説明

ステロイド性カルボチオ酸誘導体の製造方法および中間体

ステロイド性17β−カルボン酸をカルボチオ酸およびフルチカゾンプロピオネートのようなそのエステルに変換する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な中間体を介する、ステロイド性カルボン酸からフルチカゾンプロピオネートのようなカルボチオエート誘導体への新規な変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
17β−カルボチオ酸の製造において、硫黄は一般に、硫化水素を用いる(US4335121、US4578221)か、または水素化ナトリウムと硫化水素の反応からその場で生成される、硫化水素の塩を用いる(US4188385、US4335121、US4578221)ことによって、無水条件下に導入される。
【0003】
US2002/0133032号において、Abbottは、フルメタゾンから出発してフルチカゾンプロピオネートへの方法を請求している。この方法は5工程からなり、最後の2工程はワンポット反応として行うことができ、生成物は総収率51%で得られる。
【0004】
Abbottは、市販グレードのフルメタゾン中に存在する6α−クロロ−9α−フルオロ−不純物が、使用前にフルメタゾンの高度な精製を必要とすることも記載している。
フルチカゾンプロピオネートの製造において、CH2F−部分の導入は、カルボチオ酸の金属塩をジハロメタン誘導体、好ましくはフルオロハロメタンと反応させることによって行われる。
【0005】
Glaxoは、ブロモクロロメタンを用い、次いでハロゲン交換する方法を初めて行った(US 4335121)。これらは後にブロモフルオロメタンへと移行した(WO02088167, WO02100879, WO0212265, WO0212266)。このことはPhillipsら(J. Med. Chem., 1994, 37, 3717−3729)によって最初に記載された。
【0006】
イスラエルの会社、Chemagisは、ブロモおよびクロロフルオロメタンの両方を用いた(IL109656)。クロロフルオロメタンは、その後Abbottによっても用いられた(US 2002/0133032)。
【0007】
発明の要約:
本発明が解決しようとする課題は、ステロイド性カルボチオ酸、およびフルチカゾンプロピオネートのようなその誘導体の新規な製造方法、特に多数の関連する工程が連続するワンポット合成として行われ得る方法を提供することである。これは、関連する合成工程が溶媒を変えないで、または個々の中間体を単離しないでその場で行われ得る方法を意味する。
【発明の開示】
【0008】
本発明は、A) ステロイド性カルボン酸またはその塩を、カップリング剤単独と、またはカップリングエンハンサーと組み合わせて反応させ;そして
B) 工程A)の生成物を、硫黄原子を含む求核試薬と反応させることを含む方法を提供する。
【0009】
この解決は、式(III)の17β−カルボキシ−イミダゾリル−、スクシンイミジル−またはトリアゾリル−エステルのような、新規な、その場で生成されるエステルを中間体として用いることによって、競合する加水分解に対して閾が高められたということが、発明者によって確認されたことに基づいている。
【0010】
加水分解の低減したレベルは、さらに最終ステロイド性カルボチオエート生成物の形成効果を向上させ、厳密な無水条件下で操作する必要を除いた。
好ましいステロイド性カルボチオエート最終生成物は、ここで式(I)によって定義される。式(I)のR10がフルオロメチル基であるとき、これはフルチカゾンプロピオネートを表す。
【0011】
中間体(式(III)のエステルのような)は、ステロイド性カルボン酸からステロイド性カルボチオ酸またはカルボチオエートへの変換方法に用いるのに非常に適している。上記のように、ここに記載の方法の利点は、関連する工程をその場で行えるということに関連している。
【0012】
競合する加水分解に対する、中間体(式(III)の化合物のような)の向上した安定性は、無水条件下に操作する必要性をなくする。このことは、硫化水素ガスの使用を回避し、その代わりにハイドロスルフィド塩を、結晶水を有する固体として、または所望のスルフィド塩の水溶液として用いることを可能にする。さらに、関連工程がワンポットで行われ得る、方法を提供する。
【0013】
本発明は、例えば、フルチカゾンプロピオネートの新規な製造方法も開示している。 ここに記載の方法を採用することによって、5工程のうちの3工程をワンポットで行うことができ、このようにしてフルチカゾンプロピオネートが総収率89%で得られる(実施例3参照)。
【0014】
カップリング剤およびエンハンサーは、ペプチドカップリングを容易にするために、カルボン酸を活性化する必要があると何十年間認められていたペプチド化学反応に初めて用いられた(Handbook of Reagents for Organic Synthesis, Activating Agents and Protecting Groups, ed. A. J. Pearsonおよび W.R. Roush, John Wiley & Sons, 1999)。
【0015】
ステロイドの分野において、カップリング剤の使用は、特にカルボチオ酸およびアンドロスタン系のエステルの製造における使用も見出した(例えば、US 4188385, US 4198403, US 4335121)。しかしながら、これらの場合、カップリングエンハンサーは用いられず、結果的にいくつかの活性中間体は競合反応、例えば加水分解に付される傾向があるという欠点を被り、最終生成物の収率を低下させた。
【0016】
US 6197761において、Glaxoはカップリングエンハンサーを使用した。実施例16において、1−エチル−3−(3−ジメチル−アミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)と組み合わせた1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)によってアンドロスタン17β−カルボン酸を活性化することによって、新規なオキソ−テトラ−ヒドロフラノイルアミドが製造された。
【0017】
しかしながら、この文献には、カルボチオ酸が、求核試薬を活性化されたカルボキシ基に加えることによって得ることができることを開示していない。
本発明の態様が、単なる例示として以下に記載される。上記の文献は参考のために組み込まれる。
【0018】
定義:
式において、置換基は、断りのない限り、IUPAC Compendium of Chemical Terminologyにおけるのと同じ意味を有する。置換基の定義が範囲(例えば、C6〜C22またはC1〜C10)を有するとき、この範囲は、範囲内の全ての整数、つまり1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22などを含むものと理解されるべきである。
【0019】
「置換された」という用語は、(1、2、3、4、5または6のような)1つ以上の水素原子が、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシ、メルカプト、シアノ、カルバモイル、任意に置換されていてもよいアミノ、任意に置換されていてもよいアルキル(例えば、パーハロゲンアルキル)、任意に置換されていてもよいアルケニル、任意に置換されていてもよいアルキニル、任意に置換されていてもよいシクロアルキル/シクロアルケニル/シクロアルキニル、任意に置換されていてもよいアリール、任意に置換されていてもよいアルコキシカルボニル、任意に置換されていてもよいアリールオキシカルボニル、任意に置換されていてもよいアルコキシ、任意に置換されていてもよいアルキルチオ、任意に置換されていてもよい(ヘテロ)アリール、任意に置換されていてもよい(ヘテロ)アリールオキシまたはアシル基のような基から独立して選択される置換基で置換されていることを意味する。同一炭素原子上の2つの水素原子は、任意に置換されていてもよいC1−C6 アルキレン、O、NH、Sのような1つの2価の置換基で置換され得る。
【0020】
「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを表す。
「ヘテロ原子」または「ヘテロ」という用語は、0、SまたはNのような原子を含む。
【0021】
「アルキル」という用語は、1〜15の炭素原子を有する、直鎖状もしくは分枝鎖状の、飽和脂肪族炭化水素基を含む。好ましくは、アルキル基は1〜10の炭素原子、最も好ましくは、1、2、3、4、5または6の炭素原子を有する。アルキル基は、一つ以上のヘテロ原子によって中断されていてもよく、また例えばハロゲン、ヒドロキシ、アリール、シクロアルキル、アリールオキシまたはアルコキシのような、上で定義された基で任意に置換されていてもよい。好ましい直鎖状または分枝鎖状のアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルおよびt−ブチルを含む。
【0022】
「アルコキシ」という用語は、−O−アルキル基を意味する。
「シクロアルキル」という用語は、直鎖状または分枝鎖状の、飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基が結合して形成する、好ましくは3、4、5、6または7員の1つ以上の環を含み、これらの環は縮合環であっても単環であってもよい。これらの環は、例えばハロゲン、ヒドロキシ、アリール、アリールオキシ、アルコキシまたはアルキルのような、上で定義された基で置換されていてもよい。好ましいシクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルを含む。
【0023】
「アルケニル」という用語は、少なくとも一つの炭素−炭素二重結合を有する、2〜15の炭素原子(例えば、2、3、4、5、6または10の炭素原子)を有する、直鎖状または分枝鎖状の炭化水素基を含み、その鎖は一つ以上のヘテロ原子によって任意に中断されていてもよい。その鎖の水素は、例えばハロゲンのような上で定義された基で置換されていてもよい。好ましい直鎖状または分枝鎖状のアルケニル基は、ビニル、アリル、1−ブテニル、1−メチルプロペニルおよび4−ペンテニルを含む。
【0024】
「アルキニル」という用語は、少なくとも一つの炭素−炭素三重結合を有する、2〜15の炭素原子(例えば、2、3、4、5、6または10の炭素原子)を有する、直鎖状または分枝鎖状の炭化水素基を含み、その鎖は一つ以上のヘテロ原子によって任意に中断されていてもよい。その鎖の水素は、例えばハロゲンのような上で定義された基で置換されていてもよい。好ましい直鎖状または分枝鎖状のアルキニル基は、エチニル、プロピニル、1−ブチニル、1メチルプロピニルおよび4−ペンチニルを含む。
【0025】
「シクロアルケニル」という用語は、直鎖状または分枝鎖状の、飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基が結合して形成する、炭素−炭素二重結合を一つ含む、好ましくは3、4、5、6または7員の非芳香族の環を含み、これらの環は縮合環であっても単環であってもよい。これらの環は、例えば、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシまたはアルキルのような上で定義された基で置換されていてもよい。好ましいシクロアルケニル基は、シクロペンテニルおよびシクロへキセニルを含む。
【0026】
「アリール」という用語は、炭素ベースの芳香族環を意味する。これらの環は、フェニルのように単環であってもよく、あるいはナフチルのように縮合していてもよい。その環の水素は、例えばアルキル、ハロゲン、遊離であるかまたは官能化されたヒドロキシ、トリハロメチルなどのような、上で定義された基で置換されていてもよい。好ましいアリール基は、フェニル、3−(トリフルオロメチル)フェニル、3−クロロフェニルおよび4−フルオロフェニルを含む。
【0027】
