説明

スクロール式流体機械

【課題】 受圧面積の大きな背圧室を容易に設けることができ、小型化が可能なスクロール式流体機械を提供する。
【解決手段】 ケーシング1には固定スクロール2を取付けると共に、固定スクロール2と対面した位置に旋回スクロール8を設ける。また、旋回スクロール8の背面側にはホルダ17を設けると共に、ホルダ17を挟んで連結部材21を設ける。そして、連結部材21は、旋回スクロール8と駆動軸5との間を連結し、旋回スクロール8と一緒に旋回運動する。また、旋回スクロール8の背面には背面プレート16を設けると共に、背面プレート16とホルダ17との間に背圧室19を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気圧縮機、真空ポンプ等に用いて好適なスクロール式流体機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スクロール式流体機械は、互いに対向する固定スクロールと旋回スクロールを備え、各スクロールは、その鏡板の歯底面に渦巻状のラップ部が立設される構成となっている。そして、2つのスクロールを対向して配置することによって、2つのラップ部が重なり合って複数の圧縮室が画成される。この状態で、旋回スクロールを固定スクロールに対して旋回運動させることにより、圧縮室を連続的に縮小して空気等を圧縮している。
【0003】
また、圧縮空気を生成する際には、圧縮空気の圧力によって、旋回スクロールは回転軸方向に過大なスラスト荷重を受けることがある。このため、従来技術として、旋回スクロールの背面に圧縮空気の一部を導入した背圧室を設け、該背圧室に生じる圧力によって、スラスト荷重を軽減させる構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。このとき、旋回スクロールは、旋回軸受を介してクランク部を有する回転軸に連結されると共に、固定スクロールと旋回スクロールとの間には、旋回スクロールの自転を防止する補助クランクを設ける構成としていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−28033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の特許文献1に記載された従来技術では、旋回スクロールの背面中心部には旋回軸受が設けられている。このため、背圧室の受圧面積が旋回軸受の外周側に位置するドーナツ状の面積となり、十分な受圧面積を得ようとすると、旋回軸受部の面積分だけ径方向外側に大きくせざるを得ず、圧縮機全体が大型化する傾向があった。
【0006】
また、従来技術では、旋回スクロールの背面中心部に旋回軸受を設ける構成としたから、背圧室の径方向の断面形状がドーナツ形となる。このため、背圧室を気密にシールするためには、径寸法が互いに異なる2つのシール部材が必要となる。この結果、2つのシール部材のうち一方が摩耗した場合でもシール性が低下してしまい、信頼性が低下し易いという問題があった。
【0007】
さらに、従来技術では、旋回スクロールと固定スクロールとの間に自転防止機構となる補助クランクの軸受部を設ける構成としていた。このため、旋回スクロールおよび固定スクロールのラップ部よりも径方向外側に補助クランクの軸受部を配置する必要があり、圧縮機が径方向に大型化するという問題もあった。
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、受圧面積の大きな背圧室を容易に設けることができ、小型化が可能なスクロール式流体機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明によるスクロール式流体機械は、ケーシングと、該ケーシングに設けられ鏡板の表面に渦巻状のラップ部が立設された固定スクロールと、前記ケーシングに支持され駆動源により回転駆動される回転軸と、前記固定スクロールと対面して設けられ、鏡板の表面に前記固定スクロールのラップ部と重なり合って複数の圧縮室を画成するラップ部が立設された旋回スクロールと、該旋回スクロールの背面に位置して前記ケーシングと一体的に設けられ、該旋回スクロールの背面側との間に圧縮室と連結して背圧室を形成する背圧室形成部材と、該背圧室形成部材を挟んで前記旋回スクロールと一体的に設けられ、前記回転軸と旋回軸受を介して連結された連結部材と、前記旋回スクロールおよび連結部材の自転を防止する自転防止機構とによって構成している。
