説明

ステアリング装置

【課題】コマ部材の軸線方向への移動を規制することができるとともに、偏心ピンによる同コマ部材の支持構造の簡素化を図ることができるステアリング装置を提供する。
【解決手段】舵角比可変機構7は、コマ部材23とともにカム溝22内に設けられて該コマ部材23の移動を案内するガイド機構51を備えた。ガイド機構51は、延伸方向に延びるとともに幅方向におけるコマ部材23側に開口した案内溝53及び該案内溝53をコマ部材23側に付勢するばね部61,63を有する湾曲板ばね52と、案内溝53とコマ部材23に形成された対向溝66との間に延伸方向に移動可能に設けられた転動体73と備えた。そして、転動体73がばね部61,63に付勢されて案内溝53及び対向溝66に係合することにより、コマ部材23が軸線方向へ移動することを規制した状態で、該コマ部材23の延伸方向への移動を案内するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用のステアリング装置には、例えばステアリングに連結された第1軸と、転舵輪に連結された第2軸とを互いに所定量偏心して配置し、これら各軸を舵角比可変機構によって回転伝達可能に連結することにより、操舵角変化と転舵輪の舵角(転舵角)変化との関係が非線形となるように構成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような舵角比可変機構は、各軸の軸線方向と直交する方向に延びた断面コ字状のカム溝を有するカム部材と、カム溝内を摺動可能に設けられた円筒形状のコマ部材と、コマ部材がニードルベアリング等の軸受を介して回転可能に設けられた偏心ピンとを備えてなる。そして、例えばカム部材が第1軸と一体回転可能に連結されるとともに、偏心ピンが第2軸に対して上記所定量よりも大きく偏心した位置において一体回転可能に連結される。こうした舵角比可変機構を備えたステアリング装置では、ステアリング操作により生じる第1軸の回転は、カム溝内におけるコマ部材の摺動及び偏心ピンを中心としたコマ部材の回転を伴って該偏心ピン(コマ部材)が第2軸の同心円上を移動することにより、第2軸に伝達される。これにより、偏心ピンのカム溝内における位置に応じて、ステアリング操作により生じる第1軸の回転角変化と、転舵輪の転舵角変化を規定する第2軸の回転角変化との関係、すなわち操舵角変化と転舵角変化との関係を非線形なものとすることが可能となっている。
【0004】
ところで、このような舵角比可変機構では、コマ部材がカム溝内を移動する際等に、コマ部材が偏心ピンの軸線方向に相対移動する虞があり、例えば同コマ部材がカム溝に衝突することにより異音が発生するといった問題が生じる。そこで、従来では、偏心ピンによりコマ部材を軸線方向移動不能に支持することで、コマ部材の軸線方向への移動を規制している。こうした支持構造としては、例えば図11に示される構造が知られている。詳述すると、偏心ピン101の外周には軸受102が圧入されるとともに、同軸受102の外周には円筒状のカラー103が圧入されている。このカラー103の外周には螺子部103aが形成されている。そして、コマ部材104の内周には、カラー103の螺子部103aに螺合する螺子部104aが形成されており、コマ部材104はカラー103の外周に螺着されることにより、偏心ピン101に対して軸線方向移動不能に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−143429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の構成では、コマ部材104を偏心ピン101に対して軸線方向移動不能に支持するために、偏心ピン101に対して軸受102及びカラー103を圧入するとともに、コマ部材104をカラー103に対して螺着しなければならず、偏心ピン101によるコマ部材104の支持構造が複雑になってしまう。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、コマ部材の軸線方向への移動を規制することができるとともに、偏心ピンによる同コマ部材の支持構造の簡素化を図ることができるステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、互いに所定量偏心して配置された第1軸及び第2軸と、これら前記第1軸及び前記第2軸を回転伝達可能に連結する舵角比可変機構とを備え、前記舵角比可変機構は、前記第1軸に連結されるとともに前記各軸の軸線方向と直交する方向に延びたカム溝を有するカム部材と、前記カム溝内を移動可能に設けられたコマ部材と、前記コマ部材が設けられた偏心ピンとを備えてなり、前記偏心ピンは、前記第2軸から前記所定量よりも大きく偏心した位置において該第2軸と一体回転可能に連結されたステアリング装置において、前記コマ部材とともに前記カム溝内に設けられて該コマ部材の移動を案内するガイド手段を備え、前記ガイド手段は、前記カム溝の延伸方向に延びるとともに前記軸線方向及び前記延伸方向と直交する幅方向に開口した案内溝を形成する溝形成部と、前記案内溝内に前記延伸方向に移動可能に挿入されるガイド部と、前記溝形成部と前記ガイド部とが互いに近接するように付勢する弾性部とを有し、前記ガイド部は、前記弾性部に付勢されて前記案内溝に係合することにより前記コマ部材が前記偏心ピンの軸線方向へ移動することを規制した状態で、該コマ部材の前記延伸方向への移動を案内することを要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、ガイド部が弾性部により付勢されて案内溝に係合することにより、コマ部材が偏心ピンの軸線方向へ移動することが規制される。