説明

スクリーン印刷用樹脂組成物

【課題】
スクリーン印刷性が良好であり、メッシュ目残り、にじみ、泡抜け性の悪化等を引き起こすことなく均一な膜厚の硬化膜が得られ、かつ連続成形性にも優れたスクリーン印刷用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
(A)ポリアミック酸樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂およびポリアミドイミド樹脂からなる群から選ばれる樹脂、
(B)平均粒子径が0.05μm〜10μmの球状金属酸化物微粒子:(A)成分100質量部に対して5〜350質量部、ならびに
(C)有機溶剤
を含有するスクリーン印刷用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均一な膜厚の硬化膜が得られ、かつ連続成形性に優れたスクリーン印刷用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
耐熱性材料であるポリイミド系樹脂は、半導体表面にコーティングされ、保護膜(保護絶縁膜)としての役割を担っている。この保護膜にパターンを形成させる方法としては、例えば、(1)ワニス状態でスピンコートした後にパターニングを行う方法、(2)スクリーン印刷によりコーティングと同時にパターニングを行う方法等が知られている。
【0003】
方法(1)は、具体的には、(a)ポリアミック酸等のワニスをウェハ上にスピンコートして保護膜を形成させた後、その上にフォトレジストを積層して紫外光露光および現像により感光部分または非感光部分を溶解させると共に、下層の保護膜も溶解させてパターンを形成する方法、あるいは(b)ポリイミド系樹脂自体に紫外線感応部分を持たせた感光性樹脂を用いて、紫外光露光および現像により感光部分または非感光部分を溶解させる方法である。しかし、(a)、(b)のいずれの方法でも紫外線露光を含み、工程が煩雑になる為、工程の短縮化の点から、方法(2)のスクリーン印刷法が望まれている。
【0004】
ところが、従来のスクリーン印刷用ワニスでは、解像度、膜平坦性等において必ずしも満足な結果が得られていない。その理由の一つとしては、形状維持の為、ワニスに無機充填材を添加してチキソトロピー性を付与したことによるメッシュ目残り、にじみ、泡抜け性の悪化等が挙げられる。また、特に薄膜形成の際、溶媒の揮発が速く連続成形性に乏しいという問題もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、スクリーン印刷性が良好であり、メッシュ目残り、にじみ、泡抜け性の悪化等を引き起こすことなく均一な膜厚の硬化膜が得られ、かつ連続成形性にも優れたスクリーン印刷用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(A)ポリアミック酸樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂およびポリアミドイミド樹脂からなる群から選ばれる樹脂、
(B)平均粒子径が0.05μm〜10μmの球状金属酸化物微粒子:(A)成分100質量部に対して5〜350質量部、ならびに
(C)有機溶剤
を含有するスクリーン印刷用樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の組成物は、スクリーン印刷性が良好であり、メッシュ目残り、にじみ、泡抜け性の悪化等を引き起こすことなく均一な膜厚の硬化膜が得られ、かつ連続成形性にも優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の組成物は、以下の(A)〜(C)成分を含有してなる。
【0009】
<スクリーン印刷用樹脂組成物>
−(A)樹脂−
(A)成分は、ポリアミック酸樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂およびポリアミドイミド樹脂からなる群から選ばれる樹脂、好ましくはポリアミック酸樹脂およびポリイミド樹脂である。(A)成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0010】
前記ポリアミック酸樹脂は、下記一般式(1):
【0011】
【化1】

(式中、Xは独立に芳香族環または脂肪族環を含む四価の有機基を表し、Yは独立に二価の有機基を表し、nは1〜300の整数である。)
で表される。
【0012】
上記一般式(1)で表されるポリアミック酸樹脂は、例えば、下記一般式(2):
【0013】
【化2】

(但し、Xは上記と同様の意味を表す。)
で表されるテトラカルボン酸二無水物と、下記一般式(3):
【0014】
【化3】

(式中、Yは上記と同様の意味を表す。)
で表されるジアミンとを、常法に従って、ほぼ等モルで有機溶剤中で反応させることによって得られる。
【0015】
上記一般式(1)において、nは1〜300の整数、好ましくは2〜300の整数、特には5〜300の整数であるが、このような繰り返し数を有するポリアミック酸樹脂は、上記の方法により容易に得ることができる。
【0016】
ここで、上記一般式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物の具体例を示すと、
【0017】
【化4】

