説明

ステロイド上におけるキラル第1級アミンのジアステレオ選択的生成のための新規な方法

本発明は、エーテル/アルコールの混合物において、低温でアンモニア中のリチウムによるオキシムの還元を含む、ステロイド上に第1級アミンを得るためのジアステレオ選択的方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステロイド上に第1級アミンをジアステレオ選択的に得るための方法に関する。
【0002】
本発明による方法は、工業規模で、キラルアミンのジアステレオ選択的な取得を含むステロイドの新規な合成経路の開発を可能にするので特に利点がある。
【背景技術】
【0003】
第1級アミンをステロイド上に導入することを可能にする合成経路が記載されている。これらの経路には、一般に、水素化物、酢酸中の亜鉛、またはアルコール中のナトリウムなどの還元剤の作用を通しての置換または非置換オキシムの還元が含まれる。これらの方法は、大抵の場合に、アミンのα異性体およびβ異性体の様々な割合における混合物を生成する。これらのジアステレオ異性体は、ごく一般には、分取クロマトグラフィーにより単離しなければならない。したがって、この合成経路は、工業レベルへの移行を可能にしない。
【0004】
従来技術の文献の中で、水素化物またはパラジウム触媒下の水素を用いて、適切な立体配置のアジド基の還元により、立体選択的条件下で得られたアミノ基を有するステロイドの調製が記載されている、国際公開出願第01/83512号パンフレットが、より具体的には挙げられる。
【0005】
このような技法、特にアジド中間体を使用する技法の工業規模への移行は、工場用地によって、極めて難しく、または不可能でさえもある。工業レベルでのアジド化学の使用には、特定設備の建設が必要とされることが実際に知られている。微量の酸の存在下で、アジドは、高毒性で高爆発性のガスであるアジ化水素酸(またはアジ化水素)を生成する。重金属アジドも高爆発性であり、アジドと重金属を含有する合金との全ての接触は、それ故に避けねばならない。したがって、これは、アジ化ナトリウムを用いた反応を行うためには適切で骨の折れる安全対策が必要であることを暗示している。
【0006】
刊行物J.Chem.Research(5)2003年、234−235頁から、3−アミノステロイドが、トシル化、アジドの形成およびアミンへの還元により、3−ヒドロキシ誘導体から得られたことが思い起こされる。この刊行物には、この方法が、3位における立体配置の反転を生じることが付け加えられている。この刊行物には、3位ケトンをピリジン中ヒドロキシアミンで処理し、オキシムをイソプロパノール中ナトリウムで還元し、反応媒体を酢酸で処理することが本質である、立体配置の反転を全く生じない代替の4段法が記載されている。
【0007】
刊行物Bull.Soc.Chim.1971年、11号、4072−4078頁から、3−オキシイミノ化合物の還元(Na−アルコール、LiAlH−エーテル/ジオキサン、LiAlH−AlCl錯体)にある、その当時知られていた3−アミノステロイドを得るための様々な方法が思い起こされ、これらの方法は、得られた錯体混合物から誘導された化合物を分離するのが困難なために、第1級アミンを生じるのに非常に困難を伴うことが明記されている。3位の異性体と更に分解/転位化合物との混合物も得られる。3−オキシイミノ化合物を還元するためのより立体特異的な方法が他に2つ、アダムス白金存在下での接触水素化、およびエチルアミン中のリチウムの作用が記載されている。後者からは、主成分がβアミンの混合物が生成され、そのため、この混合物から結晶化またはクロマトグラフィーにより、α異性体を分離することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第01/83512号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】J.Chem.Research(5)、2003年、234−235頁
【非特許文献2】Bull.Soc.Chim.1971年、11号、4072−4078頁
【発明の概要】
【0010】
本出願者は、オキシムから出発してステロイド第1級アミンを調製するための完全に立体選択的な新規の方法を開発した。この方法は、この分子が反応条件に敏感な置換基をそれ以外に含まないことを条件として、工業規模への容易な移行を可能にし、一般に適用することができる。
【0011】
したがって、本発明の主題は、ステロイド骨格上の1、2、3、4、6、7、11、12、15、16または17位における、αまたはβ立体配置のステロイド第1級アミンの
立体選択的調製法であって、式(II)のオキシム:
【0012】
【化1】

