説明

スチレン含有ポリマーの難燃組成物

スチレン含有ポリマー、トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジン、0.5−1.7重量%の三酸化アンチモンおよびドリップ防止剤を含む難燃性スチレン含有ポリマー組成物。組成物の臭素含量は、一般に、8−18重量%の範囲である。追加の臭素化難燃剤も組成物中に含ませることができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
プラスチック材料の可燃特性は、Underwriter Laboratories標準のUL 94によって規定された方法に従って定量化可能である。UL 94格付は、V−0、V−1およびV−2である(こうした可燃性試験の詳細な説明は以下で与えられる。)。V−0級であると認定された材料は、可燃性が低いとみなされる。ある種の用途では、より低いV−2級でも許容されるが、他の用途では、より厳格なV−1およびV−0級が必要とされる。
【0002】
三酸化アンチモンは、所望のUL 94 V−1またはV−0級を達成するために、多様なポリマー配合物で臭素化難燃剤と相乗的に協働することが公知である。HIPS(高耐衝撃性ポリスチレン)またはABS(アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー)では、用いた臭素化難燃剤を効果的に支援するために、三酸化アンチモンが、一般に、ポリマー配合物の全重量に対して約2−6%の範囲内の重量濃度で存在しなければならない。例えば、US5,387,636およびEP527493では、4重量%の三酸化アンチモンと組み合わせたデカブロモジフェニルエタンによって難燃化されたHIPS配合物が記載されている。スチレンコポリマーで使用することが推奨されている他の臭素化難燃剤は、デカブロモジフェニルオキシド、臭素化エポキシおよびトリブロモフェノールエンドキャップされた臭素化エポキシである。こうした難燃剤は、相当量の三酸化アンチモンと組み合わせてHIPSまたはABS配合物に添加される。
【0003】
したがって、HIPSまたはABS組成物を有効に難燃化するために、2%未満の三酸化アンチモン(ポリマー配合物の全重量に対する重量%)と組み合わせた上に列挙したものなどの臭素化難燃剤を含む難燃系を使用することは、実際的ではないとみなされている。というのはかかる少量の前記共力剤の存在下では、UL 94 V−1またはV−0級を取得するのに必要な臭素化化合物の量は、許容できないほど大きいと考えられ、そのために物理的なプロフィールが不十分な最終生成物がもたらされるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5387636号明細書
【特許文献2】欧州特許第527493号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、スチレン含有ポリマー配合物においてUL 94 V−1またはV−0級を達成するのに必要な三酸化アンチモンの量の大幅な低減を可能にすることである。三酸化アンチモンは、高価で高密度の添加剤であり、最終プラスチックの特性に極めて有害な影響を与える傾向があるので、こうした低減は有益である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、[Sb]の関数としての臭素含量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンは、臭素含量が67重量%である臭素化難燃剤であり、以下の式:
【0008】
【化1】

によって表される。トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンの調製は、一般に、当技術分野で周知の多様な条件下でのシアヌル酸クロリドと2,4,6−トリブロモフェノレートの反応に基づいている(例えば、US5,907,040、5,965,731および6,075,142を参照されたい。)。この難燃剤はまた、FR−245という名称でICL−IPからも市販されている。化学名およびFR−245は、本明細書で互換的に使用される。
【0009】
トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンの主要な用途の1つは、HIPSおよびABSおよびこれらのアロイ難燃化することである。トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンの融点は230℃であり、これは、HIPSおよびABSの用途において広く使用されている他の2つの臭素化難燃剤:それぞれ305℃および350℃で溶融するデカブロモジフェニルオキシドおよびデカブロモジフェニルエタンの融点より有意に低いことに留意されたい。
【0010】
スチレン含有ポリマーを難燃化するためにトリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンと三酸化アンチモンの組合せが有効であることは、本願の譲受人に譲渡されたPCT公開特許WO2005/120165で議論されている。前記公開特許の実施例1−3には、トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンによって提供される臭素の濃度が、10重量%である場合、2.5%の三酸化アンチモン量によって、HIPS系配合物がUL 94 V−0級に合格することが十分可能になることが示されている。WO2005/120165の参考実施例12には、三酸化アンチモンの濃度を1重量%まで低減しようと試みたが、HIPS配合物の難燃性は許容可能な程度にならなかったことが例示されている。別段の指示がない限り、本明細書で示された百分率はすべて、難燃組成物の全重量に対する重量である。
【0011】
スチレン含有ポリマーの組成物、詳細には、HIPS系およびABS系配合物は、三酸化アンチモン共力剤が前記組成物中に0.5−1.7重量%、より好ましくは、0.75−1.5重量%、さらにより好ましくは、1.0−1.5重量%という低い濃度で存在する場合でも、トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンで難燃化することによって厳格なUL 94 V−1またはV−0級に合格することができることがここに発見された。共力剤濃度が低いにも拘らず、組成物内のトリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジン量は、スチレン含有ポリマー組成物の臭素含量が、7−24重量%、好ましくは、8−18重量%、より好ましくは、11−18重量%、さらにより好ましくは、11−14.5重量%の許容可能な範囲であるように調整され、これによって、所望のUL 94 V−1またはV−0級に合格する。以下の実施例で報告されている本発明者らの比較調査によって、トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジン/三酸化アンチモンの組は、上記で示された範囲の濃度内で非常に有効に協働するが、三酸化アンチモンと強力な難燃剤、デカブロモジフェニルオキシドおよびデカブロモジフェニルエタンとの組合せでは類似の状況は観察されないことが示されている。これら2つの化合物は、本明細書では、それぞれ、市販名「FR−1210」(ICL−IP)および「S−8010」(Albemarle Corporation)と短縮される場合がある。
【0012】
本明細書では以後、特定の臭素化難燃剤から発生する臭素量は、好都合には、臭素(FR名)として示される。この量は、三酸化アンチモンの所与の濃度において多様な難燃剤の有効性を比較するための尺度として働き、その量によって、前記濃度(この濃度は[Sb]と短縮される。)の三酸化アンチモンの存在下でポリマー組成物がUL 94 V−1またはV−0試験に合格するのを可能にするためにどの位の臭素が必要であるかが示される。1−1.5重量%の濃度範囲の三酸化アンチモンにおいて、スチレン含有ポリマー組成物がUL 94 V−1およびV−0級に合格するのを可能にするために必要とされる臭素(FR−245):[Sb]の比は、対応する比、臭素(FR−1210):[Sb]および臭素(S−8010):[Sb]より小さいことが判明した。例えば、1.0重量%の[Sb]を含むHIPS組成物において、UL 94 V−1級を保証するのに必要な臭素(FR−245)はわずか11重量%であるのに、臭素(FR−1210)または臭素(S−8010)は18重量%超である。
【0013】
デカブロモジフェニルオキシド(FR−1210)およびデカブロモジフェニルエタン(S−8010)に対する上記の結果は、実際、当技術分野における従来の知見に一致しており、その知見によれば、HIPS組成物中の臭素化難燃剤は、2重量%以上の三酸化アンチモンによって支援される必要がある。それより少ない量の三酸化アンチモンが使用される場合、すなわち、三酸化アンチモンの濃度が2重量%未満まで(2重量%→1.5重量%→1.0重量%→0.5重量%)低減する場合、UL 94 V−1またはV−0試験に合格するために難燃剤によってポリマー組成物に供給されなければならない臭素量は、急激に増加すると予想される。以下の表に示されるように、本発明者らは、実際、デカブロモジフェニルオキシドに対しても、デカブロモジフェニルエタンに対しても、HIPS組成物においてそのような急激な増加を観察した。
【0014】
【表1】

