説明

スクロール圧縮装置

【課題】駆動軸のスラスト面での摺動ロスを低減するスクロール圧縮装置を提供する。
【解決手段】ケーシング3の内部に冷媒を圧縮するスクロール圧縮機構11と、スクロール圧縮機構11と駆動軸15で連結され当該スクロール圧縮機構11を駆動する駆動モータ13とが収容され、スクロール圧縮機構11がメインフレーム21によりケーシング3に支持され、駆動モータ13のステータ37が直接的または間接的にケーシング3に支持され、駆動モータ13のロータ39に駆動軸15が連結され、当該駆動軸15がベアリングプレート8によりケーシング3に支持され、駆動軸15の下端がベアリングプレート8に設けたスラストプレート6で支持され、ロータ39中心位置をステータ37中心位置よりも下側に位置させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定スクロールと揺動スクロールの噛み合いにより圧縮を行うスクロール圧縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、密閉されたケーシング内に、互いに噛合する渦巻き状のラップを有する固定スクロールと揺動スクロールとからなる圧縮機構を備え、この圧縮機構を駆動モータで駆動させて、固定スクロールに対して揺動スクロールを揺動動作させることにより圧縮を行うスクロール圧縮装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−035289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スクロール圧縮装置では、駆動モータの上下に駆動軸をケーシングに支持する軸受が設けられる。駆動軸の下部を支持するベアリンプレートには、駆動軸の下端を支持するスラストプレートが取り付けられる。スラストプレートと、駆動軸の下端とが接するスラスト面には、駆動軸、及び、駆動軸に一体に取り付けられたロータやバランサ等を含む駆動軸組部の自重がかかるため、スラスト面での摺動ロスが大きくなるという問題がある。
本発明は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、駆動軸のスラスト面での摺動ロスを低減するスクロール圧縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、ケーシングの内部に冷媒を圧縮するスクロール圧縮機構と、前記スクロール圧縮機構と駆動軸で連結され当該スクロール圧縮機構を駆動する駆動モータとが収容され、前記スクロール圧縮機構がメインフレームにより前記ケーシングに支持され、前記駆動モータのステータが直接的または間接的に前記ケーシングに支持され、前記駆動モータのロータに前記駆動軸が連結され、当該駆動軸がベアリングプレートにより前記ケーシングに支持され、前記駆動軸の下端が前記ベアリングプレートに設けたスラストプレートで支持され、前記ロータ中心位置を前記ステータ中心位置よりも下側に位置させたことを特徴とする。
この発明では、ロータ中心位置をステータ中心位置よりも下側に位置させたため、駆動モータの運転中には、各中心位置を合わせようとする力が作用するため、ロータに上向きの力が発生し、スラストプレートのスラスト面にかかる力を低減することができ、スラスト面での摺動ロスを低減させることができる。
【0006】
この構成において、前記駆動モータの起動時に前記ロータが上方へジャンプしない範囲で前記ロータ中心位置を前記ステータ中心位置よりも下側に位置させたことを特徴とする構成としても良い。また、運転中に前記ロータ中心位置が前記ステータ中心位置と一致し前記ロータに上向きの力が作用する構成としても良い。また、前記ロータの着磁時に前記ステータの巻線に印加する電圧で前記ロータが着磁できる範囲で前記ロータ中心位置を前記ステータ中心位置よりも下側に位置させた構成としても良い。また、前記駆動モータのステータがスペーサリングにより前記ケーシングに支持されている構成としても良い。また、前記駆動モータは、インバータ制御されるDCモータである構成としても良い。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、駆動軸の下端が前記ベアリングプレートに設けたスラストプレートで支持され、ロータ中心位置をステータ中心位置よりも下側に位置させたため、駆動モータの運転中には、各中心位置を合わせようとする力が作用するため、ロータに上向きの力が発生し、スラストプレートのスラスト面にかかる力を低減することができ、スラスト面での摺動ロスを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明を適用した実施形態に係るスクロール圧縮装置の断面図である。