そのため、従来のように、コマ部材を偏心ピンに固定されたカラーに対して螺着等することにより同偏心ピンに対してその軸線方向への移動を規制しなくともよく、偏心ピンによるコマ部材の支持構造の簡素化を図ることができる。また、上記構成によれば、弾性部によりガイド部が案内溝に係合するように付勢されているため、これらガイド部と案内溝との間の隙間は詰められた状態となる。そのため、例えばステアリング操作に伴うカム部材の回転開始時、或いは車両の転舵輪が縁石に衝突した場合等に生じる逆入力の印加時等において、ガイド部と案内溝とが衝突することを防ぎ、異音の発生を抑制できる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のステアリング装置において、前記幅方向において対向する前記カム溝と前記コマ部材との各対向面のいずれか一方には、前記案内溝と対向する対向溝が形成され、前記ガイド部は、前記案内溝と前記対向溝との間に挟持され、前記延伸方向に転動可能な転動体により構成されたことを要旨とする。
【0011】
上記構成によれば、ガイド部がカム溝の延伸方向に転動可能な転動体により構成されるため、ガイド部が案内溝内を摺動する場合に比べ、コマ部材がカム溝内を移動する際の抵抗を小さくすることができ、コマ部材をカム溝内で円滑に移動させることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のステアリング装置において、前記案内溝を形成するように湾曲した板状の湾曲部、及び前記湾曲部と一体に形成されるとともに該湾曲部を前記各対向面のいずれか一方側に付勢する板状のばね部を有するばね板を備え、前記湾曲部により前記溝形成部が構成され、前記ばね部により前記弾性部が構成されたことを要旨とする。
【0013】
上記構成によれば、溝形成部及び弾性部が一部材からなるばね板により構成されるため、溝形成部と弾性部とをそれぞれ別個の部材により構成する場合に比べ、部品点数を削減できる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のステアリング装置において、前記ばね板は、前記ばね部が前記各対向面のいずれか他方に接触するとともに前記湾曲部と該他方との間に隙間が設けられるように形成されたことを要旨とする。
【0015】
上記構成によれば、ばね板は、ばね部がカム溝及びコマ部材の各対向面のいずれか他方に接触するため、同対向面とばね部との間の隙間が埋められる。そのため、例えばステアリング操作に伴うカム部材の回転開始時等において、ばね部が弾性変形していずれか他方の対向面と衝突することを防ぎ、異音の発生を抑制できる。また、湾曲部と対向面との間に隙間が設けられるため、例えばコマ部材がカム溝内を移動する際等に、湾曲部が対向面に当接して案内溝の形状が変形することを抑制し、確実にコマ部材が偏心ピンの軸線方向へ移動することを規制できる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載のステアリング装置において、板状の基板と、前記基板の前記幅方向両側にそれぞれ設けられた前記ばね板とからなる湾曲板ばねを備え、前記湾曲板ばねは、各ばね板が前記各対向面のいずれか他方に圧接するように形成されたことを要旨とする。
【0017】
上記構成によれば、各ばね板が各対向面のいずれか他方に圧接するように形成されているため、例えばカム溝の対向面に圧接するように形成された場合には、湾曲板ばねはカム溝に圧入状態で挿入されることになる。そのため、コマ部材をカム溝に挿入する前の状態、すなわち湾曲板ばねのばね板がカム溝及びコマ部材の各対向面間に挟まれていない状態で、湾曲板ばねをカム部材に固定でき、舵角比可変機構の組み付け性の向上を図ることができる。また、コマ部材の対向面に圧接するように形成された場合には、コマ部材が湾曲板ばねのばね板間に圧入状態で挿入され、コマ部材をカム溝に挿入する前の状態で、湾曲板ばねをコマ部材に固定できる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のステアリング装置において、前記コマ部材は、潤滑油が含浸された焼結材料により構成され、前記コマ部材には、前記偏心ピンが摺動可能に挿入される挿入孔が形成されたことを要旨とする。
【0019】