【0015】
したがって、デカブロモジフェニルオキシドまたはデカブロモジフェニルエタンいずれかによって難燃化されているHIPS組成物では、三酸化アンチモン含量を1.5から1.0重量%に低減させると、UL 94 V−1またはV−0級を維持するために、難燃剤によって供給される臭素量はかなり増加させることが必要である。
【0016】
FR−245は、0.5−1.5重量%の範囲において三酸化アンチモン濃度に対して種々の依存性を示す。三酸化アンチモンの濃度を減少させると(1.5重量%→1.0重量%→0.5重量%)、当然、HIPS組成物のUL 94格付を保証するためにFR−245によって送達される臭素量を対応して増加させる必要がある。しかし、上述したように他の通常使用される臭素化難燃剤で観察される急激な増加とは逆に、臭素(FR−245)量の増加速度は、かなり穏やかである。以下でより詳細に示されるように、1.0−1.5重量%の間の三酸化アンチモンでは、必要とされる臭素(FR−245)量は、傾きが−4である直線関数に従って調整することができる。この−4という値は、変化割合が好ましいことを示す。
【0017】
一態様によれば、本発明は、前記トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジン(臭素(FR−245)と表される。)によってもたらされる組成物の臭素含量が8−18重量%の範囲であり、スチレン含有ポリマーが高耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)を含む場合、前記臭素(FR−245)は、以下の不等式:
(i)1.0≦[Sb]≦1.7に対して、臭素(FR−245)≧−4×[Sb]+15
(ii)0.5≦[Sb]<1.0に対して、臭素(FR−245)≧−10×[Sb]+21
によって前記三酸化アンチモン([Sb]と表される。)の重量濃度に関連付けられるように、スチレン含有ポリマー、0.5−1.7重量%の三酸化アンチモン、トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンおよびドリップ防止剤を含む、難燃性スチレン含有ポリマー組成物に関する。上記の特徴を有する本発明の好ましい組成物は、少なくともUL 94 V−1級に合格する。0.8−1.5重量%の三酸化アンチモン、より詳細には、1.0−1.5重量%の三酸化アンチモンを含む組成物がより好ましい。
【0018】
本発明に従って難燃化された組成物は、好ましくは、30重量%以上、より好ましくは、40重量%以上、さらにより好ましくは、50重量%超、例えば、50−87重量%の濃度で1つまたは複数のスチレン含有ポリマーを含む。本発明の一部の実施形態によれば、組成物は、70−87重量%のスチレン含有ポリマーを含む。本明細書では後者の用語は、スチレン性(場合によって置換された)構造単位を含むが、1つまたは複数の他の構造単位と組み合わさっている、ポリマー、詳細にはコポリマー(ターポリマーを含めての)を指す。以下のクラスに属するスチレン系コポリマーが好ましい:
1)例えば、重合前にエラストマー(ブタジエン)を(場合によって置換された)スチレン性モノマー(複数可)と混合することによって取得可能なHIPS、すなわち、スチレン性モノマーのゴム修飾コポリマー。HIPSの特徴および組成は、例えば、「Encyclopedia of Polymer Science and Engineering」、16巻、頁88−96(1985)に記載されている。本発明によって提供されるHIPS組成物は、メルトフローインデックス(MFI)が1−50g/10分(ISO1133;200℃/5kg)である40%−85%、より好ましくは、50−85%のHIPS樹脂を含む。
【0019】
2)ABS、この用語は、本発明の文脈では、以下のポリマーの組成および製造法に拘らず、(場合によって置換された)スチレン、アクリロニトリルおよびブタジエンに対応する構造単位を含むコポリマーおよびターポリマーを指す。ABSの特徴および組成は、例えば、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering、16巻、頁72−74(1985)に記載されている。本発明のABS組成物は、40−85重量%、より詳細には、50−83%のABSを含むことができ、MFIが1−50g/l0分(220℃/10kgでISO1133に従って測定して)である。
【0020】
3)SAN、すなわち、アクリロニトリルとスチレンのコポリマー、およびSMA、すなわち、スチレンと無水マレイン酸のコポリマー。SANおよびSMAの特徴は、「Encyclopedia of Polymer Science and Engineering」、16巻、頁72−73(1985)に記載されている。本発明のSAN組成物は、好ましくは、40−85%のSANを含み、本発明のSMA組成物は、好ましくは、40−85%のSMAを含む。
【0021】
本発明の難燃組成物は、スチレン含有ポリマーのアロイ、すなわち、上記のスチレン含有ポリマーと第2のポリマーまたはコポリマーのブレンド(こうしたブレンドは、スチレン含有ポリマーのペレットおよび第2のポリマーのペレットを所望の割合で押し出すことによって得られる。)を含むことができることに留意されたい。好ましい例として、HIPSとポリフェニレンオキシドのブレンドおよびABSとポリカーボネートのブレンドが挙げられる。ABS/ポリカーボネートアロイでは、本発明の組成物は、5−85%の範囲の濃度でスチレン含有ポリマー(ABS)を含むことができる。
【0022】
UL 94 V−1級に合格し、1.0−1.5重量%の範囲内に限定された三酸化アンチモンを含むHIPS組成物が特に重要である。本発明は、組成物の臭素含量が、好ましくは、13重量%未満、より好ましくは、12重量%未満、特に、9−11重量%であるようにトリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンの量が調整され、前記臭素含量が上記の第1の不等式
(i)1.0≦[Sb]≦1.5に対して、臭素(FR−245)≧−4×[Sb]+15
に従うような組成物を提供する。
【0023】
UL 94 V−1級に合格し、1.0−1.5重量%の範囲内に限定された三酸化アンチモンを含むABS組成物が求められる場合、トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンの量は、前記難燃剤によって供給される組成物の臭素含量が、好ましくは、15−9重量%、より好ましくは、14−11重量%、さらにより好ましくは、13−11重量%の範囲であるように調整される。ABS含有アロイ(ABS/ポリカーボネートなどの)の配合物を調製すべき場合、トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンの量は、ABSとポリカーボネートの比を考慮して調整される。
【0024】
本発明はまた、UL 94 V−0試験に合格する組成物を提供する。わずか0.5−1.7重量%の三酸化アンチモンを含むHIPS組成物に対してUL 94 V−0級を保証するのに必要である臭素(FR−245)量は、驚くべきほど少なく、11−17重量%であることが判明した。0.5−1.5重量%の三酸化アンチモンでは、HIPS組成物中の臭素(FR−245)量は、13−17重量%の範囲内である。UL 94級の組成物を得るのに適した臭素(FR−245)量は、以下の不等式:
(iii)0.5≦[Sb]≦1.7に対して、臭素(FR−245)≧−4.5×[Sb]+19.5
に従って、全体のSb濃度にわたりHIPS組成物の三酸化アンチモン含量に良好に合致することができる。
【0025】
UL 94 V−0級に合格するABS組成物が企図されている場合、前記組成物は、18−10重量%、好ましくは、16−11重量%の臭素(FR−245)を供給するために十分な量のトリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンを0.5−1.5重量%の三酸化アンチモンと組み合わせることによって作製することができる。
【0026】
材料が自己消火性のUL 94 V−1およびV−0級を達成するために、その材料は、燃焼時間が短く、燃焼時に引き起こされるドリップのために材料の下方に置かれた木綿に着火しないことが必要である。本発明による組成物はまた、好ましくは、0.025−0.4重量%、より好ましくは、0.025−0.3重量%、さらにより好ましくは、0.05−0.2重量%の量でポリテトラフルオロエチレン(短縮形ではPTFE)などの1つまたは複数のドリップ防止剤を含む。PTFEは、例えば、US6,503,988号に記載されている。
【0027】
スチレン含有コポリマー、トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジン、三酸化アンチモンおよびドリップ防止剤(および場合によって、より詳細に議論された他の臭素化難燃剤も)に加えて、本発明の組成物は、強化剤、顔料、UV安定剤、熱安定剤、フィラー、潤滑剤および酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール型の)など従来の成分をさらに含むことができる。上に列挙した添加剤のそれぞれの濃度は、通常、0.025−15重量%の範囲である。
【0028】
本発明の組成物は、以下のように調製することができる。組成物の多様な成分は、それらのそれぞれの量に応じて一緒にブレンドされる。一般に、成分は、ヘンシェルミキサーなど適切な混合機械を使用して最初に乾燥ブレンドされ、または直接押出成形機に投与することもできる。次いで、粉末混合物は、加工しコンパウンド化することによって、例えば、二軸押出成形機を使用して均一なペレットを形成することができる。得られたペレットは、乾燥され、射出または押出成型など物品成形工程に供給するのに適切である。他のブレンディングおよび成形技法もまた、適用することができる。工程のパラメータは、以下に続く実施例でより詳細に説明される。
【0029】
本発明の別の態様は、マスターバッチ(これは、三酸化アンチモンを場合によって含んでよい。)を介して、難燃性トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンを配合物内に組み込むことに関する。トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンはまた、適切なポリマー担体および比較的大きい割合のトリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンを含む組成物である「マスターバッチ」形態で組み込まれてもよいことが判明した。担体ポリマーは、マスターバッチの混合を促進し、マスターバッチとブレンドポリマー(ブレンドポリマーは、マスターバッチと組み合わされたポリマーであり、この場合、ブレンドポリマーは、HIPSまたはABSなどスチレン含有ポリマーである。)との相容性を改善することが意図されている。適切な担体ポリマーは、ブレンドポリマーと類似または同一である。そうでなければ、ブレンドポリマーと相容性である担体が使用される。
【0030】
したがって、本発明は、トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンおよび場合によって三酸化アンチモンを含むマスターバッチを用意するステップ、ならびに三酸化アンチモンが前記マスターバッチに存在しない場合には、三酸化アンチモンの生成組成物中の濃度が0.5−1.7重量%の範囲になるように、スチレン含有ポリマー、ドリップ防止剤および三酸化アンチモンを含む前記マスターバッチを加工するステップを含む、上記のような組成物を調製するための方法に関する。
【0031】
本発明はまた、トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンおよび三酸化アンチモンが、担体ポリマー内で一緒に合わされ、それらのそれぞれの量は、最終組成物に所望の濃度範囲を提供するように適切な割合になっているマスターバッチ組成物を提供する。より詳細には、マスターバッチは、三酸化アンチモン含量が0.5−1.7重量%の範囲であるスチレン含有ポリマーの配合物を調製するために適切である。したがって、本発明はまた、
(i)場合によって他の難燃剤と一緒に50重量%以上のトリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジン、
(ii)三酸化アンチモンおよび
(iii)ポリマー担体を含み、前記マスターバッチの全臭素含量と三酸化アンチモンの比が5以上、好ましくは、7以上、より詳細には、7−40であることを特徴とする、マスターバッチ組成物に関する。
【0032】
適切なポリマー担体は、スチレン含有またはアクリレート含有ホモポリマーもしくはコポリマー(例えば、ポリスチレン)であってよい。マスターバッチ中の難燃剤の濃度は、50−90重量%であってよく、担体の濃度は、5−42重量%である。マスターバッチ中の三酸化アンチモン濃度は、マスターバッチをプラスチックマトリックスとブレンドすることによって本発明のスチレン含有ポリマー組成物を形成する際に、最終組成物中の三酸化アンチモン濃度が上記の限界内になるように調整されるような濃度である。したがって、本発明のマスターバッチ中の三酸化アンチモン濃度は、好ましくは、1−7重量%、より好ましくは、2−6重量%である。マスターバッチは、約0.2−4%のPTFEを場合によって含むことができる。
【0033】
マスターバッチは、EP527493で記載されたものなど、当技術分野で公知の方法によって調製することができる。担体、トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンおよび三酸化アンチモン(および場合による添加剤)を加工(つまり、押出成形機で)することによって均一なブレンドを形成する。加工温度は、以下の実験の章で詳細に説明されているように、完全に配合された組成物に対して示されたものと類似であってよい。
【0034】
本発明のマスターバッチ組成物は、基本的に均一なペレットの形態で提供することができる。得られたマスターバッチは、適切な量の上で規定されたブレンドポリマー(HIPS、ABS)および残りの化合物と合わせる(マスターバッチは、好ましくは、約10−50重量%の濃度でポリマーブレンドに添加される。)。生成ブレンドを押し出し、ペレット化し、乾燥することによって、本発明の所望のUL 94 V−1またはV−0スチレン含有ポリマー組成物を形成し、該組成物は上記のように成形(例えば、成型)することができる。
【0035】
本発明の別の態様は、燃焼時にスチレン含有ポリマーの配合物のドリップを減少およびさらには完全に防止するための方法に関する。三酸化アンチモンは、その融点が非常に高く、656℃であるので、燃焼時にプラスチック材料のドリップを低減するという好ましい効果を有することが公知である。さらには、やはりすでに上記したように、トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンの融点は、他の有用な臭素化難燃剤(デカブロモジフェニルエタンまたはデカブロモジフェニルオキシド)の融点より有意に低い。こうした背景であるのにも拘らず、2重量%未満、好ましくは、1.7重量%未満(0.5−1.5重量%)の三酸化アンチモンと組み合わせてトリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンを含むスチレン含有ポリマー配合物が、燃焼時に大きくドリップしないことを見出したことは驚くべきことであった。したがって、本発明は、スチレン含有ポリマー配合物が2重量%未満、好ましくは、1.7重量%未満の三酸化アンチモンを含み、難燃有効量のトリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンを少なくとも1つのドリップ防止剤(例えば、PTFE)と一緒に前記配合物中に添加するステップを含む、燃焼時に前記配合物のドリップを減少およびさらには完全に防止するための方法をさらに提供する。
【0036】
本発明によって提供される好ましい組成物は、唯一の臭素化難燃剤としてトリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンを含む。より詳細には、組成物中の三酸化アンチモン濃度が1.0−1.5重量%の範囲である場合、トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンは、UL 94 V−1またはV−0級を達成するために、組成物内の唯一の臭素化難燃剤として組み込むことができ、臭素(FR−245):[Sb]の比は、それぞれ15:1−6:1の範囲内に調整される(比は共力剤の濃度に反比例する。)。上述したように、HIPS組成物の場合、調整は、観察された直線的関数関係に従って実施することができる。
【0037】
しかし、本発明の組成物は、トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンに加えて、臭素化難燃剤を含めての他の難燃剤を含むことができることを理解されたい。実際、三酸化アンチモンと組み合わせて臭素化難燃剤で難燃化されているスチレン含有ポリマーの配合物は、トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンをその配合物内に組み込むことから利益を得ることができる(少なくとも付加的におよび相乗的にも)。というのは、こうした組成物では、三酸化アンチモンの量は、実際的でないとみなされる濃度に調整することができるからである。したがって、本発明は、スチレン含有ポリマー、0.5−1.7重量%の三酸化アンチモン(好ましくは、0.5−1.5%、より好ましくは、1.0−1.5%の三酸化アンチモン)、ドリップ防止剤、トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンおよび少なくとも1つの追加の臭素化難燃剤を含み、組成物の全臭素含量が11−18重量%の範囲であり、前記トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンは、好ましくは、前記の全臭素含量の40−90重量%を提供する、難燃性スチレン含有ポリマー組成物を提供する。
【0038】
より詳細には、トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンは、UL 94 V−1またはV−0級である配合物を形成するために1.5重量%以下の三酸化アンチモンを含むスチレン含有ポリマーにおいて、式II
【0039】
【化2】

