150からの離間を検出することができる。
【0061】
負荷検出装置は、スキージに貼り付けられた複数枚のストレンゲージを含む装置としてもよい。
例えば、図13に一部を示すスクリーン印刷機におけるように、複数枚のストレンゲージ280が、スキージ100の背面であって、印刷時の移動方向において上流側の面に貼り付けられている(図13にはストレンゲージ280が1枚、図示されている)。これらストレンゲージの歪は、ブリッジ回路により電気信号に変換されるとともに、図示しない信号処理回路を経て制御装置に供給される。印刷時にスキージ100がスクリーン20に接触させられるとき、図13(a)に二点鎖線で示すように、スキージ100が弾性変形させられれば、ストレンゲージ280に歪が生ずる。この歪はスキージ100の弾性変形量、すなわちスクリーン20に対する接触力に対応しており、ストレンゲージ280の歪に基づいて得られる信号により、スキージ100のスクリーン20への接触力が検出され、適切な接触力が得られるようにスキージ100の下降が制御される。
【0062】
印刷終了後、スキージユニット40が規制された速度で上昇位置へ上昇させられ、スクリーン20から離間させられた状態から規制された速度で後退させられ、はんだロール150から離間させられるとき、クリーム状はんだのスキージ100への付着およびクリーム状はんだの粘度によってスキージ100に加えられる負荷により、図13(b)に二点鎖線で示すように、スキージ100が印刷時とは逆向きに弾性変形させられ、それと共にストレンゲージ280にも印刷時とは逆の歪が生じる。この歪はクリーム状はんだの粘度に基づくものであり、その歪により得られる負荷に基づいてクリーム状はんだの粘度対応負荷が取得され、その変化量が取得されてスクリーン印刷機の粘度対応制御が行われる。また、ストレンゲージ280の負荷検出値に基づいて、スキージ100のはんだロール150からの離間を検出することができる。
【0063】
スキージの上昇のみによって、スキージをスクリーンから離間させるとともに、はんだロールから離間させる場合にも、ロードセルあるいはストレンゲージを含む負荷検出装置により、スキージの弾性変形量を検出し、印刷剤ロールがスキージに加える負荷を検出するようにしてもよい。
【0064】
また、スキージをスクリーンから離間する向きに上昇させる上昇離間装置を流体圧シリンダを駆動源とする装置とする場合、スキージの印刷剤ロールからの離間速度は、流体圧シリンダへの供給流体の圧力を制御することにより規制するようにしてもよい。例えば、流体圧源と流体圧シリンダの下側の流体圧室との間に比例電磁圧力制御弁を設け、スキージの印刷剤ロールからの離間時に流体圧シリンダに供給する流体の圧力を徐々に増大させ、スキージのスクリーンからの離間が検出されたならば、供給流体の圧力を離間開始時の圧力に保持する。スキージのスクリーンからの離間は、例えば、離間制御(上昇制御)の開始後、設定時間が経過したことにより検出され、あるいは離間制御開始後、前記実施例と同様のロードセル80により検出される負荷の絶対値の最大値が取得されたこと(例えば、負荷最大値が更新されなくなることによりわかる)により検出される。スキージは、スキージ総重量および印刷剤ロールがスキージに加える負荷に基づいて流体圧シリンダに下向きに作用する圧力と、スキージを上昇させる圧力との差圧により規制された速度で上昇させられる。
【0065】
さらに、スキージの印刷剤ロールからの離間検出後、設定距離、スキージを印刷剤ロールから離間させる際に離間速度を低く規制することなく、加速して離間させてもよい。
【0066】
また、スキージ昇降装置がエアシリンダ等の流体圧シリンダを駆動源とする装置とされるスクリーン印刷機において、スキージを小距離上昇させてスクリーンから離間させた後、後退させて印刷剤ロールから離間させる場合、上昇速度を規制することは不可欠ではなく、その規制を行わない場合には、接触解消速度規制部を省略し、流体圧シリンダへの流体の供給流量を制御する制御弁装置を省略することができる。
【0067】
また、スキージはゴムあるいはその類似物製としてもよい。
【0068】
さらに、本発明は、スキージを1つ有するスクリーン印刷機、クリーム状はんだ以外の印刷剤であって、同様の性質を有する印刷剤、例えば、接着剤や銀ペーストを被印刷材に印刷するスクリーン印刷機およびスクリーン印刷方法に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】請求可能発明の一実施例であるスクリーン印刷機であって、請求可能発明に係るスクリーン印刷方法が実施されるスクリーン印刷機を概略的に示す正面図である。
【図2】上記スクリーン印刷機の保持ヘッドおよびスキージユニット等を示す正面図(一部断面)である。
【図3】上記スクリーン印刷機を制御する制御装置を概念的に示すブロック図である。
【図4】上記スクリーン印刷機においてスキージがスクリーンに接触させられる際の接触力の変化を示すグラフである。
【図5】上記スクリーン印刷機におけるスキージのスクリーンおよびはんだロールからの離間を説明する図である。
【図6】上記制御装置の主体を成すコンピュータのROMに記憶させられたスキージ離間速度規制制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図7】上記コンピュータのROMに記憶させられた粘度対応制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】上記スクリーン印刷機においてスキージがスクリーンおよびはんだロールから離間させられる際にロードセルに作用する力の変化を示すグラフである。
【図9】別の実施例であるスクリーン印刷機を制御する制御装置の主体を成すコンピュータのROMに記憶させられたスキージ離間速度規制制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図10】図9に示すスキージ離間速度規制制御ルーチンが行われるスクリーン印刷機におけるスキージのスクリーンおよびはんだロールからの離間を説明する図である。
【図11】別の実施例であるスクリーン印刷機の保持ヘッド昇降装置を保持ヘッドおよびスキージユニットと共に示す正面図(一部断面)である。
【図12】さらに別の実施例であるスクリーン印刷機のスキージユニットおよびその周辺を示す正面図(一部断面)である。
【図13】さらに別の実施例であるスクリーン印刷機のスキージユニットおよびその周辺を示す正面図(一部断面)である。
【符号の説明】
【0070】
10:回路基板 20:スクリーン 22:貫通孔 44:スキージ保持装置移動装置 72:保持ヘッド昇降装置 80:ロードセル 100:スキージ 110:温度調節装置 120:制御装置 150:はんだロール 200:保持ヘッド昇降装置 250:ロードセル 280:ストレンゲージ
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン印刷機およびスクリーン印刷方法に関するものであり、特に、スキージの印刷剤からの離間に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スクリーン印刷機においては、スクリーン上に載せられた印刷剤がスキージにより押送され、スクリーンの貫通孔を通して被印刷材に印刷される。例えば、下記の特許文献1に記載のスクリーン印刷機は、スキージを1対備え、それらスキージのうちの一方がスクリーンに接触させられ、スクリーン上に載せられたクリーム状はんだを押しつつスクリーンに沿って移動させ、貫通孔に押し込み、回路基板に印刷する。印刷後、スキージは上昇させられ、スクリーンから離間させられるとともにクリーム状はんだから離間させられてスキージが交替させられるのであるが、その際、スキージの先端部にクリーム状はんだが付着し、印刷回数を重ねるとスキージから垂れ下がるようになる。そのため、特許文献1に記載のスクリーン印刷機においては、印刷が所定回数行われる毎に、スキージに付着したクリーム状はんだを除去するようにされている。スキージを上昇させ、クリーム状はんだから離間させた後、スクリーンの貫通孔形成領域外の部分であって、印刷に使用されない部分において下降させ、接触させるとともに、印刷方向とは逆方向に移動させ、付着したクリーム状はんだをスクリーンにこすりつけて除去するのである。
【特許文献1】特開平10−193565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載のスクリーン印刷機においては、印刷品質が低下する問題がある。クリーム状はんだは、スクリーン上に、スキージの移動方向と直交する方向に帯状に載せられ、スキージにより押されてスクリーン上をローリングしつつ移動させられ、貫通孔に充填される。そのため、クリーム状はんだはロール状を成し、貫通孔への押込みによりロール表面に生じた凹凸が滑らかに整えられ、貫通孔への充填に備えるのであるが、印刷終了後、スキージが上昇させられ、クリーム状はんだから離間させられる際に、はんだロールを形成しているクリーム状はんだの一部がスキージに付着してスキージにより引っ張られ、はんだロールから引き出される。この引出し部分はやがて重力に基づいて倒れ、スキージから離れるが、スクリーンの、スクリーン上に載っているはんだロールから離れた部分に落ち、はんだロールとの間に空気を封じ込める状態となる。それにより、次に印刷のためにはんだロールがスキージによって押送されるとき、封じ込められた空気がはんだロールの中に巻き込まれて、はんだロール中に空洞が形成され、はんだロールの空洞を含む部分が貫通孔に至れば、空洞分、貫通孔にクリーム状はんだが充填されず、回路基板にクリーム状はんだが印刷されず、あるいは印刷量が不足する。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、スクリーン印刷機において印刷剤ロールからの印刷剤の引出しを抑制しつつスキージを印刷剤ロールから離間させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題は、スキージによりスクリーン上を押送した場合にロール状を成す印刷剤を、スクリーンの貫通孔を通して被印刷材に印刷するスクリーン印刷機を制御する制御装置を、前記押送によりロール状となった印刷剤である印刷剤ロールからスキージを離間させる際の離間速度を、印刷剤ロールを形成している印刷剤の一部がスキージに付着して印刷剤ロールから引き出された後、重力に基づいて倒れ、印刷剤ロールとの間に空気を封じ込める状態となることがない範囲の規制速度に規制する離間速度規制部を含むものとすることにより解決される。
【発明の効果】
【0005】
