説明

スクリーン印刷版およびこれを用いたプラズマディスプレイ用部材の製造方法

【課題】スクリーン印刷版の大型化に伴う、重量化、枠体の歪みを抑制する。
【解決手段】枠体の内側に、スクリーンメッシュが配設されたスクリーン印刷用版であって、該枠体が補強繊維を樹脂で強化してなる繊維強化プラスチックを含むことを特徴とするスクリーン印刷版。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン印刷に用いられるスクリーン印刷版に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、スクリーン印刷は電子材料用途向け部材の生産手段として大きな役割を果たしている。
スクリーン印刷に用いるスクリーン印刷版は、枠体にステンレススチール金属や、ポリエステル、ナイロン等の合成繊維を編み込んだスクリーンメッシュを配設したものである(特許文献1、特許文献2参照)。ここで枠体に用いられる材料としては木材、鉄、アルミニウム、ステンレススチールなどが知られている。
【0003】
スクリーン印刷は、特にプラズマディスプレイパネル(以下、PDPと略す)部材を構成する、電極層、誘電体層、隔壁層、蛍光体層を形成する手段の多くに適用されている。
PDPは薄型化、大型化が容易であるため、今後の大型フラットパネルの主流になると言われており、近年では60インチを越える大型パネル、生産性向上のために2面以上の部材を一度に形成するいわゆる多面取り形式が行われつつある。
これに伴いスクリーン印刷においても、装置はもとより用いるスクリーン印刷版の大型化が要求される。
【特許文献1】特開平9−216330号公報
【特許文献2】特開平10−326019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スクリーン印刷版を構成する枠体の材料に、木材を用いた場合は、木くず等クリーン化対応に大きな問題がある。また、鉄、アルミニウム等を用いた場合、重量が大きくなり作業性が悪化する問題がある。
さらに、大型化する場合、強度を確保によりさらに重量が大きくなり、スクリーン印刷装置に大きな加重がかかるため、寸法精度等に大きな問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は次の構成を有する。すなわち、本発明は枠体の内側に、スクリーンメッシュが配設されたスクリーン印刷用版であって、該枠体が補強繊維を樹脂で強化してなる繊維強化プラスチックを含むことを特徴とするスクリーン印刷版を要旨とするものである。
【0006】
また本発明は、基板上に無機材料からなる層を形成するプラズマディスプレイ用部材の製造方法であって、該無機材料からなる層を前記請求項1〜3いずれかに記載のスクリーン印刷版を用いて形成することを特徴するプラズマディスプレイ用部材の製造方法を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、スクリーン印刷版の大型化の要求に対し、強度を維持し、軽量化が可能なスクリーン印刷枠を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のスクリーン印刷版は、枠体の内側に、スクリーンメッシュを配設した構造である。ここでいうスクリーンメッシュとは、ステンレススチール金属や、ポリエステル、ナイロン等の合成繊維を編み込んだものであり、その材質は使用用途により選別される。例えばパターン精度がさほど要求されない全面印刷(ベタ印刷)にはポリエステル、ナイロン等の合成繊維を編み込んだメッシュを用いることがコスト面で有利となる。また、PDPの蛍光体層印刷等の寸法精度が要求される場合は、ステンレススチール金属を編み込んだメッシュを用いる場合が多い。
【0009】
スクリーン印刷版は一般的に、図1のような枠体の内側に、前記スクリーンメッシュを貼り付け(以下、紗張りという)、その上に所望の厚みで感光性の樹脂(乳剤)を塗布、所望のパターンを有するフォトマスクを介して露光し、不要部分を現像液により溶解除去、洗浄、乾燥する工程を経て製造される。このうち紗張り工程では、スクリーン印刷をより均一に行うために、スクリーンメッシュを構成する繊維あるいは金属糸に沿って引っ張った状態、いわゆるテンションをかけた状態で、枠体に貼り付けられる。