[式中、Xは−O−または−CH−CH−である(それぞれ、デカブロモジフェニルオキシドおよびデカブロモジフェニルエタンに対して)。]によって表される臭素化難燃剤と組み合わせることができる。デカブロモジフェニルオキシドまたはデカブロモジフェニルエタンによって難燃化されているHIPS配合物内にFR−245を組み込むことによって、配合物中の全臭素濃度を許容範囲内に維持しつつ、三酸化アンチモン含量を1.5重量%未満に低減することが可能になる。
【0040】
デカブロモジフェニルオキシドおよびデカブロモジフェニルエタン双方が、HIPS配合物で使用するように推奨されている。しかし、HIPS用の難燃剤としてのそれらの活性は、HIPS組成物がUL 94 V−1またはV−0級に合格することが可能であるために2重量%以上の三酸化アンチモンの存在によって支援される必要があることが当技術分野で十分認識されている。以下に続く実施例で例示されているように、組成物(FR−245+FR−1210および/またはFR−245+S−8010)に存在する臭素化難燃剤の組合せによって提供される臭素含量の一部分(例えば、1/3以上)がFR−245に由来するようにFR−245を以下のHIPS組成物中に組み込むことによって、FR−1210またはS−8010またはこれらのブレンドによって難燃化されているHIPS配合物中の三酸化アンチモン量を2.0重量%未満、さらには1.5重量%未満までも(好ましくは、Sb濃度を0.5−1.5重量%の範囲に調整して)低減することが可能である。
【0041】
したがって、本発明は、スチレン含有ポリマー、2重量%未満の三酸化アンチモン(より好ましくは、0.5−1.7重量%のSb、さらにより好ましくは、1.0−1.5重量%のSb)、トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンならびに、デカブロモジフェニルオキシド、デカブロモジフェニルエタンおよびそれらの混合物からなる群から選択される第2の臭素化難燃剤を含み、組成物の全臭素含量が8−18重量%、より好ましくは、11−18重量%、最も好ましくは、13−18重量%の範囲である、難燃性スチレン含有ポリマー組成物を提供する。
【0042】
トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンが、上記のように少なくとも1つの第2の臭素化難燃剤と一緒に本発明の組成物中に含まれている場合、トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンから発生する臭素量が、組成物に存在する難燃剤すべてによって提供される全臭素重量の少なくとも50%、好ましくは、少なくとも70%であるように、トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンを「主」臭素化難燃剤として使用することが一般に好ましい。臭素(FR−245):臭素(FR−1210)または臭素(FR−245):臭素(S−8010)の比が1:1−4:1、好ましくは、1:1−3:1の範囲であるトリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンとデカブロモジフェニルオキシドまたはデカブロモジフェニルエタンのブレンドは、2重量%未満の三酸化アンチモン(例えば、0.5−1.7重量%、好ましくは、0.5−1.5重量%のSb、より好ましくは、1.0−1.5重量%のSb)を含むHIPS組成物を難燃化するのに有用であることが判明した。
【0043】
0.5−1.7重量%の範囲、詳細には、1.0−1.5重量%の範囲の少ないアンチモン含量を有するスチレン含有ポリマーにおいてトリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンと有利に組み合わせることができる別のクラスの難燃剤には、テトラブロモビスフェノールA(化学名4,4’−イソプロピリデン−ビス(2,6−ジブロモフェノール)をエピクロロヒドリン(化学名クロロメチルオキシラン)と反応させることによって取得可能な化合物が含まれる。テトラブロモビスフェノールAとエピクロロヒドリンの反応は、そのままで、またはそのエンドキャップされた誘導体の形態で使用できる臭素が高含有量である多様な反応性エポキシドをもたらすことが公知である。個別の化合物として、前述の臭素化エポキシオリゴマーおよびこれらのトリブロモフェノールエンドキャップされた誘導体は、式(III):
【0044】
【化3】

