説明

ステッピングモータ制御装置

【課題】実効電力を減少させつつ、ユーザに違和感の少ないアクチュエータ機能を実現するステッピングモータ制御装置を提供すること。
【解決手段】ステッピングモータ31〜33の駆動を制御する制御装置10と、制御装置10に含まれ、電源電圧検出部22が検出する電源電圧に基づいて、ステッピングモータ31〜33の駆動モードを、低トルク高速駆動させる通常モードと高トルク低速駆動させる低電圧モードとに切り換えるモード切換制御部11と、モード切換制御部11に含まれ、電源保護条件の成立時には、ステッピングモータ31〜33を同時に複数駆動させる場合、駆動モードを低電圧モードとするとともに、低電圧モードによる低周波の出力信号の少なくとも一部をPWM波形の出力信号とする出力抑制処理を実行する出力抑制制御部12と、を備えていることを特徴とするステッピングモータ制御装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッピングモータの駆動を制御するステッピングモータ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のステッピングモータの駆動を制御するステッピングモータ制御装置において、電源電圧に応じてステッピングモータの駆動モードを切り換えて、低電圧によるトルク不足を防止する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この従来のステッピングモータ制御装置は、電源電圧が所定の電圧以上の通常時は、ステッピングモータを低トルク高速駆動させ、所定の電圧以下の低電圧時は、ステッピングモータを高トルク低速駆動させて低電圧時のトルク不足を防止している。
さらに、従来技術では、複数のステッピングモータを同時に駆動させる場合に、駆動速度の低下による弊害を防止するため、複数のアクチュエータを一端停止させた後、優先順位の高いものから順に、ステッピングモータを、1つずつ駆動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4660833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数のステッピングモータを同時に駆動させると電源に対する負荷が大きくなり、電源保護性能が低下する。
そこで、このように複数のステッピングモータを同時に駆動させる際の電源保護のために、上述の技術を適用して、全てのステッピングモータを一旦停止させ、優先順位の高いステッピングモータから順に駆動させた場合、以下のような問題が生じる。
すなわち、複数のステッピングモータを優先度の高いものから1つずつ順に駆動させた場合、この優先度の高いステッピングモータが動き終わるまでは他のステッピングモータは停止したままである。したがって、停止させているステッピングモータによる機能が発揮されないことによりユーザに違和感を与える。
加えて、一旦停止させたステッピングモータに関しては、再起動時に大きな起動力が必要となり、その分、電源に対する負荷が増加するとともに動作時間も増加し、電源保護性能の悪化を招く。
【0005】
そこで、本発明では、電源保護を図りつつ、ユーザに違和感を与えにくいステッピングモータの駆動状態を実現するステッピングモータ制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明は、複数のステッピングモータと、これらステッピングモータの駆動電源と、この駆動電源の電圧を検出する電圧検出部を含む駆動条件検出部と、この駆動条件検出部からの入力に基づいて前記ステッピングモータに対し、設定された周波数のON/OFFの駆動信号を出力して前記ステッピングモータの駆動を制御する駆動制御部と、前記駆動制御部に含まれ、あらかじめ設定された電源保護条件の成立時には、前記ステッピングモータを同時に複数駆動させる場合、前記駆動信号のON波形を、その一部に前記周波数よりも高周波のPWM波形を形成するとともに、残りの波形部分に速度低下を抑制するための非PWM波形を形成する出力抑制処理を実行する出力抑制制御部と、を備えていることを特徴とするステッピングモータ制御装置とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明のステッピングモータ制御装置では、電源負荷条件の成立時にステッピングモータを同時に複数駆動させるときには、出力抑制制御部が出力抑制処理を実行し、駆動信号のON波形を、その一部に高周波のPWM波形を形成するとともに、速度低下を抑制するための非PWM波形を形成する。
したがって、ステッピングモータは、複数が同時に駆動するため、一旦、全てを停止させた後に順に駆動させるものと比較して、ユーザに違和感を与えにくい。
