説明

スチレン系重合体の製造装置および製造方法

【課題】樹脂中に残留する溶媒、単量体及びオリゴマーを低減させ、成形性、熱安定性に優れ且つ黄色化の少ないスチレン系重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】スチレン系重合体の重合溶液を温度が100〜300℃、圧力が6.5Pa〜100kPaの加熱減圧下で重力落下を利用し支持体に沿わせ落下させながら重合溶液中の溶媒及び/または単量体及び/又はオリゴマーを除去する。支持体としては、ワイヤー状、ワイヤー状の材料を組み合わせたチェーン状や格子状(金網状)、ワイヤー状の材料をいわゆるジャングルジムのように連結した立体格子状、平坦あるいは曲率を有した薄板状、多孔板状、及び規則充填体あるいは不規則充填体を積み重ねた充填塔状などを用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン系重合体の製造方法及び製造装置に関し、さらに詳しくは、重合によって得られたスチレン系重合溶液を、温度が100〜300℃、圧力が0.5Pa〜50KPaの加熱減圧下に置きながら重力落下を利用して支持体に沿わせて落下させながら溶媒及び/又は単量体及び/又はオリゴマーを極めて効率よく脱揮することを可能とした成形性、熱安定性に優れ且つ黄色化の少ないスチレン系重合体の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からスチレン系樹脂は、種々の成形法、例えば射出成形、押出成形、中空成形、真空成形、注入成形等の方法によって成形され、家庭電気器具、事務機器、家庭用品、包装容器、玩具等に幅広く用いられている。 工業的に利用されているスチレン系樹脂は主として熱重合または開始剤を用いたラジカル重合法により製造されている。主な製造プロセスには塊状重合法、溶液重合法及び懸濁重合法があるが、分散剤等の不純物が混入しにくいことや、コスト的に有利なことから溶液重合法が主流となっている。
【0003】
しかしながら、これら熱開始あるいは過酸化物開始剤等のいずれの方法を用いたラジカル重合でも、重合反応が100%完結しない為、重合直後のポリマー溶液には未反応単量体が多量に残っている。
さらに、これらのスチレン系単量体のラジカル重合では、一般に多種多様のオリゴマーの生成を伴い、又、スチレン系単量体も重合体中に残存し易いことは良く知られている。
【0004】
例えば、非特許文献1によれば、100℃以上の熱重合では、スチレンダイマー、スチレントリマー等のオリゴマーの副生を伴い、その量は約1重量%程度になるとされている。
具体的なオリゴマー成分としては、1−フェニル−4−(1'−フェニルエチル)テトラリン、1,2−ジフェニルシクロブタン、2,4−ジフェニル−1−ブテン、2,4,6−トリフェニル−1−ヘキセン等が存在するとされている。
塊状重合又は溶液重合プロセスは通常80〜180℃で重合を行い、次いで重合溶液に含まれる溶媒や未反応単量体の大部分は、回収工程で脱揮処理される。
回収された溶媒や未反応単量体等はリサイクルされるが、一部の単量体やダイマー、トリマーといったオリゴマーは揮発しにくく、一部製品樹脂中に残存する。
【0005】
このようにして製造されたスチレン系樹脂を分析すると、未反応の単量体、溶媒、オリゴマー以外に単量体や溶媒由来の不純物及び重合中の副反応物、重合体の分解物が含まれていた。
具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、n−プロピルスチレン、n−プロピルベンゼン、iso−プロピルベンゼン、1,3−ジフェニル−1−ブテン、1,2−ジフェニルシクロブタン、1−フェニルテトラリン、2,4,6−トリフェニル−1−ヘキセン、1,3,5−トリフェニルベンゼン、1−フェニル−4−(1'−フェニルエチル)テトラリン等がこのようなスチレン系樹脂に含まれることが判った。
【0006】
この様なスチレン系樹脂中の単量体やオリゴマーは、熱安定性の低下を招いたり、射出成形時に油状物質として金型や成形品に付着して成形性の低下を招くことがある。
さらに、スチレン系樹脂中の単量体やオリゴマーは、成形品の内部から表面へ浸透する為に、成形品の印刷面が剥離しやすいといった問題がある。
【0007】
一方、有機金属化合物を開始剤に用いたアニオン重合やカチオン重合によるスチレン系単量体の重合法も公知である(例えば、非特許文献2参照)。中でもアニオン重合法は、移動反応、停止反応が極めて起こりにくいリビング重合となるため、重合反応は実質的にモノマーが存在する限り継続し、製品中の未反応単量体を大幅に低減させることが可能となる。しかし、一般にアニオン重合は溶液重合法によって行われる為、重合後に脱揮ドラムや脱揮タンク、脱揮押出機等で重合溶媒を減圧脱揮する事によって除かれる。この工程において、過大な熱履歴がスチレン系重合体に与えられると、熱分解等により、スチレン系単量体やダイマー、トリマーといったオリゴマーが新たに生成する。
【0008】
特許文献1〜3には有機金属開始剤によるスチレン系単量体のアニオン重合法が提案されている。
これらは、攪拌機を有する反応槽に原料を連続的に導入し、反応生成混合物を同速度で取りだし、生成重合体の分子量を測定して、開始剤等の流量を制御することにより、一定分子量の重合体が得られるとしている。しかしながら、得られた重合体中のオリゴマー量に関する開示あるいは示唆は全くなされていない。重合溶媒や残モノマーを除去する装置として脱揮押出機が用いられるが脱揮押出機は、蒸発面積を多くするためにはスクリューを長くする必要があることやスクリュー部等からのエアーリークやポリマー溶液の突沸が起こり易く減圧配管が閉塞する等のトラブルが発生するため100Pa以下に減圧できない欠点がある。
【0009】
【非特許文献1】Encyclopedia of Chemical Technology,Kirk-Othmer,Third Edition,JohnWily & Sons,21,817頁
【非特許文献2】Journal of Organometallic Chemisty.,10(1967)1-6)
【特許文献1】米国特許第4725654号明細書
【特許文献2】米国特許第4572819号明細書
【特許文献3】特公平6−17409号公報
【特許文献4】特開平7−292188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
すなわち、本発明は従来のスチレン系樹脂では達成出来ない、製品中の残留溶媒量や残留モノマー量を低減させ、成形性、熱安定性に優れ且つ印刷性といった2次加工性にも優れたスチレン系樹脂の製造法を提供する事を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ラジカル重合や有機金属開始剤を用いてアニオン重合させて得られたポリスチレン系の重合溶液を、特定の条件下で、重合溶液を減圧脱揮させることにより、アニオン重合の特徴を損なうことなく、製品中の残溶媒、残モノマー量を著しく低減出来、成形性、熱安定性に優れ、且つ黄色化の少ないスチレン系樹脂が得られるという驚くべき事実に基づいてなされたものである。すなわち、支持体に沿わせて重合溶液を落下させながら減圧脱揮を行なうため、揮発面積を大きく取れ、駆動部がギヤポンプなどの一部の駆動部のみであるので、機内の圧力を100Pa以下にすることができ、重合溶媒やモノマーの残留量を1000ppm以下にすることを可能としたものである。
