説明

ステロイド耐性患者におけるCD25結合分子の使用

【課題】 ステロイド耐性患者における、自己免疫肝炎、湿疹、血管炎、側頭動脈炎、類肉腫、およびクローン病からなる群より選択される疾患の処置のための方法であって、患者に有効量のCD25結合分子を投与することを含む方法を提供すること。
【解決手段】 CD25結合分子がステロイド耐性患者における、自己免疫肝炎、湿疹、血管炎、側頭動脈炎、類肉腫、およびクローン病からなる群より選択される疾患の処置のための有用な薬剤であることを見いだした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステロイド耐性患者における、自己免疫肝炎、喘息、湿疹、血管炎、側頭動脈炎(temporal arthritis)、全身性紅斑狼瘡、白血病、糸球体腎炎、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、類肉腫およびクローン病からなる群より選択される疾患の処置における、CD25結合分子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎に罹患するほとんどの患者に対して、ステロイドは、有効な処置である。しかし、潰瘍性大腸炎を有する30%から50%の患者は、ステロイド治療に応答せず、そしてこれらの患者の内科的治療は、不満足なままであり、多くは外科的手術を要する。重症潰瘍性大腸炎のための処置としてのステロイドの導入より前には、死亡率は、約50%であった(Truelove SC, & Witts LJ. BMJ 1955; ii:1041-8)。現行の実務は、5ないし7日のステロイド治療に応答しない、重症潰瘍性大腸炎を有するこれらの患者に、緊急の外科的手術を供することである(Jewell DP, et al. Gastroenterol Int 1991; 4:161-4)。外科的手術は、治癒的ではあるが、少なくとも一時的に回腸フィステル形成を伴い、よって患者はしばしば外科的手術をいやがる。しかし、内科的治療に応答しなかった患者において外科的手術を遅延することは危険であり、というのは増加した死亡率と連関する手術前穿孔が発生し得るからである(Ritchie JK. BMJ 1974;i:264-268)。外科的手術の代替として、免疫抑制薬物シクロスポリンを使用し、ステロイド耐性潰瘍性大腸炎の幾人かの患者が処置された(Lichtiger S et al. N Engl J Med 1994;330:1841-5)。しかし、長期間の結果は、最初に応答した患者が6ヶ月以内に外科的手術を要し、そして多くの患者は、致命的な日和見感染、例えば免疫抑制のためのPnemocystis carinii肺炎、腎不全および高血圧を含む副作用を経験し、多くの患者で失望させられる(Smith MB, N Engl J Med 1992; 327:497-8; Sandborn WJ. Inflamm Bowel Dis 1995; 1:48-63)。アザチオプリンは、慢性的に活性の、ステロイド耐性またはステロイド依存性潰瘍性大腸炎のための有効な治療である。しかし、その作用の遅れた開始(3−4ヶ月)は、それが緊急の処置を要する重症潰瘍性大腸炎を有する患者には好適ではないことを意味する(Ardixxone S et al. J Clin Gastroenterol 1997; 25:330-3)。こうして、ステロイド耐性潰瘍性大腸炎の処置は困難なままであり、そして通常は小孔を生じる外科的手術を要する。ステロイド耐性潰瘍性大腸炎の代替的内科的処置が必要であり、そしてこれを同定することは、潰瘍性大腸炎を有する幾人かの患者がステロイド治療になぜ応答しないのかの理由の理解を要する。個々の患者について、ステロイド治療への応答その結果の外科的手術または代替的内科的治療の応答を予測することは困難である。重症潰瘍性大腸炎において、疾患重度の当初の指標は、最終的な結果(ステロイド治療への応答)とあまり相関しない。(Lindgren SC, et al Eur J Gastrenterol Hepatol 1998; 10:831-5)。こうして、ステロイド治療へ応答しない患者はかならずしも、もっとも重症の疾患を有する患者ではない。
【0003】
喘息
喘息のための現行の処置は、ステロイドたとえばグルココルチコイドの投与である。しかし、通常の好ましい応答にもかかわらず、ステロイド治療へ応答しない患者のグループがある。そのような患者は、「ステロイド耐性喘息」を有するとして言及され、そして1968年に最初に同定された。結果的に、ステロイド耐性喘息は、1日あたり20mgの用量のプレドニゾロンの7日後に、1秒間の努力呼気肺活量(FEV;喘息で減少した肺機能の指標)を15%改善しないこととして定義された(Carmichael J, et al., BMJ 1981; 282:1419-22)。ステロイド耐性喘息を有する患者を、ステロイド感受性喘息患者と比較し、そしてベースライン肺機能試験結果および気管支拡張薬への応答は顕著には異ならず、このことはステロイド耐性喘息患者はより重症な疾患を有しないことを指摘する。