説明

スコロダイトの製造方法及び洗浄方法

【課題】洗浄水量を抑制しながらも低いAs溶出値を有するスコロダイトの製造方法を提供する。
【解決手段】19g/L以上の5価のAsと1当量以上の3価のFeを含有する酸性水溶液を結晶性スコロダイトの合成に有効な温度及び時間加熱する工程1と、合成されたスコロダイトを反応後液から固液分離によって分離する工程2と、その後に、スコロダイトを水洗した上でスコロダイトを水洗液から固液分離により分離する工程3と、を行うことを含むBET比表面積が10m2/g以上の結晶性スコロダイトの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スコロダイトの製造方法に関する。とりわけ、銅製錬工程で産出する電解沈殿銅からのスコロダイトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅鉱石中には種々の不純物が混入しており、そのような不純物には砒素(As)が含まれる。砒素(As)は銅製錬の乾式工程で高熱によって揮発分離されるが、一部は粗銅に混入して銅の電解精製工程へ持ち込まれることとなる。
粗銅(銅陽極)に含まれるAsは電解液に一部溶出し、未溶出分は電解槽底部に沈殿するアノードスライム中に混入する。また、陰極に析出する銅量よりも陽極から溶出する銅量の方が一般に多いので、電解液中の銅濃度は次第に増大する。そのため、電解液の一部を別の電解槽に抜き出して電解液の品質を制御している。抜き出した電解液に対しては脱銅電解を行い、陰極にCu及びAs等の不純物を析出させ、また、電解槽底部にこれらを沈殿させることでCu及びAs等の不純物を分離回収する。斯界では、これら電解槽底部に沈殿するものと陰極に析出するものを併せて電解沈殿銅と呼んでいる。電解沈殿銅は、典型的には、ヒ素が20〜50wt.%、ビスマスが0.1〜6wt.%、銅30〜60wt%が含まれている。ほかに、アンチモン0.5〜8wt.%、鉛0.5〜10wt.%も含有する。
【0003】
電解沈殿銅は銅製錬工程に繰り返されるのが通常であるが、そのためには電解沈殿銅からAs等の不純物を分離しておくのが好ましい。また、Asは有価物として利用する道も残されている。従って、電解沈殿銅からAsを高い品位で分離・回収する技術が望まれる。分離・回収された砒素は、環境汚染を引き起こさないように、安定な化合物として固定化するのが好ましい。
【0004】
砒素を固定するために、鉄砒素化合物であるスコロダイト(FeAsO4・2H2O)の結晶を生成させることが有効であることが知られている。結晶性スコロダイトは化学的に安定であり、長期保存にも適している。一方、スコロダイトであっても非晶質のものは安定性に欠き、長期保存に適さない。
【0005】
特許文献1には結晶性スコロダイトの製造方法が開示されており、これによれば、電解沈殿銅を随意的に水洗処理した後に、硫酸酸性中の電解沈殿銅に酸素含有ガスを導入することでAs成分を5価に酸化して溶出させる硫酸浸出を行い、該硫酸浸出液に3価の鉄を添加して結晶性スコロダイト(FeAsO4・2H2O)を生成している。
【特許文献1】特開2008−81784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法によれば、確かに安定な結晶性スコロダイトを製造することができる。また、スコロダイトの合成後にはこれを水で洗浄することが記載されている。しかしながら、As溶出値と洗浄方法の関係については触れておらず、スコロダイトからのAs溶出値が洗浄水量とが如何なる関係を有するかについては解明できていない。スコロダイトの洗浄水量を減らすことができれば、排水設備への負担軽減や使用水量低減といった利点が得られ、工業的に有利であると考えられる。
【0007】
そこで、本発明では洗浄水量を抑制しても低いAs溶出値を達成可能なスコロダイトの製造方法を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を重ねたところ、スコロダイトの反応前液中のAs濃度が上昇するにつれて、得られたスコロダイトの洗浄性が向上し、少ない洗浄水量でスコロダイトからのAs溶出値を環境基準以下に低減することが可能となることを見出した。常識的には、反応前液中のAs濃度を高めれば、反応後液中のAs濃度も高まり、スコロダイトに付着するAs濃度も高まることから、それを洗い落とす洗浄水量は増加するはずであるが、意外にも、結果は逆であった。
【0009】
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、
・19g/L以上の5価のAsと1当量以上の3価のFeを含有する酸性水溶液を結晶性スコロダイトの合成に有効な温度及び時間加熱する工程1と、