[式中、重合度であるnは、0−100の範囲、より好ましくは、0−5の範囲の整数であり、RおよびRは、それぞれ独立に、以下の一価の基:
【0045】
【化4】

からなる群から選択される。]によって表すことができる。
【0046】
トリブロモフェノールエンドキャップされた臭素化エポキシ誘導体は、式(IIIa):
【0047】
【化5】

[式中、nは、0、1、2、3および4である。]によって表される個々の誘導体を含む多様な混合物の形態で提供される。
【0048】
式IIIaの前述のトリブロモフェノールエンドキャップされた臭素化エポキシは、以下のように基本的に構成される混合物(混合物の組成は、GPCによって求めることができ、範囲は、混合物の全重量に対する個々の化合物の重量%によって与えられる。)の形態で提供することができる:
モノマー(n=0):55−70%、好ましくは、約65−70%;
ダイマー(n=1):20−35%、好ましくは、約25−30%;
トリマーおよび高次のオリゴマー(n≧2):5−15%、好ましくは、約5−10%。
【0049】
式IIIaの前述のエンドキャップされた誘導体はまた、モノマー(n=0):30−50%、好ましくは、約35−45%;ダイマー(n=1):5−15%、好ましくは、約7−13%;トリマー(n=2):5−20%、好ましくは、約10−15%;高次のオリゴマー(n>2):20−40%、好ましくは、25−35%;および10%未満の末端単位RおよびRが異なる式(III)の化合物を含む混合物の形態で提供することもできる。
【0050】
式IIIaのエンドキャップされた誘導体の混合物は、当技術分野で公知の方法によって調製することができ、また市販もされている(例えば、ICL−IPによって製造されるF−3014およびF−3020であり、これらは、それぞれ、上記で指定された組成物を有する第1および第2の混合物に対応する。)。
【0051】
式IIIの難燃剤の範囲内には、以下の式(IIIb)
【0052】
【化6】

