説明

スチレン系樹脂発泡体およびその製造方法

【課題】高い断熱性を有したスチレン系樹脂発泡体であって、特に、オゾン破壊係数が0の1種以上の化合物を発泡剤として使用した場合、環境適合性が良好な上、少ないハロゲン系難燃剤添加量であっても難燃性に優れ、また、耐熱性も向上したスチレン系樹脂発泡体を得る。
【解決手段】ハロゲン系難燃剤を含むスチレン系樹脂組成物を発泡剤とともに押出発泡してなるスチレン系樹脂発泡体であって、スチレン系樹脂発泡体中に、10〜2000ppmのFe元素を含有することにより、上記特性を有するスチレン系樹脂発泡体が得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い断熱性を有したスチレン系樹脂発泡体であって、少ないハロゲン系難燃剤添加量であっても難燃性に優れたスチレン系樹脂発泡体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂を押出機等にて加熱溶融し、次いで発泡剤を添加し、冷却させ、これを低圧域に押し出すことにより発泡体を連続的に製造する方法は、既に知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、発泡剤として、脂肪族炭化水素、塩素化された炭化水素、フッ素化された炭化水素、塩素フッ素化された炭化水素などを用いる方法も知られている。
【0004】
一方、このようなスチレン系樹脂発泡体は、住宅の断熱材などの建築材料として用いられることから、難燃性が要求される場合があり、有機ハロゲン系化合物、中でもヘキサブロモシクロドデカン等の臭素系難燃剤が広く用いられている。特に、炭化水素などの発泡剤は可燃性ガスであり、その残存により発泡体の燃焼が促進される傾向にあるため、クロロフルオロカーボン等難燃性ガスを使用した従来の発泡体に対し、より多くの難燃剤添加が必要とされる傾向にある。
【0005】
ただし、十分な難燃性を得るために多量の有機ハロゲン系化合物を添加した場合、機械的性質の低下や、押出機の金属部分を腐食させやすい、燃焼時に有害物を多く発生する、耐熱性が低下する等の問題が生じることが知られており、有機ハロゲン系難燃剤の添加量を少なくしても、十分な難燃性を発現させうる難燃助剤の併用が検討されている。例えば、有機臭素化合物に有機過酸化物や2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンなどの熱分解型ラジカル開始剤を併用させる方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、ラジカル開始剤を用いる場合、発泡体製造時に押出機中でラジカルを発生し、難燃剤及び樹脂の劣化を促進する結果、得られた発泡体の耐熱性やリサイクル性が低下するおそれがある。
【0006】
一方、近年、ダイオキシンやPCB等、難分解性の有機ハロゲン化合物の分解方法に関する研究が進められており、有機塩素化合物の酸化分解活性を有する遷移金属酸化物を触媒として利用した排ガス処理技術などが開発されている。こうした触媒を、ハロゲン系難燃剤を含有する有機重合体に対し、難燃助剤として利用する方法も検討されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、特許文献3においては、スチレン系樹脂発泡体への当該技術の適応可能性は検討されておらず、また、実施例によると、触媒を添加していても、有機重合体100重量部に対し、ハロゲン系難燃剤を30重量部添加しており、必ずしも十分に難燃剤量を低減しているとはいいがたい。さらに、酸化鉄等の金属酸化物の存在が、含臭素難燃剤を含む難燃性熱可塑性樹脂組成物の成形不良の原因となるとの報告もあった(例えば、特許文献4〜6参照)。
【特許文献1】特公昭31−5393号公報
【特許文献2】特公昭42−23092号公報
【特許文献3】特開昭57−174350号公報
【特許文献4】特開2001−11322号公報
【特許文献5】特開2001−11323号公報
【特許文献6】特開2001−11461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような状況の下、本発明が解決しようとする課題は、高い断熱性を有したスチレン系樹脂発泡体であって、少ないハロゲン系難燃剤添加量であっても難燃性に優れ、また、耐熱性も向上したスチレン系樹脂発泡体およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題の解決のために鋭意研究を行った結果、ハロゲン系難燃剤と共に、10〜2000ppmのFe元素を含有したスチレン系樹脂発泡体において、ハロゲン系難燃剤の使用量を少なくしても優れた難燃化効果が得られるとともに、耐熱性も向上することを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(12)に関する。
(1)ハロゲン系難燃剤を含むスチレン系樹脂組成物を発泡剤と共に押出発泡してなるスチレン系樹脂発泡体であって、スチレン系樹脂発泡体中に、10〜2000ppmのFe元素を含有することを特徴とするスチレン系樹脂発泡体。
(2)前記スチレン系樹脂発泡体中に、30〜1000ppmのFe元素を含有することを特徴とする(1)記載のスチレン系樹脂発泡体。
(3)前記Fe元素が、酸化鉄に由来することを特徴とする(1)または(2)記載のスチレン系樹脂発泡体。
(4)前記スチレン系樹脂100重量部に対して、ハロゲン系難燃剤を0.1〜20重量部含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のスチレン系樹脂発泡体。
(5)前記ハロゲン系難燃剤が、該ハロゲン系難燃剤とFe化合物とを混合して測定した窒素下5%重量減少温度(昇温速度10℃/分)が、該ハロゲン系難燃剤のみで同条件で測定した窒素下5%重量減少温度(昇温速度10℃/分)よりも低下するハロゲン系難燃剤であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のスチレン系樹脂発泡体。
(6)前記ハロゲン系難燃剤が、該ハロゲン系難燃剤のみで測定した窒素下5%重量減少温度(昇温速度10℃/分)が250℃以上のハロゲン化脂肪族基含有化合物であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のスチレン系樹脂発泡体。
(7)前記ハロゲン系難燃剤が、ヘキサブロモシクロドデカンおよび/またはテトラブロモシクロオクタンであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のスチレン系樹脂発泡体。
(8)前記ハロゲン系難燃剤が、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートおよび/またはテトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のスチレン系樹脂発泡体。
(9)発泡体を形成する気泡が、主として気泡径0.25mm以下の気泡と気泡径0.3〜1mmの気泡より構成されることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載のスチレン系樹脂発泡体。
(10)発泡体を形成する気泡の内、気泡径0.25mm以下の気泡が発泡体断面積あたり5〜95%の占有面積率を有することを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載のスチレン系樹脂発泡体。
(11)発泡剤が、炭素数が3〜5である飽和炭化水素およびハイドロフルオロカーボンからなる群より選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載のスチレン系樹脂発泡体。
(12)ハロゲン系難燃剤を含むスチレン系樹脂組成物を発泡剤とともに加熱溶融させ、低圧域に押出発泡するスチレン系樹脂発泡体の製造方法であって、スチレン系樹脂発泡体中に、10〜2000ppmのFe元素を含有させて、押出発泡することを特徴とするスチレン系樹脂発泡体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、断熱性および難燃性に優れたスチレン系樹脂発泡体およびその製造方法が提供される。本発明のスチレン系樹脂発泡体は、その優れた難燃性および断熱性の点から、種々の用途、特に建築用断熱材の用途に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明で用いられるスチレン系樹脂としては、特に限定はなく、例えば、スチレン単量体のみから得られるスチレンホモポリマー、スチレン単量体およびスチレンと共重合可能な単量体またはその誘導体から得られるランダム、ブロックあるいはグラフト共重合体、後臭素化ポリスチレン、ゴム強化ポリスチレンなどの変性ポリスチレンなどが具体例としてあげられる。これらは単独で使用してもよく2種以上を混合して使用してもよい。
【0012】
スチレンと共重合可能な単量体としては、例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレンなどのスチレン誘導体、ジビニルベンゼンなどの多官能性ビニル化合物、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリロニトリルなどの(メタ)アクリル系化合物、ブダジエンなどのジエン系化合物またはその誘導体、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸無水物などがあげられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0013】
スチレン系樹脂のうちでは、加工性の点から、スチレンホモポリマー、スチレン−アクリロニトリル共重合体、(メタ)アクリル酸共重合ポリスチレン、無水マレイン酸変性ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレンなどが好ましい。最も好ましくは、スチレンホモポリマーである。
【0014】
本発明で用いられる発泡剤としては、特に制限はないが、以下に、具体的にいくつかの発泡剤を例示する。
【0015】
例えば、炭素数3〜5の飽和炭化水素があげられ、具体的には、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、c−ペンタンなどがあげられる。炭素数3〜5の飽和炭化水素では、発泡性の点からプロパン、n−ブタン、i−ブタンあるいはこれらの混合物が好ましい。また、発泡体の断熱性能の点からn−ブタン、i−ブタンあるいはこれらの混合物が好ましく、特に好ましくはi−ブタンである。