【0012】
本発明は、下記(1)〜(5)に記載するとおりのスチレン系重合体の製造装置及び製造方法である。
(1)スチレン系重合体の重合溶液を、加熱減圧下で重力を利用して支持体に沿わせて流下させることにより、該重合溶液中に含まれる溶媒及び/又は単量体及び/又はオリゴマーを脱揮して除去することを特徴とするスチレン系重合体の製造方法。
(2)スチレン系重合体の重合溶液の温度が100〜300℃、系内の温度が100〜300℃、系内の圧力が6.5Pa〜100kPaである条件下でスチレン系重合体の重合溶液を支持体に沿わせて流下させることを特徴とする上記(1)記載のスチレン系重合体の製造方法。
(3)スチレン系重合体の重合溶液がリビング重合法によって得られた重合溶液であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載のスチレン系重合体の製造方法。
(4)重合溶液が重合溶媒として沸点が60〜150℃である溶媒を用いた重合溶液であることを特徴とする上記(1)〜(3)に記載のスチレン系重合体の製造方法。
(5)重合溶液が、スチレン、α−メチルスチレン及びp−メチルスチレンよりなる群から選ばれた少なくとも一種のモノマーの単独重合体又は共重合体の重合溶液であることを特徴とする上記(1)〜(4)に記載のスチレン系重合体の製造方法。
(6)スチレン系重合体の重合溶液を重力の作用で流下させる支持体と、系内を加熱かつ減圧する手段とを具えてなり、スチレン系重合体の重合溶液を加熱減圧下で該支持体を流下させることによって該重合溶液中に含まれる溶媒及び/又は単量体及び/又はオリゴマーを脱揮して除去するようにしたスチレン系重合体の製造装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法によって得られたスチレン系樹脂は、製品中の溶媒量及びモノマー量の合計量が1000ppm以下であり、成形性及び熱安定性等優れた2次加工性が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
まず、図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
尚、本発明において、重合溶液とは、重合後のポリマーを融点や軟化点以上に加熱して溶融状態にしたもの、あるいは重合後のポリマーを少量の溶媒に溶かして溶液状としたもの、あるいは両方に相当するものも含むものである。
【0015】
図1は本発明の、溶媒脱揮装置の概略を示した全体の断面図である。図2は、本発明の溶媒脱揮装置を第一、第二溶媒脱揮工程に用いたフロー図である。図3は、第一溶媒脱揮工程にフラッシュタンク方式の溶媒脱揮装置を、第二溶媒脱揮装置に本発明の溶媒脱揮装置を用いたフロー図である。図4は、第一溶媒脱揮工程に脱揮押出機方式の溶媒脱揮装置を、第二溶媒脱揮装置に本発明の溶媒脱揮装置を用いたフロー図である。図1の点線部は、本発明の溶媒脱揮装置を1基用いたときの例である。
【0016】
図1と図2で本発明の装置を用いたポリマー重合溶液中の残留溶媒等の溶媒除去方法について説明する。重合器からギヤポンプ14等を用いてポリマー重合溶液が排出されミキサー26で、重合を停止するための停止剤やポリマーの安定剤などが添加混合された後、ポリマーヒーター21で予熱され、熱媒、ヒーター等で100〜280℃に加熱されたポリマー供給配管5、ポリマー入り口配管4、上部フランジ20とポリマー分散板7の間を通過しポリマー分散多孔板8に開けられたポリマー通過孔19を通り真空ポンプなどで減圧され、熱媒、ヒーター等で100〜280℃に加熱された本発明の第一溶媒脱揮装置の支持体上へと供給される。
【0017】
ポリマー重合溶液中の残留溶媒の溶媒除去は、本発明の第一溶媒脱揮装置へ入るとほとんど同時に始まり支持体上をポリマーがゆっくり落下しながら表面更新が繰り返されることでポリマー中の残留溶媒等は、除去されながら第一溶媒脱揮装置のボトムに到達する。除去された溶媒等は、ガス出口、熱交換器との連結配管10を経由し熱交換器12で凝縮回収され、回収溶媒等の送液ポンプ13で溶媒、モノマー精製工程へと送られる。
【0018】
第一脱溶媒装置のボトムに到達した残留溶媒等を含有するポリマーは、ギヤポンプ14で予め熱媒、ヒーター等で熱媒、ヒーター等で150〜280℃に加熱された第二溶媒脱揮装置へと送られる。ギヤポンプと第二溶媒脱揮装置の間には、ポリマーヒーター22が設けられ、第二溶媒脱揮装置へ供給される前に予熱される。予熱されたポリマーはポリマー供給配管5、ポリマー入り口配管4、上部フランジ20とポリマー分散板7の間を通過しポリマー分散多孔板8に開けられたポリマー通過孔19を通り真空ポンプなどで減圧された本発明の第二溶媒脱揮装置の支持体上へと供給される。
【0019】
ポリマー中の残留溶媒等の除去は、本発明の第二溶媒脱揮装置へ入るとほとんど同時に始まり金網上をゆっくり落下しながら表面更新が繰り返されポリマー中の溶媒等は、ポリマー中から除去されながら第二溶媒脱揮装置のボトムに到達する。除去された溶媒等は、ガス出口、熱交換器との連結配管10を経由し熱交換器12で凝縮回収され、回収溶媒等の送液ポンプ13で溶媒、モノマー精製工程へと送られる。
第二脱溶媒装置のボトムに到達したポリマーは、ギヤポンプまたはスクリューポンプ等で造粒工程へと送られペレット化される。このようにして、ペレット中の残留溶媒等の含有量が1000ppm以下のスチレン系樹脂のペレットが得られる。
【0020】
本発明の溶媒脱揮装置の、最大の特徴は、支持体上をポリマーがゆっくり表面更新を繰り返しながら落下するため、減圧下での滞留時間が長く取れ、且つポリマー中の残留溶媒等を除去するための蒸発面積が多く取れ、ペレット中の残留溶媒等を1000ppm以下に出来ることである。特に、高沸点の溶媒、モノマーの除去に好適である。
【0021】
本発明の残留溶媒等及び回収溶媒等とは、重合に使用される溶媒とモノマーを含んだ溶液のことを指す。
本発明の第二溶媒脱揮装置に送られるポリマー中の残留溶媒等の含量が30000ppm以下の場合には、第二溶媒脱揮装置に入る前に設けられるポリマーヒーター22は、残留溶媒等が除去されるときにポリマーから奪われる熱量が小さいため不要となる。
【0022】
本発明のポリマー分散用多孔板とは、複数の貫通孔がある板状体である。多孔板の厚みは特に限定されるものではないが、通常0.1〜300mm、好ましくは1〜200mm、さらに好ましくは5〜150mmの範囲である。多孔板は、ポリマー供給圧力に耐えると共に、金網などの支持体が多孔板に固定されている場合には、支持体及び落下するポリマーの重量を支えるための強度が必要であり、リブ等によって補強されていることも好ましい。
【0023】
