説明

スクリーン印刷装置

【課題】スクリーンマスクのパターン孔への隙間無いインク充填を実現して、気泡による印刷の断線、欠けを低減できるスクリーン印刷装置を提供する。
【解決手段】スクリーン印刷装置は、スキージ11と、印刷ステージ51と、振動源61とを備えている。スキージ11によりスクリーンマスク21の上面を摺動することにより、印刷ステージ51の上部に配置されたスクリーンマスク21のパターン孔22からペーストインキ41が充填され、さらにスクリーンマスク21が被印刷物31から離れることによって、被印刷物31に印刷がなされる。印刷ステージ51の盤面下側に接続された振動源61は、印刷ステージ51の表面に横波の振動を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギャップ印刷を行うスクリーン印刷装置に係り、特に、気泡による印刷の断線や欠けを低減する機構を持ったスクリーン印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリーン印刷は、比較的少ないプロセスでパターン形成が可能であり、ディスプレーやモバイル機器、太陽電池などの製造分野で使用されている。また、大面積にも対応していることから、大型ディスプレーの配線形成への応用が期待されている。
スクリーン印刷の高品質化には、ペーストインキをスクリーン上に供給し、そのペーストをパターン孔に精密に充填させ、パターン孔内のペーストを被印刷体へ正確に転写させることが必要である。
【0003】
しかし、既存の技術では、スクリーンマスク、スキージ、ペーストインキなど単独部品、単独材料の改造に主眼が置かれ、ペーストレオロジーの改良、スクリーンの抜け性、変形の改良など、個々の部品や材料の改良など部分的な改良を中心に行なわれてきた。
部材の高品質化によって、スクリーン印刷で形成される配線パターンの微細化、細線化から、要求される印刷技術は年々高まってきており、部品や材料の改良だけでは対応が難しくなってきている。
この対策として、特許文献1に開示の技術では、スクリーン印刷装置のスキージの機構を変更することで印圧を制御し、印刷を安定させる手段を採っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004‐098500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、スキージの機構が大掛かりとなる上、広い範囲でスクリーンマスクを抑えることになるため、パターン孔を覆ってしまい、スキージングの際にパターン孔内のエア抜けを妨げるため、印刷品質の低下に繋がるという不具合がある。
本発明の目的は、スクリーンマスクのパターン孔への隙間無いインク充填を実現して、気泡による印刷の断線、欠けを低減できるスクリーン印刷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、印刷ステージと、前記印刷ステージの上部に配置されパターン孔が形成されたスクリーンマスクと、スクリーンマスクの上面を摺動することによりインキを前記パターン孔へ充填して前記印刷ステージ上に配置された被印刷物へ転写するスキージと、を備えているスクリーン印刷装置において、前記印刷ステージを振動する少なくとも1つ以上の振動源を備えていることを特徴とするスクリーン印刷装置である。
【0007】
(2)この場合に、前記振動源の1つは前記印刷ステージの略中央に設けられていることを特徴とするようにしてもよい。
(3)また、前記振動源は、前記印刷ステージに加える振動の周波数が15kHz〜25kHzの範囲のいずれかの値であることを特徴とするようにしてもよい。
(4)この場合に、前記振動源は、前記印刷ステージに加える振動の振幅が前記インキの粒子の粒径の40%〜80%の範囲のいずれかの値であることを特徴とするようにしてもよい。
【0008】
(5)この場合に、前記印刷ステージは、その上面の形状が正方形、長方形、円形のいずれかであり、印刷ステージの長さ寸法Lおよび幅寸法Wが、印刷ステージに加えられる振動の半波長をλとし、任意の整数n、mとすると、
(n+1/12)×λ≦L≦(n+11/12)×λ、
(m+1/12)×λ≦W≦(m+11/12)×λ