上記構成によれば、潤滑油が含浸された焼結材料によりコマ部材が構成されるため、同コマ部材からしみ出る潤滑油によって、コマ部材と偏心ピンとの間の回転抵抗を小さくすることが可能になり、軸受を用いずとも偏心ピンを中心としてコマ部材を安定的に回転させることができる。従って、従来のようにコマ部材と偏心ピンとの間に軸受を介在させる場合に比べ、部品点数を削減できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、コマ部材が軸線方向に移動することを規制することが可能であるとともに、偏心ピンによる同コマ部材の支持構造の簡素化を図ることが可能なステアリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ステアリング装置のステアリングコラム付近の断面図。
【図2】舵角比可変機構近傍の拡大断面図。
【図3】偏心ピンを用いた舵角比可変機構の作用説明図。
【図4】本実施形態の偏心ピン近傍の延伸方向と直交する断面図。
【図5】A−A断面図。
【図6】別の偏心ピン近傍の延伸方向と直交する拡大断面図。
【図7】別の偏心ピン近傍の延伸方向と直交する断面図。
【図8】別の偏心ピン近傍の延伸方向と直交する断面図。
【図9】別の偏心ピン近傍の延伸方向と直交する断面図。
【図10】別の偏心ピン近傍の延伸方向と直交する断面図。
【図11】従来の偏心ピン近傍の延伸方向と直交する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、ステアリング装置1において、一端(同図中、右側の端部)にステアリングホイール2が固定されるステアリングシャフト3を構成するコラムシャフト4は、その両端部が軸受5a,5bに軸支されることによりステアリングコラム6内において回転可能に収容されている。このコラムシャフト4の他端(同図中、左側の端部)は、舵角比可変機構7を介して、同コラムシャフト4の軸線L1からその径方向に所定量偏心して配置された出力軸8の一端に回転伝達可能に連結されている。そして、出力軸8の他端は、自在継手(図示略)を介してインターミディエイトシャフト(図示略)に連結されることにより、そのステアリング操作に伴う回転(操舵トルク)が、ステアリングギヤ(ラック&ピニオン機構)等の図示しない転舵輪の舵角を変更する転舵機構へと伝達されるように構成されている。
【0023】
また、ステアリング装置1は、軸線方向におけるステアリングホイール2の位置(ステアリング位置)の調整を可能とする所謂テレスコ機能を有している。詳述すると、本実施形態のコラムシャフト4は、ステアリングホイール2が固定される中空状のアッパーシャフト11と、該アッパーシャフト11にスプライン嵌合されることにより同アッパーシャフト11に対して軸線方向への摺動が許容されるロアシャフト12とを備えている。また、ステアリングコラム6は、軸受5aを介してアッパーシャフト11を収容支持するアウタチューブ13と、軸受5bを介してロアシャフト12を収容支持するインナチューブ14とを備えており、アウタチューブ13は、その内周にインナチューブ14が挿入されることにより同インナチューブ14に対して軸線方向に摺動可能に設けられている。そして、インナチューブ14及びロアシャフト12に対してアウタチューブ13及びアッパーシャフト11を相対移動させることにより、その軸線方向におけるステアリング位置の調整可能な構成となっている。
【0024】
なお、本実施形態のステアリングコラム6は、図示しないブラケットにより上下方向に傾動可能に支持されており、当該ステアリングコラム6とともにコラムシャフト4を傾動させることにより、上下方向におけるステアリング位置の調整を可能とする所謂チルト機能を有している。
【0025】
図2に示すように、舵角比可変機構7は、コラムシャフト4(ロアシャフト12)の他端に一体回転可能に連結された略直方体状のカム部材21を備えている。このカム部材21には、コラムシャフト4及び出力軸8の軸線方向と直交する方向に延びるとともに出力軸8側に開口した略直線状のカム溝22が形成されている。また、舵角比可変機構7は、カム部材21に形成されたカム溝22内をその延伸方向に移動可能に設けられたコマ部材23と、同コマ部材23が回転可能に設けられる偏心ピン24とを備えている。なお、カム溝22内には、コマ部材23が円滑に移動できるように潤滑用のグリス(図示略)が所定の充填率で充填されている。この偏心ピン24は、上記所定量(コラムシャフト4と出力軸8との偏心量)よりも大きく偏心した位置において、その軸線L2を中心として出力軸8と一体回転可能に連結されている。つまり、本実施形態では、コラムシャフト4が第1軸に相当し、出力軸8が第2軸に相当する。以下、特に断らなければ、「軸線方向」はコラムシャフト4及び出力軸8の軸線方向であり、「延伸方向」はカム溝22の延伸方向である。
【0026】
具体的には、ロアシャフト12の他端には嵌合穴31が形成されるとともに、カム部材21には軸線方向のロアシャフト12側に突出する突出部32が形成されており、同突出部32が嵌合穴31に嵌合することにより、カム部材21はロアシャフト12(コラムシャフト4)と一体回転可能に連結されている。また、出力軸8の一端側には、略円環状の連結部材34が該出力軸8と同軸状に固定されている。この連結部材34には、その中心(出力軸8の軸線L2)から上記所定量よりも大きく離れた位置に、偏心ピン24が固定される取付孔35が形成されている。なお、偏心ピン24は、その軸線L3がコラムシャフト4の軸線L1及び出力軸8の軸線L2と平行になるように設けられている。また、本実施形態では、カム部材21には、カム溝22と連続する収容部36が形成されており、出力軸8の先端は同収容部36内に挿入されている。この収容部36は、出力軸8と干渉してカム部材21の回転を妨げないような断面略円形状に形成されている(図3参照)。