[式中、重量平均重合度であるmは、0−100の範囲である。]によって表されるエポキシ樹脂も含まれる。より詳細には、本発明に従って有用である式(IIIb)によって表されるエポキシ末端化難燃剤は、400−3000g/当量の範囲の平均エポキシ当量重量を有する。エポキシ当量重量(EEW)は、物質の分子量をその中に含まれたエポキシ基の数で除したものとして定義され、当技術分野で公知の方法(例えば、「Encyclopedia of polymer science and engineering」、John Wiley&Sons、6巻(1986))によって測定することができる。ICL−IPからF−2016という名称で市販され、分子量が1600g/モルである臭素化エポキシオリゴマーは、本発明に従って使用できる式IIIbによって表される難燃剤のクラスに属する。
【0053】
本発明者らは、三酸化アンチモン含量が1.0−1.5重量%の範囲である(および約0.025−0.2重量%のPTFE)スチレン含有ポリマーでは、トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンと式IIIの難燃剤(これは、F−3014など式IIIaのエンドキャップされた誘導体の混合物であっても、F−2016など式IIIbのテトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル誘導体の混合物であってもよい。)の組合せが、驚くべき強力な難燃特性を示すことを示す実験データを得た。トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンと式IIIの難燃剤の組合せは、それぞれ個々の成分単独よりもはるかに良好な性能を示す場合があるように思われ、そのために三酸化アンチモン含量1重量%に対して組成物の全臭素含量が13重量%である場合、HIPS組成物はUL 94 V−0級を達成することが可能である。比較のために、FR−245またはF−3014のいずれかが、1重量%の三酸化アンチモンを含むHIPS組成物で単独に使用される場合、UL 94 V−0級を保証するために供給すべき臭素含量は少なくとも15重量%であることに留意されたい。
【0054】
0.5−1.7重量%(好ましくは、1−1.5%)の範囲の三酸化アンチモン含量を有する本発明の組成物に対して以下の実施例で例示された結果により、トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンと式IIIの難燃剤、詳細には、式IIIa(F−3014など)または式IIIb(F−2016など)の組合せの効果は、2つの成分の比が、組成物内のそれぞれ個別の難燃剤によって送達される臭素量に対して計算したとき、1:1−4:1、好ましくは、1:1−3:1の範囲である場合に、和を超えることが示される。したがって、FR−245と式IIIaの難燃剤の組合せでは、臭素(FR−245):臭素(式IIIa)の比は1:1−4:1、好ましくは、1:1−3:1の範囲である。同様に、FR−245と式IIIbの難燃剤の組合せでは、臭素(FR−245):臭素(式IIIb)の比は1:1−4:1、好ましくは、1:1−3:1の範囲である。
【0055】
本発明のスチレン含有ポリマー組成物は、場合によって1つまたは複数の追加の臭素化難燃剤と一緒に、非常に少量の三酸化アンチモン、ドリップ防止剤およびトリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンを含む。好ましくは、組成物は、2つの臭素化難燃剤(すなわち、トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンおよび上記で詳細に指定されたようなものなど第2の臭素化難燃剤)のみを含む。上記の本発明の組成物から形成された熱可塑性物品(例えば、射出成型物品)は、本発明の別の態様を形成する。
【実施例】
【0056】
材料
以下の実施例では、難燃剤は、FRと短縮される場合がある。実施例で例示される組成物を調製するために使用される多様な材料は、表Aに記載される。
【0057】
【表2】

【0058】
三酸化アンチモンを市販マスターバッチの形態で使用したことに留意されたい。実施例では、組成物中の(純)三酸化アンチモン含量は、Sb源として実際に使用される市販マスターバッチの量と平行して示される場合がある。
【0059】
HIPSおよびABS配合物を調製および試験するための手順
成分はすべてザートリウス準分析用天秤で秤量し、続いてプラスチック袋で手で混合した。混合物をK−Tronより販売されたK−SFS24重量式供給システムのポリマー供給機を介して押出成形機の主供給口に供給した。
【0060】
コンパウンド化をBerstorffより販売されたL/D=32である二軸共回転式押出成形機で実施した。コンパウンド化条件:
温度プロフィール(℃):
130−160−200−210−210−210−220−220−220、
軸速度300rpm、
供給速度14kg/時。
【0061】
Accrapak systems limitedより販売されたペレタイザー750/3で押し出しストランドをペレット化した。
【0062】
得られたペレットを、Heraeus instrumentsより販売された空気循環式オーブンで75℃で4時間乾燥した。
【0063】
乾燥後、得られたペレットを射出成形することによって供試体を形成した。供試体をArburgより販売されたAllrounder500−150で射出成形することによって調製した。射出成形条件:
HIPS配合物
温度プロフィール、℃:180−230−230−230−230
成形温度、℃: 40
圧力、バール:
射出 1300
保持 750
背圧 20
サイクル時間、秒 15
【0064】
ABS配合物
温度プロフィール、℃:180−200−230−230−230
成形温度、℃: 40
圧力、バール:
射出 500
保持 250
背圧 20
サイクル時間、秒 15
【0065】
試料の以下の特性を測定した:
成形試料の難燃特性を厚さ1.6mm試料についてUnderwriters−Laboratories標準UL 94を使用して測定した。UL 94試験では、供試体を10秒間火炎に垂直にさらした。供試体を底部で着火し燃え尽きさせる。供試体が30秒以内に自己消火する場合、さらに10秒間火炎に垂直にさらした。試料の下部に置いた木綿上に燃焼滴を落下させた。平均燃焼時間が5秒未満(火炎暴露毎に)であり、燃焼滴が木綿を着火しない場合、その材料をUL 94 V−0として分類する。平均燃焼時間が25秒未満であり、燃焼滴が木綿を着火しない場合、その材料をUL 94 V−1として分類する。平均燃焼時間が25秒未満であるが、燃焼滴が木綿を着火する場合、その材料をUL 94 V−2として分類する。
【0066】
実施例1(本発明の)および2−3(比較)
少量(1.0重量%)の三酸化アンチモンの存在下でFR−245で難燃化されたHIPS組成物
三酸化アンチモンが1.0%の重量濃度で存在する場合に、三酸化アンチモンとの協働効果を評価するために、上記の一般的な手順に従ってHIPS組成物内に3つの難燃剤:トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジン、デカブロモジフェニルオキシドおよびデカブロモジフェニルエタンを組み込んだ。調製された組成物および測定された特性を以下の表1に要約する。
【0067】
【表3】

【0068】
表1に報告された結果から、三酸化アンチモン共力剤が、1.0重量%という少量でHIPS組成物中に含まれる場合、依然として三酸化アンチモンはFR−245と有効に協働することを知ることができる。組成物がUL 94 V−1およびV−0級に到達するために、FR−245由来の比較的低濃度の臭素を必要とするのみである。詳細には、FR−245を1%の三酸化アンチモンと組み合わせて使用する場合、HIPS組成物中の11重量%の量の臭素があれば、UL 94 V−1試験に合格するために十分である。ところが、通常強力な難燃剤であるFR−1210およびデカブロモジフェニルエタンが、臭素源として働く場合、HIPS組成物で前記材料によって供給される18重量%の臭素量でも、UL 94 V−1級に到達するのに不十分である。UL 94 V−0級を目標にする場合も、類似の状況が観察される。
【0069】
他の2つの難燃剤に比較して、相対的に低融点にも拘らず、FR−245は着火ドリップを引き起こさないが、高融点材料であるデカブロモジフェニルオキシドまたはデカブロモジフェニルエタンによって難燃化されている組成物は、燃焼中にドリップすることも留意されたい。
【0070】
実施例4(本発明の)および5−6(比較の)
少量(1.5重量%)の三酸化アンチモンの存在下でFR−245で難燃化されたHIPS組成物
1.5重量%の三酸化アンチモン共力剤の存在下で、上記3つの有効性を評価するために、上記の一般手順に従って、前記実施例での3つの難燃剤をHIPS組成物内に組み込んだ。調製された組成物および測定された特性を以下の表2に要約する。
【0071】
【表4】