患者からの末梢血液リンパ球のリンパ球ステロイド感受性を、グルココルチコイドによる刺激されるファイトヘマグルチニン(PHA)刺激阻害を使用して測定した(Poznansky MC, et al., Clin Sci 1984;67:639-45)(Alvarez J, et al., J Allergy Clin Immunol 1992; 89:714-21)(Corrigan CJ, et al., Am Rev Respir Dis 1991; 144:1026-32)(Hackzu A, et al, J Allergy Clin Immunol 1994; 93:510-9)(Spahn JD, et al., J Allegy Clin Immunol 1996; 98:1073-9)。すべての研究は、ステロイド耐性喘息患者からのリンパ球が、ステロイド感受性喘息患者からのリンパ球よりもステロイドによって顕著には阻害されないことを示した。さらなる研究では、ステロイド耐性喘息を有する8人の患者は、ステロイド耐性リンパ球を有することが見出され、そしてメトトレキセートで処置された(Vrugt B, et al, Eur Respir J 2000; 15:478-85)。8週間後、気管支粘膜炎症は減少し、そしてリンパ球ステロイド感受性は増加した。メトトレキセートの、ステロイド耐性喘息における気管支粘膜へ及ぼす有益な影響は、増加するステロイド感受性のためであることが主張された。これは「ステロイド増強剤」として作用し、そしてリンパ球ステロイド感受性を増加し、臨床的に有効である薬物の1例である。第3のレフェラルセンターといわれる、「処置するのが困難な」喘息を有する約25%の患者は、ステロイド耐性リンパ球を有することが見出された(Chan MTS, et al., J Allergy CLin Immunol 1998; 101:594-601)。
【0004】
自己免疫肝炎
自己免疫肝炎は、進行性肝細胞炎症によって特徴づけられる慢性肝臓疾患のある形態である。これはコルチコステロイドでの処置に通常応答する。しかし、自己免疫肝炎を有する患者の10%は、コルチコステロイドに難治性であり、そして進行性肝臓疾患および硬変を発症する。ステロイド耐性疾患を有する患者のこの群の処置は、困難で、かつ移植を要する。シクロスポリンがステロイド耐性自己免疫肝炎のための処置として使用された(Frnandes NF et al., Am. J. Gastroenterol 1999; 94:241-8)。5人の患者の試行では、これは4人の患者で成功であった。不幸なことには、シクロスポリンに応答しなかった1人の患者は、進行性肝不全を発症し、同所肝臓移植を経験し、そして次に播種性サイトメガロイウルス感染で死んだ。シクロスポリンは一般に、よく寛容性であり、そして患者は腎不全を発症しない。ステロイド耐性自己免疫肝炎を有する患者はステロイド耐性リンパ球を有することが、予測される。
【0005】
湿疹
湿疹は、種々の環境または内在性ファクター、例えば接触アレルゲンおよび刺激物、感染性物質およびアトピーによって誘導または維持されることのできる皮膚炎症の明確なパターンである。多数の、湿疹を有する患者は、軽度の疾患を有し、そして断続性局所治療を要する。しかし、幾人かの患者は、より重度の疾患を有し、そして全身性ステロイド治療を要する(Hoare C, et al, Health Technol Asses 2000; 4: 1-191)(Heddle RJ, et al., Br Med J(Clin Res Ed)1984;289:651-4)。ステロイド治療への応答への不全は、免疫抑制薬物、例えばシクロスポリンでの代替的治療を要する(Granlund H, et al Acta Derm. Venereol. 1996; 76:371-6)。ステロイド治療ヘの応答ヘのこの不全は、ステロイド耐性リンパ球を有するステロイド耐性患者のためであると予測される。
【0006】
血管炎
血管炎は、動脈の炎症によって特徴付けられる状態のある群である。これらの状態のいくつかはまた、糸球体腎炎(Wegnerの糸球体腎炎、Goodpastureの症候群および結節性多発性動脈炎を含む)を引き起こす。ステロイドは、すべての状態のための第1線の処置のままである(Bosch X, et al., Lupus 1999; 8:258-62)(Guillevin L. nephrol. Dial.TRansplant 199; 14:2077-9)(Reinhold-Keller E, et al Arthritis Rheum. 2000;43:1021-32)。免疫抑制的治療は、通常は、ステロイドと与え、そしてこの組み合わせ治療の失敗は致命的である。処置に応答しない患者のかなりの数は、ステロイド耐性リンパ球を有するであろうと考えられる。
【0007】
側頭動脈炎
側頭動脈炎は、血管炎のある形態である。合併症は、動脈の炎症によって引き起こされる目への血液供給の妨害のための失明である。患者の約15%が、第1線のステロイド治療に応答しない(Chevalet P. et al., J Rheumatol. 2000;27:1484-91)。これらの患者はしばしば、ステロイドの延長された、非有効過程で処置される。代替的治療、例えばメトトレキセートが、ステロイド耐性疾患のために使用された(Krall PL, et al, Cleve Clin J Med 1989;56:253-7)。ステロイド治療への応答のこの不全は、ステロイド耐性リンパ球を有するステロイド耐性患者のためであると予測される。
【0008】
