説明

ステロイドを含む局所製剤

本出願は、噴射剤を含まず、および/または実質的に非起泡性であり、および/またはアルコールを含まない局所用スプレーの形の、少なくとも一つのステロイドを含む活性薬剤の局所投与用製剤を提供する。本出願は、かかる組成物を調製するプロセスならびに乾癬、皮膚病、および他の関連する皮膚疾患または障害等の皮膚疾患または障害の管理におけるその使用方法も提供する。具体的な実施形態において、本発明は、噴射剤を含まないスプレー可能局所用医薬組成物を提供し、この組成物は、活性薬剤と、乳化剤と、ポリマーと、水と、水非混和性物質と、約0.001重量パーセント〜約15重量パーセントの量の活性薬剤皮膚浸透促進剤とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願の態様は、活性薬剤として少なくとも一つのステロイドを含む、医薬局所用スプレー可能組成物を提供する。本出願は、乾癬、ステロイド反応性皮膚病、および関連の疾患または障害等の皮膚疾患または障害の予防、改善または治療に有用な組成物も提供する。本出願は、スプレーの形で組成物を調製するプロセスおよび組成物を皮膚上に投与する方法をさらに提供する。
【背景技術】
【0002】
慢性、特発性、遺伝性、および環境に影響される障害である乾癬は、何世紀もの間経験的に治療されており、その成功度は様々である。関節症との関連および重大な精神的影響により、最適看護のための総合的なチームアプローチが必要となっている。乾癬は、皮膚および関節を侵す非伝染性自己免疫疾患である。通常は鱗状の紅斑が皮膚に見られる。乾癬プラークと呼ばれる乾癬により生じる鱗状斑は、炎症および皮膚生産過剰の領域である。これらの部位では皮膚が急速に蓄積し、銀白色の外観を呈する。プラークは肘および膝の皮膚に生じることが多いが、頭皮および生殖器を含む一切の領域を侵しうる。湿疹と対照的に、乾癬は関節の伸展側に見られる可能性が高い。この障害は、軽微な局所斑から全身を覆うものまで様々な重症度の、慢性の再発性病態である。指の爪および足の爪が侵されることが多く(乾癬性爪ジストロフィー)、単独所見として現れうる。乾癬により関節の炎症が生じることもあり、乾癬性関節炎として知られている。乾癬患者の10〜15パーセントが乾癬性関節炎である。乾癬の原因は不明であるが、遺伝的要素があると考えられている。多くの治療が利用可能であるが、慢性再発性の性質により乾癬の治療は困難である。
【0003】
現在では、コルチコステロイドが乾癬の療法に使用されることが増えている。コルチコステロイドは、脳下垂体によるアドレノコルチコトロフィンもしくは副腎皮質刺激ホルモンの放出に応答して、または任意の合成等価体もしくはアンギオテンシンIIに応答して副腎皮質(副腎由来の性ホルモンを除く)により合成されるステロイド(水素化シクロペントペルヒドロフェナントレン環構造を含む脂質)を含む化合物のクラスである。薬理学的用量においてコルチコステロイドは主にその抗炎症および/または免疫抑制効果により用いられる。
【0004】
他にも様々な療法が乾癬の治療に用いられている。局所適用の角質溶解剤は、安定角化型乾癬の制御を助ける上で付加的補助を提供する。コールタール、ジトラノール(アントラリン)、ビタミンDアナログ(例えばカルシポトリオール)、およびレチノイドを含む軟膏およびクリームが通常使用される。全身化学療法の選択肢のいくつかが、重症型乾癬の制御を助けるために使用されている。従来の主な三つの全身的治療は、メトトレキセート、サイクロスポリンおよびレチノイドである。メトトレキセートおよびサイクロスポリンは免疫抑制(immunosupressant)薬物であり、レチノイドは合成型のビタミンAである。乾癬に有効であることが分かっている他の薬物には、抗代謝剤チオグアニン、細胞毒性剤ヒドロキシウレア、スルファサラジン、免疫抑制剤(immunosupressants)ミコフェノレートモフェチル、アザチオプリンおよび経口タクロリムスが含まれる。2008年に、乾癬治療の三つの新しい治療選択肢がアメリカで承認された。1)頭皮乾癬治療用の局所用軟膏Taclonex(登録商標)Scalp;2)高輝度紫外線ビームを放射し、中程度から重度の乾癬を治療できるXtrac(登録商標)Velocityエキシマレーザシステム;および3)中程度から重度の乾癬治療用の生物学的薬物アダリムマブ(商標名Humira(登録商標))である。
【0005】
ジプロピオン酸ベタメタゾン等の局所用コルチコステロイドは、主にその抗炎症、止痒および血管収縮作用により、コルチコステロイド反応性皮膚病の治療に有効である。ジプロピオン酸ベタメタゾンはプレドニゾロンのアナログであり、高いコルチコステロイド活性およびわずかなミネラルコルチコイド活性を有する。ジプロピオン酸ベタメタゾンは、乾癬(広範囲の尋常性乾癬(plaque psoriasis)を除く)、アトピー性皮膚炎、およびより低活性のステロイドに反応しない他の皮膚病態等のより抵抗性の皮膚疾患の治療のために短期使用される場合に特に有用である。
【0006】
「ジプロピオン酸ベタメタゾン」と命名された薬物化合物は、9−フルオロ−11(β),17,21−トリヒドロキシ−16(β)− メチルプレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン17,21−ジプロピオネートという化学名を有し、構造式Iにより表される。
【0007】
【化1】