多孔板の孔は、通常、円状、長円状、三角形状、スリット状、多角形状、星形状などの形状から選ばれる。孔の断面積は、通常、0.01〜100cmであり、好ましくは0.05〜10cmであり、特に好ましくは0.1〜5cmの範囲である。また、孔に接続するノズル等を備えることも含む。孔と孔との間隔は、孔の中心と中心の距離で通常、1〜500mmであり、好ましくは25〜100mmである。多孔板の孔は、多孔板を貫通させた孔であっても、多孔板に管を取り付けた場合でもよい。また、テーパー状になっていてもよい。ポリマーが多孔板を通過する際の圧力損失が、0.1〜50kg/cmである様に孔の大きさや形状を決めることが好ましい。多孔板の材質は、通常、ステンレススチール製、カーボンスチール製、ハステロイ製、ニッケル製、チタン製、クロム製、及びその他の合金製等の金属材質が好ましい。
【0024】
また、多孔板より上流側のポリマー流路にフィルターを設けることが好ましい。フィルターにより、多孔板の孔を閉塞する異物を除去可能となる。フィルターの種類は、多孔板の孔径以上の異物を除去でき、且つ、ポリマーの通過によって破損しないよう適宜選定する。
【0025】
このような多孔板を通じてポリマー吐出させる方法としては、液ヘッドまたは自重で落下させる方法、またはポンプなどを使って加圧して押し出す方法等が挙げられるが、落下するポリマー量の変動を抑えるためにギヤポンプなどの計量能のあるポンプを用いることが好ましい。
多孔板の孔の数に特に制限はなく、溶媒脱揮温度や圧力、ポリマー流量などの条件等によっても異なるが、通常ポリマーを例えば100kg/hr製造する際、5〜10個の孔が必要である。
【0026】
多孔板の孔から吐出させたポリマーは、支持体に沿わせて落下させながら減圧下にて脱溶媒が行なわれる。この際、生成した泡が瞬時にはじけない程度に発泡する部分があることが好ましく、特に支持体に沿わせて落下させた下部が発泡していることが望ましい。支持体としては、ワイヤー状、ワイヤー状の材料を組み合わせたチェーン状や格子状(金網状)、ワイヤー状の材料をいわゆるジャングルジムのように連結した立体格子状、平坦あるいは曲率を有した薄板状、多孔板状、及び規則充填体あるいは不規則充填体を積み重ねた充填塔状などが挙げられる。
【0027】
残留溶媒等を効率的に抜き出すためには、落下させるポリマーの表面積を大きくすることが好ましいので、支持体形状としてはワイヤー状、チェーン状、格子状、立体格子状が好ましい。また、残溶媒等を更に効率的に抜き出すためには、表面積を大きくすると共に、ポリマーの落下方向に対して凹凸のある支持体に沿わせて落下させることによって攪拌と表面更新を積極的に起こさせることが特に好ましく、このため、支持体構造としてはチェーン状、立体格子状や、ポリマーの落下方向に対して凹凸のあるワイヤー状のものなどの、ポリマーの落下を邪魔する構造体のある支持体が特に好ましい。もちろん、これらの支持体を組み合わせて用いることも好ましい一つの方法である。
【0028】
なお、ここでワイヤー状とは、断面の外周の平均長さに対する該断面と垂直方向の長さの比率が非常に大きい材料を表すものである。断面の面積に特に制限はないが、通常10-3〜102cm2の範囲であり、好ましくは10-2〜101cm2の範囲であり、特に好ましくは10-1〜1cm2の範囲である。断面の形状に特に制限はなく、通常、円状、長円状、三角形状、四角形状、多角形状、星形状などの形状から選ばれる。断面の形状は長さ方向に同一であるもの、異なっているもののいずれも含む。また、ワイヤーは中空状のものも含む。ワイヤーは、針金状等の単一なものも、捩り合わせる等の方法によって複数組み合わせたものも含む。ワイヤーの表面は平滑なもの、凹凸があるもの、部分的に突起等を有するものなどが挙げられる。ワイヤーの材質に特に制限はないが、通常、ステンレススチール、カーボンスチール、ハステロイ、チタン等の中から選ばれる。また、ワイヤーは、メッキ、ライニング、不働態処理、酸洗浄等必要に応じて種々の表面処理がなされている場合も含む。
【0029】
格子状(金網状)とは前記したワイヤー状の材料を格子状に組み合わせた材料を表すものである。組み合わせるワイヤーは直線状の場合も曲率を有する場合も含み、組み合わせる角度は任意に選ぶことができる。格子状(金網状)の材料を面に対して垂直方向より投影した際の、材料と空間との面積比は特に制限はないが、通常1:0.5〜1:1000の範囲であり、好ましくは1:1〜1:500の範囲であり、特に好ましくは1:5〜1:100の範囲である。面積比は水平方向には等しいことが好ましく、鉛直方向には等しいか、あるいは下部ほど空間の比率が大きくなることが好ましい。
【0030】
チェーン状とは前記したワイヤー状材料よりできた輪を連結させた材料を表すものである。輪の形状は円形、楕円形、長方形、正方形等が挙げられる。連結のさせ方は一次元、二次元、三次元いずれも含む。
立体格子状とは、ワイヤー状の材料をいわゆるジャングルジムのように立体的な格子状に三次元に組み合わせた材料を表すものである。組み合わせるワイヤーは直線状であっても、曲率を有する場合も含み、組み合わせる角度は任意に選ぶことができる。
【0031】
ポリマーの落下方向に凹凸が付いたワイヤー状とは、ワイヤーに丸断面や多角形断面の棒状物を直角に取り付けたものや、ワイヤーに円盤状物あるいは円筒状物を取り付けたものなどである。凹凸の段差は5mm以上のものが好ましい。具体的な例としては、直径がワイヤー径より5mm以上大きく100mm以下で、厚みが1〜50mmの円盤の中心をワイヤーが貫通し、該円盤の間隔が1〜500mmである円盤付きワイヤー等が挙げられる。
【0032】
チェーン状、立体格子状及びポリマーの落下方向に対して垂直な方向に凹凸があるワイヤー状の支持体において、組み合わせる支持体の体積と空間との体積比は特に制限はないが、通常1:0.5〜1:107の範囲であり、好ましくは1:10〜1:10の範囲であり、特に好ましくは1:10〜1:10の範囲である。体積比は水平方向には等しいことが好ましく、鉛直方向には等しいか、あるいは下部ほど空間の比率が大きくなることが好ましい。
【0033】
支持体は形状によって単数設ける場合と複数設ける場合とを適宜選択することができる。ワイヤー状や線状に連なったチェーン状の場合は通常1〜100000個であり、好ましくは3〜50000個である。格子状、2次元に連なったチェーン状、薄板状、多孔板状の場合は通常1〜1000個であり、好ましくは2〜100個である。3次元に連なったチェーン状、立体格子状、充填塔状の場合は単数とするか、分割して複数とするかは、装置の大きさや、設置スペース等を考慮して適宜選択できる。
支持体が複数の場合、適宜スペーサー等を用いて指示体同士が接触しないようにする事も好ましい。
【0034】
本発明において、通常、一つの支持体に対して多孔板の孔1個以上からポリマーが供給されるが、孔の数は支持体の形状に応じて適宜選択することもできる。また、一個の孔を通過したポリマーを複数の支持体に沿って落下させることも可能であるが、均一な落下状態としてムラの少ないポリマーを得るためには沿わせて落下させる支持体の数は少なくすることが好ましく、ポリマーが落下する方向の支持体1本に孔1個からポリマーを供給することが最も好ましい。支持体の位置はポリマーが支持体に沿って落下できる位置であれば特に制限はなく、支持体の多孔板への取り付け方は、多孔板の孔を貫通して設置される場合と貫通せず多孔板の孔の下部に設置される場合を適宜選択できる。
【0035】