そして、ステッピングモータへの駆動信号のON波形の一部をPWM波形としてON時間を間引いているため、ON波形をフルにON出力した場合と比較して、電源負荷を軽減でき、かつ、停止状態から起動させた場合と比較しても、電源負荷を軽減でき、電源保護を図ることができる。
しかも、このとき、ON波形には、PWM波形化による速度低下を抑制する非PWM波形を形成するため、ON波形の全てをPWM波形とするものと比較して、速度低下や停止による脱調を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態のステッピングモータ制御装置を示すブロック図である。
【図2】実施の形態のステッピングモータ制御装置での通常モードにおける出力信号の波形と低電圧モードにおける出力信号の波形とを示すタイムチャートである。
【図3】実施の形態のステッピングモータ制御装置において出力信号停止時の負荷による慣性駆動を説明するタイムチャートである。
【図4】実施の形態のステッピングモータ制御装置において出力抑制処理を実行したときの出力信号の波形を示すタイムチャートである。
【図5】実施の形態のステッピングモータ制御装置において出力信号の波形を形成する部分の構成を示す回路構成図である。
【図6】実施の形態のステッピングモータ制御装置におけるモード切換処理および出力抑制処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】実施の形態のステッピングモータ制御装置の駆動モード特性と閾値との関係を示す特性図である。
【図8】実施の形態のステッピングモータ制御装置において出力抑制処理の実行時の出力信号の波形を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図8に基づいて、実施の形態のステッピングモータ制御装置を説明する。
【0010】
制御装置(駆動制御部)10は、複数のステッピングモータ31,32,33および他のアクチュエータ群34の駆動を制御する。
【0011】
ステッピングモータ31〜33は、車両に搭載された空調装置においてインテークドアやモードドアなどのドア41,42,43の開度を変更するために駆動する。なお、図示する上でステッピングモータ31〜33およびドア41〜43として、3個示しているが、制御対象のステッピングモータおよびドアの数は、2以上の複数であれば、「3」に限定されるものではない。
また、他のアクチュエータ群34は、空調装置のファンやコンプレッサなどを含む空調装置におけるステッピングモータ31〜33以外のアクチュエータである。
【0012】
制御装置10は、センサ群21、電源電圧検出部22、操作部23から信号が入力される。センサ群21は、空調装置の制御に必要な車室の温度環境に関するための、車室温度センサや車外温度センサや日射量センサなどが含まれる。
電源電圧検出部22は、ステッピングモータ31〜33などを駆動させる駆動電源50の電圧である電源電圧Vdeを検出する。
操作部23は、空調装置の制御のために乗員が温度や風量などの設定操作を行う部分である。
【0013】
制御装置10は、センサ群21、電源電圧検出部22、操作部23からの入力信号に基づいて、空調装置の風量や吹出空気温度の制御を行なうために、各ステッピングモータ31〜33およびアクチュエータ群34を駆動させて、各ドア41〜43の開度を含む空調装置の作動を制御する。
【0014】
さらに、制御装置10は、複数のステッピングモータ31〜33の駆動を制御するのにあたり、電源電圧検出部22が検出する電源電圧Vdeに基づいて、複数のステッピングモータ31〜33の駆動モードを切り換えるモード切換制御部11を備えている。
このモード切換制御部11は、電源電圧Vdeが低下した場合に、実効電力を減少させるべく、ステッピングモータ31〜33の駆動モードを切り換える制御を行なうものであり、以下、このモード切換制御について説明する。
【0015】
本実施の形態では、各ステッピングモータ31〜33の駆動モードとして、通常モードと低電圧モードが設定されている。
通常モードは、ステッピングモータ31〜33を、低トルク高速駆動させるモードである。この通常モードでは、モード切換制御部11は、ステッピングモータ31〜33を低トルク高速駆動させるのにあたり、図2に示す、x,yの二相のON/OFFのパルス信号を出力するもので、このときの周波数を第1の周波数f1とする。なお、図2に示すように、通常モードにおける1パルスのON信号の出力時間をtp1とする。
【0016】