・合成されたスコロダイトを反応後液から固液分離によって分離する工程2と、
・その後に、スコロダイトを水洗した上でスコロダイトを水洗液から固液分離により分離する工程3と、
を行うことを含むBET比表面積が10m2/g以上の結晶性スコロダイトの製造方法
である。
【0010】
・19〜75g/Lの5価のAsと1〜1.5当量の3価のFeを含有する酸性水溶液を結晶性スコロダイトの合成に有効な温度及び時間加熱する工程1と、
・合成されたスコロダイトを反応後液から固液分離によって分離する工程2と、
・その後に、スコロダイトを水洗した上でスコロダイトを水洗液から固液分離により分離する工程3と、
を行うことを含むBET比表面積が10〜20m2/gの結晶性スコロダイトの製造方法。
【0011】
本発明に係るスコロダイトの製造方法の別の一実施形態においては、工程3のスコロダイトの水洗は、スコロダイトの乾燥重量1kg当たり10L以下の水を使用して行う。
【0012】
本発明に係るスコロダイトの製造方法の更に別の一実施形態においては、工程3はフィルタープレス内にスコロダイトを配置した上で洗浄水を供給した後に圧搾を行うにより実施する。
【0013】
本発明に係るスコロダイトの製造方法の更に別の一実施形態においては、工程3の洗浄及び圧搾は1回以上繰り返して行い、かつ、1回実施する毎にフィルタープレスに供給する洗浄水は、スコロダイトの乾燥重量1kg当たり1〜10Lとする。
【0014】
本発明に係るスコロダイトの製造方法の更に別の一実施形態においては、工程1で使用する5価のAsの濃度を60〜75g/Lとし、工程3のスコロダイトの水洗は、スコロダイトの乾燥重量1kg当たり10L以下の水を使用して行う。
【0015】
本発明に係るスコロダイトの製造方法の更に別の一実施形態においては、得られるスコロダイトは2次粒子の形態にある。
【0016】
本発明に係るスコロダイトの製造方法の更に別の一実施形態においては、工程1の酸性水溶液は電解沈殿銅の硫酸浸出液に3価のFeを添加することで調製する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、少量の洗浄水で洗浄するだけでAs溶出性の低いスコロダイトを製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の主題の一つは、
・19g/L以上の5価のAsと1当量以上の3価のFeを含有する酸性水溶液を結晶性スコロダイトの合成に有効な温度及び時間加熱する工程1と、
・合成されたスコロダイトを反応後液から固液分離によって分離する工程2と、
・その後に、スコロダイトを水洗した上でスコロダイトを水洗液から固液分離により分離する工程3と、
を行うことを含むBET比表面積が10m2/g以上の結晶性スコロダイトの製造方法
である。
【0019】
工程1
工程1ではスコロダイトの合成を行う。スコロダイトの合成は5価のAsと3価のFeを含有する酸性水溶液を結晶性スコロダイトの合成に有効な温度及び時間加熱することによって行うことができる。スコロダイトの合成条件については、結晶性スコロダイトの合成に有利であると当業者に知られている任意の条件を採用すればよいが、その好適な条件を以下に例示的に示す。
【0020】
5価のAsは例示的には砒酸(H3AsO4)等の形態で与えることができる。典型的には、5価のAsは電解沈殿銅を硫酸浸出した後の硫酸浸出液中に砒酸(H3AsO4)の形態で存在する。
3価のFeは例示的には酸化鉄、硫酸鉄及び塩化鉄、水酸化鉄等の形態で与えることができる。3価のFeは水溶液中での反応を行う観点から酸性水溶液の形態で提供されるのが好ましく、脱鉄後液を電錬の電解液に戻す事が最も有効である観点から硫酸第二鉄(Fe2(SO43)の水溶液の形態で提供されるのが好ましい。また、廃水処理等で使用される、ポリ硫酸第二鉄水溶液も使用可能である。
酸性水溶液は例示的には塩酸酸性、硫酸酸性、硝酸酸性、過塩素酸酸性等の水溶液として与えることができる。典型的には電解沈殿銅を硫酸浸出した後の硫酸浸出液が使用される。硫酸浸出の方法は後述する。
【0021】
酸性水溶液中に含まれるAsの反応率を高めるためには、3価のFeを5価のAs量に対して1.0当量以上とするのが好ましく、経済的な観点から1.0〜1.5当量とするのがより好ましく、典型的には1.0〜1.1当量である。1.0当量未満だと、得られたスコロダイトからAsが急激に溶出しやすくなる。
酸性水溶液のpHは0.3〜2.2、好ましくは0.4〜1.2とするのがスコロダイト合成上の観点から有利である。
【0022】