類肉腫
類肉腫症は、未知の原因の全身性肉芽腫障害である。類肉腫症は、未知の抗原への過剰増殖T細胞介在免疫応答に起因する。ステロイドは、第1線治療のままである(Barnard K, et al, Curr Opin Rheumatol. 2001;13:84-91)。ステロイドに代わるのはしばしば、ステロイド不耐性のためまたはステロイド用量および副作用を減少させる試みにおいて導入される。
【0009】
全身性紅斑性狼瘡
全身性紅斑性狼瘡は、Tリンパ球における異常、並びに自己抗体を産生する超過反応性B細胞を含む自己免疫障害である。非処置で放置すると、この疾患は末期腎臓疾患または死亡という結果となり得る。
グルココルチコイドは、全身性紅斑狼瘡の処置のための第1選択の薬物である。しかし、幾人かの患者は、ステロイド治療に応答しない。インビトロリンパ球ステロイド感受性およびステロイド治療ヘの臨床的応答の間の相関はまた、全身性紅斑狼瘡(SLE)を有する患者で試験された(Seki M, et al., Arthritis Rheum 1998; 41:823-30)。経口プレドニゾロン(日あたり50−60mg)で処置された27人の日本人女性を、1ヶ月研究した。19人の患者はステロイド感受性として分類され、そして8人はステロイド処置への臨床応答にしたがってステロイド耐性として分類された。リンパ球ステロイド感受性を、末梢血液リンパ球のインビトロステロイド誘導性アポトーシス(細胞死)を測定することによって決定した。ステロイド耐性群中のSLE患者からのリンパ球は、高濃度のプレドニゾロンのステロイド感受性群と比較したときのアポトーシス性細胞の、顕著により低いパーセンテージを有した(44.8%対68.8%;p<0.05)。こうして、リンパ球ステロイド感受性を測定する方法は、グルココルチコイドによる、PHA刺激されたリンパ球増殖の阻害のレベルを測定する方法と異なったが、ステロイド治療に応答しなかった患者は、ステロイド耐性リンパ球を有した。
【0010】
白血病
白血病は、白血球前駆体が増殖し、そして分化しない白血球の悪性障害である。白血病は炎症性状態ではないが、グルココルチコイドは、この状態を処置するために使用される化学療法レジメンに含まれる。グルココルチコイドは、リンパ芽球アポトーシスを誘導し、そしてこれは急性リンパ芽球白血病(ALL)のステロイド感受性の指標として使用された。インビトロアポトーシスの高率は、よい臨床応答と連関する。逆に、ステロイド耐性は、ALLの新しく診断されたケースの約30%に存在し、そして顕著な臨床問題を表す(Kaspers GJL, et al, Leuk Lymphoma 1994; 13:187-201)。2つの研究は、ステロイドに対してだけでなく(デキサメタゾンおよびプレドニゾロン)、L−アスパラギナーゼおよびビンクリスチンに対しても、インビトロリンパ球感受性において比較した(Kaspers GLJ, et al, Blood 1997; 90:2723-9)(Hongo T et al., Blood 1997;89:2959-65)。これらの薬物に対するリンパ球感受性を、指標として使用して、患者を感受性(すべての薬物に感受性)、中間(2または3の薬物に感受性)、または耐性(1または0の薬物に感受性)として分類した。3年間の疾患のない生存は、感受性患者で最高で(85−100%)、そして耐性患者で最低(43−55%)であった。こうして、ALLを有する患者の、リンパ芽球インビトロ感受性およびインビボ疾患感受性は、ステロイド感受性だけでなく、他の化学的治療剤について相関する。
【0011】
糸球体腎炎
糸球体腎炎は、腎臓の炎症によって特徴付けられ、そして通常は自己免疫性である。ステロイドは、重要な処置であり(Austin HA, et al, N Engl J Med 1986;314:614-9)、そしてこの状態のためのステロイド治療の無効は、腎不全につながり得る。ステロイド耐性腎臓疾患を有する患者におけるステロイド処置の無効は、免疫抑制薬物の試行へつながった(潰瘍性大腸炎において)(McCauley J, et al, Nephrol Dial Transplant 1993; 8:1286-90)。研究は、糸球体腎炎を有する16人の患者におけるリンパ球ステロイド感受性のある範囲を示した(Briggs WA, et al, J Clin Pharmacol 1996;36:707-14)。リンパ球ステロイド感受性のその範囲がステロイド治療ヘの変化し得る応答を説明したと主張され、しかし、この研究には、臨床的疾患応答との、リンパ球ステロイド感受性の比較がない。巣状分節状糸球体硬化症(FSGS)は、糸球体硬化症のある形態であり、これはまた、幾人かの患者は応答しないけれども、ステロイドで処置される(Ingulli E et al., J Am Soc Nephrol 1995; 5:1820-5)。この状態では、リンパ球ステロイド感受性を、臨床応答と比較し、そしてステロイド処置ヘの応答における腎不全の改善を予測することが示された。もっとも感受性のリンパ球を有する患者は、ステロイド治療にもっともよく応答したが、一方ステロイド耐性リンパ球を有するこれらの患者は、ステロイドにあまり応答しなかった。
【0012】
多発性硬化症
