説明

スクロール圧縮機

【課題】スクロール圧縮機における旋回半径可変機構において、偏心ブッシュ機構の構造や大きさを変えずに回転規制手段を設けることにより、小型軽量構造の電動圧縮機を提供するものである。
【解決手段】偏心ブッシュ80のスイングに伴う回転規制を、旋回スクロール12の規制穴12cの内壁12dと、この規制穴12cに小隙間81で嵌め合う駆動ピン14aの外壁14bとの間で行うことで、従来のような回転角度範囲制限手段を別構成で設ける必要がなく、構造が簡単かつ堅牢となり、廉価で信頼性の高いスクロール圧縮機の提供が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハウジング内に、冷媒の吸入、圧縮および吐出を行う圧縮機構部と、この圧縮機構部を駆動するモータとを収容したモータ内蔵型のスクロール圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンとモータとを使い分けて走行するハイブリッド自動車が実用化され急速に普及しつつある。ハイブリッド自動車では、エンジンによる環境への影響を軽減するという本来の目的から、自動車が信号などで一時停止する場合にはエンジンを止め、圧縮機のみで運転することによって車室内の空調を行っている。このようなハイブリッド自動車では、エンジンルームでの機器の配置は従来型自動車を原型としながらバッテリの配置スペースをさらに工夫するなどしているため、圧縮機を搭載するスペースは極めて狭く、従来どおりにエンジンに横付けする場合が多い。したがって、車載用の圧縮機は、家庭用の圧縮機に比べ、より小型軽量かつ高信頼性構造が求められている。
【0003】
ところで、車載用の圧縮機は、車室内負荷が大きいため家庭用圧縮機より大きい排気量を必要とする。このような大排気量をスクロール圧縮機で構成する場合は、スクロール羽根高さが増大するため、加工精度や運転中の熱変形によって、一回転中に固定スクロール羽根と旋回スクロール羽根の接触にムラが生じて性能劣化をきたす場合がある。これらの対策として、旋回スクロールを径方向に追随接触させるリンク機構を採用しているタイプのものが多い。
そのような中で、偏心ブッシュを用いて羽根径方向追随機構の技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この偏心ブッシュ機構を用いた従来の圧縮機の断面を図6に示す。圧縮機ハウジング101の後端部に固定スクロール102が固定され、複数個の圧縮作業空間105を構成するように旋回スクロール106が噛み合わされている。旋回スクロール106の羽根108とは反対側の背面上に円筒上のボス109が形成され、その内部に旋回軸受110が配設されている。偏心穴112を有する肉厚の厚い円板状あるいは短軸上の偏心ブッシュ111が旋回スクロール106のボス109内に旋回軸受110を介して回転可能に支持されている。主軸114の端面から軸方向に偏心延出された駆動ピン115が偏心ブッシュ111の偏心穴112に回転可能に勘合されて、旋回スクロール106に旋回運動が与えられる。一方、主軸114への回転力の伝達は、軸封装置117を介して圧縮機ハウジング101外に突出した主軸114の端部に取付けられた電磁クラッチ118により外部駆動源(例えば自動車エンジン、図示せず)の回転をベルト等の伝達手段(図示せず)を介して行われる。
【0005】
このような駆動機構の構成においては、主軸114が回転すると流体圧縮ガス力などの作用力により偏心ブッシュ111の中心は駆動ピン115の中心を中心として円弧上にスイングする。これにより旋回スクロール羽根108が固定スクロール羽根104に追随して接触し圧縮作業空間105の径方向シール性を良好にする。
【0006】
この従来圧縮機は駆動ピン115の位置が固定されており、この位置に限定することにより、始動時などの急激な加速度の増加変化が発生する場合には、旋回部品の慣性力が作用して偏心ブッシュ111の中心は両羽根の接触部が離れて圧縮作業空間105の圧力が開放される方向にスイングする。その結果、始動時の異常音や異常ショックの発生が妨げるようになっている。
【0007】
ただし、偏心ブッシュ111は駆動ピン115周りに回転可能であるので上記のような半径方向密封効果を有するが、周囲の部品との干渉等の問題を解消するために偏心ブッシュ111のスイングに伴う回転角度範囲を制限する必要があり、偏心ブッシュ111に規制ピン113を延出させ、主軸114に設けた規制穴116に所定量の隙間で嵌入することにより構成している。