【図2】スクロール圧縮装置の停止時の部分断面拡大図である。
【図3】スクロール圧縮装置の運転中の部分断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1において、1は内部高圧となるスクロール圧縮装置を示し、この圧縮機1は、冷媒が循環して冷凍サイクル運転動作を行う図外の冷媒回路に接続されて、冷媒を圧縮するものである。この圧縮機1は、縦長円筒状の密閉ドーム型のケーシング3を有する。
このケーシング3は、上下方向に延びる軸線を有する円筒状の胴部であるケーシング本体5と、その上端部に気密状に溶接されて一体接合され、上方に突出した凸面を有する椀状の上キャップ7と、ケーシング本体5の下端部に気密状に溶接されて一体接合され、下方に突出した凸面を有する椀状の下キャップ9とで圧力容器に構成されており、その内部は空洞とされている。ケーシング3の外周面には、ターミナルカバー52が設けられ、このターミナルカバー52の内部には、後述のステータ37に電源を供給する電源供給端子53が備えられる。
【0010】
ケーシング3の内部には、冷媒を圧縮するスクロール圧縮機構11と、このスクロール圧縮機構11の下方に配置される駆動モータ13とが収容されている。これらのスクロール圧縮機構11と駆動モータ13とは、ケーシング3内を上下方向に延びるように配置される駆動軸15によって連結されている。また、これらのスクロール圧縮機構11と駆動モータ13との間には間隙空間17が形成されている。
【0011】
ケーシング3の内部上方には、メインフレーム21が収納され、このメインフレーム21には中央にラジアル軸受部28とボス収容部26とが形成されている。ラジアル軸受部28は、駆動軸15の先端(上端)側を軸支するためのものであり、当該メインフレーム21の一方の面(下側の面)の中央から下方に突出して形成されている。ボス収容部26は後述する揺動スクロール25のボス25Cを収容するためのものであり、メインフレーム21の他方の面(上側の面)の中央を下方に凹陥することにより形成されている。駆動軸15の先端(上端)には、偏心軸部15Aが形成されている。この偏心軸部15Aは、中心が駆動軸15の軸心と偏心して設けられると共に、旋回軸受け24を介して、ボス25Cに旋回駆動可能に挿入されている。
【0012】
上記スクロール圧縮機構11は、固定スクロール23と揺動スクロール25とで構成されている。固定スクロール23は、メインフレーム21の上面に密着して配置される。メインフレーム21は、ケーシング本体5の内面に取り付けられ、固定スクロール23は、メインフレーム21に固定されている。揺動スクロール25は、固定スクロール23に噛合し、固定スクロール23と、メインフレーム21との間の形成される揺動空間12内に配置される。ケーシング3内は、メインフレーム21の下方の高圧空間27と、メインフレーム21の上方の吐出空間29とに区画される。各空間27,29は、メインフレーム21及び固定スクロール23の外周に縦に延びて形成された縦溝71を介して連通している。
【0013】
ケーシング3の上キャップ7には、冷媒回路の冷媒をスクロール圧縮機構11に導く吸入管31が、またケーシング本体5には、ケーシング3内の冷媒をケーシング3外に吐出させる吐出管33がそれぞれ気密状に貫通固定されている。吸入管31は、吐出空間29を上下方向に延び、その内端部はスクロール圧縮機構11の固定スクロール23を貫通して、圧縮室35に連通し、この吸入管31により圧縮室35内に冷媒が吸入される。
【0014】
駆動モータ(DC駆動モータ)13は、直流電源からの入力を受けて駆動するDC(Direct Current)モータであり、環状のステータ37と、このステータ37の内側に回転自在に構成されたロータ39とを備える。駆動モータ13は、一定の入力電圧を受け、パルス波のデューティ比、つまり、パルス波を出す周期と出した時のパルス幅と、を制御するPWM(Pulse Width Modulation)インバータによって回転トルクが制御され駆動する。
【0015】
ロータ39には、駆動軸15を介してスクロール圧縮機構11の揺動スクロール25が駆動連結されている。ステータ37は、ステータコア37Aと、ステータコイル18とから成る。ステータコア37Aは、薄い鉄板を重ね合わせて形成され、内部には、図示は省略したが、複数の溝を有する。ステータコイル18は、複数相のステータ巻線が巻回されて形成され、ステータコア37Aの内部に形成された溝に嵌入されて、ステータコア37Aの上下に備えられる。ステータコイル18は、インシュレータ19の内部に収容されている。ステータコイル18は、不図示の導線を介して電源供給端子53に接続される。