反応前の酸性水溶液中に含まれる5価のAs濃度が小さくなると、得られるスコロダイトを洗浄するのに必要な水量が増加するため、5価のAs濃度はできるだけ高い方が好ましい。ただし、Asの溶解度を超えるとAsが析出してスコロダイトの収率が低下することから、Asの溶解度以下とするのが好ましい。また、酸性水溶液を濃縮してAs濃度を上げると、酸性水溶液中に共存するAsよりも溶解度の低い金属成分(例:銅)が先に析出するため、これを除去する操作が必要となる。よって、反応前の酸性水溶液中には19g/L以上、好ましくは19〜75g/Lの5価のAsが含まれるようにするとよい。また、洗浄水量の低減を重視する場合には反応前の酸性水溶液中のAs濃度は60〜75g/Lとするのが望ましく、共存金属の析出防止を重視する場合には19〜40g/Lとするのが望ましい。酸性水溶液中のAs濃度は溶媒である水の増減によって調節すればよい。
【0023】
結晶性スコロダイトは上記酸性溶液を例えば大気圧下で60〜95℃、典型的には80〜95℃に加熱することにより生成させることができ、例えば8〜72時間反応させることにより充分な量の結晶性スコロダイトが生成する。Asは5価に酸化されているため、3価の鉄と高い反応効率で結晶性のスコロダイトが生成する。
【0024】
工程2
工程2では、合成されたスコロダイトを反応後液から固液分離によって分離する。反応後液には砒素、銅及びその他の金属のイオンが含まれており、これらがスコロダイトに付着していると保管時に溶出するため、充分に除去しておく必要がある。固液分離の方法は公知の任意の方法で行えばよく、特に制限はないが、濾過が一般的である。濾過としては重力(自然)濾過、吸引濾過、加圧濾過、遠心濾過などが挙げられる。一般には重力濾過が最も分離効率が悪く、加圧濾過及び遠心濾過が最も効率がよい。吸引濾過はその中間である。
しかしながら、本発明が目標とする分離効率を得るには何れの方法によって固液分離しても不十分であり、その後に水洗が必要である。そこで、後の水洗効率のことも考慮すると、スコロダイトを反応後液から分離する段階では濾過により得られたスコロダイトのケークにクラックが生じないようにすることが重要である。ケークにクラックが生じると、その後の水洗では、クラック部分の水の抵抗が小さくなるため、その部分を集中的に水が流れてしまい、洗浄むらが出来てしまうからである。
クラックを避けるには吸引濾過は行わない方がよく、重力濾過(自然濾過)するのが好ましく、フィルタープレスによる加圧濾過がより好ましい。フィルタープレスには縦型(ケークの加圧方向が垂直方向)と横型(ケークの加圧方向が水平方向)があるが、縦型のフィルタープレスを用いた場合にはクラックの発生を抑える効果が特に高い。縦型は、横型に比べて、量によらず均一な厚さのケークとすることができるからである。横型フィルタープレスではスラリーはチャンバーの下から満たされ、縦型フィルタープレスのように厚さの均一なケークを作ることが難しく、重力によって、ケークにクラックが入りやすい。そのためそのケークを水洗する際はケークの厚さの薄い部分や、クラックに集中的に水が流れるおそれがあり、全体を縦型ほど均一に洗浄することは難しい。
【0025】
工程3
工程2によって、スコロダイトに付着していた反応後液は大部分が除去されるが、この段階におけるスコロダイトでは砒素の溶出性が国内処分場の基準値を下回らないことが多く、製品毎の溶出値のばらつきも大きい。従って、低溶出性のスコロダイトを安定的に得るためには、更に水洗処理を行ってスコロダイトから反応後液を分離することが重要である。
【0026】
工程3ではスコロダイトを水洗した後にスコロダイトを水洗液から固液分離により分離する。水洗によって水溶性の成分は洗い流され、その回数を重ねる毎にスコロダイトの砒素溶出性は徐々に低下する。スコロダイトからの砒素の溶出の大半は、スコロダイト自体からの溶出ではなく、反応後液の付着が原因だからである。
なお、スコロダイトの合成時に副産物として生成し得る非晶質のスコロダイトは水溶性が高いので、この洗浄操作によって、反応後液と共に除去されていると考えられる。従って、洗浄操作は単に反応後液をスコロダイトから除去するのみならず、副生成した非晶質スコロダイトの除去する役割もある。
【0027】
水洗の方法は公知の任意の方法で行えば良く、特に制限はないが、効率的な洗浄方法としては以下のような方法が挙げられる。
漏斗を用いて洗浄と濾過を連続的に実施する場合にはスコロダイトのケークにクラックが発生しないような洗浄方法が好ましい。クラックが入ると、洗浄効率に悪影響を与えるからである。漏斗を用いた濾過ではケーク上に水が存在する間、すなわちケークが水に完全に浸漬している間はクラックは発生しないが、水が途切れてケークが水面上に露出すると、ケークの体積が縮小してクラックが発生してしまう。そこで、水を途切れなく供給し、ケーク全体が洗浄水に覆われている状態(例:完全に浸漬している状態)を保つように濾過を行うのが望ましい。