一方、低電圧モードでは、モード切換制御部11は、ステッピングモータ31〜33を、高トルク低速駆動させる。この低電圧モードでは、モード切換制御部11は、図2に示すように、x,yの二相のON/OFFのパルス信号を、第1の周波数f1よりも低周波の第2の周波数f2で出力する。この低電圧モードで駆動した場合、ステッピングモータ31〜33の電力消費量が、通常モードと比較して低減される。また、図2に示すように、低電圧モードでは、出力信号における1パルスのON信号の出力時間(波長)tp2は、通常モードにおけるON信号の出力時間tp1よりも長くなる。
なお、各ステッピングモータ31〜33への出力信号は、図示のような二相のものに限定されるものではなく、ステッピングモータの巻き線構造に応じ、3相、5相などの出力信号を用いてもよい。
【0017】
次に、各ステッピングモータ31〜33の負荷について説明を加える。
図1に示すように、各ステッピングモータ31〜33には、それぞれドア41〜43を含む負荷が取り付けられている。したがって、図3に示すように、ステッピングモータ31〜33に対する出力信号を、図示の時点Tsで停止した場合、ステッピングモータ31〜33は、慣性駆動を行い、完全に停止するまでには時間Tinaを要する。よって、通常モードおよび低電圧モードにおいて、ON/OFFの出力信号のOFF時間は、この時間Tinaよりも短い時間に設定しており、ステッピングモータ31〜33が停止することはない。
【0018】
次に、図1に示す出力抑制制御部12について説明する。
この出力抑制制御部12は、上述した低電圧モードにおいて、ステッピングモータ31〜33を同時に複数駆動させる場合には、出力抑制処理を実行する。
【0019】
この出力抑制処理では、低電圧モードにおけるON出力信号の一部を、図4に示すように、第2の周波数f2よりも高周波のPWM波形として、ON出力時間を間引いて短くしている。さらに、本実施の形態では、低電圧モードにおけるON出力の全体の出力時間tp2はそのままとし、上記のように一部をPWM波形とし、かつ、そのON出力信号の終端には、ステッピングモータ31〜33の速度低下を抑制するための非PWM波形部分Paを形成している。言い換えると、低電圧モードにおける1周期のON出力信号において、始端からあらかじめ設定された中間までの時間tp3をPWM波形とし、その残りの時間(tp2−tp3)を非PWM波形部分Paとして残すようにしている。
すなわち、実施の形態では、ON出力信号のPWM波形化によりステッピングモータ31〜33がトルク不足となって脱調したり停止したりしないように、この非PWM波形部分Paを形成することで、PWM波形化する前の速度に戻すようにしている。
これを図4により説明すると、ON出力信号を時間tp3だけPWM波形化して間引くと、ステッピングモータ31〜33の駆動速度が徐々に低下する。そこで、非PWM波形部分Paの出力によりステッピングモータ31〜33の速度を、PWM波形とする前の速度に戻している。この非PWM波形部分Paの出力時間(tp2−tp3)は、このように駆動速度を元に戻すことができる時間に、あらかじめ設定されている。
【0020】
上述のモード切換制御および出力抑制処理を行う回路構成を、図5により説明する。
図5に示す制御装置10のモード切換制御部11からステッピングモータ31,32へ信号を出力する部分には、それぞれ、ステッピングモータ31,32に対してx,yの2相の出力を行う出力回路10a,10bが設けられている。さらに、この出力回路10a,10bに、モード切換制御部11から、出力回路10a,10bの出力をOFFとする割り込み信号(INT1,INT2)を出力するとともに、このOFF信号の割り込み時間を切り換えることにより、図2に示す低トルク高速駆動の出力信号と、高トルク低速駆動の出力信号とが形成される。
【0021】
図5に戻り、各出力回路10a,10bには、スイッチ素子10cが接続されている。このスイッチ素子10cに、制御装置10の出力抑制制御部12から高周波の波形が回路10dを介して与えられた際に、各出力回路10a,10bのON出力信号が、図4に示すように間引かれてPWM波形が形成される。また、図5に示すように、スイッチ素子10cによる低電圧モードでのON出力信号におけるPWM波形の形成は、回路10fからのHi出力が停止されてスイッチ素子10eがOFF状態となっている間実行される。なお、回路10fにHi出力されてスイッチ素子10eがON状態となっているときには、スイッチ素子10cはOFFとなり、ON出力信号におけるPWM波形は形成されず、非PWM波形部分Paを形成することができる。
ここで、スイッチ素子10eへの出力は、前述の割り込み信号(INT1,INT2)の立ち上がりあるいは立ち下がりをトリガとして行われる。
また、図5では、スイッチ素子10c,10eは、x相の出力回路10aのみに接続して表示しているが、y相の出力回路10bにも同様の構成が接続されることで、y相のON出力信号にもPWM波形が形成される。
【0022】