【0016】
ロータ39は、フェライト磁石、或いは、ネオジウム磁石から形成され着磁によって磁化される。ロータ39を磁化させる方法としては、ロータ39をステータ37に内挿した後、ステータ37のステータコイル18を形成するステータ巻き線に電流を流して着磁する巻線着磁、或いは、ロータ39を外部の着磁装置を用いて着磁させた後にステータ37に内挿する外部着磁がある。駆動軸15の内部には、ロータ39の巻線着磁を行う際に、ロータ39の位置決めに用いる、ホルダ(ピンホルダ)58が圧入されている。
ステータ37は、環状のスペーサリング38によってケーシング3の内壁面に支持される。スペーサリング38はケーシング3の内壁面に焼き嵌めによって固定され、ステータ37はスペーサリング38の内壁面に焼き嵌めによって固定される。スペーサリング38の上端面は、ステータ37の上端面よりも下方に設けられる。
【0017】
駆動モータ13の下方には、駆動軸15の下端部を回転可能に嵌入支持するベアリングプレート8が備えられる。ベアリングプレート8は、円筒状に形成され駆動軸15が嵌入されるボス部8Aと、このボス部8Aに略等間隔に周設され4方向に延び、ケーシング本体5に固定されるアーム部8Bとを備える。つまり、駆動軸15は、ベアリングプレート8によってケーシング3に支持される。ベアリングプレート8は、各アーム部8Bの間に形成され、上下の空間を連通する開口部8Eを有する。
【0018】
図1に示す、ベアリングプレート8の下方の下部空間(油溜め)40は、高圧に保たれており、その下端部に相当する下キャップ9の内底部には油が貯留される。ベアリングプレート8と、油溜め40の間には、環状プレート59がベアリングプレート8に固定されて備えられる。また、環状プレート59の上方には、バッフル板14が環状プレート59に支持されて設けられる。バッフル板14は、例えば、多数の細孔14Dを有した、例えば薄板状のパンチングメタルによって形成される。
【0019】
駆動軸15内には、高圧油供給手段の一部としての給油路41が形成され、この給油路41は、駆動軸15の内部を上下に延び、揺動スクロール25の背面の油室43に連通している。この給油路41は、駆動軸15の下端に設けたオイルピックアップ45に連結される。オイルピックアップ45の奥側には、駆動軸15の径方向に延び、給油路41を貫通する横穴57が設けられる。この横穴57には、上述したホルダ58が圧入される。オイルピックアップ45は、ロータ39の着磁後に、駆動軸15に圧入される。
【0020】
オイルピックアップ45は、下端に設けられた吸込口42と、この吸込口42の上方に形成されたパドル44とを備える。オイルピックアップ45の下端は、油溜め40に貯留された潤滑オイルに浸漬されて、当該給油路41の吸込口42が潤滑オイル内にて開口している。駆動軸15が回転すると、油溜め40に貯留された潤滑オイルがオイルピックアップ45の吸込口42から給油路41に入り、この給油路41のパドル44に沿って上方に汲み上げられる。そして、汲み上げられた潤滑オイルは、給油路41を通じ、ラジアル軸受部28、及び、旋回軸受24等のスクロール圧縮機構11の各摺動部分に供給される。さらに、潤滑オイルは、給油路41を通じて揺動スクロール25背面の油室43に供給され、この油室43から、揺動スクロール25に設けられた連通路51を介して、圧縮室35へ供給される。
【0021】
メインフレーム21には、ボス収容部26からメインフレーム21を径方向に貫通し、縦溝71に開口する戻し油路47が形成される。給油路41を通じ、スクロール圧縮機構11の各摺動部分、及び、圧縮室35に供給される潤滑オイルのうち、過剰となった潤滑オイルは、この戻し油路47を通って油溜め40に戻される。戻し油路47の下方には、オイルコレクター46が設けられ、オイルコレクター46は、スペーサリング38の上端近傍まで延在する。ステータ37の外周面には、ステータ37の上下に亘る複数の切欠き54が形成される。戻し油路47、オイルコレクター46を通じて給油路41から戻された潤滑オイルは、この切欠き54、及び、ベアリングプレート8の各アーム部8Bの間を通って油溜め40に戻される。なお、図1の断面図において、吐出管33が説明の便宜上破線で示されているが、吐出管33は、オイルコレクター46とは、位相をずらして配置される。
【0022】