また、ハロゲン化炭化水素であってオゾン破壊係数が0の発泡剤も使用でき、オゾン破壊係数が0のハイドロフルオロカーボンが挙げられ、具体的にはトリフルオロメタン(HFC−23:CHF3)、ジフルオロメタン(HFC−32:CH22)、1,1,1,2,2−ペンタフルオロエタン(HFC−125:CHF2CF3)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a:CH2FCF3)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a:CH3CF3)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a:CH3CHF2)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea:CF3CHFCF3)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236fa:CF3CH2CF3)、1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245ca:CH2FCF2CHF2)、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HFC−245cb:CF3CF2CH3)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa:CF3CH2CHF2)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc:CF3CH2CF2CH3)などが挙げられる。発泡成形性の観点から、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a:CH2FCF3)がより好ましい。なお、オゾン破壊係数とは、トリクロロモノフルオロメタン(CFC−11:CCl3F)の単位重量当たりのオゾン破壊量を1とした場合の相対値を意味し、オゾン破壊係数が0とは、実質的にオゾン破壊作用がないか、あるいは、オゾン破壊作用があったとしてもオゾン破壊係数は0.01以下であることを意味する。
【0016】
さらに、以下のような他の発泡剤を用いることもできる。例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、フラン、フルフラール、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどのエーテル類、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルi−ブチルケトン、メチルn−アミルケトン、メチルn−ヘキシルケトン、エチルn−プロピルケトン、エチルn−ブチルケトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールなどのアルコール類、蟻酸メチルエステル、蟻酸エチルエステル、蟻酸プロピルエステル、蟻酸ブチルエステル、蟻酸アミルエステル、プロピオン酸メチルエステル、プロピオン酸エチルエステルなどのカルボン酸エステル類、塩化メチル、塩化エチルなどのハロゲン化アルキルなどの有機発泡剤、例えば窒素、水、二酸化炭素などの無機発泡剤、例えばアゾ化合物、テトラゾールなどの化学発泡剤なども用いることができる。
【0017】
他の発泡剤の中では、発泡性、発泡体成形性などの点から、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、塩化メチル、塩化エチルなどが好ましく、発泡剤の燃焼性、発泡体の難燃性あるいは後述する断熱性等の点から、水および二酸化炭素が好ましい。他の発泡剤では、環境適合性の優れたジメチルエーテル、水および二酸化炭素が特に好ましい。
【0018】
また、必要に応じて、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボンなどのオゾン破壊係数が0ではない発泡剤を用いても良い。
【0019】
これらの発泡剤は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。

本発明のスチレン系樹脂発泡体の製造時に、スチレン系樹脂中に添加または注入される発泡剤の量としては、発泡倍率の設定値などに応じて適宜かわるものではあるが、通常、発泡剤の合計量をスチレン系樹脂100重量部に対して1〜20重量部とするのが好ましい。発泡剤の添加量が1重量部未満では、発泡倍率が低く、スチレン系樹脂発泡体としての軽量、断熱などの特性が発揮されにくい場合があり、一方、20重量部を超えると、過剰な発泡剤量のためスチレン系樹脂発泡体中にボイドなどの不良を生じたり、発泡剤の種類によっては難燃性が低下する場合がある。
【0020】
本発明において、発泡剤として炭素数が3〜5である炭化水素およびハイドロフルオロカーボンからなる群より選ばれる1種以上の化合物を用いる場合、これらの発泡剤の混合下限量は、発泡剤全量100重量%に対して、10重量%以上、好ましくは20重量%以上である(すなわち、他の発泡剤の混合上限量は、発泡剤全量100重量%に対して、好ましくは90重量%以下、好ましくは80重量%以下である)。炭素数が3〜5である炭化水素やハイドロフルオロカーボンの群から選ばれる1種以上の化合物の量が10重量%より少ないと、得られるスチレン系樹脂発泡体の断熱性が劣る場合がある。他の発泡剤の量が90重量%を超える場合、樹脂との相溶性が高い場合は、可塑性が高すぎ、押出機内のスチレン系樹脂と発泡剤との混練状態が不均一となり、押出機の圧力制御が難しくなったり、樹脂との相溶性が低い場合は、スチレン系樹脂発泡体に気孔などが生じて良好な発泡体が得られなかったり、押出機の圧力制御が難しくなったりすると共に、易燃性の発泡剤を使用した際にはスチレン系樹脂発泡体の難燃性の低下を招くなどの傾向がある。
【0021】
一方、炭素数が3〜5である炭化水素およびハイドロフルオロカーボンからなる群より選ばれる1種以上の化合物の混合上限量は、安定的なスチレン系樹脂発泡体の製造、外観など良好な品質のスチレン系樹脂発泡体を得る観点から、発泡剤全量100重量%に対して、好ましくは90重量%以下であり、より好ましくは80重量%以下である(すなわち、他の発泡剤の混合下限量は、発泡剤全量100重量%に対して、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上である)。
【0022】
本発明において、他の発泡剤として水を用いる場合には、加工性および、後述する気泡径0.25mm以下の気泡(以下、小気泡とも言う)および気泡径0.3〜1mmの気泡(以下、大気泡とも言う)の生成性の点から、水の混合量は、発泡剤全量100重量%に対して、好ましくは1〜80重量%、より好ましくは2〜70重量%、特に好ましくは3〜60重量%である。
【0023】
本発明において、他の発泡剤として、水および、水以外の他の発泡剤(ジメチルエーテル、ジエチルエーテルおよびメチルエチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種のエーテルなど)を併用する場合には、加工性および、前記小気泡・大気泡の生成性の点から、他の発泡剤の混合量は、発泡剤全量100重量%に対して、好ましくは水1〜75重量%および水以外のその他の発泡剤79〜5重量%、より好ましくは水2〜70重量%および水以外のその他の発泡剤78〜10重量%、特に好ましくは水3〜65重量%および水以外のその他の発泡剤77〜15重量%である。
【0024】
本発明において、発泡剤として水を用いる場合、炭素数が3〜5である炭化水素およびハイドロフルオロカーボンからなる群より選ばれる1種以上の化合物のみを組み合わせて用いてもよい。しかし、炭素数が3〜5である炭化水素およびハイドロフルオロカーボンからなる群より選ばれる1種以上の化合物および水以外の、他の発泡剤(たとえばジメチルエーテル、二酸化炭素など)と組み合わせて3成分またはそれ以上の成分からなる発泡剤とすることにより、スチレン系樹脂発泡体の発泡性および成形性がより一層向上するので好ましい。
【0025】
本発明において、発泡剤を添加または注入する際の圧力には、特に制限はなく、押出機などの内圧力よりも高い圧力であればよい。
【0026】
本発明において、発泡剤として炭素数が3〜5である炭化水素およびハイドロフルオロカーボンからなる群より選ばれる1種以上の化合物を用いた場合、得られたスチレン系樹脂発泡体中における、これらの発泡剤の残存含有量は、化合物の種類および使用量、発泡剤の発泡体中における透過性、スチレン系樹脂発泡体の倍率あるいは密度、要求される断熱性能などによっても異なる。特に、これらの発泡剤のスチレン系樹脂発泡体中における透過性によっては、経時的に残存含有量が減少し、スチレン系樹脂発泡体気泡中の気体は空気などに置換されていく。従って、これらの発泡剤として透過性の高い化合物を用いて製造され、結果的にスチレン系樹脂発泡体中に残存含有する化合物が非常に少ないスチレン系樹脂発泡体も、本発明の範疇に含まれる。
【0027】
しかしながら、JIS A9511測定方法Aで規定される押出法ポリスチレンフォーム保温板2種、更には3種といった高度の断熱性能が要求される場合には、得られたスチレン樹脂発泡体中における残存発泡剤の組成は、残存発泡剤全量に対して、炭素数が3〜5である炭化水素およびハイドロフルオロカーボンからなる群より選ばれる1種以上の化合物が、好ましくは100〜1重量%、より好ましくは100〜5重量%、さらに好ましくは100〜10重量%、特に好ましくは100〜20重量%であり、一方、他の発泡剤が好ましくは0〜99重量%、より好ましくは0〜95重量%、さらに好ましくは0〜90重量%、特に好ましくは0〜80重量%である。発泡体中に残存する発泡剤における、炭素数が3〜5である炭化水素やハイドロフルオロカーボンからなる群より選ばれる1種以上の化合物の組成が1重量%より少なくなると、JIS A9511測定方法Aで規定される押出法ポリスチレンフォーム保温板2種、更には3種といった高度の断熱性能が得られにくい傾向がある。
【0028】
さらに、押出法ポリスチレンフォーム保温板2種あるいは3種の如き、高度な断熱性能が要求される場合には、炭素数が3〜5である炭化水素やハイドロフルオロカーボンからなる群より選ばれる1種以上の化合物の発泡体中における残存含有量は、一般にスチレン系樹脂発泡体100重量部に対して、1〜10重量部であることが好ましい。特に、押出法ポリスチレンフォーム保温板3種の如きより高い断熱性能が要求される場合には、さらに好ましくは、炭素数が3〜5である炭化水素およびハイドロフルオロカーボンからなる群より選ばれる1種以上の化合物では2〜10重量部である。具体的には、炭素数が3〜5である炭化水素に関しては、プロパンでは、2〜9重量部がより好ましく、3〜8重量部が特に好ましく、n−ブタンおよびi−ブタンでは、1.5〜9重量部がより好ましく、2〜8重量部が特に好ましく、n−ペンタン、i−ペンタンおよびc−ペンタンでは、1.5〜9重量部がより好ましく、2〜8重量部が特に好ましい。1,1,1,2−テトラフルオロエタンなどのハイドロフルオロカーボンでは1.5〜9重量部がより好ましく、2〜8重量部が特に好ましい。
【0029】
本発明において、炭素数が3〜5である炭化水素およびハイドロフルオロカーボンからなる群より選ばれる1種以上の化合物以外の、他の発泡剤の発泡体中における残存含有量は、発泡剤の種類、スチレン系樹脂発泡体のガス透過性や密度などによっても異なるが、スチレン系樹脂発泡体の断熱性能を良好なものにするために、発泡体100重量部に対して、0〜18重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0〜10重量部である。特に、発泡剤のスチレン系樹脂発泡体中における透過性によっては、炭素数3〜5の飽和炭化水素と同様に、経時的に残存含有量が減少し、スチレン系樹脂発泡体気泡中の気体は空気などに置換されていく。
【0030】
本発明で用いられるハロゲン系難燃剤は、特に制限はなく、ハロゲン原子を有する化合物で有れば良い。
【0031】