(式中、Rは、水素原子、1から12個の炭素原子を含有する直鎖、分岐もしくは環式アルキル基、または12個までの炭素原子を含有するアリールもしくはアラルキル基を表わし、R1は、水素原子または1から4個の炭素原子を含有する低級アルキル基を表わし、R2は、1から4個の炭素原子を含有する低級アルキル基を表わし、オキシム官能基が、骨格上の1、2、3、4、6、7、11、12、15、16もしくは17位に位置し、骨核が、その他に、以下に規定する反応条件に敏感でない1個以上の基で置換することができる。)が、エーテル型溶媒と脂肪族アルコールの混合物において、−33℃と−90℃の間の温度で液体アンモニア中のリチウム金属で処理され、所期の式(I)の化合物:
【0013】
【化2】

(式中、αまたはならびにβ立体配置のアミンは、式(II)の化合物上のオキシムの位置に対応する位置に存在する)が得られることを特徴とする方法である。
【0014】
得られたアミンは、最も熱力学的に安定な位置に対応する、エカトリアル立体配置にある。
【0015】
上で言及している反応条件に敏感である基は、有機化学者に良く知られているが、指摘のように、本発明による方法は、一般に適用することができ、使用する還元条件下でのオキシムの反応性のために、この反応をモニターし、オキシムが消失した時に中断することにより、所与量のリチウムを使用すると、エステル、アミドもしくはケトン基などの敏感であると見なされる他の基、または芳香族置換基もしくは二重結合さえ、影響されるのを防止することが可能になる。
【0016】
存在することができない基は、本質的に共役エノンである。
【0017】
使用するリチウム量は、4当量の少なくとも最小理論量であるが、当業者により知られているように、特にこの分子が1個以上の不安定なプロトンを含有する場合、より多量が必要となり、リチウムを消費する恐れがある。
【0018】
本発明の主題は、特に、−50℃と−80℃の間の温度で行われることを特徴とする、上に規定した方法である。
【0019】
本発明の主題は、特に、使用するアルコールが、1個以上のフッ素原子で置換されていてもよい、1から6個の炭素原子を含有する直鎖、分岐または環式のアルカノールであることを特徴とする、上に規定した方法である。
【0020】
本発明の主題は、より具体的には、使用するアルコールが、1個以上のフッ素原子で置換されていてもよい、1から4個の炭素原子を含有する直鎖または分岐アルカノールであることを特徴とする、上に規定した方法である。
【0021】
本発明の主題は、特に、使用するエーテル型溶媒が、テトラヒドロフランまたはメチルテトラヒドロフランであることを特徴とする、上に規定した方法である。しかし、反応条件下で液体である、当業者に知られている他のエーテルも、本発明に従って使用することができる。
【0022】
Rは、上に規定したように任意のアルキル、アリールまたはアラルキル基であってよいが、本発明の主題は、特に、Rがメチル、エチルまたはベンジル基を表わすことを特徴とする方法である。
【0023】
上に指摘したように、本発明の方法は、一般に適用することができ、前記発明の主題は、特に上に規定した方法であって、当該のステロイド骨格が、ハロゲン、遊離または保護ケトン、遊離またはエーテル化形態のヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、エステル化カルボキシ、イミド、アミド、および(適切な場合には1から3個の酸素、硫黄または窒素原子で中断され、遊離でまたは保護されていてよいヒドロキシもしくはケトン、ハロゲン、カルボキシまたはエステル化カルボキシで置換されていてもよい、15個までの炭素原子を含有する)飽和または不飽和、直鎖、分岐または環式、一価または二価の炭素鎖からなる群から選択される、1個以上の要素で置換されており、適切な場合には、Aおよび/またはBおよび/またはCおよび/またはD環中に、共役であってもなくてもよい1個以上の二重結合を含むことを特徴とする方法である。
【0024】
ステロイド骨格が、上に規定した群から選択される数個の要素で置換されている場合、この骨格は、同じ要素、例えばハロゲン、または遊離でもしくは保護されていてよいケトンもしくはヒドロキシを数回含むことができる。
【0025】
「ハロゲン」という用語は、好ましくはフッ素を意味することを意図している。
【0026】
「エーテル化ヒドロキシ」という用語は、1つのヒドロキシ基の保護基を含むか、またはこの骨格の2個の隣接している炭素に結合している2つのヒドロキシ基の保護基を含むかにかかわらず、化学者に知られている全ての通常の保護基を意味することを意図している。
【0027】