固定スクロール23は、鏡板23Aと、この鏡板23Aの下面に形成された渦巻き状(インボリュート状)のラップ23Bとで構成されている。一方、揺動スクロール25は、鏡板25Aと、この鏡板25Aの上面に形成された渦巻き状(インボリュート状)のラップ25Bとで構成されている。そして、固定スクロール23のラップ23Bと、揺動スクロール25のラップ25Bとは互いに噛合しており、このことにより固定スクロール23と揺動スクロール25との間において、両ラップ23B,25Bで複数の圧縮室35が形成されている。
【0023】
揺動スクロール25は、オルダムリング61を介して固定スクロール23に支持され、その鏡板25Aの下面の中心部には有底円筒状のボス25Cが突設されている。一方、駆動軸15の上端には偏心軸部15Aが設けられ、この偏心軸部15Aは、揺動スクロール25のボス25Cに回転可能に嵌入されている。
さらに、駆動軸15には、メインフレーム21の下側に、カウンタウェイト部(上バランサ)63が設けられ、ロータ39の下部には、下バランサ77が設けられている。駆動軸15は、これらの上バランサ63、及び、下バランサ77によって揺動スクロール25や偏心軸部15A等と動的バランスを取っている。
【0024】
これらのカウンタウェイト部63、及び、下バランサ77により重さのバランスを取りながら駆動軸15が回転することで、揺動スクロール25を公転させるようになっている。そして、この揺動スクロール25の公転に伴い、圧縮室35は、両ラップ23B,25B間の容積が中心に向かって収縮することで吸入管31より吸入された冷媒を圧縮するように構成されている。また、下バランサ77の下面には、ロータ39、及び、下バランサ77と一体にカシメられる規制プレート55が設けられる。規制プレート55は、ロータ39の巻線着磁を行う際に、ロータ39の回転を規制するために用いられる。
【0025】
メインフレーム21の下側には、カウンタウェイト部63の周りを囲うようにカップ48がボルト49で固定されている。カップ48は、メインフレーム21と、駆動軸15との間のクリアランスから漏れ出た潤滑オイルが、カウンタウェイト部63の回転によって吐出管側に飛散されるのを防ぐ。
【0026】
固定スクロール23の中央部には吐出孔73が設けられており、この吐出孔73から吐出されたガス冷媒は、吐出弁75を通って吐出空間29に吐出され、メインフレーム21及び固定スクロール23の各外周に設けた縦溝71を介して、メインフレーム21の下方の高圧空間27に流出し、この高圧冷媒は、ケーシング本体5に設けた吐出管33を介してケーシング3外に吐出される。
【0027】
このスクロール圧縮装置1の運転動作について説明する。
駆動モータ13を駆動すると、ステータ37に対してロータ39が回転し、それによって駆動軸15が回転する。駆動軸15が回転すると、スクロール圧縮機構11の揺動スクロール25が固定スクロール23に対して自転せずに公転のみ行う。このことにより、低圧の冷媒が吸入管31を通して圧縮室35の周縁側から圧縮室35に吸引され、この冷媒は圧縮室35の容積変化に伴って圧縮される。そして、この圧縮された冷媒は、高圧となって圧縮室35から吐出弁75を通って吐出空間29に吐出され、メインフレーム21及び固定スクロール23の各外周に設けた縦溝71を介して、メインフレーム21の下方の高圧空間27に流出し、この高圧冷媒は、ケーシング本体5に設けた吐出管33を介してケーシング3外に吐出される。ケーシング3外に吐出された冷媒は、図示を省略した冷媒回路を循環した後、再度吸入管31を通して圧縮機1に吸入されて圧縮され、このような冷媒の循環が繰り返される。
【0028】
潤滑オイルの流れを説明すると、ケーシング3における下キャップ9の内底部に貯留された潤滑オイルが、オイルピックアップ45により吸い上げられ、この潤滑オイルが、駆動軸15の給油路41を通じ、スクロール圧縮機構11の各摺動部分、及び、圧縮室35へ供給される。スクロール圧縮機構11の各摺動部分、及び、圧縮室35で過剰となった潤滑オイルは、戻し油路47から、オイルコレクター46に集められ、ステータ37の外周に設けられた切欠き54を通って駆動モータ13の下方に戻される。
【0029】
次に、駆動モータ13の配置状態について詳述する。
ベアリングプレート8には、ベアリングプレート8の下側から、スラストプレート6がねじ6Aでねじ止めされて取り付けられている。スラストプレート6には、ベアリングプレート8のボス部8Aよりも小径の孔6Bが形成され、この孔6Bを介して、オイルピックアップ45が駆動軸15に挿入される。駆動軸15の下端は、スラストプレート6と接する面であるスラスト面6Cの上に載置された状態で、スラストプレート6に支持される。
【0030】