具体的には、例えば、(a)テトラブロモエタン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ジブロモエチルジブロモシクロヘキサン、ジブロモジメチルヘキサン、2−(ブロモメチル)−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、ジブロモネオペンチルグリコール、トリブロモネオペンチルアルコール、ペンタエリスリチルテトラブロミド、モノブロモジペンタエリスリトール、ジブロモジペンタエリスリトール、トリブロモジペンタエリスリトール、テトラブロモジペンタエリスリトール、ペンタブロモジペンタエリスリトール、ヘキサブロモジペンタエリスリトール、ヘキサブロモトリペンタエリスリトール、ポリブロム化ポリペンタエリスリトール、などの臭素化脂肪族化合物あるいはその誘導体、あるいは臭素化脂環式化合物あるいはその誘導体、(b)ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ビス(2,4,6ートリブロモフェノキシ)エタン、テトラブロモ無水フタル酸、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、ペンタブロモベンジルアクリレート、トリブロモフェニルアリルエーテル、2,3−ジブロモプロピルペンタブロモフェニルエーテルなどの臭素化芳香族化合物あるいはその誘導体、(c)テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAジアリルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジメタリルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルのトリブロモフェノール付加物、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2−ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールS、などの臭素化ビスフェノール類およびその誘導体、(d)テトラブロモビスフェノールAポリカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとブロモ化ビスフェノール付加物エポキシオリゴマーなどの臭素化ビスフェノール類誘導体オリゴマー、(e)ペンタブロモベンジルアクリレートポリマーなどの臭素化アクリル樹脂、(f)エチレンビステトラブロモフタルイミド、エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)1,3,5−トリアジン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートなどの臭素および窒素原子含有化合物、(g)トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、トリス(ブロモフェニル)ホスフェートなどの臭素およびリン原子含有化合物、(h)塩素化パラフィン、塩素化ナフタレン、パークロロペンタデカン、塩素化芳香族化合物、塩素化脂環式化合物、などの塩素含有化合物、(i)臭化アンモニウムなどの臭素化無機化合物、などがあげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。さらには、本発明におけるスチレン系樹脂の1種である臭素化ポリスチレン樹脂も、難燃剤として用いることができる。
【0032】
本発明で用いられるハロゲン系難燃剤としては、耐熱性を維持し、かつ、より良好な難燃性を発現させるために、上記のうち、特に、ハロゲン系難燃剤およびFe化合物を混合して測定した窒素下5%重量減少温度(昇温速度10℃/分)が、該ハロゲン系難燃剤のみで同条件で測定した窒素下5%重量減少温度(昇温速度10℃/分)よりも低下するハロゲン系難燃剤が好ましい。なお、このようなハロゲン系難燃剤を以下、ハロゲン系難燃剤Aという。
【0033】
ここで、ハロゲン系難燃剤およびFe化合物を混合する場合の、ハロゲン系難燃剤/Fe化合物混合比に特に制限はないが、重量比で50/1〜2000/1の範囲で混合すればよい。
【0034】
また、ハロゲン系難燃剤とFe化合物とを混合して測定した窒素下5%重量減少温度(昇温速度10℃/分)が、該ハロゲン系難燃剤のみで同条件で測定した窒素下5%重量減少温度(昇温速度10℃/分)よりも低下する場合の低下温度幅には、特に制限はない。この低下温度幅は、ハロゲン系難燃剤/Fe化合物混合比などにより影響を受けることから一概には言えないが、例えば、ハロゲン系難燃剤/Fe化合物混合比が330/1の場合は、約10℃以上であることが好ましい。但し、これらに限定されるわけではない。
【0035】
上記ハロゲン系難燃剤Aとしては、具体的には、例えば、テトラブロモエタン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ジブロモエチルジブロモシクロヘキサン、ジブロモジメチルヘキサン、2−(ブロモメチル)−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、ジブロモネオペンチルグリコール、トリブロモネオペンチルアルコール、ペンタエリスリチルテトラブロミド、モノブロモジペンタエリスリトール、ジブロモジペンタエリスリトール、トリブロモジペンタエリスリトール、テトラブロモジペンタエリスリトール、ペンタブロモジペンタエリスリトール、ヘキサブロモジペンタエリスリトール、ヘキサブロモトリペンタエリスリトール、ポリブロム化ポリペンタエリスリトール、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2−ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートなどが挙げられるが、難燃性や耐熱性の点でより好ましくは、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモシクロオクタン、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートがあげらる。これらのうちでも、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモシクロオクタンが、難燃性の点でさらに好ましい。
【0036】
また、本発明で用いられるハロゲン系難燃剤としては、成形時の熱安定性、耐熱性を維持し、かつより良好な難燃性を発現させるために、上記ハロゲン系難燃剤のうち、特に、ハロゲン系難燃剤のみで測定した窒素下5%重量減少温度(昇温速度10℃/分)が250℃以上のハロゲン化脂肪族基含有化合物も、より好ましい形態として用いられる。なお、このようなハロゲン系難燃剤を以下、ハロゲン系難燃剤Bという。
【0037】
このようなハロゲン系難燃剤Bとしては、具体的には、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2−ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等があげられる。これらの内でも、ハロゲン系難燃剤Aかつハロゲン系難燃剤BであるテトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートが、難燃性、成形時の熱安定性、耐熱性の点で最も好ましい。
【0038】
なお、5%重量減少温度は、一般的な熱重量測定装置、たとえば(株)島津製作所製TGA-50やDTG−50を用いて、熱重量法等により測定すればよい。より具体的には、(株)島津製作所製、DTG−50を用い、窒素気流50ml/分、昇温速度10℃/分および試料約3.5mgの条件にて、対照Al23として窒素下の5%重量減少温度を測定すればよい。
【0039】
本発明で用いられるハロゲン系難燃剤のスチレン系樹脂発泡体における含有量は、JIS A9511測定方法Aに規定される難燃性が得られるように、発泡剤添加量、発泡体密度、Fe元素含有化合物、相乗効果を有する添加剤などの種類あるいは添加量などにあわせて適宜調整されるものであるが、概ねスチレン系樹脂100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、より好ましくは1〜15重量部、さらに好ましくは2〜12重量部である。ハロゲン系難燃剤の含有量が0.1重量部未満では、スチレン系樹脂発泡体として、本発明の目的とする難燃性などの良好な諸特性が得られにくい傾向があり、一方、20重量部を超えると、得られる発泡体の耐熱性や表面性、発泡体製造時の安定性などをかえって損う場合がある。
【0040】
本発明のスチレン系樹脂発泡体には、Fe元素が含まれる。
【0041】
本発明におけるFe元素の供給源としては、Fe元素を含む化合物をスチレン系樹脂組成物中に添加しても良いし、また、スチレン系樹脂発泡体製造設備工程において、Fe成分で構成される設備に対し、スチレン系樹脂組成物、スチレン系樹脂発泡体あるいはその原料となる物質が接触することにより、不可避的にスチレン系樹脂発泡体中にFe元素が含まれるような場合であっても良い。
【0042】
Fe元素を含む化合物としては、例えば、鉄、鉄の酸化物、鉄のハロゲン化物、鉄の燐酸塩、鉄の硝酸塩、鉄の硫酸塩、鉄の無機あるいは有機錯体、さらには、鉄鉱石、粘土および雲母などのFe元素とともに他の金属元素も含むような自然産物など、Fe元素を含む物質であれば良く、特に制限はない。
【0043】
但し、得られるスチレン系樹脂発泡体の断熱性、難燃性の点からは、酸化鉄(鉄の酸化物)が好ましい。
【0044】
発泡体製造設備工程において、Fe成分で構成される設備に対し、スチレン系樹脂組成物、スチレン系樹脂発泡体あるいはその原料となる物質が接触する場合としては、例えば、スチレン系樹脂発泡体の原料をFe成分からなるブレンダーで混合する場合、スチレン系樹脂組成物をFe成分からなる配管中を輸送する場合、スチレン系樹脂組成物を発泡剤とともにFe成分からなる押出機で押出発泡する際に鉄錆びが混入する場合などがあげられるが、これらに制限されるわけではない。
【0045】
本発明のスチレン系樹脂発泡体においては、スチレン系樹脂発泡体中に、10〜2000ppmのFe元素を含有する。Fe元素含有量は、難燃性の観点から、より好ましくは30〜1000ppmであり、最も好ましくは100〜800ppmである。Fe元素含有量が10ppm未満では、ハロゲン系難燃剤との相乗効果が小さく、ハロゲン系難燃剤の量を減らすことが困難となる場合がある。また、Fe元素含有量が2000ppm以上では、スチレン系樹脂発泡体の耐熱性、難燃性および発泡体製造時の成形性、表面性などをかえって損なう場合がある。
【0046】
本発明においては、ハロゲン系難燃剤およびFe元素以外に、さらに含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物、含硫黄化合物の群から選ばれる1種以上の化合物を併用することにより、押出法ポリスチレンフォーム保温板3種に該当する高い断熱性能を発揮させるために、燃焼性の高い炭化水素を発泡剤として比較的多く含有している場合でも、ハロゲン系難燃剤を多量に添加することなく、JIS A9511測定方法Aに規定される高度の難燃性を達成することができる。
【0047】
本発明で使用される含燐化合物とは、燐原子を含有する化合物であって、ハロゲン系難燃剤やFe元素と相乗的効果を発揮できる化合物であれば、特に制限はない。例えば、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、ホスファイト、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸またはこれの誘導体、金属塩、メラミン塩、アンモニウム塩、および、ホスファゼンまたはその誘導体、ホスホニトリルまたはその誘導体などがあげられる。
【0048】