【0008】
また、同様の方法として、規制ピンを主軸側に設けて、規制穴を偏心ブッシュ側に設けて周囲の部品との干渉等の問題を解消する技術も開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開昭58−067903号公報
【特許文献2】特開昭56−129791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、始動時には、旋回部品の慣性力が作用して偏心ブッシュ111の中心は両羽根の接触部が離れて圧縮作業空間105の圧力が開放される方向にスイングし、その結果、規制ピン113の外壁と主軸114に設けた規制穴116の内壁とが衝突して、規制ピン113は衝撃せん断荷重を受け、変形、破断を招くおそれがあった。このため、規制ピン113のピン径を大きくしてせん断許容応力をあげる必要があるが、小型軽量構造の中で、偏心ブッシュ径をむやみに大きくすることはできず、偏心穴112周りの狭いスペースに、ピン径の大きい規制ピン113を構成することは極めて困難なものとなる。
【0010】
そこで、本発明は、上記従来の問題点に鑑み、小型軽量構造の圧縮機の中で信頼性の高い回転角度範囲制限手段を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明によるスクロール圧縮機は、固定スクロールと旋回スクロールとを有する圧縮機構部と、旋回スクロールを固定スクロールに対し旋回させる駆動ピンを有する主軸と、駆動ピン周りに回転可能に嵌合接合される偏心穴を有し、旋回スクロールの背面に形成したボスの内部に設けられる旋回軸受に嵌合して該旋回スクロールに旋回運動を付与する偏心ブッシュとを備え、ボスの内部の背面に駆動ピンの径より所定量だけ大きな径を有する規制穴を設け、駆動ピンを偏心ブッシュを貫通して規制穴にまで嵌入することにより、偏心ブッシュの駆動ピンに対する回転を規制したもので、回転角度範囲制限手段として、駆動ピンが規制ピンとしての機能を持つことができるように、規制穴を旋回スクロールのボスの内部に形成したものである。
【0012】
このような構成により、偏心ブッシュ機構の構造やサイズを変えずに、規制ピンを径が大きな駆動ピンで兼用することができ、せん断許容応力を増大させることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のスクロール圧縮機によれば、簡便な構造で規制ピンの強度を向上させることが可能となり、始動時の規制ピンの衝突によるピンの破損を防止することができる。また、新たに規制ピンを設ける必要がないため、低コスト化も同時に実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
第一の発明は、冷媒の吸入、圧縮および吐出を行う固定スクロールと旋回スクロールとを有する圧縮機構部と、旋回スクロールを固定スクロールに対し旋回させる駆動ピンを有する主軸と、駆動ピン周りに回転可能に嵌合接合される偏心穴を有し、旋回スクロールの羽根延出面とは反対側の背面に形成したボスの内部に設けられる旋回軸受に嵌合して該旋
回スクロールに旋回運動を付与する偏心ブッシュとを備え、ボスの内部の背面に駆動ピンの径より所定量だけ大きな径を有する規制穴を設け、駆動ピンを偏心ブッシュを貫通して前記規制穴にまで嵌入することにより、偏心ブッシュの駆動ピンに対する回転を規制するもので、これにより偏心ブッシュ機構の構造やサイズを変えずに、規制ピンを径が大きな駆動ピンで兼用することができ、せん断許容応力を増大させることができる。
【0015】
第二の発明は、特に、第一の発明において、旋回スクロールの規制穴の底面と駆動ピンの先端面との間に隙間を設けるもので、これにより主軸内の給油路から供給される潤滑油をスムーズに流通させ、軸受部への潤滑を良好に行うことができる。
【0016】
第三の発明は、特に、第一の発明において、旋回スクロールの規制穴を耐摩耗性材料の円筒リングを圧入固定して形成するもので、これにより駆動ピンと規制穴との衝突による旋回スクロールの摩耗および損傷を防止することができる。
【0017】