また、水洗槽中にスコロダイトを投入して撹拌やリパルプ等を行った後に固液分離する方法も有効である。水洗液中に含まれる反応後液成分の濃度は固液分離した後の水洗液に対して測定すればよい。この際の固液分離の方法は工程2で上述した何れの方法を使用してもよく、クラックの発生は気にしなくてよい。
他の好ましい方法の一つは、フィルタープレスでスコロダイトのケークを作製し、フィルタープレス内で、洗浄水を供給後圧搾することにより、ケークを直に洗浄及び濾過する方法(例えばラロックス社製縦型フィルタープレスを用いた洗浄)がある。この方法によれば、リパルプよりも簡便に洗浄濾過操作を行うことができる。縦型のフィルタープレスであればクラックも入りにくい。
フィルタープレスを使用して工程3を実施する場合、全体の洗浄水量が同一でも、洗浄及び圧搾は複数回に分けて実施する方が、洗浄効率が高まる。例えば、洗浄及び圧搾を1回実施する毎にフィルタープレスに供給する洗浄水は、スコロダイトの乾燥重量1kg当たり1〜10Lとし、好ましくは1〜5Lとする。典型的には2〜3Lである。更に洗浄水量を削減したい場合には、ある回でフィルタープレスに供給する洗浄水の後半部分を回収し、次回の前半に使用することもできる。
【0028】
水洗に必要な水量は反応前の酸性水溶液(反応前液)中に含まれるAs濃度と相関があり、高As濃度としてスコロダイトを製造した場合の方が、As溶出の環境基準値である0.3mg/Lを満たすのに必要な洗浄水量が少なくて済む。具体的には、上記何れの洗浄方法を採用しても、スコロダイトからのAs溶出値が環境基準値を下回るのに必要な洗浄水量は、反応前液中の含まれるAs濃度が19g/L以上のときはスコロダイトの乾燥重量1kg当たり15L以下とすることができ、好ましくは10L以下とすることができ、典型的には8〜10Lとすることができ、反応前液中の含まれるAs濃度が30g/L以上のときはスコロダイトの乾燥重量1kg当たり10L以下とすることができ、好ましくは8L以下とすることができ、典型的には、5〜8Lとすることができる。
【0029】
電解沈殿銅の硫酸侵出液
スコロダイトの原料として好適な電解沈殿銅の硫酸浸出液は例えば以下のように得ることができる。
まず、電解沈殿銅に対して水洗処理を随意的に行う。水洗処理は電解沈殿銅を水でリパルプし、0.5〜6時間撹拌して、電解沈殿銅の製造時に付着した電解液(硫酸銅、Ni、Fe等を含む)や、電解沈殿銅に含まれる微量のNi及びFe等を溶解させた後に、スラリーを濾過し、固液分離することで実施することができる。この工程では電解沈殿銅からFe及びNiの大部分を分離することができる。
しかしながら、この操作は、電解沈殿銅中の銅量の中で、硫酸銅を排除した0価の(水に溶解しない)銅量を明らかにして、次工程で行う電解沈殿銅の硫酸浸出に必要な硫酸量をより正確に求めるために行うことを主目的とする操作である。NiやFe等の微量元素を特に気にしない場合や、硫酸銅の含有量が既知であったり電解沈殿銅への電解液の持込が少なかったりする場合は、この工程を行う必要はない。
【0030】
随意的に水洗処理を行った後、硫酸酸性中の電解沈殿銅に酸素含有ガスを導入しながら、電解沈殿銅中に含まれるAs成分を5価に酸化するのに充分な液温及び時間で該溶液を撹拌して硫酸浸出を行い、次いでSb成分及びBi成分を含有する浸出残渣と5価のAs成分を含有する硫酸浸出液に固液分離する。
【0031】
このときに起きる浸出反応は一般に次式に従い、CuはCu2+まで、AsはAs5+まで酸化される。
Cu+H2SO4+1/2O2 → CuSO4+H2O ・・・(1)
2As+5/2O2+3H2O → 2H3AsO4 ・・・(2)
硫酸使用量は、Cu量に対し好ましくは1.0〜1.2当量である。1.0当量未満の場合浸出液が弱酸性になり、Cu3AsO4等の沈殿物が生成しCu、Asの浸出率が低下する。1.2当量を超える場合は、Cu、Asの浸出率に影響しないが、使用硫酸量が多くなる。Cu、Asの硫酸溶液中の濃度は特に制限はないが、溶解度を越えるとCu、Asの浸出率が低下するので、Cu2+、As5+の溶解度以下が好ましい。
また、その後に合成する結晶性スコロダイトの生成に適したpHは0.3〜2.2、好ましくは0.4〜1.2あるが、硫酸濃度が低いと硫酸浸出の効率、すなわち銅や砒素の回収効率が低下する傾向にあるので、硫酸浸出時に使用する硫酸の濃度はpHが1未満となるような濃度であるのが好ましい。また、硫酸浸出液のpHが1以上であったとしても、スコロダイトを合成する際に添加する3価の鉄は酸性水溶液の形態で提供されるのが好ましく、例えば、硫酸第二鉄水溶液やポリ硫酸第二鉄水溶液のpHは0.6程度である。
【0032】
硫酸浸出では、Asを5価に酸化するために、例えば70〜95℃で4.5〜11時間、好ましくは80〜95℃で7〜11時間撹拌すればよい。硫酸浸出は発熱反応であるため特に外部から加熱しないで行うことも可能である。撹拌時間は更に長く行っても良く、経済性と効果との兼ね合いで適宜決定すればよい。