前記含燐化合物の具体例としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートなどの脂肪族炭化水素モノリン酸エステル、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェートなどの芳香族炭化水素モノリン酸エステル、レゾルシノール・ジフェニルホスフェート、レゾルシノール・ジキシレニルホスフェート、レゾルシノール・ジクレジルホスフェート、ビスフェノールA・ジフェニルホスフェート、ビスフェノールA・ジキシレニルホスフェート、ビスフェノールA・ジクレジルホスフェート、ハイドロキノン・ジフェニルホスフェート、ハイドロキノン・ジキシレニルホスフェート、ハイドロキノン・ジクレジルホスフェート、レゾルシノール・ポリフェニルホスフェート、レゾルシノール・ポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェートビスフェノールA・ポリクレジルホスフェート、ハイドロキノンポリ(2,6−キシリル)ホスフェートなどの縮合リン酸エステル、リン酸メラミン、亜リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、リン酸アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、リン酸アンモニウムアミド、リン酸アミド、二亜リン酸ピペラジン、亜リン酸ピペラジン、ピロリン酸ピペラジン、亜リン酸グアナゾール、ホスファゼン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラン、ポリリン酸メレム、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸アミド、ポリホスファゼン、ホスホニトリルなどの含燐含窒素系化合物などがあげられる。さらに、前述のトリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、トリス(ブロモフェニル)ホスフェートなどのハロゲン化ホスフェート系化合物を含燐化合物として使用してもよい。これらの含燐化合物は単独で使用してもよく2種以上を混合して使用してもよい。
【0049】
本発明における含燐化合物の添加量は、ハロゲン系難燃剤やFe元素などの難燃剤量あるいは難燃助剤量、発泡剤種およびその含有量、得られるスチレン系樹脂発泡体の密度などによって適宜調整されるが、概ね、スチレン系樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、0.3〜9重量部がさらに好ましく、0.5〜8重量部が最も好ましい。含燐化合物の添加量が0.1重量部未満では、難燃性の相乗効果が得られない場合があり、10重量部を超えると、発泡体製造の際の成形性などを損う場合がある。
【0050】
本発明で使用される含窒素化合物とは、窒素原子を含有する化合物であって、ハロゲン系難燃剤やFe元素と相乗的効果を発揮できる化合物であれば、特に制限はない。例えば、トリアジン骨格含有化合物、シアヌル酸あるいはイソシアヌル酸およびその誘導体、グアニジン化合物、アゾ化合物、テトラゾール化合物などがあげられる。
【0051】
前記含窒素化合物の具体例としては、例えば、メラミン、メラム、メレム、メロン、メチロールメラミンなどのトリアジン骨格含有化合物あるいはその誘導体、シアヌル酸、メチルシアヌレート、ジエチルシアヌレート、トリメチルシアヌレート、トリエチルシアヌレート、イソシアヌル酸、メチルイソシアヌレート、N,N‘−ジエチルイソシアヌレート、トリスメチルイソシアヌレート、トリスエチルイソシアヌレート、ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレートなどのシアヌル酸、イソシアヌル酸あるいはその誘導体、メラミンなどのトリアジン骨格含有化合物とシアヌル酸あるいはイソシアヌル酸およびその誘導体からなる塩、たとえばメラミンシアヌレートなどがあげられる。さらに、前述の、ヒドラゾジカルボンアミド、アゾジカルボンアミド、アゾイソブチロニトリルなどアゾ化合物、テトラゾールグアニジン塩、テトラゾールピペラジン塩、テトラゾールアンモニウム塩などのテトラゾールアミン塩類、また、テトラゾールナトリウム塩、テトラゾールマンガン塩、たとえば5,5−ビステトラゾール2グアニジン塩、5,5−ビステトラゾール2アンモニウム塩、5,5−ビステトラゾール2アミノグアニジン塩、5,5−ビステトラゾールピペラジン塩などのテトラゾール金属塩類などのテトラゾール化合物など、飽和炭化水素および水以外の発泡剤として用いられる発泡剤を含窒素化合物として使用してもよい。さらに、前述の、エチレンビステトラブロモフタルイミド、エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートなどのハロゲンおよび窒素原子含有化合物を含窒素化合物として使用してもよい。これらの含窒素化合物は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0052】
本発明において、含窒素化合物として、シアヌル酸、イソシアヌル酸あるいはその誘導体を用いる場合には、化合物自体が難燃性であるとともに、270〜400℃で分解あるいは溶融する化合物であることが好ましい。また、テトラゾール化合物を用いる場合には、熱分解温度が250℃以上であるものが好ましい。
【0053】
本発明における含窒素化合物の添加量は、ハロゲン系難燃剤やFe元素などの難燃剤量あるいは難燃助剤量、発泡剤種およびその含有量、得られるスチレン系樹脂発泡体の密度などによって適宜調整されるが、概ね、スチレン系樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、0.3〜9重量部がより好ましく、0.5〜8重量部がさらに好ましい。含窒素化合物の添加量が0.1重量部未満では、難燃性の相乗効果が得られない場合があり、10重量部を超えると、スチレン系樹脂発泡体製造の際の成形性などを損う場合がある。
【0054】
本発明で使用される含ホウ素化合物とは、ホウ素原子を含有する化合物であって、ハロゲン系難燃剤やFe元素と相乗的効果を発揮できる化合物であれば、特に制限はない。例えば、ホウ酸、硼砂、ホウ酸金属塩、酸化ホウ素、リン酸ホウ素、ボロシリケート類などがあげられる。
【0055】
前記含ホウ素化合物の具体例としては、例えば、ホウ酸、硼砂、ホウ酸亜鉛、ホウ酸バリウム、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸ストロンチウム、ホウ酸ジルコニウム、ホウ酸スズなどのホウ酸金属塩、これらの化合物の水和物などの誘導体、二酸化二ホウ素、三酸化二ホウ素、三酸化四ホウ素、五酸化四ホウ素などの酸化ホウ素などがあげられる。これらの含ホウ素化合物は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0056】
含ホウ素化合物の添加量は、ハロゲン系難燃剤やFe元素などの難燃剤量あるいは難燃助剤量、発泡剤種およびその含有量、得られるスチレン系樹脂発泡体の密度などによって適宜調整されるが、概ね、スチレン系樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部であり、好ましくは0.3〜9重量部、さらに好ましくは0.5〜8重量部である。添加量が0.1重量部未満では、難燃性の相乗効果が得られない場合があり、10重量部を超えると、スチレン系樹脂発泡体製造の際の成形性などを損う場合がある。
【0057】
含燐化合物、含窒素化合物または含ホウ素化合物は、これらの群から選ばれる1種または2種以上の化合物を併用してもよい。
【0058】
本発明で使用される含硫黄化合物とは、硫黄原子を含有する化合物であって、ハロゲン系難燃剤やFe元素と相乗的効果を発揮できる化合物であれば、特に制限はない。含硫黄化合物の具体例としては、例えば、硫酸アンモニウム、硫酸メラミン、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸鉄などの硫酸塩系化合物、スルファミン酸、スルファミン酸アンモニウム、スルファミン酸グアニジンなどのスルファミン酸系化合物、ベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸、p−オクチルベンゼンスルホン酸、o−オクチルベンゼンスルホン酸、p−ドデシルベンゼンスルホン酸、m−ドデシルベンゼンスルホン酸、o−ドデシルベンゼンスルホン酸などのアルキルベンゼンスルホン酸、フルオロベンゼンスルホン酸、クロルベンゼンスルホン酸、ブロムベンゼンスルホン酸、ヨードベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、フェノールジスルホン酸、スルファニル酸(アミノベンゼンスルホン酸)、ナフタレンスルホン酸、2−ナフトール−1−スルホン酸、2−メチルナフタレン−1−スルホン酸あるいはこれらの芳香族スルホン酸のリチウム、ナトリウム、カリウムなどの周期律表1A族金属との塩、マグネシウム、カルシウム、バリウムなどの周期律表2A族金属との塩、亜鉛、鉄、銅などの金属との塩などの金属塩などのスルホン酸系化合物等があげられる。これらの含硫黄化合物は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0059】
本発明における含硫黄化合物の添加量は、ハロゲン系難燃剤やFe元素などの難燃剤量あるいは難燃助剤量、発泡剤の種類およびその含有量、得られるスチレン系樹脂発泡体の密度等によって適宜調整されるが、概ね、スチレン系樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、0.3〜9重量部がより好ましく、0.5〜8重量部がさらに好ましい。含硫黄化合物の添加量が0.1重量部未満では、難燃性の相乗効果が得られない場合があり、10重量部を越えると、スチレン系樹脂発泡体製造の際の成形性などを損なう場合がある。
【0060】
含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物のうちでは、トリフェニルホスフェート、レゾルシノール・ジフェニルホスフェート、レゾルシノール・ジキシレニルホスフェート、レゾルシノール・ジクレジルホスフェート、ビスフェノールA・ジフェニルホスフェート、ビスフェノールA・ジキシレニルホスフェート、ビスフェノールA・ジクレジルホスフェート、ハイドロキノン・ジフェニルホスフェート、ハイドロキノン・ジキシレニルホスフェート、ハイドロキノン・ジクレジルホスフェート、レゾルシノール・ポリフェニルホスフェート、レゾルシノール・ポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェートビスフェノールA・ポリクレジルホスフェート、ハイドロキノンポリ(2,6−キシリル)ホスフェートなどの芳香族リン酸エステルあるいは芳香族縮合リン酸エステル、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどのハロゲン含有リン酸エステル、リン酸メラミン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、ポリホスファゼンなどの燐および窒素原子含有化合物、メラミンなどのトリアジン骨格含有化合物、シアヌル酸、イソシアヌル酸、ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレートなどのシアヌル酸、イソシアヌル酸あるいはその誘導体、熱分解温度が250℃以上である5,5−ビステトラゾール2グアニジン塩、5,5−ビステトラゾール2アンモニウム塩、5,5−ビステトラゾール2アミノグアニジン塩、5,5−ビステトラゾールピペラジン塩テトラゾール化合物などのテトラゾール化合物、ホウ酸亜鉛、酸化ホウ素、表面処理剤で処理されたホウ酸亜鉛あるいは酸化ホウ素、硫酸アンモニウム、p−トルエンスルホン酸などが、難燃性の相乗的効果が発揮され、発泡剤の燃焼も抑制される点から好ましい。