ジプロピオン酸ベタメタゾンは、白色から乳白色の結晶性粉末である。水に事実上溶けず、エタノールにやや溶けにくく、アセトンおよびクロロホルムに溶けやすい。
【0008】
エアゾールフォーム、クリーム、軟膏、ゲル、およびローション製剤等の局所用ベタメタゾン剤形が市販されている。ジプロピオン酸ベタメタゾンのカルシポトリエン水和物との、またクロトリマゾールとの合剤が存在する。ジプロピオン酸ベタメタゾンは、皮膚罹患部への一日一回または二回の適用が企図される0.05%のベタメタゾン基剤を含むDIPROLENE AF(登録商標)およびDIPROLENE(登録商標)として販売される市販商品の活性成分である。
【0009】
特許文献1および特許文献2は、速壊性起泡剤、噴射剤、および緩衝剤を伴い、エタノールが含まれている、吉草酸ベタメタゾンエアゾールを開示する。特許文献3は、局所用の、噴射剤を含まない液体の機械的に起泡可能な医薬組成物を開示する。特許文献4は、プロピレングリコールを含むスプレー起泡性投薬組成物を開示する。特許文献5は、4秒未満の時間内に調製物を形成する液滴としてスプレー可能な医薬組成物を開示する。特許文献6は、クロベタゾールを活性薬剤としてエチルアルコールとともに含む乾癬治療用のスプレー可能組成物を開示する。
【0010】
特許文献7は、生理的に活性の薬剤と、ジエチレングリコールのエーテルおよびエステルの日焼け止め剤からなる群より選択される一つ以上の皮膚浸透促進剤と、一つ以上の不揮発性液体とをアルコールを含まない組成物に含む、アルコールを含まない組成物を開示する。
【0011】
特許文献8は、ビタミンD誘導体を伴わない一つ以上の油類を含む油性相を含むビヒクル中に可溶化されたコルチコイドを含む、医薬/皮膚科組成物を請求する。コルチコイドは、プロピオン酸クロベタゾールでありうる。
【0012】
特許文献9は、エアゾール容器に詰められた乳濁液組成物においてある程度の溶解性を有する活性医薬剤としての有効量のステロイド(ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、デソニド、吉草酸ベタメタゾン等)と、油質の皮膚軟化剤と、少なくとも一つの液化または圧縮ガスの噴射剤とを含む、ノンアルコール起泡性医薬乳濁液組成物を開示する。
【0013】
アルコール溶液、ローション、クリーム、および軟膏の形のコルチコステロイドが、例えば湿疹、乳児湿疹、アトピー性皮膚炎、疱疹状皮膚炎、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎(seborrheic dermatitis)、神経皮膚炎、乾癬、および間擦疹等のヒトの皮膚疾患の治療に従来使用される。このような活性物質を含む多くの製剤は油っぽく、そのため皮膚の広範囲に適用するには不快である。ローション、クリーム、および軟膏製剤は、これらが一般に粘稠性が高すぎて活性薬剤が表皮に有効に浸透できず、活性薬剤が表皮に浸透する前に溶液組成物が蒸発する傾向があることから、効果がないことが観察される。加えて、従来のクリームおよび軟膏基剤の一部は、特に有効性のために必要である場合が多い長時間の曝露時に皮膚に刺激性であり、ローションの流動性により所望の領域上に物理的適用を制御することが難しいことが多い。さらに、表皮への活性薬剤の浸透を良くするためにこのような製剤を標的部位に擦り込む必要があるが、その行為自体が刺激を生じる。エタノールを含む製剤は、エタノールの周知の副作用、すなわち刺激をもつ。さらに、多くの製剤はプロピレングリコールを含んでおり、これは皮膚用剤形調製のための優れたビヒクルおよび溶媒であるが、プロピレングリコールには刺激性またはアレルギー性皮膚反応を誘発する傾向があるため、このような製剤は患者のコンプライアンスを促進しない。加えて、市販の加圧エアゾール(噴射剤ベース)製剤には、主に容器および絞り弁の構造のために比較的コストが高い欠点がある。また、噴射剤ベースの製剤は、好ましくない環境影響も有する。
【0014】
従来の製剤のもう一つの欠点は、その活性薬剤の作用が短時間であり、したがって頻繁な再適用が必要となり、これにより患者の治療コンプライアンスおよび生活の質にマイナスの影響を与えることである。さらに、皮膚上へのスプレー時に相当な起泡を生じさせるいくつかのステロイド性製剤が利用可能であるが、これはこのような調製物を使用する患者にとって美的理由から非常に好ましくないことである。市販のいくつかの局所製剤は、特に乾癬等の病態において、強く求められる鎮静効果を罹患部に主に提供できない。局所用薬剤の欠点は、正常な皮膚を刺激しうることが多い、適用に時間がかかり適用しにくいことがある、長期間使用できない、衣類を着色しうる、および/または好ましくない匂いを有しうるなど、様々である。その結果、人々がこれらの薬を定期的に適用し続けることが困難な場合がある。一部の局所薬剤、特にコルチコステロイドは、突然の退薬により病態の重篤な再発が引き起こされうる。これは、病態の「リバウンド」として公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第6,126,920号明細書
【特許文献2】米国特許第7,078,058号明細書
【特許文献3】米国特許第5,369,131号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2008/0102039号明細書
【特許文献5】米国特許第5,958,379号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2006/0239929号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2009/0098069号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2008/0300229号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2008/0206155号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、乾癬等の皮膚障害の治療に有効であり、所望の作用部位での活性薬剤の送達改善を提供し、不便および刺激が低減され、患者の使いやすさが高められ、作用時間がより長い、改良された患者に適合した局所製剤への必要性が依然として満たされていない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本出願の態様は、活性薬剤として少なくとも一つのステロイドを含む、スプレー可能医薬局所用組成物を提供する。
【0018】
ある態様では、本出願は、活性薬剤として少なくとも一つのステロイドを含み、噴射剤を含まずおよび/または実質的に非起泡性である、医薬局所用スプレー組成物を提供する。
【0019】
本出願の態様は、噴射剤を含まない局所用スプレー組成物を調製するためのプロセスを提供する。
【0020】
本出願の態様は、活性薬剤として少なくとも一つのステロイドを含む、噴射剤を含まない局所用スプレー組成物の使用方法を提供する。ある実施形態においては、使用方法には、薬学的に有効な量のスプレー組成物を必要な対象の皮膚罹患部上へ直接投与するステップが含まれる。
【0021】
ある態様では、本出願は、乾癬、ステロイド反応性皮膚病、紅斑、接触過敏症反応(contact sensitivity reaction)、および他の関連する疾患または障害の予防、改善、または治療のための、活性薬剤として少なくとも一つのステロイドを含む、噴射剤を含まない局所用スプレー組成物の使用を提供する。
【0022】
ある実施形態において、本出願の組成物は、水性乳濁液スプレーである。
【0023】
本出願の態様は、活性薬剤と、乳化剤と、ポリマーと、水と、水非混和性物質と、約0.001重量パーセント〜約15重量パーセントの量の活性薬剤皮膚浸透促進剤(active agent skin penetration enhancer)とを含む、噴射剤を含まないスプレー可能局所用医薬組成物を提供する。
【0024】
本出願の態様は、約0.025重量パーセント〜約0.1重量パーセントのベタメタゾン基剤に等しい量のベタメタゾン化合物と、乳化剤と、ポリマーと、水と、水非混和性物質と、約3重量パーセント〜約10重量パーセントの量の活性薬剤皮膚浸透促進剤とを含む、噴射剤を含まないスプレー可能局所用医薬組成物を提供する。
【0025】
本出願の態様は、噴射剤を含まない医薬局所用スプレー可能組成物を調製するプロセスを提供し、
a)油性相を得るために、乳化剤と水非混和性物質とを含む混合物を加熱するステップと;
b)任意に、抗酸化剤、保存剤、または両方を、a)の油性相と混合するステップと;
c)活性薬剤を浸透促進剤と混合するステップと;
d)c)の材料をa)またはb)の混合物と混合するステップと;
e)ポリマーを水に溶解するステップと;
f)乳濁液を形成するために、d)の油性相をe)の水性相と混合するステップと
を含む、プロセスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、実施例1で調製された製剤および市販の基準製品から放出された薬物の比較in vitro溶解プロフィルを示す。
【図2】図2は、実施例2および3で調製されたある製剤の、適用から8時間および24時間後の様々な皮膚層の薬物濃度を示す。
【図3】図3は、あるジプロピオン酸ベタメタゾン関連不純物の構造式を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書で使用されるところの「安定」という用語は、25℃および60%の相対湿度(RH)、または30℃および65%のRH、または40℃および75%のRHでの3、6、12、18、または24ヶ月間の組成物の安定性試験の保存中、薬物アッセイ値の変化および/または不純物含有量が約10%未満である、局所用組成物中の活性薬剤の物理安定性および/または化学安定性を意味する。
【0028】
本明細書で使用されるところの「噴射剤を含まない」という用語は、組成物が、フルオロクロロ炭化水素、炭化水素、圧縮ガス等、一般的に用いられるエアゾール噴射剤いずれとの混合物においても送達されないことを意味する。
【0029】
本明細書で使用されるところの「実質的に含まない」という用語は、言及される特定の物質が組成物全体の10重量%を超えない量で存在することを意味する。
【0030】
本出願の態様は、皮膚に対して非刺激性であり、非毒性であり、耐容性が良好である、活性薬剤として少なくとも一つのステロイドを含む医薬局所用組成物を提供する。
【0031】
一態様においては、本出願は、活性薬剤として少なくとも一つのステロイドを含む医薬局所用スプレー組成物を提供し、この組成物は噴射剤を含まず、および/または実質的に非起泡性である。
【0032】
一態様においては、本出願の組成物は、水性乳濁液スプレーである。
【0033】
一態様においては、ステロイドはその酸または塩基形、その塩形、そのエステル形、その異性体形、またはそのプロドラッグとして存在する。
【0034】
ある実施形態では、本出願のステロイドは、ベタメタゾン、またはその塩、エステル、異性体、誘導体、またはプロドラッグである。
【0035】
ある実施形態では、ベタメタゾンは、ジプロピオン酸ベタメタゾンの形で存在する。
【0036】
ある実施形態では、本出願のステロイドは、フロ酸モメタゾンである。
【0037】
ある実施形態では、本出願のステロイドは、吉草酸ベタメタゾンである。
【0038】
ある実施形態では、本出願のステロイドは、トリアムシノロンアセトニドである。
【0039】
ある実施形態では、本出願のステロイドは、ジプロピオン酸アルクロメタゾンである。
【0040】
一態様では、活性薬剤が非晶形、結晶形、またはその混合物で加えられうる。
【0041】
一態様では、本出願の組成物は容易に製造され、皮膚に対して非刺激性であり、非毒性であり、耐容性が良好であり、これにより高い患者コンプライアンスを提供し、乾癬、ステロイド反応性皮膚病、紅斑、接触過敏症反応、および他の関連する疾患または障害等の皮膚疾患または障害の予防、改善または治療に有用である。
【0042】
一態様では、本出願の製剤は、より良好な経皮透過および患者の快適のために、活性薬剤の持続的放出を提供する。
【0043】
ある実施形態では、本出願の組成物は、実質的にアルコールを含まず、および/またはプロピレングリコールを含まない。
【0044】
一態様では、本出願の組成物は、商業的関連性のある時間において物理的および化学的に安定である。
【0045】
一態様では、本出願は、活性薬剤として少なくとも一つのステロイドを含む、噴射剤を含まない局所用スプレー組成物を使用する方法を提供し、この方法には、薬学的に有効な量のスプレー組成物を必要な対象の皮膚罹患部上へ直接投与するステップが含まれる。
【0046】
一態様では、本出願の医薬局所用スプレー組成物は、乾癬の管理において有用であり、皮膚への適用部位に保湿および/または鎮静効果をさらに提供できる。一態様では、組成物は、乾癬プラークにおける皮膚の蓄積を伴う乾燥を減らす。一態様では、組成物は、乾癬病変部または皮膚病に直接適用でき、炎症を減らし、蓄積した鱗を除去し、皮膚の代謝回転を減らし、および/または罹患皮膚からプラークを取り除くのを助けうる。
【0047】
一態様では、本出願は、少なくとも一つの活性薬剤と、少なくとも一つの溶媒と、少なくとも一つの乳化剤と、少なくとも一つのポリマーと、約0.001〜約15重量%量の少なくとも一つの皮膚浸透促進剤とを含む、スプレー可能な形態の噴射剤を含まない局所用組成物であり、組成物が体表の局所領域を通って真皮層に達する活性薬剤のフラックス増強を提供し、そのため皮膚疾患または障害の予防、改善、または治療に有用である、組成物を提供する。
【0048】
ある実施形態では、浸透促進剤は、組成物中に約0.05〜約10重量%の量で存在する。ある実施形態では、浸透促進剤は、組成物中に約3%〜約10重量%の量で存在する。
【0049】
一態様では、本出願の組成物を用いて治療される皮膚疾患または障害には、乾癬プラーク、ステロイド反応性皮膚病、紅斑、接触過敏症反応、および他の関連する疾患または障害が含まれる。
【0050】
一態様では、本出願の組成物を用いて治療される皮膚疾患または障害には、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、湿疹、尋常性乾癬、紅皮症乾癬、頭皮の乾癬、およびその任意の組み合わせが含まれる。
【0051】
一態様では、本出願は、薬学的に有効な量のスプレー組成物を必要な対象に投与するステップを含む、皮膚疾患または障害の予防、改善、または治療の方法を提供する。ある態様では、皮膚疾患または障害は、乾癬、ステロイド反応性皮膚病、紅斑、接触過敏症反応、および他の関連する疾患または障害である。
【0052】
ある実施形態では、本出願の組成物は、乾癬および関連する病的状態の管理において有用な、合成物、半合成、または天然由来の活性薬剤を含む一つ以上の追加の活性薬剤を含む。
【0053】
本出願の組成物は、薬学的に有効な量のスプレー組成物を必要な対象に投与するステップを含む、皮膚疾患および障害の予防、改善、または治療に使用されうる。本出願の組成物は、光線療法等の他の療法と併用しても有用である。
【0054】
ある実施形態では、本出願の組成物は、適用部位から容易に水洗浄可能および除去可能である。ある実施形態では、本出願の組成物は、皮膚上へスプレーすることにより適用されたときに、皮膚に対して実質的に非密封性である。
【0055】
ある実施形態では、本出願の組成物は、いかなる量で存在しても大きな皮層刺激を引き起こさず、または組成物にいかなる有害な性状も与えないように、実質的にアルコールを含まず、および/またはプロピレングリコールを含まない。
【0056】
ある実施形態では、組成物は、活性薬剤としての少なくとも一つのステロイドと、一つ以上の賦形剤とを、局所用スプレーの形で含む。本出願の組成物に含まれる活性薬剤の濃度は、約0.01重量%〜約10重量%、または約0.025重量%〜約0.5重量%の範囲である。
【0057】
