説明

スチールコード被覆用ゴム組成物

【課題】スチールコード被覆ゴムにおける動的弾性率、引裂強度、耐発熱性及びゴム中で
の分散性を改善すること。
【解決手段】(A)天然ゴム、スチレンブタジエン共重合ゴム及びブタジエンゴムからな
る群から選ばれるゴムを主成分とするゴム成分(成分A)100重量部に対して、
(B)レゾルシンとアセトンとの縮合物であり、当該縮合物の全量に対して、(1)2,4
,4−トリメチル−2’4’7−トリヒドロキシフラバンを40〜80重量%と、(2)酸
又はそのアルカリ金属塩を0〜0.2重量%とを含有してなる縮合物(成分B)を0.5
〜3重量部、
(C)有機コバルト化合物をコバルト含量にして0.1〜0.4重量部、及び、
(D)メトキシ化メチロールメラミン樹脂を0.5〜2重量部
を配合してなることを特徴とするスチールコード被覆ゴム組成物及びそれより製造されて
なる空気入りタイヤ
等。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動的弾性率、引裂強度、耐発熱性及びゴム中での分散性に優れたスチールコード被覆用ゴムを与えるスチールコード被覆用ゴム組成物及びそれを加工して製造されたベルトおよび空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
加硫可能な天然ゴムに、2,4,4−トリメチル−2’,4’,7−トリヒドロキシフラバンを70.7%又は34.1%含有してなるレゾルシンとアセトンとの縮合反応(酸としてp−トルエンスルホン酸1水和物、且つ、中和剤として水酸化ナトリウムを用いたもの)により得られる化合物及び加熱時にヘキサメチレンテトラミンを含有してなるゴム組成物が開示されている(例えば、特許文献1(「0018」〜「0019」合成例1及び「0020」〜「0021」、実施例、比較例「0022」〜「0027」等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−87425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、当該ゴム組成物を用いて製造されたゴム製品は、動的弾性率、引裂強度、耐発熱性及びゴム中での分散性において、条件によっては必ずしも常に満足しえるものではなく、当該性能に係る改善が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、このような状況下、スチールコード被覆用ゴムにおける動的弾性率、引裂強度、耐発熱性及びゴム中での分散性を改善すべく、スチールコード被覆用ゴム組成物について鋭意検討を重ねた結果、本発明に至った。
【0006】
即ち、本発明は、
1.(A)天然ゴム、スチレンブタジエン共重合ゴム及びブタジエンゴムからなる群から選ばれるゴムを主成分とするゴム成分(成分A)100重量部に対して、
(B)レゾルシンとアセトンとの縮合物であり、当該縮合物の全量に対して、(1)2,4,4−トリメチル−2’,4’,7−トリヒドロキシフラバンを40〜80重量%と、(2)酸又はそのアルカリ金属塩を0〜0.2重量%とを含有してなる縮合物を0.5〜3重量部、
(C)有機コバルト化合物をコバルト含量にして0.1〜0.4重量部、及び、
(D)メトキシ化メチロールメラミン樹脂を0.5〜2重量部
を配合してなることを特徴とするスチールコード被覆用ゴム組成物;
2.さらに加硫促進剤を含有してなることを特徴とする前項1記載のスチールコード被覆用ゴム組成物;
3.加硫促進剤が、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドであることを特徴とする前項2記載のスチールコード被覆用ゴム組成物;
4.N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドを含有しないことを特徴とする前項1〜3のいずれかの項記載のスチールコード被覆用ゴム組成物;
5.ヘキサメチレンテトラミンを含有しないことを特徴とする前項1〜4のいずれかの項記載のスチールコード被覆用ゴム組成物。
6.さらにゴム成分(成分A)100重量部に対して、カーボンブラックを45〜60重量部配合することを特徴とする前項1〜5のいずれかの項記載のスチールコード被覆用ゴム組成物;