次に、上述のモード切換制御部11によるモード切換および出力抑制制御部12による出力抑制処理の流れを、図6のフローチャートにより説明する。
まず、ステップS1では、電源電圧検出部22にて検出されている電源電圧Vdeを読み込み、次のステップS2に進む。
【0023】
ステップS2では、ステップS1にて読み込んだ電源電圧Vdeと、あらかじめ設定された図7に示す駆動モード特性と、に基づいて駆動モード判定を行った後、ステップS3に進む。駆動モード特性は、図7に示すように、ヒステリシスが与えられた2つの閾値Vs1,Vs2が設定されている。すなわち、駆動モード特性は、電源電圧Vdeが低下して閾値Vs1以下となると駆動モードが通常モードから低電圧モードに変更されるように設定されている。また、駆動モード特性は、電源電圧Vdeが上昇して閾値Vs2以上となると駆動モードが低電圧モードから通常モードに変更されるように設定されている。なお、駆動モード特性は、従来技術と同様に、電源電圧Vdeが閾値Vs1よりも低電圧の閾値よりも低下した場合に、各ステッピングモータ31〜33を、停止させる停止モードを設定してもよい。
【0024】
ステップS3では、ステップS2における駆動モード判定結果が通常モードと低電圧モードの何れであるか判定し、通常モードの場合はステップS4に進み、低電圧モードの場合はステップS5に進む。
そして、通常モードの場合に進むステップS4では、各ステッピングモータ31〜33を駆動させる場合には、低トルク高速駆動(図2参照)させ、1回の処理を終了する。
【0025】
一方、低電圧モードで進むステップS5では、制御装置10の制御状態が、各ステッピングモータ31〜33を2個以上(複数)同時に駆動させる制御状態であるか否か判定し、単独駆動の場合はステップS6に進み、複数同時駆動の場合はステップS7に進む。
【0026】
ステップS6では、ステッピングモータ31〜33のいずれかを単独で高トルク低速駆動(図2参照)させた後、1回の処理を終了する。
ステップS7では、ステッピングモータ31〜33のうちの複数を同時駆動させるのにあたり、出力抑制処理を行った後、1回の処理を終了する。すなわち、前述したように、出力抑制処理では、各ステッピングモータ31〜33への高トルク低速駆動させるON出力信号に対し、図4に示すように、PWM波形による間引きを行うとともに、ON出力信号の終端に非PWM波形部分Paを残す処理を行う。
さらに、本実施の形態では、この出力抑制処理では、各ステッピングモータ31〜33への出力信号の波形の頭出しタイミングをずらしている。これにより、非PWM波形部分Paの出力タイミングが、各ステッピングモータ31〜33により異なるタイミングとなって同時出力されない。この出力タイミングの制御は、制御装置10において出力回路10a,10bに対する割り込み信号(INT1,INT2)の付与タイミングをずらすことにより行っている。
【0027】
なお、上述のように、本実施の形態では、出力抑制処理を行う条件は、電源電圧Vdeが閾値Vs1,Vs2のいずれかよりも低くなって、低電圧モードに設定され、かつ、ステッピングモータ31〜33の複数を同時駆動させる場合である。よって、本実施の形態では、低電圧モードに設定されていることが、あらかじめ設定された電源保護条件の成立時となる。
【0028】
次に、実施の形態の作用を説明する。
(通常モード)
実施の形態のステッピングモータ制御装置では、電源電圧Vdeが閾値Vs1よりも大きいか、あるいは電源電圧Vdeが閾値Vs1よりも低下した状態から閾値Vs2以上に上昇すると、ステップS2の駆動モード判定において通常モードと判定される。
【0029】
この通常モードと判定された場合、ステップS3→S4の処理の流れに基づいて、ステッピングモータ31〜33は、駆動時に、図2に示す第1の周波数f1の周波数のON/OFFの出力信号により低トルク高速駆動を行う。
【0030】
(低電圧モード)
電源電圧Vdeが閾値Vs1未満であるか、これよりも低電圧状態から上昇した際に閾値Vs2未満の場合は、ステップS2の駆動モード判定において低電圧モードと判定される。
【0031】
この低電圧モードでは、ステッピングモータ31〜33は、図2に示す第2の周波数f2の周波数のON/OFFの出力信号により高トルク低速駆動を行う。したがって、低電圧によるトルク不足を防止し、トルク不足に起因した脱調の発生を防止できる。
さらに、実施の形態では、この低電圧モードでは、ステッピングモータ31〜33を単独で駆動させる場合と複数駆動させる場合とで、出力信号の波形を異ならせるようにしている。
すなわち、ステッピングモータ31〜33を単独で駆動させる場合は、図2に示した波長(出力時間tp2)のON出力信号を有した低電圧モードの信号を出力する。この場合、駆動するステッピングモータ31〜33は、1個であるので消費電力を抑えることができる。