【0072】
表2に示された結果は、実施例の前記の組で報告されたものと基本的に一致しており、三酸化アンチモンが、HIPS組成物中で少量(1.5重量%)で使用された場合、三酸化アンチモンは、FR−1210およびデカブロモジフェニルエタンに比較して、最も良好にFR−245と協働することをやはり実際に示している。詳細には、FR−245/三酸化アンチモンの組は、臭素含量を特に低く(それぞれ、9重量%および13重量%)保持しつつ、組成物をUL 94 V−1およびV−0級にする。FR−1210およびデカブロモジフェニルエタンの場合、UL 94 V−1級に合格するために、14重量%超の臭素濃度が必要である。
【0073】
比較的低融点のFR−245がどんなドリップも引き起こさないのに、より高い融点の難燃剤を含むHIPS配合物はドリップし、木綿を着火させる、すなわち、難燃化効率がより小さい証拠であることにもやはり留意されたい。
【0074】
実施例7(本発明の)および8−9(比較の)
少量(0.5重量%)の三酸化アンチモンの存在下でFR−245で難燃化されたHIPS組成物
0.5重量%の三酸化アンチモン共力剤の存在下で、有効性を評価するために、上記の一般的な手順に従ってHIPS組成物内に前記実施例での3つの難燃剤を組み込んだ。調製された組成物および測定された特性を以下の表3に要約する。
【0075】
【表5】

【0076】
やはり、この結果も、三酸化アンチモンがHIPS組成物中に0.5重量%の濃度で存在する場合、FR−245は、デカブロモジフェニルオキシドおよびデカブロモジフェニルエタンよりも良好に性能を発揮することを確認するものである。
【0077】
実施例10−11
少量(0.75または1.25重量%)の三酸化アンチモンの存在下でFR−245で難燃化されたHIPS組成物
三酸化アンチモンが0.5−1.5重量%の濃度でHIPS組成物中に存在する場合に、FR−245と三酸化アンチモンの組合せの有効性を前記の範囲内のさらなる2つの濃度点:0.75重量%および1.25重量%に関してさらに試験した。結果を表4に報告する。
【0078】
【表6】

【0079】
前記FR−245が少量の三酸化アンチモン(0.5−1.5重量%の濃度範囲)のみで支援される場合、HIPS組成物がUL 94 V−1またはV−0試験いずれかに合格できるためにFR−245によって供給する必要がある臭素量を図1のグラフで示す。グラフで示される点の組を実施例1、4、7、10および11からとった。
【0080】
図1では、横軸がHIPS組成物中の三酸化アンチモン濃度であり、縦軸がFR−245{臭素(FR−245)}によって供給される組成物の臭素含量である。中実菱形で示される点の組はUL 94 V−1級に合格する組成物に相当する。中実正方形で示される点の組はUL 94 V−0級に合格する組成物に相当する。
【0081】
グラフに示されるように、UL 94 V−0の点の組は、直線によく乗っており、したがって、以下の不等式:
0.5≦[Sb]≦1.5に対して、臭素(FR−245)≧−4.5×[Sb]+19.5
によって表される直線より上の領域は、0.5−1.5重量%の範囲の濃度の三酸化アンチモンおよび、厳格なUL 94 V−0試験を満足するのに十分なFR−245によって供給される適切な臭素量を含むHIPS組成物に対応する。注目すべきことに、0.5−1.0重量%のサブ範囲では、必要な臭素量(FR−245)は、15重量%未満であってよい。
【0082】
UL 94 V−1として認定される組成物では、0.5−1.5重量%の間隔は、好都合には、2つのサブ間隔:0.5−1.0重量%および1.0−1.5重量%に分割することができる。こうしたサブ範囲のそれぞれにおいて、UL 94 V−1級を取得するために必要である臭素(FR−245)量は、以下のように記載することができる:
−4×[Sb]+15≦臭素(FR−245)≦13{1.0≦[Sb]≦1.5}
−10×[Sb]+21≦臭素(FR−245)≦16{0.5≦[Sb]<1.0}
【0083】
間隔1.0≦[Sb]≦1.5が特に有用である。というのは、この間隔では、UL 94 V−1に到達するのに必要とされる臭素(FR−245)量は、驚くべきほど少なく、13重量%以下、好ましくは、12重量%以下、さらにより好ましくは、11重量%以下であるからである。
【0084】
実施例12−13
マスターバッチを使用してのHIPS組成物中へのFR−245の組込み
90重量%の濃度を有する(担体はポリスチレンであった。)マスターバッチの形態で、FR−245を使用した。成分を押出成形することによって、マスターバッチを調製した。
【0085】
HIPS組成物を以下のように調製した。成分をすべてザートリウス準分析用天秤で秤量し、続いてプラスチック袋で手で混合した。混合物をK−Tronより販売されたK−SFS 24重量式供給システムのポリマー供給機を介して押出成形機の主供給口に供給した。
【0086】
コンパウンド化を、Berstorffより販売されたL/D=32である二軸共回転式押出成形機で実施した。コンパウンド化条件を表Bに示す。
【0087】
【表7】

【0088】
次いで、Accrapak systems limitedより販売されたペレタイザー750/3で押し出しストランドをペレット化した。得られたペレットを、空気循環式オーブンで75℃で4時間乾燥した。
【0089】
供試体を表Cに示す条件に従ってArburgより販売されたAllrounder500−150で射出成形することによって調製した。
【0090】
【表8】

【0091】
次いで、供試体を試験前に23℃で168時間養生した。
【0092】
調製された組成物およびその可燃性を表5に記載する。
【0093】
【表9】

【0094】
実施例12および13は、本発明の組成物が、好都合には、マスターバッチ形態のFR−245を使用して調製され得ることを実際に示す。
【0095】
実施例14−15
多様なグレードのHIPSにおけるFR−245と三酸化アンチモンの組合せの有効性の試験
以下の実施例は、FR−245と三酸化アンチモンの組合せが、多様なグレードのHIPSに対して有効に施用できることを例示する。実施例14−15で試験されたHIPS(Styron 485;MFI=12)は、これまでの実施例で試験されたHIPS(Styron 1200;MFI=5)に比較して粘度が高く、衝撃強度が小さい。
【0096】
【表10】

【0097】
結果は、難燃剤によって供給されることが必要である臭素量はかなり小さいので、0.5−1.5の三酸化アンチモン濃度範囲は、MFIが12g/10分であるHIPSグレードでも実際に適用可能であることを示す。
【0098】
実施例16(比較)および17−18(本発明の)
FR−245と少量の三酸化アンチモンの組合せによって難燃化されているHIPS組成物のアフターグロー時間の試験
実施例のこの組は、少量(特に1−1.5重量%)の三酸化アンチモンと組み合わせたFR−245がHIPS組成物の全アフターグロー時間に及ぼす有利な効果を実際に示す。試験された組成物を表7に示す。
【0099】
【表11】