Asの酸化効率を高めるためには、導入する酸素含有ガスの気泡を細かくして充分な量(例えば銅に対して酸素10当量/7時間)供給した方がよい。そこで、撹拌を激しく行うのが好ましく、例えば酸素含有ガスの導入及び/又は撹拌はジェット噴射により行うのが好都合である。この値は、ジェット噴射(「ジェットアジター」商品名)場合であり、通常のタービン翼を用いた撹拌機の場合反応効率は低下し、酸素含有ガス量をこの3.5倍以上導入しても、2倍以上の反応時間が必要となる。この段階でAsの価数制御を行うことで、後のスコロダイト生成が容易となる。また、Cu2+もAsの酸化を促進する効果がある。
【0033】
酸素含有ガスとしては上記反応に有意な悪影響を与えない限り特に制限はないが、例えば純酸素、酸素と不活性ガスの混合物を使用することができる。取扱い性やコストの観点からは空気とするのが好ましい。
【0034】
このようにして得られた電解沈殿銅の硫酸浸出液に3価の鉄を添加することで、5価のAsと3価のFeを含有する酸性水溶液が得られる。この場合、3価の鉄としては、酸化鉄、硫酸鉄、塩化鉄、水酸化鉄等が挙げられるが、3価の鉄は水溶液中での反応を行う観点から酸性水溶液の形態で提供されるのが好ましく、脱鉄後液を電錬の電解液に戻す事が最も有効である観点から硫酸第二鉄(Fe2(SO43)の水溶液の形態で提供されるのが好ましい。また、廃水処理等で使用される、ポリ硫酸第二鉄水溶液も使用可能である。
3価鉄の使用量はAsを除去するという観点からは、As量に対して1.0当量以上必要であり、経済的な観点から1.0〜1.5当量であるのが好ましい。
【0035】
本発明に係る方法で製造されたスコロダイトは、一般にBET比表面積が10m2/g以上であり、典型的な実施形態において、10〜20m2/gである。本発明に係る方法で製造されたスコロダイトは、一実施形態において、1次粒子が凝集してできた2次粒子の形態にある。従来、As溶出性を抑制するために、スコロダイトのBET比表面積を小さくすることが好ましいとされてきたが、本発明の製造方法によって得たスコロダイトはBET比表面積が大きいにもかかわらず、As溶出性は十分に低い。
【実施例】
【0036】
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を記載するが、本発明はそれらに限定されることはない。
【0037】
例1
1.電解沈澱銅の水洗処理
原料の電解沈澱銅の一部を使い、以下の予備試験を行った。電解沈澱銅2000g(湿重量)を5000mlの水でリパルプし、4時間撹拌して、電解沈澱銅の製造時に付着した電解液(硫酸銅、ニッケル、鉄他)を溶解した後に、スラリーをろ過し、固液分離した。得られた残渣は、乾燥して分析用の試料として使用した。乾燥後の残渣重量は1636.9gであった。分析値を表1に示す。尚、この操作は、電解沈澱銅中の銅量の中で、硫酸銅を排除した0価の(水に溶解しない)銅量を明らかにして、次の電解沈澱銅を硫酸で浸出する際の必要な硫酸量をより正確に求めるために行う操作である。硫酸銅の含有量が既知であったり、電解沈澱銅への電解液の持込が少ない場合、この工程を行う必要はない。
【0038】
【表1】

【0039】
2.電解沈澱銅の硫酸浸出
前述電解沈澱銅と同一バッチで製造した電解沈澱銅50kg(湿重量、水分9.2%)に75%の硫酸を48kg(電解沈澱銅に含まれる、水に不溶な銅に対して1当量)加え、更に水を加えて、スラリー量を175Lとした。Asを5価にするため250L/分で空気を導入しながら、12時間撹拌して浸出した。反応効率を高めるためには、導入する空気の気泡を細かくすることが有効であるため、空気の導入、撹拌にはジェットアジター(SHIMAZAKI社製 JET AJITER)を使用した。尚、液温は88℃に制御した。硫酸浸出後約3倍に希釈した後に、浸出物をろ過し、固液分離した。残渣は、水で洗浄し、その洗浄水は、硫酸浸出液に加えた。得られた硫酸浸出液、硫酸浸出残渣の物量を表2に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
3.スコロダイトの合成
前述の硫酸浸出液530Lに、3価の鉄として日鉄鉱業社製ポリ硫酸第2鉄(以下ポリ鉄)64L(硫酸浸出液に含まれるヒ素に対して第2鉄が1.1当量)を加えた。この混合液はヒ素の濃度は分析したところ20.2g/Lで、pH0.55(室温)であった。その後、95℃まで加熱し、24時間スコロダイトの合成を行った。硫酸浸出液とポリ鉄を室温で混ぜ合わせた直後は、反応は進行しないが、加熱に伴い、87℃前後でスコロダイトの沈澱が観察された。スコロダイトの合成後に、スコロダイト結晶をろ過し、固液分離した。得られたスコロダイト結晶、結晶ろ過後液の物量を表3に示す。