(C−C)アルキル基、特にメチルもしくはt−ブチルで、(C−C)アルキルフェニル基、特にベンジル、p−メトキシベンジル、p−ニトロベンジルで形成されるエーテル、アリルエーテル、トリチル、メトキシメチル、メトキシエトキシメチル、エトキシエチル、テトラヒドロピラニル、シリル化エーテル、特にトリメチル、トリエチルもしくはトリイソプロピルシリルエーテル、またはt−ブチルジメチルシリルもしくはジメチルアリールシリルエーテルなどの開裂可能なエーテルが、例えば挙げられ得る。
【0028】
アセチル、ベンゾイル、フェニルアセチルもしくはホルミル基、またはクロロアセチル、ジクロロアセチル、トリクロロアセチルもしくはトリトリフルオロアセチルなどのハロアセチル基で形成されるエステルなどの開裂可能なエステルも挙げられ得る。
【0029】
カーボネートも、および−O−(CH)m−O−、−O−(CH)m−S−、−S−(CH)m−S−もしくは−O−CH−C(C−Cアルキル)−CH−O−などの環式ケタール、または−(CHO)−もしくは(EtO)2−などの非環式ケタールも挙げられ得る(但し、mは好ましくは1、2もしくは3である)。
【0030】
「ケトン基の保護基」という表現は、化学者達に知られている任意の保護基、特に上に述べたケタールおよびチオケタールを意味することを意図している。
【0031】
「アミノ」という用語は、第1級、第2級または第3の級アミノ、特に(C−C)アルキル−もしくはジアルキルアミノを意味することを意図している。
【0032】
「エステル化カルボキシ」という用語は、特に(C−C)アルキルエステルを意味することを意図している。
【0033】
炭素鎖は、ステロイド分野で知られている任意の鎖、特に、上に指摘したように1から3個のヘテロ原子で中断されているおよび/または置換されている、直鎖、分岐または環式のアルキル、アルケニル、アルキニルまたはアルキレンであってよい。
【0034】
1から12個までの炭素原子を含有する直鎖または分岐アルキル鎖の一例として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、およびイソプロピル、イソブチル、イソペンチル、ネオペンチル、イソヘキシル、3−メチルペンチル、sec−ブチル、tert−ブチルまたはtert−ペンチルなどのこれらの分岐異性体が、特に挙げられ得る。
【0035】
環式アルキル鎖の一例として、例えば1から4個までの炭素原子を含有するアルキル基で置換されていてもよい、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルまたはシクロオクチルが、特に挙げられ得る。
【0036】
アルケニル鎖の一例として、ビニル、アリルまたはブテニルが、特に挙げられ得る。
【0037】
アルキニル鎖の一例として、エチニルまたはプロパルギルが、特に挙げられ得る。
【0038】
アルキレン鎖の一例として、メチレンまたは上記のアルキルから誘導される任意の二価の鎖が、特に挙げられ得る。この鎖は、適切な場合には、骨格の2つの隣接する炭素に結合することができ、二環系を形成することもできる。
【0039】
これらの環は、1個以上の二重結合を含有する場合、後者は、特に1(2)、3(4)、1、3、5、5(6)、6(7)、9(11)、15(16)または16(17)位に存在する。
【0040】
本発明の主題は、特に、ステロイドがアルキレン鎖で置換される場合、後者が17位におけるメチレンではないことを特徴とする、上に規定した方法である。
【0041】
本発明の主題は、より具体的には上に規定した方法であって、当該のステロイド骨格が、フッ素、遊離または保護ケトン、遊離または保護ヒドロキシ、アミノ、エーテル、アミド、イミド、ならびに上に規定したアルキル、アルケニル、アルキニルおよびアルキレンの鎖からなる群から選択される1個以上の要素で置換されており、適切な場合には、Aおよび/またはBおよび/またはCおよび/またはD環中に、共役であってもなくてもよい1個以上の二重結合を含むことを特徴とする方法である。
【0042】
本発明の主題は、より具体的には上に規定した方法であって、当該のステロイド骨格が、遊離または保護ケトン、遊離または保護ヒドロキシ、および12個までの炭素原子を含有する直鎖または分岐アルキル鎖からなる群から選択される1個以上の要素で置換されており、適切な場合には、Aおよび/またはBおよび/またはCおよび/またはD環中に1から2個の二重結合を含むことを特徴とする方法である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明は、以下に続く実施例により例証される。
【実施例】
【0044】
実施例1:3β−アミノスタノロンの合成
【0045】
【化3】

