説明

スチレン官能基を含むオキセタン化合物

本化合物はオキセタン官能基及びスチレン官能基を含む。オキセタン官能基はカチオン又はアニオン開環を起こす反応において単独重合でき、スチレン官能基は電子受容体化合物などの化合物で重合できる。二種の官能基を有することにより二種の硬化方法が可能である。この化合物は、下記式の構造を有する(ここで、R1はメチル基又はエチル基であり;R2及びR3はH又はメチル基若しくはエチル基であり;R4は直接結合又は二価の炭化水素基であり;X及びYは独立して直接結合又はエーテル、エステル、アミド若しくはカルバメート基であり、ただしX及びYは共に直接結合とならないことを条件とし;Qは、N、O又はSのヘテロ原子を含んでもよい二価の炭化水素基であり;Gは、−OR1、−SR1、又は−N(R2)(R3)であり、ここで、R1、R2及びR3は上記のとおりである)。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明はスチレン官能基を含むオキセタン化合物に関する。
発明の背景
オキセタンは高反応性の環状エーテルであり、カチオン性及びアニオン性のいずれの開環単独重合も行うことができる。スチレン化合物はフリーラジカル重合を行うことができる。
【0002】
発明の概要
本発明はスチレン官能基及びオキセタン官能基を含む化合物に関する。これら化合物は、オキセタンがカチオン性及びアニオン性のいずれの開環単独重合も行うことができる反応において単独重合することができ、又は、電子受容体化合物などの化合物と共に重合することができる。二種の官能基を有することにより二種類の硬化方法、即ち、熱的硬化又は放射線硬化のいずれも行うことができる。この能力によって、これら化合物は多くの用途、例えば、接着剤、コーティング、カプセル化剤、複合材料などにおいて有用なものとなる。
【0003】
発明の詳細な記述
一つの態様において本発明の化合物は下記式:
【0004】
【化1】

【0005】
(式中、R1はメチル基又はエチル基であり;R2及びR3はH又はメチル基若しくはエチル基であり;R4は直接結合又は二価の炭化水素基であり;X及びYは独立して直接結合又はエーテル、エステル、アミド若しくはカルバメート基であり、ただしX及びYは共に直接結合とならないことを条件とし;Qは、N、O又はSのヘテロ原子を含んでもよい二価の炭化水素基であり;Gは、−OR1、−SR1、又は−N(R2)(R3)であり、ここで、R1、R2及びR3は上記のとおりであり;R4、Q及びYが存在せず、R2及びR3がHである場合、Xは、
【0006】
【化2】

【0007】
ではなく;R4
【0008】
【化3】

【0009】
で、Q及びYが存在せず、R2及びR3がHである場合、Xは、
【0010】
【化4】

【0011】
ではない。)で表されることができる。上記Q部分の立体配置は出発スチレン化合物の立体配置に依存する。
出発スチレン化合物は、低分子でもよく、例えば、3−イソプロペニル−α,α−ジメチル−ベンジルイソシアネート(m−TMI)、4−ビニル−ベンジルクロライド、m−TMIとジオールとの反応生成物、m−TMIとヒドロキシル基を含むカルボン酸上のヒドロキシル官能基との反応生成物、イソオイゲノールなどが挙げられる。出発スチレン化合物はまた、例えば、m−TMI又は4−ビニルベンジルクロライドと二官能性オリゴマー又はポリマー上の1つの官能基との反応によって調製されるオリゴマー化合物又はポリマー化合物でもよい。
【0012】
出発スチレン化合物が低分子であろうとオリゴマー又はポリマー材料であろうと、それは下記構造式:
【0013】
【化5】