【0042】
【表3】

【0043】
4.スコロダイト結晶の水洗浄方法
例1で合成したスコロダイトの一部をラロックス社製縦型フィルタープレス(型式:濾過試験装置PF 0.1H2型)で濾過し、その後圧搾し固液を分離してスコロダイトのケークとした。引き続きフィルタープレスのチャンバー内にあるケークに10Lの水を流し洗浄、圧搾、エアブローをした。この操作を7回繰り返した。以上の洗浄後、ヒ素の溶出値は0.09mg/L(環境省告示13号に則った試験)であり、ヒ素が安定であることが確認された。このことからも得られたスコロダイトは結晶性であるといえる。ろ過後のスコロダイトは6.02kg(湿量、乾量換算4.86kg)であった。これによって、スコロダイトの乾量1kg当りの水洗水量は14Lであった。
得られたスコロダイトのSEM画像の一例を図1に示す。2次粒子の形態にあることが分かる。また、BET比表面積(BET1点法)をユアサアイオニクス社製カンタソーブ(QS−17)を用いて測定したところ、17.5m2/gであった。
【0044】
例2
1.電解沈澱銅の硫酸浸出
例1の電解沈澱銅と同一バッチで製造した電解沈澱銅50kg(湿重量、水分9.2%)に75%の硫酸を48kg(電解沈澱銅に含まれる、水に不溶な銅に対して1当量)加え、更に水を加えて、スラリー量を175Lとした。Asを5価にするために230L/分で空気を導入しながら、13時間撹拌して浸出した。反応効率を高めるためには、導入する空気の気泡を細かくすることが有効であるため、空気の導入、撹拌にはジェットアジター(SHIMAZAKI社製 JET AJITER)を使用した。尚、液温は88℃に制御した。硫酸浸出後約2.4倍に希釈した後に、浸出物をろ過し、固液分離した。残渣は、水で洗浄し、その洗浄水は、硫酸浸出液に加えた。得られた硫酸浸出液、硫酸浸出残渣の物量を表4に示す。
【0045】
【表4】

【0046】
2.スコロダイトの合成
前述の硫酸浸出液420Lに、3価の鉄として日鉄鉱業社製ポリ硫酸第2鉄(以下ポリ鉄)67L(硫酸浸出液に含まれるヒ素に対して第2鉄が1.1当量)を加えた。この混合液はヒ素の濃度は分析したところ26.1g/LでpH0.63(室温)であった。その後、95℃まで加熱し、24時間スコロダイトの合成を行った。硫酸浸出液とポリ鉄を室温で混ぜ合わせた直後は、反応は進行しないが、加熱に伴い、79℃前後でスコロダイトの沈澱が観察された。スコロダイトの合成後に、スコロダイト結晶をろ過し、固液分離した。得られたスコロダイト結晶、結晶ろ過後液の物量を表5に示す。
【0047】
【表5】

【0048】
3.スコロダイト結晶の水洗浄方法
例2で合成したスコロダイトの一部をラロックス社製縦型フィルタープレス(型式:濾過試験装置PF 0.1H2型)で濾過し、その後圧搾し固液を分離してスコロダイトのケークとした。引き続きフィルタープレスのチャンバー内にあるケークに10Lの水を流し洗浄、圧搾、エアブローをした。この操作を2回繰り返した。2回目の操作終了時には、スコロダイトのヒ素の溶出値は0.10mg/L(環境省告示13号に則った試験)であり、ヒ素が安定であることが確認された。このことからも得られたスコロダイトは結晶性であるといえる。ろ過後のスコロダイトは4.54kg(湿量、乾量換算3.25kg)であった。これによって、スコロダイトの乾量1kg当りの水洗水量は6Lであった。スコロダイトをSEMによって観察し、2次粒子の形態にあることを確認した。また、BET比表面積(BET1点法)をユアサアイオニクス社製カンタソーブ(QS−17)を用いて測定したところ、14.8m2/gであった。
【0049】
例3
1.電解沈澱銅の硫酸浸出
電解沈澱銅858g(乾重量)に98%の濃硫酸を638g(電解沈澱銅に含まれる銅に対して1.0当量)加え、更に水を加えて、スラリー量を2.5L(スラリー濃度340g/L)とした。5.1L/分で空気を導入しながら、9時間撹拌して浸出した。反応効率を高めるためには、導入する空気の気泡を細かくすることが有効であるため、空気の導入、撹拌にはジェットアジター(SHIMAZAKI社製 JET AJITER)を使用した。尚、液温はウォーターバスにより80℃に制御した。浸出に伴いORPは徐々に上昇し、浸出開始時に148mVが、浸出終了時には270mVであった。ORPの挙動は、浸出終了時近くに急激に上昇する特徴があり、終点を容易に見極めることができる。浸出終了時の銅濃度は約160g/Lで、室温での溶解度50g/L程度をはるかに超えている。浸出液をこのまま希釈せずに室温で一晩放置、硫酸銅5水塩(胆礬)を析出させた。その後、浸出残渣及び胆礬をろ過し、硫酸浸出ろ過後液と硫酸浸出残渣・胆礬混合物とに分けた。硫酸浸出残渣・胆礬混合物は、約1Lの水で洗浄して付着している硫酸浸出液を取り除き、その洗浄水は、ろ過し、ろ液を胆礬洗浄液とした。ろ過残渣は、硫酸浸出残渣・胆礬混合物に加えた。胆礬洗浄液は砒素濃度が30g/L程度と高いため、後に硫酸浸出ろ過後液と共にスコロダイト原料として使用した。水洗後の硫酸浸出残渣・胆礬混合物は2.5Lの水で溶解した後に、ろ過によって硫酸浸出残渣と胆礬溶解液に分離した。得られた硫酸浸出ろ過後液、硫酸浸出残渣の物量を表6に示す。