【0027】
従って、コラムシャフト4に連結されたカム部材21の回転は、カム溝22内におけるコマ部材23の移動、及び偏心ピン24を中心とした同コマ部材23の回転により許容される。そして、舵角比可変機構7は、図3に示すように、コマ部材23に連結された偏心ピン24がカム部材21の回転に伴い出力軸8の同心円上を移動することにより、コラムシャフト4の回転が出力軸8に伝達される構成となっている。
【0028】
ここで、同図において、破線で示す円は上記カム部材21の回転に伴い移動する偏心ピン24(の軸心)の軌跡を示す。また、二点鎖線で示す各四角形及び各円は、実線で示すステアリング中立位置(操舵角ゼロ)にあるコマ部材23及び偏心ピン24の位置(P0)から、カム部材21の回転(60°間隔)に応じた同コマ部材23及び偏心ピン24の位置(P1,P2,P1´,P2´,P3)を示している。そして、同図に示されるように、偏心ピン24の位置が「P0」に近いほど、カム部材21の回転角変化に対する同偏心ピン24の位置変化が小さく、また同偏心ピン24の位置が「P3」に近いほど、カム部材21の回転角変化に対する同偏心ピン24の位置変化が大きくなる。
【0029】
このように舵角比可変機構7は、互いに偏心配置されたコラムシャフト4及び出力軸8を回転伝達可能に連結し、且つステアリング操作により生じるコラムシャフト4の回転角変化と出力軸8の回転角変化との関係、すなわち操舵角変化と転舵輪の舵角(転舵角)変化との関係を非線形なものとすることが可能となっている。
【0030】
また、ステアリング装置1は、所謂コラム式の電動パワーステアリング装置として構成されている。図1及び図2に示すように、出力軸8は、軸受41a〜41cに軸支されることにより、ステアリングコラム6の他端に固定されたセンサハウジング42及びウォームハウジング43内において回転自在に収容されている。また、出力軸8の外周には、ウォームホイール44が固定されている。そして、このウォームホイール44及び図示しないウォームギヤにより構成される変速機構により、モータ(図示略)の回転を減速してその出力軸8に伝達することにより、操舵系に対してアシスト力を付与することが可能な構成となっている。
【0031】
ここで、ステアリング装置1には、コラムシャフト4を介して伝達される操舵トルクを検出するためのトルクセンサ46が設けられている。具体的には、出力軸8は、上記連結部材34に連結される上側軸47と、上記ウォームホイール44が設けられた下側軸48とをトーションバー49を介して連結することにより構成されている。そして、トルクセンサ46は、そのトーションバー49の捻れ角を測定することにより、操舵系に入力される操舵トルクを検出するように構成されている。そして、図示しない制御装置がトルクセンサ46により検出される操舵トルクに基づいて、操舵系に対して付与するアシスト力を制御する構成となっている。
【0032】
(コマ部材のガイド構造)
次に、本実施形態の舵角比可変機構におけるコマ部材のカム溝内での移動を案内するガイド構造について説明する。
【0033】
図4及び図5に示すように、舵角比可変機構7は、コマ部材23とともにカム溝22内に設けられ、偏心ピン24の軸線方向への移動を規制した状態で、コマ部材23の延伸方向への移動を案内するガイド手段としてのガイド機構51を備えている。
【0034】
ガイド機構51は、カム溝22内に軸線L3方向の位置が保持された状態で設けられる湾曲板ばね52を備えている。この湾曲板ばね52は、軸線方向及び延伸方向と直交する幅方向(図4及び図5における左右方向)におけるコマ部材23側に開口するとともに延伸方向(図5における上下方向)に延びた案内溝53を有し、同案内溝53が幅方向におけるコマ部材23側に付勢されるように形成されている。
【0035】
詳述すると、湾曲板ばね52は、平板状に形成された基板55と、同基板55の幅方向両側にそれぞれ設けられるとともに案内溝53が形成されたばね板56とから構成されており、延伸方向視で略コ字状に形成されている。本実施形態の湾曲板ばね52は、金属材料からなる板材を折曲することにより構成されており、基板55と各ばね板56とは一体形成されている。なお、各ばね板56は、偏心ピン24の軸線L3に関して対称な形状に形成されている。
【0036】