「ヘテロアリール」という用語は、環中に少なくとも一つ(例えば1、2、3、4または5)のヘテロ原子を含む、(3、4、5、6または7の環構成原子を有する)芳香族の炭化水素環を意味する。ヘテロアリール環は、好ましくは5〜6の環原子を有する単環であってもよく、あるいは好ましくは8、9もしくは10の環原子を有する縮合環であってもよい。ヘテロアリール環の水素または遊離の原子価を有するヘテロ原子は、例えばアルキルまたはハロゲンのような上で定義された基で置換されていてもよい。ヘテロアリール基の例は、イミダゾール、ピリジン、インドール、キノリン、フラン、チオフェン、ピロール、テトラヒドロキノリン、ジヒドロベンゾフランおよびジヒドロベンズインドールを含む。
【0028】
「脂肪族基」という用語は、飽和および不飽和の、直鎖状(すなわち分枝していない)、分枝鎖状、環状または多環状の脂肪族炭化水素を含み、これらは一つ以上の官能基で任意に置換されていてもよい。この用語は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニルおよびシクロアルキニル部分を含むが、これらに限定されない。ここで、アルキルまたはその他の脂肪族基は、(上記のように置換されていても置換されていなくてもよく)、1〜6の炭素原子を有するのが好ましい。例えば、適当な脂肪族基は、置換または非置換の、直鎖状、分枝鎖状または環状のアルキル、アルケニル、アルキニル基、および(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキルまたは(シクロアルキル)アルケニルのようなそれらの組合せを含む。
【0029】
「ヘテロ脂肪族基」という用語は、脂肪族部分(上で定義された用語「脂肪族」を参照)を意味し、これらは、例えば炭素原子の代わりに、一つ以上の酸素、硫黄、窒素、リンまたはケイ素原子を含む。ヘテロ脂肪族部分は、置換もしくは非置換、分枝もしくは非分枝状、環状もしくは非環状であってよく、モルホリノ、ピロリジニルなどのような飽和および不飽和の複素環を含む。
【0030】
「炭素環式基/環」という用語は、単環もしくは二環の炭素環(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、ならびにビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、ビシクロ[3.2.1]オクタニルおよびビシクロ[5.2.0]ノナニルなどのような、シクロアルキルまたはシクロアルケニル基)を含み;任意に1−2の二重結合を含んでいてもよく、上で定義されたような1〜3の適当な置換基で任意に置換されていてもよい。
【0031】
「複素環式基/環」という用語は、上で定義されたようなヘテロアリール、および5〜14員、好ましくは5〜10員を有する非芳香族環系の両方を含み、その中で一つ以上、好ましくは1〜4の環炭素がN、OまたはSのようなヘテロ原子によってそれぞれ置き換えられている。
【0032】
複素環の例は、3−1H−ベンズイミダゾール−2−オン、(1−置換)−2−オキソ−ベンズイミダゾール−3−イル、2−テトラヒドロフラニル、3−テトラヒドロフラニル、2−テトラヒドロピラニル、3−テトラヒドロピラニル、4−テトラヒドロピラニル、[1,3]−ジオキサラニル、[1,3]−ジチオラニル、[1,3]−ジオキサニル、2−テトラヒドロチオフェニル、3−テトラヒドロチオフェニル、2−モルホリニル、3−モルホリニル、4−モルホリニル、2−チオモルホリニル、3−チオモルホリニル、4−チオモルホリニル、1−ピロリジニル、2−ピロリジニル、3−ピロリジニル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニル、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−ピペリジニル、4−チアゾリジニル、ジアゾロニル、N−置換ジアゾロニル、1−フタルイミジニル、ベンズオキサニル、ベンゾピロリジニル、ベンゾピペリジニル、ベンズオキソラニル、ベンゾチオラニルおよびベンゾチアニルを含む。
【0033】
「ヘテロサイクリル」または「複素環式」という語の範囲には、ここで用いられているように、非芳香族のヘテロ原子を含む環が、インドリニル、クロマニル、フェナンスリジニルまたはテトラヒドロキノリニルのように、一つ以上の芳香族または非芳香族環に縮合している基も含まれる。ここで、基または結合している点は非芳香族のヘテロ原子を含む環上にある。
【0034】
飽和または部分的に不飽和の「複素環式」という用語は、上で定義されたような置換基で任意に置換されていてもよい環も意味する。
「アシル」という用語は、式A−C(=O)−(ここで、基Aはアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリールまたはアラルキル基のような、上で定義された置換基を表す)を有するカルボン酸系のアシル基を含み、上記の置換基の鎖は一つ以上のヘテロ原子によって任意に中断されていてもよく、これらの基は例えば上で定義されたような一つ以上の置換基で任意に置換されていてもよい。
【0035】
アシル基の例は、ホルミル、C1−C6アルキル/アルケニル/アルキニルカルボニル、アリールカルボニル、アリール−C1−C6アルキル/アルケニル/アルキニルカルボニル、シクロアルキルカルボニルまたはシクロアルキル−Cl−C6アルキル/アルケニル/アルキニルカルボニル基である。また、アシルという用語は、上記の基におけるC(=O)基がC(=S)またはC(N−R)(RはHまたは上で定義されたような置換基である)によって置き換えられた基をも含む。
【0036】
「ヒドロキシ保護基」という用語は、例えばアルコキシカルボニル、アシル、アルキルシリルまたはアルキルアリールシリル基(以下、単に「シリル」基という)およびアルコキシアルキル基のような、ヒドロキシ官能基を一時的に保護するために用いられるいかなる基も意味する。
【0037】
アルコキシカルボニル保護基は、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルまたはアリルオキシカルボニルのような、アルキル−O−CO−基である。
【0038】
アルコキシアルキル保護基は、メトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエトキシメチルまたはテトラヒドロフラニルおよびテトラヒドロピラニルのような基である。
【0039】
好ましいシリル保護基は、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、ジブチルメチルシリル、ジフェニルメチルシリル、フェニルジメチルシリル、ジフェニル−t−ブチルシリルおよび類似のアルキル化されたシリル基である。
【0040】
「保護されたヒドロキシ基」という用語は、ヒドロキシ官能基を一時的または永続的に保護するために一般に用いられる上記の基、例えば上で定義されたようなシリル、アルコキシアルキル、アシルまたはアルコキシカルボニル基のいずれかによって誘導され、または保護されたヒドロキシ基である。
【0041】
ここで用いられている「ステロイド」という語は、シクロペンタノフェナンスレン核を有する化合物を意味する。これらの構造において、基の特定のコンフォーメーションを表すための太線および破線の使用も、IUPACステロイド命名法に従っている。
【0042】
記号「アルファ」および「ベータ」は、記載された化学構造中の不斉炭素原子における置換基の特定の立体化学配置を示す。したがって、破線で表される「アルファ」は、問題の該基が記載された分子の一般的な平面の下側にあることを示し、太線で表される「ベータ」は、その位置にある問題の該基が記載された分子の一般的な平面の上側にあることを示す。
【0043】
「ステロイド性カルボチオエート」、「ステロイド性カルボチオ酸」および「ステロイド性カルボン酸」という用語は、カルボチオエート基、カルボチオ酸基またはカルボン酸基が、直接または任意に置換されていてもよいC1−C6 アルキレン基のようなリンカーを介して、ステロイド骨核に、核のいずれかの位置において結合している化合物を意味する。
【0044】
ここで好ましいのは、カルボチオエート基、カルボチオ酸基またはカルボン酸基が17位の炭素原子に結合し、より好ましくはリンカーを介さないで核に直接に結合し、そして最も好ましくはベータ立体配置で結合しているステロイド性化合物である。
【0045】
「カルボチオエート」という用語は、置換基−C(=O)−S−R(ここで、Rは脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、炭素環式基、複素環式基、ヘテロアリール基、アリール基などから選択される置換基を表し;これらの基はいずれも上で定義されたように任意に置換されていてもよい)を意味する。ここで好ましいRは、置換アルキルまたは置換複素環式基である。
【0046】
「求核試薬」という用語は、活性化されたカルボン酸基と共有結合を形成することができる化合物を意味する。
【0047】
ここで用いられている「求電子試薬」という語は、例えばチオアニオン(−S-)のような電子に富んだ系と共有結合を形成することができる化合物に関する。その例は、式X−Y(ここで、Xはハロゲンであり、Yはアリール、複素環式基、または脂肪族もしくはヘテロ脂肪族基であり、これらの基は任意に置換されていてもよい)の化合物である。ここで好ましい試薬は、任意に置換されていてもよいアルキルハロゲナイドまたは任意に置換されていてもよいヘテロサイクリルハライドである。
【0048】
「溶媒和物」という用語は、一分子以上の溶媒を有する、一分子以上の本発明の化合物を含む集合体を表す。溶媒は、一例として、水、エタノール、アセトン、THF、DMAまたはDMFであり得る。
【0049】
発明の詳細な説明
本発明の第1の観点は、ステロイド性カルボチオ酸またはその塩の製造方法に関し、この方法は以下の工程を含む;
【0050】
A) ステロイド性カルボン酸またはその塩を、[カルボジイミド誘導体のような]カップリング剤単独と、またはカップリングエンハンサー[飽和または不飽和の5−6員の複素環(ここで、5−6員の複素環は一つ、二つまたは三つの窒素原子を含み、該複素環は、少なくとも一つの窒素において(ヒドロキシ基またはシアノ基などによって)任意に置換されていてもよく、そして/または少なくとも一つの炭素原子において(ケト基、スルホン酸もしくはその塩(すなわち、その置換基は(スルホン酸ナトリウムのような)スルホン酸基、−S(=O)(=O)−O-(ここで、一重結合の酸素は、水素、または基IAもしくはIIA軽金属、あるいは任意に置換されていてもよいアンモニウムに直接結合している)である)、脂肪族基(例えばメチル基のような、1 − 4の炭素原子を含むアルキル)、または好ましくは硫黄原子を含むヘテロ脂肪族基(例えばチオメチル基のような、1−4の炭素原子を有するヘテロアルキル)などによって)任意に置換されていてもよく、該複素環が二つの隣接する炭素原子を含むとき、その環は(ハロゲン原子、例えばクロロ原子によって)任意に置換されていてもよい芳香族環またはヘテロ芳香族環に任意に縮合していてもよい)を含む化学物質のような]と組み合わせて反応させ;そして
【0051】
B) 工程A)の生成物を、硫黄原子を含む求核試薬[硫化水素または対応する塩、任意に水和されたその塩、および好ましくはハイドロスルフィドナトリウム水和物のような]と反応させることを含む。
【0052】
カップリング剤として、ここでは次の式:
Ra−N=C=N−Rb
(式中、RaおよびRbは同一または異なって、脂肪族、ヘテロ脂肪族、炭素環式または複素環式基[これらの基はいずれも任意に置換されていてもよい]をそれぞれ表す)
によって表されるカルボジイミド誘導体を用いるのが好ましく;より好ましくは、カップリング剤は1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)であり;最も好ましくはEDCの塩酸塩である。
【0053】
しかし、カップリング剤は、次の群から選択することもできる:
A) 任意に置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール、ベンゼン環またはピリジン環に縮合している、不飽和の5員複素環のグアニジニウムN−オキサイド塩(N−メチルメタンアミニウム塩)の誘導体(式(A)の化合物のような)、
【0054】
【化1】