7.さらにゴム成分(成分A)100重量部に対して、含水シリカを5〜15重量部配合することを特徴とする前項1〜6のいずれかの項記載のスチールコード被覆用ゴム組成物;
8.前項1〜7のいずれかの項記載のゴム組成物で被覆されたスチールコードを含んでなることを特徴とするベルト;
9.前項1〜7のいずれかの項記載のゴム組成物を加工して製造された空気入りタイヤ;
等を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、動的弾性率、引裂強度、耐発熱性及びゴム中での分散性に優れたスチールコード被覆用ゴム組成物及びそれを加工して製造されたベルトおよび空気入りタイヤを提供可能とする。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明は、
(A)天然ゴム、スチレンブタジエン共重合ゴム及びブタジエンゴムからなる群から選ばれるゴムを主成分とするゴム成分(成分A)100重量部に対して、
(B)レゾルシンとアセトンとの縮合物であり、当該縮合物の全量に対して、(1)2,4,4−トリメチル−2’,4’,7−トリヒドロキシフラバンを当該縮合物100重量部に対して40〜80重量%と、(2)酸又はそのアルカリ金属塩を当該縮合物100重量部に対して0〜0.2重量%とを含有してなる縮合物(成分B)を0.5〜3重量部、
(C)有機コバルト化合物(成分C)をコバルト含量にして0.1〜0.4重量部、及び、
(D)メトキシ化メチロールメラミン樹脂(成分D)を0.5〜2重量部
を配合してなることを特徴とするスチールコード被覆用ゴム組成物
である。
【0009】
本発明における「天然ゴム、スチレンブタジエン共重合ゴム及びブタジエンゴムからなる群から選ばれるゴムを主成分とするゴム成分(成分A)」としては、例えば、天然ゴム、スチレンブタジエン共重合ゴム及びブタジエンゴムからなる群から選ばれるゴム成分を50重量%以上含有しているものを挙げることができる。
尚、天然ゴム、スチレンブタジエン共重合ゴム及びブタジエンゴムからなる群から選ばれるゴム以外の残りのゴム成分はこれ以外のものであってもよい。当該ゴム成分の具体例としては、例えば、イソプレンゴム等が挙げられる。とりわけ、動的弾性率、引裂強度、耐発熱性等の観点より、天然ゴムを50重量%以上含有することが好ましく、更に好ましくはゴム成分(成分A)は天然ゴムのみである。
【0010】
本発明における「レゾルシンとアセトンとの縮合物であり、当該縮合物の全量に対して、(1)2,4,4−トリメチル−2’,4’,7−トリヒドロキシフラバンを40〜80重量%と、(2)酸又はそのアルカリ金属塩を0〜0.2重量%とを含有してなる縮合物(成分B)」は、レゾルシンとケトンとを、酸触媒存在下、水と混和しない有機溶媒中で縮合させた後に、必要に応じて塩基にて中和した後、生成した固形物をろ過、水洗、乾燥することにより製造することができる。縮合反応に用いる酸触媒は酸性物質であればよく、例えば、硫酸、p−トルエンスルホン酸、塩酸、リン酸等を用いることができる。これら酸触媒はそのまま、又は適当な濃度の水溶液として用いることができる。酸触媒の使用量に特に制限はないが、仕込みレゾルシンに対し、0.1〜10モル%の範囲が好ましく、更に好ましくは0.5〜5モル%である。水と混和しない有機溶媒の例としては、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、芳香族ハロゲン置換炭化水素等が挙げられる。脂肪族炭化水素の具体例としては、例えば、ヘキサン、へプタン、オクタン、デカン等であり、芳香族炭化水素の具体例は、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等であり、芳香族ハロゲン置換炭化水素の具体例としては、例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等である。とりわけ好ましいものは、トルエン、キシレンである。このような有機溶媒は、仕込みレゾルシンに対し、1〜3重量倍の範囲で存在させることが好ましい。レゾルシンの仕込みモル比は、仕込みケトンに対し0.6〜1.5モル倍の範囲が好ましく、更に好ましくは0.8〜1.3モル倍である。また反応の当初から2,4,4−トリメチル−2’4’7−トリヒドロキシフラバンを添加させることが好ましい。その添加量は仕込みレゾルシンに対し、0.5〜10モル%の範囲が好ましい。反応温度は特に制限はないが、通常30℃から還流温度までの範囲で反応させればよい。こうした反応により生成する粗結晶又は塊状固形物を含む反応マスは、必要に応じて仕込み酸分に対し等規定量の塩基で中和した後、ろ過して固液分離し、さらにウエットケーキに付着した触媒、中和塩及び未反応原料を十分に水洗し、乾燥することにより得ることができる。揮発性に乏しい酸又は中和塩の除去においては、中和又は洗浄せずろ過、あるいは中和後そのまま溶媒を留去し生成する樹脂を得た場合には、成分B中に酸触媒又はその中和塩が多く残存するため、本発明の目的とする諸物性に悪影響を与えるので好ましくない。