【0010】
スクリーン印刷版を大型化する場合、印刷物の寸法・厚み精度、またスクリーン印刷版上に乗せるペースト重量によるたわみ防止を実現するために、前記テンションを、より高くする必要がある。
しかしながら、スクリーンメッシュのテンションを上げた場合、スクリーン印刷版の内側へ働く応力が大きくなり、枠体が歪み、面内のテンションがばらつくため、スクリーン印刷時の寸法・厚み精度が大きく低下してしまうという問題が生じる。
【0011】
このような問題を回避するため、枠体の材質変更、肉厚化構造とする処置を施す場合が多いが、この場合スクリーン印刷版が極端に重くなり、作業性が大幅に低下するばかりか、スクリーン印刷装置がスクリーン印刷版の重量に耐えきれず、印刷精度が低下するという問題が生じる。
【0012】
このような問題に対し、本発明はスクリーン印刷版の大型化に伴う、スクリーンメッシュのテンション向上に耐え、重量が軽く作業性に優れたスクリーン印刷版を提供するために、前記枠体に繊維強化プラスチックを含むことを特徴とする。
本発明によれば、3000mm以上の大型スクリーン印刷版とした場合であっても、枠体の歪み量(図2参照)を5mm以下、さらには3mm以下に抑えることができる。
【0013】
また、3000mm以上の大型スクリーン印刷版とした場合、従来アルミニウム製枠体を用いた場合、その重量は80kgを越え、作業性が極端に低下するのに対し、本発明によれば、その2/3以下に抑えることができる。
具体的には、例えば後術するプラズマディスプレイ用部材の製造方法に、本発明のスクリーン印刷版を使用する場合は、使用する基板サイズとして片方の辺の長さが900mm以上、さらには1100以上、さらには1300mm以上の場合に、本発明のスクリーン印刷版が好ましく使用される。
【0014】
本発明でいう繊維強化プラスチックとは、補強繊維に樹脂が含浸されたものである。
本発明で用いる補強繊維としては炭素繊維、ガラス繊維、ポリアラミド繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維の各種強化繊維糸が使用でき、中でも炭素繊維、ガラス繊維、ポリアラミド繊維が強度の点から好ましく使用され、さらには比重が小さく、剛性が高いという理由で炭素繊維が最も好ましく使用される。もちろん、本発明では炭素繊維とポリアラミド繊維といった異なる補強繊維を併用あるいはコスト、強度等を考慮して多層構造としてもよい。
【0015】
本発明で使用される炭素繊維糸の太さは、200〜5000デニール、好ましくは200〜4000デニール程度であることが糸の交錯による凹凸を小さくする点で好ましい。
本発明に補強繊維の形態は、マット状物、織物、組紐やフィラメントワインドで巻かれたようなストランド状態であってもよい。
また本発明の繊維強化プラスチックに用いる樹脂は特に限定されるものではなく、公知の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を使用することができる。中でも不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂などが好ましく使用される。
【0016】
本発明で強化繊維プラスチックを成型する方法としては、補強繊維ストランドに、加熱硬化型のシロップ状の樹脂を含浸させ、所定の形状をなした加熱されたダイに通し、ダイの中で樹脂含浸を促進させると同時に樹脂を硬化次いでこれを引抜く方法(引抜き成型法)、マット状あるいはストランド状の補強繊維を予め成型品の形に予備賦形してプリフォームを作製し、これを加熱された雌型にセットし、プリフォームの上に加熱硬化型のシロップ状樹脂を流し込み、加熱された雄型で型締め・加圧・硬化・脱型する方法(プレス成型法)、補強繊維に常温硬化型のシロップ状樹脂を全体に樹脂が行き渡るように塗布し、これを空気漏れがないようにバッグフィルムで覆い、バッグフィルム内を真空ポンプで吸引しながら脱泡し、常温に放置して樹脂を硬化させる方法(真空バッグ成型法)などが挙げられる。
【0017】
本発明で用いる枠体は図4に示すような中空状とすることが、より軽量化するという目的で好ましい。この場合、枠体を構成する繊維強化プラスチック材質板の厚みは2mm以上、好ましくは3mm以上であることが好ましい。このように中空状の構造とした場合、板厚みが2mm未満の場合は十分な枠体の強度を得ることができないため好ましくない。