(XはH、F、Cl、Brであり、YはCH、N、O、Sであり、W-はPF6、BF4、SbCl6である)
【0055】
B) 任意に置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール、ベンゼン環またはピリジン環に縮合している、不飽和の5員複素環のウロニウム塩(O−ハイドロネート尿素)の誘導体(式(B)の化合物のような)、
【0056】
【化2】

(XはH、F、Cl、Brであり、YはCH、N、O、Sであり、W-はPF6、BF4、SbCl6である)
および;
【0057】
C) チオウロニウム塩の誘導体(式(C)の化合物のような、好ましくはテトラフルオロボレートのような)
【0058】
【化3】

(W-はBF4、PF6、SbCl6である)
【0059】
本発明の具体例において、カップリングエンハンサーは次の群から選択される:
A)式(D)または式(E)
【0060】
【化4】

(式中、R11およびR12は同一または異なって、水素原子またはシアノ基(C≡N)をそれぞれ表し;R13は水素原子または(メチルのような)アルキル基を表し;R14は水素原子またはスルホン酸ナトリウム[−S(=O)(=O)−O- Na+]のようなスルホン酸の塩を表す)
の化合物のような、一つまたは二つの窒素原子を含み、[ケト基、ヒドロキシ基、脂肪族基、ヘテロ脂肪族基、シアノ基、ハロゲン原子などによって]任意に置換されていてもよい複素環;および
【0061】
B)式(F)、(G)
【化5】

(XはH、F、Cl、Brであり、YはCH、N、O、Sである)
の化合物のような、複素環が3つの窒素原子を含み、環が[ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ケト基および/または任意に置換されていてもよい脂肪族基もしくはヘテロ脂肪族基などによって]任意に置換されていてもよい、芳香族環またはヘテロ芳香族環に縮合している不飽和の5−6員の複素環、好ましくは6−クロロ−ヒドロキシベンゾトリアゾール(6−Cl−HOBt)、7−アザ−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOAt)、または3−ヒドロキシ−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−1,2,3−ベンゾトリアジン(Dbht−OH)。
【0062】
本発明のさらなる具体例において、硫黄原子を含む求核試薬は次の:
−スルフィドが任意に水和されていてもよい、式[M]+[SH]-(ここで、MはLi、NaまたはKのような金属である);または[M]2+[S]2-(ここで、MはCaまたはMgのような金属である)の化合物(ハイドロスルフィドナトリウム水和物のような);および
−その場で生成されるスルフィドの塩または水和されたスルフィドの塩
からなる群から選択される。
【0063】
該求核試薬は、固体の塩の形態で加えられるか、または反応混合物に加えられる前に適当な溶媒中に溶解され、例えば水および/もしくは有機溶媒またはそれらの混液中の溶液として加えられる。
【0064】
ここで好ましい態様において、本発明は、式(IV)
【化6】

のステロイド性カルボチオ酸、またはその塩の製造法に関する。
【0065】
1,2−位にある記号
【化7】

は、一重結合または炭素−炭素二重結合を表す。
【0066】
(R1は水素原子、α−立体配置にあるヒドロキシもしくは(任意に置換されていてもよいC1-6アルコキシのような)アルコキシ基、基−O−C(=O)−R6(ここで、R6は(任意に置換されていてもよいC1−6アルキルのような)アルキル基、または環ヘテロ原子として酸素、窒素もしくは硫黄を含み、任意に置換されていてもよい(フラニル基、ピロリル基またはチオフェニル基のような)5−6員複素環を表し;
【0067】
R2は水素原子、α−立体配置にあるヒドロキシ基、(任意に置換されていてもよいC1-6 アルコキシのような)アルコキシ基、α−またはβ−立体配置にある(任意に置換されていてもよいC1-6アルキルのような)アルキル基、(同一炭素原子に2つの遊離原子価を有する、任意に置換されていてもよいC1-6アルキレン、好ましくはメチレンのような)アルキレン基[該アルキレン基は、二重結合を介してステロイド骨核に結合している]を表すか、あるいはR1およびR2は一緒になって、
【0068】
【化8】

(式中、R7およびR8は同一または異なって、水素原子または(任意に置換されていてもよいC1-6アルキルのような)アルキル基をそれぞれ表す)を表し;
R3は水素、α−もしくはβ−立体配置にあるヒドロキシ基もしくは保護されたヒドロキシ基、またはオキソ基(この場合R3とステロイド骨核との間の結合は二重結合である)を表し;
【0069】
R4は水素原子もしくはハロゲン原子を表すか、またはR3およびR4は一緒になって、炭素−炭素結合もしくはβ−立体配置にあるエポキシ基を表し;
R5は水素原子またはα−もしくはβ−立体配置にあるハロゲン原子を表し;
R9は水素原子を表すか、またはR9は金属イオン[例えば、−S−R9部分は、式[−S]-[M]+ (ここで、MはLi、NaまたはKである)の基を表す]を表す。
【0070】
この方法は以下の工程:
A) 式(II)
【化9】

(式中、式(II)の置換基は上で定義された意味を有する)のステロイド性カルボン酸またはその塩を、カップリング剤単独と、またはカップリングエンハンサーと組み合わせて反応させ、次いで、硫黄原子を含む求核試薬と反応させ;そして任意に
B)工程 A)からの生成物を酸と反応させることを含む。
【0071】
カップリング剤をエンハンサーの前に加えるか、またはその逆で加えることができるので、カップリング剤およびカップリングエンハンサーを加える順序が極めて重要であるとは考えられていない。ステロイド性カルボン酸の混合物をカップリング剤とエンハンサーの混合物に加えるか、またはその逆で加えることもできる。
【0072】
ここでは、カップリング剤およびエンハンサーを固体として、極性の非プロトン性溶媒、好ましくはDMFまたはDMA中に溶解しているステロイド性カルボン酸に、任意に加温下で、加えるのが好ましい。
【0073】
カルボチオ酸またはその塩は、ステロイド性カルボチオエートの製造方法に用いられ得るので、本発明の第2の観点は、ステロイド性カルボチオエート(すなわちステロイドのカルボチオ酸エステル)、またはその塩の製造方法に関している。
【0074】
この方法は、本発明の第1の観点で定義されたようにして製造されるステロイド性カルボチオ酸またはその塩を、(ジもしくはトリハロアルカンのような)求電子試薬と反応させることを含む。
【0075】
好ましくは、求電子試薬は、C1-6ジもしくはトリハロアルカン、好ましくはクロロブロモメタンもしくはブロモフルオロメタンのようなトリハロもしくはジハロメタンからなる群から選択される。
【0076】
好ましい態様において、本発明は、式(I)
【化10】