【0018】
【化5】


等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、上記一般式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、所望により上記のものの1種または2種以上を用いてもよい。
【0019】
上記一般式(3)で表されるジアミンのうち、好ましくは1〜80モル%、さらに好ましくは1〜50モル%は下記構造式(4):
【0020】
【化6】

(式中、R1は独立に炭素原子数3〜9の二価の有機基を表し、R2およびR3は独立に炭素原子数1〜8の非置換または置換の一価炭化水素基を表し、mは1〜200の整数である。)
で表されるシロキサンジアミン(またはα,ω−ジアミノシロキサン)であることが、基材に対する接着性、柔軟性の点から好ましい。
【0021】
上記一般式(4)で表されるシロキサンジアミンにおいて、R1で表される炭素原子数3〜9の二価の有機基としては、例えば、
【0022】
【化7】

【0023】
【化8】


等のアリーレン基、これらを組み合せたアルキレン・アリーレン基、
−(CH23−O−、−(CH24−O−等のオキシアルキレン基、
【0024】
【化9】

等のオキシアリーレン基、これらを組み合せた、
【0025】
【化10】

等のオキシアルキレン・アリーレン基等の、エーテル酸素原子を含んでもよい二価炭化水素基等が挙げられる。
【0026】
2、R3で表される炭素原子数1〜8の非置換または置換の一価炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、オクチル等のアルキル基、シクロヘキシル等のシクロアルキル基、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、ヘキセニル等のアルケニル基、フェニル、トリル、キシリル等のアリール基、ベンジル、フェニルエチル等のアラルキル基、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部がフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子等で置換された基、例えば、クロロメチル基、ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基等が挙げられ、中でも、メチル基及びフェニル基が好ましい。
【0027】
mは1〜200の整数であり、好ましくは1〜100の整数、より好ましくは、1〜80の整数である。
【0028】
上記一般式(4)で表されるシロキサンジアミンの例としては、具体的には、
【0029】
【化11】

【0030】
【化12】

等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの上記一般式(4)で表されるシロキサンジアミンは、所望により1種単独でも2種以上の組み合わせでも使用することができる。
【0031】
さらに、上記一般式(3)で表されるジアミンのうち上記一般式(4)で表されるシロキサンジアミン以外のジアミンとしては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(p−アミノフェニルスルホニル)ベンゼン、1,4−ビス(m−アミノフェニルスルホニル)ベンゼン、1,4−ビス(p−アミノフェニルチオエーテル)ベンゼン、1,4−ビス(m−アミノフェニルチオエーテル)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−クロロ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[3−クロロ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3−クロロ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]パーフルオロプロパン等の芳香族環含有ジアミン等が挙げられ、好ましくはp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等であるが、これらに限定されるものではない。また、これらの上記一般式(4)で表されるシロキサンジアミン以外のジアミンも所望により1種単独でも2種以上の組み合わせとしても使用することができる。
【0032】
前記ポリイミド樹脂は、下記一般式(5):
【0033】
【化13】