本出願の一態様は、噴射剤を含まない局所用組成物を含む分配用デバイスを提供し、デバイスが、容器と、ポンプディスペンサと、ディップチューブと、絞り弁と、アクチュエータとを含み、該ポンプディスペンサは、組成物が実質的に均一のスプレーの形で一貫して放出されるように、ディップチューブを通して絞り弁内へ、そしてオリフィスが取り付けられたアクチュエータを通して、組成物を分配できる。
【0058】
本出願の一態様は、噴射剤を含まない局所用組成物を含む分配用デバイスを提供し、該デバイスが、組成物で満たされたポーチシステムまたはバッグを内部に有する、ディップチューブが任意に取り付けられた容器と、弁が取り付けられたアクチュエータとを含み、該容器は、該ポーチまたはバッグを囲む窒素ガスまたは圧縮空気等のガスで満たされている。システムへの組成物の導入は、システムの圧力をさらに高めることができ、これにより、作動時に組成物がスプレーの形で放出されるように、ポーチまたはバッグから弁が取り付けられたアクチュエータへと組成物を分配できる。
【0059】
本出願の一態様は、活性薬剤として少なくとも一つのステロイドを含む、スプレー可能な形態の噴射剤を含まない局所用組成物を調製するためのプロセスを提供する。
【0060】
ある実施形態では、本出願の局所用スプレー可能製剤の利点には、適用部位への非刺激性、適用の容易性、長期間の有用性、織物の非着色、強い匂いまたは好ましくない匂いを有しないことの一つ以上が含まれる。これは、必要な対象が薬の定期的適用を維持することを促進し、したがってステロイド性組成物適用の突然の退薬が回避され、これにより疾患病態の重篤な再発が防止される。
【0061】
ある実施形態では、本出願の組成物には、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、プロピオン酸クロベタゾール、酪酸クロベタゾン、ピバル酸クロコルトロン(clocortolone pivalate)、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、ニコチン酸デキサメタゾン、プロピオン酸デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、吉草酸デキサメタゾン、二酢酸ジフロラゾン、吉草酸ジフルコルトロン、フルランドレノリド(fluandrenolide)、ピバル酸フルメタゾン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチンブチルエステル、プロピオン酸フルチカゾン、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、ハロメタゾン一水和物、ヒドロコルチゾン、リン酸ヒドロコルチゾンナトリウム、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、ヒドロコルチゾン−17−酪酸−21−プロピオン酸、アセポン酸ヒドロコルチゾン(hydrocortisone aceponate)、酢酸ヒドロコルチゾン、吉草酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンプロブテート、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、フロ酸モメタゾン、プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、酢酸プレドニゾロン、プレドニゾロン−17−吉草酸−21−酢酸、トリアムシノロンアセトニド、酢酸トリアムシノロン、二酢酸トリアムシノロン、およびプレドニカルベート等の少なくとも一つのステロイド薬物が含まれる。他の薬物化合物も有用であり、本出願はさらにステロイド薬物の任意の組み合わせの使用も特に企図する。
【0062】
本発明によれば、特に明記しない限り、ステロイド等の活性薬剤の列挙には、薬物化合物またはその任意の塩、エステル、異性体、複合体、誘導体またはプロドラッグも含まれることが企図される。
【0063】
活性薬剤は、一般に組成物の約0.01重量%〜約1重量%の量で存在する。しかし、活性薬剤の効力および治療される病態に応じて、他の量も有用である。
【0064】
ある実施形態では、局所用組成物中に存在するステロイドはジプロピオン酸ベタメタゾンであり、典型的には約0.001mg/Kg体重〜約0.5mg/Kg体重の用量で必要な対象に投与される。
【0065】
ある実施形態では、ステロイドはジプロピオン酸ベタメタゾンであり、局所用組成物中に約0.064重量%の濃度で存在するが、例えば約0.01重量%〜約0.5重量%、または約0.02重量%〜約0.07重量%など、必要に応じてより高い量またはより低い量が使用されてもよい。ある実施形態では、本出願において使用されるベタメタゾン化合物は、約0.025重量%〜約0.1重量%、または約0.05重量%のベタメタゾン基剤に等しい量で組成物中に存在する。
【0066】
ある実施形態では、本出願の組成物は、油性または疎水性相と、水性または親水性相と、乳化剤とを含む乳濁液として形成される。油性相が水性連続相中に液滴として分散される場合、これは「水中油」型乳濁液と呼ばれる。水性相が油性連続相中に液滴として分散される場合、これは「油中水」型乳濁液と呼ばれる。ある実施形態では、疎水性相は、組成物の約0.5重量%〜約90重量%を構成する。乳濁液の形の組成物は、マイクロ乳濁液またはナノ乳濁液でありうる。ある実施形態では、分散相液滴の平均粒度は約500μm未満である。ある実施形態では、分散相液滴の平均粒度は約2000nm未満である。
【0067】
ある実施形態では、本出願の組成物は、担体、乳化剤、共乳化剤、透過または浸透促進剤、溶媒、共溶媒、皮膚軟化剤、抗酸化剤、保存剤、緩衝剤、ゲル化剤または増粘剤、ポリマー、界面活性剤、鎮静剤、pH調節剤、可溶化剤、湿潤剤、皮膚軟化剤、保湿剤、油性基剤などの一つ以上を含むがこれに限られない賦形剤を含む。
【0068】
「皮膚軟化剤」は、皮膚を軟化し鎮静させる物質である。これらは、皮膚の乾燥および落屑を是正するために用いられる。様々な皮膚軟化剤には、扁桃油、ヤシ油、オリーブ油、パーム油、落花生油など等の天然由来の油、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、およびステアリン酸等の脂肪酸、ラウリン酸エチル、ラウリン酸イソプロピル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸n−プロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソブチル、ステアリン酸アミル、およびステアリン酸イソアミル等の脂肪酸の一価アルコールエステル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、およびプロピレングリコール等のグリコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、およびステアリルアルコール等の分岐脂肪族アルコール、およびその組み合わせが含まれるがこれに限られない。
【0069】
「担体」という用語は、天然または合成の有機または無機成分を意味し、組成物の適用を促進するために活性成分がこれと合わせられる。「担体」という用語は、単独またはシリコーン流体等の材料と組み合わせられた、水、アセトンの一つ以上を含むがこれに限られない。担体の量は、組成物の全重量の約5%〜約99%でありうる。ある実施形態では本出願による担体には水が含まれる。ある実施形態では、担体には水のほか、天然の脂肪酸の任意の薬剤的に許容可能な脂肪酸エステル、動物または植物のトリグリセリド、中鎖トリグリセリド、モノトリグリセリド、ジトリグリセリド、および/またはトリグリセリドの混合物、ろう、水素化植物油、およびその混合物等の水非混和性物質が含まれうる。
【0070】
組成物中に用いるのに適切なポリマーの例には、カルボマー、ポリエチレングリコール、アクリル酸ポリマー、メタクリル酸ポリマー、ポリビニルピロリドン、メタクリル酸ブチルおよびメタクリル酸メチルポビドンベースのコポリマー、酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニル、セルロース、ガム、アルギン酸塩、酢酸フタル酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが含まれるがこれに限られない。例としては、Carbopol(登録商標)製品、PEG400、Eudragit(登録商標)100、Eudragit(登録商標)RSPO、Eudragit(登録商標)RLPO、Eudragit(登録商標)ND40、Plasdone(登録商標)、メタクリル酸ブチルおよびメタクリル酸メチルベースのコポリマー(Plastoid(登録商標)B)、エチルセルロースおよびメチルセルロース等のアルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシブチルメチルセルロース等のヒドロキシアルキルアルキルセルロース、キサンタンガム、トラガカント、グアーガム、ローカストビーンガム、アカシアなど等のガムなどが含まれる。ポリマーの量は、組成物の全重量の約0.5〜約50重量%でありうる。
【0071】
有用な他のポリマーには、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレプタレート(terepthalates)、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルハライド、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびそのコポリマー、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、アクリル酸およびメタクリル酸エステルのポリマー、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシルエチルセルロース、三酢酸セルロース、硫酸セルロースナトリウム塩、ポリ(メチルエタクリレート(ethacrylate))、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、ポリ(アクリル酸オクタデシル)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(テレフタル酸エチレン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(塩化ビニル)、ポリスチレンなど、ならびにその任意の混合物が含まれる。
【0072】
他の有用なポリマーの例には、乳酸およびグリコール酸のポリマー、ポリ無水物、ポリ(オルトエステル)、ポリウレタン、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)等の合成ポリマー、ならびに、アルギン酸塩ならびにアラビナン、フルクタン、フカン、ガラクタン、ガラクツロナン、グルカン、マンナン、キシラン(例えばイヌリン等)、レバン、フコイダン、カラゲナン、ガラトカロロース、ペクチン酸、ペクチン、アミロース、プルラン、グリコーゲン、アミロペクチン、セルロース、デキストラン、パスツラン、キチン、アガロース、ケラタン、コンドロイタン(chondroitan)、デルマタン、ヒアルロン酸、アルギン酸塩、キサンタンガム、澱粉を含むがこれに限られない他の多糖類等の天然ポリマー、ならびに、アルドース、ケトース、酸またはアミン、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、エリトルロース、リブロース、キシルロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトース、セロビオース、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、グルクロン酸、グルコン酸、グルカル酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸、グルコサミン、ガラクトサミン、およびノイラミン酸の一つ以上を含むもの等の他の様々な天然ホモポリマーおよびヘテロポリマー、ならびにその天然に存在する誘導体、そしてデキストランおよびセルロースを含む、コラーゲン、アルブミンおよび他の親水性タンパク質、ゼインおよび他のプロラミンならびに疎水性タンパク質、そのコポリマーおよび混合物が含まれる。
【0073】
ポリマーの含有量は、組成物の全重量の約0.01%〜約45%でありうる。
【0074】
適切な乳化剤の例には、ココアンホ二酢酸二ナトリウム、オキシエチレン化グリセリルココエート(7EO)、PEG−20ヘキサデセニルコハク酸、PEG−15ステアリルエーテル、リシノール酸モノエタノールアミドモノスルホコハク酸塩、Cremophor(登録商標)RH60またはCremophor(登録商標)RH40(ポリオキシル40水素化ヒマシ油)の商標でBASFにより販売される製品等の60エチレンオキシド単位を含むオキシエチレン化水素化リシノール酸トリグリセリド、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロックコポリマーであるポロクサマー等のポリマー、ならびにゴマ油、甘扁桃油、アプリコット石油、ヒマワリ油、パルミチン酸オクトキシグリセリル(またはパルミチン酸2−エチルヘキシルグリセリルエーテル)、ベヘン酸オクトキシグリセリル(またはベヘン酸2−エチルヘキシルグリセリルエーテル)、アジピン酸ジオクチル、および分岐ジアルコールの酒石酸塩等の室温(すなわち約20〜35℃の範囲の温度)で非固形の脂肪物質が含まれるがこれに限られない。ソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビトールおよびその一無水物および二無水物と脂肪酸との部分エステルの一連の混合物である。ソルビタンエステルには、Arlacel(登録商標)20、Arlacel40、Arlacel60、Arlacel80、Arlacel83、Arlacel85、Arlacel987、Arlacel C、ステアリン酸PEG−6およびステアリン酸グリコールおよびステアリン酸PEG−32(Tefose(登録商標)63)、ならびにステアリン酸PEG−6およびステアリン酸PEG−32(Tefose(登録商標)1500)として販売される製品、ならびにその任意の混合物が含まれる。ステアリン酸のポリエチレングリコールエーテルは、乳濁液において用いられうる別の乳化剤の群に含まれる。ステアリン酸のポリエチレングリコールエーテルの例は、ステアレス−2、ステアレス−4、ステアレス−6、ステアレス−7、ステアレス−10、ステアレス−11、ステアレス−13、ステアレス−15、ステアレス−20、ステアリルアルコールのポリエチレングリコールエーテル(ステアレス21)、およびその任意の混合物である。他の乳化剤には、ドデシル硫酸ナトリウム、臭化セチルトリアルキルアンモニウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、およびその任意の混合物が含まれる。乳化剤の量は、組成物の全重量の約0.25%〜約45%でありうる。
【0075】
非イオン性乳化剤には、糖または澱粉ポリマー、すなわちグリコシドとの長鎖アルコールの縮合物として広く定義されうるもの、例えばC8−30アルコールが含まれる。様々な糖には、グルコース、フルクトース、マンノース、およびガラクトースが含まれるがこれに限られず、様々な長鎖アルコールには、デシルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコールなどが含まれるがこれに限られない。
【0076】
他の有用な非イオン性乳化剤には、脂肪酸のアルキレンオキシドエステル等のアルキレンオキシドと脂肪酸の縮合物が含まれる。他の非イオン性界面活性剤は、脂肪酸のアルキレンオキシドジエステル等のアルキレンオキシドと2モルの脂肪酸の縮合物である。
【0077】