図2は、駆動モータ13がケーシング3に取り付けられた時のロータ39とステータ37、及び、駆動軸15の下端とスラストプレート6の位置を示す図であり、スクロール圧縮装置1の断面図を部分的に拡大した図である。
駆動モータ13のロータ39の軸方向の中心位置は、図2に示すように、ステータ37の軸方向の中心位置よりも下側に位置されている。ロータ39中心位置は、ステータ37中心位置より、0.2mm〜2.0mmの範囲D1で下側に位置しており、ロータ39中心位置は、ステータ37中心位置より0.5mm下側に位置されていることが最も望ましい。この範囲D1は、駆動モータ13が安定して回転駆動しているときも、駆動軸15がスラスト面6Cから浮かばない、即ち、ロータ39に作用する上向きの力に比べて駆動軸組部16の自重が大きくなるように設定される。また、駆動軸15の下端は、スラストプレート6のスラスト面6Cに当接している。
【0031】
図3は、駆動モータ13が安定して回転駆動しているとき、つまり、スクロール圧縮装置が運転中のときのロータ39とステータ37、及び、駆動軸15の下端とスラストプレート6の位置を示す図であり、運転中のスクロール圧縮装置1の断面図を部分的に拡大した図である。
この状態で、駆動モータ13を駆動し、スクロール圧縮装置1を運転させると、運転中には、ロータ39の中心位置がステータ37の中心位置とが一致する(合わせる)力が作用するため、ロータ39に上向きの力が作用する。ステータ37は、スペーサリング38によってケーシング3に支持されているため、ロータ39、ステータ37の各中心位置を合わせる力が作用しても、移動することなく支持される。これによって、駆動モータ13の駆動軸15、及び、駆動軸15に一体に取り付けられたロータ39、上バランサ63、下バランサ77等を含む駆動軸組部16の自重がスラスト面6Cにかかるのを防ぐことができ、スラスト面6Cでの摺動ロスを低減させることができる。
【0032】
また、ロータ39の中心位置が、ステータ37の中心位置に対して所定以上にずれていると駆動モータ13の駆動時でステータ37に大きな電流がかかる際に、ロータ39に作用する上向きの力によって駆動軸組部16が上方にジャンプし、反動で、駆動軸15の下端がスラスト面6Cに衝突して、衝突音を発生させる場合がある。本構成では、ロータ39の中心位置を、ステータ37の中心位置に対して0.2mm〜2.0mmの範囲で下側に位置させることで、駆動モータ13の駆動時に駆動軸組部16が過分に跳ね上がるのを防止することができ、駆動軸15の下端がスラスト面6Cに衝突して起こる衝突音の発生を防ぐことができる。
【0033】
また、ステータ37のステータコイル18に電圧を印加して、ステータコア37Aの内部に磁界を発生させ、巻線着磁を用いてロータ39の着磁を行うには、ロータ39の中心位置と、ステータ37の中心位置のずれを所定以下にする必要がある。本構成では、ロータ39の中心位置を、ステータ37の中心位置に対して0.2mm〜2.0mmの範囲で下側に位置させることで、巻線着磁を用いてロータ39の着磁を行うことができる。
【0034】
以上説明したように、本発明を適用した実施形態によれば、ケーシング3の内部に冷媒を圧縮するスクロール圧縮機構11と、スクロール圧縮機構11と駆動軸15で連結され当該スクロール圧縮機構11を駆動する駆動モータ13とが収容され、スクロール圧縮機構11がメインフレーム21によりケーシング3に支持され、駆動モータ13のステータ37が直接的または間接的にケーシング3に支持され、駆動モータ13のロータ39に駆動軸15が連結され、当該駆動軸15がベアリングプレート8によりケーシング3に支持され、駆動軸15の下端がベアリングプレート8に設けたスラストプレート6で支持され、ロータ39中心位置をステータ37中心位置よりも下側に位置させた。これによって、駆動モータ13の運転中には、各中心位置を一致させる(合わせる)力が作用するため、ロータ39には、ロータ39中心位置がステータ37中心位置に寄ろうとする上向きの力が発生する。そのため、スラストプレート6に、駆動モータ13の駆動軸15、及び、駆動軸15に一体に取り付けられたロータ39、上バランサ63、下バランサ77等を含む駆動軸組部16の自重がかかるのを防ぐことができ、スラスト面6Cでの摺動ロスを低減させることができる。
【0035】
また、本発明を適用した実施形態によれば、駆動モータ13の起動時にロータ39が上方へジャンプしない範囲でロータ39中心位置をステータ37中心位置よりも下側に位置させたため、駆動モータ13の駆動時でステータ37に大きな電流がかかる際に、ロータ39に作用する上向きの力によって駆動軸組部16が上方にジャンプするのを防ぐことができる。そのため、駆動軸組部16が上方にジャンプした反動で、駆動軸15の下端がスラスト面6Cに衝突し、衝突音が発生するのを防ぐことができる。