【0018】
次に本発明の第2の発明であるプラズマディスプレイ(以下PDPと略す)用部材の製造方法について説明する。
本発明でいうPDP用部材とは、基板上に無機材料からなる層が形成されたものいう。ここでいう無機材料からなる層とは、電極層、誘電体層、隔壁層、蛍光体層、反射層などを少なくとも1層以上形成したものをいう。
【0019】
以下本発明のPDP用部材の製造方法を、代表される製造手順に沿って説明する。
本発明のPDP用部材の製造方法に用いられる基板としては、ソーダガラスの他にPDP用の耐熱ガラスである旭硝子社製の“PD200”や日本電気硝子社製の“PP8”を用いることができる。
【0020】
次にガラス基板上に無機材料として銀やアルミニウム、クロム、ニッケルなどの金属により電極層を形成する。形成する方法としては、これらの金属の粉末と有機バインダーを主成分とする金属ペーストをスクリーン印刷でパターン印刷する方法や、有機バインダーとして感光性有機成分を用いた感光性金属ペーストをスクリーン印刷などにより塗布した後に、フォトマスクを用いてパターン露光し、不要な部分を現像工程で溶解除去し、さらに、400〜600℃に加熱・焼成して金属パターンを形成する感光性ペースト法を用いることができる。
【0021】
形成される電極厚みは1〜10μmが好ましく、2〜5μmがより好ましい。電極厚みが薄すぎると抵抗値が大きくなり正確な駆動が困難となる傾向にあり、厚すぎると材料が多く必要になり、コスト的に不利な傾向にある。電極パターンの幅は好ましくは20〜200μm、より好ましくは30〜100μmである。電極パターンの幅が細すぎると抵抗値が高くなり正確な駆動が困難となる傾向にあり、太すぎると隣合う電極間の距離が小さくなるため、ショート欠陥が生じやすい傾向にある。
【0022】
次いで誘電体層を好ましく形成する。本発明では誘電体層は無機材料としてはガラス粉末を用い、有機バインダーが混合されたガラスペーストを、前記電極層を覆う形でスクリーン印刷により塗布され、その後に400〜600℃で焼成することにより形成できる。誘電体層に用いる無機材料であるガラス品末の成分としては、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化亜鉛、酸化リンの少なくとも1種類以上を含有し、これらを合計で10〜80重量%含有するガラス粉末を好ましく用いることができる。10重量%以上とすることで、600℃以下での焼成が容易になり、80重量%以下とすることで、結晶化を防ぎ透過率の低下を防止する。これらのガラス粉末と有機バインダーと混練してペーストを作成できる。用いる有機バインダーとしては、エチルセルロース、メチルセルロース等に代表されるセルロース系化合物、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソブチルアクリレート等のアクリル系化合物等を用いることができる。また、ガラスペースト中に、溶媒、可塑剤等の添加剤を加えても良い。溶媒としては、テルピネオール、ブチロラクトン、トルエン、メチルセルソルブ等の汎用溶媒を用いることができる。また、可塑剤としてはジブチルフタレート、ジエチルフタレート等を用いることができる。ガラス粉末以外にフィラー成分を添加することにより、反射率が高く、輝度の高いPDPを得ることができる。フィラーとしては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等が好ましく、粒子径0.05〜3μmの酸化チタンを用いることが特に好ましい。フィラーの含有量はガラス粉末:フィラーの比で、1:1〜10:1が好ましい。フィラーの含有量をガラス粉末の10分の1以上とすることで、輝度向上の実効を得ることができる。
【0023】
誘電体層の厚みは、好ましくは3〜30μm、より好ましくは3〜15μmである。誘電体層の厚みが薄すぎるとピンホールが多発する傾向にあり、厚すぎると放電電圧が高くなり、消費電力が大きくなる傾向にある。
【0024】
さらに、本発明のPDP用部材の製造方法が、PDPの背面板に適用される場合には、前記基板上もしくは誘電体層上に、放電セルを仕切るための隔壁層が好ましく形成される。