孔を通過したポリマーが支持体に沿って流れる距離は、好ましくは0.5〜50mであり、さらに好ましくは1〜20mであり、より好ましくは2〜10mである。
孔を通過させるポリマーの流量は、好ましくは孔1個当たり、10−2〜10リットル/hr、特に好ましくは、0.1〜50リットル/hrの範囲である。この範囲とすることにより脱溶媒除去速度が著しく小さくなったり、生産性が著しく低くなったりすることを抑えられる。
支持体に沿わせて落下させるのに要する時間の平均は10秒〜100時間の範囲が好ましく、1分〜10時間の範囲がより好ましく、5分〜5時間の範囲が更に好ましく、20分〜3時間が特に好ましい。
【0036】
本発明において、支持体に沿わせて落下させながらの脱溶媒除去は減圧下にて行う必要がある。これは、脱溶媒の進行と共にポリマーの粘度が上昇するため効率的に脱溶媒装置の系外へ残溶媒等を除去するためである。減圧とは圧力が大気圧より低い事を示し、通常は50KPa以下が好ましく、10KPa以下がより好ましく、1KPa以下が更に好ましく、0.5KPa以下が特に好ましい。下限は特に制限されるものではないが、系内を減圧とするための設備の大きさなどより考え0.1Pa以上とすることが望ましい。
【0037】
また、減圧下で、反応に悪影響を及ぼさない不活性なガス及び/又は水(液、水蒸気)を少量導入して、ポリマー中の残溶媒等をこれらのガス及び/又は水蒸気に同伴させて除去するのも好ましい方法の一つである。
不活性ガス及び/又は水の溶媒脱揮装置内への導入は、従来は装置内の残留溶媒等の分圧を下げ、除去を容易に進めるためであると考えられている。しかし、本発明において導入する不活性ガス及び/又は水の量は極めて少なくて良く、分圧低下効果によって溶媒除去速度を高める効果はほとんど期待できず、不活性ガス及び/又は水の役割は従来の仮説では説明できない。本発明者らの検討によると、驚くべきことに、不活性ガス及び/又は水を溶媒脱揮装置に導入することにより、該支持体上でのポリマーの発泡現象が激しくなり、該ポリマーの表面積が飛躍的に増加するとともに、表面更新状態が極めて良くなることが観察されている。原理は定かではないが、このポリマーの内部及び表面状態の変化が溶媒、モノマー、オリゴマーの脱揮速度を飛躍的に高める原因になっているものと推定される。
【0038】
導入する不活性ガスとしてはポリマーに着色や変成、分解等の悪影響を及ぼさないガスが良く、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素や低級炭化水素ガスなどが好ましい。もちろん、不活性ガスにはこれらの混合ガスも含む。不活性ガスとしては窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素がより好ましく、中でも入手の容易さより窒素が特に好ましい。
【0039】
本発明で導入する不活性ガス及び/又は水の量は、極めて少量でよく、重合反応器より抜き出すポリマー1g当たり0.05〜100mgとすることが好ましい。不活性ガス及び/又は水の量は抜き出すポリマー1g当たり0.05mg以上とすることでポリマーの発泡が十分となって重合度を高める効果が高くなる。一方100mg以下とすることで減圧度が高くすることが容易になる。不活性ガス及び/又は水の量は抜き出すポリマー1g当たり0.1〜50mgとすることがより好ましく、0.2〜10mgとすることが特に好ましい。
【0040】
不活性ガス及び/又は水を導入する方法としては、溶媒脱揮装置内に直接導入する方法、あらかじめ不活性ガス及び/又は水をポリマーに吸収及び/又は含有させ、該吸収及び/又は含有させた不活性ガス及び/又は水を減圧下にてポリマーより放出させて重合器内に導入する方法、及び、これらを併用する方法が挙げられる。
なおここで吸収とはポリマー中に不活性ガス及び/又は水が溶解し、気泡として存在しない場合を指し、含有とは気泡として存在していることを指す。気泡として存在する場合は、気泡の大きさが細かいほど好ましく、平均気泡径が5mm以下とすることが好ましく、2mm以下とすることがより好ましい。
【0041】
溶媒脱揮装置内に不活性ガス及び/又は水を直接導入する場合は、分散板より遠く、ポリマーの抜き出し口の近くとすることが望ましい。また、減圧排気ラインより離れていることも望ましい。
いずれの場合においても、支持体に沿わせて落下させる際に発泡する部分があることが好ましく、特に支持体に沿わせて落下させた下部が発泡していることが望ましい。ここで発泡しているとは、泡がはじけてすぐに無くなる状態と泡が維持された状態の両方を指す。
【0042】
支持体に沿わせて落下させる際の雰囲気温度は、該ポリマーの融点以上、280℃以下とすることが好ましい。融点以上とすることで落下する途中でポリマーの粘性が著しく高くなったり固化したりせずに、安定して落下させることが容易となる。一方280℃以下とすることで、熱分解による着色を抑え、高品質のスチレン系樹脂を得ることが容易となる。落下させる際の温度は上記した温度範囲内、且つ、多孔板から吐出する温度との差が20℃以内であることが好ましく、差が10℃以内であることがより好ましく、差が5℃以内であることが特に好ましく、吐出温度と同じ温度にすることが最も好ましい。このような温度は、支持体を覆っている脱溶媒装置の壁面に配したヒーター又はジャケットの温度を適正に制御したり、支持体内部にヒーター又は熱媒を入れ、これらの温度を適正に制御したりすることで達成できる。
【0043】
本発明でいうスチレン系樹脂とは、主としてスチレン系モノマー単位を含有する樹脂を言い、具体的には、スチレン、α-メチルスチレン、α−フェニルスチレン等のα位置換スチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、p−エチルスチレン、m−エチルスチレン、o−エチルスチレン、t−ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、1−エトキシエトキシスチレン、メトキシスチレン、スチレンスルホン酸塩等の芳香環置換スチレン類等のスチレン系モノマーが挙げられる。これらスチレン系モノマーは単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。最も好ましいスチレン系モノマーの重合としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンから選ばれる単独重合又は共重合が挙げられる。
【0044】
本発明の目的を損なわない範囲においてその他ビニル系モノマー、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アクリル酸等のアクリレート系モノマーやメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、メタクリル酸等のメタクリレート系モノマー、無水マレイン酸、N-フェニルマレイミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン等と共重合しても構わない。
【0045】
本発明の製造方法に最適な重合方法として、リビング重合法が挙げられる。リビング重合法には、アニオン重合、カチオン重合、ラジカル重合法があるが、最も好ましいのはアニオン重合法である。