多発性硬化症は、ミエリンタンパク質と反応性のTリンパ球が、重要な病原性役割を演じる、中枢神経系の炎症性脱髄疾患である。グルココルチコイドを使用し、多発性硬化症を処置する(Brusaferri F, et al., J Neurol. 2000;247:435-42)。ステロイド処置は、多発性硬化症を有する患者での短期間回復を促進するのに有効であり、そしてまた再発のリスクを減少させるのに有効であり得る。しかし、臨床応答は、患者毎に広く変わる。リンパ球ステロイド感受性を、多発性硬化症を有する患者で測定し(Wei T, et al, Acta Neurologica Scandinavica 1997;96:28-33)、そして広い範囲のリンパ球感受性が見出された。ステロイド治療への多発性硬化症の臨床応答と、リンパ球ステロイド感受性を比較した研究はないが、インビトロリンパ球ステロイド感受性の範囲は、なぜステロイド治療への応答が変化し得るか一部説明し得ることが主張された。
【0013】
リンパ球ステロイド感受性
前述のように、リンパ球を刺激し、有糸分裂促進剤PHAによってインビトロで増殖させることができる(Lindahl Kiessling K, Peterson RD. Exp. Cell Res 1969;5585-7)。培養培地へのステロイドの添加は、リンパ球増殖を阻害する(Walker KB et al Transplant Proc 1985; 17:1676-8)。いくつかの場合には、リンパ球は、増殖の顕著な阻害を生じる小量のステロイドの添加でステロイド感受性であり、他の場合は、リンパ球は増殖の最小の阻害を生産する多量のステロイドの添加でさえもステロイド耐性である。発明者は以前、重症潰瘍性大腸炎を有する患者の群において、ステロイド治療に応答して、LSSと臨床結果の連関を研究した(Hearing SD et al., Gut 1999;45:382-8)。すべての患者を、静脈内ステロイドの標準用量で処置し、そして該患者のリンパ球ステロイド感受性(LSS)を、末梢性血液リンパ球のPHA誘導性増殖のデキサメタゾン阻害を使用して測定した。臨床結果とLSSの間の顕著な相関が実証された。ステロイド感受性リンパ球を有するすべてのこれらの患者は、ステロイド治療に完全応答を有し、そしてステロイド耐性リンパ球を有するすべてのこれらの患者は、ステロイド治療へあまり応答性を有しなかった。こうして、潰瘍性大腸炎では、LSSと、ステロイド治療への少ない応答を予測する、ステロイド耐性リンパ球でのステロイド治療への臨床応答の間の相関がある。
【0014】
インターロイキンは、活性化マクロファージおよび免疫応答中のリンパ球によって生産されるサイトカインの1群である。これらは、リンパ球および他の白血球に作用し、これらの増殖および分化を刺激する。この群のあるメンバー、インターロイキン−2(IL−2)は、活性化T細胞によって生産される第1サイトカインの1つであり、そして自己分泌態様で作用し、それを生産する細胞の増殖および分化を刺激する。潰瘍性大腸炎で活性化Tリンパ球によって生産されるIL−2は、他の炎症性細胞を活性化し、さらなるサイトカインを生産し、これはさらなる炎症性細胞補充および活性化を生じることによって粘膜の炎症を永続させることにおいて重要な役割を有し得る(Kirman I, et al. J. Dig Dis Sci 1995; 40:291-5)。患者がステロイド治療に応答性であると仮定すると、ステロイドの重要な作用は、IL−2生産を阻害し、リンパ球増殖および付随する炎症を防止することである(ステロイドは、IL−2阻害が唯一のものである多重作用を有する)。しかし、患者がステロイド耐性であるならば、IL−2生産は、ステロイドによって阻害されず、炎症は非阻害を継続する。
【発明の開示】
【0015】
ステロイド処置が有効でない、自己免疫肝炎、喘息、湿疹、血管炎、側頭動脈炎、全身性紅斑狼瘡、白血病、糸球体腎炎、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、類肉腫およびクローン病に罹患する有意数の患者の観点から、緊急かつ非侵入的外科手術への代替として有効な処置の必要性がある。
【0016】
より具体的には、本発明は第1側面で、配列中に超可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を含む少なくとも1ドメインを含む、少なくとも1抗原結合部位を含む、CD25結合分子の使用であって、当該CDR1がアミノ酸配列Arg−Tyr−Trp−Met−Hisを有し、当該CDR2がアミノ酸配列Ala−Ile−Tyr−Pro−Gly−Asn−Ser−Asp−Thr−Ser−Tyr−Asn−Gln−Lys−Phe−Glu−Glyを有し、かつ当該CDR3がアミノ酸配列Asp−Tyr−Gly−Tyr−Tyr−Phe−Asp−Pheを有するか、またはその直接的均等物であり、自己免疫肝炎、喘息、湿疹、血管炎、側頭動脈炎、全身性狼瘡、白血病、糸球体腎炎、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、類肉腫およびクローン病の処置での使用を提供する。以下の実施例1および2の研究で示されるように、本発明のCD25結合分子は、リンパ球ステロイド感受性を調節し、その結果ステロイド耐性対象は、ステロイド感受性となる。こうして、本発明のCD25結合分子を、ステロイド耐性自己免疫肝炎、喘息、湿疹、血管炎、側頭動脈炎、全身性紅斑狼瘡、白血病、糸球体腎炎、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、類肉腫およびクローン病の処置で使用し得る。