(式中、X、Yおよびnは上記のとおりである。)
で表される。
【0034】
上記一般式(5)で表されるポリイミド樹脂は、例えば、上記一般式(1)で表されるポリアミック酸を常法により脱水して閉環することにより得られる。
【0035】
ポリアミック酸樹脂およびポリイミド樹脂の生成反応の具体例を挙げると、上述の出発原料(即ち、テトラカルボン酸二無水物とジアミン)を、不活性な雰囲気下で有機溶剤に溶かし、通常、80℃以下、好ましくは0〜40℃で反応させて、ポリアミック酸樹脂を合成する。さらに得られたポリアミック酸樹脂を、通常、100〜200℃、好ましくは150〜200℃に昇温させることにより、ポリアミック酸樹脂の酸アミド部分を脱水閉環させ、目的とするポリイミド樹脂を合成することができる。
【0036】
上記反応に使用する有機溶剤は、得られるポリアミック酸樹脂およびポリイミド樹脂に不活性なものであれば、前記出発原料を完全に溶解できるものでなくてもよい。有機溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドおよび1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられ、好ましくは非プロトン性極性溶媒、特に好ましくはN−メチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトンおよび1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンである。これらの有機溶剤は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0037】
上記の脱水閉環を容易にするためには、トルエン、キシレン等の共沸脱水剤を用いることが望ましい。
【0038】
なお、ポリアミック酸樹脂もしくはポリイミド樹脂の分子量を調整するために、無水マレイン酸、無水フタル酸等のジカルボン酸無水物および/またはアニリン、n−ブチルアミン等のモノアミンを添加することもできる。但し、ジカルボン酸無水物の添加量は、テトラカルボン酸二無水物100質量部当たり、通常、0〜2質量部であり、モノアミンの添加量は、ジアミン100質量部当たり、通常、0〜2質量部である。
【0039】
本発明で用いられるポリアミド樹脂は、常法に従って、二塩基酸とジアミンの重縮合、環状ラクタム開環重合、アミノカルボン酸の重縮合等により得られる。具体的には、例えば、ナイロン66、ナイロン6、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12等の脂肪族ポリアミド樹脂、ナイロンMXD6、ナイロンMXD6G等の脂肪族−芳香族ポリアミド樹脂、ポリメタフェニレンイソフタルアミド(MPIA)、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)等の芳香族ポリアミド樹脂、これらの共重合体、混合物等を挙げることができる。
【0040】
本発明で用いられるポリアミドイミド樹脂は、分子骨格にアミド結合(-CONH-)とイミド結合(-(CO)2N-)を有するものであって、例えば、トリカルボン酸とジアミンとを常法に従って反応させることによって得られる。トリカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸等が挙げられる。ジアミンとしては、例えば、前記一般式(3)で表される化合物等が挙げられる。これらトリカルボン酸およびジアミンは、それぞれ一種単独であるいは二種以上を併用することができる。ポリアミドイミド樹脂の製造方法には、例えば、酸クロリド法、イソシアネート法、直接重合法等がある。ポリアミドイミド樹脂の市販品としては、例えば、TORLON(Amoco社製)、TI−5000シリーズ・TI−1000シリーズ(東レ社製)、スミカPAI(住友化学社製)等が挙げられる。
【0041】
−(B)球状金属酸化物微粒子−
(B)成分は、平均粒子径が0.05〜10μmの球状金属酸化物微粒子である。この球状金属酸化物微粒子としては、0.7〜1.0のワーデルの球形度を有することが好ましい。
【0042】
ここで、「ワーデルの球形度」(化学工学便覧、丸善株式会社発行参照)とは、粒子の球形度を、(粒子の投影面積に等しい円の直径)/(粒子の投影像に外接する最小円の直径)で測る指数であり、この指数が1.0に近いほど真球体に近い粒子であることを意味する。本発明の球状金属酸化物微粒子は、ワーデルの球形度が、より好ましくは0.9〜1.0、特に好ましくは0.95〜1.0の真球状であることが望ましい。ワーデルの球形度が0.7未満であると、(B)成分の充填量が増大した際に組成物のチキソトロピー性が増大してしまうことがある。
【0043】
また、「平均粒子径」とは、「体積平均粒子径」を意味し、例えば、(株)堀場製作所製のレーザー回折散乱式粒度分布測定装置(商品名:LA910)により自動化された方式で測定することができる。
【0044】
球状金属酸化物微粒子の平均粒子径は、好ましくは0.05〜5μm、より好ましくは0.1〜5μmである。また、球状金属酸化物微粒子は、真球状金属酸化物微粒子であることが好ましい。低チキソトロピー性の点で、(B)成分としては、真球状金属酸化物微粒子を60〜100質量%、特に80〜100質量%含有する球状金属酸化物微粒子が好ましい。なお、本明細書において、「真球状」とは球形度が0.95〜1の範囲にある若干歪んだ球も含む概念である。
【0045】