リビング重合法は、主として溶媒を用いた溶液重合法であり、本発明においては、特に、沸点が60〜150℃の領域にある溶媒を用いることが好ましい。60℃より低いと、最適重合速度を満足することが困難となる。また、150℃より高いと、脱揮工程での除去時間が必要以上にかかり、ポリマーの分解、劣化等を誘発しやすくなる。
具体的には、炭化水素系溶媒であるトルエン、エチルベンゼン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ヘプタン等やテトラヒドロフラン、メチルエチルケトン等の極性溶媒が挙げられる。
【0046】
以下に本発明の製造装置を用いたスチレン系樹脂の製造方法について、アニオン重合法を例に挙げて説明する。
アニオン重合の開始剤としては、公知の開始剤、有機リチウム開始剤が利用できる。具体例としては、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、メチルリチウム、エチルリチウム、ベンジルリチウム、1,6−ジリチオヘキサン、スチリルリチウム等が挙げられる。
これらは単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。好ましい例としては、 n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、スチリルリチウムが挙げられる。
【0047】
これらの有機リチウム開始剤は、炭化水素系溶媒、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒類、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル等のエーテル類に溶解させて使用できる。
【0048】
有機リチウム開始剤の使用量は得ようとするポリマーの分子量に依存する。即ち、ポリマーの分子量はモノマー量と有機リチウム開始剤の組成比で基本的には決まる。
モノマー100g当たりの有機リチウム使用量は0.05〜20ミリモルの範囲である。好ましくは0.1〜10ミリモル、特に好ましくは0.2〜2ミリモルの範囲である。
【0049】
アニオン重合法に用いるスチレン系モノマーとしては、各種のものがあるが、具体例としてスチレン、α-メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、p−エチルスチレン、m−エチルスチレン、o−エチルスチレン等のアルキルスチレン類が挙げられる。これらスチレン系モノマーは単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。最も好ましいスチレン系モノマーの重合としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンから選ばれる単独重合又は共重合が挙げられる。
【0050】
本発明においては、上記のようなスチレン系モノマーの他に、アニオン共重合可能なモノマーを一緒に用いることが出来る。共重合可能なモノマー類としては、1,1−ジフェニルエチレン、1,3−ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン化合物などを挙げることが出来る。 これらの共重合モノマーは、樹脂の耐熱性、軟化温度、衝撃強度、剛性、加工性等を改良あるいは調整する場合に有用である場合がある。
【0051】
本発明のスチレン系モノマーの重合プロセスは溶液重合で行われることが好ましい。溶媒として炭化水素系溶媒であるトルエン、エチルベンゼン、キシレン、シクロヘキサンが利用される。
スチレン系モノマーと炭化水素系溶媒の使用量は、アニオン溶液重合の場合、スチレン系モノマーが60〜5重量部、炭化水素系溶媒が40〜95重量部である。好ましくはスチレン系モノマーが50〜10重量部、炭化水素系溶媒が50〜90重量部である。
スチレン系モノマーが60重量部を越える場合は、重合溶液の粘度上昇の為、攪拌や移送に非常に大きな動力が必要となり、粘度を下げる為に重合温度を上げると、反応速度が非常に早くなり除熱が困難となり、熱失活により重合が停止してしまう。
5重量部未満では、溶媒の回収に多量の熱エネルギーを必要とする為、回収工程でのスチレン系樹脂にかかる熱履歴が過大となり樹脂の熱分解等が促進される。
【0052】
本発明のスチレン系モノマーの重合プロセスは溶液重合で使われているものであれば良く、その他は特に限定しない。一般には次の如きプロセスで実施される。
例えば、モノマーおよび開始剤を全量反応槽に仕込んだ後に重合する完全バッチ重合法、反応槽に開始剤の一部あるいは全部を仕込んだ後、モノマーを追加仕込みしながら重合するセミバッチ重合法、完全攪拌状態の反応槽に原料系(モノマーおよび開始剤)を連続的に仕込み、一方で同量の生成系(ポリマー溶液)を取り出す完全攪拌の連続重合法、あるいはチューブ状反応槽の一端から反応原料系を仕込み、他端から生成系を取り出すプラグフローの連続重合法、あるいはこれらの直列結合プロセスが考えられる。
【0053】
本発明のスチレン系樹脂の製造においては完全攪拌の連続槽、次いでプラグフローの連続槽を結合した複合プロセスにより好ましく製造できる。アニオン重合においては重合速度が極めて大きい為、重合プロセスにおける重合熱の除去は重要であり、リフラックスコンデンサーを装着した完全攪拌混合槽が好ましい。完全攪拌の連続重合プロセスにおいて、得られるポリマーの分子量分布を広げ、次のプラグフローの連続重合プロセスで、残存するモノマーを効率的に転化することができる。分子量分布を広げることは樹脂の加工性改良に役立ち、モノマーの完全転化は樹脂中に混入するモノマー由来の低分子量成分を無くすことができる。
【0054】
ここで言う完全攪拌は狭い意味に限定しない。開始剤が広い滞留時間分布をもち、これによりポリマーの分子量分布が顕著に広くなる程度の攪拌を想定している。具体的には、得られるポリマーの分子量分布、即ち重量平均分子量と数平均分子量の比Mw/Mnが1.5以上となる攪拌条件を想定している。重合温度は0〜150℃の範囲である。好ましくは10〜140℃、特に好ましくは20〜130℃の範囲である。重合温度が極度に低いと反応速度が低下して実用性がない。
また、重合温度が極度に高いと開始剤の分解により反応速度が低下してやはり好ましくない。また、150℃より高い温度ではポリマーが着色する場合があり、用途によってはやはり好ましくない。
【0055】
重合反応終了後はポリマー末端には炭素-リチウム結合が残る。これをこのまま残すと、仕上げ段階等で空気酸化等を受け、得られるポリスチレン系樹脂の安定性低下や着色の原因となる場合がある。重合後は、ポリマーの活性末端、即ち炭素−リチウム結合を安定化させることが好ましい。
例えば水、アルコール、フェノール、カルボン酸等の酸素−水素結合を有する化合物の添加、エポキシ化合物、エステル化合物、ケトン化合物、カルボン酸無水物、炭素−ハロゲン結合を有する化合物等も同様な効果を期待できる。これらの添加物の使用量は炭素−リチウム結合に当量から10倍当量程度が好ましい。余りに多いとコスト的に不利なだけでなく、残存する添加物の混入が障害になる場合も多い。