具体的には、ばね板56は、基板55の幅方向端部からコマ部材23側に折り返されて同幅方向に弾性変形可能な板状のばね部61を有している。また、ばね板56は、同ばね部61の軸線方向における下端(図4における下端)から延出された板状の湾曲部62を有している。この湾曲部62は、延伸方向視で幅方向におけるコマ部材23側が幅広となる略V字状に湾曲しており、同湾曲部62により延伸方向視で略V字状の案内溝53が形成されている。従って、本実施形態では、湾曲部62により溝形成部が構成されている。さらに、ばね板56は、湾曲部62のばね部61と反対側の端部から幅方向におけるコマ部材23と反対側に折り返されて、幅方向に弾性変形可能な板状のばね部63を有している。これらばね部61,63及び湾曲部62は一体形成されており、湾曲部62はばね部61,63により幅方向におけるコマ部材23側に付勢されている。従って、本実施形態では、ばね部61,63により弾性部が構成されている。
【0037】
そして、湾曲板ばね52は、その幅方向長さがカム溝22の幅方向長さよりも僅かに大きく形成されており、各ばね板56が同カム溝22のコマ部材23と幅方向において対向する一対の対向面64に圧接するように形成されている。すなわち、湾曲板ばね52は、カム溝22の対向面64間に圧入状態で挿入されることになり、カム部材21に固定されている。また、ばね板56は、湾曲板ばね52がカム溝22内に圧入された状態で、そのばね部61,63が対向面64に接触した状態で固定されるとともに、その湾曲部62と対向面64との間に隙間が設けられるように形成されている。
【0038】
一方、コマ部材23は、略直方体状に形成されるとともに、同コマ部材23のカム溝22と幅方向において対向する各対向面65には、カム溝22の延伸方向に延びる対向溝66が案内溝53と対向する位置にそれぞれ形成されている。この対向溝66は、幅方向における案内溝53側に開口するとともに、延伸方向視で略V字状に形成されている。また、対向溝66の延伸方向両側端部には、同対向溝66を閉塞する閉塞部67が形成されている(図5参照)。
【0039】
本実施形態のコマ部材23は、潤滑油を含浸させた多孔質の焼結金属により構成されており、同コマ部材23の略中央には、軸線方向に貫通した挿入孔71が形成されている。この挿入孔71内には、偏心ピン24が挿入されている。そして、偏心ピン24の外周面が挿入孔71の内周面に対して摺動することにより、コマ部材23が偏心ピン24を中心として回転可能に構成されている。なお、本実施形態では、偏心ピン24の外周面及び挿入孔71の内周面には、鏡面加工が施されており、摩擦係数が低くなるように構成されている。
【0040】
また、ガイド機構51は、案内溝53と対向溝66との間に設けられるガイド部としての転動体73を備えている。本実施形態では、転動体73は、延伸方向に転動可能な球形状に形成されており、案内溝53と対向溝66との間に複数(本実施形態では、4つ)設けられている。なお、延伸方向の両側に配置された転動体73は、閉塞部67に当接することにより、案内溝53及び対向溝66内から脱落することが防止されるようになっている。
【0041】
そして、転動体73は、上記のように各案内溝53(各湾曲部62)がばね部61,63により幅方向におけるコマ部材23側に付勢されることにより、案内溝53と対向溝66との間で挟圧されている。これにより、各転動体73は、案内溝53及び対向溝66の両方に係合し、コマ部材23がこれら転動体73を介して湾曲板ばね52に支持された状態となる。従って、コマ部材23は、転動体73により軸線方向への移動が規制された状態、換言すればその軸線L3方向の位置が保持された状態で、転動体73が案内溝53及び対向溝66内を転動することにより、カム溝22内をその延伸方向に移動する構成となっている。
【0042】
なお、本実施形態では、ばね板56(案内溝53)のカム溝22内での軸線L3方向の位置は、湾曲板ばね52がカム部材21に固定されること、及びカム溝22とコマ部材23との間に挟持されてばね部61,63が対向面64と摩擦係合することにより、保持されている。また、案内溝53及び対向溝66の内面は、それぞれ転動体73の曲率よりも小さな曲率を有するように形成されており、転動体73は案内溝53及び対向溝66に対してそれぞれ2点ずつ接触する構成となっている。
【0043】
そして、このように構成された舵角比可変機構7では、ばね部61,63により転動体73が案内溝53及び対向溝66に係合するように付勢されているため、これら転動体73と案内溝53との間の隙間は詰められた状態となる。また、湾曲板ばね52がカム溝22に圧入されることにより固定されており、ばね部61,63が対向面64に接触しているため、これらばね部61,63と対向面64との隙間は詰められた状態となる。従って、例えばステアリング操作に伴うカム部材21の回転開始時や逆入力の印加時等において、転動体73が案内溝53又は対向溝66に衝突することに起因して発生する異音、及びばね部61,63がカム溝22の対向面64に衝突することに起因して発生する異音が抑制される。
【0044】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)舵角比可変機構7は、コマ部材23とともにカム溝22内に設けられて該コマ部材23の移動を案内するガイド機構51を備えた。ガイド機構51は、延伸方向に延びるとともに幅方向におけるコマ部材23側に開口した案内溝53及び該案内溝53をコマ部材23側に付勢するばね部61,63を有する湾曲板ばね52と、案内溝53とコマ部材23に形成された対向溝66との間に延伸方向に移動可能に設けられた転動体73と備えた。そして、転動体73がばね部61,63に付勢されて案内溝53及び対向溝66に係合することにより、コマ部材23が軸線方向へ移動することを規制した状態で、該コマ部材23の延伸方向への移動を案内するようにした。