【0046】
スタノロン3−Z,E−メチルオキシムの調製
スタノロン30gを、周囲温度で、テトラヒドロフラン120ml中に溶解する。トリエチルアミン21.54ml(1.5当量)および32%m/mの水酸化ナトリウム水溶液18.8ml(2当量)を、20℃でこの溶液に添加する。水溶液中の31%m/mの塩酸メチルヒドロキシアミン47.6ml(1.9当量)を、強く攪拌しながら添加する。この2相溶液を、20℃で3時間、次いで60℃で2時間攪拌し、この反応の終了をTLCにより確認する。この混合物を60℃で真空乾燥し、この蒸留液の屈折率が水の屈折率になるまで、反応体積を水の添加を通して一定に保つ。
【0047】
この生成物は、溶媒交換中に結晶化する。この懸濁液を20℃で16時間攪拌し、次いで水180mlを、20℃で懸濁液に添加する。この混合物をこの温度で30分間攪拌し、次いで固形物をスピンドライ乾燥し、水洗する。この生成物を、40℃で18時間乾燥する。
【0048】
スタノロン3−Z,E−メチルオキシム33.3g(収率=100%)が得られる。
【0049】
NMRスペクトル:300MHzで1H、2.52ppmを基準としたDMSO d6。ppm単位のδ。ZとE異性体の50/50混合物。
【0050】
【表1】

質量スペクトル:プラスモードにおけるエレクトロスプレーイオン化。
MH=(m/z)=320
【0051】
3βアミノスタノロン
スタノロン3−Z,E−メチルオキシム20gを、テトラヒドロフラン200mlおよびイソプロパノール25ml中に懸濁させる。この懸濁液を、−50℃で液体アンモニア100mlに添加する。この混合物を−70℃に冷却し、リチウム顆粒1.942g(4.47当量)を、9つに小分けして添加する。混合物を1時間攪拌し、次いでこの反応物を、塩化アンモニウム16.7g(5当量)を添加することにより処理する。次いでこの懸濁液を放置して周囲温度にまで戻し、水40mlを20℃で添加し、次いでこの混合物を60℃で真空蒸留し、この蒸留液の屈折率が水の屈折率に近づくまで、反応体積を水の定期的な添加を通して一定に保つ。この水性懸濁液を20℃に冷却し、塩化メチレン200mlで抽出する。非水溶性物質を濾過し、有機相を蒸発させて乾燥する。乾燥抽出物6.95gが得られる。
【0052】
更に、非水溶性物質を塩化メチレン700mlおよび水550ml中に溶解し、pHを32%m/m水酸化ナトリウム水溶液2mlを添加することにより12.5に調整する。有機相を蒸発させて乾燥し、更なる生成物10.4gが得られる。この2つの生成物を合わせると、17.35g(収率=95.1%)が得られる。
【0053】
この生成物5gを20℃で1時間、酢酸エチル150ml中に懸濁させ、生成物を濾過し、酢酸エチルで洗浄する。
【0054】
純3βアミノスタノロン2.5gが得られる。
NMRスペクトル:400MHzで1H、7.27ppmを基準としたCDCl dl。
【0055】
【表2】