【0010】
請求項2の発明では、前記旋回スクロールは、当該旋回スクロールの鏡板の背面側に鏡板と離間して受圧部材を有する構成としている。
【0011】
請求項3の発明では、前記自転防止機構は、前記連結部材とケーシングとの間に設ける構成としている。
【0012】
請求項4の発明では、前記旋回スクロールの背面側と背圧室形成部材との間には、前記背圧室を気密にシールするシール部材を設ける構成としている。
【0013】
請求項5の発明では、前記旋回スクロールは旋回スクロール本体とその背面に設けられた前記受圧部材とにより構成し、前記旋回スクロール本体と受圧部材とを結合部材によって結合し、該結合部材には前記圧縮室と前記背圧室とをつなぐ背圧導入孔を設ける構成としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、旋回スクロールは背圧室形成部材を挟んで設けられた連結部材によって回転軸に連結されるから、連結部材に旋回軸受を設ければよく、旋回スクロールの背面に旋回軸受を設ける必要がない。これにより、旋回スクロールの背面と背圧室形成部材との間に設けた背圧室は、旋回軸受の影響を受けることなく、自由な形状に設計することができる。このため、圧縮機等の全体形状を大きくすることなく、背圧室の受圧面積を容易に大きくすることができる。また、背圧室は例えば円形状に形成することができるから、該背圧室を1つのシール部材を用いてシールすることができる。このため、2つのシール部材を用いた場合に比べて、信頼性を高めることができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、旋回スクロールの鏡板の背面側に鏡板と離間して受圧部材を設けたから、旋回スクロールの鏡板と受圧部材との間に冷却風を通過させることができる。この結果、圧縮室からの圧縮熱によって旋回スクロールが加熱されるときでも、冷却風を用いて旋回スクロールを冷却することができ、圧縮効率を高めることができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、自転防止機構を連結部材とケーシングとの間に設けたから、旋回スクロールのラップ部の軸方向背面側に補助クランクの軸受を配置することができる。この結果、旋回スクロールと固定スクロールとの間に自転防止機構を設けた場合に比べて、径方向に対して圧縮機等を小型化することができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、旋回スクロールの背面側と背圧室形成部材との間には、背圧室を気密にシールするシール部材を設けたから、背圧室を取囲む1つのシール部材を用いて背圧室をシールすることができる。このため、2つのシール部材を用いた場合に比べて、信頼性を高めることができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、旋回スクロール本体と受圧部材とを結合する結合部材を設け、結合部材には圧縮室と背圧室とをつなぐ背圧導入孔を設ける構成としているから、旋回スクロール本体と受圧部材とを結合部材により固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態によるスクロール式空気圧縮機を図3中の矢示I−I方向からみた断面図である。
【図2】図1中のスクロール式空気圧縮機を要部を拡大して示す拡大断面図である。
【図3】スクロール式空気圧縮機を図1中の左側からみた左側面図である。
【図4】固定スクロールを取外した状態でスクロール式空気圧縮機を図3中の矢示IV−IV方向からみた断面図である。
【図5】図4中のスクロール式空気圧縮機を要部を拡大して示す拡大断面図である。
【図6】図1中のスクロール式空気圧縮機を示す分解斜視図である。
【図7】スクロール式空気圧縮機を図6とは異なる角度からみた分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態によるスクロール式流体機械として空気圧縮機を例に挙げ、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