尚、2,4,4−トリメチル−2’,4’,7−トリヒドロキシフラバンは下記の式で示される化合物である。
【0011】
【化1】

【0012】
本発明における「レゾルシンとアセトンとの縮合物であり、当該縮合物の全量に対して、(1)2,4,4−トリメチル−2’,4’,7−トリヒドロキシフラバンを40〜80重量%と、(2)酸又はそのアルカリ金属塩を当該縮合物100重量部に対して0〜0.2重量%とを含有してなる縮合物(成分B)」の配合量は、前記ゴム成分(成分A)100重量部に対し、0.5〜3重量部程度の範囲が好ましく、1〜2重量部程度の範囲がより好ましい。
【0013】
本発明における「有機コバルト化合物(成分C)」の配合量は、前記ゴム成分(成分A)100重量部に対し、コバルト含量にして0.1〜0.4重量部程度の範囲が好ましく、0.1〜0.3重量部程度の範囲がより好ましい。有機コバルト化合物の具体例としては、例えば、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルト等の酸コバルト塩や、脂肪酸コバルト・ホウ素錯体化合物(例えば、商品名「マノボンドC」:マンケム社製)等が挙げられる。
【0014】
本発明における「メトキシ化メチロールメラミン樹脂(成分D)」としては、例えば、ヘキサキス(メトキシメチル)メラミン、ペンタキス(メトキシメチル)メチロールメラミン、テトラキス(メトキシメチル)ジメチロールメラミン等のゴム工業において通常使用されているものを挙げることができるが、これらの縮合物の中ではヘキサキス(メトキシメチル)メラミン単独又はそれを多く含む混合物が好ましい。これらのメチレン供与体は、それぞれ単独で、又は組み合わせて用いることができ、その配合量は前記ゴム成分(成分A)100重量部に対し、0.5〜2重量部程度の範囲が好ましく、1〜2重量部程度の範囲がより好ましい。
【0015】
「メトキシ化メチロールメラミン樹脂(成分D)」は、例えば、第一工程のメチロール化において、メタノールをメラミン対比4〜9モル比、パラホルムをメラミン対比8〜11モル比を仕込み、硫酸、p−トルエンスルホン酸又は塩酸等の酸触媒中で縮合反応させた後、第二工程の縮合化において、メタノールをメラミン対比8〜25モル比を仕込み、硫酸、p−トルエンスルホン酸又は塩酸等の酸触媒中で縮合反応させることにより製造すればよい。
【0016】
本発明のスチールコード被覆用ゴム組成物は、必要に応じてさらに、補強剤又は充填剤を含むことができる。補強剤又は充填剤としては、ゴム工業で通常使用されている各種のもの、例えば、カーボンブラックのような補強剤、シリカ、クレー、炭酸カルシウム等の無機充填剤が挙げられる。なかでも、補強性の観点より、カーボンブラックを配合するのが好ましく、ゴム工業にて通常使用されている種類のもの、例えば、SAF、ISAF、HAF、FEF、SRF、GPF、MT等が使用できる。とりわけ発熱性の観点よりHAF、FEF、SRFが好ましく用いられる。補強剤又は充填剤、特にカーボンブラックの配合量は、耐発熱性の観点より、前記ゴム成分(成分A)100重量部に対し、10〜80重量部程度の範囲が好ましく、より好ましくは45〜60重量部程度の範囲である。さらには、カーボンブラックとは別に、又はカーボンブラックとともに、含水シリカを配合するのも好ましい。含水シリカを用いる場合の配合量は、前記ゴム成分(成分A)100重量部に対し、5〜15重量部の範囲が好ましい。
【0017】