の関係にあることを特徴とするようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、印刷ステージを振動源により微少振動させることで、印刷の際にスクリーンマスクと印刷ステージの間に微小の隙間が発生する。この隙間によりスクリーンマスクのパターン孔にトラップされた気泡が外へ出ることが可能となり、インキがパターン孔に隙間無く充填される。このインキが被印刷物に転写されることで、断線や欠けの無い印刷を実現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態にかかるスクリーン印刷装置による印刷の様子の断面を側面側から見た一例を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかるスクリーン印刷装置において振動源により印刷ステージの振動を行わなかった場合のパターン孔の周辺を拡大した拡大断面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかるスクリーン印刷装置において振動源により印刷ステージの振動を行なった場合のパターン孔の周辺を拡大した拡大断面図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかるスクリーン印刷装置においてスクリーンマスクと被印刷物との間の間隙周辺を拡大した拡大断面図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかるスクリーン印刷装置において振動源の配置について説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態にかかるスクリーン印刷装置による印刷の様子の断面を側面側から見た一例を示す概略図である。このスクリーン印刷装置は、スキージ11と、印刷ステージ51と、振動源61とを備えている。スキージ11によりスクリーンマスク21の上面を摺動することにより、印刷ステージ51の上部に配置されたスクリーンマスク21のパターン孔22からペーストインキ41が充填され、さらにスクリーンマスク21が被印刷物31から離れることによって、被印刷物31に印刷がなされる。印刷ステージ51の盤面下側に接続された振動源61は、印刷ステージ51の表面に横波の振動を発生させる。
【0012】
図2は、図1の装置において、振動源61により印刷ステージ51の振動を行わなかった場合のパターン孔22の周辺を拡大した拡大断面図である。これは、パターン孔22に気泡71がトラップされる様子を断面から観察した一例の概略図である。振動源61により印刷ステージ51の振動を行わなかった場合には、ペーストインキ41の転写の際に、スクリーンマスク21と被印刷物31との間に隙間がなく、ペーストインキ41内にトラップされた気泡71の逃げ道が無くなるため、被印刷物31には印刷欠けや印刷の断線が発生する。
【0013】
図3は、図1の装置において、振動源61により印刷ステージ51の振動を行なった場合のパターン孔22の周辺を拡大した拡大断面図である。すなわち、同図は、スクリーン印刷装置で印刷を行った際の、パターン孔22にトラップされた気泡71が、印刷ステージ51の振動によって発生したスクリーンマスク21と被印刷物31との間の間隙81から抜けていく動向を断面から観察した一例の概略図である。
【0014】
図2のように振動源61により印刷ステージ51の振動を行なわなかった場合に比べて、本実施形態のスクリーン印刷装置では印刷ステージ51を振動源61で振動させることにより、スクリーンマスク21と被印刷物31の間に間隙81を作り出し、気泡71がパターン孔22の外部へと出ることが出来る。このように気泡71を外部へと出すことで、パターン孔22にペーストインキ41が隙間無く充填され、ペーストインキ41の被印刷物31への転写時に印刷の欠けや断線の発生を防ぐことが出来る。
【0015】
図4は、スクリーンマスク21と被印刷物31との間の間隙81周辺を拡大した拡大断面図である。ペーストインキ41に含まれるペーストインキ粒子42の大きさが、印刷ステージ51の振動によって発生したスクリーンマスク21と被印刷物31との間の間隙81よりも大きいことをしめしている。すなわち、間隙81の大きさをインキ粒子42より小さくすることで、ペーストインキ41が間隙81より滲み出すことを防ぐことが出来ることがわかる。
【0016】
振動源61には電歪素子が用いられ、材質はチタン酸ジルコン酸鉛が使用されている。電歪素子の寸法は、駆動周波数に反比例して小さくなる。機械的振動を得るためには、ある程度の大きさの駆動周波数が必要であり、10kHz〜25kHz程度であることが望ましい。また、気泡71がトラップされるエリアは微小である。任意の場所で常に間隙81を得るためには、駆動周波数は15kHz以上であることが望ましい。上記2点から、これに限定されるものではないが駆動周波数は15kHz〜25kHzであることが望ましい。
【0017】