図において、1はスクロール式流体機械の外枠を形成する筒状のケーシングで、該ケーシング1は、大径筒部1Aと、該大径筒部1Aよりも小径な筒状に形成され該大径筒部1Aの軸方向一側から外側に向けて突出した小径な軸受筒部1Bと、該軸受筒部1Bと前記大径筒部1Aとの間に形成された環状部1Cとにより構成されている。また、環状部1Cには、後述する補助クランク機構24の軸受24Aを収容する筒状の軸受収容部1Dが例えば3個設けられ、該各軸受収容部1Dは周方向に対して互いに等間隔に離間して配置されている。
【0022】
2は後述のホルダ17を介してケーシング1に設けられた固定スクロールで、該固定スクロール2は、ケーシング1の大径筒部1Aを軸方向他側から閉塞するように、ホルダ17の取付筒部17Aに取付けられている。これにより、固定スクロール2は、ホルダ17を挟んだ状態で大径筒部1Aの他側(開口側)に固定されている。そして、固定スクロール2は、円板状の鏡板2Aと、該鏡板2Aの表面に中心側が巻始め端となり外周側が巻終り端となって立設された渦巻状のラップ部2Bとにより大略構成されている。
【0023】
ここで、ラップ部2Bの歯先面には、後述する旋回スクロール8の鏡板9Aとの間をシールするチップシール3が設けられている。また、固定スクロール2の鏡板2Aの表面には環状のシール部材4が設けられている。そして、シール部材4は、旋回スクロール8の鏡板9Aとの間をシールし、圧縮室12内から圧縮空気が漏洩するのを防止している。
【0024】
さらに、固定スクロール2の鏡板2Aには、その背面側に複数本の冷却フィン2C,2C,…が形成され、これらの冷却フィン2Cは、互いに平行に延びている。そして、各冷却フィン2C間に冷却風を流通させることにより、冷却フィン2Cは、固定スクロール2の鏡板2A等を背面側から冷却するものである。
【0025】
5はケーシング1の軸受筒部1B内に軸受6,7を介して回転可能に設けられた回転軸としての駆動軸で、該駆動軸5は、その軸方向一側が軸受筒部1Bからケーシング1の外部へと突出し、軸方向他側(先端側)は、ケーシング1の大径筒部1A内へと伸長するクランク部5Aとなっている。ここで、駆動軸5の一側にはプーリ(図示せず)が取付けられ、該プーリを介して駆動軸5は駆動源となる電動モータ(図示せず)に連結されている。これにより、駆動軸5は、電動モータによって回転駆動する。
【0026】
また、クランク部5Aは、その軸線が駆動軸5の軸線に対し、一定の偏心量だけ偏心して形成されている。そして、クランク部5Aは、後述の旋回軸受23を介して連結部材21のボス部21B内に回転可能に取付けられている。また、駆動軸5には、バランスウエイト部5Bが一体に設けられ、該バランスウエイト部5Bは駆動軸5の回転バランスをとるものである。
【0027】
8はケーシング1の大径筒部1A内に旋回可能に設けられた旋回スクロールで、該旋回スクロール8は、固定スクロール2と対面する位置に配置されている。そして、旋回スクロール8は、ケーシング1の軸方向で固定スクロール2と対向した旋回スクロール本体9と、該旋回スクロール本体9の背面側に固着して設けられた受圧部材としてのジョイント部材10とにより構成されている。
【0028】
ここで、旋回スクロール本体9は、略円板状に形成された鏡板9Aと、該鏡板9Aから固定スクロール2側に向けて立設された渦巻状のラップ部9Bとから構成されている。また、ラップ部9Bの歯先面には、固定スクロール2の鏡板2Aとの間をシールするチップシール11が設けられている。
【0029】
このとき、旋回スクロール8は、固定スクロール2に対し例えば180度ずらして重なり合うように配設され、両者のラップ部2B,9B間には、外径側から内径側(中央)にかけて複数の圧縮室12が画成されている。そして、圧縮機の運転時には、固定スクロール2の外周側に設けられた吸込口13から外径側の圧縮室12内に空気を吸込みつつ、この空気を各圧縮室12内で順次圧縮し、最後に、中央側の圧縮室12内に収容された圧縮空気を、固定スクロール2の中央側に設けられた吐出口14から外部に吐出する。
【0030】
また、旋回スクロール本体9の鏡板9Aには、ジョイント部材10との間に複数本の冷却フィン9C,9C,…が形成され、これらの冷却フィン9Cは、固定スクロール2の冷却フィン2Cと同じ一方向に向けて平行に延び、冷却風によって旋回スクロール8の鏡板9A等を冷却するものである。
【0031】