のステロイド性カルボチオエートの製造方法に関する。
【0077】
1,2−位にある記号
【化11】

は、一重結合または炭素−炭素二重結合を表す。
(式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、上で定義されたとおりであり;
R10はC1-6ハロアルキル(フルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ジフルオロメチル基もしくはトリフルオロメチル基、または2−フルオロエチル基のような)または任意に置換されていてもよい複素環[テトラヒドロフラニル基、好ましくは2−オキソ−テトラヒドロフラン−3−イルのような]を表す)
のステロイド性カルボチオエートの製造方法に関する。
【0078】
その方法は以下の工程を含む:
A) 式(II)
【化12】

のステロイド性カルボン酸を、
カップリング剤[カルボジイミドのような]およびカップリングエンハンサー[式(D)または式(E)の化合物のような]
【0079】
【化13】

(式中、R11およびR12は独立して、水素原子またはシアノ基(C≡N)を表し;
R13は水素原子または(メチルのような)アルキル基を表し;
R14は水素原子、またはスルホン酸ナトリウムのようなスルホン酸の部分(例えば、基−S(=O)(=O)−O- Na+)を表す)
と反応させ;
【0080】
B)工程 A)からの生成物を、硫黄を含む求核試薬と反応させ;そして
C)工程 B)からの生成物を、求電子試薬[C1-6ジもしくはトリハロアルカン、好まし くはクロロフルオロメタンまたはブロモフルオロメタンのようなトリハロもしくはジ ハロメタンのような]、または次の式;
【0081】
【化14】

(式中、XはH、F、Cl、Brであり;YはCH2、NH、O、Sであり、好ましくはXはClであり、YはOである)
の化合物と反応させる。
【0082】
この方法において、式(D)がNMI (N−メチルイミダゾール)もしくはDCI (4,5−ジシアノイミダゾール)であるか、または式(E)がNHS (N−ヒドロキシスクシンイミド)もしくはスルホ−NHS (N−ヒドロキシスルホスクシンイミド塩)であるのが好ましい。
【0083】
さらなる態様において、本発明はR11およびR12の少なくとも一方がシアノ基(C≡N)であり、そして/またはR13が水素原子であり、そして/またはR10がフルオロメチル基である、上記の方法に関する。
【0084】
第3の態様において、工程 C)は、工程 B)からの生成物を、ブロモフルオロメタンとその場で反応させて、フルチカゾンプロピオネートのような、式(I)(ここで、R10はフルオロメチル基である)の化合物を形成することからなる。
【0085】
ここで、この方法は中間体を不必要に単離しないで行うのが好ましく、したがって、好ましい態様においては、少なくとも二つの後の工程がその場で、つまり溶媒を変えたり除去したりしないで、あるいは個々の中間体を単離しないで行われる。工程 A)、B)および C)は、溶媒を変えないでワンポット合成として行われ、そして/または室温もしくは加温下に行うのが有利である。この方法は、連続方法としても行われ得る。
【0086】
興味深い態様において、本発明は、アンドロスタン17β−カルボン酸を、アンドロスタン17β−カルボチオエートに変換する方法に関する。その他の興味深い態様において、工程B)は、式(IV)
【化15】

(式中、−S−R9部分は、式[−S]-[M]+(ここで、MはLi、NaまたはKである、例えば−S- Na+)の基を表し、その他の置換基は、式(I)について定義されたのと同じ意味を有する)の化合物のような、チオ酸のアルカリ金属塩をもたらす。
【0087】
本発明の第3の観点は、式
【化16】

の化合物の製造方法に関する。
【0088】
1,2−位にある記号
【化17】

は、一重結合または炭素−炭素二重結合を表す。
【0089】
ここで、R1、R2、R3、R4およびR5 は上で定義されたとおりであり;
Rc はS、O、NHを表し;そして
Wは水素、任意に置換されていてもよい脂肪族またはヘテロ脂肪族基[一つ以上のハロゲンで置換されたC1-6 アルキル基のような]、または環ヘテロ原子としてO、NまたはSを含む、[=Oなどによって]任意に置換されていてもよい複素環[テトラヒドロフラニル(ラクトン)、テトラヒドロチオフェニル(チオラクトン)またはピロリジニル (ラクタム)基のような]を表す。
【0090】
この方法は、対応する化合物(ここで、RcはOを表し、WはHまたはその塩を表す)をカップリング剤単独と、またはカップリングエンハンサーと組み合わせて反応させ(請求項1、工程Aで定義されたカップリング剤およびエンハンサー);そして得られた生成物を、式:Rd−W(ここで、Wは上で定義されたとおりであり、RdはOH、NH2もしくはSHを表す)を有する求核試薬またはその塩と反応させることを含む。
【0091】
本発明の第4の観点は、本発明の方法によって得られる新規な物質、または該方法における中間体である新規な化合物に関する。
したがって、本発明は、式(III)
【化18】

の化合物、ならびにその塩および溶媒和物に関する。
【0092】
1,2−位にある記号
【化19】

は、一重結合または炭素−炭素二重結合を表す。
【0093】
(式中、R1、R2、R3、R4およびR5 は、上で定義されたとおりであり;
Zは式(II)のステロイド性カルボン酸とカップリング剤(好ましくはEDC)との反応、次いで式 (D);(E);(F);および(G) の化合物群から選択される化合物のような、上で定義されたようなカップリングエンハンサーとの反応によりもたらされる構造部分を表す):
【0094】
【化20】

(式中、R11およびR12は、水素原子またはシアノ基を表し;R13は水素原子または(メチルのような)アルキル基を表し;R14は水素原子、またはスルホン酸ナトリウム[すなわち基−S(=O)(=O)−O- Na+]のようなスルホン酸の部分を表す)
【0095】
【化21】

(式中、XはH、F、Cl、Brであり、YはCH、N、O、Sである)。
【0096】
ただし、1−[(9アルファ−フルオロ−11ベータ−ヒドロキシ−16ベータ−メチル−3−オキソ−17アルファ−プロピオニルオキシアンドロスタ−1,4−ジエン−17ベータ−イル)カルボニル]イミダゾールを除く。
【0097】
この化合物は、Phillipsら(J. Med. Chem., 1994, 37, 3717−3729) に記載されている。
本発明の化合物は、上記の式の塩および溶媒和物も含む。これらの化合物が、いくつかの多形体で存在することは当業者に公知であり、かかる多形体も本発明の一つの観点である。上記の方法は、遊離塩基、塩および多形体の形態にある化合物ももたらす。
【0098】
式IIIの興味深い化合物は、R11および R12の少なくとも一方がシアノ基(C≡N)である化合物、および/またはR13が水素原子である化合物、および/またはNMI (N−メチルイミダゾール); DCI (4,5−ジシアノイミダゾール); NHS (N−ヒドロキシスクシンイミド); およびスルホ−NHS (N−ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム塩)からなる群から選択されるカップリングエンハンサーを用いて得られる化合物、および/または式:
【化22】