第1級アミンのα/β比=0/100。
質量スペクトル:プラスモードにおけるエレクトロスプレーイオン化:MH(m/Z)=292。
【0056】
実施例2 17β−アミノ−DHEA
【0057】
【化4】

【0058】
DHEA17−E−メチルオキシムの調製
DHEA50gを、トルエン200mlおよびピリジン124ml(8.9当量)中に
溶解する。塩酸メトキシルアミン16.25g(98%純度、すなわち1.1当量)を2
0℃で添加する。この混合物を、50℃で5時間、次いで30℃で48時間攪拌する。こ
の固形物をスピンフィルター乾燥し、水洗し、次いで真空下で乾燥する。
【0059】
更に、濾液を沈澱させることにより分離し、有機相を水500mlで2回洗浄する。
有機相を真空蒸留して乾燥する。この乾燥抽出物および以前に濾過した結晶を、一緒に混合する。DHEA 17−E−メチルオキシム53.07g(すなわち全収率は96.4%)が得られる。
NMRスペクトル:400MHz、CDCl dl。
【0060】
【表3】

3位におけるプロトンはアクシャル(3β−アルコール)である。
【0061】
【表4】

Obs=実測値、lit=文献による。
質量スペクトル:プラスモードにおけるエレクトロスプレーイオン化。MH=318。
【0062】
17β−アミノ−DHEA
アンモニア50mlを−50℃で凝縮し、テトラヒドロフラン50mlおよびイソプロパノール7.9ml(すなわち6.55当量)中のDHEA 17−E−メチルオキシム5gの溶液を、この温度で添加する。リチウム顆粒1.078g(すなわち9.86当量)をアルゴン下、−50℃で少しずつ添加する。この混合物を−50℃で8時間攪拌し、次いで温度を20℃に戻す。この生成物は、温度が上昇して元の温度に戻る時に結晶化する。水50mlを添加し、次いでこの懸濁液を20℃で2時間攪拌し、次いでこの生成物をスピンフィルター乾燥し、水洗する。この固形物を40℃で真空乾燥し、17β−アミノ−DHEA4.55g(すなわち100%の収率)が得られる。
NMRスペクトル:400MHz、CDCl d1。
【0063】
【表5】

3位におけるプロトンはαであり、したがって3β−アルコールである。
17β−アミノ生成物は、96%の純度である。第1級アミンのα/β=4/96。
質量スペクトル:プラスモードにおけるエレクトロスプレーイオン化のMH=290。
【0064】
実施例12 β−アミノヘコゲニン
【0065】
【化5】

【0066】
12−Z,E−メチルオキシムヘコゲニンの調製
ヘコゲニン20gを、20℃でトルエン40mlおよびピリジン15.8ml(すなわち8.9当量)中に溶解する。塩酸メトキシルアミン2.03g(すなわち1.1当量)を20℃で添加する。得られた白い懸濁液を、50℃で3時間および30℃で15時間攪拌する。この生成物をスピンフィルター乾燥し、水洗する。この生成物を40℃で真空乾燥する。12−Z,E−メチルオキシムヘコゲニン7.05g(すなわち69.5%の収率)が得られる。
NMRスペクトル:400MHz、CDCl dl。
プロトンスペクトル:
【0067】
【表6】

炭素スペクトル:
【0068】
【表7】

19−Me:12.3ppm(5α)。3位におけるH:3.60ppm;(これは、J=5.0および11.0Hzを有する三重線の形態で出現するので、アクシャルであり、
それ故にαである。
質量スペクトル:プラスモードにおけるエレクトロスプレーイオン化により行われる。2
つの異性体ZおよびEの存在。MH=460。
【0069】
12β−アミノヘコゲニン
アンモニア50mlを−50℃で凝縮し、テトラヒドロフラン50mlおよびイソプロパノール5.45ml(すなわち6.5当量)中の17−Z,E−メチルオキシムヘコゲニン5gの溶液をこの温度で添加する。リチウム顆粒0.393g(すなわち5.21当量)を、不活性ガス下、−50℃で攪拌しながら少しずつ3時間かけて添加する。この混合合物を...時間攪拌し、次いで温度を20℃に戻す。水50mlを添加し、テトラヒドフランを真空蒸留する。水100mlを添加し、この混合物を20℃で24時間攪拌する。この生成物をスピンフィルター乾燥し、水洗する。この固形物を40℃で真空乾燥する。
【0070】
12β−アミノヘコゲニン4.65g(すなわち99%の収率)が得られる。
NMRスペクトル:400MHz、CDCl dl。
プロトンスペクトル:
【0071】
【表8】