【0017】
さらに、本発明のCD25結合分子をまた、ステロイド感受性患者でのステロイド治療への応答性を改善することにおいて使用し得る。ステロイド感受性患者はとにかくステロイド治療に応答することが期待されるが、本発明のCD25結合分子の使用は、それらをより急速に応答させると予測され、または使用すべきステロイドのより低い用量を可能とし、こうして、ステロイド処置の副作用を顕著に減少させ得る。こうして、本発明のさらなる側面にしたがって、ステロイド感受性患者における、自己免疫肝炎、喘息、湿疹、血管炎、側頭動脈炎、全身性紅斑狼瘡、白血病、糸球体腎炎、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、類肉腫およびクローン病の、予防、鎮静の維持/再発の予防および処置のための方法であって、該患者に、有効量の本発明のCD25結合分子および必要ならばステロイドを投与することを含む方法を提供する。
【0018】
「CD25結合分子」によって、単独でまたは他の分子をともなってCD25抗原に結合し、高親和性IL−2レセプターを形成することの可能な任意の分子を意味する。
【0019】
好ましくはCD25結合分子は、
a)配列中に超可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を含む第1ドメインであって、当該CDR1はアミノ酸配列Arg−Tyr−Trp−Met−Hisを有し、当該CDR2はアミノ酸配列Ala−Ile−Tyr−Pro−Gly−Asn−Ser−Asp−Thr−Ser−Tyr−Asn−Gln−Lys−Phe−Glu−Glyを有し、かつ当該CDR3はアミノ酸配列Asp−Tyr−Gly−Tyr−Tyr−Phe−Asp−Pheを有するもの、および
b)配列中に超可変領域CDR1’、CDR2’、およびCDR3’を含む第2ドメインであって、当該CDR1’はアミノ酸配列Ser−Ala−Ser−Ser−Ser−Ile−Ser−Tyr−Met−Glnを有し、当該CDR2’はアミノ酸配列Asp−Thr−Ser−Lys−Leu−Ala−Serを有しかつ、当該CDR3’は、アミノ酸配列His−Gln−Arg−Ser−Ser−Tyr−Thrを有するもの、
またはその直接的均等物
を含む少なくとも1つの抗原結合部位を含んで使用する。
【0020】
特に指摘しないかぎり、任意のポリペプチド鎖は、N末端先端で出発し、そしてC末端先端で終結するアミノ酸配列を有するようにここに記載する。
【0021】
抗原結合部位が第1および第2ドメイン両方を含むとき、これらは同じポリペプチド分子上に位置し、または好ましくは、それぞれドメインが異なる鎖上にあり得、該第1ドメインは、免疫グロブリン重鎖の一部またはその断片であり、そして第2ドメインは、免疫グロブリン軽鎖の一部またはその断片である。
【0022】
よって、本発明はまた、位置1のアミノ酸で開始し、そして位置117のアミノ酸で終結する、EP449769B1の配列番号1に示されるものと同一または実質的に同一のアミノ酸配列を有する第1ドメインまたは前記のような第1ドメイン、および位置1のアミノ酸で出発し、そして位置104のアミノ酸で終結するEP449769B1の配列番号2に示されるものと同一または実質的に同一のアミノ酸配列を有する第2ドメインを含む、少なくとも1つの抗原結合部位を含むCD25結合分子の使用を提供する。EP449769B1の内容は、引用によりここに含める。
【0023】
本発明にしたがう使用のためのより好ましいCD25結合分子は、少なくとも
a)1つの免疫グロブリン重鎖またはその断片であって、(i)配列中に超可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を含む可変ドメインおよび(ii)ヒト重鎖の不変部分またはその断片を含むもの;当該CDR1は、アミノ酸配列Arg−Tyr−Trp−Met−Hisを有し、当該CDR2は、アミノ酸配列Ala−Ile−Tyr−Pro−Gly−Asn−Ser−Asp−Thr−Ser−Tyr−Asn−Gln−Lys−Phe−Glu−Glyを有し、かつ当該CDR3はアミノ酸配列Asp−Tyr−Gly−Tyr−Tyr−Phe−Asp−Pheを有する、および
b)1つの免疫グロブリン軽鎖またはその断片であって(i)配列中に超可変領域CDR1’、CDR2’およびCDR3’を含む可変ドメインおよび(ii)ヒト軽鎖の不変部分またはその断片を含むもの;当該CDR1’はアミノ酸配列Ser−Ala−Ser−Ser−Ser−Ile−Ser−Tyr−Met−Glnを有し、当該CDR2’はアミノ酸配列Asp−Thr−Ser−Lys−Leu−Ala−Serを有し、かつ当該CDR3’は、アミノ酸配列His−Gln−Arg−Ser−Ser−Tyr−Thrを有する;
およびその直接的均等物
を含むキメラ抗CD25抗体から選択される。
【0024】
代替的に、本発明にしたがう使用のためのCD25結合分子は、
a)配列中に超可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を含む第1ドメイン、当該超可変領域は、引用によりここにその内容を含める、EP449769B1の配列番号1に示されるようなアミノ酸配列を有する;