【0045】
上記構成によれば、転動体73がばね部61,63に付勢されて案内溝53及び対向溝66に係合することにより、コマ部材23が軸線方向へ移動することが規制される。そのため、従来のように、コマ部材23を偏心ピン24に固定されたカラーに対して螺着等することにより同偏心ピン24に対してその軸線方向への移動を規制しなくともよく(図11参照)、偏心ピン24によるコマ部材23の支持構造の簡素化を図ることができる。また、上記構成によれば、ばね部61,63により転動体73が案内溝53及び対向溝66に係合するように付勢されているため、これら転動体73と案内溝53及び対向溝66との間の隙間は詰められた状態となる。そのため、例えばステアリング操作に伴うカム部材21の回転開始時等において、転動体73と案内溝53及び対向溝66とが衝突することを防ぎ、異音の発生を抑制できる。これにより、静粛性に優れたステアリング装置1を提供することができる。
【0046】
(2)コマ部材23の対向面65に、案内溝53と対向する対向溝66を形成し、案内溝53と対向溝66との間に挟持されて延伸方向に転動可能な転動体73を設けた。上記構成によれば、転動体73が案内溝53と対向溝66との間で転動するため、転動体73が案内溝53内を摺動する場合に比べ、コマ部材23がカム溝22内を移動する際の抵抗を小さくすることができる。
【0047】
(3)案内溝53を形成するように湾曲した板状の湾曲部62、及び湾曲部62と一体に形成されるとともに幅方向に弾性変形可能な板状のばね部61,63からなるばね板56を備えた。これにより、湾曲部62とばね部61,63とをそれぞれ別個の部材により構成する場合に比べ、部品点数を削減できる。
【0048】
(4)ばね板56を、ばね部61,63がカム溝22の対向面64に接触するとともに湾曲部62と同対向面64との間に隙間が設けられるように形成した。上記構成によれば、ばね部61,63がカム溝22の対向面64に接触するため、同対向面64とばね部61,63との間の隙間が埋められた状態となる。そのため、例えばステアリング操作に伴うカム部材21の回転開始時等において、ばね部61,63が対向面64と衝突することを防ぎ、異音の発生を抑制できる。また、湾曲部62と対向面64との間に隙間が設けられるため、例えばコマ部材23がカム溝22内を移動する際等に、湾曲部62が対向面64に当接して案内溝53の形状が変形することを抑制し、確実にコマ部材23が偏心ピン24の軸線方向へ移動することを規制できる。
【0049】
(5)湾曲板ばね52を、ばね板56がカム溝22の対向面64に圧接するように形成したため、同湾曲板ばね52はカム溝22の対向面64間に圧入状態で挿入される。そのため、コマ部材23をカム溝22に挿入する前の状態、すなわち湾曲板ばね52のばね板56がカム溝22及びコマ部材23の各対向面64,65間に挟まれていない状態で、同湾曲板ばね52をカム部材21に固定でき、舵角比可変機構7の組み付け性の向上を図ることができる。
【0050】
(6)コマ部材23を、潤滑油が含浸された焼結材料により構成し、コマ部材23に偏心ピン24が摺動可能に挿入される挿入孔71を形成した。そのため、同コマ部材23からしみ出る潤滑油によって、コマ部材23と偏心ピン24との間の回転抵抗を小さくすることが可能になり、軸受を用いずとも偏心ピン24を中心としてコマ部材を安定的に回転させることができる。従って、従来のようにコマ部材23と偏心ピン24との間に軸受を介在させる場合に比べ、部品点数を削減できる。
【0051】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
・上記実施形態では、コマ部材23を、焼結含油金属により構成し、同コマ部材23の挿入孔71に偏心ピン24を摺動可能に挿入したが、これに限らず、コマ部材23を焼結含油金属以外の材料で構成し、偏心ピン24との間にニードルベアリング等の軸受を介在させる構成としてもよい。
【0052】
・上記実施形態では、偏心ピン24の外周面及び挿入孔71の内周面に鏡面加工を施すことにより、これらの摩擦係数が低くなるようにしたが、これに限らず、例えば外周面に低摩擦係数を有する樹脂材料(例えば四フッ化エチレン樹脂等)からなる樹脂層や固体潤滑剤(例えば二硫化モリブデン等)をコーティングするようにしてもよい。また、外周面及び内周面の摩擦係数が低くなるような表面処理を施さずともよい。
【0053】
・上記実施形態において、図6に示すように、案内溝53及び対向溝66に、低摩擦係数を有する樹脂材料からなる樹脂層81,82をコーティングするようにしてもよい。このように構成することにより、転動体73が転動する際の転がり抵抗を小さくすることができ、より一層コマ部材23をカム溝22内で円滑に移動させることができる。また、図6に示す構成において、固体潤滑剤等をコーティングするようにしてもよい。さらに、案内溝53及び対向溝66の内面の摩擦係数が低くなるような表面処理(鏡面加工等)を施してもよい。