を有する化合物、ならびにその塩および溶媒和物である。
【0099】
1,2−位にある記号
【化23】

は、一重結合または炭素−炭素二重結合を表す。
【0100】
(式中、置換基は上で定義されたのと同じ意味を有する)
本発明の第5の観点は、本発明による化合物を含む組成物に関し、第6の観点は、ステロイド性カルボチオエートまたはステロイド性カルボチオ酸の製造方法における中間体としての、本発明の化合物の使用に関する。
【0101】
非常に興味深い態様において、本発明は、フルチカゾンプロピオネートの製造方法、特に硫黄原子を含む求核試薬[ハイドロスルフィドナトリウム水和物のような]との反応を含む方法、および/または求電子試薬[C1-6ジもしくはトリハロアルカン、好ましくはクロロフルオロメタンもしくはブロモフルオロメタンのようなトリハロもしくはジハロメタンのような]との反応を含む方法における中間体としての、本発明の化合物の使用に関する。
【0102】
ここに記載の方法は、好ましい態様において、その場で活性化される新規な17β−カルボン酸中間体を介する、アンドロスタン17β−カルボン酸から例えばフルチカゾンプロピオネートのような17β−カルボチオエートへの変換に関する。この方法の好ましい態様において、17β−カルボチオ酸エステルは、式(II)の酸を、カップリングエンハンサーと組み合わさったカップリング剤と反応させることによって製造される。
【0103】
ここで用いられている「カップリング剤」および「カップリングエンハンサー」という語は、式(III)(ここで、Zは構造式(D)または式(E)を有する基を表す)の反応性中間体の形成を容易にする化学試剤を意味する。そのような中間体は、アンドロスタン17β−カルボン酸と、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)(カップリング剤の好ましい例)のようなカルボジイミド誘導体との間で、適当なカップリングエンハンサーと組み合わせて形成され得る。
【0104】
ここで用いられる適当なカップリングエンハンサーは、例えば、上記の式(D)および式(E)の構造によって表され得る。
カップリング剤および任意のカップリングエンハンサーは、好ましくは水溶性であるので、好ましければ該反応は水溶液中で行われ得る。
現在考えられている発明の最善の形態:
【0105】
上記で定義された式(III)の化合物は、式(II)の化合物を、式(D)の化合物と組み合わさったEDCで処理することによって製造され得る。得られる17β−カルボキシイミダゾリルエステルは、必要に応じて単離することができ、活性エステル基を置き換える求核試薬(硫黄源)で処理されて、式(IV)の化合物を形成する。
【0106】
本発明の一つの態様において、R9は、例えばメチル、エチルもしくはイソプロピル基(好ましくはハロゲン原子で置換されている)のような任意に置換されていてもよい C1-6 アルキル基、または酸素、窒素もしくは硫黄を含み、いずれかの環炭素がオキソ基によって任意に置換されていてもよい、5〜6員の複素環を表す。式(IV)の化合物は容易に単離され得る。
【0107】
本発明のもう一つの態様において、R9は水素原子または塩を表す。塩の好ましい例は、アルカリ金属塩、例えばLi、NaもしくはK;アルカリ土類金属塩、例えばCaもしくはMg;第3級アミン塩、例えばピリジニウム、トリエチルアンモニウムもしくはジイソプロピルエチルアミン塩;または第4級アンモニウム塩、例えばテトラブチルアンモニウム塩である。
【0108】
そのような式(IV)の化合物は、必要に応じて単離してもよい。引き続いて求電子試薬を加えることにより、スキーム1に示されるように、式(I)(ここで、R10はC1-6 ハロアルキル基、フルオロ、クロロもしくはブロモメチル基、ジフルオロメチルもしくはトリフルオロメチル基、または2−フルオロエチル基である)の化合物の形成をもたらす。
【0109】
好ましくは、求核試薬は硫化水素またはその塩であり、より好ましくは、ハイドロスルフィドナトリウム水和物のような水和されたスルフィド塩である。
好ましくは、求電子試薬はクロロフルオロメタンであるか、またはより好ましくはブロモフルオロメタンである。
【0110】
この方法の好ましい態様において、上記で定義された式(III)の化合物は、式(II)の化合物を、式(E)の化合物と組み合わさったEDCで処理することによって製造され得る。得られる17β−カルボキシスクシンイミジルエステルは、必要に応じて単離することができ、活性エステル基を置き換える求核試薬で処理されて、上記で定義された式(IV)の化合物を形成する。
【0111】
引き続いて求電子試薬を加えることにより、スキーム1に示されるように、式(I)(ここで、R10はC1-6 ハロアルキル、フルオロ、クロロもしくはブロモメチル基、ジフルオロメチルもしくはトリフルオロメチル基、または2−フルオロエチル基である)の化合物への合成が完結する。例えば、ハイドロスルフィドナトリウム水和物が求核試薬として用いられると、式(I)の化合物の形成は、式(II)の化合物から出発して、式(III)および(IV)の中間体を単離しないで、ワンポット反応で行われる。
【0112】
カルボジイミドと組み合わさったカップリングエンハンサーの使用は、向上した安定性および反応性を有する式(III)の活性エステル中間体を形成する。これらの中間体は、競合する加水分解に対して高められた閾を有する。加水分解の低下したレベルは、式(I)(スキーム1、後記参照)(ここで、R10は上で定義されたとおりである)の物質の生成効率を向上させる。
【0113】
驚くべきことに、我々は式(III)のこれらの新規な17β−カルボキシスクシンイミジルおよび17β−カルボキシイミダゾリルエステルが、サイクルタイムを減少させ、収率を増加させ、そして式(I)の最終物質の純度を向上させることを見出した。
【0114】
化合物の製造
本発明の方法は、ここに記載の方法の好ましい具体例を説明する以下の合成スキームに関連するとき、より良く理解される。
さらに、当業者は以下に記載の方法の変法、およびそれに代わる方法を知るだろう。記載された実施例は、上記の合成を実証し、式(I)によって定義された化合物の取得を可能にする。スキーム1において、置換基は上で定義された意味を有する。
【0115】
スキーム1
【化24】

【0116】
本発明に用いられる出発物質アンドロスタン17β−カルボン酸は、従来技術において公知であるいずれの方法によっても容易に製造され得る。式(II)の化合物は、式(V)の適当な21−ヒドロキシ−20−ケトプレグナンを、例えばUS 3636010で教示されているように、酸化することによって得られる(実施例1)。
【0117】
【化25】