以下、本発明による電動圧縮機の実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。なお、以下に説明する技術的要素は本発明の目的に反しない限りそれぞれを種々の組合せで採用することが可能である。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるスクロール圧縮機の断面図で、圧縮機構部を駆動するモータの回転中心軸が略水平方向に沿った状態で設置されるいわゆる横置きのモータ内蔵型のスクロール圧縮機に本発明を適用した例である。
【0019】
図1において、スクロール圧縮機1の圧縮機構部4は、固定スクロール11の固定鏡板11a、及び、旋回スクロール12の旋回鏡板12aからそれぞれ立ち上がった渦巻状の羽根をお互いに噛合わせて圧縮空間10を形成し、旋回スクロール12をモータ5により主軸14を介して固定スクロール11に対し円軌道運動させたときに圧縮空間10が移動を伴い容積を変化させることにより、外部サイクルから帰還する冷媒の吸入、圧縮および外部サイクルへの吐出を、圧縮機構部4に設けた吸入口8および本体ケーシング3に設けた吐出口9を通じて行う。
【0020】
また、本体ケーシング3内の軸線方向の一方の後端部壁3a側からポンプ13、副軸受41、モータ5、及び主軸受42を持った主軸受部材51を配置してある。ポンプ13は端壁部3aの外面から収容してその後に嵌め付けた蓋体52との間に保持し、蓋体52の内側に貯液部6に通じるポンプ室53を形成して吸上げ通路54を介して貯液部6に通じるようにしてある。副軸受41は後端部壁3aにて支持し、主軸14のポンプ13に連結している側を軸支するようにしてある。
【0021】
容積型ポンプ13を主軸14にて駆動することにより本体ケーシング3の貯液部6に貯留されている潤滑油7が吸上げ通路54を介して吸い上げられ、主軸14の給油路15を通じ旋回スクロール12の旋回駆動に伴い旋回スクロール12の背面の液溜り21に供給される。この液溜り21に供給された潤滑油7の一部は、旋回スクロール12の外周部の背面側空間26に旋回鏡板12aの内部に形成された絞り23などによる所定の制限の基に供給して背圧を発生し、旋回スクロール12をバックアップする。また、液溜り21に供給した潤滑油7の別の一部は、旋回軸受43、主軸受42を経ながら、それら軸受を潤滑した後、モータ5側に流出して貯液部6へと回収される。
【0022】
モータ5は、固定子5aを本体ケーシング3に環状部材17によって固定され、主軸14の途中まわりに固定した回転子5bとによって主軸14を回転駆動できるようにしている。主軸受部材51はケーシング3の開口端に嵌合され、固定スクロール11と共にサブ
ケーシング102によって挟持する状態で、図示しないボルトなどによって固定し、主軸14の圧縮機構部4側を主軸受42により軸支している。さらに、これら主軸受部材51と固定スクロール11との間に旋回スクロール12を挟み込んで構成している。
【0023】
主軸受部材51と旋回スクロール12との間には、旋回スクロール12の自転を防止して円運動させるためのオルダムリング57が設けられ、主軸14を偏心ブッシュ80と旋回軸受43とを介して旋回スクロール12に接続して、旋回スクロール12を円軌道上で旋回させられるようにしている。
【0024】
固定スクロール11の固定鏡板11aには吐出孔31及びリード弁31aが設けられ、サブケーシング102との間に形成される吐出室62に開口される。吐出室62は、固定スクロール11および主軸受部材51ないしはこれらと本体ケーシング3との間に形成した連絡通路63を通じて圧縮機構部4と後端部壁3aとの間の、吐出口9を有するモータ5側に通じている。
【0025】
モータ駆動回路部101は、サブケーシング102内に前端部壁102aを隔て吸入室61及び吐出室62の反対側に回路基板103と、図示しない電解コンデンサとを収容して構成され、回路基板103には発熱度の高いスイッチング素子を含むIPM(インテリジェントパワーモジュール)105が搭載される。モータ駆動回路部101は、モータ5などと圧縮機ターミナル106を介して電気的な接続が行われ、モータ5を温度などの必要な情報をモニタしながらモータ駆動回路部101によって駆動するようにしてある。このためモータ駆動回路部101は外部との電気的な接続を行う図示しないハーネスコネクタが設けられている。
【0026】