【0100】
上に報告された結果は、本発明に従って調製された組成物が、UL 94標準に従って測定された場合、全アフターグロー時間を短縮およびさらには完全に排除するという利点を提供することを示す。全アフターグロー時間を短縮するために、高充填量の三酸化アンチモンを使用することまたはホウ酸亜鉛など組成物のコストを大幅に増加させる他の添加剤を使用することが必要である場合が多い。
【0101】
実施例19−22(本発明の)
少量の三酸化アンチモンの存在下でFR−245と組み合わせたFR−1210またはS−8010いずれかで難燃化されているHIPS組成物
以下の組の実施例では、デカブロモジフェニルオキシド(FR−1210)およびデカブロモジフェニルエタン(S−8010)からなる群から選択された臭素化難燃剤と組み合わせてFR−245を使用して難燃化されているHIPS組成物を作製した。
【0102】
実施例19および20では、FR−245とFR−1210のブレンドをHIPSへの用途のためのFR系として使用した。最終組成物の全臭素の50%が、FR−245によって供給され、他の50%がFR−1210によって供給されるようにこのブレンドを調製した。調製されたHIPS樹脂の組成および特性を表8に示す。比較を容易にするために、実施例2および5に従ってFR−1210で難燃化されているHIPS組成物も表の中に含まれている。
【0103】
【表12】

【0104】
比較例2および5は、FR−1210が、HIPS組成物中で使用された唯一の臭素化難燃剤である場合、UL 94 V−0クラスに到達するために、それぞれ1重量%および1.5重量%の三酸化アンチモンの存在下で19重量%および15重量%の臭素含量が必要であることを示す。実施例21および22は、臭素含量の少なくとも1部分がFR−245(FR−1210の代わりとして)によって提供される場合、全臭素含量が16重量%および13重量%であり、三酸化アンチモンがそれぞれ、1重量%および1.5重量%であっても、HIPS組成物はUL 94 V−0級を達成できることを例示する。
【0105】
実施例21および22では、FR−245とS−8010のブレンドをHIPS組成物用のFR系として使用した。実施例21では、ブレンド中のFR−245とS−8010の重量比を、臭素の全量が2つの成分に等しく分割されるように(50:50)調整されたが、実施例22では、ブレンド中のFR−245とS−8010の重量比を、組成物で供給される臭素の全量が、75:25(FR−245を多くして)の割合になるように調整された。調製されたHIPS樹脂の組成および特性を表9に示す。比較を容易にするために、比較例3に従ってS−8010単独で難燃化されているHIPS組成物も表の中に含まれている。
【0106】
【表13】

【0107】
比較例3は、S−8010がHIPS組成物で使用される唯一の臭素化難燃剤である場合、UL 94試験に合格するために1重量%のみの三酸化アンチモンの存在下では18重量%の臭素含量は十分でないことを示す。実施例21および22は、全臭素含量が18重量%以下であり、三酸化アンチモンが1重量%という低い濃度で存在するという事実にも拘らず、UL 94 V−0として認証される組成物を例示する。実施例21および22の組成物は、組成物の臭素含量の少なくとも1部分がFR−245から供給されるので、UL 94 V−0試験に合格する。したがって、S−8010含有HIPS組成物は、S−8010と連携してFR−245を含むことから利益を得ることができ、そのために、三酸化アンチモンの濃度を低減することができる。
【0108】
実施例23、24、26−29(本発明の)および25(比較)
少量の三酸化アンチモンの存在下でFR−245と組み合わせたF−3014またはF2016で難燃化されているHIPS組成物
以下の組の実施例では、HIPS組成物は、式(III)によって表される群から選択された臭素化難燃剤と組み合わせてFR−245を使用して難燃化されている。
【0109】
実施例23および24では、UL 94 V−0組成物は下記の条件で達成可能か否かを決定するために、FR−245とF−3014の組合せの活性を1重量%のみの三酸化アンチモンおよび0.1重量%のPTFEの存在下でHIPS組成物で試験した。2つの臭素化難燃剤間の重量比を、全臭素含量が等しく割り当てられる(実施例23)、またはFR−245が多くなるように75:25の比になる(実施例24)ように適切に調整した。結果を表10に示す。
【0110】
【表14】

【0111】
結果は、FR−245とF−3014の組合せは、少量の(2.0重量%未満、例えば、0.5−1.5重量%)三酸化アンチモンを含むHIPS系配合物において相乗効果を示すことを示す。
【0112】
実施例26および27では、今度は、UL 94 V−1級に合格する組成物を提供するために、FR−245とF−3014の組合せの活性を、1重量%のみの三酸化アンチモンおよび0.1重量%のPTFEの存在下でHIPS組成物において試験した。実施例26では、ブレンド中のFR−245とF−3014の重量比は、臭素の全量が2つの成分に等しく分割されるように(50:50)調整されたが、実施例27では、ブレンド中のFR−245とS−3014の重量比は、組成物で供給される臭素の全量が、75:25(FR−245を多くして)の比になるように調整された。F−3014が単独で使用される実施例25は、やはり比較のために含まれた。調製されたHIPS樹脂の組成および特性を表11に示す。
【0113】
【表15】

【0114】
比較例25は、F−3014が組成物中に存在する唯一の難燃剤である場合、濃度1.0重量%の三酸化アンチモンは有効にF−3014の作用を支援することができないことを実際に示す。反対に、実施例26および27は、FR−245とF−3014の組合せが1.0重量%のみの三酸化アンチモンの存在下で非常に有効であり、生成組成物はUL 94 V−1試験に合格することを例示する。HIPS組成物の三酸化アンチモン濃度が1.5重量%であった場合も類似の結果が得られた。
【0115】
実施例28および29は、1重量%のみの三酸化アンチモン(および0.1重量%のPTFE)の存在下でHIPS組成物におけるFR−245とF−2016の組合せの活性を例示する。双方の実施例では、2つの臭素化難燃剤の重量比は、全臭素含量が、FR−245とF−2016の間で等しく分割されるように適切に調整された。組成物および可燃性試験の結果を表12に記載する。
【0116】
【表16】

【0117】
表12に報告された結果は、FR−245とF−2016の組合せが、少量の三酸化アンチモンのみを含むHIPS組成物を難燃化する際に驚くべきほど良好に性能を発揮し、そのために、それぞれ11重量%および12重量%の中間的な臭素濃度を用いて組成物がUL 94 V−1またはV−0の格付を満足できることを示す。注目すべきことに、FR−245とF−2016の混合物は、FR−245またはF−2016いずれか単独に比較して、難燃性がより良好であるように思われる。
【0118】
実施例30(比較)、実施例31−32(本発明の)および33(比較)
1.5重量%の三酸化アンチモンの存在下でのFR−245およびFR−1210の活性を評価するために、上記の一般的な手順に従って、FR−245およびFR−1210をABS配合物中に組み込んだ。調製された組成物および測定された特性を以下の表13に要約する。
【0119】
【表17】