印刷剤が、例えば、クリーム状はんだのように、変形させられる速度が速いほど粘度が低くなる性質を有するものである場合、スキージの印刷剤ロールからの離間速度が速いほど、離間時における印刷剤の粘度が低くなり、その一部が印刷剤ロールから引き出され易い。そのため、スキージの印刷剤ロールからの離間速度を低くすれば、印刷剤の粘度の低下が抑制され、延び難く、印刷剤ロールから引き出され難くなり、印刷剤ロールとの間に空気が封じ込められる状態となることが回避される。それにより、印刷量の不足等、印刷不良の発生が回避され、印刷が安定して行われる。
【発明の態様】
【0006】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0007】
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(2)項が請求項2に、(3)項が請求項3に、(4)項が請求項4に、(5)項が請求項5に、(8)項が請求項6に、(12)項が請求項7に、(13)項が請求項8に、それぞれ相当する。
【0008】
(1)スキージによりスクリーン上を押送した場合にロール状を成す印刷剤を、前記スクリーンの貫通孔を通して被印刷材に印刷するスクリーン印刷機であって、
そのスクリーン印刷機を制御する制御装置が、前記押送によりロール状となった印刷剤である印刷剤ロールから前記スキージを離間させる際の離間速度を、印刷剤ロールを形成している印刷剤の一部がスキージに付着して印刷剤ロールから引き出された後、重力に基づいて倒れ、印刷剤ロールとの間に空気を封じ込める状態となることがない範囲の規制速度に規制する離間速度規制部を含むスクリーン印刷機。
本項のスクリーン印刷機は、例えば、スキージを印刷剤ロールから離間させるためにスキージとスクリーンとを相対移動させる離間用相対移動装置を含むものとされる。その場合には、離間速度規制部は離間用相対移動装置の作動速度を規制することにより、印刷剤ロールからスキージを離間させる際の離間速度を規制速度に規制することとなる。
(2)前記スキージを前記スクリーンから離間する向きに上昇させることにより前記印刷剤ロールから離間させる上昇離間装置を含み、前記離間速度規制部が、その上昇離間装置による前記スキージの上昇速度を前記規制速度に規制する上昇速度規制部を含む(1)項に記載のスクリーン印刷機。
例えば、スキージが1対設けられ、交替で印刷に使用される場合、印刷を終えたスキージはスクリーンから離間させられるとともに印刷剤ロールから離間させられるのであるが、スクリーンからの離間のための上昇を利用して印刷剤ロールから離間させられる。その際、上昇速度が規制されることにより、印刷剤ロールとの間に空気が封じ込められた状態となることが回避されつつ、スキージが印刷剤ロールから離間させられる。
(3)前記スキージを前記スクリーンに平行でかつ前記印刷剤ロールから離間する向きに後退させることにより前記印刷剤ロールから離間させる後退離間装置を含み、前記離間速度規制部が、その後退離間装置による前記スキージの後退速度を前記規制速度に規制する後退速度規制部を含む(1)項に記載のスクリーン印刷機。
本項に記載のスクリーン印刷機には、スキージをスクリーンに接触させたままの状態で後退させ、印刷剤ロールから離間させる態様と、次項に記載のスクリーン印刷機におけるように、スキージのスクリーンへの接触を解消した状態で後退させる態様とが含まれる。
いずれにしても、スキージの後退速度が規制されることにより、スキージによる印刷剤の印刷剤ロールからの引出しが抑制され、空気が封じ込められる状態となることが回避されつつ、スキージが印刷剤ロールから離間させられる。
本項に記載のスクリーン印刷機は、スキージが昇降装置によって昇降させられるが、昇降装置が昇降速度の制御が行われない装置である場合に適している。
(4)前記後退離間装置による前記スキージの後退前にそのスキージの前記スクリーンへの接触を解消する接触解消装置を含む(3)項に記載のスクリーン印刷機。
スキージのスクリーンへの接触の解消により、スキージの後退時にスクリーンがスキージに抵抗を与えることがなく、後退がスムーズに行われる。この際、制御装置が接触解消速度規制部を含むものとされて、接触解消速度が規制されることが、不可欠ではないが望ましい。接触解消速度が規制されるようにすれば、スキージのスクリーンからの離間時に印刷剤がスキージにより引っ張られて粘度が低下し、スキージの後退時に印刷剤ロールから引き出され易くなることが防止される。
スキージのスクリーンへの接触を解消するためのスキージのスクリーンからの離間距離は、接触の解消に必要な最小限の距離とされることが望ましい。それにより、接触解消装置が速度制御機能を有さないものである場合、あるいは速度制御精度が比較的低いものである場合でも、スキージのスクリーンからの離間時における印刷剤の印刷剤ロールからの引出しが最小限に抑えられる。
(5)前記制御装置が、前記スキージの前記印刷剤ロールからの離間を検出する離間検出部を備え、その離間検出部による離間検出から予め設定された設定距離だけ前記スキージを離間させる離間距離制御部を含む(1)項ないし(4)項のいずれかに記載のスクリーン印刷機。
スキージの印刷剤ロールからの離間の検出により、スキージの印刷剤ロールからの離間が確実に捉えられ、スキージが印刷剤ロールから離間するまで確実に離間速度を規制することができ、印刷剤の印刷剤ロールからの引出しを回避することができる。また、スキージを速度を規制しつつ印刷剤ロールから離間させる距離を最小限に抑え、離間に要する時間の延びを抑制することができる。さらに、離間検出から設定距離だけスキージを離間させれば、スキージが印刷剤ロールから離間した状態がより確実に得られる。
(6)前記離間速度規制部が、前記スキージの前記印刷剤ロールからの離間速度を離間末期において離間初期より大きくするものである(1)項ないし(5)項のいずれかに記載のスクリーン印刷機。
離間速度の規制による離間所要時間の延びを抑制することができ、印刷サイクルタイムを節約することができる。
(7)前記スキージとして、互いに対向して配設され、交互に前記印刷剤を逆向きに押送して印刷を行う第一スキージと第二スキージとを含み、前記離間速度規制部が、少なくとも第一スキージと第二スキージとの交替時に作動する(1)項ないし(6)項のいずれかに記載のスクリーン印刷機。
第一スキージと第二スキージとは、被印刷材1枚毎に交替させられ、印刷を行う。そのため、1回、印刷が行われる毎にスキージの印刷剤ロールからの離間が行われ、空気の封じ込め状態が発生する機会が多く、スキージの印刷剤ロールからの離間速度の規制による効果を有効に享受することができる。
(8)前記スキージを前記印刷剤ロールから離間させるために前記スキージと前記スクリーンとを相対移動させる離間用相対移動装置と、
その離間用相対移動装置により前記スキージが前記印刷剤ロールから離間させられる場合に印刷剤ロールからスキージに加えられる負荷を検出する負荷検出装置と
を含み、かつ、前記制御装置が、前記負荷検出装置により検出された負荷に基づいて前記印刷剤の粘度に対応する粘度対応量を取得する粘度対応量取得部を含む(1)項ないし(7)項のいずれかに記載のスクリーン印刷機。
印刷剤は粘度を有するため、スキージが印刷剤ロールから離間する際、スキージに付着している間、スキージに離間方向とは逆向きの負荷を加える。この負荷は印刷剤の粘度が大きいほど大きくなり、負荷と粘度との間には対応関係があるが、対応精度はそれほど高くなく、粘度の絶対値を取得することは容易ではない場合が多い。しかし、粘度対応量は取得可能であり、その取得に基づいて、例えば、粘度の変化量を取得したり、変化勾配を取得したりすることは可能である。粘度に対応する粘度対応量が得られれば便利であり、本項のスクリーン印刷機によれば、スキージの印刷剤ロールからの離間を利用して粘度対応量が得られる。
負荷検出装置は、例えば、ロードセルあるいはストレンゲージを備え、それらに加えられる荷重を検出する装置としてもよく、あるいは離間用相対移動装置が電動モータを駆動源とする場合、電動モータへの供給電流を検出する装置としてもよい。印刷剤がスキージに付着して付与する抵抗に抗するため、電動モータへの供給電流は大きくされ、印刷剤の付着の有無,印刷剤の粘度に応じて供給電流の大きさが異なり、その検出に基づいてスキージに対する負荷が検出される。
(9)前記制御装置が、前記粘度対応量取得部により取得された前記粘度対応量の変化に応じて当該スクリーン印刷機の制御を変更する粘度対応制御変更部を含む(8)項に記載のスクリーン印刷機。
スクリーン印刷機の制御は、例えば、スクリーン印刷機内の温度調節,印刷時におけるスキージのスクリーンに平行な方向の移動速度,印刷終了後、回路基材をスクリーンから離間させる際の離間速度,スキージのスクリーンへの接触力,スクリーン印刷機内の湿度等、印刷パラメータを変更することにより変更される。
印刷剤の粘度は、スクリーン印刷機内の温度が高いほど低くなり、スキージの移動速度が大きいほど低くなるため、粘度が高くなった場合には、スクリーン印刷機内の温度を高くすることにより、あるいはスキージの移動速度を速くすることにより、あるいはそれらを組み合わせて行うことにより、粘度を下げることができる。
また、スキージのスクリーンへの接触力を大きくすれば、粘度が高くなっても印刷剤を貫通孔に十分に充填することができる。
さらに、印刷終了後、回路基材をスクリーンから離間させ、貫通孔に充填された印刷剤を貫通孔から抜け出させる際に、離間速度が速過ぎると、印刷剤が弾性領域から粘性領域へ移行し、一旦変形させられたものが元の形状に復帰しなくなる性質の印刷剤の場合、粘度対応量の変化に応じて離間速度を変更することにより、印刷剤が弾性領域から粘性領域へ移行しない速度で回路基材をスクリーンから離間させることができる。印刷剤の粘度が高くなった場合には、回路基材のスクリーンからの離間速度を上げる。
また、スクリーン印刷機内の湿度を高くすれば、印刷剤からの水分の気化が抑制され、粘度が高くなり過ぎることが防止される。
したがって、粘度対応量の変化に応じてスクリーン印刷機の制御を変更することにより、印刷剤の粘度変化を抑制したり、粘度変化にかかわらず印刷が適切に行われるようにしたりすることが可能である。印刷パラメータは、例えば、粘度対応量の変化量が許容範囲を超えた場合に変更される。この許容範囲を規定する許容値は、例えば、予め印刷品質と印刷剤の粘度対応量との関係を測定し、その測定結果に基づいて設定される。
(10)前記制御装置が、前記粘度対応量取得部により取得された前記粘度対応量に基づいて印刷剤を交換すべきことを指示する印刷剤交換指示部を含む(8)項または(9)項に記載のスクリーン印刷機。
例えば、粘度対応量の変化が大きく、スクリーン印刷機の制御を変更しても、印刷剤の粘度を印刷に適切した大きさに戻すことができない場合や、制御の変更により粘度を調節すれば、印刷剤の性状が変化し、印刷が適切に行われない恐れがある場合等、スクリーン印刷機の制御の変更により粘度対応量の変化に対処することができない場合に印刷剤の交換が指示され、印刷が良好に行われるようにされる。