【0061】
なお、後述するように、発泡剤として水を用いた場合、小気泡と大気泡からなる発泡体を得ることができ、このような発泡体は高い断熱性を有することから好ましいが、このように発泡剤として水を用いる場合、ハロゲン系難燃剤およびFe元素、さらに含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物または含硫黄化合物としては、室温付近の温度域(10〜30℃前後)において水に難溶あるいは水への溶解度が10重量%以下の化合物であることが好ましい。この理由は定かではないが、化合物の水への溶解度が高い場合、小気泡と大気泡とを発生させる効果を阻害し、高い断熱性を有する発泡体を得ることができない場合がある。
【0062】
しかし、ハロゲン系難燃剤およびFe元素、さらに含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物または含硫黄化合物が、水への溶解度が高い場合であったり、小気泡と大気泡とを発生させる効果を阻害する傾向にある場合には、表面被覆処理を施すことで改善できる場合があり、表面被覆処理された化合物を用いることが好ましい。
【0063】
本発明における表面処理剤としては、一般的に表面処理剤として知られている物質に限らず、水の相互作用を絶縁できる物質であれば構わない。具体例として、たとえばメラミン樹脂、グアナミン樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、イミド樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、アクリル樹脂などが例示される熱硬化性樹脂、ビニルトリクロロシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが例示されるシランカップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、テトラアルコキシチタン、チタンアシレート、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタンなどが例示されるチタン系表面処理剤、(アルキルアセトアセタト)アルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)などが例示されるアルミニウム系表面処理剤、フッ素樹脂、アミド樹脂、アリレート樹脂、イミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレートなどが例示される熱可塑性樹脂などがあげられる。また、これらの表面処理剤を2種以上併用することも本発明の範疇である。さらに、最近では無機物−無機物の組合せでも表面処理が可能であり、たとえば酸化チタン、酸化ケイ素などで表面に被膜を形成することも可能である。このようなことからは、有機物、無機物に関わらず表面処理することが可能である。なお、これらの表面処理剤を2種以上併用することも、本発明の範疇である。
【0064】
表面処理する方法としては、下記(1)〜(4)のような方法が例示できるが、これらの方法に制限されるものではない。
(1)混合機能のある装置を用いて化合物と表面処理剤をミキシングする。混合機能のある装置とは一般的なヘンシェルミキサー、リボンブレンダーなどで充分であるが、粉体コーティング用の混合機、例えば、(株)セイシン企業製ニューグラマシン、(株)奈良機械製作所製混合造粒機NMGなどを例示することができる。
(2)表面処理剤を適当な有機溶剤に溶解させ、これに化合物を添加、浸漬した後、乾燥させる。
(3)液状表面処理剤あるいは固体状表面処理剤を有機溶剤に溶解し、気流中で分散している化合物に噴霧した後、乾燥させる。気流分散中に散布する装置としては、例えば、不二パウダル(株)製グローマックスなどを例示することができる。
(4)機械的衝撃により化合物の表面に表面処理剤を被覆させる。機械的衝撃を与えることのできる装置としては、例えば、(株)奈良機械製作所製NHS(ハイブリダイゼーションシステム)などを例示することができる。これは、表面処理剤が固体の場合に有効である。
【0065】
表面処理剤として熱硬化性樹脂を用いる場合、(1)〜(4)により化合物表面に熱硬化前の樹脂の被膜を形成し、その後、一般的な乾燥機や流動層乾燥機などで加温して熱硬化するとよい。また、熱硬化後の粉末樹脂を(4)により表面処理することも可能である。
【0066】
なお、表面処理を一度実施した後、同じ表面処理剤あるいは異なる表面処理剤を用いて再び表面処理を実施するなど、複数回表面処理を施すことにより被覆率を向上させることも、本発明の範疇である。
【0067】
押出法ポリスチレンフォーム保温板3種に該当する高い断熱性能を発揮させるために可燃性の飽和炭化水素またはハイドロフルオロカーボンを発泡剤として比較的多く含有している場合、ハロゲン系難燃剤およびFe元素だけを難燃剤あるいは難燃助剤として用いた系では、ハロゲン系難燃剤の少量添加では、必ずしも安定的に難燃性が得られない傾向がある。また、ハロゲン系難燃剤の添加量を増量すると、ダイより押出された直後にスチレン系樹脂発泡体がむしれたり、あるいは、ちぎれたりして満足なスチレン系樹脂発泡体が得られない傾向がある。
【0068】
また、発泡剤として特に飽和炭化水素を用いる場合、スチレン系樹脂発泡体の燃焼時にスチレン系樹脂発泡体から残留発泡剤が大気中に放出され、該発泡剤が燃焼するために、該発泡剤の燃焼熱によりスチレン系樹脂発泡体の表面溶解が生じて延焼する傾向がある。
【0069】
しかしながら、これらの傾向についても、ハロゲン系難燃剤およびFe元素に、さらに含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物または含硫黄化合物を併用することにより、残留発泡剤の燃焼を阻害することにより、極めて軽減させ得るか、あるいは無くすることができるといった優れた効果が得られ、さらに、適量を使用することにより、優れた難燃性および成形加工時の安定性を有する発泡成形品が得られるようになる。
【0070】
次に、発泡剤として水を用いる場合、水を吸収できる吸水性物質を同時に併用することが好ましい。吸水性物質の具体例としては、例えば、スメクタイト、膨潤性フッ素雲母などの吸水性または水膨潤性の層状珪酸塩類あるいはこれらの有機化処理品、吸水性高分子、日本アエロジル(株)製AEROSILなどのシラノール基を有する無水シリカなどがあげられる。これら吸水性物質の1種または2種以上を添加することにより、発泡体中に、後述する小気泡、大気泡の発生する作用をさらに向上させることができ、得られる発泡体の成形性、生産性および断熱性能がさらに向上する。
【0071】
該吸水性物質の中でも、ベントナイト、ヘクトライトおよびシリカが、成形性および断熱性能を発現させるうえでより好ましい。
【0072】
以下、吸水性物質についてさらに詳細に説明する。
【0073】
前記吸水性物質は、スチレン系樹脂に対して相溶性のない水を吸収してゲルを形成し、ゲルの状態でスチレン系樹脂中に均一に分散させることができると考えられる。
【0074】
本発明における吸水性物質の含有量は、水の添加量などによって、適宜調整されるものであるが、スチレン系樹脂100重量部に対して、好ましくは0.2〜10重量部、さらに好ましくは0.3〜8重量部、とくに好ましくは0.5〜7重量部である。吸水性物質の含有量が0.2重量部未満の場合、吸水性物質による水の吸着量が不足し、押出機内で水の分散不良による気孔が発生し成形体不良になる場合がある。一方、10重量部を超える場合、押出機内で吸水性物質の分散不良が発生し、気泡むらができ、スチレン系樹脂発泡体の断熱性能の悪化とバラツキを生ずる場合がある。
【0075】
本発明で用いられる層状珪酸塩とは、主として酸化ケイ素の四面体シートと、主として金属水酸化物の八面体シートからなり、該四面体シートと八面体シートが単位層を形成し、単位層単独、層間に陽イオンなどを介して複数個層状に積層して一次粒子を形成、あるいは、一次粒子の凝集体の粒子を形成(二次粒子)し、存在し得るものである。層状珪酸塩の例としては、たとえばスメクタイト族粘土および膨潤性雲母などがあげられる。
【0076】
前記スメクタイト族粘土は、一般式(1):
0.20.623410(OH)2・nH2O (1)
(式中、Xは、K、Na、1/2Caおよび1/2Mgよりなる群から選ばれる1種以上であり、Yは、Mg、Fe、Mn、Ni、Zn、Li、AlおよびCrよりなる群から選ばれる1種以上であり、Zは、SiおよびAlよりなる群から選ばれる1種以上である。なお、H2Oは層間イオンと結合している水分子を表わし、n=0.5〜10程度であるが、nは層間イオンおよび相対湿度に応じて著しく変動するためこれらに限定されるわけではない)で表わされる、天然または合成されたものである。
【0077】
該スメクタイト族粘土の具体例としては、たとえばモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、鉄サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトおよびベントナイトなど、これらの置換体、誘導体、またはこれらの混合物があげられる。
【0078】
また、前記の膨潤性雲母は、一般式(2):
0.51.023(Z410)(F、OH)2 (2)
(式中、Xは、Li、Na、K、Rb、Ca、BaおよびSrよりなる群から選ばれる1種以上であり、Yは、Mg、Fe、Ni、Mn、AlおよびLiよりなる群から選ばれる1種以上であり、Zは、Si、Ge、Al、FeおよびBよりなる群から選ばれる1種以上である)で表わされる、天然または合成されたものである。
【0079】
これらは、水、水と任意の割合で相溶する極性のある有機化合物、および水と該極性のある有機化合物の混合溶媒中で膨潤する性質を有する物であり、たとえばリチウム型テニオライト、ナトリウム型テニオライト、リチウム型四ケイ素雲母、およびナトリウム型四ケイ素雲母など、またはこれらの置換体、誘導体、あるいはこれらの混合物があげられる。
【0080】
前記膨潤性雲母の中には、バーミキュライト類と似通った構造を有するものもあり、このようなバーミキュライト類相当品なども使用し得る。該バーミキュライト類相当品には3八面体型と2八面体型があり、一般式(3):
(Mg,Fe,Al)23(Si4-xAlx)O10(OH)2・(M+,M2+1/2)x・nH2O (3)
(式中、MはNaおよびMgなどのアルカリまたはアルカリ土類金属の交換性陽イオン、x=0.6〜0.9、n=3.5〜5である)で表わされるものがあげられる。
【0081】
膨潤性層状珪酸塩は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのうちでは、得られる発泡体中の分散性の点などから、スメクタイト族粘土、膨潤性雲母が好ましく、さらに好ましくは、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、合成スメクタイトおよび膨潤性フッ素雲母などの層間にナトリウムイオンを有する膨潤性雲母である。
【0082】
ベントナイトの代表例としては、天然ベントナイト、精製ベントナイトなどがあげられる。また、有機化ベントナイトなども使用できる。