【0054】
・上記実施形態では、ばね板56を、湾曲板ばね52がカム溝22内に圧入された状態で、ばね部61,63が対向面64に接触するとともに、湾曲部62と対向面64との間に隙間が設けられるように形成したが、これに限らず、ばね部61,63及び湾曲部62が対向面64に接触するようにばね板56を形成してもよい。
【0055】
・上記実施形態では、転動体73が案内溝53及び対向溝66に対してそれぞれ2点ずつ接触するようにしたが、これに限らず、例えば転動体73が案内溝53及び対向溝66に対してそれぞれ線接触するようにしてもよい。
【0056】
・上記実施形態では、転動体73を球形状に形成したが、これに限らず、延伸方向に転動可能であれば、例えば円柱状等の他の形状に形成してもよい。また、転動体73を案内溝53と対向溝66との間に1つだけで設けるようにしてもよい。
【0057】
・上記実施形態では、転動体73が案内溝53及び対向溝66内を転動することにより、コマ部材23がカム溝22内を移動するようにした。しかし、これに限らず、例えば隣接する転動体73同士が密着するように対向溝66内に同転動体73を配置し、各転動体73が転動せず、案内溝53内を摺動することにより、コマ部材23がカム溝22内を移動するようにしてもよい。
【0058】
・上記実施形態では、コマ部材23の対向面65に対向溝66を形成し、案内溝53と対向溝66との間に、これら案内溝53及び対向溝66に係合するとともに延伸方向に転動可能な転動体73を配置したが、これに限らない。例えば、図7に示すように、コマ部材23の対向面65に、案内溝53に係合するとともに延伸方向に摺動可能な凸部84を形成してもよい。
【0059】
・上記実施形態では、カム部材21に湾曲板ばね52を固定するとともに、コマ部材23に対向溝66を形成したが、これに限らない。例えば、図8に示すように、湾曲板ばね52をコマ部材23に固定するとともに、カム溝22の対向面64に対向溝86を形成してもよい。この場合において、例えば湾曲板ばね52の各ばね板56間の幅方向長さを、コマ部材23の幅方向長さよりも僅かに短くなるように形成し、各ばね板56がコマ部材23の対向面65に圧接するようにしてもよい。すなわち、同コマ部材23を各ばね板56間に圧入状態で挿入し、湾曲板ばね52をコマ部材23に固定するようにしてもよい。
【0060】
また、カム部材21及びコマ部材23にそれぞれ湾曲板ばね52を固定し、案内溝53間に転動体73を配置するようにしてもよい。
・上記実施形態では、湾曲板ばね52に案内溝53を形成したが、これに限らず、例えば図9に示すように、コマ部材23に案内溝を形成し、湾曲板ばね52に案内溝に挿入されるガイド部を形成してもよい。具体的には、同図に示すように、コマ部材23の対向面65には、幅方向に開口するとともに延伸方向に延びた案内溝88が形成されている。また、湾曲板ばね52におけるばね板56のばね部61,63間には、対向溝66に係合するガイド部としての突出部89が形成されている。なお、この場合には、コマ部材23が溝形成部として構成される。
【0061】
・上記実施形態では、湾曲板ばね52をばね板56がカム溝22の対向面64に圧接するように形成し、同湾曲板ばね52がカム溝22の対向面64間に圧入状態で挿入されるようにしたが、これに限らず、ばね板56が対向面64に圧接しないように湾曲板ばね52を形成してもよい。例えば、図10に示すように、湾曲板ばね52をばね板56のみにより構成し、カム溝22の対向面64に凹部91を形成するとともに、この凹部91に湾曲板ばね52を収容するようにしてもよい。この場合には、ばね板56(案内溝53)のカム溝22内での軸線L3方向の位置は、湾曲板ばね52がコマ部材23(転動体73)とカム溝22との間に挟持されてばね部61,63が対向面64(凹部91)と摩擦係合することにより、保持される。
【0062】
・上記実施形態では、湾曲板ばね52をカム溝22の対向面64間に圧入状態で挿入し、ばね部61,63が同対向面64に接触するようにしたが、これに限らず、湾曲板ばね52のばね板56とカム溝22の対向面64との間に隙間を空けた状態で湾曲板ばね52を挿入し、ばね部61,63が対向面64から離間した状態となるようにしてもよい。なお、この場合には、例えば基板55をカム溝22の底部に対して螺子等により固定することにより、湾曲板ばね52をカム部材21に固定し、ばね板56(案内溝53)のカム溝22内での軸線L3方向の位置が保持されるようにする。
【0063】
・上記実施形態では、ばね部61,63と湾曲部62とを一体形成したが、これに限らず、これらばね部61,63と湾曲部62とをそれぞれ別体で構成してもよい。この場合において、ばね部61,63に代えてゴム等の弾性部材により案内溝53(湾曲部62)を付勢する弾性部を構成するようにしてもよい。また、基板55とばね板56とをそれぞれ別体で構成してもよい。
【0064】