本発明においてはまた、ゴム工業で通常使用されている各種のゴム薬品、例えば、酸化防止剤やオゾン劣化防止剤のような老化防止剤、加硫剤、架橋剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、しゃっ解剤、加工助剤、ワックス、オイル、ステアリン酸、粘着付与剤等の1種又は2種以上を、必要に応じて併用してもよい。これら薬品の配合量は、ゴム組成物の意図された用途により異なるが、それぞれがゴム工業において通常使用されている範囲の量を用いることができる。加硫促進剤は、本発明のゴム組成物においては、スチールコードとの接着性の観点より、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドが好ましく使用されるが、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドは含有しない方が好ましい。
【0018】
本発明のスチールコード被覆用ゴム組成物でスチールコードを被覆することにより、本発明のベルトを製造することができる。スチールコードは、通常、平行に引き揃えた状態で用いられる。
【0019】
スチールコードは、ゴムとの接着性の観点から、黄銅,亜鉛、あるいはこれにニッケルやコバルトを含有する合金でメッキ処理されていることが好ましく、特に黄銅メッキ処理が施されているものが好適である。特に、黄銅メッキ中のCu含有率が75質量%以下、好ましくは55〜70質量%である黄銅メッキ処理が施されたスチールコードが好適である。スチールコードの撚り構造は制限されない。
【0020】
本発明のベルトは、複数枚積層して用いてもよい。本発明のベルトは、ベルト層、ビード部の補強層、サイド部補強層、カーカス等のタイヤ補強材料として使用される。
【0021】
本発明の空気入りタイヤは、本発明のスチールコード被覆用ゴム組成物を用いて、通常の空気入りタイヤの製造方法によって製造される。例えば、本発明のスチールコード被覆用ゴム組成物でスチールコードを被覆し、ベルトを得、該ベルトを、タイヤ成形機上で通常の方法により、トレッド用部材等の他のタイヤ部材に貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤが得られる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例、試験例及び参考例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
参考例1 (レゾルシンとアセトンとの縮合物(成分B)の製造方法)
温度計、攪拌機及びコンデンサーを備えた200ml四つ口フラスコに、レゾルシン37.9g(0.34モル)を仕込み、フラスコ内部を窒素置換した後、アセトン21.9g(0.38モル)及びトルエン70.0gを仕込み、40℃に昇温することにより、レゾルシンを完溶させた。これに2,4,4−トリメチル−2',4',7−トリヒドロキシフラバン1.0gを添加した。さらにフラスコに、p−トルエンスルホン酸1水和物655mgを仕込み、これを還流(内温88℃)で8時間保温した。反応後、室温に冷却し、析出物をろ過し、ウェットケーキを水52gでリパルプ水洗し、同操作にてもう一度水洗した。得られた混合物を50℃、10mmHgで8時間減圧乾燥することにより、半結晶状のレゾルシンとアセトンとの縮合物39.7g(表1参照、以下「B1」と記すこともある)を得た。また当該固形物の組成は次のとおりであった。各成分はクロマト分析にて含有率を測定した。
【0024】
2,4,4−トリメチル−2’,4’,7−トリヒドロキシフラバン 54.1重量%
レゾルシン 4.0重量%
p−トルエンスルホン酸 0.1重量%
【0025】
参考例2 (レゾルシンとアセトンとの縮合物(成分B)の製造方法)
温度計、攪拌機及びコンデンサーを備えた200ml四つ口フラスコに、レゾルシン37.9g(0.34モル)を仕込み、フラスコ内部を窒素置換した後、アセトン21.9g(0.38モル)及びトルエン69.0gを仕込み、40℃に昇温することにより、レゾルシンを完溶させた。当該完溶物を75℃に昇温した後、これに2,4,4−トリメチル−2’,4’,7−トリヒドロキシフラバン5.1gを添加した。さらにフラスコに、96%硫酸0.33gを仕込み、これを内温76〜78℃で11時間保温した。反応後、室温に冷却し、析出物をろ過し、ウェットケーキを水50gでリパルプ水洗し、さらに同操作にてもう一度水洗した。得られた半結晶物を50℃、10mmHgで8時間減圧乾燥することにより、レゾルシンとアセトンとの縮合物(表1参照、以下「B2」と記すこともある)を得た。当該固形物の融点を測定したところ、溶け始めが121℃溶け終わりが134℃であった。また当該固体物の組成は次のとおりであった。