以上の操作(表6に記載の全操作)を4回繰り返し、硫酸浸出ろ過後液について最初の2回分、胆礬洗浄液について4回分を混合して、スコロダイトの原料液とした。
【0050】
【表6】

【0051】
2.スコロダイトの合成
前述の硫酸浸出ろ過後液と胆礬洗浄液の混合液7347mLに、3価の鉄として日鉄鉱業社製ポリ硫酸第2鉄(以下ポリ鉄)2600mL(硫酸浸出液に含まれるヒ素に対して第2鉄が1.1当量)を加えた。この混合液のヒ素の濃度を分析したところ47g/Lで原料からの計算値とよく一致していた。また、pH0.32(室温)であった。最後に、種結晶として、結晶性スコロダイト450g(乾重量)を加えた。その後、95℃まで加熱し、54時間スコロダイトの合成を行った。硫酸浸出液とポリ鉄を室温で混ぜ合わせた直後は、反応は進行しないが、加熱に伴い、95℃到達後3時間前後にスコロダイトの沈澱が観察された。スコロダイトの合成終了後に、スコロダイト結晶をブフナー漏斗で吸引濾過し、固液分離した。得られたスコロダイト結晶及び結晶濾過後液の物量を表7に示す。
【0052】
【表7】

【0053】
3.スコロダイト結晶の水洗浄方法
例3で合成、固液分離した種結晶を含むスコロダイト1995.9g(湿量、乾量換算1813g)に水を4060mL加えて、リパルプし、10分間撹拌した後にブフナー漏斗で吸引濾過し、スコロダイトと洗浄液に分離した。この操作を3回繰り返した。3回目の操作終了時には、スコロダイトのヒ素の溶出値は0.05mg/L(環境省告示13号に則った試験)であり、ヒ素が安定であることが確認された。このことからも得られたスコロダイトは結晶性であるといえる。これによって、スコロダイトの乾量1kg当りの水洗水量は6.7Lであった。得られたスコロダイトをSEMによって観察し、2次粒子の形態にあることを確認した。また、BET比表面積(BET1点法)をユアサアイオニクス社製カンタソーブ(QS−17)を用いて測定したところ、18.7m2/gであった。
【0054】
例4
1.電解沈澱銅の硫酸浸出
電解沈澱銅858g(乾重量)に98%の濃硫酸を638g(電解沈澱銅に含まれる銅に対して1.0当量。)加え、更に水を加えて、スラリー量を2.5L(スラリー濃度340g/L)とした。4.6L/分で空気を導入しながら、9時間撹拌して浸出した。反応効率を高めるためには、導入する空気の気泡を細かくすることが有効であるため、空気の導入、撹拌にはジェットアジター(SHIMAZAKI社製 JET AJITER)を使用した。尚、液温はウォーターバスにより80℃に制御した。浸出に伴いORPは徐々に上昇し、浸出開始時に145mVが、浸出終了時には270mVであった。ORPの挙動は、浸出終了時近くに急激に上昇する特徴があり、終点を容易に見極めることができる。浸出終了時の銅濃度は約160g/Lで、室温での溶解度50g/L程度をはるかに超えている。浸出液をこのまま希釈せずに40℃で一晩放置、硫酸銅5水塩(胆礬)を析出させた。その後、浸出残渣及び胆礬をろ過し、硫酸浸出ろ過後液と硫酸浸出残渣・胆礬混合物とに分けた。硫酸浸出残渣・胆礬混合物は、約1Lの水で洗浄して付着している硫酸浸出液を取り除き、その洗浄水は、ろ過し、ろ液を胆礬洗浄液とした。ろ過残渣は、硫酸浸出残渣・胆礬混合物に加えた。水洗後の硫酸浸出残渣・胆礬混合物は2.5Lの水で溶解した後に、ろ過によって硫酸浸出残渣と胆礬溶解液に分離した。得られた硫酸浸出ろ過後液、硫酸浸出残渣の物量を表8に示す。
以上の操作(表8に記載の全操作)を3回繰り返し、硫酸浸出ろ過後液について3回分を混合して、スコロダイトの原料液とした。
【0055】
【表8】

【0056】
2.スコロダイトの合成
前述の硫酸浸出ろ過後液と胆礬洗浄液の混合液4911mLに水1500mL、3価の鉄として日鉄鉱業社製ポリ硫酸第2鉄(以下ポリ鉄)3540mL(硫酸浸出液に含まれるヒ素に対して第2鉄が1.2当量)を加えた。この混合液のヒ素の濃度を分析したところ65g/Lで原料からの計算値とよく一致していた。また、pH0.21(室温)であった。最後に、種結晶として、結晶性スコロダイト450g(乾重量)を加えた。その後、95℃まで加熱し、48時間スコロダイトの合成を行った。硫酸浸出液とポリ鉄を室温で混ぜ合わせた直後は、反応は進行しないが、加熱に伴い、95℃到達後1時間前後にスコロダイトの沈澱が観察された。スコロダイトの合成終了後に、スコロダイト結晶をブフナー漏斗で吸引濾過し、固液分離した。得られたスコロダイト結晶及び結晶濾過後液の物量を表9に示す。