(11)前記印刷剤としてのクリーム状はんだを、前記被印刷材としての回路基材に印刷するものである(1)項ないし(10)項のいずれかに記載のスクリーン印刷機。
回路基材には、例えば、回路基板であるプリント配線板,一方の面に電子回路部品が搭載されるとともに電気的に接合され、他方の面には電子回路部品が未装着であるプリント回路板,ベアチップが搭載され、チップ付基板を構成する基材,ボールグリッドアレイを備えた電子回路部品が搭載される基材等が含まれる。
クリーム状はんだは、スキージによる押送によりロール状を成し、スキージの離間速度が高いほど粘度が低くなる印刷剤の代表的な一例であり、クリーム状はんだが被印刷材に印刷されるスクリーン印刷機において本発明に係る効果を特に有効に享受することができる。
(12)スキージによりスクリーン上を押送した場合にロール状を成す印刷剤を、前記スクリーンの貫通孔を通して被印刷材に印刷するスクリーン印刷機であって、
前記押送によりロール状となった印刷剤である印刷剤ロールから前記スキージを離間させるために前記スキージと前記スクリーンとを相対移動させる離間用相対移動装置と、
その離間用相対移動装置により前記スキージが前記印刷剤ロールから離間させられる場合に印刷剤ロールからスキージに加えられる負荷を検出する負荷検出装置と、
その負荷検出装置により検出された負荷に基づいて前記印刷剤の粘度に対応する粘度対応量を取得する粘度対応量取得装置と
を含むスクリーン印刷機。
(9)項ないし(11)項の各々に記載の特徴は、本項のスクリーン印刷機にも適用可能である。
前記(8)項に関する説明が本項のスクリーン印刷機にも当てはまる。
(13)スキージによりスクリーン上を押送した場合にロール状を成す印刷剤を、前記スクリーンの貫通孔を通して被印刷材に印刷するスクリーン印刷方法であって、
前記押送によりロール状となった印刷剤である印刷剤ロールから前記スキージを離間させる際の離間速度を、印刷剤ロールを形成している印刷剤の一部がスキージに付着して印刷剤ロールから引き出された後、重力に基づいて倒れ、印刷剤ロールとの間に空気を封じ込める状態となることがない範囲の規制速度に規制するスクリーン印刷方法。
(2)項ないし(11)項の各々に記載の特徴は、本項のスクリーン印刷方法にも適用可能である。
前記(1)項に関する説明が本項のスクリーン印刷方法にも当てはまる。
【実施例】
【0009】
以下、請求可能発明のいくつかの実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、上記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更を施した態様で実施することができる。
【0010】
図1に一実施例としてのスクリーン印刷機を示す。本スクリーン印刷機は、図1に示すように、被印刷材たる回路基材としての回路基板10に印刷剤としてのクリーム状はんだを印刷する。本スクリーン印刷機において回路基板10は、被印刷材搬送装置としての基板搬送装置11(図3参照)により、図1において紙面に直角な方向に搬送され、スクリーン印刷機に搬入,搬出される。基板搬送装置11による基板搬送経路の途中に被印刷材保持装置としての基板保持装置12が設けられ、回路基板10を保持する。基板保持装置12は、印刷装置本体14に設けられ、例えば、支持部材により回路基板10を下方から支持する基板支持装置と、回路基板10を搬送方向に直角な両側から挟んでクランプするクランプ装置とを備え、基板保持装置昇降装置16により昇降させられ、保持した回路基板10をスクリーン保持装置18に保持されたスクリーン20に接近,離間させる。
【0011】
スクリーン20には、図2に示すように、複数の貫通孔22が形成され、矩形のスクリーン枠24(図1参照)に取り付けられている。スクリーン保持装置18は、例えば、印刷装置本体14に設けられたスクリーン支持台26(図1参照)と、スクリーン20をスクリーン支持台26に固定する固定装置(図示省略)とを備え、スクリーン20を基板保持装置12の上方において水平な姿勢で保持する。回路基板10は、基板保持装置12の上昇によりスクリーン20に接近させられ、スクリーン20の下面に接触させられ、あるいは接触可能とされ、下降によりスクリーン20から離間させられる。基板保持装置昇降装置16は、基板保持装置12とスクリーン保持装置18とをスクリーン20に直角な方向に相対移動させ、接近,離間させる相対移動装置たる接近・離間装置を構成している。
【0012】
印刷装置本体14にはまた、図1に示すように、スキージ装置38が設けられ、そのスキージユニット40により回路基板10にクリーム状はんだが印刷される。スキージユニット40は一対設けられ、スキージ保持装置42により保持される。スキージ保持装置42は、相対移動装置たるスキージ保持装置移動装置44により、基板保持装置12およびスクリーン保持装置18に対してスクリーン20に平行な方向に移動させられる。スキージ保持装置移動装置44は、可動部材としてのスライダ50と、スライダ移動装置52とを含む。スライダ移動装置52は、駆動源たるスライダ移動用モータ54(図3参照)と、ボールねじ56およびナット58を含む送りねじ装置60(図1参照)とを含み、スライダ50を案内部材としてのガイドレール(図示省略)に案内させつつ、スクリーン20に平行な方向であって、水平面内において基板搬送方向と直交する方向において任意の位置に移動させる。スライダ移動用モータ54は、例えば、エンコーダ付サーボモータにより構成される。サーボモータは、回転角度の正確な制御が可能な電動モータである。サーボモータに代えてステップモータを用いてもよく、リニアモータを用いてもよい。
【0013】
本スキージ保持装置42は、図2に示すように、スライダ50に設けられ、スライダ50が移動させられることにより、スキージ保持装置42に保持されたスキージユニット40がスクリーン保持装置18に保持されたスクリーン20に沿って移動し、基板保持装置12に保持された回路基板10にクリーム状はんだを印刷する。基板保持装置12に保持された回路基板10の被印刷面たる上面に平行な平面である水平面内において基板搬送方向と直交する方向が印刷方向(図1および図2においては左右方向)である。
【0014】
本スキージ保持装置42は、図2に示すように、一対の保持ヘッド70および保持ヘッド昇降装置72を含む。保持ヘッド昇降装置72は、流体圧アクチュエータの一種である流体圧シリンダとしてのエアシリンダ73により構成され、スライダ50に下向きに設けられている。このエアシリンダ73のピストンロッド74の延出端部である下端部に、一対のロードセル80を介して一対の保持ヘッド70が取り付けられている。一対のロードセル80の下側に取り付けられた連結部材82の下端部に支持部材としての支持板84が水平に取り付けられ、支持板84に一対の保持ヘッド70が印刷方向に平行な方向に並んで設けられており、保持ヘッド昇降装置72により一斉に昇降させられ、スクリーン20に直角な方向に移動させられる。一対の保持ヘッド70の昇降の案内は、支持板84に鉛直に立設された一対の被案内部材としてのガイドロッド(図示省略)がスライダ50に設けられた一対の案内部材としてのガイドブロック(図示省略)に鉛直方向に相対移動可能に嵌合されることにより行われる。
【0015】
保持ヘッド昇降装置72を構成するエアシリンダ73は複動シリンダであり、2つのエア室はそれぞれ、電磁弁装置たる電磁方向切換弁86の切換えにより、正圧ポンプ等のエア源88に連通させられる状態と、大気に解放される状態と、いずれにも連通させられない状態とに制御される。また、エアシリンダ73の下側のエア室と電磁方向切換弁86との間には、流量制御弁たる比例電磁流量調整弁89が設けられ、下側のエア室に供給されるエアの流量が制御され、保持ヘッド70の上昇速度が制御される。
【0016】
一対の保持ヘッド70はそれぞれ、図2に示すように、ユニット保持部材90と、ユニット選択装置92とを含む。本ユニット選択装置92はエアシリンダにより構成され、上記支持板84に下向きに設けられている。このエアシリンダのシリンダハウジング94は支持板84に固定され、ピストンロッド96は支持板84から下方へ延び出させられ、その延出端部に設けられた取付部材98にユニット保持部材90が印刷方向に平行な軸線まわりに揺動可能に取り付けられている。ユニット保持部材90は長手形状を成し、印刷方向と直交する方向に平行に設けられている。
【0017】
前記一対のスキージユニット40はそれぞれ、図2に示すように、スキージ100およびスキージ保持部材102を含む。スキージ100およびスキージ保持部材102はそれぞれ長手形状を成し、スキージ保持部材102はスキージ100を着脱可能に保持した状態でユニット保持部材90に着脱可能に取り付けられる。このスキージ100は金属製であり、薄い板状を成し、可撓性を有し、弾性変形可能である。一対のスキージユニット40の各スキージ100はそれぞれスキージ保持部材102により、長手方向が印刷方向と直交する方向に平行となるとともに、スクリーン20に直角な平面に対して下方ほど互いに離間する向きに傾斜し、対向した姿勢で保持される。なお、符号106は、スキージ100の長手方向の両側にそれぞれ配設され、スキージ保持部材102に取り付けられた掻取部材であり、スキージ100の側方のクリーム状はんだを掻き取ってスキージ100側へ戻す。図2には、スキージ100の一方の側に設けられた掻取部材106が図示されている。
【0018】
一対のスキージユニット40はそれぞれ、ユニット保持部材90がユニット選択装置92によって昇降させられることにより、ロードセル80に対する下降端位置であって、印刷に使用される使用位置と、ロードセル80に対する上昇端位置であって、印刷に使用されない非使用位置とに移動させられる。このスキージユニット40の昇降の案内は、例えば、取付部材98に鉛直方向に立設された被案内部材たる一対のガイドロッド(図示省略)が、支持板84に設けられた案内部材たる一対のガイドブロック(図示省略)に相対移動可能に嵌合されることにより行われる。一対のスキージユニット40は、それらのうちの一方が選択的に使用位置に位置させられ、クリーム状はんだの印刷に使用される。一方のスキージユニット40が使用位置へ下降させられた状態では、他方のスキージユニット40は非使用位置に位置させられ、一対の保持ヘッド70が保持ヘッド昇降装置72によって昇降させられることにより、一対のスキージユニット40が昇降させられるが、使用位置に下降させられたスキージユニット40は、そのスキージ100がスクリーン20に接触する接触位置と、スキージ100がスクリーン20から離間した離間位置とに移動させられ、非使用位置に上昇させられたスキージユニット40はスクリーン20に接触しない状態に保たれる。一対の保持ヘッド70が保持ヘッド昇降装置72による昇降の上昇端位置に位置させられる状態では、一対のスキージユニット40はいずれもスクリーン20から離間した離間位置に位置させられると考えることができる。本スクリーン印刷機においては、保持ヘッド昇降装置72がスキージ100とスクリーン20とをスクリーン20に直角な方向に相対移動させる相対移動装置の一種であり、スキージ100をスクリーン20に接触,離間させる接離装置を構成している。