【0014】
(式中、R2及びR3はH又はメチル基若しくはエチル基であり;Gは、−OR1、−SR1、又は−N(R2)(R3)であり、R1はメチル基又はエチル基であり;R2及びR3はH又はメチル基若しくはエチル基である。)で表されるスチレン官能基を含む。出発スチレン化合物はまた、出発オキセタン化合物と反応する第二の官能基を含む。例えば、上記スチレン出発材料は、スチレン官能基の他に、ハロゲン、ヒドロキシル又はイソシアナト官能基を含む。
【0015】
出発オキセタン化合物は、低分子でもよく、また、例えば、以下に開示するような低分子の出発オキセタン化合物の1つと二官能性オリゴマー又はポリマー上の1つの官能基との反応によって調製されるオリゴマー分子又はポリマー分子でもよい。いずれの場合にも、それは、下記構造:
【0016】
【化6】

【0017】
で表されるオキセタン官能基及び出発スチレン化合物上の第二の官能基と反応する第二の官能基を含む。
低分子の好適な出発オキセタン化合物としては、例えば:
(a)3−メチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンなどのアルコール;
【0018】
【化7】

【0019】
(b)3−メチル−3−ブロモメチルオキセタン、3−エチル−3−ブロモメチルオキセタンなどの、当業界で公知の、アルコール(a)とCBr4との反応によって調製できる、ハライド;
【0020】
【化8】

【0021】
(c)3−メチル−3−アルキルブロモメチルオキセタン、3−エチル−3−アルキルブロモメチルオキセタンなどの、当業界で公知の、オキセタンアルコール(a)とアルキルジブロミド化合物との反応によって調製できる、アルキルハライド;
【0022】
【化9】

【0023】
(d)3−メチル−3−トシルメチルオキセタン、3−エチル−3−トシルメチルオキセタンなどの、p−トルエンスルホニルクロライドから調製できる、トシレート;
【0024】
【化10】

【0025】
などが挙げられる。
スチレン及びオキセタンを含む長鎖及び高分子量化合物が望ましい場合、出発スチレン化合物若しくは出発オキセタン化合物又は両者のいずれの場合にも、二官能性オリゴマー又はポリマー材料との反応によって鎖延長されてもよい。最初の反応がスチレン出発化合物と二官能性のオリゴマー又はポリマー材料との間で起こる場合、二官能性オリゴマー又はポリマー材料上の第二の官能基は、オキセタン出発化合物と反応性であることが必要であり、最初の反応がオキセタン出発化合物と二官能性のオリゴマー又はポリマー材料との間で起こる場合、二官能性オリゴマー又はポリマー材料上の第二の官能基は、スチレン出発化合物と反応性であることが必要である。好適な、商業的に入手可能なオリゴマー及びポリマーの例としては、末端ヒドロキシル官能基を有する、ダイマージオール及びポリ(ブタジエン)が挙げられる。
【0026】
この場合、オキセタン化合物及びスチレン化合物の何れも二官能性オリゴマー又はポリマーとの反応によって鎖延長される。Qはまた、例えば、エーテル、エステル、カルバメート、尿素などの官能基を含んでもよく、これら官能基は二つのオリゴマー又はポリマー出発材料の反応によってもたらされる。
【0027】
一般に、オキセタン及びスチレン官能基を含む本発明の化合物は、オキセタン官能基及び第二の官能基を含む出発化合物と、スチレン官能基及びオキセタン化合物上の第二の官能基と反応性である第二の官能基を含む出発化合物との反応によって調製される。典型的な反応スキームとしては、周知の、付加反応、置換反応及び縮合反応などが挙げられる。
【0028】
更なる態様において、本発明の化合物は、1より多いオキセタン官能基及び1より多いスチレン官能基を含むポリマー化合物を含む。そのような化合物は、出発オキセタン化合物及び出発スチレン化合物と反応性である官能基を有するポリマー出発化合物から調製される。
【0029】
そのポリマー化合物は、下記構造:
【0030】
【化11】