b)配列中に超可変領域CDR1’、CDR2’およびCDR3’を含む第2ドメイン、当該超可変領域は、引用によりここにその内容を含めるEP449769B1の配列番号2に示されるようなアミノ酸配列を有する;および
c)該第1ドメインのN末端先端へおよび該第2ドメインのC末端先端へまたは該第1ドメインのC末端先端へおよび第2ドメインのN末端先端へ結合されるペプチドリンカー;
およびその直接的均等物
を含む抗原結合部位を含む単一鎖結合分子から選択し得る。
【0025】
代替的に、本発明にしたがう使用のためのCD25結合分子は、ヒト化抗体、例えば引用によりここにその内容を含めるEP451216B1にそれらの調製方法と開示されたダクリズマブ(daclizumab)を含む抗原結合部位を含む単一鎖結合分子から選択され得る。
【0026】
周知のように、アミノ酸配列中の軽微な変化、例えば1、2以上またはいくつかのアミノ酸の欠失、付加または置換は、同一または実質的に同一の特性、例えば抗原結合特性を有する、本来のタンパク質の対立遺伝子形態につながり得る。こうして、用語「その直接的均等物」によって、いずれかの任意の単一ドメインCD25結合分子(分子X)であって、
(i)超可変領域CDR1、CDR2およびCDR3全体が、引用によりその内容をここに含める、EP449769B1の配列番号1またはEP451216B1の図3および4に示される超可変領域に少なくとも80%相同、好ましくは少なくとも90%相同、より好ましくは少なくとも95%相同であり、かつ
(ii)分子Xのものに同一なフレームワーク領域を有するが、引用によりその内容をここに含める、EP449769B1の配列番号1またはEP451216B1の図3および4に示されるものと同一の超可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を有する参照分子と実質的に同程度に、インターロイキン2(IL−2)の、そのレセプターへの結合を阻害できるもの、
または結合部位あたり少なくとも2つのドメインを有する任意のCD25結合分子(分子X’)であって
(i)超可変領域CDR1、CDR2、CDR3、CDR1’、CDR2’およびCDR3’全体が、引用によりここにその内容を含める、EP449769B1の配列番号1および2に、またはEP451216B1の図3および4に示される超可変領域に少なくとも80%相同、好ましくは少なくとも90%相同、より好ましくは少なくとも95%相同であり、かつ
(ii)分子X’と同一のフレームワーク領域および不変部分を有するが、引用によりここにその内容を含める、EP449769B1の配列番号1および2またはEP451216B1の図3および4に示されるものと同一である超可変領域CDR1、CDR2、CDR3、CDR1’CDR2’およびCDR3’を有する参照分子と実質的に同程度に、IL−2の、そのレセプターへの結合を阻害できるものを意味する。
【0027】
この最後の基準は、引用によりここにその内容を含める、EP449769B1またはEP451216B1に記載のような種々のアッセイで簡便に試験し得る。
【0028】
本発明にしたがう使用のためのより好ましいCD25結合分子は、キメラCD25抗体、特にキメラCD25抗体であって少なくとも
a)位置1のアミノ酸で出発し、そして位置117のアミノ酸で終結する、引用によりここにその内容を含めるEP449769の配列番号1に示されるものと同一または実質的に同一のアミノ酸配列を有する可変ドメイン、およびヒト重鎖の不変部分を含む1つの重鎖、および
b)EP449769B1の内容は引用によりここに含める、位置1のグルタミン酸で開始し、位置104のグルタミン酸で終結する、EP449769B1の配列番号2に示されるものと同一または実質的に同一であるアミノ酸配列を有する可変ドメイン、およびヒト軽鎖の不変部分を含む1つの軽鎖
を含むものである。
【0029】
ヒト重鎖の不変部分は、γ1、γ2、γ3、γ4、μ、α1、α2、δまたはε型、このましくはγ型、より好ましくはγ1型のものであり得るが、一方ヒト軽鎖の不変部分は、κまたはλ型のものであり得る(これはλ1、λ2およびλ3サブタイプを含む)が、好ましくはκ型のものである。すべてのこれらの不変部分のアミノ酸配列は、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Department of Health and Human Sevices, Public Health Service, NIHに与えられる。
【0030】
本発明にしたがうもっとも好ましいCD25結合分子は、Novartis AGからのSIMULECT(登録商標)として商業的に入手可能であるキメラ抗体バシリキシマブ(basiliximab)およびRocheからZENAPX(登録商標)として商業的に入手可能であるヒト化抗体ダクリズマブ(daclizumab)である。
【0031】
本発明にしたがう使用のため好適なCD25結合分子は、その内容を引用によりここに含める、例えばEP449769B1およびEP451216B1に例えば開示される技法によって生産し得る。
【0032】