乳化剤は、従来技術において周知の多様な陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤、および両性界面活性剤のいずれかも含みうる。陰イオン乳化剤の非限定的な例には、アルキルイセチオン酸、アルキルおよびアルキルエーテル硫酸ならびにその塩、アルキルおよびアルキルエーテル燐酸ならびにその塩、アルキルメチルタウリン酸、および脂肪酸の石鹸(例えばアルカリ金属塩およびナトリウムまたはカリウム塩)が含まれる。
【0078】
両性および両性イオン乳化剤の例には、脂肪族ラジカルが直鎖または分岐鎖でありうる脂肪族第二級および第三級アミンの誘導体として広く類型化されるものが含まれ、脂肪族置換基の一つが約8〜約22の炭素原子を含み、一つは陰イオン水可溶化基、例えばカルボキシ基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基またはホスホン酸基を含む。具体例には、アルキルイミノ酢酸、イミノジアルカン酸およびアミノアルカン酸、イミダゾリニウムおよびアンモニウム誘導体が含まれる。他の適切な両性および両性イオン乳化剤には、ベタイン、スルテイン、ヒドロキシスルテイン、アルキルサルコシン酸およびアルカノイルサルコシン酸が含まれる。
【0079】
シリコーン乳化剤は典型的に有機的に修飾された有機ポリシロキサンであり、シリコーン界面活性剤と呼ばれる場合もある。有用なシリコーン乳化剤には、ジメチコーンコポリオールが含まれる。これらの材料は、ポリエチレンオキシド鎖、ポリプロピレンオキシド鎖、これらの鎖の混合物、およびエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの両方に由来する部分を含むポリエーテル鎖等のポリエーテル側鎖を含むように修飾されている、ポリジメチルシロキサンである。
【0080】
乳化剤の量は、組成物の全重量の約0.25%〜約45%でありうる。
【0081】
共乳化剤または第二乳化剤には、ポリオキシルグリセリド、例えばオレオイルマクロゴルグリセリド(Labrafil(登録商標)M1944CS)、リノレオイルマクロゴルグリセリド(Labrafil(登録商標)M2125CS)、カプリロカプロイルマクロゴルグリセリド(Labrasol(登録商標))、セチルアルコール(および)セテス−20(および)ステアレス−20(Emulcire(商標)61WL2659)、ステアリン酸グリセリル(および)ステアリン酸PEG−75(Gelot(登録商標)64)、ならびにその任意の混合物が含まれる。
【0082】
「透過促進剤」または「浸透促進剤」は、皮膚または膜の不透過性を一時的に減少させること等により薬物の皮膚または粘膜の浸透率を促進するために用いられる構成成分である。浸透促進剤は、「促進剤」および「吸収促進剤」とも呼ばれている。使用できる多数の浸透促進剤がある。様々な有用な透過促進剤には、例えば、ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、およびブタンジオールを含むポリオールおよびエステル;ジメチルスルホキシドおよびデシルメチルスルホキシドを含むスルホキシド;ジエチレングリコールモノエチルエーテル(例えばTranscutol(登録商標)P)およびジエチレングリコールモノメチルエーテルを含むエーテル;ラウリン酸、オレイン酸、および吉草酸を含む脂肪酸;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、およびオレイン酸エチルを含む脂肪酸エステル;尿素、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド2−ピロリドン、エタノールアミン、メチル2−ピロリドン、ジエタノールアミン、およびトリエタノールアミンを含む窒素化合物;テルペン;アルカノン;サリチル酸、クエン酸、およびコハク酸を含む有機酸;ならびにその任意の混合物が含まれる。さらに、一つ以上の界面活性剤が透過または浸透促進剤として使用されうる。透過促進剤は、組成物の全重量の約0.001〜15%、または約0.05〜12%、または約3〜10%の範囲の濃度で使用されうる。
【0083】
「保存剤」という用語は、微生物増殖または望ましくない化学的変化による分解を防ぐために製品に加えられる、天然または合成化学物質を意味する。保存剤は、潜在的に有害な微生物の増殖から保護するために、組成物に取り込まれるのが望ましい。微生物は水性相中で増殖する傾向があるが、疎水性相または油相中にも微生物が存在しうる。本発明の組成物に好適な保存剤には、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコール、クロロクレゾール、塩化ベンザルコニウム、塩化セトリモニウム、エデト酸ナトリウム、ホウ酸、およびその任意の混合物が含まれるがこれに限られない。保存剤の量は、組成物の全重量の約0.25%〜約25%でありうる。
【0084】
抗酸化剤は、酸化を阻害しまたは酸素もしくは過酸化物により促進される反応を抑制する物質である。抗酸化剤、特に脂質可溶性抗酸化剤は細胞膜に吸収されて酸素ラジカルを中和し、これにより膜を保護しうる。本発明の組成物に好適な抗酸化剤(antioxdants)には、アスコルビン酸(ビタミンC)、グルタチオン、リポ酸、尿酸、カロチン、α−トコフェロール(ビタミンE)、ユビキノール、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、安息香酸ナトリウム、没食子酸プロピル(PG、E310)、および三級ブチルヒドロキノンが含まれるがこれに限られない。抗酸化剤の量は、組成物の全重量の約0.01%〜約20%でありうる。
【0085】
「溶媒」とは、製剤中の薬物の溶解を助ける構成成分をいう。溶媒は、組成物中の薬物の溶液を維持する働きをする。一部の溶媒は、薬物の経皮浸透を促進し、および/または湿潤剤として作用することもできる。ステロイド薬物の場合、溶媒には、天然脂肪酸の脂肪酸エステル、動物または植物のトリグリセリド、中鎖トリグリセリド、モノグリセリド、ジグリセリドおよび/またはトリグリセリドの混合物、ろう、水素化植物油、ならびにその混合物等の水非混和性物質が含まれうる。いくつかの具体例には、ヒマシ油、ラノリン油、10〜18の炭素原子を有するクエン酸トリイソセチルトリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ヤシ油、トウモロコシ油、綿実油、亜麻仁油、ミンク油、オリーブ油、パーム油、ヒマワリ油、堅果油、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、飽和パラフィン油、軽または重鉱油、植物油またはグリセリドなどが含まれる。
【0086】
上記の賦形剤物質の一部は、製剤中で複数の機能を有しうる。例えばある物質は、溶媒および透過促進剤の両方であり、または溶媒および担体の両方でありうる。上に記載した材料の分類は、いかなる様式でも制限または限定を意味すると解釈されてはならない。
【0087】
本出願の組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、ローション、ミクロ乳濁液、ナノ乳濁液、エマルゲル、ゲルなどの形でありうる。ある実施形態では、組成物は乳濁液の形でありうる。乳濁液は、水中油型乳濁液または油中水型乳濁液でありうる。水中油型乳濁液等の水性乳濁液は、他の乳濁液のタイプより粘度が低いことが多く、相当の保存安定性を呈する。一般に、水中油型乳濁液は水性材料と類似の感覚を与えるため、皮膚適用時に皮膚感触特性がより良好である。
【0088】
組成物は、乾癬プラークまたは皮膚病等の皮膚患部上へ直接適用されうる。スプレー可能組成物は、スプレーされると患部に液滴を形成し、ある実施形態では、活性薬剤の放出を長時間提供しうる。本出願の水性乳濁液の粘度は、約0.01〜15パスカル秒、「Pa・s」(10〜15,000センチポアズ、「cP」)、約0.1 〜 1.5Pa・s(100〜1,500cP)、または約0.2〜1Pa・s(200〜1,000cP)の範囲で変動することが多い。
【0089】
本出願の態様は、組成物のスプレーの形での皮膚上への局所送達のための分配用デバイスも提供する。ある実施形態では、本出願は、容器と、ディスペンサと、閉鎖部とを含む、内部に組成物が満たされるデバイスを提供する。
【0090】
ある実施形態では、充填に使用される閉鎖部は、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、または樹脂等のポリマー性物質でできている。閉鎖部は特に、ディスペンサユニットに支持を提供するのを助けるため、および/または容器の中身を外部環境から遮蔽するために容器上に取り付けられる、キャップの形である。様々な容器材料には、スズめっき鋼、アルミニウム、ステンレス鋼、プラスチック、およびガラスが含まれるがこれに限られない。
【0091】
ディスペンサの例は、容器上のねじ切りにマッチするねじ山等により、任意のタイプの容器上に適合するように作られうるポンプを含むユニットである。ポンプは、アクチュエータから容器内に伸びた、組成物をアクチュエータのオリフィスからスプレーの形で放出する一方向弁に付属したディップチューブを通して本出願のスプレー可能組成物を分配できる。弁は、絞り弁でありうる。
【0092】
使用できる様々なタイプの弁には、連続スプレー弁および絞り弁が含まれるがこれに限られない。アクチュエータは、弁の簡単な開閉を可能にし、パッケージの一体部分である。これは、必要なタイプの製品放出を生じさせるのにも役立つ。様々なタイプのアクチュエータには、スプレーアクチュエータ、フォームアクチュエータ、ソリッドストリームアクチュエータ、および特殊アクチュエータが含まれるがこれに限られない。
【0093】
一実施形態において分配用デバイスは、製品が入ったポーチシステムまたはバッグを内部に有する、ディップチューブが任意に取り付けられた容器と、弁が取り付けられたアクチュエータとを含むデバイスであり得、該容器が、該ポーチまたはバッグを囲む窒素ガスまたは圧縮空気で満たされる。容器は、アルミニウムまたはブリキ板で作られればよく、製品を含むポーチシステムまたはバッグは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびアルミニウムの層で作られうる。システムへの組成物の導入は、作動時に組成物が実質的に均一のスプレーの形で一貫して放出されるように、ポーチから弁が取り付けられたアクチュエータへと組成物を分配することができるシステムの圧力をさらに高める。ポーチは、スプレーレートを制御し液滴のサイズを減じるため、アクチュエータ弁と連絡するディップチューブを内部に有しうる。
【0094】
ある実施形態では、本出願の組成物を分配するのに有用な分配用デバイスは、組成物がスプレーされる所望の皮膚患部を相当にカバーする実質的に均一の投与量が毎回分配される様式で、スプレーレートおよびスプレーパターンを提供する。ポンプは、組成物を皮膚上に均一に送達することを企図する。それは、約20〜約500mg/作動、または約100〜約200mg/作動等を含むがこれに限られない特定のスプレーレートで、皮膚の所望の領域をカバーし、非常に微細な均一の液滴を生産する。デバイスは、適用部位からの距離に応じて約0.1〜約10cmの面積をカバーすることが多い、円形等の再生可能なスプレーパターンを提供する。
【0095】
新品のポンプが組成物を再生可能に分配するためには、約2〜6回の初回準備作動が必要とされうる。特定の実施態様では、ポンプの作動あたり約160μLの製剤が分配される。デバイスは、液滴の約90%が約1〜約500μmのサイズである分布において、液滴の再生可能な分布を提供することが多い。
【0096】
分配される製品の液滴サイズを制御するためにオリフィスのサイズが設定される。オリフィスのサイズは、均一の特性のスプレーパターンの提供にも影響する。
【0097】
ある実施形態では、乾癬治療に有用な組成物は、組成物を皮膚患部に適用するために患者または介護者により機械的に作動されうる付属スプレーポンプ閉鎖部が取り付けられたボトルにパッケージされうる(すなわちポンプタイプスプレー閉鎖部)。
【0098】
半固体製品の適用にはクリーム量または軟膏量の容易に利用可能な視覚的な見積が必要であるが、スプレー適用の場合には所与の体積をスプレーすれば足りるため、ある実施形態では、本出願のスプレー製剤は、クリームおよび軟膏が適用されうるよりも本質的に簡単かつ正確な方法で適用されうる。さらに、大きな表面積の衣類の染みおよび汚れがより容易に回避されうる。スプレー組成物は、液体の蒸発または気化により体表上に形成される層が既に活性薬剤の理想的な微細分散を有するため、クリームおよび軟膏製品とは異なり拡散および擦り込みが必ずしも必要とされず、それゆえ本出願のスプレー組成物の局所適用により『圧痛』が生じることはない。
【0099】
一態様においては、本出願の水性乳濁液のスプレー可能製剤は、適用領域にスプレーだけが接触する方法で薬を適用することも可能にする。
【0100】
一態様においては、本出願の組成物の局所適用は、皮膚上に閉塞性フィルムを形成することなく貯留部を形成し、これにより、皮膚の『呼吸』を可能にしながら活性薬剤の作用時間を延長する。
【0101】
本出願の態様は、適切な分配用デバイスに満たされうる組成物を調製するプロセスをさらに提供する。ある実施形態では、プロセスは、
a)活性薬剤と一つ以上の適切な賦形剤とを含む組成物を調製するステップと、
b)所望の量の組成物を分配用デバイスに満たすステップと
を含む。
【0102】
ある実施形態では、活性薬剤としてのベタメタゾンと賦形剤とを含む局所用組成物を調製するためのプロセスは、
a)油性相を得るために、乳化剤と溶媒とを含む混合物を加熱するステップと;
b)任意に、抗酸化剤および/または保存剤をa)の油性相に混ぜるステップと;
c)活性薬剤を浸透促進剤と混ぜるステップと;
d)c)の材料をa)またはb)の材料と混ぜるステップと;
e)ポリマーを水性相に溶解するステップと;
f)連続的に混合しながらd)の油性相をe)の水性相とゆっくり混ぜるステップと;
g)f)の混合物を均質化後、冷却するステップと
を含む。
【0103】
ある実施形態では、本出願の組成物は、約3〜約7、または約3.5〜約6の範囲のpH値を有する。
【0104】
ある実施形態では、乳濁液の油性相は、乳化剤と溶媒との混合物である。
【0105】
ある実施形態では、本出願のベタメタゾンスプレー組成物は、0.05%の(ジプロピオン酸ベタメタゾンの形の)ベタメタゾン、水、イソプロピルアルコール(30%)、ヒドロキシプロピルセルロース、プロピレングリコール、リン酸ナトリウム、リン酸、および水酸化ナトリウムを含むSchering Corporationの製品である市販のDIPROLENE(登録商標)ローションのものに相当する薬物溶解プロフィルを呈する。
【0106】
ある実施形態では、本出願のプロピオン酸ベタメタゾン製剤は、約5%以下の量の不純物A(17−プロピオン酸ベタメタゾン)、約2%以下の量の不純物B(21−プロピオン酸ベタメタゾン)、約1%以下の量の不純物C(17−プロピオン酸21−酢酸ベタメタゾン)、および約1%以下の量の不純物D(21−吉草酸ベタメタゾン)等の不純物の任意の一つ以上(これらの不純物は図3に示される構造を有する)、ならびに任意の他の薬物関連不純物を、そのような不純物のいずれも組成物の安全性に実質的に悪影響を与ない量で含みうる。不純物AおよびBは、主に製剤の安定性試験の間に観察され、不純物CおよびDは、一般に薬物の合成からのプロセス関連の不純物である。上記の不純物限度は、製剤中の表示薬物含量のパーセンテージとして表される。
【実施例】
【0107】
以下の実施例は、本出願のある特定の態様および実施形態を例示するために提供され、本出願の範囲をいかなる方法でも制限するものとして解釈されてはならない。実施例においては、使用される活性薬剤ジプロピオン酸ベタメタゾンは、粒子の半数が約50μm未満のサイズであり、粒子の90%が約300μm未満のサイズである、粒径分布を有する。
【0108】
実施例1:ベタメタゾンスプレー製剤。
【0109】
【化2】