【0031】
(式中、「ポリマー」は、オキセタン及びスチレン官能基を有するポリマー主鎖であり;m及びnは、製造者によって添加されるオキセタン及びスチレン官能基のレベルに応じて変化する整数であり、典型的には2〜500であり;R1はメチル基又はエチル基であり;R2及びR3はH又はメチル基若しくはエチル基であり;R4は直接結合又は二価の炭化水素基であり;W及びZは独立してエーテル、エステル、アミド又はカルバメート基であり(これらはポリマー上の側鎖官能基と出発オキセタン化合物又は出発スチレン化合物上の対応する反応性官能基との反応を通じて形成される);Gは、−OR1、−SR1、又は−N(R2)(R3)であり、ここで、R1、R2及びR3は上記のとおりである。)を有する。
【0032】
ポリマー上の側鎖官能基は、それ自体がポリマー主鎖から延びている炭化水素、例えば、1〜20の炭素を有する炭化水素によってポリマー主鎖に接続されていてもよい。本明細書の目的のために、これら側鎖部分は、ポリマー主鎖の一部であるとみなされる。
【0033】
商業的に入手できる好適なポリマー主鎖の例としては、側鎖にヒドロキシル基を有するポリ(ブタジエン)が挙げられる。この側鎖ヒドロキシル基は、トシル脱離基を含むオキセタン出発化合物と、及びm−TMIと、反応させることができる。この場合、連結基Wはエーテル官能基であり、Zはカルバメート官能基を含む。
【0034】
更なる例として、側鎖カルボン酸官能基を有するポリ(ブタジエン)は、ヒドロキシルオキセタン出発材料のいずれかの上のヒドロキシル官能基と、及びm−TMIの上のイソシアネート官能基と、反応させることができる。この場合、W基はエステル官能基であり、Zはカルバメート官能基を含む。
【0035】
ポリマー出発材料は商業的に購入することができ、例えば、Zeon Chemicalsからのアクリロニトリル−ブタジエンゴム、Johnson Polymer からのスチレン−アクリルコポリマーなどが挙げられる。これらポリマーからの側鎖官能基は、ヒドロキシル又はカルボン酸官能基である。
【0036】
他の出発ポリマー材料は、当業者に知られている標準的な重合技術を使用してアクリル及び/又はビニルモノマーから合成することができる。好適なアクリルモノマーとしては、3〜5の炭素原子を有するα,β−不飽和モノ及びジカルボン酸、アクリル酸エステルモノマー(1〜14の炭素原子を含むアルキル基を有する、アクリル酸及びメタクリル酸のアルキルエステル)などが挙げられる。例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルメタクリレート、それらの対応する枝分かれ異性体(例えば、2−エチルヘキシルアクリレート)などを挙げることができる。好適なビニルモノマーとしては、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルハライド、ビニリデンハライド、エチレン性不飽和炭化水素のニトリルなどが挙げられる。例えば、ビニルアセテート、アクリルアミド、1−オクチルアクリルアミド、アクリル酸、ビニルエチルエーテル、ビニルクロライド、ビニリデンクロライド、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレンなどが挙げられる。
【0037】
他のポリマー出発材料は、当業者に知られている標準的な重合技術を使用して共役ジエン及び/又はビニルモノマーから調製できる。好適な共役ジエンモノマーとしては、例えば、ブタジエン−1,3、2−クロロブタジエン−1,3、イソプレン、ピペリレン、共役ヘキサジエンなどが挙げられる。好適なビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルクロライド、ビニルアセテート、ビニリデンクロライド、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸、イタコン酸、アクリル酸などが挙げられる。
【0038】
当業者は、十分な専門的な判断力を有しており、これらモノマーの適切な組み合わせを選択し、続いて、本明細書に記載されているようなオキセタン官能基及びスチレン官能基を加えるための、例えば、ヒドロキシル官能基、カルボキシル官能基などの側鎖官能基を加えることができる反応を行うことができる。
【0039】
実施例
実施例1:スチレンカルバメートエチルオキセタンの調製
【0040】
【化12】