【0019】
前記ロードセル80は、例えば、特許第3343284号公報に記載の荷重センサと同様に構成され、弾性変形部を有する本体と、弾性変形部に貼り付けられた複数枚のストレンゲージとを備え、図2に示すように、保持ヘッド昇降装置72のピストンロッド74と連結部材82との間に、それらの上下方向の相対移動を許容し、上下方向に力が加えられたとき、弾性変形部が弾性変形し、ストレンゲージに歪が生じるように設けられている。ストレンゲージの歪は、ブリッジ回路により電気信号に変換されるとともに、図示しない信号処理回路を経て制御装置120(図3参照)に供給される。この歪はロードセル80に加えられる負荷に対応している。ロードセル80には、後述するように、クリーム状はんだからスキージ100に加えられる負荷も加えられ、その負荷もロードセル80により検出される。ロードセル80が負荷検出装置を構成している。ロードセル80により検出される負荷に基づいて、スキージユニット40のスクリーン20に対する接触力が検出され、その接触力が常に適切な大きさとなるように保持ヘッド昇降装置72等が制御される。
【0020】
また、本スクリーン印刷機はハウジング(図示省略)を備え、前記基板保持装置12,スクリーン保持装置18およびスキージ装置38等はハウジング内に設けられている。ハウジング内の温度は、温度調節装置110(図3参照)により調節される。
【0021】
制御装置120は、図3に示すように、CPU122,ROM124,RAM126およびそれらを接続するバスを含むコンピュータ130を主体とするものであり、入出力部132にはロードセル80の検出信号およびエンコーダ133の検出信号等が入力される。エンコーダ133は、スライダ移動用モータ54等、本スクリーン印刷機の構成要素であるモータに設けられたものであり、1つを代表的に示す。入出力部132にはまた、基板搬送装置11等、種々のアクチュエータおよび温度調節装置110等が駆動回路134を介して接続されるとともに、制御回路136を介して報知装置138および表示画面140が制御される。報知装置138は、例えば、ブザーの鳴動により作業者に異常の発生を報知する装置とされる。表示画面140には文字,図形等により情報が表示され、制御回路136と共に表示装置142を構成している。また、ROM124およびRAM126には、図示を省略するメインルーチン,回路基板10にクリーム状はんだを印刷するための印刷プログラム,図6および図7にそれぞれフローチャートで示すスキージ離間速度規制制御ルーチンおよび粘度対応制御ルーチン等、種々のプログラムおよびデータが記憶させられている。これらルーチンはそれぞれ、設定時間間隔で実行される。
【0022】
一対のスキージユニット40がそれぞれ有するスキージ100は同じ種類のものであり、回路基板10へのクリーム状はんだの印刷は、それらスキージ100により交互に行われる。一対のスキージユニット40のうち、印刷時におけるスライダ50の移動方向において上流側に位置するスキージユニット40が使用位置へ下降させられるとともに、保持ヘッド昇降装置72により接触位置へ下降させられ、スクリーン20に弾性変形させられた状態で接触させられる。スキージ100がスクリーン20に接触するまでの間は、一対ずつの保持ヘッド70およびスキージユニット40の重量の全部がロードセル80に下向きに加えられ、それらの総重量が検出されるが、スキージ100がスクリーン20に接触させられた後は、2組の保持ヘッド70およびスキージユニット40の重量がスクリーン20によって受けられる状態となり、それらに基づいてロードセル80に加えられる力が、スキージユニット40とスクリーン20との接触力分、小さくなる。
【0023】
換言すれば、接触力は2組の保持ヘッド70およびスキージユニット40の総重量から実際にロードセル80に加えられる力を差し引いた大きさ、つまりスキージユニット40等の重量とロードセル80からスキージユニット40等に加えられる反力(ロードセル80に加えられる力とは逆向きの力)との和となる。本スクリーン印刷機において制御装置120は、ロードセル80の検出信号に基づいて、ロードセル80に下向きに加えられる負荷を負の値で算出し、上向きに加えられる負荷を正の値で算出するように構成されている。したがって、ロードセル80により検出される負荷は、2組の保持ヘッド70およびスキージユニット40がロードセル80に下向きの力を加える状態では負の値となり、それらの重量の全部がスクリーン20によって受けられる状態では0となり、その状態から更にスキージユニット40が下降させられてスクリーン20を押し、ロードセル80に上向きの力が加えられる状態では正の値となって、スキージ100が上記総重量に加えてスクリーン20を押す押付力を表し、図4に示すように、2組の保持ヘッド70およびスキージユニット40の重量(正の値)に算出された押付力を加えることにより接触力が取得される。スキージ100がスクリーン20に接触しない状態では、2組のスキージユニット40および保持ヘッド70の重量の全部がロードセル80に加えられ、負荷は負の値で算出され、その絶対値は2組のスキージユニット40および保持ヘッド70の総重量と等しくなる。この総重量は、予め取得され、RAM126に記憶させられている。スキージユニット40が離間位置に位置させられている状態においてロードセル80に加えられる負荷を算出し、上記総重量としてRAM126に記憶させてもよい。
【0024】
スキージ100のスクリーン20への接触力が適切な大きさに制御されれば、スキージユニット40がスクリーン20に沿って移動させられ、クリーム状はんだを貫通孔22に押し込み、プリント基板10に印刷する。スキージ100はスクリーン20に直角な平面に対して傾斜させられ、スクリーン20に対して移動方向へ前傾する姿勢で傾斜させられているため、スクリーン20に沿って移動させられるとき、図5(a)に示すように、スクリーン20との間にクリーム状はんだを挟み、スクリーン20上に、スキージ100の移動方向と直交する方向に帯状に載せられたクリーム状はんだをローリングさせつつ移動させ、クリーム状はんだはロール形状を成すようになる。このはんだロール150の外周側の部分が貫通孔22に押し込まれ、回路基板10に塗布される。
【0025】
スキージユニット40がスクリーン20に平行な方向において印刷終了位置へ移動させられ、クリーム状はんだの印刷が終了したならば、スキージ100はスクリーン20およびはんだロール150から離間させられ、他方のスキージ100と交替させられる。この際、まず、スキージユニット40が上昇させられ、図5(b)に示すように、スキージ100がスクリーン20から僅かに離間させられ、スクリーン20への接触が解消された状態で停止させられる。そして、スキージヘッド40がスクリーン20に平行でかつスキージ100がはんだロール150から離間する向き(図5(c)において矢印で示す方向)に後退させられ、図5(c)に示すように、はんだロール150から離間させられる。
【0026】
スキージ100が上昇させられるとき、その速度は規制され、低速でスクリーン20から離間させられる。また、スキージ100のはんだロール150からの離間速度(後退速度)は、スキージ100がはんだロール150から離間し、その状態から更に設定距離後退させられるまで低く規制され、その後、加速されて高速で予め設定された後退端位置まで後退させられる。この後退端位置は、次に印刷に使用されるスキージ100が下降させられてスクリーン20に接触させられるとき、はんだロール150に対して適切な相対位置となる位置である。
【0027】
後退開始時には、図5(b)に示すように、クリーム状はんだの一部がスキージ100の先端部に付着しており、スキージ100が後退させられるとき、はんだロール150から引き出される。この引き出し量が多ければ、スキージ100がクリーム状はんだから離間した後、重力に基づいて倒れ、図5(c)に二点鎖線で示すように、はんだロール150との間に空気を封じ込める状態となる。
【0028】
このクリーム状はんだの引出し量の多少は、スキージ100のクリーム状はんだからの離間速度によって変わる。クリーム状はんだは、貫通孔22への転移性(充填性)と、スクリーン20に付着させられたクリーム状はんだの貫通孔22からの抜け性との両方を満たすためにチキソ剤が加えられ、チキソ性が高められ、変形速度が速いほど粘度が低くなり、変形しなくなれば急速に粘度が回復し、高くなるようにされている。そのため、スキージ100のはんだロール150からの離間速度であって、後退速度が速いほど、クリーム状はんだの粘度が低くなってスキージ100に付いて来易く、はんだロール150からの引出し量が多くなる。したがって、スキージ100のはんだロール150からの後退速度を低く規制し、クリーム状はんだの粘度の低下を抑制してスキージ100に付いて来難くし、はんだロール150からの引出しを抑制する。この後退速度は、クリーム状はんだがスキージ100についてきて重力に基づいて倒れ、はんだロール150との間に空気を封じ込める状態となることがない範囲の速度に規制される。
【0029】
また、クリーム状はんだは、変形速度が遅い状態では弾性領域に止まり、スキージ100が離間すれば、はんだロール150から引き出された部分が元の状態に戻るのに対し、変形速度が速ければ粘性領域へ移行し、スキージ100が離間しても、はんだロール150から引き出された部分が元に戻らない性質を有する。クリーム状はんだのこれらの性状に鑑み、スキージ100のはんだロール150からの後退速度は、50mm/sec以下であればよく、35mm/sec以下とすることが望ましく、15mm/sec以下、8mm/sec以下とすることがさらに望ましい。従来、スキージを上昇させてはんだロールから離間させる場合についてであるが、離間速度は90mm/sec程度とされ、はんだロールから引き出されたクリーム状はんだの倒れによって空気の封じ込めが生じていたのに対し、後退速度の規制によりクリーム状はんだの引き出しが抑制され、はんだロールとの間への空気の封じ込めが回避される。また、スキージ100をスクリーン20から離間させるべく上昇させるとき、スキージ100はクリーム状はんだから離間させられないが、上方へ引っ張り、はんだロールを変形させることとなるため、スキージ100の上昇速度も離間速度と同様に規制され、クリーム状はんだの粘度を低下させないようにされる。