*:属性が、逆になっている恐れがある。
19−Me:5αシリーズの特徴である、12.9ppm。3位のH:3.59ppm;
これは、J=4.5および11.0Hzを有する、三重線の形態で現れるので、アクシャ
ルであり、それ故にαである。
第1級アミンのα/β=5/95。
質量スペクトル:プラスモードにおけるエレクトロスプレーイオン化であるMH=43
2.
【0072】
実施例4:6α−アミノコレスタノール
【0073】
【化6】

【0074】
E−E−メチルオキシムコレスタールの調製
6−オキソコレスタノール(99%純度)10gを、20℃でトルエン40mlおよびピリジン17.63ml(すなわち8.9当量)中に溶解する。塩酸メトキシルアミン2.30g(1.1当量)を20℃で添加する。白い懸濁液が得られ、この懸濁液を、50℃で6時間および25℃で30時間攪拌する。水40mlを添加し、この混合物を沈澱させることにより分離し、水相を除去する。有機相を溶解し、水洗する。この溶液を蒸留して乾燥する。この固形物をn−ヘプタン40ml中に懸濁させ、スピンフィルター乾燥し、n−ヘプタン10mlで洗浄する。この生成物を真空乾燥する。
【0075】
6−E−メチルオキシムコレスタノール10.14g(すなわち95.5%の収率)が
得られる。
【0076】
NMRスペクトル:CDCl:△E異性体(7位におけるCHに対してシス型のOMe);3位におけるHは、アクシャルであり、3位におけるOHはそれ故にβである(5αシリーズ)。
【0077】
【表9】

質量スペクトル:プラスモードにおけるエレクトロスプレーイオン化。MH=432。
【0078】
6α−アミノコレスタノール
アンモニア50mlを−50℃で凝縮し、テトラヒドロフラン50mlおよびイソプロパノール5.80ml(すなわち6.5g当量)中の6−E−メチルオキシムコレスタノール5gの懸濁液をこの温度で添加する。この混合物を−65℃に冷却し、リチウム顆粒0.490g(すなわち6.1当量)をアルゴン下で攪拌をしながら、少しずつ5時間かけて添加する。この混合物を1時間攪拌し、次いで温度を20℃に戻す。
【0079】
水50mlを添加し、テトラヒドロフランを真空下で留去する。この生成物をスピンフィルター乾燥し、水洗する。この固形物を40℃で真空乾燥し、6α−アミノコレスタノールの80.2%の収率が得られる。
【0080】
NMRスペクトル:400MHz、重水素化メタノール。
【0081】
【表10】

3位におけるHは、アクシャルであり、3位におけるOHはβである(5αシリーズ)。
第1級アミンのα/β=100/0。
質量スペクトル:MH=404。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステロイド骨格上の1、2、3、4、6、7、11、12、15、16もしくは17位における、αまたはβ立体配置のステロイド第1級アミンの立体選択的調製のための方法であって、式(II)のオキシム:
【化7】

(式中、Rは、水素原子、1から12個の炭素原子を含有する直鎖、分岐もしくは環式アルキル基、または12個までの炭素原子を含有するアリールもしくはアラルキル基を表わし、R1は、水素原子または1から4個の炭素原子を含有する低級アルキル基を表わし、R2は、1から4個の炭素原子を含有する低級アルキル基を表わし、オキシム官能基が、骨格上の1、2、3、4、6、7、11、12、15、16もしくは17位に位置し、骨核が、その他に、以下に規定する反応条件に敏感でない1個以上の基で置換することができる。)が、エーテル型の溶媒および脂肪族アルコールの混合物中、−33℃と−90℃の間の温度で液体アンモニア中のリチウム金属で処理され、ならびに所期の式(I)の化合物:
【化8】