【0118】
市販されている式(V)の化合物は、例えばブデソニド、デソニド、トリアムシノロンアセトナイド、フルオシノロンアセトナイド、ベタメタゾン、デキサメタゾン、プレドニゾロン、フルメタゾン、ベクロメタゾン、イコメタゾン、ジフロラゾン、ヒドロコルチゾンおよびフルドロコルチゾンを含む。
【0119】
次に、ここに記載の方法を、スキーム1のその他の特に好ましい具体例と結びつけて詳細に記載する。したがって、以下の非限定的な実施例は、特に好ましい方法を説明する。これらの実施例は、最も有用であり、ここに記載の方法の手順および概念的観点の分かり易い説明を提供するために記載されている。
【0120】
実施例
一般
MS (ESI)は、エレクトロスプレーイオン化技法によって得られる質量スペクトルを意味する。融点はMettler FP81 MBCセルを用いて得られ、補正されていない。物質の純度は、239 nmにおけるUV−検出を用いて、RP18−HPLC分析によって測定した。
【0121】
略語;DMF (N,N−ジメチルホルムアミド)、DMA (N,N−ジメチルアセトアミド)、
THF (テトラヒドロフラン)、EDC (1−エチル−3−(3−ジメチル−アミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)、NHS (N−ヒドロキシスクシンイミド)、NMI (N−メチルイミダゾール)およびDCI(4,5−ジシアノ−イミダゾール)
【0122】
実施例 1
6α,9α−ジフルオロ−11β,17α−ジヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボン酸
6α,9α−ジフルオロ−11β,17α−21−トリヒドロキシ−16α−メチル−プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン(フルメタゾン)(5.25 g, 12.78 mmol)を、THF(25 ml)中に0℃で溶解した。この撹拌溶液に、過沃素酸(H2O(12 ml)中、2.0当量, 5.83 g)を滴下した。75分後、反応フラスコをアルミ箔で覆い、室温で撹拌した。4.5時間後、水(120 ml)を加えることによって反応を止め、冷蔵庫中に一夜放置した。得られた沈殿物をろ過し、ろ液がpH紙で中性になるまで水洗し、減圧下に乾燥した。標題の化合物を、HPLCによる純度>99%を有する白色固体(4.96 g, 98%)として得た。
【0123】
実施例 2
6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17α−プロピオニルオキシアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボン酸
アセトン(30 ml)中の、6α,9α−ジフルオロ−11β,17α−ジヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボン酸(4.11 g, 10.38 mmol)の懸濁液にN2雰囲気および撹拌下に、Et3N(3.5当量, 3.7 ml)を加えた。得られた溶液を0℃に冷却し、プロピオン酸クロライド(4.5当量, 4.3 ml)を滴下して、白色懸濁液を得た。85分後、Et2NH(10.0当量, 7.6 ml)を加え、得られた混合物を0℃で55分間撹拌下に放置し、溶媒を減圧下に除去した。得られた固体を水(20 ml)中に溶解し、HCl(1N)で処理してpH 2とした。このようにして生成した白色沈殿物をろ過し、氷冷水で洗浄し、減圧下に60℃で乾燥した。標題の化合物を、HPLCによる純度99%を有する白色固体(4.64 g, 99%)として得た。
【0124】
実施例 3
S−フルオロメチル 6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17α−プロピオニルオキシアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオエート(フルチカゾンプロピオネート)
DMA(30 ml)中の、6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16(−メチル−3−オキソ−17(−プロピオニルオキシ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボン酸(0.30 g, 0.66 mmol)が〜50℃で充填されたフラスコに、EDC (3.0当量, 0.38 g)およびNHS (3.1当量, 0.24 g)を加え、HPLC分析によりモニターしながら、反応が完了するまで撹拌した。油浴を外し、ハイドロスルフィドナトリウム水和物(20.0当量, 0.74 g)を、〜35℃で少しずつ加えた。添加後、すぐに濃青色の反応混合物をもたらした。15分後、反応を完了し、ガス状のブロモフルオロメタンを室温で加えた。初期の青色は、ブロモフルオロメタンを加える間に徐々に淡黄色に変化した。HPLC分析によってモニターしながら、15分後に反応が完了したとき、炭酸ナトリウム(25 ml, 水中10%)、次いで水(10 ml)を冷却された反応混合物に加えた。このようにして生成した固体をろ過し、メタノール(40 ml)中に溶解し、加熱還流し、ろ過した。加温水(40 ml)をゆっくり温いろ液に加えた。初期の懸濁液を室温で2時間放置し、冷蔵庫中で冷却した。得られた沈殿物をろ取し、水(40 ml)で洗浄し、減圧下に乾燥した。標題の化合物を、融点267℃およびHPLCによる純度>98%を有する白色の無定形固体(0.25 g, 92%)として得た。フルチカゾンプロピオネートの、英国薬局方基準(融点: 265 ℃)による物質サンプルのスパイキングは、HPLC分析によって一つのピークを示した。
【0125】
実施例 4
6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17α−プロピオニルオキシアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸
DMA(30 ml)中の、6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17α−プロピオニル−オキシアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボン酸(0.30 g, 0.66 mmol)が充填されたフラスコを、〜50℃に加熱した。EDC(3.0 当量, 0.38 g)およびNMI(3.1 当量, 162μl)を加え、HPLC分析によってモニターしながら、反応が完了するまで反応混合物を撹拌下に放置した。油浴を外し、ハイドロスルフィドナトリウム水和物(20.0 当量, 0.74 g)を〜35℃で少しずつ加えた。添加後、反応混合物はすぐに濃青色となり、少し析出物が生じた。15分後、反応を完了し、砕いた氷、次いでHCl(2N)(10 ml)を加えてpH〜2とし、フラスコを冷蔵庫中に放置した。HClを加える間に、初期の青い反応混合物は徐々に無色になった。このようにして生成した固体をろ過し、最小量のアセトン次いで加温水を初期の結晶に加えた。冷蔵した懸濁液をろ過し、ろ液がpH紙で中性になるまで水(30 ml)で洗浄し、減圧下に乾燥した。標題の化合物を、HPLCによる純度98%を有する白色の無定形固体(0.10 g, 32%)として得た。
【0126】
実施例 5
S−メチル6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17α−プロピオニルオキシアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオエート
6α, 9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17α−プロピオニルオキシアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボン酸(0.20 g, 0.43 mmol) を、DMF(10 ml)中に溶解した。反応フラスコを油浴に浸し、温度を〜40℃に上げた。EDC(〜2 当量, 0.15 g)およびNHS (〜5 当量, 0.26 g)を加え、反応混合物を40℃で19時間撹拌下に放置した。温度を50℃に上げ、新たにEDC(〜4 当量, 0.29 g)を加えた。混合物を50℃で3時間撹拌下に放置した。フラスコを油浴から外し、反応混合物をDMF(5 ml)を加えて希釈した。NaSMe水溶液(1.0 ml, 21%水溶液)を30分かけて少しずつ加えた。反応混合物は淡桃色懸濁液に変化した。砕いた氷およびHCl水溶液(12 ml, 10%)を加えて反応を止めた。白色沈殿物をろ過し、水洗し、乾燥した。粗生成物を最小量のアセトン中に溶解し、析出が始まるまで水を加えた。得られた固体をろ取し、水洗し、減圧下に乾燥して、標題の化合物を、HPLCによる純度90%を有する白色固体(0.11 g, 51%)として得た。
【0127】
実施例 6
S−メチル6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17α−プロピオニルオキシアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオエート
DMA(30 ml)中の、6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17α−プロピオニルオキシアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボン酸(0.30 g, 0.66 mmol)をフラスコに充填し、内容物を〜50℃に加熱する。EDC(3.0 当量, 0.38 g)およびNMI (3.1 当量, 162 μl)を加え、HPLC分析によりモニターしながら、反応が完了するまで混合物を撹拌下に放置する。油浴を外して除き、NaSMe水溶液(1.5 ml, 21%水溶液)を〜35℃で少しずつ加える。砕いた氷およびHCl水溶液(12 ml, 10%)を加えて反応を止める。白色沈殿物をろ過し、水洗して乾燥する。粗生成物を最小量のアセトン中に溶解し、水を加えて析出を誘発する。得られた固体をろ取し、水洗し、減圧下に乾燥して、標題の化合物を固体として得る。
【0128】
実施例 7
S−フルオロメチル6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17α−プロピオニルオキシアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオエート(フルチカゾンプロピオネート)
DMA(30 ml)中の、6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17α−プロピオニル−オキシアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボン酸(0.30 g, 0.66 mmol)をフラスコに充填し、内容物を〜50℃に加熱する。EDC(3.0 当量, 0.38 g)およびDCI(3.1 当量)を加え、HPLC分析によりモニターしながら、反応が完了するまで混合物を撹拌下に放置する。油浴を外して除き、ハイドロスルフィドナトリウム水和物 (20.0 当量, 0.74 g)を〜35℃で少しずつ加える。反応が完了した後、ガス状のブロモフルオロメタンを室温で加える。HPLC分析によりモニターしながら、反応が完了したとき、炭酸ナトリウム(25 ml, 水中10%)および水(10 ml)を冷した反応混合物に加える。生成した固体をろ過し、メタノール(40 ml)中に溶解する。メタノール性溶液を加熱還流し、ろ過する。温水(40 ml)を温いろ液にゆっくり加える。得られた懸濁液を室温で2時間放置し、冷蔵庫に移す。生成した沈殿物をろ取し、水(40 ml)で洗浄し、減圧下に乾燥する。標題の化合物を固体として得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A) ステロイド性カルボン酸またはその塩を、カップリング剤単独と、またはカップリングエンハンサーと組み合わせて反応させ;そして、
B) 工程A)の生成物を、硫黄原子を含む求核試薬と反応させることを含む、ステロイド性カルボチオ酸またはその塩の製造方法。
【請求項2】
カップリング剤が、次の式:
Ra−N=C=N−Rb
(式中、RaおよびRbは同一または異なって、脂肪族、ヘテロ脂肪族、炭素環式または複素環式基[これら全ての基は任意に置換されていてもよい]をそれぞれ表す)
によって表されるカルボジイミド誘導体からなる群から選択され;好ましくはカップリング剤が1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド (EDC)であり;より好ましくはEDCの塩酸塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
カップリング剤が、次の:
A) 任意に置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール、ベンゼン環またはピリジン環に縮合している、不飽和の5員複素環のグアニジニウムN−オキサイド塩(N−メチルメタンアミニウム塩)の誘導体(式(A)の化合物のような)、
【化1】

(XはH、F、Cl、Brであり、YはCH、N、O、Sであり、W-はPF6、BF4、SbCl6である)
B)任意に置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール、ベンゼン環またはピリジン環に縮合している不飽和の5員複素環のウロニウム塩(O−ハイドロネート尿素)の誘導体(式(B)の化合物のような)、
【化2】

(XはH、F、Cl、Brであり、YはCH、N、O、Sであり、W-はPF6、BF4、SbCl6である)
および;
C) チオウロニウム塩の誘導体(式(C)の化合物のような、好ましくはテトラフルオロボレートのような)、
【化3】

(W-はBF4、PF6、SbCl6である)
からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
カップリングエンハンサーが、次の:
A)式(D)または式(E)
【化4】

(式中、R11およびR12は同一または異なって、水素原子またはシアノ基をそれぞれ表し;R13は水素原子またはアルキル基を表し;R14は水素原子またはスルホン酸ナトリウム[−S(=O)(=O)−O- Na+]のようなスルホン酸の塩を表す)
の化合物のような、一つまたは二つの窒素原子を含み、任意に置換されていてもよい複素環;および
B)式(F)、(G)
【化5】

(XはH、F、Cl、Brであり、YはCH、N、O、Sである)
の化合物のような、複素環が3つの窒素原子を含み、環が任意に置換されていてもよい、芳香族環またはヘテロ芳香族環に縮合している不飽和の5−6員の複素環、好ましくは6−クロロ−ヒドロキシベンゾトリアゾール(6−Cl−HOBt)、7−アザ−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOAt)、または3−ヒドロキシ−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−1,2,3−ベンゾトリアジン(Dbht−OH)である
からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
硫黄原子を含む求核試薬が、次の:
−スルフィドが任意に水和されていてもよい、式[M]+[SH]-(ここで、MはLi、NaまたはKのような金属である);または[M]2+[S]2-(ここで、MはCaまたはMgのような金属である)の化合物(ハイドロスルフィドナトリウム水和物のような);および
−その場で生成されるスルフィドまたは水和されたスルフィド塩
を含む群から選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
求核試薬が、反応混合物に加えられる前に適当な溶媒中に溶解されるか、または求核試薬が固体の塩の形態で、または該塩の水および/もしくは有機溶媒またはそれらの組合せ中の溶液として加えられる、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
式(IV)
【化6】

(式中、1,2−位にある記号
【化7】

は、一重結合または炭素−炭素二重結合を表し;
R1は、水素原子、またはα−立体配置にあるヒドロキシもしくはアルコキシ基(任意に置換されていてもよいC1-6アルコキシのような)、基−O−C(=O)−R6(ここで、R6はアルキル基(任意に置換されていてもよいC1-6アルキルのような)、または環ヘテロ原子として酸素、窒素もしくは硫黄を含む、任意に置換されていてもよい5−6員の複素環(フラニル、ピロリルまたはチオフェニル基のような)を表し;
R2は水素原子、ヒドロキシ基、α−立体配置にあるアルコキシ基(任意に置換されていてもよいC1-6 アルコキシのような)、α−またはβ−立体配置にあるアルキル基(任意に置換されていてもよいC1-6アルキルのような)、アルキレン基(同一炭素原子に2つの遊離原子価を有する、任意に置換されていてもよいC1-6アルキレン、好ましくはメチレンのような)[該アルキレン基は二重結合を介してステロイド骨核に結合している]を表すか、あるいはR1およびR2は一緒になって、
【化8】

(式中、R7およびR8は同一または異なって、水素原子またはアルキル基(任意に置換されていてもよいC1-6アルキルのような)をそれぞれ表す)を表し;
R3は水素原子、α−もしくはβ−立体配置にあるヒドロキシ基もしくは保護されたヒドロキシ基、またはオキソ基(R3とステロイド骨核との間の結合が二重結合である場合)を表し;
R4は水素もしくはハロゲン原子を表すか、またはR3およびR4は一緒になって、炭素−炭素結合もしくはβ−立体配置にあるエポキシ基を表し;
R5は水素またはα−もしくはβ−立体配置にあるハロゲン原子を表し;
R9は水素原子を表すか、またはR9は金属イオン[例えば、−S−R9部分は、式[−S]-[M]+ (ここで、MはLi、NaまたはKのような金属である)の基を表す]を表す)
のステロイド性カルボチオ酸、またはその塩を製造するための方法であって、以下の工程:
A) 式(II)
【化9】

(式中、式(II)の置換基は上で定義された意味を有する)のステロイド性カルボン酸またはその塩を、カップリング剤単独と、またはカップリングエンハンサーと組み合わせて反応させ、次いで、硫黄原子を含む求核試薬と反応させ;そして任意に
B)工程 A)からの生成物を酸と反応させることを含む、
請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
i)
−カップリング剤をカップリングエンハンサーの前に加えるか、または
−カップリングエンハンサーをカップリング剤の前に加え、そして/または
ii)
−ステロイド性カルボン酸を、カップリング剤とカップリングエンハンサーの混合物に 加えるか、または、
−カップリング剤とカップリングエンハンサーの混合物をステロイド性カルボン酸に加 えるか、または
−ステロイド性カルボン酸を、極性の非プロトン性溶媒、好ましくはDMFもしくはDMA中のカップリング剤とカップリングエンハンサーの混合物に加温下に加える、
請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のようにして製造されるステロイド性カルボチオ酸またはその塩を、求電子試薬と反応させることを含む、ステロイド性カルボチオエート(ステロイドのカルボチオ酸エステル)またはその塩の製造方法。
【請求項10】
求電子試薬が、C1-6ジもしくはトリハロアルカン、好ましくはクロロブロモメタンもしくはブロモフルオロメタンのようなトリハロもしくはジハロメタンからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
式(I)
【化10】

(式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、請求項7で定義されたとおりであり;
R10はC1-6ハロアルキルまたは任意に置換されていてもよい複素環を表す)
のステロイド性カルボチオエートを製造するための方法であって、以下の工程;
A)式(II)
【化11】

のステロイド性カルボン酸を、
カップリング剤およびカップリングエンハンサー[式(D)または式(E)の化合物のような]
【化12】

(式中、R11およびR12は独立して、水素原子またはシアノ基(C≡N)を表し;
R13は水素原子またはアルキル基を表し;
R14は水素原子、またはスルホン酸ナトリウムのようなスルホン酸の部分(例えば、基−S(=O)(=O)−O- Na+)を表す)
と反応させ;
B)工程 A)からの生成物を、硫黄を含む求核試薬と反応させ;そして
C)工程 B)からの生成物を、求電子試薬[ジもしくはトリハロC1-6アルカン、好まし くはクロロフルオロメタンまたはブロモフルオロメタンのようなトリハロもしくはジ ハロメタンのような]、または次の式;
【化13】

(式中、XはH、F、Cl、Brであり;YはCH2、NH、O、Sであり、好ましくはXはClであり、YはOである)
の化合物と反応させる、
を含む請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
カップリングエンハンサーが、NMI (N−メチルイミダゾール);DCI (4,5−ジシアノイミダゾール);NHS (N−ヒドロキシスクシンイミド);およびスルホ−NHS (N−ヒドロキシスルホスクシンイミド)からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程 C) が、工程 B)からの生成物を、ブロモフルオロメタンとその場で反応させてフルチカゾンプロピオネートのような式(I)(ここで、R10はフルオロメチル基である)の化合物を形成することからなる、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
−少なくとも二つの後の工程がその場で、つまり溶媒を変えたり除去したりしないで、あるいは個々の中間体を単離しないで行われる;そして/または
−方法が、連続方法のように行われる;そして/または
−工程 A)、B)および任意の工程 C)が、溶媒を変えないでワンポット合成として行われる、そして/または室温あるいは加温下に行われる、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
アンドロスタン17β−カルボン酸が、アンドロスタン17β−カルボチオエートに変換される、請求項9〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
工程 B)が、式(IV)
【化14】

(式中、−S−R9部分は、式[−S]-[M]+(ここで、MはLi、NaまたはKのような金属である、例えば−S- Na+)の基を表し、その他の置換基は請求項7で定義されたのと同じ意味を有する)
の化合物のような、チオ酸のアルカリ金属塩をもたらす、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
式(III)
【化15】

(式中、R1、R2、R3、R4およびR5 は請求項7で定義されたとおりであり;
Zは式(II)のステロイド性カルボン酸とカップリング剤(好ましくはEDC)、次いで式 (D);(E); (F); および(G):
【化16】

(式中、R11およびR12は独立して、水素原子またはシアノ基を表し;R13は水素原子またはメチル基を表し;R14は水素原子、またはスルホン酸ナトリウムのようなスルホン酸の部分[つまり、基−S(=O)(=O)−O- Na+]を表す)
【化17】

(式中、XはH、F、Cl、Brであり、YはCH、N、O、Sである)
の化合物からなる群から選択される化合物のような、請求項4で定義されたカップリングエンハンサーとの反応からもたらされる構造部分を表す)
の化合物、(ただし、1−[(9アルファ−フルオロ−11ベータ−ヒドロキシ−16ベータ−メチル−3−オキソ−17アルファ−プロピオニルオキシアンドロスタ−1,4−ジエン−17ベータ−イル)カルボニル]イミダゾールを除く)
ならびにその塩および溶媒和物。
【請求項18】
R11およびR12の少なくとも一方がシアノ基(C≡N)であり、そして/またはR13が水素原子であり、そして/または式(D)が、NMI (N−メチルイミダゾール)もしくはDCI (4,5−ジシアノ−イミダゾール)であり、そして/または式(E)が、NHS (N−ヒドロキシスクシンイミド)もしくはスルホ−NHS (N−ヒドロキシスルホスクシンイミド)である、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
式:
【化18】

(式中、置換基は請求項17で定義されたのと同じ意味を有する)を有する化合物、ならびにその塩および溶媒和物。
【請求項20】
請求項17〜19のいずれかで定義された化合物を含む組成物。
【請求項21】
フロチカゾンプロピオネートの製造方法におけるような、ステロイド性カルボチオエートまたはステロイド性カルボチオ酸の製造方法における中間体としての、請求項17〜19のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項22】
硫黄原子を含む求核試薬との反応を含む、そして/または求電子試薬との反応を含む、請求項21に記載の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)ステロイド性カルボン酸またはその塩を、次の式:
Ra−N=C=N−Rb
(式中、RaおよびRbは同一または異なって、脂肪族、ヘテロ脂肪族、炭素環式または複素環式基[これら全ての基は任意に置換されていてもよい]をそれぞれ表す)
によって表されるカルボジイミド誘導体からなる群から選択されるカップリング剤単独と、またはカップリングエンハンサーと組み合わせて反応させ;そして、
B) 工程A)の生成物を、硫黄原子を含む求核試薬と反応させることを含む、ステロイド性チオカルボン酸またはその塩の製造方法。
【請求項2】
カップリング剤が、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド (EDC)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
カップリング剤がEDCの塩酸塩である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
カップリングエンハンサーが、次の:
A)式(D)または式(E)
【化1】

(式中、R11およびR12は同一または異なって、水素原子またはシアノ基をそれぞれ表し;R13は水素原子またはアルキル基を表し;R14は水素原子またはスルホン酸ナトリウム[−S(=O)(=O)−O- Na+]のようなスルホン酸の塩を表す)
の化合物のような、一つまたは二つの窒素原子を含み、任意に置換されていてもよい複素環;および
B)式(F)または式(G)
【化2】

(XはH、F、Cl、Brであり、YはCH、N、O、Sである)
の化合物のような、複素環が3つの窒素原子を含み、環が任意に置換されていてもよい、芳香族環またはヘテロ芳香族環に縮合している不飽和の5−6員の複素環、好ましくは6−クロロ−ヒドロキシベンゾトリアゾール(6−Cl−HOBt)、7−アザ−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOAt)、または3−ヒドロキシ−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−1,2,3−ベンゾトリアジン(Dbht−OH)である、
からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
硫黄原子を含む求核試薬が、次の:
− スルフィドが任意に水和されていてもよい、式[M]+[SH]-(ここで、MはLi、Naま たはKのような金属である);または[M]2+[S]2-(ここで、MはCaまたはMgのような金属である)の化合物(ハイドロスルフィドナトリウム水和物のような);および
− その場で生成されるスルフィドまたは水和されたスルフィド
を含む群から選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
求核試薬が、反応混合物に加えられる前に適当な溶媒中に溶解されるか、または求核試薬が固体の塩の形態で、または該塩の水および/もしくは有機溶媒またはそれらの組合せ中の溶液として加えられる、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
式(IV)
【化3】

(式中、1,2−位にある記号
【化4】

は、一重結合または炭素−炭素二重結合を表し;
R1は、水素原子、またはα−立体配置にあるヒドロキシもしくはアルコキシ基(任意に置換されていてもよいC1-6アルコキシのような)、基−O−C(=O)−R6(ここで、R6はアルキル基(任意に置換されていてもよいC1-6アルキルのような)、または環ヘテロ原子として酸素、窒素もしくは硫黄を含む、任意に置換されていてもよい5−6員の複素環(フラニル、ピロリルまたはチオフェニル基のような)を表し;
R2は水素原子、ヒドロキシ基、α−立体配置にあるアルコキシ基(任意に置換されていてもよいC1-6 アルコキシのような)、α−またはβ−立体配置にあるアルキル基(任意に置換されていてもよいC1-6アルキルのような)、アルキレン基(同一炭素原子に2つの遊離原子価を有する、任意に置換されていてもよいC1-6アルキレン、好ましくはメチレンのような)[該アルキレン基は二重結合を介してステロイド骨核に結合している]を表すか、あるいはR1およびR2は一緒になって、
【化5】

(式中、R7およびR8は同一または異なって、水素原子またはアルキル基(任意に置換されていてもよいC1-6アルキルのような)をそれぞれ表す)を表し;
R3は水素原子、α−もしくはβ−立体配置にあるヒドロキシ基もしくは保護されたヒドロキシ基、またはオキソ基(R3とステロイド骨核との間の結合が二重結合である場合)を表し;
R4は水素もしくはハロゲン原子を表すか、またはR3およびR4は一緒になって、炭素−炭素結合もしくはβ−立体配置にあるエポキシ基を表し;
R5は水素またはα−もしくはβ−立体配置にあるハロゲン原子を表し;
R9は水素原子を表すか、またはR9は金属イオン[例えば、−S−R9部分は、式[−S]-[M]+ (ここで、MはLi、NaまたはKのような金属である)の基を表す]を表す)
のステロイド性チオカルボン酸、またはその塩を製造するための方法であって、以下の工程:
A) 式(II)
【化6】

(式中、式(II)の置換基は上で定義された意味を有する)のステロイド性カルボン酸またはその塩を、カップリング剤単独と、またはカップリングエンハンサーと組み合わせて反応させ、次いで、硫黄原子を含む求核試薬と反応させ;そして任意に
B) 工程 A)からの生成物を酸と反応させることを含む、
請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
i)
−カップリング剤をカップリングエンハンサーの前に加えるか、または
−カップリングエンハンサーをカップリング剤の前に加え、そして/または
ii)
−ステロイド性カルボン酸をカップリング剤とカップリングエンハンサーの混合物に加え るか、または、
−カップリング剤とカップリングエンハンサーの混合物をステロイド性カルボン酸に加え るか、または
−ステロイド性カルボン酸を、極性の非プロトン性溶媒、好ましくはDMFもしくはDMA中のカップリング剤とカップリングエンハンサーの混合物に加温下に加える、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のようにして製造されるステロイド性チオカルボン酸またはその塩を、求電子試薬と反応させることを含む、ステロイド性カルボチオエート(ステロイド酸のエステル)またはその塩の製造方法。
【請求項10】
求電子試薬が、C1-6ジもしくはトリハロアルカン、好ましくはクロロブロモメタンもしくはブロモフルオロメタンのようなトリハロもしくはジハロメタンからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
式(I)
【化7】

(式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、請求項7で定義されたとおりであり;
R10はC1-6ハロアルキルまたは任意に置換されていてもよい複素環を表す)
のステロイド性カルボチオエートを製造するための方法であって、以下の工程:
A)式(II)
【化8】

のステロイド性カルボン酸を、
カップリング剤およびカップリングエンハンサー[式(D)または式(E)の化合物のような]
【化9】

(式中、R11およびR12は独立して、水素原子またはシアノ基(C≡N)を表し;
R13は水素原子またはアルキル基を表し;
R14は水素原子、またはスルホン酸ナトリウムのようなスルホン酸の部分(例えば、基−S(=O)(=O)−O- Na+)を表す)
と反応させ;
B)工程 A)からの生成物を、硫黄を含む求核試薬と反応させ;そして
C)工程 B)からの生成物を、求電子試薬[C1-6ジもしくはトリハロアルカン、好ましく はクロロフルオロメタンまたはブロモフルオロメタンのようなトリハロもしくはジハロ メタンのような]、または次の式;
【化10】

(式中、XはH、F、Cl、Brであり;YはCH2、NH、O、Sであり、好ましくはXはClであり、YはOである)
の化合物と反応させる、
を含む請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
カップリングエンハンサーが、NMI (N−メチルイミダゾール);DCI (4,5−ジシアノイミダゾール);NHS (N−ヒドロキシスクシンイミド);およびスルホ−NHS (N−ヒドロキシスルホスクシンイミド)からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程 C) が、工程 B)からの生成物を、ブロモフルオロメタンとその場で反応させて、フルチカゾンプロピオネートのような式(I)(ここで、R10はフルオロメチル基である)の化合物を形成することからなる、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
− 少なくとも二つの後の工程がその場で、つまり溶媒を変えたり除去したりしないで、 あるいは個々の中間体を単離しないで行われる;そして/または
− 方法が、連続方法のように行われる;そして/または
− 工程 A)、B)および任意の工程 C)が、溶媒を変えないでワンポット合成として行わ れる、そして/または室温あるいは加温下に行われる、請求項1〜13のいずれかに 記載の方法。
【請求項15】
アンドロスタン17β−カルボン酸が、アンドロスタン17β−カルボチオエートに変換される、請求項9〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
工程 B)が、式(IV)
【化11】

(式中、−S−R9部分は、式[−S]-[M]+(ここで、MはLi、NaまたはKのような金属である、例えば−S- Na+)の基を表し、その他の置換基は請求項7で定義されたのと同じ意味を有する)
の化合物のような、チオ酸のアルカリ金属塩をもたらす、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
式(III)
【化12】

(式中、R1、R2、R3、R4およびR5 は請求項7で定義されたとおりであり;
Zは式(II)のステロイド性カルボン酸とカップリング剤(好ましくはEDC)、次いで式 (D);(E); (F); および(G):
【化13】

(式中、R11およびR12は独立して、水素原子またはシアノ基を表し;R13は水素原子またはメチル基を表し;R14は水素原子、またはスルホン酸ナトリウムのようなスルホン酸の部分[つまり、基−S(=O)(=O)−O- Na+]を表す)
【化14】

(式中、XはH、F、Cl、Brであり、YはCH、N、O、Sである)
の化合物からなる群から選択されるカップリングエンハンサーとの反応からもたらされる構造部分を表す)
(ただし、
カップリングエンハンサーが式(F)の化合物であるとき、YがCHを表すとき、XはHを表し得ず;
カップリングエンハンサーが式(D)の化合物であるとき、式IIIにおけるR1がOHを表すとき、R11およびR12は両方ともHを表し得ず;そして
カップリングエンハンサーが式(E)の化合物であるとき、式IIIにおけるR1がHを表すとき、R14はHを表し得ず;
さらに、
スクシンイミジル−9α−フルオロ−11β, 17α−ジヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボキシレート;
17α−ヒドロキシ−4−アンドロステン−3−オン−17β−カルボン酸 N−ヒドロキシスクシンイミドエステル;
N−ヒドロキシスクシンイミジル−9−フルオロ−16α−メチル−11β, 17 ジヒドロキシ−3−オキソ−1, 4−アンドロスタジエン−17β−カルボキシエステル;
デキサメタゾン−17ベータ−カルボン酸のN−ヒドロジスクシンイミドエステル;および
1−[(9α−フルオロ−11β−ヒドロキシ−16β−メチル−3−オキソ−17α−プロピオニルオキシアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−イル)カルボニル]イミダゾールを除く)
の化合物、ならびにその塩および溶媒和物。
【請求項18】
R11およびR12の少なくとも一方がシアノ基(C≡N)であり、そして/またはR13が水素原子であり、そして/または式(D)が、NMI (N−メチルイミダゾール)もしくはDCI (4,5−ジシアノ−イミダゾール)であり、そして/または式(E)が、NHS (N−ヒドロキシスクシンイミド)もしくはスルホ−NHS (N−ヒドロキシスルホスクシンイミド)である、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
式:
【化15】

(式中、置換基は請求項17で定義されたのと同じ意味を有する)(ただし、R1がHを表すとき、R14はHを表し得ない)を有する化合物、ならびにその塩および溶媒和物。
【請求項20】
式(VI)
【化16】

(式中、R1、R2、R3、R4およびR5は請求項7で定義されたとおりであり;
RaおよびRbは請求項1で定義されたとおりである)
(ただし、1−(3−ジメチルアミノ−プロピル)−3−エチル−カルボジイミド−6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α,17α−イソプロピリデンジオキシ−3−オキソ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボキシレートを除く)
の化合物、ならびにその塩および溶媒和物。
【請求項21】
請求項17〜20のいずれかで定義された化合物を含む組成物。
【請求項22】
フロチカゾンプロピオネートの製造方法におけるような、ステロイド性カルボチオエートまたはステロイド性チオカルボン酸の製造方法における中間体としての、請求項17〜20のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項23】
硫黄原子を含む求核試薬との反応を含む、そして/または求電子試薬との反応を含む、請求項22に記載の使用。

【公表番号】特表2006−522028(P2006−522028A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504347(P2006−504347)
【出願日】平成16年4月2日(2004.4.2)
【国際出願番号】PCT/DK2004/000242
【国際公開番号】WO2004/087731
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(505371232)アルファーマ エーピーエス (13)
【氏名又は名称原語表記】ALPHARMA APS
【住所又は居所原語表記】11 Dalslandsgade,DK−2300 Copenhagen S,DENMARK
【Fターム(参考)】