隔壁層を形成する材料としては、前記誘電体層に用いる材料と同様のものを使用する場合が多い。また、本発明では感光性ペーストも好ましく用いられ、感光性ペーストを用いた場合は、隔壁層は、基板上にペーストをスクリーン印刷などにより塗布した後に、乾燥、露光、現像の工程を含むフォトリソグラフィー法が適用される場合が多い。
【0025】
本発明で感光性ペーストの無機材料としては、ガラス、セラミック(アルミナ、コーディライトなど)などを用いることができる。特に、ケイ素酸化物、ホウ素酸化物、または、アルミニウム酸化物を必須成分とするガラスやセラミックスが好ましい。
【0026】
無機材料の粒子径は、作製しようとするパターンの形状を考慮して選ばれるが、体積平均粒子径(D50)が、1〜10μmであることが好ましく、より好ましくは、1〜5μmである。D50を10μm以下とすることで、表面凸凹が生じるのを防ぐことができる。また、1μm以上とすることで、ペーストの粘度調整を容易にすることができる。さらに、比表面積0.2〜3m/gのガラス微粒子を用いることが、パターン形成において、特に好ましい。
【0027】
隔壁層は、好ましくは熱軟化点の低いガラス基板上にパターン形成されるため、無機微粒子として、熱軟化温度が350℃〜600℃のガラス微粒子を60重量%以上含む無機微粒子を用いることが好ましい。また、熱軟化温度が600℃以上のガラス微粒子やセラミック微粒子を添加することによって、焼成時の収縮率を抑制することができるが、その量は、40重量%以下が好ましい。
用いるガラス粉末としては、焼成時にガラス基板にそりを生じさせないためには線膨脹係数が50×10−7〜90×10−7、更には、60×10−7〜90×10−7のガラス微粒子を用いることが好ましい。
【0028】
隔壁層を形成する素材としては、ケイ素および/またはホウ素の酸化物を含有したガラス材料が好ましく用いられる。
酸化ケイ素は、3〜60重量%の範囲で配合されていることが好ましい。3重量%以上とすることで、ガラス層の緻密性、強度や安定性が向上し、また、熱膨脹係数を所望の範囲内とし、ガラス基板とのミスマッチを防ぐことができる。また、60重量%以下にすることによって、熱軟化点が低くなり、ガラス基板への焼き付けが可能になるなどの利点がある。
【0029】
酸化ホウ素は、5〜50重量%の範囲で配合することによって、電気絶縁性、強度、熱膨脹係数、絶縁層の緻密性などの電気、機械および熱的特性を向上することができる。50重量%以下とすることでガラスの安定性を保つことができる。
【0030】
さらに、酸化ビスマス、酸化鉛、酸化亜鉛のうちの少なくとも1種類を合計で5〜50重量%含有させることによって、ガラス基板上にパターン加工するのに適した温度特性を有するガラスペーストを得ることができる。特に、酸化ビスマスを5〜50重量%含有するガラス微粒子を用いると、ペーストのポットライフが長いなどの利点が得られる。ビスマス系ガラス微粒子としては、次の組成を含むガラス粉末を用いることが好ましい。
酸化ビスマス :10〜40重量部
酸化ケイ素 : 3〜50重量部
酸化ホウ素 :10〜40重量部
酸化バリウム : 8〜20重量部
酸化アルミニウム:10〜30重量部。
【0031】
また、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウムのうち、少なくとも1種類を3〜20重量%含むガラス微粒子を用いてもよい。アルカリ金属酸化物の添加量は、20重量%以下、好ましくは、15重量%以下にすることによって、ペーストの安定性を向上することができる。上記3種のアルカリ金属酸化物の内、酸化リチウムがペーストの安定性の点で、特に好ましい。リチウム系ガラス微粒子としては、例えば次に示す組成を含むガラス粉末を用いることが好ましい。
【0032】
この場合の具体的なガラス微粒子としては、次に示す組成を含むガラス粉末を用いることが好ましい。
酸化リチウム : 2〜15重量部
酸化ケイ素 :15〜50重量部
酸化ホウ素 :15〜40重量部
酸化バリウム : 2〜15重量部
酸化アルミニウム: 6〜25重量部。
【0033】
また、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化亜鉛のような金属酸化物と酸化リチウム,酸化ナトリウム、酸化カリウムのようなアルカリ金属酸化物の両方を含有するガラス微粒子を用いれば、より低いアルカリ含有量で、熱軟化温度や線膨脹係数を容易にコントロールすることができる。