製造プロセス:
a)ポリエチレングリコールおよびパルミトステアリン酸エチレングリコール、オレオイルポリオキシグリセリド(oleoyl polyoxyglycerides)、ならびに鉱油を混合し、約50〜70℃に加熱する。
【0110】
b)約50〜70℃で連続的に攪拌しながらプロピルパラベン、メチルパラベン、およびブチルヒドロキシトルエンをa)の液体と混合する。
【0111】
c)ジプロピオン酸ベタメタゾンを、ジエチレングリコールモノエチルエーテルと混合する。
【0112】
d)c)の材料を、b)の材料と混合する。
【0113】
e)ヒドロキシエチルセルロースまたはキサンタンガムを水に溶解する。
【0114】
f)連続的に攪拌しながら約50〜70℃でd)の油性相をe)の水性相にゆっくり加える、またはその逆。
【0115】
g)f)の混合物を均質化し、周囲温度に冷却させる。
【0116】
製剤Aおよび製剤B、ならびに市販の基準製品からの薬物放出を示す比較in vitro溶解プロフィル試験を行う。基準製品は、DIPROLENE(登録商標)ローションである。試験の手順は以下に記載の通りである。
【0117】
フランツ拡散セルにポリスルホン0.2μm膜を取り付け、ドナーおよびレセプターコンパートメントの間に固定する。レセプター媒質はエタノールおよび水(体積比20:80)の混合物であり、30分、60分、120分、240分、および360分の時間での交換体積が12.0mL、サンプリング体積が2.0mLであり、温度は32±0.5℃に維持する。製剤の約200mgを、シリンジを用いて膜上に均一に適用する。Parafilm(登録商標)(炭化水素ろうおよびポリオレフィンのブレンド)を用いて、ドナーコンパートメントをカバーする。高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を用いて、レセプター流体の薬物を分析する。
【0118】
【表1】