球状金属酸化物微粒子は、一種の金属の酸化物の微粒子であっても、二種以上の金属の酸化物(即ち、複合酸化物)の微粒子であってもよい。一種の金属の酸化物の具体例としては、珪素、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム、チタン等の金属の酸化物である、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al23)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)等が挙げられる。複合酸化物の具体例としては、前記金属の複合酸化物である、シリカ−アルミナ複合酸化物、シリカ−チタニア複合酸化物、シリカ−ジルコニア複合酸化物、シリカ−マグネシア複合酸化物、アルミナ−マグネシア複合酸化物等の二成分系複合酸化物や、シリカ−アルミナ−マグネシア複合酸化物、シリカ−アルミナ−チタニア複合酸化物、シリカ−チタニア−マグネシア複合酸化物等の三成分系複合酸化物等が挙げられる。これら球状金属酸化物微粒子の例示の中でも、球状、特には真球状のシリカ微粒子を主成分とする(即ち、60〜100質量%含有する)ものが好ましい。
【0046】
球状金属酸化物微粒子は、どのように製造されたものであってもよいが、金属を燃焼させて得られた金属酸化物微粒子が好ましい。この金属を燃焼させて得られた金属酸化物微粒子は、珪素、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム、チタン等の金属粉末;ムライト組成(3Al2O3・2SiO2〜2Al2O3・SiO2)に調合したアルミニウム粉末とシリコン粉末;スピネル組成(MgAl2O4)に調合したマグネシウム粉末とアルミニウム粉末;コージェライト組成(2MgO・2Al2O3・5SiO2)に調合したアルミニウム粉末とマグネシウム粉末とシリコン粉末;等の金属粉末混合物をキャリアガスとともに酸素を含む雰囲気中で燃焼させ化学炎を形成させて、この化学炎中に目的とするシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の一種の金属の酸化物あるいは複合酸化物の微粒子(特には超微粒子)を得ることができる。これらの金属を燃焼させて得られた金属酸化物微粒子の中でも、球状、特に真球状のシリカ微粒子を主成分とする(即ち、60〜100質量%含有する)ものが好ましい。
【0047】
球状金属酸化物微粒子は、表面処理されているものである必要はないが、表面がシラザン類および/またはシランカップリング剤で処理されているものが好ましい。
【0048】
前記シラザン類は、例えば、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ヘキサフェニルジシラザン等のシラザン類、あるいはこれらの中の二種以上の組み合わせである。これらの中でも、ヘキサメチルジシラザンが、シリカの凝集を抑制し、酸性であるシリカを塩基性に傾け、有機物に対する親和性を向上させ均一性を向上させて、(A)成分の樹脂に対する安定性を向上させる等の点で好ましい。
【0049】
前記シランカップリング剤は、例えば、アミノ基、グリシジル基、メルカプト基、ウレイド基、ヒドロキシ基およびアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一種の活性基(反応性有機官能基)を有する化合物、あるいはその組み合わせ(例えば、アルコキシ基とその他の反応性官能基との組み合わせ)である。シランカップリング剤の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性基含有オルガノアルコキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ官能性基含有オルガノアルコキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等のアリールアルコキシシラン、メチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン等のアルケニルアルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性基含有オルガノアルコキシシラン等が挙げられる。
【0050】
球状金属酸化物微粒子としては、市販品では、株式会社アドマテックスのアドマファインSEシリーズおよびSCシリーズ等が挙げられる。
【0051】
(B)成分の配合量は(A)成分100質量部に対して5〜350質量部、好ましくは5〜300質量部、より好ましくは10〜200質量部である。この配合量が5質量部よりも少ない場合には、良好なスクリーン印刷性が得られないことがあり、また350質量部を超える場合には、(A)成分の樹脂の本来の特長である基材との接着性が損なわれることがある。
【0052】
本発明のスクリーン印刷用樹脂組成物は、本成分の球状金属酸化物微粒子を用いることで、上記配合量においてもチキソトロピー性を低く抑えることが可能であり、形成されたパターンはメッシュ目残り、にじみ、泡抜け性の悪化等を引き起こすことなく均一な膜厚が得られる。
【0053】
なお、(B)成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0054】
金属酸化物粉体として上記効果を損なわない範囲において、溶融金属酸化物粉体、金属酸化物破砕物、煙霧質金属酸化物(ヒュームド金属酸化物)等の非球状酸化物粉体を併用することができる。非球状金属酸化物粉体の併用割合は、(B)成分の球状金属酸化物粉体100質量部に対して25質量部以下(0〜25質量部)、特に20質量部以下(0〜20質量部)であることが好ましい。
【0055】
−(C)有機溶剤−
(C)成分の有機溶剤には、(A)成分の樹脂を部分的にあるいは完全に溶解させることができるものを用いることができる。(C)成分の具体例としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられ、好ましくは非プロトン性極性溶媒、特に好ましくはN−メチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトンおよび1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンである。