【0083】
本発明におけるスメクタイトには、アニオン系ポリマー変性モンモリロナイト、シラン処理モンモリロナイト、高極性有機溶剤複合モンモリロナイトなどのモンモリロナイト変性処理生成物もその範疇に含まれる。
【0084】
本発明におけるベントナイトなどのスメクタイトの含有量は、水の添加量などによって、適宜調整されるものであるが、スチレン系樹脂100重量部に対して、好ましくは0.2〜10重量部、さらに好ましくは0.3〜8重量部、とくに好ましくは0.5〜7重量部、最も好ましくは1〜5重量部である。スメクタイトの含有量が0.2重量部未満では、水の圧入量に対してスメクタイトによる水の吸着量が不足し、押出機内で水の分散不良による気孔が発生し、成形体不良になる傾向がある。一方、10重量部を超える場合、スチレン系樹脂中に存在する無機物粉体の量が過剰になるため、スチレン系樹脂中への均一分散が困難になり、気泡ムラが発生する傾向にあり、さらには、独立気泡を保持することが困難となる傾向にある。したがって、スチレン系樹脂発泡体の断熱性能の悪化とバラツキを生じ易くなる場合がある。
【0085】
本発明における水/スメクタイト(ベントナイト)の混合比率は、重量比で、好ましくは0.02〜20、さらに好ましくは0.1〜10、とくに好ましくは0.15〜5、最も好ましくは0.25〜2の範囲である。
【0086】
ところで、発泡剤として水を用い、同時に吸水性物質を添加した場合、従来用いられていたハロゲン系難燃剤(例えば、ヘキサブロモシクロドデカンやテトラブロモシクロオクタン)とを併用すると、成形時に、従来のハロゲン系難燃剤の分解が促進され、着色するなどリサイクル性が低下する場合があった。
【0087】
しかしながら、このような場合においても、窒素下5%重量減少温度(昇温速度10℃/分)が250℃以上のハロゲン化脂肪族基含有化合物(前記ハロゲン系難燃剤B)をハロゲン系難燃剤として用いれば、成形時の分解促進がほとんどなく、リサイクル性、難燃性および断熱性に優れたスチレン系樹脂発泡体を得ることができる。
【0088】
本発明で得られるスチレン系樹脂発泡体における平均気泡径は、0.05〜1mmが好ましく、さらに好ましくは0.06〜0.6mm、特に好ましくは0.08〜0.4mmである。
【0089】
また、発泡剤として水を用いる場合、スチレン系樹脂発泡体中には、主として気泡径が0.25mm以下の比較的小さい気泡(小気泡)および、気泡径が0.3〜1mm程度の比較的大きな気泡(大気泡)が海島状に混在する特徴的な気泡構造を有するスチレン系樹脂発泡体が得られる。得られるスチレン系樹脂発泡体は、断熱性能を向上されつつ、かつ、大気泡の生成により得られるスチレン系樹脂発泡体が低密度で容易に厚さを出すことが可能となり、成形性も良好となるため、発泡剤として水を用いることが好ましい。小気泡および大気泡の気泡径は、断熱性能および成形性の観点から、より好ましくは、主として小気泡が0.01〜0.2mmおよび大気泡が0.3〜0.8mmであり、最も好ましくは、主として小気泡が0.02〜0.15mmおよび大気泡が0.3〜0.6mmである。
【0090】
さらに、気泡径0.25mm以下の小気泡および気泡径0.3〜1mmの大気泡が混在してなる特定の気泡構造を有するスチレン系樹脂発泡体においては、発泡体断面積あたりに占める小気泡の面積の割合(以下、小気泡面積率という)は、5〜95%が好ましく、さらに好ましくは10〜90%、とくに好ましくは20〜80%、最も好ましくは25〜70%である。小気泡面積率が5%未満であると、断熱性が向上しにくい傾向となり、95%を超えると、スチレン系樹脂発泡体の厚さが出にくいなど成形性が低下する場合がある。
【0091】
なお、本発明の小気泡と大気泡が海島状に混在する高い断熱性を有するスチレン系樹脂発泡体において、0.25mmを超え0.3mm未満の気泡径を有する気泡が全く存在しない訳ではないが、該気泡径の気泡が目立って増加すると、小気泡と大気泡との区別がつきにくくなり、すなわち、異なる気泡径が連続的に存在することになり、海島状に存在する特徴的な気泡構造ではなくなるため、断熱性能および成形性のバランスが崩れる傾向となる。このような点から、発泡体断面積あたりに占める0.25mmを超え0.3mm未満の気泡径を有する気泡の面積の割合は、40%以下が好ましく、20%以下が特に好ましい。
【0092】
他方、通常の均一な径の気泡のみからなる発泡体では、気泡径を小さくすることにより、断熱性能をある程度向上させることは可能である。しかし、気泡径が小さくなると、スチレン系樹脂発泡体の所定の厚さを出すためには、より多くの樹脂が必要となり、結果的に密度が高くなり、押出時の圧力が高くなる、吐出量が少なくなるなど、成形性が低下してしまうという傾向がある。
【0093】
本発明においては、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で種々の難燃助剤、シリカ、タルク、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウムなどの無機化合物、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、流動パラフィン、オレフィン系ワックス、ステアリルアミド系化合物などの加工助剤、フェノール系抗酸化剤、リン系安定剤、窒素系安定剤、イオウ系安定剤、ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類などの耐光性安定剤、前記以外の難燃剤、帯電防止剤、顔料などの着色剤などの添加剤を含有させることができる。
【0094】
難燃助剤としては、ハロゲン系難燃剤およびFe元素、あるいはその他の難燃剤と相乗作用を発現する物質であれば、特に制限はないが、以下の熱分解してラジカルを発生させる難燃助剤が好ましい。
【0095】
すなわち、具体的には、例えば、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンなどの非パーオキサイド類、1,1,3,3,−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール類、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどのパーオキシカービネート類、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシラウレート、クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエートなどのパーオキシエステル類などがあげられる。
【0096】
このような中でも、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3,−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドが難燃性を向上させる上で好ましく、最も好ましくは2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンである。
【0097】
本発明のおける前記難燃助剤の含有量は、難燃性が向上するよう適宜調整されるものであるが、スチレン系樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部が好ましく、0.05〜3重量部がより好ましく、0.1〜1重量部がさらに好ましい。
【0098】
また、より安定的に押出発泡させるためには、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスフェート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレイトなどのヒンダードフェノール系抗酸化剤、トリフェニルフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビスステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイトなどのリン系安定剤、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、アルキル化ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンなどのアミン系安定剤、3,3−チオビスプロピオン酸ジオデシルエステル、3,3’−チオビスプロピオン酸ジオクタデシルエステルなどのイオウ系安定剤を添加するのが好ましい。
【0099】
本発明のスチレン系樹脂発泡体は、スチレン系樹脂、ハロゲン系難燃剤およびFe元素含有化合物、必要に応じて含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物、含硫黄化合物または他の添加剤を押出機などの加熱溶融手段に供給し、任意の段階で高圧条件下で、発泡剤をスチレン系樹脂に添加し、流動ゲルとなし、押出発泡に適する温度に冷却した後、該流動ゲルをダイを通して低圧領域に押出発泡させて、発泡体を形成することにより製造される。
【0100】
スチレン系樹脂と発泡剤などの添加剤を加熱溶融する際の、スチレン系樹脂と発泡剤などの添加剤の添加手順としては、例えば、
(い)スチレン系樹脂にハロゲン系難燃剤およびFe元素含有化合物、必要に応じて含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物、含硫黄化合物または他の添加剤を混合した後に、加熱溶融する、
(ろ)スチレン系樹脂とハロゲン系難燃剤およびFe元素含有化合物、必要に応じて含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物、含硫黄化合物および他の添加剤から選ばれる1種以上の添加剤を混合した後、加熱溶融し、これに残りの添加剤をそのままあるいは必要により液体化あるいは溶融させて添加し加熱混合する、
(は)予めスチレン系樹脂にハロゲン系難燃剤およびFe元素含有化合物、必要に応じて含燐化合物、含窒素化合物または含ホウ素化合物および他の添加剤から選ばれる1種以上の添加剤を混合した後、加熱溶融した組成物を準備し、次いで、該組成物と残りの添加剤、必要に応じてスチレン系樹脂を改めて混合し、押出機に供給して加熱溶融する
などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0101】
本発明のおいて、スチレン系樹脂および発泡剤などの添加剤を加熱溶融混練する際の加熱温度、溶融混練時間および溶融混練手段については、特に制限はない。
【0102】
該加熱温度は、使用するスチレン系樹脂が溶融する温度以上であればよいが、難燃剤などの影響による樹脂の分子劣化ができる限り抑制される温度、例えば150〜260℃程度が好ましい。
【0103】
該溶融混練時間は、単位時間あたりの押出量、溶融混練手段などによって異なるので一概に決定することはできないが、スチレン系樹脂と発泡剤が均一に分散混合するのに要する時間が適宜選ばれる。
【0104】
また、溶融混練手段としては、例えばスクリュー型の押出機などがあげられるが、通常の押出発泡に用いられているものであれば特に限定はない。ただし、樹脂の分子劣化をできる限り抑えるため、スクリュー形状については、低剪断タイプのスクリューを用いる方が好ましい。
【0105】
また、発泡成形方法にも特に制限はないが、たとえばスリットダイより圧力開放して得られた発泡体をスリットダイと密着または接して設置した成形金型および成形ロールなどを用いて、断面積の大きい板状発泡体を成形する一般的な方法を用いることができる。