以上によって、モータ5はモータ駆動回路部101によって駆動され、主軸14を介して圧縮機構部4とポンプ13を駆動する。このとき圧縮機構部4はポンプ13により貯液部6の潤滑油7を供給されて潤滑およびシール作用を受けながら、固定スクロール11に設けた吸入口16を通じ冷凍サイクルからの帰還冷媒を吸入して圧縮し、吐出孔31から吐出室62に吐出する。吐出室62に吐出された冷媒は連絡通路63を通じてモータ5側に入り、モータ5を冷却しながら本体ケーシング3の吐出口9から吐出されるまでの長い過程で、冷媒は衝突、遠心、絞りなど各種の気液分離を図って潤滑油7の分離を受けながらも、随伴している一部潤滑油7によって副軸受41の潤滑も行う。
【0027】
次に、図2〜図3に基づいて、旋回半径19を可変とする駆動機構について説明する。図2は、本発明の実施の形態1におけるスクロール圧縮機の偏心ブッシュ近傍の軸方向断面図で、図3は、同スクロール圧縮機の偏心ブッシュの動作説明図である。
【0028】
図2において、旋回スクロール12の旋回鏡板12aの背面に形成されたボス12bの内部に、偏心ブッシュ80が旋回軸受43を介して回転可能に嵌合され、さらに偏心ブッシュ80の偏心穴80aには主軸14の駆動ピン14aが回転可能に嵌合される。この駆動ピン14aは偏心ブッシュ80の軸方向長さよりわずかに長く、その先端は偏心ブッシュ80を貫通して所定量だけ突出するようにしてある。
【0029】
さらに、旋回スクロール12のボス12bの内部の背面には、偏心ブッシュ80の偏心穴80aの位置に合わせて駆動ピン14aの径より所定量(例えば2mm)大きい径を有する凹形状の規制穴12cを形成している。このように形成された規制穴12cに駆動ピン14aの先端を嵌め合い、規制穴12cの内壁12dと駆動ピン14aの外壁14bとの間にそれぞれの径の違いに応じて小隙間81を有する状態を構成する。
【0030】
このような構成により、偏心ブッシュ80は駆動ピン14aの中心(駆動ピン中心と称
する)Odを回転中心にしてスイング可能となり、偏心ブッシュ80の中心(ブッシュ中心と称する)Ocは駆動ピン中心Odを中心として駆動ピン中心Odとブッシュ中心Oc間の距離を半径とする円弧上を動くことになる。そして、この時の偏心ブッシュ80のスイング運動に伴う回転規制を、旋回スクロール12の規制穴12cと、これに小隙間81で嵌め合う駆動ピン14aの外壁14bとの間で行うことができ、この小隙間81が回転角度範囲を決定する。
【0031】
運転中は、流体圧縮ガス力と旋回部品の遠心力がブッシュ中心Ocに図3に示す方向に作用するものと考えられる。これらの作用力が駆動ピン中心Odの周りに偏心ブッシュ80を回転させるモーメントに変換されて、前述のように偏心ブッシュ80は駆動ピン中心Odを回転中心としてスイングし、主軸14の軸心Osからブッシュ中心Ocまでの距離に変化を与える。これは、旋回スクロール12の旋回半径19が可変することを意味し、図3より、運転中の回転モーメントは、偏心ブッシュ80を旋回半径19が大きくなる方向にスイングさせる。このことによって、旋回スクロール12の羽根が固定スクロール11の羽根に当接して圧縮作業空間の径方向のシール性を良好にする。このときの両スクロールの羽根間の接触荷重は、小さすぎると羽根間の接触が悪くなって隙間ができ、ガス漏れの原因となる。逆に、接触荷重が大きすぎると摩耗の原因となる。
【0032】
また、旋回半径19が大きくなる方向にスイングした場合、羽根間が接触するまでに、駆動ピン14aの外壁14bが規制穴12cの内壁12dに接触することがないように、小隙間81が設定されている。
【0033】
一方、始動時など、加速度が急激に増加する時には、旋回部品の慣性力が作用して偏心ブッシュ80を両羽根が離れる方向にスイングさせ、圧縮作業空間の圧力を開放し、始動時の異常音や異常ショック、液圧縮などを緩和する効果を有する。この際、図4に示すように、駆動ピン14aの外壁14bが規制穴12cの内壁12dに接触し、必要以上に両羽根が離れることによって、再度両羽根が接触するときに過大なリバウンド力が生じることを防ぐ。
【0034】
このように本構造では、偏心ブッシュ80のスイングに伴う回転規制が、規制穴12cの内壁12dと、この規制穴12cに小隙間81で嵌め合う駆動ピン14aの外壁14bとの間で行われるので、従来のような回転角度範囲制限手段を別構成で設ける必要がなく、構造が簡単となり、製造コストが低減し、廉価なスクロール圧縮機の提供が可能となる。
【0035】