【0056】
本発明の組成物から形成される硬化膜が20μm以下の薄膜の場合には、スクリーン印刷による連続成形性を損なわない為に、特に沸点が200℃以上の有機溶剤を併用することが好ましい。沸点が200℃以上の有機溶剤としては、例えば、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが挙げられる。
【0057】
なお、(C)成分は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0058】
−その他の成分−
本発明の組成物には、上記(A)〜(C)成分の他にも、本発明の効果を損なわない範囲内で、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、導電性フィラー、顔料、染料等の着色剤等を目的に応じて添加することができる。
【0059】
−調製方法−
本発明の組成物は、上述の(A)〜(C)成分、および場合によっては含まれるその他の成分を、常法により混合して調製することができる。具体的には、例えば、攪拌装置および加熱装置を備えたライカイ機、三本ロール、ボールミル、プラネタリーミキサー等を用いることができる。また、これらの混合装置を適宜2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0060】
−スクリーン印刷・硬化方法−
前記組成物をスクリーン印刷法によりシリコンウェハ等の基体の表面に塗布する方法を説明する。まず、基体の表面を所要パターンの開口部を有するマスクで覆い、スキージ部に組成物を投入する。次いで、スキージを移動させて組成物を加圧しながらマスク上を移動させることにより、該マスキング部材の開口部に組成物を充填する(充填工程)。次に、マスクを取り外す。こうして、前記基体の表面に組成物のパターンを形成させることができる。
【0061】
こうして形成された組成物のパターンを次に硬化させる。硬化は、例えば、室温(20℃±5℃)〜200℃の低温で段階的にキュアを行い、必要に応じて、さらに200〜350℃の高温キュア(ポストキュア)を行う。
【0062】
−用途−
本発明の組成物を用いてスクリーン印刷により形成されるパターンは、解像度が高く、メッシュ目残り、にじみ、泡抜け性の悪化等を引き起こすことなく均一な膜厚のものである。また本発明の組成物は連続成形性にも優れる。そのため、本発明の組成物は、ウェハレベルでの半導体素子表面のパッシベーション膜、保護膜、ダイオード、トランジスタ等の接合部のジャンクション保護膜、VLSIのα線遮蔽膜、層間絶縁膜、イオン注入マスク等のほか、プリントサーキットボードのコンフォーマルコート、液晶表面素子の配向膜、ガラスファイバーの保護膜、太陽電池の表面保護膜、導電性充填材を配合した導電性膜等の形成に好適なスクリーン印刷用樹脂組成物として幅広い範囲にわたり利用することができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例において、「粘度」は25℃での測定値を示す。なお、実施例で使用した原料化合物を下記のとおりに表す。
・BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
・BTDA:3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
・DPE:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
・BAPP:2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
・APM:1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン
【0064】
<合成例1>
攪拌機、温度計および窒素置換装置を備えたフラスコ内に、テトラカルボン酸二無水物としてのBTDA32.22g(0.10mol)とN−メチル−2−ピロリドン35gとを仕込み、これにジアミンとしてのAPM2.49g(0.01mol)およびDPE18.02g(0.09mol)をN−メチル−2−ピロリドン20gに溶解させた溶液を反応系の温度が50℃を超えないように調整しつつ徐々に滴下した。滴下終了後、さらに室温で12時間攪拌し、反応を促進させ、黄褐色透明のポリアミック酸樹脂溶液を得た。この溶液の粘度は250Pa・sであり、樹脂固形分は50.1質量%であった。これをポリアミック酸樹脂溶液−1とする。なお、粘度はデジタル粘度計(BROOKFIELD製、商品名:DV-II+)で測定したものであり、以下同じである。
【0065】
<合成例2>
合成例1と同様の装置に、BPDA29.42g(0.10mol)とシクロヘキサノン38.5gを仕込み、これにAPM7.46g(0.03mol)およびBAPP28.73g(0.07mol)をシクロヘキサノン60gに溶解させた溶液を滴下して、室温で12時間反応させて、ポリアミック酸樹脂溶液を得た。得られたポリアミック酸樹脂溶液に、トルエン30gを加えた後、前記装置にDean−Starkトラップを取り付けたジムロート冷却管を取り付け、180℃で8時間反応させて、ポリイミド樹脂溶液を合成した。この溶液の粘度は310Pa・sであり、樹脂固形分は40.5質量%であった。これをポリイミド樹脂溶液−1とする。
【0066】
<実施例1>
ポリアミック酸樹脂溶液−1 100質量部(ポリアミック酸樹脂固形分:50.1質量部)に対して、真球状シリカ微粒子(株式会社アドマテックス製、商品名:アドマファインSC2500-SE、平均粒子径0.5μm)20質量部、ヒュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL R972)2質量部、および1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン10質量部を均一に混合し、ペースト状の樹脂組成物を得た。この組成物の粘度は1.0rpmで120Pa・s、10.0rpmで70Pa・sであった。