【0026】
2,4,4−トリメチル−2’,4’,7−トリヒドロキシフラバン 76.1重量%
レゾルシン 0.5重量%
硫酸 0.1重量%以下
【0027】
比較参考例1 (比較例1で使用されたレゾルシンとアセトンとの縮合物(成分B)の製造方法)
温度計、攪拌機及びコンデンサーを備えた200ml四つ口フラスコに、レゾルシン33.2g(0.30モル)を仕込み、フラスコ内部を窒素置換した後、アセトン87.5g(1.5モル)を仕込み、40℃に昇温することにより、レゾルシンを完溶させた。さらにフラスコに、p−トルエンスルホン酸1水和物5.73gを仕込み、これを内温65℃で13時間保温した。反応後、室温に冷却し、30%水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、樹脂物をろ過し、水50gでリパルプ水洗し、さらに同操作にてもう一度水洗した。得られた樹脂物を50℃、10mmHgで8時間減圧乾燥することにより、レゾルシンとアセトンとの縮合物(表1参照、以下「B3」と記すこともある)を得た。また当該固体物の組成は次のとおりであった。
【0028】
2,4,4−トリメチル−2’,4’,7−トリヒドロキシフラバン 2.3重量%
レゾルシン 0.1重量%以下
p−トルエンスルホン酸ナトリウム塩 0.1重量%
【0029】
比較参考例2 (比較例2で使用されたレゾルシンとアセトンとの縮合物(成分B)の製造方法)
温度計、攪拌機及びコンデンサーを備えた500ml四つ口フラスコに、レゾルシン100.5g(0.91モル)を仕込み、フラスコ内部を窒素置換した後、アセトン53.0g(0.91モル)を仕込み、40℃に昇温することにより、レゾルシンを完溶させた。さらにフラスコに、32重量%塩酸39.5g、水87.0gを仕込み、これを内温45℃で8時間保温した。反応後、室温に冷却し、樹脂状物をろ過し、水50gで水洗した。得られた樹脂状物を50℃、10mmHgで8時間減圧乾燥することにより、レゾルシンとアセトンとの縮合物(表1参照、以下「B4」と記すこともある)を得た。また当該固体物の組成は次のとおりであった。
【0030】
2,4,4−トリメチル−2’,4’,7−トリヒドロキシフラバン 31.6重量%
レゾルシン 2.2重量%
塩酸 0.1重量%以下
【0031】
比較参考例3 (比較例3で使用されたレゾルシンとアセトンとの縮合物(成分B)の製造方法)
温度計、攪拌機及びコンデンサーを備えた500ml四つ口フラスコに、レゾルシン199.7g(1.8モル)を仕込み、フラスコ内部を窒素置換した後、アセトン202.1g(3.6モル)を仕込み、40℃に昇温することにより、レゾルシンを完溶させた。さらにフラスコに、p−トルエンスルホン酸1水和物1.33gを仕込み、これを内温78℃で3.5時間保温した。反応後、室温に冷却し、30重量%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、さらに20mmHgの減圧下、60℃まで徐々に昇温して、留分を減圧留去することにより、レゾルシンとアセトンとの縮合物342g(表1参照、以下「B5」と記すこともある)を得た。溶け終わりの融点は140℃であった。また当該樹脂状固体物の組成は次のとおりであった。
【0032】
2,4,4−トリメチル−2’,4’,7−トリヒドロキシフラバン 35.2重量%
レゾルシン 4.6重量%
p−トルエンスルホン酸ナトリウム塩 0.4重量%
【0033】
比較参考例4 (比較例4で使用されたレゾルシンとアセトンとの縮合物(成分B)の製造方法)
温度計、攪拌機及びコンデンサーを備えた300ml四つ口フラスコに、レゾルシン86.0g(0.78モル)を仕込み、フラスコ内部を窒素置換した後、アセトン49.8g(0.86モル)を仕込み、35℃に昇温することにより、レゾルシンを完溶させた。さらにフラスコに、p−トルエンスルホン酸1水和物1.64gを仕込み、3時間掛けて92℃に昇温し、さらに同温度で3時間保温した。反応後、室温に冷却し、30重量%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、さらに50mmHgの減圧下、120℃まで徐々に昇温して、留分を減圧留去することにより、レゾルシンとアセトンとの縮合物118g(表1参照、以下「B6」と記すこともある)を得た。また当該固体物の組成は次のとおりであった。