また、旋回スクロール8のジョイント部材10は、鏡板9Aの背面側に複数のボルト15を用いて固定されている。また、ジョイント部材10の背面中央側には、略全面に亘って円形状に凹陥した凹陥部10Aが設けられ、該凹陥部10Aは例えばラップ部9B全体を覆う程度の大きさをもって広がっている。そして、凹陥部10A内には後述の背圧プレート16が取付けられている。これにより、ジョイント部材10は、背圧プレート16を介して後述の背圧室19内の圧力を受圧する。また、ジョイント部材10の背面には、凹陥部10A内に位置して網目状のリブ10Bが略全面に亘って設けられ、該リブ10Bは、ジョイント部材10の強度を高めている。
【0032】
16はジョイント部材10の背面に取付けられた背圧プレートで、該背圧プレート16は、ジョイント部材10の凹陥部10Aとほぼ同じ大きさをもって円板状に形成され、旋回スクロール8の鏡板9Aと離間した状態でジョイント部材10の凹陥部10A内に取付けられている。そして、背圧プレート16は、その正面側が凹陥部10Aの底面に接触すると共に、その背面側には後述の背圧室19が形成される。これにより、背圧プレート16は、背圧室19内の圧力を受承し、ジョイント部材10を介して旋回スクロール8全体を固定スクロール2に向けて押圧する。また、背圧プレート16の正面(前面)には、背面プレート16の強度を高める網目状のリブ16Aが略全面に亘って設けられている。
【0033】
17は旋回スクロール8の背面に位置してケーシング1側に固定されて設けられた背圧室形成部材としてのホルダで、該ホルダ17は、ケーシング1と一体的に設けられている。また、ホルダ17は、ケーシング1の大径筒部1Aの開口端に取付けられる取付筒部17Aと、該取付筒部17Aの軸方向他端側に位置して底面となる略円盤状の底板部17Bとによって構成されている。ここで、取付筒部17Aは、その外周側が固定スクロール2とケーシング1の大径筒部1Aとの間に挟持されると共に、その内部に旋回スクロール8のジョイント部材10および背圧プレート16を収容している。
【0034】
また、底板部17Bの外周側には背圧プレート16と対向する位置に円環状のシール取付溝17Cが設けられると共に、該シール取付溝17C内には環状の背圧シール部材18が取付けられている。さらに、底板部17Bの中央側にはシール取付溝17Cの内径側に位置して背面側に向けて凹陥した有底円形状の圧縮空気収容部17Dが設けられている。このとき、圧縮空気収容部17Dは、背圧プレート16と対向する位置に配置され、背圧プレート16よりも小さい面積をもって背圧プレート16側に開口している。これにより、ホルダ17は、背圧プレート16との間に圧縮空気収容部17D内に位置する円形の背圧室19を形成し、該背圧室19の外周側は背圧シール部材18によって気密な状態にシールされている。
【0035】
また、底板部17Bには、圧縮空気収容部17D内に位置して網目状のリブ17Eが設けられている。これにより、リブ17Eは、底板部17Bの強度を高めている。
【0036】
さらに、底板部17Bのうちシール取付溝17Cの外周側には、3個の逃し穴17Fが軸方向に貫通して設けられている。ここで、各逃し穴17Fは、例えば周方向に向けて互いに等間隔に配置されると共に、後述する連結部材21の連結突起部21Aが挿通されている。そして、逃し穴17Fは、旋回スクロール8が連結部材21と一緒に旋回運動するときに、これらを連結する連結突起部21Aがホルダ17に干渉するのを防止している。
【0037】
20は旋回スクロール8を構成する旋回スクロール本体9とジョイント部材10との間に例えば2個取付けられた結合部材としての背圧導入管で、該各背圧導入管20は、背圧プレート16およびジョイント部材10を貫通して旋回スクロール8の背面側に螺着されると共に、その内部には軸方向に貫通する背圧導入孔20Aが形成されている。そして、背圧導入孔20Aは、その一端側が背圧室19内に開口すると共に、その他端側が旋回スクロール8の鏡板9Aを貫通した貫通孔20Bを介して圧縮室12内に連通している。これにより、背圧導入管20は、圧縮室12内の圧縮空気を背圧室19内に向けて導いている。この場合、背圧導入管20は旋回スクロール本体9とジョイント部材10とを強固につなぐ結合部材としても機能している。
【0038】