【0030】
このように、はんだロール150の変形を抑制する観点からは離間速度が低いのが良いのであるが、作業能率の点からは高いことが望ましく、0.5mm/sec以上、1mm/sec以上、3mm/sec以上とされることが望ましい。ただし、離間速度を低くすれば、はんだロール150の変形量が少なくなり、スキージ100をはんだロール150から低速で離間させるために必要なスキージ100の移動距離も小さくて済むようになるため、離間速度の低下がそのまま作業能率の低下につながるわけではない。
因みに、粘度200±50パスカル・秒のクリーム状はんだを使用し、1mm/secから50mm/secの離間速度で実験をしたが、この範囲であればはんだロールに空気が巻き込まれることがなく、また、印刷に要する時間が過大になることもないことを確認できた。
【0031】
図6に示すスキージ離間速度規制制御ルーチンに基づいて、スキージ100のはんだロール150からの離間を説明する。
本ルーチンは、1枚の回路基板10へのクリーム状はんだの印刷が終了する毎に行われ、基板保持装置12が下降させられ、回路基板10がスクリーン20から離間させられた後に実行される。印刷が終了した回路基板10のスクリーン印刷機からの搬出および次にクリーム状はんだが印刷される回路基板10のスクリーン印刷機への搬入と並行して行われるのである。まず、ステップ1a(以後、S1aと略記する。他のステップについても同じ。)が実行され、スキージユニット40の上昇が開始させられ、スキージ100のスクリーン20からの離間が開始させられる。スキージユニット40の上昇時には、エアシリンダ73の下側のエア室にエアが供給され、上側のエア室は大気に解放されるのであるが、上昇速度を規制速度とし、低く制御する指令が出力され、比例電磁流量調整弁89への供給電流の制御によりエアの流量が制御され、スキージ100の上昇速度が予め設定された速度に規制される。次いでS1bが実行され、ロードセル80の検出信号が読み込まれ、ロードセル80に加えられる負荷が算出され、検出される。続いてS1cが実行され、スキージ100が上昇位置へ上昇したか否かが判定される。この判定は、エアシリンダ73へエアが設定時間、供給されたか否かにより行われる。上昇位置は、スキージ100が、はんだロール150に接触しつつスクリーン20から僅かに離れた状態となる位置であり、スキージユニット40が上昇位置へ上昇するために要するエアシリンダ73へのエアの供給時間は予め設定され、スキージユニット40は規制された低い速度で、スキージ100がはんだロール150には接触しているが、スクリーン20から僅かに離れた状態となる位置へ上昇させられる。S1cの判定結果は、スキージ100が上昇位置へ上昇するまでNOであり、S1b,S1cが繰返し実行される。
【0032】
設定時間が経過すれば、S1cの判定結果がYESになってS1dが実行され、スキージユニット40の上昇が停止させられる。電磁方向切換弁86がエアシリンダ73の2つのエア室をエア源88および大気の両方から遮断する状態に切り換えられるのである。そして、S2が実行され、スキージユニット40が規制された速度で後退させられ、はんだロール150から離間させられる。この後退速度は予め設定されており、その設定速度でのスライダ50の移動指令が出力され、スライダ移動用モータ54が制御される。次いでS3が実行され、ロードセル80の検出信号が読み込まれ、ロードセル80に加えられる負荷が算出され、負荷が検出された後、S4が実行され、スキージ100がはんだロール150から離間したか否かが判定される。この判定は、S3において算出されたロードセル80に加えられる負荷の絶対値が2組の保持ヘッド70およびスキージユニット40の総重量と等しくなったか否かにより行われる。
【0033】
スキージ100が後退させられ、はんだロール150から離間させられるとき、クリーム状はんだの一部がスキージ100に付着している間、クリーム状はんだは、その粘度により、スキージ100に後退方向とは逆方向の力を加える。スキージ100は傾斜して設けられており、スキージ100の後退時にも、クリーム状はんだがスキージ100に加える力に基づいて、ロードセル80に下向きの負荷が加えられ、ロードセル80には、図8のグラフに示すように、スキージ100がはんだロール150から離間するまで、2組の保持ヘッド70およびスキージユニット40の総重量と、クリーム状はんだによる引張力とが加えられることとなる。
【0034】
このクリーム状はんだによる負荷は、図8のグラフに示すように、スキージ100が後退させられ、はんだロール150から離れるに従って小さくなり、離間が完了すれば、ロードセル80に作用しなくなるため、ロードセル80に加えられる負荷が上記総重量と等しくなれば、スキージ100がはんだロール150から離間したことがわかる。
【0035】
スキージ100がはんだロール150から離間するまでS3,S4が繰り返し実行され、離間すれば、S4の判定結果がYESになってS5が実行され、スキージ100が更に小距離、はんだロール150から離間する向きに予め設定された距離、後退させられたか否かの判定が行われる。この距離は予め設定され、スキージ100のはんだロール150からの離間後、スライダ移動用モータ54のエンコーダの検出値に基づいてS5の判定が行われる。後退距離がエンコーダの値により設定され、エンコーダの検出値が設定値分、変化したか否かによりS5の判定が行われるのである。スキージ100が設定距離後退させられれば、S5の判定結果がYESになってS6が実行され、スキージユニット40の高速での後退指令が出力される。この指令に基づいてスライダ移動用モータ54が制御されてスライダ50の移動速度が加速され、S7においてスキージ100が後退端位置へ到達したか否かの判定が行われる。この判定は、スライダ移動用モータ54のエンコーダの検出値に基づいて行われる。スキージ100が上記設定距離後退させられた位置から後退端位置までの距離は予め設定され、その距離に相当するエンコーダの値分、エンコーダの検出値が変化したか否かがS7において判定されるのであり、スキージ100が後退端位置へ到達すれば、S7の判定結果はYESになってS8が実行され、スキージユニット40が停止させられる。
【0036】
このようにスキージ100が速度を規制されつつ上昇,後退させられてはんだロール150から離間させられることにより、クリーム状はんだははんだロール150から引き出され難く、引き出されても少量である。そのため、スキージ100がクリーム状はんだから離間すれば、その弾性力により、図5(c)に実線で示すように崩れのないロール形状に戻り、次の印刷が支障なく行われる。
【0037】
また、クリーム状はんだがはんだロール150から引き出され難くなることにより、はんだロール150の外周面から突起が長く延び出して形成されることがなく、はんだロール150が滑らかに形成され、貫通孔22への充填が良好に行われる。さらに、スキージ先端部へのクリーム状はんだの付着が抑制され、スキージ100に付着したクリーム状はんだがスキージ100と共に移動させられてスクリーン20の貫通孔形成領域外の部分に落下し、スキージ100のスクリーン20への接触時にスキージ100に付着してスキージ先端部を汚し、クリーム状はんだの貫通孔22への押込みを妨げ、印刷不良の原因となることが回避される。
また、空気の封じ込めによるはんだロール150の形状の崩れ,クリーム状はんだのスキージ100への付着およびスクリーン20上への落下が抑制されることにより、スクリーン20やスキージ100の清掃が容易になる。
【0038】
スキージユニット40は後退端位置へ移動させられた後、非使用位置へ上昇させられるとともに、他方のスキージユニット40が使用位置へ下降させられ、次の回路基板10へのクリーム状はんだの印刷時にスクリーン20に接触させられ、クリーム状はんだを逆向きに押送して回路基板10に印刷する。この他方のスキージユニット40のスキージ100についても、印刷終了後、一方のスキージ100との交替時に同様に規制された速度で上昇,後退させられ、はんだロール150からのクリーム状はんだの引き出しを抑制しつつ離間させられる。なお、スキージユニット40が後退端位置へ後退させられた後、非使用位置へ上昇させるとともに、1対のスキージユニット40を離間位置へ上昇させ、その状態から、次に印刷に使用されるスキージユニット40を使用位置へ下降させるとともに、スクリーン20に接触させてもよい。
【0039】
このようにスキージ100がはんだロール150から離間させられるとき、はんだロール150は、その一部がスキージ100に付着し、スキージ100を介してロードセル80に下向きの力(以下、引下ろし力と称することがある)を加える。この引下ろし力の大きさはクリーム状はんだの粘度が大きいほど大きく、ロードセル80により検出される負荷の絶対値が大きくなる。クリーム状はんだの粘度は、ロードセル80に加えられる負荷と対応しているのであるが、精度良くは対応せず、負荷に基づいて粘度そのものを正確に数値で求めることは困難である。しかし、負荷と粘度とは対応しており、負荷に基づいて粘度対応量を取得することができる。
【0040】
前述のように、所定の接触力を得るためにスキージ100がスクリーン20に押し付けられ、印刷終了後、上昇させられるとき、図8に示すように、押付力が減少し、0になった後、2組の保持ヘッド70およびスキージユニット40の重量がロードセル80を引き下ろす向きに作用するとともに、スキージ100に付着したクリーム状はんだによっても引き下ろし力が作用し、それらの和がロードセル80に下向きに作用する負荷となる。この負荷はスキージ100がスクリーン20から離れる上昇開始時に最大となり、その最大負荷は、2組の保持ヘッド70およびスキージユニット40の総重量と、はんだロール150からスキージ100に加えられる負荷の最大負荷との和である。エアシリンダ73は、下側のエア室にエアが供給され、スキージ100を上昇させるように作動させられるが、エア供給開始後、その作動力が、ロードセル80に下向きに作用する負荷の最大負荷に打ち勝つまでスキージ100はスクリーン20に接触している。上記クリーム状はんだがロードセル80に作用させる引き下ろし力は、スキージ100がスクリーン20から離間した後、上昇位置へ上昇させられてから後退させられ、はんだロール150から離間させられるに従って減少し、スキージ100がはんだロール150から離間すれば、ロードセル80には2組の保持ヘッド70およびスキージユニット40の総重量のみが作用する状態となり、その後、負荷は一定の値となる。
【0041】