【0034】
2,4,4−トリメチル−2’,4’,7−トリヒドロキシフラバン 69.5重量%
レゾルシン 0.5重量%
p−トルエンスルホン酸ナトリウム塩 1.3重量%
【0035】
比較参考例5 (比較例5で使用されたレゾルシンとアセトンとの縮合物(成分B)の製造方法)
温度計、攪拌機及びコンデンサーを備えた500ml四つ口フラスコに、レゾルシン110.0g(1.0モル)を仕込み、フラスコ内部を窒素置換した後、水100gを加えてレゾルシンを完溶させた。さらにフラスコに濃塩酸10mlを仕込み、つづいてアセトン29.0g(0.5モル)を滴下し、35℃に昇温、同温度で3時間保温した。さらに濃塩酸10mlを仕込み、室温にて14時間保温した。反応後、室温に冷却し、結晶状物をろ過し、水50gで水洗した。得られた結晶状物を50℃、10mmHgで8時間減圧乾燥することにより、レゾルシンとアセトンとの縮合物(表1参照、以下「B7」と記すこともある)64.2gを得た。また当該固体物の組成は次のとおりであった。
【0036】
2,4,4−トリメチル−2’,4’,7−トリヒドロキシフラバン 85.1重量%
レゾルシン 1.0重量%
塩酸 0.1重量%以下
【0037】
比較参考例6 (比較例6で使用されたレゾルシンとアセトンとの縮合物(成分B)の製造方法)
参考製造例5で得られた結晶(2,4,4−トリメチル−2’,4’,7−トリヒドロキシフラバン含量:85.1%)をメタノール及びキシレンの混合溶媒にて、再結晶を行ない、以下の組成を結晶(表1参照、以下「B8」と記すこともある。)を得た。
【0038】
2,4,4−トリメチル−2’,4’,7−トリヒドロキシフラバン 99.6重量%
レゾルシン 0.1重量%以下
塩酸 0.1重量%以下
【0039】
実施例1〜2及び比較例1〜6 (スチールコード被覆ゴム組成物の製造方法)
バンバリーミキサーとして東洋精機製作所製の600mlラボプラストミルを用い、初期の系内温度を150℃として、下記配合処方に基づき、天然ゴム「A1」(RSS#3)、N330カーボンブラック、ステアリン酸、亜鉛華、老化防止剤(N−フェニル−N’−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン及び2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン)及び成分B(参考例1若しくは参考例2で製造されたレゾルシンとアセトンとの縮合物「B1」若しくは「B2」、又は、比較参考例1〜6で製造されたレゾルシンとアセトンとの縮合物「B3」〜「B8」)を投入し、50rpmで15分間混練した後、排出した。このときのゴム温度は約160℃であった。
次いで、この排出ゴムをオープンミルにて、ゴム温の50〜70℃にて、下記配合処方に示したイオウ、加硫促進剤(N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)及びナフテン酸コバルト「C1」(コバルト含量11%)、成分D(メトキシ化メチロールメラミン樹脂「D1」、住友化学(株)製Sumikanol 507)を添加し混練した。各種試験片を作成し、150℃で30分間加硫することにより、加硫スチールコード被覆ゴム組成物を得た。
<スチールコード被覆ゴム配合処方>
【0040】
【表1】

【0041】
得られたスチールコード被覆用ゴム組成物について、動的弾性率、引裂強度、耐発熱性及びゴム中での分散性を測定するための試験を行った。各試験は以下の方法により行い、その結果を表2及び表3に示した。
【0042】
<動的粘弾性試験>
岩本製作所製 動的粘弾性試験機F−IIIを用い、初期歪10%、動的歪0.5%、周波数10Hzにて、20℃における動的弾性率を測定した。動的弾性率は高いほど、高剛性で好ましいことを示す。
【0043】
<引裂強度>
JIS K−6301に準拠して、B型試験片を作成し、6回の平均値をもって測定値とした。
【0044】
<耐発熱性試験>
グッドリッチ フレキソメーカーを用い、直径10mm、高さ20mmの円筒状試験片を作成し、槽内温度40℃、荷重25lbs、ストローク6.35mm、回転数1800rpm、測定時間40分後のゴム試験片の温度を測定し、初期のゴム温度との差異を測定値とした。発熱温度は低い方が好ましい。