【0067】
この組成物を6インチウェハ上にスクリーン印刷した後、150℃で1時間、さらに250℃で4時間加熱して硬化させたところ、膜厚約20μmの硬化膜のパターンが得られた。得られたパターンを目視により観察したが、該パターンは、メッシュ目が認められず表面平滑であり、発泡も認められず、かつパターン縁ににじみも認められないものであった。また、マスクの設置、スキージによる組成物の充填、およびマスクの取り外しを1回の成型工程として、連続成形を100回行った後でもパターンの悪化(パターン形状の悪化)は認められなかった。
【0068】
なお、スクリーン印刷は、スクリーン印刷機(C.W.PRICE CO.INC.製、商品名:MODEL MC212)およびスクリーンマスク(325メッシュ、乳厚:15μm、メッシュ厚:35μm)を用いて行った。以下、同じである。
【0069】
<実施例2>
ポリイミド樹脂溶液−1 100質量部(ポリイミド樹脂固形分:40.5質量部)に対して、真球状シリカ微粒子(株式会社アドマテックス製、商品名:アドマファインSC2500-SE、平均粒子径:0.5μm)20質量部、および1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン10質量部を均一に混合し、ペースト状樹脂組成物を得た。この組成物の粘度は1.0rpmで150Pa・s、10.0rpmで100Pa・sであった。
【0070】
この組成物を6インチウェハ上にスクリーン印刷した後、150℃で1時間、さらに250℃で4時間加熱して硬化させたところ、膜厚約20μmの硬化膜のパターンが得られた。得られたパターンを目視により観察したが、該パターンは、メッシュ目が認められず表面平滑であり、発泡も認められず、かつパターン縁ににじみも認められないものであった。また、実施例1と同様にして連続成形を100回行った後でもパターンの悪化は認められなかった。
【0071】
<比較例1>
ポリアミック酸樹脂溶液−1 100質量部(ポリアミック酸樹脂固形分:50.1質量部)に対して、ヒュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL R972)15質量部、および1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン10質量部を均一に混合し、ペースト状樹脂組成物を得た。この組成物の粘度は1.0rpmで400Pa・s、10.0rpmで70Pa・sであった。
【0072】
この組成物を6インチウェハ上にスクリーン印刷した後、150℃で1時間、さらに250℃で4時間加熱し硬化させたところ、膜厚約20μmの硬化膜のパターンが得られた。得られたパターンを目視により観察したところ、該パターンには、表面にメッシュ目残りおよび発泡が認められ、またパターン縁にはにじみが認められた。
【0073】
<比較例2>
ポリアミック酸樹脂溶液−1 100質量部(ポリアミック酸樹脂固形分:50.1質量部)に対して、真球状シリカ微粒子(株式会社アドマテックス製、商品名:アドマファインSC2500-SE、平均粒子径:0.5μm)180質量部、および1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン30質量部を均一に混合し、ペースト状樹脂組成物を得た。この組成物の粘度は1.0rpmで90Pa・s、10.0rpmで60Pa・sであった。
【0074】
この組成物を6インチウェハ上にスクリーン印刷した後、150℃で1時間、さらに250℃で4時間加熱し硬化させたところ、膜厚約20μmの硬化膜のパターンが得られた。得られたパターンを目視により観察したが、該パターンは、メッシュ目が認められず表面平滑であり、発泡も認められず、かつパターン縁ににじみも認められないものであった。ところが、ウェハと硬化膜のパターンとの界面に剥離が生じていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリアミック酸樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂およびポリアミドイミド樹脂からなる群から選ばれる樹脂、
(B)平均粒子径が0.05μm〜10μmの球状金属酸化物微粒子:(A)成分100質量部に対して5〜350質量部、ならびに
(C)有機溶剤
を含有するスクリーン印刷用樹脂組成物。
【請求項2】
上記(B)球状金属酸化物微粒子がシラザン類および/またはシランカップリング剤で表面処理された球状金属酸化物微粒子である請求項1に係る組成物。
【請求項3】
上記シラザン類がヘキサメチルジシラザンである請求項2に係る組成物。
【請求項4】
上記シランカップリング剤が、アミノ基、グリシジル基、メルカプト基、ウレイド基、ヒドロキシ基およびアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一種の活性基を有する化合物である請求項2または3に係る組成物。
【請求項5】
上記(B)球状金属酸化物微粒子が平均粒子径0.05μm〜10μmの真球状シリカ微粒子を60〜100質量%含有する請求項1〜4のいずれか一項に係る組成物。
【請求項6】
上記(C)有機溶剤が沸点200℃以上の有機溶剤を含有する請求項1〜5のいずれか一項に係る組成物。

【公開番号】特開2007−16158(P2007−16158A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−200082(P2005−200082)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】