DIPROLENEローションからの薬物放出は急速である。しかし、製剤Aおよび製剤Bからのベタメタゾン放出は遅く、数時間にわたり持続する。結果が図1にプロットされている。放出遅延時間は試験した組成物の全てで30分未満にとどまり、放出試験に使用したポリマー膜が主に寄与したとみなされる。ヒグチ方程式に適合した製剤AおよびBの薬剤放出速度が、表2に示される。
【0119】
【表2】

調製した製剤を閉容器に満たし、25℃および60%相対湿度(RH)、30℃および65%RH、ならびに40℃および75%RHの安定性試験条件に3ヵ月間曝露し、様々な保存ポイントでの分析が表3および4に示されており、表中の値は表示薬物含量のパーセンテージである。
【0120】
【表3】

【0121】
【表4】

実施例2:ベタメタゾンスプレー製剤。
【0122】
【化3】

製造プロセス:
a)ポリエチレングリコールおよびパルミトステアリン酸エチレングリコール、オレオイルポリオキシグリセリド(oleoyl polyoxyglycerides)、ならびに鉱油を混合し、約50〜70℃に加熱する。
【0123】
b)約50〜70℃で連続的に攪拌しながらプロピルパラベン、メチルパラベン、およびブチルヒドロキシトルエンをa)の液体と混合する。
【0124】
c)ジプロピオン酸ベタメタゾンを、ジエチレングリコールモノエチルエーテルと混合する。
【0125】
d)c)の材料を、b)の材料と混合する。
【0126】
e)ヒドロキシエチルセルロースを水に溶解する。
【0127】
f)連続的に攪拌しながら約50〜70℃でd)の油性相をe)の水性相にゆっくり加える、またはその逆。
【0128】
g)f)の混合物を均質化し、周囲温度に冷却させる。
【0129】
製剤Dにつき、25℃および60%RH、30℃および65%RH、ならびに40℃および75%RHの条件で3ヵ月間閉容器に製剤を保存して、安定性試験を行う。全てのサンプルが、相分離のないオフホワイトの均質の乳濁液のままである。表5に示すように、薬物アッセイ値は、全てのサンプルで表示薬物含量の90〜110%の指定範囲内であり、表中全ての値は表示薬物含量のパーセンテージである。サンプルのpHは、3および6の間にとどまる。Brookfield CAP 2000+粘度計を使用して100rpmで測定される粘性値は、全てのサンプルで元の値付近のままである。
【0130】
【表5】

実施例3:ベタメタゾンスプレー製剤。
【0131】
【化4】

製造プロセス:
a)ポリエチレングリコールおよびパルミトステアリン酸エチレングリコール、オレオイルポリオキシグリセリド(oleoyl polyoxyglycerides)、ならびに鉱油を混合し、約50〜70℃に加熱する。
【0132】
b)約50〜70℃で連続的に攪拌しながらプロピルパラベン、メチルパラベン、およびブチルヒドロキシトルエンをa)の液体と混合する。
【0133】
c)ジプロピオン酸ベタメタゾンを、ジエチレングリコールモノエチルエーテルと混合する。
【0134】
d)c)の材料を、b)の材料と混合する。
【0135】
e)キサンタンガムを水に溶解する。
【0136】
f)連続的に攪拌しながら約50〜70℃でd)の油性相をe)の水性相にゆっくり加える、またはその逆。
【0137】
g)f)の混合物を均質化し、周囲温度に冷却させる。
【0138】
実施例4:ベタメタゾンスプレー製剤。
【0139】
【化5】

製造プロセス:
a)ポリエチレングリコール(および)パルミトステアリン酸エチレングリコール(および)パルミトステアリン酸PEG−32、ステアリン酸PEG−6およびステアリン酸PEG−32、ステアリン酸ソルビタン、ステアリルアルコールのPEGエーテル、鉱油、オレオイルポリオキシルグリセリド、ならびにセチルアルコール(および)セテス20(および)ステアレス20を、必要に応じて混合し、約50〜70℃に加熱する。
【0140】
b)約50〜70℃で連続的に攪拌しながらプロピルパラベン、メチルパラベン、およびブチルヒドロキシトルエンをa)の液体と混合する。
【0141】
c)ジプロピオン酸ベタメタゾンを、ジエチレングリコールモノエチルエーテルと混合する。
【0142】
d)c)の材料を、b)の材料と混合する。
【0143】
e)ヒドロキシエチルセルロースを水に溶解する。
【0144】
f)連続的に攪拌しながら約50〜70℃でd)の油性相をe)の水性相にゆっくり加える、またはその逆。
【0145】
g)f)の混合物を均質化し、周囲温度に冷却させる。
【0146】
実施例5:ベタメタゾンスプレー製剤。
【0147】
【化6】

製造プロセス:
a)ポリエチレングリコールおよびパルミトステアリン酸エチレングリコール、オレオイルポリオキシグリセリド(oleoyl polyoxyglycerides)、ならびに鉱油を混合し、約50〜70℃に加熱する。
【0148】
b)約50〜70℃で連続的に攪拌しながらプロピルパラベン、メチルパラベン、およびブチルヒドロキシトルエンをa)の液体と混合する。
【0149】
c)フロ酸モメタゾンを、ジエチレングリコールモノエチルエーテルと混合する。
【0150】
d)c)の材料を、b)の材料と混合する。
【0151】
e)ヒドロキシエチルセルロースまたはキサンタンガムを水に溶解する。
【0152】
f)連続的に攪拌しながら約50〜70℃でd)の油性相をe)の水性相にゆっくり加える、またはその逆。
【0153】
g)f)の混合物を均質化し、周囲温度に冷却させる。
【0154】
実施例6:ハロベタゾールスプレー製剤。
【0155】
【化7】

製造プロセス:
a)ポリエチレングリコールおよびパルミトステアリン酸エチレングリコール、オレオイルポリオキシグリセリド(oleoyl polyoxyglycerides)、ならびに鉱油を混合し、約50〜70℃に加熱する。
【0156】
b)約50〜70℃で連続的に攪拌しながらプロピルパラベン、メチルパラベン、およびブチルヒドロキシトルエンをa)の液体と混合する。
【0157】
c)プロピオン酸ハロベタゾールを、ジエチレングリコールモノエチルエーテルと混合する。
【0158】
d)c)の材料を、b)の材料と混合する。
【0159】
e)ヒドロキシエチルセルロースまたはキサンタンガムを水に溶解する。
【0160】
f)連続的に攪拌しながら約50〜70℃でd)の油性相をe)の水性相にゆっくり加える、またはその逆。
【0161】
g)f)の混合物を均質化し、周囲温度に冷却させる。
【0162】
実施例7:トリアムシノロンスプレー製剤。
【0163】
【化8】