【0034】
また、ガラス微粒子中に、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムなど、特に、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化亜鉛を添加することにより、加工性を改良することができるが、熱軟化点、熱膨脹係数の点からは、その含有量は、40重量%以下が好ましく、より好ましくは25重量%以下である。
【0035】
感光性有機成分としては、感光性モノマー、感光性オリゴマー、感光性ポリマーのうちの少なくとも1種類から選ばれた感光性成分を含有することが好ましく、更に、必要に応じて、光重合開始剤、光吸収剤、増感剤、有機溶媒、増感助剤、重合禁止剤を添加する。
【0036】
感光性モノマーとしては、炭素−炭素不飽和結合を含有する化合物で、その具体的な例として、単官能および多官能性の(メタ)アクリレート類、ビニル系化合物類、アリル系化合物類などを用いることができる。これらは1種または2種以上使用することができる。
【0037】
感光性オリゴマー、感光性ポリマーとしては、炭素−炭素2重結合を有する化合物のうちの少なくとも1種類を重合して得られるオリゴマーやポリマーを用いることができる。重合する際に、これらのモノマの含有率が、10重量%以上、さらに好ましくは35重量%以上になるように、他の感光性のモノマと共重合することができる。ポリマーやオリゴマーに不飽和カルボン酸などの不飽和酸を共重合することによって、感光後の現像性を向上することができる。不飽和カルボン酸の具体的な例として、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、または、これらの酸無水物などが挙げられる。こうして得られた側鎖にカルボキシル基などの酸性基を有するポリマ、もしくは、オリゴマーの酸価(AV)は、50〜180の範囲が好ましく、70〜140の範囲がより好ましい。以上に示したポリマーもしくはオリゴマーに対して、光反応性基を側鎖または分子末端に付加させることによって、感光性をもつ感光性ポリマや感光性オリゴマーとして用いることができる。好ましい光反応性基は、エチレン性不飽和基を有するものである。エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基などが挙げられる。
【0038】
光重合開始剤の具体的な例として、ベンゾフェノン、O-ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,3−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニル−2−フェニルアセトフェノンなどが挙げられる。これらを1種または2種以上使用することができる。光重合開始剤は、感光性成分に対し、好ましくは0.05〜10重量%の範囲で添加され、より好ましくは、0.1〜5重量%の範囲で添加される。重合開始剤の量が少な過ぎると、光感度が低下する傾向にあり、光重合開始剤の量が多すぎると、露光部の残存率が小さくなり過ぎる傾向にある。
【0039】
光吸収剤を添加することも有効である。紫外光や可視光の吸収効果が高い化合物を添加することによって、高アスペクト比、高精細、高解像度が得られる。光吸収剤としては、有機系染料からなるものが好ましく用いられる、具体的には、アゾ系染料、アミノケトン系染料、キサンテン系染料、キノリン系染料、アントラキノン系染料、ベンゾフェノン系染料、ジフェニルシアノアクリレート系染料、トリアジン系染料、p−アミノ安息香酸系染料などが使用できる。有機系染料は、焼成後の絶縁膜中に残存しないので、光吸収剤による絶縁膜特性の低下を少なくできるので好ましい。これらの中でも、アゾ系およびベンゾフェノン系染料が好ましい。有機染料の添加量は、0.05〜5重量%が好ましく、より好ましくは、0.05〜1重量%である。添加量が少なすぎると、光吸収剤の添加効果が減少する傾向にあり、多すぎると、焼成後の絶縁膜特性が低下する傾向にある。
【0040】