【0056】
炭素−リチウム結合を利用して多官能化合物でカップリング反応させ、ポリマー分子量を増大、さらにはポリマー鎖を分岐構造化させることもできる。この様なカップリング反応に用いる多官能化合物は公知のものから選ぶことができる。
多官能化合物とはポリハロゲン化合物、ポリエポキシ化合物、モノまたはポリカルボン酸エステル、ポリケトン化合物、モノまたはポリカルボン酸無水物等を挙げることができる。
具体例としてはシリコンテトラクロライド、ジ(トリクロルシリル)エタン、1,3,5−トリブロモベンゼン、エポキシ化大豆油、テトラグリシジル1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、シュウ酸ジメチル、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、ピロメリット酸二無水物、ジエチルカーボネート等が挙げられる。
【0057】
また、有機リチウム由来のアルカリ成分、例えば酸化リチウムや水酸化リチウムを酸性化合物の添加によって中和安定化させることもできる。この様な酸性化合物の例として炭酸ガス、ホウ酸、各種カルボン酸化合物等が挙げられる。これらの添加により、特に耐着色性が改善できる場合がある。
【0058】
本発明のポリスチレン系樹脂の製造方法において得られるポリマーは、その熱的あるいは機械的安定性、酸化防止性、耐候性、耐光性を改善するために公知の安定剤類を添加することができる。例えば、特許文献4によればポリスチレンの安定化方法として、2,4,6−三置換フェノールの添加が有利であることが開示されている。
【0059】
2,4,6−三置換フェノールの好ましい例として2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスト−ルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドキシフェニル)プロピオネート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2[1−(2−ヒドロキシ3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、テトラキス[メチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9ビス[2−{3−(t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキザ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6(1H,2H,3H)−トリオン、1,1,4−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。
これらの安定剤は、ポリマー回収後混合することもできるが、重合後溶液の段階での添加は混合が容易であること、脱溶媒工程での劣化を抑えることができる点で好ましい。
【0060】
本発明においては、溶媒脱揮工程での残留溶媒等の除去は最も重要である。
本発明において、残留溶媒等の除去は一段或いは数段階で行われる。残留溶媒等の除去を一段で行なう場合、本発明のポリマー溶液を多孔板で分散させ支持体上を、重力落下を利用して落下させ加熱減圧下でポリマー中の残留溶媒等の除去する方法においては、支持体の長さや支持体のピッチ、形状、間隔等を変えることで一段での処理が可能となる。
【0061】
溶媒脱揮工程を数段で行なう場合、第一溶媒脱揮工程には公知の脱揮押出機を用いる方法、減圧脱揮ドラムや減圧脱揮タンクにおいて溶媒をフラッシングさせ除去する方法、或いは、本発明のポリマー溶液を多孔板で分散させワイヤーおよび/または金網等の支持体上を、重力落下を利用して落下させ加熱減圧下でポリマー溶液中の残溶媒等の熱分解を防いで除去する方法が用いられる。第二脱溶媒工程に、本発明の装置を用いて組み合わせると、さらに低残溶媒等のポリマーを得ることが可能となる。
【0062】
数段階で脱溶媒工程を行なう場合、第一脱溶媒工程における操作条件としては、満足できる範囲で種々選定できるが、温度は280℃未満が好ましい。さらに好ましくは260℃未満である。最も好ましくは250℃未満である。280℃以上の場合は、高温で長時間ポリマーに熱履歴を加えることに繋がり、好ましくない。
【0063】
第一溶媒脱揮工程は、第二溶媒脱揮工程へ供給する緩衝工程を兼ねる為、滞留時間が比較的長くなるが60分未満が好ましい。さらに好ましくは30分未満である。
又、第一溶媒脱揮工程は減圧で操作されるが、上記条件で、本発明の範囲内に脱揮される条件であれば特に制限はないが、50KPa以下が好ましい。さらに好ましくは1KPa以下であり、最も好ましくは0.1KPa以下である。50KPaを越える減圧度で本発明の条件を満足するためには、温度が280℃を超える場合があり好ましくない。
【0064】
第一溶媒脱揮工程で、減圧ベント付きの押出機を用いる場合、押出機は2軸でも、単軸でもかまわないが、脱揮乾燥の効率から2軸の方が好ましい。減圧ベント口は少なくとも1個以上あれば良いが、2個以上の複数あることがより好ましい。より好ましくは3個以上である。
押出機のシリンダー長/シリンダー径(L/D)は20〜80の範囲で用いられるが、30以上が好ましい。押出機のシリンダー及びダイスの温度は、通常170〜300℃の範囲である。好ましくは200〜290℃である。押出機のベントの減圧度は、得られるスチレン系樹脂ペレット中の揮発成分、すなわち、溶媒、モノマーの合計量が30000ppm以下となるように圧力及び温度の設定をすることが好ましい。
押出機での低分子成分の脱揮を促進するために、所望により、水、炭酸ガス、窒素等を共存させても良い。
【0065】
第二脱溶媒工程に本発明のポリマー溶液を多孔板で分散させワイヤーおよび/または金網等の支持体上を、重力落下を利用して落下させ加熱減圧下でポリマー溶液中の溶媒および/または残モノマーおよび/またはオリゴマー等の熱分解を防いで除去する方法は必須である。
本発明の方法によって得られるスチレン系樹脂に含まれる、溶媒、モノマーの合計量は1000ppm以下でなければならない。好ましくは800ppm以下、さらに好ましくは500ppm以下である。
【0066】
本発明によって得られるスチレン系樹脂は、一般には重量平均分子量80,000〜400,000のものであり、必要に応じて通常用いられる種々の添加剤、例えば、安定剤、染料、顔料、充填剤、滑剤、離型剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤などを添加して成形材料とすることができる。又、本発明によって得られるスチレン系樹脂に、所望によりラジカル重合で得られる汎用ポリスチレンやハイインパクトポリスチレン、他の熱可塑性樹脂、例えばスチレン−ブタジエンブロック共重合体やその水素化物、ポリフェニレンエーテル、ABS等を配合することが出来る。
【0067】
この様にして得られた本発明のスチレン系樹脂は成形性、熱安定性及び無色透明性に優れているので、家庭電気器具、事務機器、家庭用品、食品容器、各種包装材料、玩具等に幅広く利用できる。又、本発明によって得られるスチレン系樹脂は、従来公知の方法、例えば、射出成形、押出成形、中空成形、真空成形、注入成形等の方法によって成形することが出来る。