製造プロセス:
a)ポリエチレングリコールおよびパルミトステアリン酸エチレングリコール、オレオイルポリオキシグリセリド(oleoyl polyoxyglycerides)、ならびに鉱油を混合し、約50〜70℃に加熱する。
【0164】
b)約50〜70℃で連続的に攪拌しながらプロピルパラベン、メチルパラベン、およびブチルヒドロキシトルエンをa)の液体と混合する。
【0165】
c)トリアムシノロンアセトニドを、ジエチレングリコールモノエチルエーテルと混合する。
【0166】
d)c)の材料を、b)の材料と混合する。
【0167】
e)ヒドロキシエチルセルロースまたはキサンタンガムを水に溶解する。
【0168】
f)連続的に攪拌しながら約50〜70℃でd)の油性相をe)の水性相にゆっくり加える、またはその逆。
【0169】
g)f)の混合物を均質化し、周囲温度に冷却させる。
【0170】
実施例8:ヒドロコルチゾンスプレー製剤。
【0171】
【化9】

製造プロセス:
a)ポリエチレングリコールおよびパルミトステアリン酸エチレングリコール、オレオイルポリオキシグリセリド(oleoyl polyoxyglycerides)、ならびに鉱油を混合し、約50〜70℃に加熱する。
【0172】
b)約50〜70℃で連続的に攪拌しながらプロピルパラベン、メチルパラベン、およびブチルヒドロキシトルエンをa)の液体と混合する。
【0173】
c)酪酸ヒドロコルチゾンを、ジエチレングリコールモノエチルエーテルと混合する。
【0174】
d)c)の材料を、b)の材料と混合する。
【0175】
e)ヒドロキシエチルセルロースまたはキサンタンガムを水に溶解する。
【0176】
f)連続的に攪拌しながら約50〜70℃でd)の油性相をe)の水性相にゆっくり加える、またはその逆。
【0177】
g)f)の混合物を均質化し、周囲温度に冷却させる。
【0178】
実施例9:ベタメタゾンスプレー製剤。
【0179】
【化10】

製造プロセス:
a)ポリエチレングリコールおよびパルミトステアリン酸エチレングリコール、オレオイルポリオキシグリセリド(oleoyl polyoxyglycerides)、ならびに鉱油を混合し、約50〜70℃に加熱する。
【0180】
b)約50〜70℃で連続的に攪拌しながらプロピルパラベン、メチルパラベン、およびブチルヒドロキシトルエンをa)の液体と混合する。
【0181】
c)吉草酸ベタメタゾンを、ジエチレングリコールモノエチルエーテルと混合する。
【0182】
d)c)の材料を、b)の材料と混合する。
【0183】
e)ヒドロキシエチルセルロースまたはキサンタンガムを水に溶解する。
【0184】
f)連続的に攪拌しながら約50〜70℃でd)の油性相をe)の水性相にゆっくり加える、またはその逆。
【0185】
g)f)の混合物を均質化し、周囲温度に冷却させる。
【0186】
実施例10:フルオシノロンスプレー製剤。
【0187】
【化11】

製造プロセス:
a)ポリエチレングリコールおよびパルミトステアリン酸エチレングリコール、オレオイルポリオキシグリセリド(oleoyl polyoxyglycerides)、ならびに鉱油を混合し、約50〜70℃に加熱する。
【0188】
b)約50〜70℃で連続的に攪拌しながらプロピルパラベン、メチルパラベン、およびブチルヒドロキシトルエンをa)の液体と混合する。
【0189】
c)フルオシノロンアセトニドを、ジエチレングリコールモノエチルエーテルと混合する。
【0190】
d)c)の材料を、b)の材料と混合する。
【0191】
e)ヒドロキシエチルセルロースまたはキサンタンガムを水に溶解する。
【0192】
f)連続的に攪拌しながら約50〜70℃でd)の油性相をe)の水性相にゆっくり加える、またはその逆。
【0193】
g)f)の混合物を均質化し、周囲温度に冷却させる。
【0194】
実施例11:デソニドスプレー製剤。
【0195】
【化12】

製造プロセス:
a)ポリエチレングリコールおよびパルミトステアリン酸エチレングリコール、オレオイルポリオキシグリセリド(oleoyl polyoxyglycerides)、ならびに鉱油を混合し、約50〜70℃に加熱する。
【0196】
b)約50〜70℃で連続的に攪拌しながらプロピルパラベン、メチルパラベン、およびブチルヒドロキシトルエンをa)の液体と混合する。
【0197】
c)デソニドを、ジエチレングリコールモノエチルエーテルと混合する。
【0198】
d)c)の材料を、b)の材料と混合する。
【0199】
e)ヒドロキシエチルセルロースまたはキサンタンガムを水に溶解する。
【0200】
f)連続的に攪拌しながら約50〜70℃でd)の油性相をe)の水性相にゆっくり加える、またはその逆。
【0201】
g)f)の混合物を均質化し、周囲温度に冷却させる。
【0202】
実施例12:メチルプレドニゾロンスプレー製剤。
【0203】
【化13】

製造プロセス:
a)ポリエチレングリコールおよびパルミトステアリン酸エチレングリコール、オレオイルポリオキシグリセリド(oleoyl polyoxyglycerides)、ならびに鉱油を混合し、約50〜70℃に加熱する。
【0204】
b)約50〜70℃で連続的に攪拌しながらプロピルパラベン、メチルパラベン、およびブチルヒドロキシトルエンをa)の液体と混合する。
【0205】
c)メチルプレドニゾロンを、ジエチレングリコールモノエチルエーテルと混合する。
【0206】
d)c)の材料を、b)の材料と混合する。
【0207】
e)ヒドロキシエチルセルロースまたはキサンタンガムを水に溶解する。
【0208】
f)連続的に攪拌しながら約50〜70℃でd)の油性相をe)の水性相にゆっくり加える、またはその逆。
【0209】
g)f)の混合物を均質化し、周囲温度に冷却させる。
【0210】
実施例13:アルクロメタゾンスプレー製剤。
【0211】
【化14】

製造プロセス:
a)ポリエチレングリコールおよびパルミトステアリン酸エチレングリコール、オレオイルポリオキシグリセリド(oleoyl polyoxyglycerides)、ならびに鉱油を混合し、約50〜70℃に加熱する。
【0212】
b)約50〜70℃で連続的に攪拌しながらプロピルパラベン、メチルパラベン、およびブチルヒドロキシトルエンをa)の液体と混合する。
【0213】
c)ジプロピオン酸アルクロメタゾンを、ジエチレングリコールモノエチルエーテルと混合する。
【0214】
d)c)の材料を、b)の材料と混合する。
【0215】
e)ヒドロキシエチルセルロースまたはキサンタンガムを水に溶解する。
【0216】
f)連続的に攪拌しながら約50〜70℃でd)の油性相をe)の水性相にゆっくり加える、またはその逆。
【0217】
g)f)の混合物を均質化し、周囲温度に冷却させる。
【0218】
実施例14:ベタメタゾンスプレー製剤。
【0219】
【化15】

製造プロセス:
a)アクリルポリマーをエタノールに溶解する。
【0220】
b)攪拌しながら、ジプロピオン酸ベタメタゾンをミリスチン酸イソプロピル、鉱油、およびTranscutol Pの混合物に溶解する。
【0221】
c)連続的に攪拌しながらa)およびb)の混合物を合わせて、生成物を得る。
【0222】
実施例15:モメタゾンスプレー製剤。
【0223】
【化16】