EP−B−449769B1およびEP451216B1に記載のように、CD25結合分子は、例えばLymphocyte Steroid Sensitivityアッセイで観察される活性に基づいて、ステロイド感受性またはステロイド耐性患者における、自己免疫肝炎、喘息、湿疹、血管炎、側頭動脈炎、全身性紅斑狼瘡、白血病、糸球体腎炎、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、類肉腫およびクローン病の予防および処置に有用であると見出された。
【0033】
したがって本発明はまた、
(i)ステロイド感受性またはステロイド耐性患者における、自己免疫肝炎、喘息、湿疹、血管炎、側頭動脈炎、全身性紅斑狼瘡、白血病、糸球体腎炎、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、類肉腫およびクローン病の予防および処置のための方法であって、該患者に、有効量の前記のCD25結合分子を投与することを含む方法、
【0034】
(ii)ステロイド感受性またはステロイド耐性患者における、自己免疫肝炎、喘息、湿疹、血管炎、側頭動脈炎、全身性紅斑狼瘡、白血病、糸球体腎炎、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、類肉腫およびクローン病の予防および処置のための方法であって、例えば同時にまたは連続して、当該対象に、有効量のa)前記のCD25結合分子およびb)自己免疫肝炎、喘息、湿疹、血管炎、側頭動脈炎、全身性紅斑狼瘡、白血病、糸球体腎炎、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、類肉腫およびクローン病の予防または処置に有効であるさらなる薬物物質を投与することを含む方法、
【0035】
(iii)(i)ないし(ii)に記載のような方法における使用のための医薬組成物であって、前記のようなCD25結合分子および薬学的に許容される担体または希釈剤を含むもの、
【0036】
(iv)(i)または(ii)に記載の方法のための医薬の製造における使用のための前記のようなCD25結合分子、
【0037】
(v)(i)または(ii)に記載のような方法のいずれかにおける使用のための、治療的組み合わせ、例えばキットまたは包装品であって、前記のようなCD25結合分子を含み、およびさらに少なくとも1つの医薬組成物であってステロイド感受性またはステロイド耐性患者における、自己免疫肝炎、喘息、湿疹、血管炎、側頭動脈炎、全身性紅斑狼瘡、白血病、糸球体腎炎、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、類肉腫およびクローン病の予防または処置に有効なさらなる薬物物質を含むものを含むもの、
を提供する。
【0038】
本発明にしたがう使用のため、適当な用量はもちろん、例えば使用すべき特定のCD25結合分子、宿主、投与の様式および処置される状態の重度および望まれる効果に依存して変化する。十分な結果は一般に、約0.1mgないし約100mgの用量で取得されるべきと指摘される。投与は、単一投与または該疾患が臨床的に明らか、または予防的にさらに臨床的再発を抑制するためのときに関連して指摘され得るかぎりの時間の期間にわたり、複数の投与であり得、例えば約5から約100mgの用量を、1日から5週間までのタイムラグで、例えば3ないし6日毎、疾患の制御または緩和が達成されるまで投与し得る。好ましい投与レジメンは、20mgのCD25結合分子、例えばバシリキシマブの、第0日の投与および、さらに20mgの第4日の投与を含む。CD25結合分子は簡便には、非経口的に例えば静脈内に例えば前腕前部または他の末梢静脈内に投与する。代替的例示的投与レジメンは、疾患の制御または緩和が達成されるまで28日毎に40mgの静脈内投与である。
【0039】
静脈内点滴を以下のとおり調製し得る:凍結乾燥抗体を、4.5重量%のヒトアルブミンを含む100mlの滅菌緩衝生食水と混合し分散させる。この生食水分散液を、静脈内ボーラス注射として15分間にわたる静脈内点滴として、患者に投与し得る。
【0040】
これまでの調査は、CD25結合分子の投与が、使用される用量レベルでの許容できない副作用がないことを指摘する。特に、好ましいのは、合衆国のFederal Drug Administration(FDA)によって承認され、商業的に利用可能であるバシリキシマブまたはダクリズマブが安全である。
【0041】
本発明の医薬組成物を、例えばその内容を引用によりここに含めるEP449769B1またはEP451216B1に記載されるような慣行態様で製造し得る。
【0042】
CD25結合分子を、単独活性成分としてまたは、免疫調節レジメンでの他の薬物または他の抗炎症性剤といっしょに投与し得る。例えば、CD25結合分子を、本発明にしたがって、前記のような種々の疾患で有効な医薬組成物、例えばシクロスポリン、ラパマイシンまたはアスコマイシン、またはこれらの免疫抑制類似物、例えばシクロスポリンA、シクロスポリンG、FK−506、シロリムス、エベロリムス;コルチコステロイド、例えばプレドニゾン、シクロホスファミド;アザチオプレン;メトトレキセート;金塩;スルファサラジン、抗マラリア薬、ブレキナール;レフルノミド;ミゾリビン;ミコフェノール酸;ミコフェノレートモフェチル;15−デオキシスペルグアニン;他の免疫抑制モノクローナル抗体、例えば白血球レセプター、例えばMHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD28、B7、CD40、CD45またはCD58またはそれらのリガンドヘのモノクローナル抗体;または他の免疫調節化合物、たとえばCTLA4Igと組み合わせて使用し得る。