なお、本発明のスクロール圧縮機は、前述したように、本体ケーシング3の貯液部6に貯留されている潤滑油7が容積型ポンプ13を主軸14にて駆動することにより、主軸14の給油路15を通じ旋回スクロール12の旋回駆動に伴い旋回スクロール12の背面の液溜り21に供給する。この際、規制穴12cの規制穴底面12eと駆動ピン14aの先端との距離が小さいと、液溜り21への潤滑油7の流入が十分に行われない。本構造では、液溜り21への流路断面積を給油路15の通路断面積より大きくなるように、規制穴底面12eと駆動ピン14aの先端とに適切な流路隙間29を設けることで円滑な潤滑を行うことが可能となる。
【0036】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について、図5に示すスクロール圧縮機の断面図を参照しながら説明する。
【0037】
本発明は、実施の形態1でも説明したように、始動時など、両羽根が離れる方向に偏心ブッシュ80がスイングした場合、駆動ピン14aの外壁14bが規制穴12cの内壁1
2dに接触して必要以上に両羽根が離れることを防いでいる。通常、駆動ピン14aは鉄系材料を用い、旋回スクロール12はアルミ系材料を用いるため、接触力が大きいと規制穴12cの内壁12dが異常に摩耗したり、損傷したりする可能性がある。
【0038】
本構造では規制穴12cを、ボス12bの内部の底面又は底面に設けた凹部に耐摩耗性材料の円筒リング82を圧入固定して形成している。耐摩耗性材料としては、例えば駆動軸14と同じ鉄系の材料などが好適であり、これにより、前述の不具合を解消することが可能となる。
【0039】
なお、本発明では規制穴12cの異常摩耗防止として別部材の円筒リング82を用いたが、ボス12bの内部の底面に直接設けた規制穴12cに耐摩耗性の表面処理を施しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によるスクロール圧縮機は、新たな規制ピンを設けることなく偏心ブッシュの駆動ピンに対する回転角度範囲制限手段を構成することが可能となることで、スクロール圧縮機の小型軽量化が図れ、ハイブリッド車等の環境車両に特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態1におけるスクロール圧縮機の断面図
【図2】同スクロール圧縮機の偏心ブッシュ近傍の軸方向断面図
【図3】同スクロール圧縮機の偏心ブッシュの動作説明図
【図4】同スクロール圧縮機の偏心ブッシュの動作説明図
【図5】本発明の実施の形態2におけるスクロール圧縮機の断面図
【図6】従来のスクロール圧縮機の断面図
【符号の説明】
【0042】
1 スクロール圧縮機
4 圧縮機構部
11 固定スクロール
11a 固定鏡板
12 旋回スクロール
12a 旋回鏡板
12b ボス
12c 規制穴
12e 規制穴底面
14 主軸
14a 駆動ピン
29 流路隙間
41 副軸受
42 主軸受
43 旋回軸受
80 偏心ブッシュ
81 小隙間
82 円筒リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒の吸入、圧縮および吐出を行う固定スクロールと旋回スクロールとを有する圧縮機構部と、前記旋回スクロールを前記固定スクロールに対し旋回させる駆動ピンを有する主軸と、前記駆動ピン周りに回転可能に嵌合接合される偏心穴を有し、前記旋回スクロールの羽根延出面とは反対側の背面に形成したボスの内部に設けられる旋回軸受に嵌合して該旋回スクロールに旋回運動を付与する偏心ブッシュとを備え、前記ボスの内部の前記背面に前記駆動ピンの径より所定量だけ大きな径を有する規制穴を設け、前記駆動ピンを前記偏心ブッシュを貫通して前記規制穴にまで嵌入することにより、前記偏心ブッシュの前記駆動ピンに対する回転を規制したことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項2】
旋回スクロールの規制穴の底面と駆動ピンの先端面との間に隙間を設けたことを特徴とする請求項1に記載のスクロール圧縮機。
【請求項3】
旋回スクロールの規制穴を耐摩耗性材料の円筒リングを圧入固定することにより形成したことを特徴とする請求項1に記載のスクロール圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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