なお、背圧導入管20と旋回スクロール本体9との間、導入管20とジョイント部材10との間、または背圧導入管20と背圧プレート16との間には、Oリング等の簡便なシールを設ける構成としてもよい。また、旋回スクロール本体9、ジョイント部材10および背圧プレート16を一体に成形した場合には、これらを貫通する貫通孔を設ければよく、背圧導入管20は不要である。
【0039】
21はホルダ17を挟んで軸方向一側に設けられた連結部材で、該連結部材21は、略円板状に形成されると共に、その正面側にはホルダ17に向けて突出した3個の連結突起部21Aが設けられている。このとき、各連結突起部21Aは、周方向に等間隔に配置されると共に、ホルダ17の逃し穴17Fにそれぞれ挿通され、旋回スクロール8のジョイント部材10に連結ボルト22を用いて連結され、旋回スクロール8と一体的に設けられている。
【0040】
また、連結部材21の背面中央側には、筒状のボス部21Bが一体的に形成されている。そして、このボス部21B内には、後述する駆動軸5のクランク部5Aが旋回軸受23を介して回転可能に取付けられている。これにより、連結部材21は、ホルダ17を挟んで旋回スクロール8と駆動軸5とを連結し、駆動軸5の回転運動に伴って旋回スクロール8と一緒に旋回運動する。
【0041】
さらに、連結部材21の背面外周側には、後述する補助クランク機構24の軸受24Bを収容する筒状の軸受収容部21Cが例えば3個設けられている。このとき、軸受収容部21Cは、ケーシング1の軸受収容部1Dと対向した位置に配置されると共に、連結突起部21Aの軸方向一側に配置されている。
【0042】
24は連結部材21とケーシング1との間に設けられた自転防止機構としての補助クランク機構で、該補助クランク機構24は、ケーシング1の軸受収容部1Dに収容された軸受24Aと、連結部材21の軸受収容部21Cに収容された軸受24Bと、これらの軸受24A,24Bに回転可能に取付けられたクランク部材24Cとによって構成されている。そして、これらの補助クランク機構24は、旋回運動時に旋回スクロール8がケーシング1内で自転するのを防止している。
【0043】
本実施の形態によるスクロール式流体機械は上述の如き構成を有するもので、次に、空気圧縮機として用いた場合の作動について説明する。
【0044】
まず、電動モータ等の駆動源によって駆動軸5を回転駆動したときには、駆動軸5の回転が旋回軸受23を介して旋回スクロール8に伝えられる。これにより、旋回スクロール8は、補助クランク機構24によって自転を規制された状態で、駆動軸5を中心として旋回運動を行う。
【0045】
このとき、固定スクロール2のラップ部2Bと旋回スクロール8のラップ部9Bとの間に画成された圧縮室12は、外径側から内径側に向けて連続的に縮小する。これにより、圧縮機は、吸込口13から吸込んだ外気を各圧縮室12で順次圧縮し、吐出口14から外部のタンク(図示せず)等に向けて圧縮空気を吐出する。
【0046】
また、圧縮室12内で圧縮された圧縮空気は、その一部が背圧導入管20を通じて旋回スクロール8の背面側に画成された背圧室19に導入される。これにより、圧縮空気の圧力によって旋回スクロール8が固定スクロール2から離れる方向に向けて過大なスラスト荷重が生じるときでも、背圧室19内の圧力によって旋回スクロール8を固定スクロール2側に向けて押圧することができ、スラスト荷重を軽減することができる。
【0047】
然るに、本実施の形態では、旋回スクロール8はホルダ17を挟んで設けられた連結部材21によって駆動軸5に連結されるから、連結部材21に旋回軸受23を設ければよく、旋回スクロール8の背面に旋回軸受を設ける必要がない。これにより、旋回スクロール8の背面とホルダ17との間に設けた背圧室19は、旋回軸受23の影響を受けることなく、自由な形状に設計することができる。このため、圧縮機等の全体形状を大きくすることなく、背圧室19の受圧面積を容易に大きくすることができる。また、背圧室19は例えば円形状に形成することができるから、該背圧室19を1つの背圧シール部材18を用いてシールすることができる。このため、従来技術のように2つのシール部材を用いた場合に比べて、信頼性を高めることができる。
【0048】
また、旋回スクロール8の鏡板9Aの背面側には鏡板9Aと離間して背圧プレート16を設けたから、旋回スクロール8の鏡板9Aと背圧プレート16との間に冷却フィン9Cを設け、該冷却フィン9Cに冷却風を供給することができる。この結果、圧縮室12からの圧縮熱によって旋回スクロール8が加熱されるときでも、冷却風を用いて旋回スクロール8を冷却することができ、圧縮効率を高めることができる。
【0049】
さらに、補助クランク機構24を連結部材21とケーシング1との間に設けたから、旋回スクロール8のラップ部9Bの軸方向背面側に補助クランク機構24の軸受24A,24Bを配置することができる。この結果、従来技術のように旋回スクロール8と固定スクロール2との間に自転防止機構を設けた場合に比べて、径方向に対して圧縮機等を小型化することができる。
【0050】
また、旋回スクロール8の背面側とホルダ17との間には、背圧室19を気密にシールする背圧シール部材18を設けたから、背圧室19を取囲む1つの背圧シール部材18を用いて背圧室19をシールすることができる。
【0051】
さらに、旋回スクロール8は旋回スクロール本体9とその背面に設けられたジョイント部材10とにより構成し、該旋回スクロール本体8とジョイント部材10とを背圧導入管20によって結合しているから、該背圧導入管20を用いてこれら2つの部材を強固に結合することができる。
【0052】
なお、前記各実施の形態では、スクロール式流体機械としてスクロール式空気圧縮機を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば真空ポンプ、冷媒圧縮機等にも広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0053】
1 ケーシング
2 固定スクロール
2A,9A 鏡板
2B,9B ラップ部
5 駆動軸(回転軸)
8 旋回スクロール
9 旋回スクロール本体
10 ジョイント部材(受圧部材)
12 圧縮室
16 背圧プレート
17 ホルダ(背圧室形成部材)
18 背圧シール部材(シール部材)
20 背圧導入管(結合部材)
20A 背圧導入孔
21 連結部材
23 旋回軸受
24 補助クランク機構(自転防止機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
該ケーシングに設けられ鏡板の表面に渦巻状のラップ部が立設された固定スクロールと、
前記ケーシングに支持され駆動源により回転駆動される回転軸と、
前記固定スクロールと対面して設けられ、鏡板の表面に前記固定スクロールのラップ部と重なり合って複数の圧縮室を画成するラップ部が立設された旋回スクロールと、
該旋回スクロールの背面に位置して前記ケーシングと一体的に設けられ、該旋回スクロールの背面側との間に圧縮室と連結して背圧室を形成する背圧室形成部材と、
該背圧室形成部材を挟んで前記旋回スクロールと一体的に設けられ、前記回転軸と旋回軸受を介して連結された連結部材と、
前記旋回スクロールおよび連結部材の自転を防止する自転防止機構とによって構成してなるスクロール式流体機械。
【請求項2】
前記旋回スクロールは、当該旋回スクロールの鏡板の背面側に鏡板と離間して受圧部材を有する構成としてなる請求項1に記載のスクロール式流体機械。
【請求項3】
前記自転防止機構は、前記連結部材とケーシングとの間に設ける構成としてなる請求項1または2に記載のスクロール式流体機械。
【請求項4】
前記旋回スクロールの背面側と背圧室形成部材との間には、前記背圧室を気密にシールするシール部材を設ける構成としてなる請求項1,2または3に記載のスクロール式流体機械
【請求項5】
前記旋回スクロールは旋回スクロール本体とその背面に設けられた前記受圧部材とにより構成し、前記旋回スクロール本体と受圧部材とを結合部材によって結合し、該結合部材には前記圧縮室と前記背圧室とをつなぐ背圧導入孔を設ける構成としてなる請求項2,3または4に記載のスクロール式流体機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−180840(P2012−180840A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−120042(P2012−120042)
【出願日】平成24年5月25日(2012.5.25)
【分割の表示】特願2006−296565(P2006−296565)の分割
【原出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】