【0106】
本発明のスチレン系樹脂発泡体の厚さには特に制限はなく、用途に応じて適宜選択される。たとえば、建材などの用途に使用される断熱材の場合、好ましい断熱性、曲げ強度および圧縮強度を付与せしめるためには、シートのような薄いものよりも、通常の板状物のように厚さのあるものが好ましく、通常10〜150mm、好ましくは20〜100mmである。
【0107】
本発明のスチレン系樹脂発泡体の密度は、軽量でかつ優れた断熱性および曲げ強度、圧縮強度を付与するためには、15〜50kg/m3、さらには20〜50kg/m3であることが好ましく、25〜35kg/m3であることがより好ましい。密度が15kg/m3未満であると、圧縮強度など機械的特性が低下する傾向があり、50kg/m3を超えると、断熱性が低下する傾向があるとともに、軽量とは言い難くなり、取り扱いが困難となる。
【実施例】
【0108】
次に、本発明のスチレン系樹脂発泡体を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに制限されるものではない。なお、特に断らない限り、「%」は「重量%」を表わす。
【0109】
実施例および比較例では、下記の化合物を用いた。
A:スチレン系樹脂
A−1:ポリスチレン(PSジャパン(株)製G9401)
B:ハロゲン系難燃剤
B−1:テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)(帝人化成(株)製ファイヤガード3100)
B−2:デカブロモジフェニルオキサイド(東ソー(株)製フレームカット110R)
B−3:トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート(日本化成(株)製TAIC−6B)
B−4:ヘキサブロモシクロドデカン(ALBEMARLE CORPORATION製SAYTEX HP−900)
C:Fe化合物
C−1:酸化鉄(Fe23、和光純薬工業(株)製試薬)
D:含燐化合物
D−1:トリフェニルホスフェート(大八化学工業(株)製TPP)
E:含窒素化合物
E−1:イソシアヌル酸(四国化成(株)製ICA−P)
F:発泡剤;炭化水素およびハロゲン化炭化水素の群から選ばれる化合物であって、かつ、オゾン破壊係数が0の1種以上の化合物
F−1:プロパン(イワタニ(株)製無臭プロパン)
F−2:イソブタン(三井化学(株)製イソブタン)
F−3:HFC−134a(ダイキン工業(株)製HFC−134a)
G:その他の発泡剤
G−1:ジメチルエーテル(三井化学(株)製ジメチルエーテル)
G−2:水(摂津市水道水)
H:その他の添加剤
H−1:タルク(林化成(株)製タルカンパウダー)
H−2:ステアリン酸バリウム(堺化学工業(株)製ステアリン酸バリウム)
H−3:ベントナイト((株)ホージュン製ベンゲルブライト11、約1%のFe23を含有)
H−4:AEROSIL(日本アエロジル(株)製、AEROSIL)
H−5:安定剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製IRGANOX B911(ヒンダードフェノール系抗酸化剤IRGANOX1076:オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとリン系安定剤IRGAFOS168:トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトの1:1の混合物)
【0110】
得られた発泡体に対する評価・測定方法は、以下のとおりである。
【0111】
(1)発泡体厚さ
異なる時間にサンプルングしたスチレン系樹脂押出発泡体の3つのサンプルについて、幅方向の中央の厚さ(単位mm)を測定し、平均値を算出した。
【0112】
(2)発泡体密度
スチレン系樹脂押出発泡体を約200mm×100mm×25mmの直方体に切り出した後、この重量を測ると共に、ノギスで縦、横および高さの寸法を測定し、発泡体密度を、式:
発泡体密度(g/cm3)=発泡体重量(g)/発泡体体積(cm3
に基づいて求め、単位を(kg/m3)に換算して示した。
【0113】
(3)熱伝導率
スチレン系樹脂押出発泡体の熱伝導率をJIS A9511に準じて測定した。測定には、英弘精機製HC−074を用い、押出発泡体から約300mm×100mm×25mmの直方体試験片を3個切り出し、これを並べて300mm×300mm×25mmの形としてHC−074にセットし測定した。なお、試験片切り出し後、30日経過した発泡体について行なった。
【0114】
(4)気泡径
ソニック製デジタルマイクロスコープBS−D8000を用いて、スチレン系樹脂押出発泡体の厚さ方向断面の200倍に拡大した画像をパソコンに取り込んだ。この画像をA3用紙にプリントアウトし、任意の2箇所に厚さ方向に実寸法で1mm相当の直線を引き、それぞれこの直線を横切る気泡の数を数え、それぞれの箇所での厚さ方向の気泡径を次の式に従って算出した。
気泡径=直線の長さ1mm/直線を横切る気泡の数
次いで、2箇所の気泡径の値を相加平均して、厚さ方向の気泡径とした。
同様に、スチレン系樹脂発泡体の幅方向、長さ方向についてそれぞれ気泡径を求め、3方向の相加平均を気泡径とした。
【0115】
但し、小気泡と大気泡が混在したスチレン系樹脂発泡体については、以下のように、小気泡径と大気泡径を別々に測定した。
小気泡径:スチレン系樹脂押出発泡体の厚さ方向断面を200倍に拡大した写真において、海島構造での海部分の任意の2箇所に厚さ方向に実寸法で1mm相当の直線を引き、それぞれこの直線を横切る気泡の数を数え、それぞれの箇所での厚さ方向の気泡径を次の式に従って算出した。
小気泡径=直線の長さ1mm/直線を横切る気泡の数
次いで、2箇所の小気泡径の値を相加平均して、厚さ方向の小気泡径とした。
同様に、スチレン系樹脂発泡体の幅方向、長さ方向についてそれぞれ気泡径を求め、3方向の相加平均を小気泡径とした。
大気泡径:スチレン系樹脂押出発泡体の厚さ方向断面を50倍に拡大した写真において、海島構造中に点在する島部分の厚さ方向の長さを10点無作為に選び、それぞれの島について厚さ方向の最大長さを測定し、相加平均することにより厚さ方向の大気泡径を求めた。同様に、スチレン系樹脂発泡体の幅方向、長さ方向についてそれぞれ気泡径を求め、3方向の相加平均を大気泡径とした。
【0116】
(5)小気泡面積率
小気泡と大気泡が混在したスチレン系樹脂発泡体について、厚さ方向断面での気泡径0.25mm以下の小気泡の発泡体断面積あたりの占有面積比を、以下のようにして求めた。ここで、気泡径0.25mm以下の小気泡とは、円相当直径が0.25mm以下の気泡とする。
(a)発泡体の厚さ方向断面を、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製、S−450)を用いて30倍に拡大して写真撮影する(写真の大きさは100mm×90mm)。
(b)撮影した写真の上にOHPシートを置き、その上に厚さ方向の径が7.5mmよりも大きい気泡(実寸法が0.25mmより大きい気泡に相当する)に対応する部分を黒インキで塗りつぶして写しとる(一次処理)。
(c)画像処理装置((株)ピアス製、PIAS−II)に一次処理画像を取り込み、濃色部分と淡色部分を、即ち黒インキで塗られた部分か否かを識別する。
(d)濃色部分のうち、直径7.5mm以下の円の面積に相当する部分、すなわち、厚さ方向の径は長いが、面積的には直径7.5mm以下の円の面積にしかならない部分を淡色化して、濃色部分の補正を行なう。
(e)画像解析計算機能中の「FRACTAREA(面積率)」を用い、画像全体に占める気泡径7.5mm以下(濃淡で分割した淡色部分)の面積比を次式により求める。
小気泡占有面積率(%)=(1−濃色部分の面積/画像全体の面積)×100
(6)燃焼性
スチレン系樹脂発泡体の燃焼性をJIS A9511測定方法Aに準じて、厚さ10mm、長さ200mmおよび幅25mmの試験片を用い、以下の基準で評価した。測定は製造後、前記寸法に切削した後、7日経過した発泡体について行った。
(a)燃焼時間
◎:消炎時間が5本すべて3秒以内となる。
○:消炎時間が5本のうち、少なくとも1本は3秒を超えるが、残りの3本以上は3秒以内となる。
△:消炎時間が5本のうち、少なくとも3本は3秒を超えるが、残りの1本以上は3秒以内となる。
×:消炎時間が5本すべて3秒を超える。
(b)燃焼距離
◎:5本全てで限界線以内で停止する。
○:5本のうち、少なくとも1本は燃焼が限界線をこえるが、残りの3本以上は限界線以内で燃焼が停止する。
△:5本のうち、少なくとも3本は燃焼が限界線を越えるが、残りの1本以上は限界線以内で燃焼が停止する。
×:5本全てで燃焼が限界線をこえる。
(c)燃焼状況
◎:発泡剤の燃焼が全く見られない。
○:発泡剤の燃焼が若干見られる。
△:発泡剤の燃焼が見られるが、全焼には至らない。
×:発泡剤の燃焼が見られ、全焼する。
【0117】
(7)耐熱性
100mm×100mm×25mmの直方体状に切り出したスチレン系樹脂発泡体を恒温恒湿室(気温25℃および湿度50%)にて2週間養生した後、80℃のオーブンで24時間加熱し、その前後の体積変化を次のように求め、判定した。なお、体積は、直方体サンプルの縦、横および高さの寸法をノギスで測定して算出した。
耐熱性は以下の式を用い基準で評価した。
体積変化率=[(オーブン加熱後のサンプル体積÷オーブン加熱前のサンプル体積)−1]×100 (%)
○:体積変化率が30%未満である。
×:体積変化率が30%以上である。
【0118】
(8)成形性
得られたスチレン系樹脂押出発泡体の観察および押出時の臭いから、以下の基準で評価した。
○:きれいな押出発泡体が得られ、押出時に不快な臭いもなかった。
×:押出発泡体に茶色あるいは黒色に焼けたような部分があり、押出時に分解発生物によると思われる不快な臭気があった。
【0119】
(9)鉄の定量
スチレン系樹脂発泡体試料約0.1gをPTFE製加圧容器に精秤し、硫酸1.5mlを加え、マイルストーンゼネラル社製マイクロウェーブ分解装置MLS−1200MEGAを用いて予備分解を行い、いったん冷却後、硝酸3mlを追加し、さらに分解した。この分解液を50mlに定容し、横河アナリティカルシステムズ製HP−4500を用いて、分解液をICP−MS法で定量分析した。なお、クールプラズマ条件下、Coを内部標準物質に用いて絶対検量線法で測定した。
【0120】
(10)5%熱重量減少温度測定
(株)島津製作所製、DTG−50を用い、昇温速度10℃/分で窒素下の5%重量減少温度を測定した。なお、試料は約3.5mg、窒素気流50ml/分、対照はAl23とした。
【0121】
(参考例)
表1に、5%熱重量減少温度を測定した結果を示す。表1には、ハロゲン系難燃剤単独の5%重量減少温度を示すと共に、以下の内容に従って○×を記載した。
○:ハロゲン系難燃剤/酸化鉄を330/1の重量比で混合した混合物の5%重量減少温度の、同条件で測定したハロゲン系難燃剤単独の5%重量減少温度に対する低下温度幅が10℃以上であった場合
×:ハロゲン系難燃剤/酸化鉄を330/1の重量比で混合した混合物の5%重量減少温度の、同条件で測定したハロゲン系難燃剤単独の5%重量減少温度に対する低下温度幅が10℃未満であった場合
【0122】
【表1】

【0123】
(実施例1)