増感剤は、感度を向上させるために添加される。増感剤の具体例としては、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,3−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)シクロヘキサノンなどが挙げられる。これらを1種または2種以上使用することができる。増感剤を感光性ペーストに添加する場合、その添加量は、感光性成分に対して通常0.05〜10重量%、より好ましくは0.1〜10重量%である。増感剤の量が少な過ぎると光感度を向上させる効果が発揮されない傾向にあり、増感剤の量が多過ぎると、露光部の残存率が小さくなる傾向にある。
【0041】
有機溶媒としては、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、γ−ブチルラクトン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ブロモベンゼン、クロロベンゼン、ジブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモ安息香酸、クロロ安息香酸などやこれらのうちの1種以上を含有する有機溶媒混合物が用いられる。
感光性ペーストは、通常、上記の無機微粒子や有機成分を所定の組成になるように調合した後、3本ローラーや混練機で均質に混合分散し作製する。
【0042】
本発明で、隔壁の断面形状は台形や矩形に形成することが好ましく、その高さは80μm〜200μmであることが好ましい。80μm以上とすることで蛍光体とスキャン電極が近づきすぎるのを防ぎ、放電による蛍光体の劣化を防ぐことができる。また、200μm以下とすることで、スキャン電極での放電と蛍光体の距離を近づけ、十分な輝度を得ることができる。またピッチ(P)は、100μm≦P≦500μmのものがよく用いられる。また、高精細プラズマディスプレイとしては、隔壁のピッチ(P)が、100μm≦P≦300μmである。100μm以上とすることで放電空間を広くし十分な輝度を得ることができ、500μm以下とすることで画素の細かいきれいな映像表示ができる。250μm以下にすることにより、HDTV(ハイビジョン)レベルの美しい映像を表示することができる。
【0043】
さらに本発明では、前記隔壁と隔壁の間に、RGBの蛍光体層が好ましく形成される。
本発明で蛍光体層を形成する方法は、無機材料としてR、G、Bの蛍光体粉末を用い、これら無機材料をセルロース系、アクリル系などの有機バインダー溶液と混合されたペーストを、ストライプ状やドット状などの所望のパターンを有するスクリーン版を用いたパターン印刷により形成される場合が多い。
【0044】
特に蛍光体のパターン印刷では、寸法精度が要求されるために、本発明のスクリーン印刷版が好ましく適用される。
【0045】
また、本発明では前記隔壁層と蛍光体層の間に反射層が好ましく形成される。本発明で反射層に用いる無機材料としては、アルミナ、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ケイ素などを用いることができ、これら無機材料をセルロース系、アクリル系などの有機バインダー溶液と混合されたペーストを、ストライプ状やドット状などの所望のパターンを有するスクリーン版を用いたパターン印刷により形成される場合が多い。
【実施例】
【0046】
実施例1
補強繊維として、東レ(株)製炭素繊維“トレカ”を縦と横の2方向に使用した織物を使用し積層させた。樹脂としては加熱硬化型ビニルエステルを準備し、前記積層した織物に含浸した後、80℃に加熱されたプレスで樹脂を硬化させ厚み5mmの繊維強化プラスチック板を作製し、さらに図3に示す横幅、縦幅がそれぞれ3500mm、厚みが80mmの構造(中空状)に成形することで、スクリーン印刷版用枠体を得た。
前記枠体の内側に、ステンレス金属メッシュ(SUS325)をスクリーン版紗張り機にて紗張りし、スクリーン印刷版前駆体を得た。
【0047】
実施例2
実施例1において、補強繊維としてガラス繊維(Eガラス繊維)を用いた他は、同一手法によりスクリーン印刷版前駆体を得た。
【0048】
比較例1
実施例1において、枠体を従来の厚み5mmのアルミニウムにより得た他は同一手法によりスクリーン印刷版前駆体を得た。
上記実施例および比較例により得られたスクリーン印刷版前駆体の、枠体歪み量および重量を測定した。結果を表1に示す。表1に示す通り、従来の技術である比較例に比べ、本発明に相当する実施例により得られたスクリーン印刷版前駆体は、枠体の歪みが小さく、従来のアルミニウム製と比較して軽量なものであった。