一方、ステッピングモータ31〜33を同時に複数駆動させる場合は、図8に示すように、低電圧モードでの第2の周波数f2によるON出力信号の波形の一部をPWM波形として間引いて出力する。これにより、ステッピングモータ31〜33を同時に駆動させることで、全てのステッピングモータ31〜33を一旦停止させた後、順に駆動するものと比較して、ユーザに与える違和感を抑えることができるとともに、PWM波形としないものと比較して電源負荷を軽減することができる。
【0032】
以上説明したように、実施の形態のステッピングモータ制御装置は、以下に列挙する効果を有する。
a)本実施の形態では、
複数のステッピングモータ31〜33と、
これらステッピングモータ31〜33の駆動電源50と、
この駆動電源50の電圧を検出する電源電圧検出部22を含む駆動条件検出部(21,22,23)と、
この駆動条件検出部(21,22,23)からの入力に基づいてステッピングモータ31〜33に対し、設定された周波数のON/OFFの駆動信号を出力してステッピングモータ31〜33の駆動を制御する制御装置10と、
制御装置10に含まれ、あらかじめ設定された電源保護条件の成立時には、ステッピングモータ31〜33を同時に複数駆動させる場合、駆動信号のON波形を、その一部に前記周波数よりも高周波のPWM波形を形成するとともに、残りの波形部分に速度低下を抑制するための非PWM波形部分Paを形成する出力抑制処理を実行する出力抑制制御部12と、
を備えた構成とした。
したがって、実施の形態では、電源負荷条件の成立時にステッピングモータ31〜33を同時に複数駆動させるときには、出力抑制制御部12が出力抑制処理を実行し、駆動信号のON波形を、その一部に高周波のPWM波形を形成するとともに、速度低下を抑制するための非PWM波形を形成する。
このように、ステッピングモータ31〜33は、複数が同時に駆動するため、一旦、全てを停止させた後に順に駆動させるものと比較して、ユーザに違和感を与えにくい。
そして、ステッピングモータ31〜33への駆動信号のON波形の一部をPWM波形としてON時間を間引いているため、ON波形をフルにON出力した場合と比較して、電源負荷を軽減でき、かつ、停止状態から起動させた場合と比較しても、電源負荷を軽減でき、駆動電源50の保護を図ることができる。
しかも、このとき、ON波形には、PWM波形化による速度低下を抑制する非PWM波形を形成するため、ON波形の全てをPWM波形とするものと比較して、速度低下や停止による脱調を抑制できる。
【0033】
b)実施の形態では、制御装置10は、電源電圧検出部22が検出する電源電圧Vdeに基づいて、ステッピングモータ31〜33の駆動モードを、第1の周波数f1の信号出力により低トルク高速駆動させる通常モードと、第1の周波数f1よりも低周波の第2の周波数f2の信号出力により高トルク低速駆動させる低電圧モードとに切り換えるモード切換制御部11を備え、
出力抑制制御部12は、電源保護条件の成立時を、駆動モードを低電圧モードとしたときとした。
したがって、出力抑制制御部12は、電源電圧Vdeが低下して駆動モードを低電圧モードとしたときに、複数のステッピングモータ31〜33を駆動させる場合に、出力抑制処理を実行し、駆動電源50の保護を図ることができる。
【0034】
c)出力抑制制御部12は、複数のステッピングモータ31〜33に対する出力信号における非PWM波形部分Paが、同時出力されないようタイミング制御を行うようにした。
したがって、非PWM波形部分Paが同時に出力されるのと比較して、電源負荷をより軽減して、駆動電源50の保護を図ることができる。
【0035】
d)出力抑制制御部12では、PWM波形部分を形成するのにあたり、元となる高トルク低速駆動のON出力波形の出力時間tp2をそのままに、そのON出力波形の一部をPWM波形とするようにした。
このため、出力回路10a,10bへの出力周波数を、出力抑制処理時と非出力抑制処理時とで異ならせる必要が無く、制御を単純化して制御装置10の構成を簡略化することができる。
【0036】
e)本実施の形態では、PWM波形部分を形成するのにあたり、ステッピングモータ31〜33への所定周期の出力波形を形成するために、OFF状態を形成する割り込み信号のタイミングを利用して形成するようにした。
このため、新に異なる周期の信号を形成して、その一部をPWM波形とするものと比較して、出力信号の形成が容易で、制御装置10、モード切換制御部11、出力抑制制御部12の構成を簡略化することができる。
【0037】
f)本実施の形態では、非PWM波形部分Paを、ON出力信号の末尾に設定した。このようなON/OFFの切り換わりでは、ステッピングモータ31〜33のトルクが低下する。このため、この非PWM波形部分Paを、ON出力信号の始点や中間に設定したものと比較して、ON出力信号の出力中のトルク変動を抑えることができ、駆動特性がより好ましいものとなる。