さらに、振動は振動源61を中心とした波として印刷ステージ51上を伝わっていく。このときに印刷ステージ51上に得られる振動は、振動源61から伝播した進行波と、印刷ステージ51端部から反射された反射波の合成となり、進行波と反射波の位相によって、得られる振幅の大きさが決まる。この位相が同相の場合、印刷ステージ51上には定在波が発生し、一定の場所に振幅の山と谷が現れる。また、逆相の場合は進行波と反射波がお互いに打ち消すように働くため、振動を得ることができない。このため、印刷ステージ51上に均一な大きさの振動を得るためには、進行波と反射波の位相をある程度ずらす必要があり、印刷ステージ51の寸法で調整をすることが出来る。
【0018】
最適な印刷ステージ51の寸法は、長さ寸法L及び幅寸法Wが、印刷ステージに加えられる振動の半波長λ、任意の整数n、mとすると、“(n+1/12)×λ≦L≦(n+11/12)×λ、(m+1/12)×λ≦W≦(m+11/12)×λ”であることが望ましい。また、均一な振動を得るためには、振動源61は少なくとも印刷ステージ51の略中央に位置することが望ましい。さらに複数の振動源61を設置する場合は、図5に示すように、1つの振動源61は印刷ステージ51の略中央に配置し、他の振動源61は印刷ステージ51の略中央の振動源61から半波長の整数倍の距離Pとなるような位置(図5の点線上)に設置する必要がある。
【0019】
次いで、印刷ステージ51上に得られる振動の振幅が小さいと間隙81がほとんど発生しないため、気泡71がパターン孔22から抜け出すことが出来ない。逆に、ペーストインキ粒子42に比べ大きすぎると、ペーストインキ41が滲み出してしまう。そこで、印刷ステージ51上に得られる振動の振幅の大きさは、ペーストインキ粒子42の粒径の40%〜80%であることが望ましい。
【0020】
ペーストインキ粒子42の具体例としては、銀、銅、錫と銀の合金などからなる粒子が挙げられる。ペーストインキ粒子42の粒径は、0.5〜3μmが好ましい。特に錫と銀の合金などからなる粒子の場合、10〜20μmで用いられる。
ペーストインキ41に含まれる樹脂としては、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられるが、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0021】
11 スキージ
21 スクリーンマスク
22 パターン孔
51 印刷ステージ
61 振動源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷ステージと、
前記印刷ステージの上部に配置されパターン孔が形成されたスクリーンマスクと、
スクリーンマスクの上面を摺動することによりインキを前記パターン孔へ充填して前記印刷ステージ上に配置された被印刷物へ転写するスキージと、
を備えているスクリーン印刷装置において、
前記印刷ステージを振動する少なくとも1つ以上の振動源を備えていることを特徴とするスクリーン印刷装置。
【請求項2】
前記振動源の1つは前記印刷ステージの略中央に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項3】
前記振動源は、前記印刷ステージに加える振動の周波数が15kHz〜25kHzの範囲のいずれかの値であることを特徴とする請求項2に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項4】
前記振動源は、前記印刷ステージに加える振動の振幅が前記インキの粒子の粒径の40%〜80%の範囲のいずれかの値であることを特徴とする請求項3に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項5】
前記印刷ステージは、その上面の形状が正方形、長方形、円形のいずれかであり、印刷ステージの長さ寸法Lおよび幅寸法Wが、印刷ステージに加えられる振動の半波長をλとし、任意の整数n、mとすると、
(n+1/12)×λ≦L≦(n+11/12)×λ、
(m+1/12)×λ≦W≦(m+11/12)×λ
の関係にあることを特徴とする請求項4に記載のスクリーン印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−67043(P2013−67043A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205772(P2011−205772)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】