【0045】
<ゴム中での分散性>
試験片の外観及び内部における成分Bの分散状態を目視で観察した。分散性が不良である場合には成分Bに起因する白色の微小斑点がゴム表面及び内部に多数見られる。
尚、下表において、成分Bの中の2,4,4−トリメチル−2',4',7−トリヒドロキシフラバンをF成分と記すこともある。
【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
実施例3
実施例1で得たスチールコード被覆用ゴム組成物に、含水シリカを配合することにより、スチールコード被覆用ゴム組成物が得られる。
【0049】
実施例4
実施例1で得たスチールコード被覆用ゴム組成物で、黄銅メッキ処理が施されたスチールコードを被覆することにより、ベルトが得られる。得られるベルトを用いて、通常の製造方法に従い、生タイヤを成形し、得られた生タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、タイヤが得られる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
かくして配合された本発明のスチールコード被覆ゴム組成物は、例えば、ゴム業界で通常実施されている方法に準拠し、成形、加硫等の工程を経ることにより、動的弾性率、引裂強度、耐発熱性及びゴム中での分散性に優れたスチールコード被覆用ゴム及びそれを加工して製造されたベルト層および空気入りタイヤに誘導し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)天然ゴム、スチレンブタジエン共重合ゴム及びブタジエンゴムからなる群から選ばれるゴムを主成分とするゴム成分(成分A)100重量部に対して、
(B)レゾルシンとアセトンとの縮合物であり、当該縮合物の全量に対して、(1)2,4,4−トリメチル−2’,4’,7−トリヒドロキシフラバンを40〜80重量%と、(2)酸又はそのアルカリ金属塩を0〜0.2重量%とを含有してなる縮合物を0.5〜3重量部、
(C)有機コバルト化合物をコバルト含量にして0.1〜0.4重量部、及び、
(D)メトキシ化メチロールメラミン樹脂を0.5〜2重量部
を配合してなることを特徴とするスチールコード被覆用ゴム組成物。
【請求項2】
さらに加硫促進剤を含有してなることを特徴とする請求項1記載のスチールコード被覆用ゴム組成物。
【請求項3】
加硫促進剤が、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドであることを特徴とする請求項2記載のスチールコード被覆用ゴム組成物。
【請求項4】
N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドを含有しないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかの請求項記載のスチールコード被覆用ゴム組成物。
【請求項5】
ヘキサメチレンテトラミンを含有しないことを特徴とする請求項1〜4のいずれかの請求項記載のスチールコード被覆用ゴム組成物。
【請求項6】
さらにゴム成分(成分A)100重量部に対して、カーボンブラックを45〜60重量部配合することを特徴とする請求項1〜5のいずれかの請求項記載のスチールコード被覆用ゴム組成物。
【請求項7】
さらにゴム成分(成分A)100重量部に対して、含水シリカを5〜15重量部配合することを特徴とする請求項1〜6のいずれかの請求項記載のスチールコード被覆用ゴム組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかの請求項記載のゴム組成物で被覆されたスチールコードを含んでなることを特徴とするベルト。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかの請求項記載のゴム組成物を加工して製造された空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2010−18784(P2010−18784A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131885(P2009−131885)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】