スチレン系樹脂(A−1)100部に対して、ハロゲン系難燃剤としてテトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)(B−1)5部、さらにタルク(H−1)0.5部、ステアリン酸バリウム(H−2)0.25部、安定剤(H−5)0.3部とからなる混合物をドライブレンドし、得られた混合物を口径65mmと口径90mmのものを縦に連結した押出機へ約70kg/hrの割合で供給した。前記口径65mmの押出機に供給した混合物を、200℃に加熱して混練し、口径65mmの押出機に連結された口径90mmの押出機で冷却し、さらに口径90mmの押出機に連結された冷却機にて樹脂温度を120℃に冷却し、該冷却機の先端に設けた厚さ方向2mm、幅方向50mmの長方形断面の口金より大気中へ押し出し、直方体状の押出発泡体を得た。得られた発泡体の密度は28kg/m3であった。
【0124】
この際、発泡剤として、プロパン(F−1)50%およびジメチルエーテル(G―1)50%からなる発泡剤をスチレン系樹脂100部に対して8部となるように、前記口径65mmの押出機の押出方向の先端付近から前記樹脂中に圧入した。
【0125】
得られた押出発泡体の特性を表2に示す。
【0126】
(実施例2〜11)
ハロゲン系難燃剤(B)、Fe化合物として酸化鉄(C)、発泡剤(F)、その他の発泡剤(G)、その他添加剤(H)の種類および添加量を表1に示す値とした以外は実施例1と同様にして発泡体を得た。なお、Fe化合物として酸化鉄(C)を用いる場合は、ドライブレンドする際にハロゲン系難燃剤(B)、その他添加剤(H)と共に添加した。
【0127】
得られた押出発泡体の特性を表2に示す。
【0128】
(比較例1〜2)
ハロゲン系難燃剤(B)、Fe化合物として酸化鉄(C)、発泡剤(F)、その他の発泡剤(G)、その他添加剤(H)の種類および添加量を表1に示す値とした(Fe含有量を増加させた)以外は、実施例2と同様にして発泡体を得た。
【0129】
【表2】

【0130】
本発明の実施例である実施例1〜11と比較例1〜2を比較して明らかなように、本発明によれば、良好な難燃性が発現することが判る。
【0131】
また、実施例1と実施例2の比較、あるいは実施例6と実施例7の比較より、Fe量が少なすぎると難燃性が低下傾向となり、逆にFe含有量を最適化すればハロゲン系難燃剤の量を減らしても難燃性が向上することがわかる。
【0132】
さらに、実施例1〜5と比較例1、実施例11と比較例2の比較から、Fe含有量が多すぎてもかえって難燃性が低下することが判る。
【0133】
(実施例12)
スチレン系樹脂(A−1)100部に対して、ハロゲン系難燃剤としてテトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)(B−1)6部、含燐化合物としてトリフェニルホスフェート(D−1)1部、さらにタルク(H−1)0.5部、ステアリン酸バリウム(H−2)0.25部および安定剤(H−5)0.3部とからなる混合物をドライブレンドし、得られた混合物を口径65mmの押出機と口径90mmの押出機を縦に連結した押出機へ約70kg/hrの割合で供給した。前記口径65mmの押出機に供給した混合物を、200℃に加熱して混練し、口径65mmの押出機に連結された口径90mmの押出機で冷却し、さらに口径90mmの押出機に連結された冷却機で樹脂温度を120℃に冷却し、該冷却機の先端に設けた厚さ方向2mmおよび幅方向50mmの長方形断面の口金より大気中へ押し出し、直方体状の押出発泡体を得た。得られた発泡体の密度は30kg/m3であった。
【0134】
この際、発泡剤として、プロパン(F−2)67%およびジメチルエーテル(G―1)33%からなる発泡剤をスチレン系樹脂100部に対して6部となるように、前記口径65mmの押出機の押出方向先端付近から前記樹脂中に圧入した。
【0135】
得られた押出発泡体の特性を表3に示す。
【0136】
(実施例13〜21)
ハロゲン系難燃剤(B)、Fe化合物として酸化鉄(C)、含燐化合物(D)、発泡剤(F)、その他の発泡剤(G)、その他添加剤(H)の種類および添加量を表2に示す値とした以外は、実施例12と同様にして発泡体を得た。なお、Fe化合物として酸化鉄(C)を用いる場合は、ドライブレンドする際にハロゲン系難燃剤(B)、含燐化合物(D)、その他添加剤(H)とともに添加した。
【0137】
得られた押出発泡体の特性を表3に示す。
【0138】
(比較例3〜5)
ハロゲン系難燃剤(B)、Fe化合物として酸化鉄(C)、含燐化合物(D)、発泡剤(F)、その他の発泡剤(G)、その他添加剤(H)の種類および添加量を表3に示す値とした(Fe含有量を増加させた)以外は、実施例13と同様にして発泡体を得た。
【0139】
【表3】

【0140】
本発明の実施例である実施例12〜21と比較例3〜5を比較して明らかなように、本発明によれば、良好な難燃性、耐熱性が発現することが判る。
【0141】
また、実施例12と実施例13の比較より、Fe量が少なすぎると難燃性が低下傾向となり、逆にFe含有量を最適化すればハロゲン系難燃剤の量を減らしても難燃性が向上することがわかる。
【0142】
さらに、実施例12〜16と比較例3の比較、実施例18〜実施例20と比較例4の比較、実施例21と比較例5の比較から、Fe含有量が多すぎてもかえって難燃性が低下することが判る。
【0143】
(実施例22)
スチレン系樹脂(A−1)100部に対して、ハロゲン系難燃剤としてテトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)(B−1)6部、含燐化合物としてトリフェニルホスフェート(D−1)1部、さらにタルク(H−1)0.2部、ステアリン酸バリウム(H−2)0.25部、ベントナイト(H−3)0.2部、AEROSIL(H−4)0.2部、安定剤(H−5)0.3部とからなる混合物をドライブレンドし、得られた混合物を口径65mmと口径90mmのものを縦に連結した押出機へ約70kg/hrの割合で供給した。前記口径65mmの押出機に供給した混合物を、200℃に加熱して混練し、これに連結された口径90mmの押出機で冷却し、さらにこれに連結された冷却機で樹脂温度を120℃に冷却し、この冷却機の先端に設けた厚さ方向2mm、幅方向50mmの長方形断面の口金より大気中へ押し出し、直方体状の押出発泡体を得た。得られた発泡体の密度は32kg/m3であった。
【0144】
この際、発泡剤として、プロパン(F−2)57%、ジメチルエーテル(G―1)29%および水(G−2)14%からなる発泡剤をスチレン系樹脂100部に対して7部となるように、前記口径65mmの押出機の先端付近(口径90mmの押出機の口金と反対側の端部側に接続される側の端部)から前記樹脂中に圧入した。
【0145】
得られた押出発泡体の特性を表4に示す。
【0146】
(実施例23〜33)
ハロゲン系難燃剤(B)、Fe化合物として酸化鉄(C)、含燐化合物(D)、含窒素化合物(E)、発泡剤(F)、その他の発泡剤(G)、その他添加剤(H)の種類および添加量を表4に示す値とした以外は、実施例22と同様にして発泡体を得た。なお、Fe化合物として酸化鉄(C)、含窒素化合物(E)を用いる場合は、ドライブレンドする際にハロゲン系難燃剤(B)、含燐化合物(D)、その他添加剤(H)と共に添加した。
【0147】
得られた押出発泡体の特性を表4に示す。
【0148】
(比較例12〜17)
ハロゲン系難燃剤(B)、Fe化合物として酸化鉄(C)、含燐化合物(D)、含窒素化合物(E)、発泡剤(F)、その他の発泡剤(G)、その他添加剤(H)の種類および添加量を表4に示す値とした(Fe含有量を増加させた)以外は実施例23と同様にして発泡体を得た。
【0149】
【表4】

【0150】
本発明の実施例である実施例22〜33と比較例6〜8を比較して明らかなように、本発明によれば、良好な難燃性、耐熱性が発現することが判る。
【0151】
また、実施例22と実施例23の比較より、Fe量が少なすぎると難燃性が低下傾向となり、逆にFe含有量を最適化すればハロゲン系難燃剤の量を減らしても難燃性が向上することがわかる。
【0152】
さらに、実施例22〜26と比較例6の比較、実施例28〜実施例30と比較例7の比較、実施例29と比較例8の比較から、Fe含有量が多すぎてもかえって難燃性が低下することが判る。
【0153】
一方、小気泡と大気泡の混在した発泡体においては、熱伝導率の低い、すなわち断熱性に優れたスチレン系樹脂発泡体が得られることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン系難燃剤を含むスチレン系樹脂組成物を発泡剤と共に押出発泡してなるスチレン系樹脂発泡体であって、スチレン系樹脂発泡体中に、10〜2000ppmのFe元素を含有することを特徴とするスチレン系樹脂発泡体。
【請求項2】
前記スチレン系樹脂発泡体中に、30〜1000ppmのFe元素を含有することを特徴とする請求項1記載のスチレン系樹脂発泡体。
【請求項3】
前記Fe元素が、酸化鉄に由来することを特徴とする請求項1または2記載のスチレン系樹脂発泡体。
【請求項4】
前記スチレン系樹脂100重量部に対して、ハロゲン系難燃剤を0.1〜20重量部含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体。
【請求項5】
前記ハロゲン系難燃剤が、該ハロゲン系難燃剤とFe化合物とを混合して測定した窒素下5%重量減少温度(昇温速度10℃/分)が、該ハロゲン系難燃剤のみで同条件で測定した窒素下5%重量減少温度(昇温速度10℃/分)よりも低下するハロゲン系難燃剤であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体。
【請求項6】
前記ハロゲン系難燃剤が、該ハロゲン系難燃剤のみで測定した窒素下5%重量減少温度(昇温速度10℃/分)が250℃以上のハロゲン化脂肪族基含有化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体。
【請求項7】
前記ハロゲン系難燃剤が、ヘキサブロモシクロドデカンおよび/またはテトラブロモシクロオクタンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体。
【請求項8】
前記ハロゲン系難燃剤が、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートおよび/またはテトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体。
【請求項9】
発泡体を形成する気泡が、主として気泡径0.25mm以下の気泡と気泡径0.3〜1mmの気泡より構成されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体。
【請求項10】
発泡体を形成する気泡の内、気泡径0.25mm以下の気泡が発泡体断面積あたり5〜95%の占有面積率を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体。
【請求項11】
発泡剤が、炭素数が3〜5である飽和炭化水素およびハイドロフルオロカーボンからなる群より選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載のスチレン系樹脂発泡体。
【請求項12】
ハロゲン系難燃剤を含むスチレン系樹脂組成物を発泡剤と共に加熱溶融させ、低圧域に押出発泡するスチレン系樹脂発泡体の製造方法であって、スチレン系樹脂発泡体中に、10〜2000ppmのFe元素を含有させて、押出発泡することを特徴とするスチレン系樹脂発泡体の製造方法。

【公開番号】特開2006−22285(P2006−22285A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203875(P2004−203875)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】