【0068】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。樹脂中のスチレンモノマー、α−メチルスチレンモノマー、残留溶媒の定量はガスクロマトグラフィーを用いて行った。分子量及び分子量分布はGPC法により35℃において、テトラヒドロフランを測定溶媒として、UV/RIにより検出し、ポリスチレン換算により求めた。
【実施例1】
【0069】
図3の形態の装置を用いた。重合器には攪拌機を備えたジャケット付きの容量30Lの完全混合型のリアクターの上部に伝熱面積0.6m2のリフラックスコンデンサーを装着したものを用い重合器の内部を減圧脱気し、槽内を窒素雰囲気とした。反応機からの重合液排出用のギヤポンプから第一溶媒脱揮工程の間には、失活剤を混合するためのスルーザーミキサーを取り付けた。スルーザーミキサー出口までは、反応機と同じ温度の温水を流して加温した。スルーザーミキサーから第二溶媒脱揮工程出口までの間は250℃の熱媒で加熱した。
【0070】
第一溶媒脱揮工程には容量50Lフラッシュタンクを用い、フラッシュタンク入り口には伝熱面積0.6mのポリマーヒーターを取り付けた。フラッシュタンクのボトムには真空対応のギヤポンプを用いた。
第二溶媒脱揮工程には、高さ(直胴部)2.5m、内径0.3m、ボトムコーン部が60°の脱揮塔と、図5(a)に示した、厚さを40mmとし、ポリマー入り口側から20mmまでは多孔板の孔を8mm径として、それ以降は15mm径の孔が一列に3個、70mmピッチで開けられたポリマー分散板と、該ポリマー分散板の下部に、線径3mm、網目70mm×250mm、長さ2.3mの金網を、分散板の70mm間隔に設けた孔と金網の70mm間隔に設けた線の端部が嵌合するように金網1枚を垂直に取り付け、ボトムに真空対応のギヤポンプを取り付けた構造の溶媒脱揮装置を用いた。図6に分散板への金網の取付け方を示した。
【0071】
予め、攪拌機の付いた第1調合タンクでスチレンモノマーを29.6重量部、α−メチルスチレンモノマー19.6重量部、重合溶媒としてアルミナ脱水塔を通して脱水したシクロヘキサン50.9重量部を投入し、窒素バブリングし液中の酸素を除去したあと、攪拌混合した。攪拌機の付いた第2調合タンクには、アルミナ脱水塔を通して脱水したシクロヘキサン80.4重量部を仕込み窒素バブリングで脱気した後と15重量%のn−ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液19.6重量部を投入し攪拌混合した。攪拌機の付いた第3調合タンクには、アルミナ脱水塔を通して脱水したシクロヘキサン80重量部とメチルアルコール20重量部を投入し窒素バブリング後、攪拌混合した。
【0072】
重合器のジャケットに温水を流し反応槽の温度を80℃にセットした。第1調合タンクからスチレンモノマーとα−メチルスチレンモノマー、シクロヘキサンの混合液を5.834Kg/Hrの流量でフィードした。重合器の槽内の保有量を8Lに制御した。重合器の圧力は常圧に保ち、シクロヘキサンをリフラックスさせて重合温度を80℃に保持した。第2調合タンクからn−ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液を0.533Kg/Hrで反応器にフィードした。
【0073】
重合器から流出した反応液は、フラッシュタンクに導入する直前に、第3調合タンク3から0.283Kg/Hrでフィードしたメタノールとシクロヘキサンの混合液とミキサーで混合し、n−ブチルリチウムを失活させた後、ポリマーヒーター通過した後、250℃、20KPaの第一溶媒脱揮工程のフラッシュタンクで脱溶媒した。その後、第二溶媒脱揮工程の250℃、65Paの溶媒脱揮装置にポリマーを導入し脱溶媒した。ボトムに落下したポリマーをギヤポンプで排出しストランドカットしたところ2.38Kg/Hrでペレットが得られた。
第一溶媒脱揮工程出口のポリマー中(サンプル1)の残留溶媒(残CH)、残留スチレンモノマー(残SM)、残留α−メチルスチレン(残αSM)等と得られたペレット中(サンプル2)の残留溶媒等を分析した。
表1に結果を示す。
【0074】
【表1】

【実施例2】
【0075】
第一溶媒脱揮工程に溶媒脱揮装置を用い第二溶媒脱揮工程を設けなかった。溶媒脱揮装置としては、入り口に熱面積0.6mのポリマーヒーターを取り付けた、高さ4m、内径0.3m、ボトムコーン部が60°の脱揮塔と、図5(b)に示した、厚さを20mmとし、ポリマー入り口側から10mmまでは多孔板の孔を6mm径として、それ以降は20mm径の孔が6個、50mmピッチで開けられたポリマー分散板と、該ポリマー分散板の下部に、図7に示すように、該ポリマー分散板の下部に、線径3mm、網目50mm×50mm、縦方向の絡み防止用の横棒のピッチが200mm、金網間隔70mm、長さ2.3mの2枚の金網を分散板の50mm間隔に設けた孔と金網の50mm間隔に設けた線の端部が嵌合するように垂直に取付けボトムに真空対応のギヤポンプを取り付けた構造の溶媒脱揮装置を用いた。
【0076】
重合器には攪拌機を備えたジャケット付きの容量30Lの完全混合型のリアクターの上部に伝熱面積0.6m2のリフラックスコンデンサーを装着したものを用い重合器の内部を減圧脱気し、槽内を窒素雰囲気とした。重合器からの重合液排出用のギヤポンプから溶媒脱揮装置の間には、失活剤を混合するためのスルーザーミキサーを取り付けた。スルーザーミキサー出口までは、重合器と同じ温度の温水を流して加温した。スルーザーミキサーから脱溶媒装置出口までの間は260℃の熱媒で加熱した。原料は、実施例1と同じものを用いフィード量も同じ条件で運転した。
【0077】
重合器から流出した反応液は、溶媒脱揮装置に導入する直前に、第3調合タンクから0.283Kg/Hrでフィードしたメタノールとシクロヘキサンの混合液とミキサーで混合し、n−ブチルリチウムを失活させた後、ポリマーヒーター通過した後、260℃、10KPaの溶媒脱揮装置にポリマーを導入し脱溶媒した。ボトムに落下したポリマーをギヤポンプで排出しストランドカットしたところ2.38Kg/Hrでペレットが得られた。
得られたペレット中(サンプル4)の残留溶媒、残留モノマーを分析した。
表2に結果を示す。
【0078】
【表2】

【実施例3】
【0079】
実施例1の第一溶媒脱揮工程で用いたフラッシュタンクの運転圧力を13.3kPaに変更した以外は実施例1と同一条件で運転を行なった。第一溶媒脱揮工程の溶媒回収用の熱交換器には、5℃の冷却水を流し溶媒を回収しようとしたがポリマーからの脱溶媒の大半は真空ポンプに飛んでしまった。
第一溶媒脱揮装置出口のポリマー中(サンプル4)残留溶媒等と得られたペレット中(サンプル5)の残留溶媒等を分析した。
表3に結果を示す。
【0080】
【表3】

【実施例4】
【0081】
実施例2で用いた溶媒脱揮装置を第一溶媒脱揮装置として用い、第二溶媒脱揮装置は設けなかった。真空ポンプは、ドライポンプを用い、溶媒等回収用コンデンサーは、マイナス10℃冷凍水を流した。さらに、真空ポンプの排気ガスをスクラバーで回収した。