【0036】
また、本発明を適用した実施形態によれば、駆動モータ13の運転中には、各中心位置を一致させる(合わせる)力が作用するため、ロータ39には、ロータ39中心位置がステータ37中心位置に寄ろうとする上向きの力が作用する。そのため、スラストプレート6に、駆動モータ13の駆動軸15、及び、駆動軸15に一体に取り付けられたロータ39、上バランサ63、下バランサ77等を含む駆動軸組部16の自重がかかるのを防ぐことができ、スラスト面6Cでの摺動ロスを低減させることができる。
【0037】
また、本発明を適用した実施形態によれば、ロータ39の着磁時にステータ37の巻線に印加する電圧でロータ39が着磁できる範囲でロータ39中心位置をステータ37中心位置よりも下側に位置させたため、ケーシング3に取り付けた駆動モータ13のロータ39を巻線着磁を用いて着磁することができる。
【0038】
また、本発明を適用した実施形態によれば、駆動モータ13のステータ37がスペーサリング38によりケーシングに支持されているため、駆動モータ13の運転中にステータ37に下向きの力が発生しても、ステータ37がスペーサリング38によりケーシングに支持されているため、ロータに作用する上向きの力でロータ39中心位置とステータ37中心位置とを一致させることができる。そのため、ロータ39に作用する上向きの力で、スラストプレート6に、駆動モータ13の駆動軸15、及び、駆動軸15に一体に取り付けられたロータ39、上バランサ63、下バランサ77等を含む駆動軸組部16の自重がかかるのを防ぐことができ、スラスト面6Cでの摺動ロスを低減させることができる。
【0039】
また、駆動モータ13は、PWMインバータによって回転トルクが制御されるDCモータであるため、出力効率の良い駆動モータを用いることで、駆動モータ13の小型化を図ることができ、さらに、インバータによって駆動させることで、駆動モータ13の電圧の上昇/下降による無駄な熱の発生を防ぎ、駆動効率をよくすることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 スクロール圧縮装置
3 ケーシング
6 スラストプレート
6C スラスト面
8 ベアリングプレート
11 スクロール圧縮機構
13 駆動モータ(DC駆動モータ)
15 駆動軸
21 メインフレーム
37 ステータ
38 スペーサリング
39 ロータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングの内部に冷媒を圧縮するスクロール圧縮機構と、前記スクロール圧縮機構と駆動軸で連結され当該スクロール圧縮機構を駆動する駆動モータとが収容され、
前記スクロール圧縮機構がメインフレームにより前記ケーシングに支持され、
前記駆動モータのステータが直接的または間接的に前記ケーシングに支持され、
前記駆動モータのロータに前記駆動軸が連結され、当該駆動軸がベアリングプレートにより前記ケーシングに支持され、前記駆動軸の下端が前記ベアリングプレートに設けたスラストプレートで支持され、
前記ロータ中心位置を前記ステータ中心位置よりも下側に位置させたことを特徴とするスクロール圧縮装置。
【請求項2】
前記駆動モータの起動時に前記ロータが上方へジャンプしない範囲で前記ロータ中心位置を前記ステータ中心位置よりも下側に位置させたことを特徴とする請求項1に記載のスクロール圧縮装置。
【請求項3】
運転中に前記ロータ中心位置が前記ステータ中心位置と一致し前記ロータに上向きの力が作用することを特徴とする請求項1または2に記載のスクロール圧縮装置。
【請求項4】
前記ロータの着磁時に前記ステータの巻線に印加する電圧で前記ロータが着磁できる範囲で前記ロータ中心位置を前記ステータ中心位置よりも下側に位置させたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のスクロール圧縮装置。
【請求項5】
前記駆動モータのステータがスペーサリングにより前記ケーシングに支持されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のスクロール圧縮装置。
【請求項6】
前記駆動モータは、インバータ制御されるDCモータであることを特徴とする請求項1ないし5いずれか一項に記載のスクロール圧縮装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate