説明

スケール空間ヘッセ行列から共分散評価を使用するボリュメトリック特徴記述

データ内の関心ボリュームを決定するための方法が、複数の分析帯域幅の固定帯域幅の評価を決定することを含み、それにおいて固定帯域幅の評価は、データ内の関心ボリュームのモード・ロケーションの評価を提供すること、および局所的ヘッセ行列を使用して関心ボリュームの共分散を決定することを包含する。さらにこの方法は、複数の分析帯域幅のそれぞれにわたってもっとも安定した固定帯域幅の評価として関心ボリュームを決定することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件出願は、2003年10月2日に出願された米国特許仮出願第60/508,094号に対する優先権を主張するものであり、当該米国特許仮出願は、参照によりこれに援用される。
【0002】
本発明は、ボリュメトリック・イメージ・データの特徴記述に関し、より詳細に述べればボリュメトリック特徴記述のための周縁切り捨てが存在するときの共分散評価のためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
オブジェクトの検出および追跡方法には、イメージ・データ内のオブジェクトの決定のために非線形最適化テクニックが組み込まれた。非線形最適化方法は、たとえばレーベンバーグ・マルカート(Levenberg‐Marquardt)法およびトラスト領域法を含む。これらの方法は、ヘシアンにより定義される2次モデルによって局所的にコスト関数を近似し、問題の複雑性を低減している。別の方法は、スケール選択を使用する一連の特徴検出方法を採用しており、それにおいては2次導関数が使用されている。医療イメージングの分野においては、多くの研究が脈管等の局所構造の分類のためにヘシアンの固有値を利用している。しかしながらこれらの方法は、堅牢な共分散評価の関係において完全にパラメータ化した共分散およびヘシアンの正確な分析的関係を利用していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、周縁切り捨てが存在するときの共分散評価のためのシステムおよび方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この開示の実施態様によれば、データ内の関心ボリュームを決定するための方法が、複数の分析帯域幅の固定帯域幅の評価を決定することを包含し、それにおいて固定帯域幅の評価は、データ内の関心ボリュームのモード・ロケーションの評価を提供すること、および局所的ヘッセ行列を使用して関心ボリュームの共分散を決定することを包含する。さらにこの方法は、複数の分析帯域幅のそれぞれにわたってもっとも安定した固定帯域幅の評価として関心ボリュームを決定することを包含する。
【0006】
モード・ロケーションの評価はマニュアルで提供される。モード・ロケーションの評価を提供することは、各分析帯域幅内において関心ボリュームの平均シフト評価を決定することを包含する。
【0007】
共分散を決定することは、さらに、モード・ロケーションにおいてスケール空間表現を決定すること、そのモード・ロケーションにおいてスケール空間ヘシアンを決定すること、およびスケール空間ヘシアンから関心ボリュームの共分散を決定することを包含する。共分散は、関心ボリュームに当て嵌められた切り捨て済みのガウシアンを基礎として決定され、それにおいて切り捨て済みのガウシアンは、複数の恣意的な欠落テールを包含する。
【0008】
データは、ボリュメトリック・イメージ・データである。関心ボリュームは、データ内の当て嵌められたガウシアンの信頼性楕円として決定される。
【0009】
この開示の実施態様によれば、データ内の関心ボリュームを決定するための方法ステップを実行するべくマシンによって実行可能なインストラクションのプログラムを有体として具体化する、マシン可読プログラム・ストレージ・デバイスが提供される。この方法は、複数の分析帯域幅の固定帯域幅の評価を決定することを包含し、それにおいて固定帯域幅の評価は、データ内の関心ボリュームのモード・ロケーションの評価を提供すること、および局所的ヘッセ行列を使用して関心ボリュームの共分散を決定することを包含する。さらにこの方法は、複数の分析帯域幅のそれぞれにわたってもっとも安定した固定帯域幅の評価として関心ボリュームを決定することを包含する。
【0010】
この開示の実施態様によれば、関心ボリューム内の共分散を決定するための方法が、与えられたモード・ロケーションにおいてスケール空間表現を決定すること、その与えられたモード・ロケーションにおいてスケール空間ヘシアンを決定すること、およびスケール空間ヘシアンから関心ボリュームの共分散を決定することを包含し、それにおいて共分散が関心ボリュームの広がりを定義する。共分散は、関心ボリュームに当て嵌められた切り捨て済みのガウシアンを基礎として決定され、それにおいて切り捨て済みのガウシアンは、複数の恣意的な欠落テールを包含する。
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施態様を詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この開示の実施態様によれば、連続スケール空間内において評価されるd‐変量マルチ‐モーダル非負関数内の局所構造の非等方性の広がりおよび向きを特徴記述するための方法が、ガウシアンベースのモデルによって局所的に近似することのできるブロブ類似構造のクラスを使用する。この種のブロブ類似構造は、実際の情況において頻繁に現れ、そのいくつかの例を挙げれば、ボリュメトリック医療イメージ内における腫瘍およびレーダ・データにおける嵐の場所といった重要な関心オブジェクトを表す。この開示の実施態様によれば、ガウシアンの関数の平均ベクトルおよび共分散行列は、それぞれブロブ類似構造の中心ロケーションおよび非等方性の広がりを表す。したがって、与えられた局所的構造にもっともよく当て嵌まるガウシアン・モデルを用いた共分散評価は、その局所的構造の広がりを特徴記述するための直接手段を提供する。
【0013】
このシナリオの1つの困難は、近隣構造によって誘起される周縁切り捨てである。周縁切り捨ては、データ空間内において複数の構造が密にクラスタしており、その結果、周りを囲む構造がターゲット構造について評価の偏りを課するときに生じ得る。この種の偏りを回避するためには、恣意的なテールの欠落のある切り捨て済みのガウシアンがターゲット構造に対して当て嵌められる必要がある。
【0014】
この開示の実施態様によれば、周縁切り捨ての問題が、モード・ロケーションにおいて測定される局所的湾曲(ヘシアン)情報からセミ‐グローバルな広がり(共分散)情報を誘導することによって解決される。図1を参照すると、共分散行列103の閉じた形式の分析公式が、スケール空間表現101内のモード・ロケーションにおいて決定されるヘッセ行列102の関数として導かれている。ヘシアンがモードの直近の局所的情報だけを取り込むことから、切り捨てがヘシアン内に評価の偏りを生じさせることがない。したがって、ヘシアンから直接誘導された共分散は、切り捨ての問題の影響を受けない。
【0015】
モード評価102内の誤差および信号内のノイズに対する感度に対処するために、連続スケール空間理論を基礎として堅牢な評価方法が採用されている。結果として得られるマルチ‐スケール分析フレームワークは、共分散をスケール空間のヘシアン103、すなわち連続スケール空間内において評価される信号を用いて決定されるヘッセ行列に関連させる。ヘシアンは、正確なグローバルな広がりとノイズに敏感な湾曲104の間における堅牢な関係を実現する。この開示の実施態様に従ったヘッセ行列を使用すれば、共分散評価の堅牢性が周縁切り捨ての存在下において改善される。この開示の実施態様に従った方法を評価する予備的な研究が行われた。
【0016】
ここで理解する必要があるが、本発明は、種々の形式のハードウエア、ソフトウエア、ファームウエア、専用プロセッサ、またはそれらの組み合わせにおいて実装することができる。一実施態様においては、本発明を、プログラム・ストレージ・デバイス上において有形に具体化されるアプリケーション・プログラムとしてソフトウエア的に実装することができる。このアプリケーション・プログラムは、任意の適切なアーキテクチャを構成するマシンにアップロードし、それによって実行することができる。
【0017】
図2を参照すると、この開示の一実施態様に従った、周縁切り捨てが存在するときの共分散評価を使用して関心ボリュームを決定するためのコンピュータ・システム201は、特に、中央処理ユニット(CPU)202、メモリ203、および入力/出力(I/O)インターフェース204を包含することができる。コンピュータ・システム201は、概してI/Oインターフェース204を介してディスプレイ205および種々の入力デバイス206、たとえばマウスおよびキーボード等に結合される。サポート回路は、キャッシュ、電源、クロック回路、および通信バス等の回路を含む。メモリ203は、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、ディスク・ドライブ、テープ・ドライブ等、あるいはそれらの組み合わせを含むことができる。本発明は、メモリ203内にストアされ、CPU 202によって実行される、CTスキャナ等の信号ソース208からの信号を処理するルーチン207として実装することが可能である。コンピュータ・システム201自体は汎用コンピュータ・システムであり、本発明のルーチン207の実行時に専用コンピュータとなる。
【0018】
コンピュータ・プラットフォーム201は、オペレーティング・システムおよびマイクロインストラクション・コードも含んでいる。ここで述べている種々のプロセスおよび関数は、これらのマイクロインストラクション・コードの部分もしくは、オペレーティング・システムを介して実行されるアプリケーション・プログラムの部分のうちのいずれか(またはこれらの組み合わせ)とすることができる。それに加えて、追加のデータ・ストレージ・デバイスおよびプリンタ・デバイスといった、このほかの種々の周辺デバイスをこのコンピュータ・プラットフォームに接続することもできる。
【0019】
さらに理解する必要があるが、添付図面に図示されている構成要素であるシステム・コンポーネントならびに方法ステップのいくつかがソフトウエアにおいて実装できることから、システム・コンポーネント(またはプロセス・ステップ)の間の実際の接続が、本発明がプログラムされる態様に応じて異なることがある。ここに提供されている本発明の教示が与えられれば、本発明のそれらの、および類似の実装もしくは構成を当業者が企図することは可能であろう。
【0020】
図1によれば、スケール空間ヘシアンからの共分散評価が、モデル・ロケーションにおいて測定されたスケール空間のヘッセ行列から直接誘導されるガウシアンベースのモデルの共分散行列の閉じた形式の公式から派生する。
【0021】
d次元マルチ‐モーダル連続非負関数f(x)が関心イメージ信号を表すとする:記号uを使用し(uは行列を表す)、イメージ分析の意味におけるfの空間極値または密度評価の意味におけるモードの1つを記述する。ここで、u周囲のfの局所的領域が(uは行列を表す)、d変量ガウシアン関数と正の乗法パラメータの積によって近似されるものとする。
【0022】
【数1】

【0023】
これにおいてSは、近隣uに帰属し(uは行列を表す)、かつその関数値が局所データの構造特性と無矛盾のデータ・ポイントの集合である。実際的シナリオにおいては、Sが適切に定義される限りこれは妥当な近似である。これによって関心問題が、モデル・パラメータ:平均u、共分散Σ、および振幅αのパラメトリック・モデル当て嵌めおよび評価として解することが可能になる(uは行列を表す)。
【0024】
図1のボックス101を参照すると、スケール空間理論は、d次元連続信号f:Rd→Rとするとき、fのスケール空間表現F:Rd×R+→Rが、拡散方程式∂hF=1/2∇2Fに対する固有解となるか、あるいは等価的に、種々の分析帯域幅(またはスケール)行列H∈Rd×dを伴うd変量ガウシアン・カーネルΦ(x:0,H)を用いた信号のコンボリューションになると述べている。
【0025】
【数2】

【0026】
図1のボックス102を参照すると、スケール空間ヘッセ行列は、xにおけるF(H)のd×dのヘッセ行列として定義されるが(x、Hは行列を表す)、それを記号Pによって示すことにする(Pは行列を表す)。ヘシアンは、微分演算子がコンボリューション演算全体にわたって交換可能であることからガウシアン・カーネル(∇∇t)Φの2次導関数を伴うfのコンボリューションとして記述することが可能である。
【0027】
【数3】

【0028】
式(4)は、スケール空間ヘシアンを信号fから直接的に決定するための手段を提供する。
【0029】
図1のボックス103を参照すると、ガウシアン共分散の閉じた形式の公式が、モードにおいて決定されるスケール空間のヘシアンの関数として導かれている。式(1)を式(3)および式(4)に代入すると、FおよびPの分析公式が(Pは行列を表す)、拡大した共分散Σ+Hを伴うガウシアンの関数として与えられる。
【0030】
【数4】

【0031】
式(5)および式(6)は、モデル・ロケーションuにおいて評価されるとき(uは行列を表す)、指数関数を伴わない次の形に折りたたまれる。
【0032】
【数5】

【0033】
式(8)は、スケール空間のヘッセ行列P(u;H)と、u周囲で関数fを局所的に近似するガウシアン・モデルの共分散行列Σの関係を表す(P、u、Hは行列を表す)。ここで、P(u;H)が式(4)を使用して信号f(x)から直接決定可能であったことを思い出されたい(P、u、Hは行列を表す)。したがって、Σ=g(P)の形式に式(8)を変形すると、関心直接公式が提供される。以下は、分析的にその主の関数gを導く。Σ+HおよびPの対称シュア分解を考える。
【0034】
【数6】

【0035】
定義によって、ΣおよびHは対称な正値に限定されている。Pは、モードuが安定した臨界ポイントの‐fにあるとき(uは行列を表す)、対称な負値になる。式(8)は、モードuが、鞍点上ではなく、ピークFにあるときに成立する(uは行列を表す)。Pがfから数値的に測定されるとき、uがこの条件を満たし(uは行列を表す)、同等にPが負値であるという条件を満たす保証が必要となる。これらの条件に適合するとき、ΛおよびΓが、それぞれ、正および負の成分を伴う対角行列になる。また、直交ベースのUおよびVが等価になる。
【0036】
次に、ΛがΓの関数として決定される。分解の式(9)および式(10)を式(8)に代入し、U=Vを仮定すると(U、Vは行列を表す)、Γ=‐|α‐2/d2πΛ|‐1/2Λ‐1が得られる。等式を維持しつつ式を操作すると、次式が得られる。
【0037】
【数7】

【0038】
式(11)と分解の式(9)および式(10)を結合すると、結果として次式が得られる。
【0039】
【数8】

【0040】
式(12)は、公式の望ましい形式をもたらすが、評価されることになる自由パラメータとして乗算因数αを有することが扱いにくい。また周縁切り捨て問題が、αの直接評価を困難にする。この問題を扱うため、αをゼロにする解が決定された。式(12)を書き直すと次のようになる。
【0041】
【数9】

【0042】
これにおいてQは、スケール空間ヘッセ行列Pのみに依存する行列関数である。これを式(7)に代入することによって次式を得る。
【0043】
【数10】

【0044】
これにより、式(15)を代入することによって式(12)からαが消えることがわかる。
【0045】
【数11】

【0046】
ここで注意が必要であるが、Pの場合に類似の多くの演算負荷を課することなく式(3)を使用して信号fからF(u;H)を数値的に計算することが可能である(P、u、Hは行列を表す)。つまり、式(16)は結果を与える。
【0047】
図3を参照すると、マルチ‐スケール分析が、スケール空間表現についてのモード評価を含んでいる。上記のフレームワークにおいては、モード・ロケーション、たとえば中央のイメージ・データ内の腫瘍のロケーションが、別の手段によって、たとえば放射線技師によってマニュアルで提供される。平均シフト・プロシージャ302に基づく堅牢なモード・シーク方法を、共分散評価303に先行して採用することができる。uの粗い初期評価およびその種の情報を伴わない可変帯域幅平均シフト・プロシージャを与えて、モードならびに共分散評価を含むサンプリング方法を使用することができる(uは行列を表す)。モード・シーク方法およびサンプリング方法のいずれの方法も、関心連続関数について拡張された平均シフトを利用する。
【0048】
【数12】

【0049】
式(18)は、fについての拡張された固定帯域幅平均シフト・ベクトルを与える。平均シフト・プロシージャ302は、収斂に至るまでのデータ・ポイントxiの反復更新として定義される;すなわち、y0=xiとするとき、yj+1=m(yj;H)+yjとなる(H、uは行列を表す)。多数の開始ポイントからの収斂ポイントymは、F(H)内のモード評価ukを定義する(H、uは行列を表す)。評価ukの近隣を記述する集合Sは、同一のモードに収斂するすべてのデータ・ポイントを結合することによって与えられる(uは行列を表す)。モードは、関心ボリューム、たとえば腫瘍の中心ロケーションである。
【0050】
中心ロケーションが空間的極値になる関心ボリュームのD次元の広がりおよび向きが評価される(図1参照)。この種のD次元の局所的表面の幾何学的情報は、極値において評価される共分散行列によって特徴記述が可能である。
【0051】
スケール選択評価基準について考察すると、マルチ‐スケール分析が、分析帯域幅Hを可変パラメータとして扱う(Hは行列を表す)。ここでは、分析帯域幅H1,...,Hkの集合がアプリオリに与えられると仮定する(Hは行列を表す)。この評価301は、各帯域幅Hkについて独立に実行される(Hは行列を表す)。K個の評価のうちの最適評価を提供する帯域幅が、特定の評価基準によって求められる。安定テストは、スケール選択評価基準として使用することが可能である。評価の集合を{(uk,Σk)}とするとき、ジェンセン‐シャノン・ダイバージェンス(JS(k))のフォームが次式によって定義される。
【0052】
【数13】