【0041】
3−エチル−3−ヒドロキシメチル−オキセタン(40.00g、0.3442モル)及びm−TMI(69.43g、0.3442モル)を、コンデンサー、機械的混合機、窒素パージ及びオイルバスを備えた250mL4つ口丸底フラスコ中で混合した。反応は窒素下で攪拌しながらオイルバス中で65℃に加熱して行った。ジブチル錫ジラウレートを1滴加えて発熱反応を起こした。この反応は、125℃でピークに達した。オイルバスを取り除き、反応温度を15分以内に65℃に下げた。この時点で、反応は、2254cm-1のイソシアネートのFT−IRのピークの消滅に基づき、完結した。生成物はその後粘度のある無色の液体としてフラスコから取り出された。しかし、時間が経つと、その液体は、52℃の融点を有する白色固体に結晶化した。
【0042】
1−NMR:δ7.21−7.61(m,4H)、5.45(s,1H)、5.23(bs,1H)、5.12(s,1H)、4.61−4.21(bm,3H)、4.05(s,3H)、2.15(s,3H)、1.55−1.85(bm,8H)、0.55−1.01(bm,3H)。
【0043】
実施例2:スチレンカルバメートメチルオキセタンの調製
【0044】
【化13】

【0045】
3−メチル−3−オキセタンメタノール(20.00g、0.1958モル)及びm−TMI(39.49g、0.1958モル)を、コンデンサー、機械的混合機、温度計、窒素パージ及びオイルバスを備えた250mL4つ口丸底フラスコ中で混合した。反応は窒素下で攪拌しながらオイルバス中で65℃に加熱して行った。ジブチル錫ジラウレートを1滴加え、5時間以内に反応は2254cm-1のイソシアネートのFT−IRのピークの消滅に基づき、完結した。生成物はその後21,000cPsの粘度を有する無色の液体としてフラスコから取り出された。
【0046】
1−NMR:δ7.61(s,1H)、7.42(s、3H)、5.45(s,1H)、5.31(bs,1H)、5.15(s,1H)、4.61(bm,1H)、4.39(bm,1H)、4.12(s,4H)、2.21(s,3H)、1.72(bs,6H)、0.95−1.35(bm,3H)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造:
【化1】

(式中、
1はメチル基又はエチル基であり;
2及びR3はH又はメチル基若しくはエチル基であり;
4は直接結合又は二価の炭化水素基であり;
X及びYは独立して直接結合又はエーテル、エステル、アミド若しくはカルバメート基であり、ただしX及びYは共に直接結合とならないことを条件とし;
Qは、N、O又はSのヘテロ原子を含んでもよい二価の炭化水素基であり;
Gは、−OR1、−SR1、又は−N(R2)(R3)であり、ここで、R1、R2及びR3は上記のとおりであり;
4、Q及びYが存在せず、R2及びR3がHである場合、Xは、
【化2】

ではなく;
4
【化3】

で、Q及びYが存在せず、R2及びR3がHである場合、Xは、
【化4】

ではない。)
を有する、オキセタン官能基及びスチレン官能基を含む化合物。
【請求項2】
下記構造:
【化5】

を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
下記構造:
【化6】

(式中、
「ポリマー」は、オキセタン官能基及びスチレン官能基を有するポリマー主鎖であり;
m及びnは2〜500の整数であり;
1はメチル基又はエチル基であり;
2及びR3はH又はメチル基若しくはエチル基であり;
4は直接結合又は二価の炭化水素基であり;
W及びZは独立してエーテル、エステル、アミド又はカルバメート基であり;
Gは、−OR1、−SR1、又は−N(R2)(R3)であり、ここで、R1、R2及びR3は上記のとおりである。)
を有する、オキセタン官能基及びスチレン官能基を含む化合物。


【公表番号】特表2006−516551(P2006−516551A)
【公表日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−518201(P2005−518201)
【出願日】平成16年4月21日(2004.4.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/012489
【国際公開番号】WO2004/101541
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(590000824)ナショナル スターチ アンド ケミカル インベストメント ホールディング コーポレイション (112)
【Fターム(参考)】