【0120】
通常、厚さが1.6mmである、UL 94によるクラスV−1およびV−0のための難燃ABS組成物は、4−6%の三酸化アンチモンおよび臭素化難燃剤によって供給される10−12%の臭素を含む。やはりかかる難燃用途で推奨されているデカブロモジフェニルオキシドなど他のFRの場合には有意により多量の臭素が必要であるにも拘らず、非常に類似した添加量のFR−245を使用した場合には半分未満の三酸化アンチモン量の使用で、同じ難燃水準が得られるのは驚くべきことである。
【0121】
実施例34(本発明の)および35(比較)
少量の三酸化アンチモン(1.0重量%)の存在下でFR−245によって難燃化されているPC/ABS組成物
PC/ABS組成物(重量比1:1のPC Makrolon1143およびABS Magnum3404)でもFR−245およびS−8010の活性を試験した。
【0122】
調製手順は以下の通りであった。コンパウンド化する前にポリマーを乾燥した(PCは120℃で、ABSは75℃で、双方4時間)。多様な成分を秤量し、プラスチック袋で混合した。混合物を正確な供給機を介して押出成型機の主供給口に供給した。以下の条件に従って、L/D=32である共回転2軸押出成型機(Berstoff)で実施した。
【0123】
【表18】

【0124】
得られたストランドをペレット化し、そのペレットを空気循環式オーブンで110℃で4時間乾燥した。
【0125】
次いで、以下の条件下で、供試体をAllrounder500−150(Arburg)で射出成形することによって調製した。
【0126】
【表19】

【0127】
供試体を23℃で168時間養生し、次いで、UL 94標準に従って試験した。
【0128】
作製した組成物および得られた結果を以下の表に記載する。
【0129】
【表20】

【0130】
結果は、少量の(1重量%)三酸化アンチモンを含むPC/ABS組成物の場合もやはりS−8010に対するFR−245の優秀性を例示するものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン含有ポリマー、0.5−1.7重量%の三酸化アンチモン、トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンおよびドリップ防止剤を含み、前記トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジン、{臭素(FR−245)}によってもたらされる組成物の臭素含量は8−18重量%の範囲であり、スチレン含有ポリマーが高耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)を含む場合、前記臭素(FR−245)は、以下の不等式:
(i)1.0≦[Sb]≦1.7に対して、臭素(FR−245)≧−4×[Sb]+15
(ii)0.5≦[Sb]<1.0に対して、臭素(FR−245)≧−10×[Sb]+21
によって前記三酸化アンチモン{[Sb]}の重量濃度に関連付けられる、難燃性スチレン含有ポリマー組成物。
【請求項2】
ドリップ防止剤がポリテトラフルオロエチレンであり、ポリテトラフルオロエチレンは0.025−0.4重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
三酸化アンチモンの濃度が、0.8−1.5重量%の範囲である、請求項1または2に記載の難燃性スチレン含有ポリマー組成物。
【請求項4】
三酸化アンチモンの濃度が、1.0−1.5重量%の範囲である、請求項3に記載の難燃性スチレン含有ポリマー組成物。
【請求項5】
高耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)を含み、組成物の臭素含量{臭素(FR−245)}が13重量%以下であり、前記臭素含量が三酸化アンチモン濃度と以下:
(i)1.0≦[Sb]≦1.5に対して、臭素(FR−245)≧−4×[Sb]+15
のように関係付けられている、請求項4に記載の難燃性スチレン含有ポリマー組成物。
【請求項6】
組成物の臭素含量{臭素(FR−245)}が12重量%以下である、請求項5に記載の難燃性スチレン含有ポリマー組成物。
【請求項7】
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS)を含み、トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンによってもたらされる組成物の臭素含量が、9−15重量%の範囲である、請求項1または4に記載の難燃性スチレン含有ポリマー組成物。
【請求項8】
トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンおよび場合によって三酸化アンチモンを含むマスターバッチを用意するステップ、ならびに三酸化アンチモンが前記マスターバッチに存在しない場合には、生成組成物中の三酸化アンチモン濃度が0.5−1.7重量%の範囲になるように、スチレン含有ポリマー、ドリップ防止剤およびまた三酸化アンチモンを含む前記マスターバッチを加工するステップを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物を調製するための方法。
【請求項9】
三酸化アンチモンが、マスターバッチ中に少なくとも一部分は含まれている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記マスターバッチが、
(i)50重量%以上のトリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジン、
(ii)三酸化アンチモンおよび
(iii)ポリマー担体
を含み、前記マスターバッチの全臭素含量と三酸化アンチモンの比が6以上であることを特徴とする、スチレン含有ポリマー組成物を調製するのに適したマスターバッチ組成物。
【請求項11】
三酸化アンチモンの濃度が、マスターバッチの全重量に対して1−7重量%である、請求項10に記載のマスターバッチ組成物。
【請求項12】
スチレン含有ポリマー、0.5−1.7重量%の三酸化アンチモン、ドリップ防止剤、トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンおよび少なくとも1つの追加の臭素化難燃剤を含み、組成物の全臭素含量が11−18重量%の範囲である、難燃性スチレン含有ポリマー組成物。
【請求項13】
ドリップ防止剤がポリテトラフルオロエチレンであり、ポリテトラフルオロエチレンは0.025−0.4重量%の量で存在する、請求項12に記載の難燃剤。
【請求項14】
三酸化アンチモンの濃度が、1.0−1.5重量%の範囲である、請求項12または13に記載の難燃組成物。
【請求項15】
トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンが、組成物の全臭素含量の40−90重量%を供給する、請求項12から14のいずれか一項に記載の難燃性スチレン含有ポリマー組成物。
【請求項16】
追加の臭素化難燃剤が、式II:
【化1】

[式中、Xは−O−または−CH−CH−である(それぞれ、デカブロモジフェニルオキシドおよびデカブロモジフェニルエタンに対して)。]によって表され、組成物の全臭素含量は13−18重量%の範囲であり、トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンによって提供される臭素量と式IIの難燃剤によって提供される臭素量の比が1:1−4:1の範囲である、請求項12に記載の難燃組成物。
【請求項17】
追加の臭素化難燃剤が、臭素化エポキシオリゴマーおよび式(III):
【化2】

[式中、重合度であるnは、0−100の範囲の整数であり、RおよびRは、それぞれ独立に、以下の一価の基:
【化3】

からなる群から選択される。]のこれらのエンドキャップされた誘導体からなる群から選択される、請求項12に記載の難燃組成物。
【請求項18】
式IIIの難燃剤が、式(IIIa):
【化4】

[式中、nは、0、1、2、3または4である。]によって表される個々のエンドキャップされた誘導体を含む混合物の形態で提供され、組成物の全臭素含量は11−13重量%の範囲であり、トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンによって提供される臭素量と式IIIaの難燃剤によって提供される臭素量の比が1:1−4:1の範囲である、請求項17に記載の難燃組成物。
【請求項19】
式IIIの難燃剤が、式(IIIb):
【化5】

[式中、重量平均重合度であるmは、0−100の範囲である。]によって表されるエポキシ樹脂の混合物の形態で提供され、前記難燃剤は、400−3000g/当量の範囲の平均エポキシ当量重量を有する、請求項17に記載の難燃組成物。
【請求項20】
組成物の全臭素含量が、11−13重量%の範囲であり、トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンによって提供される臭素量と式IIIbの難燃剤によって提供される臭素量の比が1:1−4:1の範囲である、請求項19に記載の難燃組成物。
【請求項21】
UL 94格付のV−1またはV−0に合格する、請求項1から8および12から20のいずれか一項に記載の難燃組成物。
【請求項22】
請求項1から21に記載の組成物から形成される熱可塑性物品。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2011−529112(P2011−529112A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−519282(P2011−519282)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【国際出願番号】PCT/IL2009/000720
【国際公開番号】WO2010/010561
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(510232371)ブロミン・コンパウンズ・リミテツド (3)
【Fターム(参考)】