製造プロセス:
a)ポリエチレングリコールおよびパルミトステアリン酸エチレングリコール、オレオイルポリオキシグリセリド(oleoyl polyoxyglycerides)、ならびに鉱油を混合し、約50〜70℃に加熱する。
【0224】
b)約50〜70℃で連続的に攪拌しながらプロピルパラベン、メチルパラベン、およびブチルヒドロキシトルエンをa)の液体と混合する。
【0225】
c)フロ酸モメタゾンを、Transcutol Pと混合する。
【0226】
d)c)の材料を、b)の材料と混合する。
【0227】
e)ヒドロキシエチルセルロースまたはキサンタンガムを水に溶解する。
【0228】
f)連続的に攪拌しながら約50〜70℃でd)の油性相をe)の水性相にゆっくり加える、またはその逆。
【0229】
g)f)の混合物を均質化し、周囲温度に冷却させる。
【0230】
実施例16:皮膚毒性試験。
【0231】
実施例3で調製した0.025%および0.05%のジプロピオン酸ベタメタゾンスプレー(製剤CおよびD)の、Sprague−Dawleyラットへの0.5mgおよび1mg/Kg/日の用量での1日1回28日間の経皮投与を含む毒性試験を行う。製剤に重度の皮膚刺激または用量を制限する皮膚刺激はなく、耐容性が良好である。全ての動物が試験期間中生存し、試験製剤に関連した臨床徴候はない。
【0232】
全身的作用は、両方の製剤の両方の用量での体重増加の減少、ならびに血液学、臨床化学および臓器重量の変化からなる。これらの変化の多くは、試験薬合成コルチコステロイドの薬理学的活性と整合する。対照と比較したリンパ球ならびに胸腺および脾臓重量の減少は、薬物の免疫抑制効果と整合する。雌雄両方におけるコレステロールの増加および全ての群の雌における血清トリグリセリドの増加は、この薬物のグルココルチコイド活性に関連していると思われる。副腎重量の減少は、コルチコステロイドの周知の効果である。組織病理学的変化は、胸腺、脾臓、腸間膜、および縦隔リンパ節の死亡した(deceased)細胞充実性、ならびに副腎の皮質萎縮からなり、これは肉眼的所見でサイズが小さいことと相関する。用量またはベタメタゾン濃度の顕著な差は認められない。しかし、対照と比較した処置動物の体重増加の減少に起因する約10%以上の体重差により、「最大無毒性量」(NOAEL)は確立できない。
【0233】
実施例17:経皮透過試験。
【0234】
後述の試験手順を用い、ヒト皮膚を用いて経皮透過試験を行う。(実施例2および3からの)製剤C、F、GおよびKのサンプル、ならびに市販のDIPROLENEローションを試験する。平均表面積およそ0.6cmおよび体積およそ2mLのフランツ拡散セルを用いる。三人の対象から採皮したヒト皮膚をドナーおよびレシーバコンパートメントの間に配置し、8時間および24時間の試験時間の各々で各試験材料につき各ドナーのセルが三つあるようにする。採皮したヒト皮膚の完全性を電気インピーダンスで測定する。皮膚に電流を伝導できるように上下のドナーチャンバにPBS溶液を満たす。2000オーム未満のインピーダンスを示す皮膚サンプルを廃棄し交換する。皮膚インピーダンスの測定後、PBS溶液をレシーバコンパートメントから除去し、PBS中200μLの2%Brij(登録商標)98vと交換する。その後、投薬前少なくとも30分間(32±10℃の皮膚表面温度を維持するために)水浴中34〜37℃で平衡化する前に、サイドアームおよびドナーチャンバの両方をParafilm(商標)でカバーする。追加のフランツセルも取り付けるが投薬は行わず、温度プローブを用いて皮膚表面の温度を連続的にモニタして、皮膚表面温度が実験の間中32±10℃で一定であることを確保する。セルに試験材料を投薬する。投薬後、フランツセルの上のドナーチャンバを直ちに交換して固定する。その後サイドアーム上のParafilm(商標)を除去し、レシーバコンパートメントを予熱したレシーバ液体で満たす。その後フランツセルを予め較正された水浴に入れ、これにより32±10℃の皮膚表面温度を維持する。セルは、実験の間塞がずにおく。時間=0で、200μLのレシーバ液体を投薬前にシリンジで除去し、新しい予熱したレシーバ液体を用いて、この時点およびその後の各サンプリング時点に除去したレシーバ液体と交換する。各試験時間終了時に、希釈液を用いて、皮膚表面およびドナーチャンバから個別に残余のジプロピオン酸ベタメタゾンを除去し定量する。ジプロピオン酸ベタメタゾンを角質層から抽出する。生育可能な皮膚の表皮膜および真皮層を分離し、両層からジプロピオン酸ベタメタゾンを抽出する。HPLCを用いて各層に存在する薬物を測定する。
【0235】
経皮透過試験の結果が図2に図示されており、図中「REF」のバーは、DIPROLENEローションである。8時間では、真皮薬物濃度は、実施例の製剤のほうが一般にDIPROLENEローションのレベルよりも高いかこれと等しい。皮下および表皮レベルは、実施例の製剤のほうがDIPROLENEローションよりもずっと低い。いかなる特定の理論にも制約されることを意図するものではないが、DIPROLENEローションよりも実施例の製剤でのより高い真皮レベルはより高い効力につながり、より低い表皮レベルはより低い皮膚萎縮の可能性につながりうる。DIPROLENEローションからの薬物は主に表皮に浸透する一方で、実施例の製剤により薬物が皮膚により深く浸透しうると仮定される。
【0236】
24時間では、真皮レベルの下落はDIPROLENEローションと比較して実施例の製剤でのほうが急である。より急な下落率は、複数回適用によるより少ない蓄積につながりうる。DIPROLENEローションのより高い皮下および表皮レベルが、24時間での真皮レベルの持続に寄与している可能性がある。
【0237】
真皮レベルの変動は、異なるポリマー、薬物濃度、およびジエチレングリコールモノエチルエーテル(「DEGME;diethyleneglycol monoethyl ether」)濃度等の製剤変数にある程度起因し得、これらの変数が表6に集められており、表中「HEC」はヒドロキシエチルセルロースであり、「XG」はキサンタンガムである。
【0238】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射剤を含まないスプレー可能局所用医薬組成物であって、活性薬剤と、乳化剤と、ポリマーと、水と、水非混和性物質と、約0.001重量パーセント〜約15重量パーセントの量の活性薬剤皮膚浸透促進剤とを含む、組成物。
【請求項2】
浸透促進剤が、約0.05重量パーセント〜約10重量パーセントの量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
浸透促進剤が、約3重量パーセント〜約10重量パーセントの量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
活性薬剤が、ステロイドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
活性薬剤が、アルクロメタゾン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、フルオシノロン、ハロベタゾール、ヒドロコルチゾン、モメタゾン、トリアムシノロン、クロコルトロン、クロベタゾール、デソキシメタゾン、フルチカゾン、またはその塩またはエステルを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
活性薬剤が、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、フルオシノロンアセトニド、プロピオン酸ハロベタゾール、アセポン酸ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、吉草酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、フロ酸モメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、ピバル酸クロコルトロン、プロピオン酸クロベタゾール、デソキシメタゾン、プロピオン酸フルチカゾンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
活性薬剤が、ジプロピオン酸ベタメタゾンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
活性薬剤が、フロ酸モメタゾンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
活性薬剤が、吉草酸ベタメタゾンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
活性薬剤が、トリアムシノロンアセトニドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
活性薬剤が、ジプロピオン酸アルクロメタゾンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
活性薬剤が、約0.025重量パーセント〜約0.1重量パーセントのベタメタゾンと等価な量で存在する、ベタメタゾン化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
浸透促進剤が、ポリオール、グリコール、エステル、エーテル、スルホキシド、脂肪酸、脂肪酸エステル、またはその任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
浸透促進剤が、ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルスルホキシド、デシルメチルスルホキシド、ラウリン酸、オレイン酸、吉草酸、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、オレイン酸エチル、またはその任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
水非混和性物質が、植物油、飽和パラフィン油、鉱油、脂肪酸、天然脂肪酸の脂肪酸エステル、動物または植物起源のトリグリセリド、中鎖トリグリセリド、モノグリセリド、ジグリセリドおよび/またはトリグリセリドの混合物、ろう、水素化植物油、あるいはその任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
水非混和性物質が、ヒマシ油、ラノリン油、10〜18の炭素原子を有するクエン酸トリイソセチルトリグリセリド、ヤシ油、トウモロコシ油、綿実油、亜麻仁油、ミンク油、オリーブ油、パーム油、ヒマワリ油、堅果油、またはその任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
水非混和性物質が、鉱油を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
乳化剤が、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤、両性界面活性剤、またはその任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
乳化剤が、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸とソルビトールならびにその一無水物および二無水物との部分エステルの混合物、ステアリン酸ポリエチレングリコール、ステアリン酸グリコール、ドデシル硫酸ナトリウム、臭化セチルトリアルキルアンモニウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、またはその任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
ポリマーが、カルボマー、ポリエチレングリコール、アクリル酸ポリマー、メタクリル酸ポリマー、ポリビニルピロリドン、メタクリル酸ブチルおよびメタクリル酸メチルベースのコポリマー、酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニル、セルロース、ガム、アルギン酸塩、酢酸フタル酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはその任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
ポリマーが、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、またはその任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
ポリマーが、キサンタンガム、トラガカント、グアーガム、ローカストビーンガム、アカシア、またはその任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
抗酸化剤、保存剤、湿潤剤、および可塑剤の一つ以上をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
アルコールおよびプロピレングリコールのいずれかまたは両方を実質的に含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
実質的に非起泡性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
水性乳濁液である、請求項1に記載の組成物。
【請求項27】
スプレー後に皮膚適用部位上に閉塞性フィルムを形成しない、請求項1に記載の組成物。
【請求項28】
乾癬、ステロイド反応性皮膚病、紅斑、接触過敏症反応、および他の関連する疾患または障害を治療するための、請求項1〜27のいずれかに記載の組成物。
【請求項29】
アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、湿疹、尋常性乾癬、乾癬性紅皮症(erythrodermic psoriasis)、および頭皮の乾癬の一つ以上を治療するための、請求項1〜27のいずれかに記載の組成物。
【請求項30】
噴射剤を含まないスプレー可能局所用医薬組成物であって、約0.025重量パーセント〜約0.1重量パーセントのベタメタゾン基剤と等価な量のベタメタゾン化合物と、乳化剤と、ポリマーと、水と、水非混和性物質と、約3重量パーセント〜約10重量パーセントの量の活性薬剤皮膚浸透促進剤とを含む、組成物。
【請求項31】
ベタメタゾン化合物が、安息香酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、または吉草酸ベタメタゾンである、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
浸透促進剤が、ジエチレングリコールモノエチルエーテルまたはジエチレングリコールモノメチルエーテルを含む、請求項30に記載の組成物。
【請求項33】
油中水型乳濁液である、請求項30に記載の組成物。
【請求項34】
請求項1または30のいずれかに記載の組成物を含む分配用デバイスであり、前記デバイスが、容器と、ポンプディスペンサと、ディップチューブと、絞り弁と、アクチュエータとを含み、前記アクチュエータの運動により、前記組成物が前記ディップチューブを通って前記絞り弁内に流れ、前記組成物が、前記アクチュエータ内のオリフィスからスプレーの形で放出される、デバイス。
【請求項35】
噴射剤を含まない医薬局所用スプレー可能組成物を調製するためのプロセスであって、前記プロセスは:
a)油性相を得るために、乳化剤と水非混和性物質とを含む混合物を加熱するステップと;
b)任意に、抗酸化剤、保存剤、または両方を、前記a)の油性相と混合するステップと;
c)活性薬剤を浸透促進剤と混合するステップと;
d)前記c)の材料を前記a)またはb)の混合物と混合するステップと;
e)ポリマーを水に溶解するステップと;
f)乳濁液を形成するために、前記d)の油性相をe)の水性相と混合するステップと
を含む、プロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−503203(P2013−503203A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527086(P2012−527086)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2010/047240
【国際公開番号】WO2011/026076
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(399131150)ドクター・レディーズ・ラボラトリーズ・リミテッド (19)
【出願人】(506017137)ドクター レディズ ラボラトリーズ, インコーポレイテッド (24)
【Fターム(参考)】