重合装置は図8に示したフローで反応機満液型の攪拌機を備えたジャケット付きの容量3Lの反応機A、0.6Lの高速攪拌ミキサーB、7.5Lのスタッドチューブ反応機3基(C,D,E)からなる設備を用いた。
【0082】
予め、攪拌機の付いた第1調合タンクでスチレンモノマー57.4重量部、アクリロニトリルモノマー17.5重量部、重合溶媒として試薬一級、エチルベンゼン25重量部を投入後、窒素バブリングし液中の酸素を除去したあと、攪拌混合した。攪拌機の付いた第2調合タンクには、前記、エチルベンゼン10重量部、スチレンモノマー90重量部を仕込み、窒素バブリングで脱気した。
【0083】
それぞれの反応機は定常運転時の重合中の内温が反応機A,高速攪拌ミキサーBは80℃、反応機Cは入り口120℃出口130℃、反応機Dは、入り口130℃、出口140℃、反応機Eは、入り口140℃出口150℃になるように調整した。各反応機の出口配管の温度は、反応機と同じ温度に調整した。
ポリマーヒーターは235℃で、第一溶媒脱揮装置は、235℃、0.7KPaにした。第2調合タンクからスチレンモノマー、エチルベンゼンの混合溶液を3.75Kg/Hrで反応機へフィードした。
【0084】
反応機C,D,Eは、100℃で前反応機からポリマー重合溶液を受け入れた後、前記の温度に設定した。溶媒脱揮装置のボトムに落下してきたポリマーをボトムのギヤポンプで排出しペレタイザーでペレットにし定常運転中のサンプル6が2.5Kg/Hrで得られた。続いて、モノマー混合液を、第2調合タンクから1に連続的に切り換え運転を続けた。溶媒脱揮されたペレットはポリマー組成が切り替わるまでは、少し白く濁っていたが、20Hr後には透明なペレット(サンプル7)が2.6Kg/Hrで得られた。
得られたサンプル6とサンプル7の残留溶媒等を分析した。
表4に結果を示す。
【0085】
【表4】

【実施例5】
【0086】
実施例1において、重合器を上部に熱交換器を持たない、10Lのジャケット付き満液型反応器に変更した。さらに溶媒をエチルベンゼン(EB)とし、原料は全て、重合器の直胴部の中央、円周上から供給した。重合器内温は重合器出口直近を70℃とし、第一溶媒脱揮工程で用いたフラッシュタンクの運転圧力を80kPa、第二溶媒脱揮工程の溶媒脱揮装置の圧力を0.3kPaに変更した。その他は実施例1と同一条件で運転を行なった。第一、第二溶媒脱揮工程の溶媒回収用の熱交換器には、0℃の冷却水を流し溶媒を回収した。
第一溶媒脱揮装置出口のポリマー中(サンプル8)残留溶媒等と得られたペレット中(サンプル9)の残留溶媒等を分析した。
表5に結果を示す。
【0087】
【表5】

【0088】
[比較例1]
実施例1のポリマー重合溶液で、第二溶媒脱揮工程の溶媒脱揮装置を、減圧ベント口を2個有する25mm径の2軸脱揮押出機(L/D=33.5)に替えて運転を行なった。ポリマーヒーター、押出機のヒーター温度は、250℃に設定した。脱揮押出機は、1.3KPaで運転した。結果を表5に示す。これより、圧力を下げようとしたが、押出機のスクリュー部からのAir漏れこみと、ベント口へのポリマーが吹き上げる(通称ベントアップ)問題が起こり下げられなかった。結果を表6に示す。
【0089】
【表6】

【0090】
[比較例2]
実施例4のスチレン/エチルベンゼンの重合溶液で減圧ベント口を2個有する25mm径の2軸脱揮押出機(L/D=33.5)に切り換えて運転を行なった。ポリマーヒーター、押出機の温度は、250℃に設定した。脱揮押出機は1.3KPaで運転した。結果を表7に示す。
【表7】

【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の、溶媒脱揮装置の概略を示した全体の断面図である。
【図2】本発明の溶媒脱揮装置を第一、第二溶媒脱揮工程に用いたフロー図である。
【図3】第一溶媒脱揮工程にフラッシュタンク方式の溶媒脱揮装置の例を示す図である。
【図4】第一溶媒脱揮工程に脱揮押出機方式の溶媒脱揮装置の例を示す図である。
【図5】ポリマー分散板の構造の一例を示す図である。
【図6】分散板への金網の取付け方を示す図である。
【図7】実施例2における支持体(金網)の構成を示す図である。
【図8】重合装置のフローを示す図である。
【符号の説明】
【0092】
1 支持体
2 固定ボルト、ナット
3 上部フランジ加熱用熱媒配管
4 ポリマー入り口配管(二重管)
5 ポリマー供給配管(二重管)
6 ポリマー分散板
7 ポリマー分散板固定金具
8 ポリマー分散用多孔板
9 胴部熱媒出口
10 ガス出口及び熱交換器との連結管
11 熱媒入り口
12 熱交換器
13 回収溶媒、モノマー等の送液ポンプ
14 ギヤポンプ
15 コーン部熱媒出口
16 コーン部熱媒入り口
17 ボトムバルブ
18 コーン部
19 ポリマー通過孔
20 上部フランジ
21、22 ポリマーヒーター(予熱器)
23 フラッシュタンク
24 原料供給配管
25 脱揮押出機
26 ミキサー(触媒失活剤等の混合用ミキサー、添加配管は省略)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系重合体の重合溶液を、加熱減圧下で重力を利用して支持体に沿わせて流下させることにより、該重合溶液中に含まれる溶媒及び/又は単量体及び/又はオリゴマーを脱揮して除去することを特徴とするスチレン系重合体の製造方法。
【請求項2】
スチレン系重合体の重合溶液の温度が100〜300℃、系内の温度が100〜300℃、系内の圧力が6.5Pa〜100kPaである条件下でスチレン系重合体の重合溶液を支持体に沿わせて流下させることを特徴とする請求項1記載のスチレン系重合体の製造方法。
【請求項3】
スチレン系重合体の重合溶液がリビング重合法によって得られた重合溶液であることを特徴とする請求項1又は2記載のスチレン系重合体の製造方法。
【請求項4】
重合溶液が重合溶媒として沸点が60〜150℃である溶媒を用いた重合溶液であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスチレン系重合体の製造方法。
【請求項5】
重合溶液が、スチレン、α−メチルスチレン及びp−メチルスチレンよりなる群から選ばれた少なくとも一種のモノマーの単独重合体又は共重合体の重合溶液であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスチレン系重合体の製造方法。
【請求項6】
スチレン系重合体の重合溶液を重力の作用で流下させる支持体と、系内を加熱かつ減圧する手段とを具えてなり、スチレン系重合体の重合溶液を加熱減圧下で該支持体を流下させることによって該重合溶液中に含まれる溶媒及び/又は単量体及び/又はオリゴマーを脱揮して除去するようにしたスチレン系重合体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−320973(P2007−320973A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−149154(P2006−149154)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】