上記ロードセル80に対する下向きの負荷の最大値と、2組の保持ヘッド70およびスキージユニット40の総重量との差が、クリーム状はんだからスキージ100に加えられ、クリーム状はんだがロードセル80に下向きに作用させる最大の負荷(引き下ろし力)の大きさであり、この引き下ろし力の大きさがクリーム状はんだの粘度に対応し、図8に二点鎖線で示すように、粘度が高いほど大きくなる。そこで、印刷が1回行われ、スキージ100がスクリーン20およびはんだロール150から離間させられる毎に、負荷検出値の絶対値の最大値が取得され、RAM126に記憶させられる。この最大値には、2組の保持ヘッド70およびスキージユニット40の総重量が含まれるが、一定であり、本実施例においては、クリーム状はんだの粘度に対応する負荷として扱われる。例えば、前記スキージ離間速度規制制御ルーチンのS1bにおいて負荷が検出される際に、その検出された負荷の絶対値を、RAM126に設けられた負荷最大値メモリに記憶させられている負荷最大値(前回のS1b実行時までの最大値)と比較し、その負荷最大値より大きいのであれば、その負荷最大値に替えて、検出された負荷の絶対値が負荷最大値として記憶され、負荷最大値が更新される。但し、クリーム状はんだのスクリーン20上への投入後、1回目に行われる印刷時に取得された負荷検出値の絶対値の最大値、あるいは投入後複数回の印刷時に取得された負荷検出値の絶対値の最大値の平均値が基準値として記憶され、次にクリーム状はんだが新たにスクリーン20上へ投入されるまで残される。この負荷最大値の取得は、ロードセル80に上向きに加えられる負荷が負荷最大値として取得される可能性を排除するために、ロードセル80に下向きに加えられる負荷についてのみ、すなわち制御装置120において負の値で算出される負荷についてのみ行われてもよい。
【0042】
クリーム状はんだは、印刷最適粘度を中間粘度とする印刷許容粘度範囲のうちの粘度であって、印刷最適粘度よりやや軟らかい粘度に調整されてスクリーン20上に載せられるが、印刷が繰り返し行われるに従って、水分等液体の気化等により粘度が高くなる。したがって、印刷開始時にスキージ100をはんだロール150から離間させる際の負荷を検出し、負荷検出値の絶対値の最大値あるいは最大値の平均値を取得して基準値とし、現に取得される負荷検出値の絶対値の最大値を基準値と比較することにより、粘度対応量の変化量を取得し、粘度が印刷許容粘度範囲内にあるか否かを判定し、その範囲から外れている場合には粘度を調整することにより、クリーム状はんだの粘度を印刷に適した大きさに保って回路基板10への印刷を行うことができる。
【0043】
図7に示す粘度対応制御ルーチンに基づいてクリーム状はんだの粘度に対応するスクリーン印刷機の制御の変更を説明する。本ルーチンは、1回、印刷が行われる毎に実行され、例えば、印刷終了後、例えば、印刷を終えたスキージユニット40が非使用位置へ上昇させられた後に行われる。まず、S21においてクリーム状はんだの粘度に対応する負荷、すなわちスキージ離間速度規制制御ルーチンのS1bの実行により取得されて記憶させられている負荷検出値の絶対値の最大値が読み込まれる。最前の印刷時に取得された粘度対応負荷が読み込まれるのである。
【0044】
次いでS22が実行され、粘度対応負荷が許容範囲内にあるか否かが判定される。この判定は、S21において読み込まれた粘度対応負荷と、クリーム状はんだの投入後、印刷開始時に取得された粘度対応負荷である基準値との差の絶対値、すなわち粘度の変化量が設定値以下であるか否かが判定される。この設定値は正の値であり、例えば、粘度と印刷品質との関係に基づいて予め設定されている。例えば、回路基板10上に設定された複数の印刷剤印刷箇所のうち、印刷が行われなかったり、印刷量が不足する等の印刷不良が発生する率と粘度との関係が調べられ、印刷不良発生率が許容範囲に収まる粘度の範囲が求められ、それに基づいて設定値が設定される。上記差の絶対値が設定値以下であれば、クリーム状はんだの粘度の変化は小さく、適正な大きさにあり、S22の判定結果はYESになってルーチンの実行は終了する。この場合、クリーム状はんだの粘度は調整が必要なほど変化しておらず、そのまま次の印刷に使用されるのである。
【0045】
それに対し、粘度対応負荷と基準値との差の絶対値が設定値より大きいのであれば、S22の判定結果がNOになってS23が実行され、粘度対応負荷の基準値に対する外れ量が大きいか否かが判定される。この判定は、上記差の絶対値が別の設定値を超えているか否かにより行われる。この別の設定値は、S22の判定に使用される設定値より大きい正の値であって、本スクリーン印刷機では、粘度変化の、スクリーン印刷機内の温度調節により粘度を適正な大きさに調整することができる限界を規定する値に設定されている。粘度対応負荷の変化量の設定範囲からの外れ量が小さく、限界設定値以下であれば、S23の判定結果はNOになってS24が実行され、クリーム状はんだの粘度が調整される。本スクリーン印刷機においては、スクリーン印刷機内の温度を調節することによりクリーム状はんだの粘度が調整される。スクリーン印刷機内の温度が高いほどクリーム状はんだの粘度は低くなる。そのため、温度調節装置110が制御され、温度が調節されるのであるが、S21において読み込まれた粘度対応負荷が基準値より大きいのであれば、スクリーン印刷機内の温度が高くされ、基準値より小さいのであれば、スクリーン印刷機内の温度が低くされる。温度調節量は、粘度対応負荷と基準値との差の絶対値に応じて設定され、その差の絶対値が大きいほど大きくされ、段階的に、あるいは連続して設定される。また、粘度対応負荷の変化量の外れ量が大きく、限界設定値を超えるのであれば、S23の判定結果がYESになってS25が実行され、クリーム状はんだの交換が指示される。例えば、表示装置142の表示画面140にクリーム状はんだの交換指示が表示される。
【0046】
以上の説明から明らかなように、本スクリーン印刷機においては、スキージ保持装置移動装置44が後退離間装置を構成し、保持ヘッド昇降装置72が接触解消装置を構成している。また、制御装置120のS2を実行する部分が後退速度規制部を構成し、S6を実行する部分と共に離間速度規制部を構成している。制御装置120のS1cを実行する部分が接触解消検出部を構成し、S1aを実行する部分が接触解消速度規制部を構成し、比例電磁流量調整弁89が接触解消装置の接触解消速度規制装置を構成している。また、制御装置120のS4を実行する部分が離間検出部を構成し、S5を実行する部分が離間距離制御部を構成している。さらに、保持ヘッド昇降装置72およびスキージ保持装置移動装置44が離間用相対移動装置を構成し、S1bにおいて粘度対応負荷の絶対値の最大値を取得する部分が粘度対応量取得部ないし粘度対応量取得装置を構成し、S24を実行する部分が粘度対応制御変更部を構成し、S25を実行する部分が印刷剤交換指示部を構成している。
【0047】
スキージをスクリーンから離間する向きに上昇させることにより、はんだロールから離間させてもよい。その実施例を図9および図10に基づいて説明する。本スクリーン印刷機の機械的な構成は、前記実施例のスクリーン印刷機と同じであり、説明を省略し、スキージ100のはんだロール150からの離間時における速度の規制を説明する。
【0048】
本スクリーン印刷機においては、スキージ100をスクリーン20から離間する向きに上昇させることにより、はんだロール150から離間させるため、印刷終了後、図10(a)に示す状態からスキージ100が上昇させられるとき、スクリーン20から離れても、クリーム状はんだの一部がスキージ100の先端部に付着しており、クリーム状はんだからスキージ100を介してロードセル80に下向きの力が作用する。そのため、図10(b)に示すように、スキージ100の上昇に伴ってクリーム状はんだの一部がスキージ100に付いて上がり、はんだロール150から引き出されれば、その後、図10(c)に二点鎖線で示すように、重力に基づいてスキージ100から離れ、スクリーン20上に倒れてはんだロール150との間に空気を封じ込める状態となる。そのため、スキージ100の上昇速度が規制され、はんだロール150からの離間速度が規制される。
【0049】
本スクリーン印刷機においても、スキージ100がスクリーン20から離れる向きに上昇させられ、はんだロール150から離間させられるとき、前記実施例のスクリーン印刷機について図8に基づいて説明したのと同様に下向きの力が作用し、スキージ100がはんだロール150から離間するまで、クリーム状はんだの粘度に基づく引下ろし力が作用する。そのため、スキージ100の上昇速度は、スキージ100の上昇制御が開始された後、スキージ100がはんだロール150から離間するとともに、離間後、設定距離上昇するまでの間は規制され、遅く、その後は高速で離間位置まで上昇させられるように制御される。
【0050】
以下、図9に示すスキージ離間速度規制制御ルーチンに基づいて、スキージ100のはんだロール150からの離間を説明する。
スキージ離間速度規制制御ルーチンのS31において、スキージユニット40の上昇指令が出力されるとともに、上昇速度を規制速度とし、低く制御する指令が出力される。これら上昇開始指令および速度規制指令に基づいて、電磁方向切換弁86がエアシリンダ73の下側のエア室にエアを供給し、上側のエア室を大気に開放する位置に切り換えられるとともに、比例電磁流量調整弁89への供給電流の制御により、規制速度が得られるようにエアシリンダ73の下側のエア室へのエアの供給流量が調整される。
【0051】
次いでS32が実行され、ロードセル80の検出信号に基づいて、ロードセル80に加えられる負荷が算出された後、S33が実行され、スキージ100がはんだロール150から離間したか否かの判定が行われる。この判定は、前記スキージ離間速度規制制御ルーチンのS4と同様に行われる。スキージ100がはんだロール150から離間し、ロードセル80に加えられる負荷の絶対値が2組の保持ヘッド70およびスキージユニット40の総重量と等しくなるまで、S33の判定結果はNOとなり、S32,S33が繰り返し実行される。
【0052】
スキージ100がはんだロール150から離間すれば、S33の判定結果がYESになってS34が実行され、離間後、スキージ100が設定距離、上昇したか否かが判定される。この判定は、例えば、スキージ100がはんだロール150から離間した後、設定時間が経過したか否かにより行われる。スキージ100が設定距離上昇するまで、S34が繰り返し実行される。
【0053】