【0053】
これにおいて、
【0054】
【数14】

【0055】
(式:u=...およびa)
は、近隣パラメータである。ここで注意が必要であるが、2つの隣接スケールのためのこのダイバージェンス測定のフォームは、バツタチヤリヤ距離まで縮小する。分析帯域幅にわたるもっとも安定した評価は、ダイバージェンス・プロファイルの局所的極小値を提供する。その種の評価は、マルチ‐スケール分析の最終評価304として扱うことができる。最終評価は、医療イメージ・データ内における腫瘍等のような関心オブジェクトとして決定されるスケール空間内のボリュームを定義する。
【0056】
この開示の実施態様を使用して外部データが収集される。この開示の実施態様の2次元(2D)実装は、2D合成ガウシアン・データを用いて評価される。周縁切り捨て問題に対する堅牢性を調査するため、テスト・データが、主軸に沿ったそのテールにおいて対称に切り捨てられた。達成された共分散評価が、標準標本評価方法と比較された。共分散評価は、3つの分析帯域幅h=1,2,3について導かれたが、それにおいてはH=hIである(H、Iは行列を表す)。標本評価は、合計の確率マスによって正規化された周縁密度の直接計算形式のfが与えられる。図4A〜4Fは、グラウンド‐トゥルース共分散[40 ‐40;40 100]およびα=10を伴う2D合成ガウシアンの種々の共分散評価を例示している。切り捨ての範囲は、グラウンド‐トゥルース共分散の主固有値λに対するファクタによって定量化される。図4A:0.2λ、図4B:0.6λ、図4C:1.0λ、図4D:1.4λ、図4E:1.8λ、および図4F:2.2λである。各評価は、90%信頼楕円として示されている。結果において、特に図4Bおよび4Cは、この開示の実施態様に従った方法が、標本評価に対して優位であることを明確に示している。図4A〜4Fにおいて、評価がオーバーラップしているところでは、図中の信号ラインに複数のラベルが指定されていることがある。グラウンド‐トゥルースは401により示され、標本評価は402により示されている。h=1、h=2、およびh=3は、403、404、および405によりそれぞれ示されている。振幅パラメータαが変更されたときは、結果が実質的に同一であった。また、データが非対称かつ非等方性に切り捨てられたときにも類似の結果が獲得された。図5は、フロベニウスのノルムの表現において、グラウンド‐トゥルースに関する種々の共分散評価の誤差を示している。これらの誤差は、グラウンド‐トゥルース共分散のマージン固有値λに対するファクタによって定量化された切り捨ての範囲に対してプロットされている。
【0057】
この開示の実施態様に従った共分散評価の3次元(3D)実装が、マルチ‐スケール分析フレームワークに統合された。この実装が、肺腫瘍を示している高解像度コンピュータ・トモグラフィ(HRCT)イメージを用いて評価された。周縁切り捨て問題のほかに、これらのデータは、使用されるガウシアン・モデルからデータ信号が大きく逸れる非ガウシアン性効果を呈する。臨床的に、高い非ガウシアン性を示す非固化もしくは部分固化ノジュールは、時間が経つと悪性になる可能性が高いことが示されている。したがって、任意の解がこの効果に対してもまた堅牢であることが重要となる。図6A〜6Fは、部分固化ノジュールを伴う3D分析結果の例を示している。正確な腫瘍中心および広がりの評価が、周縁切り捨ておよび非ガウシアン性効果の両方に対する堅牢性を示している。クロス601は、uの粗い初期評価を示す(uは行列を表す)。交差602および楕円603は、評価のロケーションおよび広がりを示す。関心ボリュームのロケーションおよび広がりが決定済みであると、ボリュームが腫瘍の場合に、より正確な診断、分析、および治療を考慮に入れることできる(たとえば、腫瘍の範囲の知識が与えられていれば、周囲組織の除去もしくはダメージを最小にしつつ、腫瘍の完全な除去が補助される)。これらの例は、腫瘍の決定に関連して与えられているが、これらの例は限定を意図したものではない。この開示の実施態様は、たとえば嵐の分析、および天文学を含むこのほかの分野にも適用できる。嵐の場所および範囲の決定に関連する応用については、嵐の追跡および被害評価のより正確なモデリングを思いつくことができる。
【0058】
周縁切り捨てが存在するときの共分散評価のためのシステムおよび方法に関する実施態様を説明してきたが、以上の教示に照らせば、当業者による修正および変形が可能であることにここで注意する必要がある。したがって、付随する特許請求の範囲によって定義されるとおりの本発明の精神ならびに範囲内となる開示された本発明の特定の実施態様において変更を行い得ることを理解するべきである。このように本発明を特に特許法によって求められる詳細を用いて説明してきたが、請求されており、かつ特許によって保護されることが望ましいとする本発明は付随する特許請求の範囲に示されるとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】この開示の実施態様に従った共分散評価を決定するための方法を例示したフローチャートである。
【図2】この開示の実施態様に従ったシステムを例示したブロック図である。
【図3】この開示の実施態様に従ったボリューム特性の評価を決定するための方法を例示したフローチャートである。
【図4A】この開示の実施態様に従った2次元合成ガウシアンの共分散評価のイメージを示した説明図である。
【図4B】この開示の実施態様に従った2次元合成ガウシアンの共分散評価のイメージを示した説明図である。
【図4C】この開示の実施態様に従った2次元合成ガウシアンの共分散評価のイメージを示した説明図である。
【図4D】この開示の実施態様に従った2次元合成ガウシアンの共分散評価のイメージを示した説明図である。
【図4E】この開示の実施態様に従った2次元合成ガウシアンの共分散評価のイメージを示した説明図である。
【図4F】この開示の実施態様に従った2次元合成ガウシアンの共分散評価のイメージを示した説明図である。
【図5】この開示の実施態様に従ったフロベニウスのノルムで表現したグラウンド‐トゥルースに関して種々の共分散評価の誤差を示したグラフである。
【図6A】この開示の実施態様に従った3次元ロケーション、広がり、および向きの評価の例を示した説明図である。
【図6B】この開示の実施態様に従った3次元ロケーション、広がり、および向きの評価の例を示した説明図である。
【図6C】この開示の実施態様に従った3次元ロケーション、広がり、および向きの評価の例を示した説明図である。
【図6D】この開示の実施態様に従った3次元ロケーション、広がり、および向きの評価の例を示した説明図である。
【図6E】この開示の実施態様に従った3次元ロケーション、広がり、および向きの評価の例を示した説明図である。
【図6F】この開示の実施態様に従った3次元ロケーション、広がり、および向きの評価の例を示した説明図である。
【符号の説明】
【0060】
201 コンピュータ・システム;コンピュータ・プラットフォーム
202 中央処理ユニット(CPU)
203 メモリ
204 入力/出力(I/O)インターフェース
205 ディスプレイ
206 入力デバイス
207 ルーチン
208 信号ソース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ内の関心ボリュームを決定するための方法において、
複数の分析帯域幅の固定帯域幅の評価を決定することを包含し、その際前記固定帯域幅の評価が前記データ内の前記関心ボリュームのモード・ロケーションの評価を提供することを含み、
局所的ヘッセ行列を使用して前記関心ボリュームの共分散を決定することを包含し、
前記複数の分析帯域幅のそれぞれにわたってもっとも安定した固定帯域幅の評価として前記関心ボリュームを決定すること
を包含することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記モード・ロケーションの評価はマニュアルで提供されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モード・ロケーションの評価を提供することは、各分析帯域幅内において前記関心ボリュームの平均シフト評価を決定することを包含することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記共分散を決定することは、さらに、
前記モード・ロケーションにおいてスケール空間表現を決定すること、
前記モード・ロケーションにおいてスケール空間ヘシアンを決定すること、および、
前記スケール空間ヘシアンから関心ボリュームの共分散を決定すること、
を包含することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記共分散は、前記関心ボリュームに当て嵌められた切り捨て済みのガウシアンを基礎として決定され、それにおいて前記切り捨て済みのガウシアンは、複数の恣意的な欠落テールを包含することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記データは、ボリュメトリック・イメージ・データであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記関心ボリュームは、前記データ内の当て嵌められたガウシアンの信頼性楕円として決定されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
データ内の関心ボリュームを決定するための方法ステップを実行するべくマシンによって実行可能なインストラクションのプログラムを有体として具体化する、マシン可読プログラム・ストレージ・デバイスでにおいて、前記方法が、
複数の分析帯域幅の固定帯域幅の評価を決定することを包含し、その際前記固定帯域幅の評価が前記データ内の前記関心ボリュームのモード・ロケーションの評価を提供することを含み、および、
局所的ヘッセ行列を使用して前記関心ボリュームの共分散を決定することを包含し、
前記複数の分析帯域幅のそれぞれにわたってもっとも安定した固定帯域幅の評価として前記関心ボリュームを決定すること
を包含することを特徴とするマシン可読プログラム・ストレージ・デバイス。
【請求項9】
前記モードの評価はマニュアルで提供されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記モードの評価を提供することは、各分析帯域幅内において前記関心ボリュームの平均シフト評価を決定することを包含することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記共分散を決定することは、さらに、
与えられたモード・ロケーションにおいてスケール空間表現を決定すること、
前記与えられたモード・ロケーションにおいてスケール空間ヘシアンを決定すること、および、
前記スケール空間ヘシアンから関心ボリュームの共分散を決定すること、
を包含することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記共分散は、前記関心ボリュームに当て嵌められた切り捨て済みのガウシアンを基礎として決定され、それにおいて前記切り捨て済みのガウシアンは、複数の恣意的な欠落テールを包含することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記データは、ボリュメトリック・イメージ・データであることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記関心ボリュームは、前記データ内の当て嵌められたガウシアンの信頼性楕円として決定されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
関心ボリューム内の共分散を決定するための方法において、
与えられたモード・ロケーションにおいてスケール空間表現を決定すること、
前記与えられたモード・ロケーションにおいてスケール空間ヘシアンを決定すること、および、
前記スケール空間ヘシアンから前記関心ボリュームの共分散を決定することであって、それにおいて前記共分散が、前記関心ボリュームの広がりを定義すること
を包含することを特徴とする方法。
【請求項16】
前記共分散は、前記関心ボリュームに当て嵌められた切り捨て済みのガウシアンを基礎として決定され、それにおいて前記切り捨て済みのガウシアンは、複数の恣意的な欠落テールを包含することを特徴とする請求項15に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【公表番号】特表2007−510971(P2007−510971A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534138(P2006−534138)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/032333
【国際公開番号】WO2005/034037
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(593063105)シーメンス メディカル ソリューションズ ユーエスエー インコーポレイテッド (156)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Medical Solutions USA,Inc.
【住所又は居所原語表記】51 Valley Stream Parkway,Malvern,PA 19355−1406,U.S.A.
【Fターム(参考)】