【0049】
【表1】

【0050】
実施例3
酸化ビスマスを75重量%含有する低融点ガラスの粉末を60%、平均粒子径0.3μmの酸化チタン粉末を10重量%、エチルセルロース15%、テルピネオール15%を混練して得られたガラスペーストを前記スクリーン版を用い、スクリーン印刷により基板上に塗布した。得られた印刷膜の面内35点の厚みをレーザー変位計により測定した。結果を表2に示す。表2より本発明の実施例を用いたものは、厚みバラツキが小さいのに対し、本発明の比較例を用いたものは厚みバラツキが大きく、特に枠体が歪んでいる中央部の厚みが薄いものであった。
【0051】
【表2】

【0052】
実施例4
基板として、サイズが1710mm×1928mm、厚み2.8mmの旭硝子社製(PD200)を準備した。
前記基板上に無機成分として銀粉末を含有する感光性銀ペーストを請求項1記載のスクリーン版を用いてスクリーン印刷し、所望のパターンを有するフォトマスクを介して露光し、現像・焼成することで電極層を形成した。
【0053】
次いで、前記電極層上に、実施例4と同一手法により誘電体層前駆体を形成し、焼成することで誘電体層を形成した。次いで前記誘電体層上に無機材料として、酸化リチウム10重量%、酸化珪素25重量%、酸化硼素30重量%、酸化亜鉛15重量%、酸化アルミニウム5重量%、酸化カルシウム15重量%からなる組成のガラスを粉砕した平均粒子径2μmのガラス粉末と、感光性成分を含む有機成分として、カルボキシル基を含有するアクリルポリマー30重量%、トリメチロールプロパントリアクリレート30重量%、光重合開始剤である“イルガキュア369”(チバガイギー社製)10重量%、γ−ブチロラクトン30重量%からなる感光性ガラスペーストをダイコーターにより塗布し、ストライプ状の隔壁用フォトマスクを介して前記塗布膜をパターン露光した。尚、このときの露光量は500mJ/cmである。
【0054】
露光後、0.3重量%のエタノールアミン水溶液中で現像し、さらに、580℃で15分間焼成することにより、表1に示す構造の隔壁および補助隔壁を形成した。
【0055】
次に、隣り合う隔壁間に無機材料としてRGB各色の蛍光体ペーストを塗布した。蛍光体の塗布は、実施例1のスクリーン印刷版において、所望のパターンが形成されたスクリーン印刷版を用い、スクリーン印刷をした。
かくして得られたPDP用部材を目視観察したところ、外観上のムラがなく、均一性の高いものであった。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明のスクリーン印刷版の模式図
【図2】本発明のスクリーン印刷版を構成する枠体歪み量の説明図
【図3】本発明のスクリーン印刷版の実施例説明図
【図4】本発明のスクリーン版を構成する枠体構造の一例図
【符号の説明】
【0057】
1:枠体
2:スクリーンメッシュ
A:枠体の歪み量
B、C:枠体の辺の長さ
D:枠体の厚み
E:枠体を構成する板厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体の内側に、スクリーンメッシュが配設されたスクリーン印刷版であって、該枠体が補強繊維を樹脂で強化してなる繊維強化プラスチックからなることを特徴とするスクリーン印刷版。
【請求項2】
補強繊維が少なくとも炭素繊維糸、ガラス繊維糸、ポリアラミド繊維糸のいずれかであることを特徴とする請求項1記載のスクリーン印刷版。
【請求項3】
枠体が、中空状であることを特徴とする請求項1または2記載のスクリーン印刷版。
【請求項4】
基板上に無機材料からなる層を形成するプラズマディスプレイ用部材の製造方法であって、該無機材料からなる層を前記請求項1〜3いずれかに記載のスクリーン印刷版を用いて形成することを特徴するプラズマディスプレイ用部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−21461(P2006−21461A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−202744(P2004−202744)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】