スキージ100がはんだロール150からの離間後、設定距離上昇すれば、S34の判定結果がYESになってS35が実行され、スキージユニット40の高速での上昇指令が出力され、それにより比例電磁流量調整弁89が制御され、エアシリンダ73の下側のエア室へのエアの供給流量が増加させられる。次いでS36が実行され、スキージユニット40が離間位置へ上昇させられたか否かが判定される。この判定は、例えば、エアシリンダ73のピストンがストロークエンドまで上昇させられたか否かにより行われる。ピストンのストロークエンドへの到達は、例えば、エアシリンダのシリンダハウジングに設けられたセンサ(図示省略)により検出される。S36の判定結果はスキージユニット40が離間位置へ上昇するまでNOであり、S36が繰り返し実行される。スキージユニット40が離間位置へ上昇すれば、S36の判定結果がYESになってS37が実行され、スキージユニット40の上昇が停止させられる。その後、このスキージユニット40が非使用位置へ上昇させられる一方、他方のスキージユニット40が使用位置へ下降させられ、次の回路基板10に対するクリーム状はんだの印刷に使用される。
【0054】
このようにスキージ100がはんだロール150から離間させられるとき、クリーム状はんだの一部がスキージ100に付着してスキージ100に下向きの力を作用させる。そのため、ロードセル80に加えられる負荷に基づいて、S32において前記実施例のスクリーン印刷機におけると同様にクリーム状はんだの粘度対応負荷(負荷検出値の絶対値の最大値)が取得され、粘度対応負荷が許容範囲から外れていれば、スクリーン印刷機内の温度が調整され、調整不可能であれば、クリーム状はんだの交換が指示される。
【0055】
以上の説明から明らかなように、本スクリーン印刷機においては、保持ヘッド昇降装置72が上昇離間装置,離間用相対移動装置を構成し、制御装置120のS31を実行する部分が上昇速度規制部を構成し、S35を実行する部分と共に離間速度規制部を構成している。また、制御装置120のS33を実行する部分が離間検出部を構成し、S34を実行する部分が離間距離制御部を構成している。
【0056】
保持ヘッド昇降装置は、電動モータを駆動源とする装置としてもよい。その実施例であるスクリーン印刷機を図11に示す。
本スクリーン印刷機の保持ヘッド昇降装置200は、駆動源たるヘッド昇降用モータ202と、送りねじたるボールねじ204およびナット206を含む送りねじ機構208とを含む。ヘッド昇降用モータ202は、例えば、エンコーダ付サーボモータにより構成されている。ヘッド昇降用モータ202およびボールねじ204はスライダ50に設けられ、ナット206が設けられた支持部材210によりロードセル80を介してスキージ保持装置42およびスキージユニット40が支持され、上下方向の任意の位置へ任意の速度で移動させられる。その他の構成は上記実施例と同じであり、同じ作用を為す構成要素には同一の符号を付して対応関係を示し、説明を省略する。
【0057】
本スクリーン印刷機においては、印刷終了後、スキージ100がはんだロール150から離間させられるとき、例えば、図1ないし図8に示す実施例のスクリーン印刷機と同様に、スキージ100がスクリーン20から離れる向きに上昇させられ、スクリーン20から離れて僅かに上昇した状態から後退させられてはんだロール150から離間させられる。このスキージ100のスクリーン20からの離間のための上昇速度が、ヘッド昇降用モータ202の制御により低く規制される。なお、図9および図10に示す実施例のスクリーン印刷機と同様に、上昇によりスキージ100をスクリーン20から離間させるとともに、はんだロール150から離間させることもできる。その際、ヘッド昇降用モータ202が制御され、スキージ100はエアシリンダ73によって上昇させられる場合と同様に、はんだロール150から離間し、更に設定距離上昇するまで上昇速度が低く規制される。ヘッド昇降用モータ202はサーボモータにより構成されており、速度制御が精度良く行われる。
【0058】
負荷検出装置は、スキージの弾性変形量の検出に基づいてクリーム状はんだ(はんだロール150)がスキージに加える負荷を検出する装置としてもよい。その一例を図12に基づいて説明する。
本スクリーン印刷機においては、前記ロードセル80は設けられず、スキージ保持装置42は、エアシリンダ73のピストンロッド74の下端部に直接保持される。スキージ保持部材102には、図12(a)に示すように、スキージ100の背面に対して一対のロードセル250が取り付けられている(図12(a)には、一方のロードセル250のみが図示されている)。一対のロードセル250は、スキージ100の長手方向に距離を隔てて設けられ、各検出子252が常時、スキージ100に接触した状態となるように設けられている。スキージ100がスクリーン20から離間させられた状態、スクリーン20に接触させられた状態、クリーム状はんだの一部が付着した状態のいずれの状態においても検出子252がスキージ100に接触した状態に保たれるように設けられているのである。
【0059】
回路基板10にクリーム状はんだを印刷すべく、一対のスキージユニット40の一方が使用位置に位置させられ、スクリーン20に接触させられるとき、スキージ100は、図12(a)に二点鎖線で示すように弾性変形させられ、湾曲させられた状態でスクリーン20に接触させられ、スキージ100の湾曲により検出子252が押される。そのため、ロードセル250により検出される負荷は、スキージ100の弾性変形量に対応し、スキージ100のスクリーン20に対する接触力に1対1に対応し、制御装置120はロードセル250の検出信号に基づいて接触力を算出し、スキージ100が適切な接触力でスクリーン20に接触させられるように、スキージ100の下降を制御する。制御装置は、ロードセル250により検出される負荷を、例えば、スキージ100に力が作用しない状態では0とし、印刷時におけるスキージ100の湾曲により検出子252が押される際には正の値で算出し、スキージ100が印刷時の湾曲とは逆向きに弾性変形させられ、検出子252がスキージ100に追従して延び出させられる際には負の値で算出する。
【0060】
印刷終了後、スキージユニット40は、例えば、図1〜図8に示す実施例のスクリーン印刷機と同様に、規制された速度で上昇位置へ上昇させられた後、規制された速度で後退させられ、はんだロール150から離間させられる。この際、スキージ100はスクリーン20への押付けにより湾曲させられた状態が解消されるとともに、クリーム状はんだの一部のスキージ100への付着およびクリーム状はんだの粘度によってスキージ100に加えられる負荷により、スキージ100は図12(b)に二点鎖線で示すように、印刷時とは逆向きに弾性変形させられ、ロードセル250の検出子252はスキージ100に追従して延び出させられ、ロードセル250の負荷検出値が減少(絶対値は増大)する。スキージ100がはんだロール150から離間し始めれば、クリーム状はんだの付着による弾性変形が減少し、ロードセル250の負荷検出値が増大(絶対値は減少)する。この負荷検出値の変化に基づいて粘度対応負荷を取得し、その変化量を取得してスクリーン印刷機の粘度対応制御を行うことができる。また、ロードセル250の負荷検出値に基づいて、スキージ100のはんだロール150からの離間を検出することができる。
【0061】
負荷検出装置は、スキージに貼り付けられた複数枚のストレンゲージを含む装置としてもよい。
例えば、図13に一部を示すスクリーン印刷機におけるように、複数枚のストレンゲージ280が、スキージ100の背面であって、印刷時の移動方向において上流側の面に貼り付けられている(図13にはストレンゲージ280が1枚、図示されている)。これらストレンゲージの歪は、ブリッジ回路により電気信号に変換されるとともに、図示しない信号処理回路を経て制御装置に供給される。印刷時にスキージ100がスクリーン20に接触させられるとき、図13(a)に二点鎖線で示すように、スキージ100が弾性変形させられれば、ストレンゲージ280に歪が生ずる。この歪はスキージ100の弾性変形量、すなわちスクリーン20に対する接触力に対応しており、ストレンゲージ280の歪に基づいて得られる信号により、スキージ100のスクリーン20への接触力が検出され、適切な接触力が得られるようにスキージ100の下降が制御される。
【0062】
印刷終了後、スキージユニット40が規制された速度で上昇位置へ上昇させられ、スクリーン20から離間させられた状態から規制された速度で後退させられ、はんだロール150から離間させられるとき、クリーム状はんだのスキージ100への付着およびクリーム状はんだの粘度によってスキージ100に加えられる負荷により、図13(b)に二点鎖線で示すように、スキージ100が印刷時とは逆向きに弾性変形させられ、それと共にストレンゲージ280にも印刷時とは逆の歪が生じる。この歪はクリーム状はんだの粘度に基づくものであり、その歪により得られる負荷に基づいてクリーム状はんだの粘度対応負荷が取得され、その変化量が取得されてスクリーン印刷機の粘度対応制御が行われる。また、ストレンゲージ280の負荷検出値に基づいて、スキージ100のはんだロール150からの離間を検出することができる。
【0063】
スキージの上昇のみによって、スキージをスクリーンから離間させるとともに、はんだロールから離間させる場合にも、ロードセルあるいはストレンゲージを含む負荷検出装置により、スキージの弾性変形量を検出し、印刷剤ロールがスキージに加える負荷を検出するようにしてもよい。
【0064】
また、スキージをスクリーンから離間する向きに上昇させる上昇離間装置を流体圧シリンダを駆動源とする装置とする場合、スキージの印刷剤ロールからの離間速度は、流体圧シリンダへの供給流体の圧力を制御することにより規制するようにしてもよい。例えば、流体圧源と流体圧シリンダの下側の流体圧室との間に比例電磁圧力制御弁を設け、スキージの印刷剤ロールからの離間時に流体圧シリンダに供給する流体の圧力を徐々に増大させ、スキージのスクリーンからの離間が検出されたならば、供給流体の圧力を離間開始時の圧力に保持する。スキージのスクリーンからの離間は、例えば、離間制御(上昇制御)の開始後、設定時間が経過したことにより検出され、あるいは離間制御開始後、前記実施例と同様のロードセル80により検出される負荷の絶対値の最大値が取得されたこと(例えば、負荷最大値が更新されなくなることによりわかる)により検出される。スキージは、スキージ総重量および印刷剤ロールがスキージに加える負荷に基づいて流体圧シリンダに下向きに作用する圧力と、スキージを上昇させる圧力との差圧により規制された速度で上昇させられる。
【0065】
さらに、スキージの印刷剤ロールからの離間検出後、設定距離、スキージを印刷剤ロールから離間させる際に離間速度を低く規制することなく、加速して離間させてもよい。
【0066】
また、スキージ昇降装置がエアシリンダ等の流体圧シリンダを駆動源とする装置とされるスクリーン印刷機において、スキージを小距離上昇させてスクリーンから離間させた後、後退させて印刷剤ロールから離間させる場合、上昇速度を規制することは不可欠ではなく、その規制を行わない場合には、接触解消速度規制部を省略し、流体圧シリンダへの流体の供給流量を制御する制御弁装置を省略することができる。