・上記実施形態では、基板55の幅方向両側にばね板56を設けるとともに、コマ部材23の幅方向両側の各対向面65にそれぞれ対向溝66を形成したが、これに限らず、基板55の幅方向における一方側にのみばね板56を設けるとともに、同ばね板56と対向するコマ部材23の対向面65にのみ対向溝66を形成するようにしてもよい。
【0065】
・上記実施形態では、コラムシャフト4を第1軸として構成し、出力軸8を第2軸として構成した。しかし、これに限らず、出力軸8を第1軸として構成して該出力軸8にカム部材21を設けるとともに、コラムシャフト4を第2軸として構成して該コラムシャフト4に偏心ピン24を設けるようにしてもよい。
【0066】
・上記実施形態では、本発明をチルト機能及びテレスコ機能を有するステアリング装置に適用したが、これに限らず、テレスコ機能のみ、あるいはチルト機能のみを有するステアリング装置に適用してもよい。
【0067】
・上記実施形態では、本発明をコラムアシスト式の電動パワーステアリング装置(EPS)として構成されたステアリング装置1に具体化した。しかし、これに限らず、例えば所謂ラックアシスト式等、コラムアシスト以外のEPSや油圧式のパワーステアリング装置、或いはノンアシスト型のステアリング装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…ステアリング装置、7…舵角比可変機構、21…カム部材、22…カム溝、23…コマ部材、24…偏心ピン、51…ガイド機構、52…湾曲板ばね、53,88…案内溝、55…基板、56…ばね板、61,63…ばね部、62…湾曲部、64,65…対向面、66,86…対向溝、71…挿入孔、73…転動体、84…凸部、89…突出部91…凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに所定量偏心して配置された第1軸及び第2軸と、これら前記第1軸及び前記第2軸を回転伝達可能に連結する舵角比可変機構とを備え、
前記舵角比可変機構は、前記第1軸に連結されるとともに前記各軸の軸線方向と直交する方向に延びたカム溝を有するカム部材と、前記カム溝内を移動可能に設けられたコマ部材と、前記コマ部材が設けられた偏心ピンとを備えてなり、
前記偏心ピンは、前記第2軸から前記所定量よりも大きく偏心した位置において該第2軸と一体回転可能に連結されたステアリング装置において、
前記コマ部材とともに前記カム溝内に設けられて該コマ部材の移動を案内するガイド手段を備え、
前記ガイド手段は、
前記カム溝の延伸方向に延びるとともに前記軸線方向及び前記延伸方向と直交する幅方向に開口した案内溝を形成する溝形成部と、
前記案内溝内に前記延伸方向に移動可能に挿入されるガイド部と、
前記溝形成部と前記ガイド部とが互いに近接するように付勢する弾性部とを有し、
前記ガイド部は、前記弾性部に付勢されて前記案内溝に係合することにより前記コマ部材が前記偏心ピンの軸線方向へ移動することを規制した状態で、該コマ部材の前記延伸方向への移動を案内することを特徴とするステアリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のステアリング装置において、
前記幅方向において対向する前記カム溝と前記コマ部材との各対向面のいずれか一方には、前記案内溝と対向する対向溝が形成され、
前記ガイド部は、前記案内溝と前記対向溝との間に挟持され、前記延伸方向に転動可能な転動体により構成されたことを特徴とするステアリング装置。
【請求項3】
請求項2に記載のステアリング装置において、
前記案内溝を形成するように湾曲した板状の湾曲部、及び前記湾曲部と一体に形成されるとともに該湾曲部を前記各対向面のいずれか一方側に付勢する板状のばね部を有するばね板を備え、
前記湾曲部により前記溝形成部が構成され、
前記ばね部により前記弾性部が構成されたことを特徴とするステアリング装置。
【請求項4】
請求項3に記載のステアリング装置において、
前記ばね板は、前記ばね部が前記各対向面のいずれか他方に接触するとともに前記湾曲部と該他方との間に隙間が設けられるように形成されたことを特徴とするステアリング装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のステアリング装置において、
板状の基板と、前記基板の前記幅方向両側にそれぞれ設けられた前記ばね板とからなる湾曲板ばねを備え、
前記湾曲板ばねは、各ばね板が前記各対向面のいずれか他方に圧接するように形成されたことを特徴とするステアリング装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のステアリング装置において、
前記コマ部材は、潤滑油が含浸された焼結材料により構成され、
前記コマ部材には、前記偏心ピンが摺動可能に挿入される挿入孔が形成されたことを特徴とするステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−240810(P2011−240810A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114371(P2010−114371)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】