【0057】
【表9】

【0058】
3.スコロダイト結晶の水洗浄方法
例4で合成、固液分離した種結晶を含むスコロダイト2735.1g(湿量、乾量換算2393g)に水を4070mL加えて、リパルプし、10分間撹拌した後にブフナー漏斗で吸引濾過し、スコロダイトと洗浄液に分離した。この操作を4回繰り返した。4回目の操作終了時には、スコロダイトのヒ素の溶出値は0.10mg/L(環境省告示13号に則った試験)であり、ヒ素が安定であることが確認された。このことからも得られたスコロダイトは結晶性であるといえる。スコロダイトの乾量1kg当りの水洗水量は6.8Lであった。得られたスコロダイトをSEMによって観察し、2次粒子の形態にあることを確認した。また、BET比表面積(BET1点法)をユアサアイオニクス社製カンタソーブ(QS−17)を用いて測定したところ、11.0m2/gであった。
【0059】
例5
スコロダイトの合成時の硫酸浸出液とポリ硫酸第2鉄混合液(以下反応前液)のヒ素の濃度を変化させた他は例1と同様の条件で合成したスコロダイトについて、As溶出の環境基準値である0.3mg/Lを満たすのに必要なスコロダイトの乾量1kg当りの水洗水量と反応前液のヒ素濃度の関係を調べた。反応前液のヒ素濃度は硫酸浸出後の希釈倍率を変化させることで調整した。結果を表10及び図2に示す。また、得られたスコロダイトをSEMによって観察したところ、それぞれ2次粒子の形態にあることを確認した。また、BET比表面積(BET1点法)を上記と同様に測定したところすべて10〜20m2/gの範囲内であった。
【0060】
【表10】

【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】例1で得られたスコロダイトのSEM画像である。
【図2】反応前液のAs濃度と得られたスコロダイトの洗浄水量の関係を示す(例5)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
・19g/L以上の5価のAsと1当量以上の3価のFeを含有する酸性水溶液を結晶性スコロダイトの合成に有効な温度及び時間加熱する工程1と、
・合成されたスコロダイトを反応後液から固液分離によって分離する工程2と、
・その後に、スコロダイトを水洗した上でスコロダイトを水洗液から固液分離により分離する工程3と、
を行うことを含むBET比表面積が10m2/g以上の結晶性スコロダイトの製造方法。
【請求項2】
・19〜75g/Lの5価のAsと1〜1.5当量の3価のFeを含有する酸性水溶液を結晶性スコロダイトの合成に有効な温度及び時間加熱する工程1と、
・合成されたスコロダイトを反応後液から固液分離によって分離する工程2と、
・その後に、スコロダイトを水洗した上でスコロダイトを水洗液から固液分離により分離する工程3と、
を行うことを含むBET比表面積が10〜20m2/gの結晶性スコロダイトの製造方法。
【請求項3】
工程3のスコロダイトの水洗は、スコロダイトの乾燥重量1kg当たり10L以下の水を使用して行う請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
工程3はフィルタープレス内にスコロダイトを配置した上で洗浄水を供給した後に圧搾を行うことにより実施する請求項1〜3何れか一項記載の製造方法。
【請求項5】
工程3の洗浄及び圧搾は1回以上繰り返して行い、かつ、1回実施する毎にフィルタープレスに供給する洗浄水は、スコロダイトの乾燥重量1kg当たり1〜10Lとする請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
工程1で使用する5価のAsの濃度を60〜75g/Lとし、工程3のスコロダイトの水洗は、スコロダイトの乾燥重量1kg当たり10L以下の水を使用して行う請求項1〜5何れか一項記載の製造方法。
【請求項7】
得られるスコロダイトは2次粒子の形態にある請求項1〜6何れか一項記載の製造方法。
【請求項8】
工程1の酸性水溶液は電解沈殿銅の硫酸浸出液に3価のFeを添加することで調製する請求項1〜7何れか一項記載の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−89976(P2010−89976A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259811(P2008−259811)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(591007860)日鉱金属株式会社 (545)
【Fターム(参考)】