(式中、αまたはβ立体配置のアミンは、式(II)の化合物上のオキシムの位置に対応する位置に存在する。)が得られる
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
式(II)のオキシム:
【化9】

(式中、Rは、水素原子、1から12個の炭素原子を含有する直鎖、分岐もしくは環式のアルキル基、または12個までの炭素原子を含有するアリールもしくはアラルキル基を表わし、オキシム官能基が、骨格上の1、2、3、4、6、7、11、12、15、16もしくは17位に位置し、骨核が、その他に、以下に規定する反応条件に敏感でない1個以上の基で置換されることができる。)が、エーテル型の溶媒と脂肪族アルコールの混合物中、−33℃と−90℃の間の温度で液体アンモニア中のリチウム金属で処理され、式(I)の予想される化合物:
【化10】

(式中、αまたはβ立体配置のアミンは、式(II)の化合物上のオキシムの位置に対応する位置に存在する。)が得られる
ことを特徴とする、ステロイド骨格上の1、2、3、4、6、7、11、12、15、16もしくは17位における、αまたはβ立体配置のステロイド第1級アミンの立体選択的調製のための、請求項1に記載の、方法。
【請求項3】
−50℃と−80℃の間の温度で行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の、方法。
【請求項4】
使用されるアルコールが、1個以上のフッ素原子で置換されていてもよい、1から6個の炭素原子を含有する直鎖、分岐または環式アルカノールであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の、方法。
【請求項5】
使用されるアルコールが、1個以上のフッ素原子で置換されていてもよい、1から4個の炭素原子を含有する直鎖または分岐アルカノールであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の、方法。
【請求項6】
使用されるエーテル型溶媒が、テトラヒドロフランまたはメチルテトラヒドロフランであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の、方法。
【請求項7】
Rが、メチル、エチルまたはベンジル基を表わすことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の、方法。
【請求項8】
当該の式(II)のステロイド骨格が、ハロゲン、遊離または保護ケトン、遊離またはエーテル化形態のヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、エステル化カルボキシ、イミド、および適切な場合には1から3個の酸素、硫黄または窒素原子で中断され、遊離でまたは保護されていてよいヒドロキシもしくはケトン、ハロゲン、カルボキシまたはエステル化カルボキシで置換されていてもよい、15個までの炭素原子を含有する飽和または不飽和、直鎖、分岐または環式、一価または二価の炭素鎖からなる群から選択される、1個以上の要素で置換されており、ならびに適切な場合には、Aおよび/またはBおよび/またはCおよび/またはD環中に、共役であってもなくてもよい1個以上の二重結合を含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の、方法。
【請求項9】
ステロイドがアルキレン鎖で置換される場合、アルキレン鎖が17位におけるメチレンでないことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の、方法。
【請求項10】
当該のステロイド骨格が、フッ素、遊離または保護ケトン、遊離または保護ヒドロキシ、アミノ、エーテル、アミド、イミド、ならびに上に規定したアルキル、アルケニル、アルキニルおよびアルキレンの鎖からなる群から選択される、1個以上の要素で置換されており、ならびに適切な場合には、Aおよび/またはBおよび/またはCおよび/またはD環中に、共役であってもなくてもよい1個以上の二重結合を含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の、方法。
【請求項11】
当該のステロイド骨格が、遊離または保護ケトン、遊離または保護ヒドロキシ、および12個までの炭素原子を含有する直鎖または分岐のアルキル鎖からなる群から選択される、1個以上の要素で置換されており、ならびに適切な場合には、Aおよび/またはBおよび/またはCおよび/またはD環中に、共役であってもなくてもよい1個以上の二重結合を含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の、方法。

【公表番号】特表2010−513252(P2010−513252A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540812(P2009−540812)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【国際出願番号】PCT/FR2007/002035
【国際公開番号】WO2008/090272
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(504456798)サノフイ−アベンテイス (433)
【Fターム(参考)】