【0067】
また、スキージはゴムあるいはその類似物製としてもよい。
【0068】
さらに、本発明は、スキージを1つ有するスクリーン印刷機、クリーム状はんだ以外の印刷剤であって、同様の性質を有する印刷剤、例えば、接着剤や銀ペーストを被印刷材に印刷するスクリーン印刷機およびスクリーン印刷方法に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】請求可能発明の一実施例であるスクリーン印刷機であって、請求可能発明に係るスクリーン印刷方法が実施されるスクリーン印刷機を概略的に示す正面図である。
【図2】上記スクリーン印刷機の保持ヘッドおよびスキージユニット等を示す正面図(一部断面)である。
【図3】上記スクリーン印刷機を制御する制御装置を概念的に示すブロック図である。
【図4】上記スクリーン印刷機においてスキージがスクリーンに接触させられる際の接触力の変化を示すグラフである。
【図5】上記スクリーン印刷機におけるスキージのスクリーンおよびはんだロールからの離間を説明する図である。
【図6】上記制御装置の主体を成すコンピュータのROMに記憶させられたスキージ離間速度規制制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図7】上記コンピュータのROMに記憶させられた粘度対応制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】上記スクリーン印刷機においてスキージがスクリーンおよびはんだロールから離間させられる際にロードセルに作用する力の変化を示すグラフである。
【図9】別の実施例であるスクリーン印刷機を制御する制御装置の主体を成すコンピュータのROMに記憶させられたスキージ離間速度規制制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図10】図9に示すスキージ離間速度規制制御ルーチンが行われるスクリーン印刷機におけるスキージのスクリーンおよびはんだロールからの離間を説明する図である。
【図11】別の実施例であるスクリーン印刷機の保持ヘッド昇降装置を保持ヘッドおよびスキージユニットと共に示す正面図(一部断面)である。
【図12】さらに別の実施例であるスクリーン印刷機のスキージユニットおよびその周辺を示す正面図(一部断面)である。
【図13】さらに別の実施例であるスクリーン印刷機のスキージユニットおよびその周辺を示す正面図(一部断面)である。
【符号の説明】
【0070】
10:回路基板 20:スクリーン 22:貫通孔 44:スキージ保持装置移動装置 72:保持ヘッド昇降装置 80:ロードセル 100:スキージ 110:温度調節装置 120:制御装置 150:はんだロール 200:保持ヘッド昇降装置 250:ロードセル 280:ストレンゲージ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキージによりスクリーン上を押送した場合にロール状を成す印刷剤を、前記スクリーンの貫通孔を通して被印刷材に印刷するスクリーン印刷機であって、
そのスクリーン印刷機を制御する制御装置が、前記押送によりロール状となった印刷剤である印刷剤ロールから前記スキージを離間させる際の離間速度を、印刷剤ロールを形成している印刷剤の一部がスキージに付着して印刷剤ロールから引き出された後、重力に基づいて倒れ、印刷剤ロールとの間に空気を封じ込める状態となることがない範囲の規制速度に規制する離間速度規制部を含むことを特徴とするスクリーン印刷機。
【請求項2】
前記スキージを前記スクリーンから離間する向きに上昇させることにより前記印刷剤ロールから離間させる上昇離間装置を含み、前記離間速度規制部が、その上昇離間装置による前記スキージの上昇速度を前記規制速度に規制する上昇速度規制部を含む請求項1に記載のスクリーン印刷機。
【請求項3】
前記スキージを前記スクリーンに平行でかつ前記印刷剤ロールから離間する向きに後退させることにより前記印刷剤ロールから離間させる後退離間装置を含み、前記離間速度規制部が、その後退離間装置による前記スキージの後退速度を前記規制速度に規制する後退速度規制部を含む請求項1に記載のスクリーン印刷機。
【請求項4】
前記後退離間装置による前記スキージの後退前にそのスキージの前記スクリーンへの接触を解消する接触解消装置を含む請求項3に記載のスクリーン印刷機。
【請求項5】
前記制御装置が、前記スキージの前記印刷剤ロールからの離間を検出する離間検出部を備え、その離間検出部による離間検出から予め設定された設定距離だけ前記スキージを離間させる離間距離制御部を含む請求項1ないし4のいずれかに記載のスクリーン印刷機。
【請求項6】
前記スキージを前記印刷剤ロールから離間させるために前記スキージと前記スクリーンとを相対移動させる離間用相対移動装置と、
その離間用相対移動装置により前記スキージが前記印刷剤ロールから離間させられる場合に印刷剤ロールからスキージに加えられる負荷を検出する負荷検出装置と
を含み、かつ、前記制御装置が、前記負荷検出装置により検出された負荷に基づいて前記印刷剤の粘度に対応する粘度対応量を取得する粘度対応量取得部を含む請求項1ないし5のいずれかに記載のスクリーン印刷機。
【請求項7】
スキージによりスクリーン上を押送した場合にロール状を成す印刷剤を、前記スクリーンの貫通孔を通して被印刷材に印刷するスクリーン印刷機であって、
前記押送によりロール状となった印刷剤である印刷剤ロールから前記スキージを離間させるために前記スキージと前記スクリーンとを相対移動させる離間用相対移動装置と、
その離間用相対移動装置により前記スキージが前記印刷剤ロールから離間させられる場合に印刷剤ロールからスキージに加えられる負荷を検出する負荷検出装置と、
その負荷検出装置により検出された負荷に基づいて前記印刷剤の粘度に対応する粘度対応量を取得する粘度対応量取得装置と
を含むことを特徴とするスクリーン印刷機。
【請求項8】
スキージによりスクリーン上を押送した場合にロール状を成す印刷剤を、前記スクリーンの貫通孔を通して被印刷材に印刷するスクリーン印刷方法であって、
前記押送によりロール状となった印刷剤である印刷剤ロールから前記スキージを離間させる際の離間速度を、印刷剤ロールを形成している印刷剤の一部がスキージに付着して印刷剤ロールから引き出された後、重力に基づいて倒れ、印刷剤ロールとの間に空気を封じ込める状態となることがない範囲の規制速度に規制することを特徴とするスクリーン印刷方法。
【請求項1】
スキージによりスクリーン上を押送した場合にロール状を成す印刷剤を、前記スクリーンの貫通孔を通して被印刷材に印刷するスクリーン印刷機であって、
そのスクリーン印刷機を制御する制御装置が、前記押送によりロール状となった印刷剤である印刷剤ロールから前記スキージを離間させる際の離間速度を、印刷剤ロールを形成している印刷剤の一部がスキージに付着して印刷剤ロールから引き出された後、重力に基づいて倒れ、印刷剤ロールとの間に空気を封じ込める状態となることがない範囲の規制速度に規制する離間速度規制部を含むことを特徴とするスクリーン印刷機。
【請求項2】
前記スキージを前記スクリーンから離間する向きに上昇させることにより前記印刷剤ロールから離間させる上昇離間装置を含み、前記離間速度規制部が、その上昇離間装置による前記スキージの上昇速度を前記規制速度に規制する上昇速度規制部を含む請求項1に記載のスクリーン印刷機。
【請求項3】
前記スキージを前記スクリーンに平行でかつ前記印刷剤ロールから離間する向きに後退させることにより前記印刷剤ロールから離間させる後退離間装置を含み、前記離間速度規制部が、その後退離間装置による前記スキージの後退速度を前記規制速度に規制する後退速度規制部を含む請求項1に記載のスクリーン印刷機。
【請求項4】
前記後退離間装置による前記スキージの後退前にそのスキージの前記スクリーンへの接触を解消する接触解消装置を含む請求項3に記載のスクリーン印刷機。
【請求項5】
前記制御装置が、前記スキージの前記印刷剤ロールからの離間を検出する離間検出部を備え、その離間検出部による離間検出から予め設定された設定距離だけ前記スキージを離間させる離間距離制御部を含む請求項1ないし4のいずれかに記載のスクリーン印刷機。
【請求項6】
前記スキージを前記印刷剤ロールから離間させるために前記スキージと前記スクリーンとを相対移動させる離間用相対移動装置と、
その離間用相対移動装置により前記スキージが前記印刷剤ロールから離間させられる場合に印刷剤ロールからスキージに加えられる負荷を検出する負荷検出装置と
を含み、かつ、前記制御装置が、前記負荷検出装置により検出された負荷に基づいて前記印刷剤の粘度に対応する粘度対応量を取得する粘度対応量取得部を含む請求項1ないし5のいずれかに記載のスクリーン印刷機。
【請求項7】
スキージによりスクリーン上を押送した場合にロール状を成す印刷剤を、前記スクリーンの貫通孔を通して被印刷材に印刷するスクリーン印刷機であって、
前記押送によりロール状となった印刷剤である印刷剤ロールから前記スキージを離間させるために前記スキージと前記スクリーンとを相対移動させる離間用相対移動装置と、
その離間用相対移動装置により前記スキージが前記印刷剤ロールから離間させられる場合に印刷剤ロールからスキージに加えられる負荷を検出する負荷検出装置と、
その負荷検出装置により検出された負荷に基づいて前記印刷剤の粘度に対応する粘度対応量を取得する粘度対応量取得装置と
を含むことを特徴とするスクリーン印刷機。
【請求項8】
スキージによりスクリーン上を押送した場合にロール状を成す印刷剤を、前記スクリーンの貫通孔を通して被印刷材に印刷するスクリーン印刷方法であって、
前記押送によりロール状となった印刷剤である印刷剤ロールから前記スキージを離間させる際の離間速度を、印刷剤ロールを形成している印刷剤の一部がスキージに付着して印刷剤ロールから引き出された後、重力に基づいて倒れ、印刷剤ロールとの間に空気を封じ込める状態となることがない範囲の規制速度に規制することを特徴とするスクリーン印刷方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−119851(P2008−119851A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−303234(P2006−303234)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】
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