【0038】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0039】
例えば、実施の形態では、ステッピングモータを、空調装置に適用した例を示したが、本発明の適用範囲は、ステッピングモータを使用する装置であれば、空調装置に限られない。
【0040】
また、実施の形態では、非PWM波形部分を形成するにあたって、ON出力信号において非PWM波形部分を形成する位置は、末端に限定されず、ON出力信号の始端や中間に形成してもよい。
【0041】
また、出力抑制制御部において、あらかじめ設定された電源保護条件とは、低電圧モードであることとしたが、電源保護条件は、これに限定されない。
例えば、電源保護条件は、電源電圧Vdeが、低電圧モードと通常モードとを切り換える閾値Vs1よりも低い電圧に設定された第2の閾値以下となった場合や、第2の閾値以下となることが推定される場合としてもよい。この場合、実施の形態と同様に、高トルク低速駆動の出力信号に、PWM波形および非PWM波形を形成する。
また、電源保護条件は、電源電圧Vdeが、閾値Vs1と閾値Vs2の間や、閾値Vs2以上で、通常モードにおいて複数のステッピングモータを同時駆動する状況において、複数のステッピングモータを駆動させた場合や、さらに、他のアクチュエータを駆動させることにより、電源電圧Vdeが、あらかじめ設定された閾値よりも低下することが予測される場合としてもよい。この場合、実施の形態と同様に、高トルク低速駆動のON出力信号に、PWM波形および非PWM波形を形成するようにしてもよいが、実施の形態とは異なり、低トルク高速駆動のON出力信号に、PWM波形および非PWM波形を形成するようにしてもよい。あるいは、高トルク低速駆動、低トルク高速駆動とは異なる中間トルク中間速駆動などのON出力信号の波形に、PWM波形および非PWM波形を形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 制御装置(駆動制御部)
11 モード切換制御部
12 出力抑制制御部
21 センサ群(駆動条件検出部)
22 電源電圧検出部(駆動条件検出部)
23 操作部(駆動条件検出部)
31 ステッピングモータ
32 ステッピングモータ
33 ステッピングモータ
50 駆動電源
f1 第1の周波数
f2 第2の周波数
Pa 非PWM波形部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のステッピングモータと、
これらステッピングモータの駆動電源と、
この駆動電源の電圧を検出する電圧検出部を含む駆動条件検出部と、
この駆動条件検出部からの入力に基づいて前記ステッピングモータに対し、設定された周波数のON/OFFの駆動信号を出力して前記ステッピングモータの駆動を制御する駆動制御部と、
前記駆動制御部に含まれ、あらかじめ設定された電源保護条件の成立時には、前記ステッピングモータを同時に複数駆動させる場合、前記駆動信号のON波形を、その一部に前記周波数よりも高周波のPWM波形を形成するとともに、残りの波形部分に速度低下を抑制するための非PWM波形を形成する出力抑制処理を実行する出力抑制制御部と、
を備えていることを特徴とするステッピングモータ制御装置。
【請求項2】
前記駆動制御部は、前記電圧検出部が検出する電源電圧に基づいて、前記ステッピングモータの駆動モードを、第1の周波数の信号出力により低トルク高速駆動させる通常モードと、前記第1の周波数よりも低周波の信号出力により高トルク低速駆動させる低電圧モードとに切り換えるモード切換制御部を備え、
前記出力抑制制御部は、前記あらかじめ設定された電源保護条件の成立時が、前記駆動モードを前記低電圧モードとしたときであることを特徴とする請求項1に記載のステッピングモータ制御装置。
【請求項3】
前記出力抑制制御部は、前記出力信号における前記非PWM波形部分が、同時に駆動させる前記ステッピングモータに対して同時出力されないようタイミング制御を行っていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のステッピングモータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−90466(P2013−90466A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229487(P2011−229487)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】