【0043】
CD25結合分子を、さらなる薬物物質と共投与するとき、両方を、同じ容器内に別個に、混合または同時的投与のための指示書とともに、包装し得る。キットの例は、例えば、多重樽詰シリンジまたは別個の単位用量形態を含むツインパックを含む。
以下の例は発明を例示する。
【実施例】
【0044】
実施例1:
4人の男性および4人の女性対象が、研究に含まれる。研究対象の平均年齢は、52歳である(34ないし70歳の範囲)。対象のうち2人は健康なボランティアであり、対象のうち6人は、予め診断された潰瘍性大腸炎を有する患者である。6人の患者のうち5人は、以前、内科的治療への低い応答のため外科手術を要し、そしてなんら抗炎症性または免疫抑制投薬をのんでいない。第6対象は無活動UC(潰瘍性大腸炎)疾患を有し、そしてサンプリングの日にではないが、メサラジンを飲んでいた。したがって、その1つの作用がIL−2の弱い阻害であるメサラジンは、サンプリングのときまでに代謝されたであろう。(バシリキシマブ(インビトロでの使用のための商業名SIMULECT(登録商標)は、Novartisによって供給される))。
【0045】
リンパ球ステロイド感受性の測定:末梢血液リンパ球の、グルココルチコイドへの感受性を、機能性アッセイで評価する;すなわちファイトヘマグルチニン(PHA)によって刺激され、そしてデキサメタゾンによって阻害されるインビトロ増殖アッセイ。(Hearing SD, et al. Gut 1999;45:382-9; Hearing SD et al. J Clin Endocrinol Metab 1999;84:4149-54)。末梢血液サンプルを、09:00時に収集し、そして末梢血液単核細胞(PBMC)を、浮揚性遠心分離によって分離する。浮揚性遠心分離は、リンパ球の、血液サンプルからの、ficol勾配上の遠心分離による分離を含む。ficolは、赤血球を、貫落下を可能とするが、リンパ球の貫移動を防止する。末梢血液単核細胞(リンパ球およびmarocyes)をficol/血漿界面から収集する。PBMCs増殖を、PHAで刺激し、そして10−6と10−10mol/lの間、すなわち10−6、10−7、10−8、10−9、10−10mol/lの一連10倍希釈でデキサメタゾンで阻害する。細胞増殖を、トリチル化チミジン取りこみによって測定し、すなわちインキュベーションの2日後、放射性同位体標識したチミジン(H−チミジン)を、リンパ球培養培地に添加し、そして増殖しているリンパ球のDNAへ取りこまれるようにする。6時間後、細胞をインキュベーターから移動し、そして細胞ハーベスターを使用してフィルターマット上に収集する。細胞を次いでウェルから洗浄する。チミジンを取りこんだリンパ球DNAを、濾紙にとらえる。放射性活性レベルを測定するとき、活発に増殖しているリンパ球の高い数を含むウェル(したがって多くのチミジンをそのDNAに取り込んでいるだろう)は高い放射性活性レベルを有する。ゆえに、放射性活性レベル(分あたりカウントcpm)を、リンパ球増殖の指標として使用する。結果を3反復培養の分あたりの平均カウント(cpm)として計算する。デキサメタゾンのそれぞれの濃度についてのチミジン取りこみを、デキサメタゾンの不存在下PHAで刺激したTリンパ球のそれと比較し、そして非阻害陽性コントロールのパーセンテージとして表現する。種々の濃度のバシリキシマブの、リンパ球増殖に及ぼす影響をまた、研究する。加えて、等しい濃度のバシリキシマブを、すべての濃度のデキサメタゾンのそれぞれの細胞培養培地に添加し、抗増殖効果を測定する。
【0046】
SIMULECT(登録商標)の、リンパ球増殖に及ぼす影響:0.2mg/lのバシリキシマブの血清濃度は、>90%IL-2R占有を生じる。バシリキシマブの抗増殖インビトロ効果を試験するため、0.01と10mg/lの間の種々の濃度のバシリキシマブをステロイドの不存在下リンパ球とインキュベートする。これらのアッセイは、>0.1ないし0.3mg/lバシリキシマブのインビトロ濃度が、バシリキシマブのインビトロ効果を生ずるために要することを確認する。同じ対象ヘのさらなる研究のために、1mg/lの濃度を使用する。全部で同じ8人の対象を、それぞれの実験で研究する。1mg/lの濃度のバシリキシマブの、ステロイド不存在下のPHA誘導性細胞増殖ヘ及ぼす影響を、表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
こうして、バシリキシマブの添加は、ステロイドの不存在下での増殖の平均37.8%阻害を生じる。しかし、阻害のこのレベルはなお、潰瘍性大腸炎を有する患者の研究での少ない臨床応答と連関する(<60%)。
【0049】
SIMULECT(登録商標)の、ステロイド感受性に及ぼす影響:すべて8人の対象について、PHA刺激したリンパ球を、バシリキシマブ(1mg/l)の存在下および不存在下で増加する濃度のデキサメタゾン(10−10−10−6mol/l)の存在下で培養する。発明者が実施した潰瘍性大腸炎以前の研究では、最大抑制(Imax)<60%は、ステロイド治療ヘの少ない応答(臨床的ステロイド耐性)と相間があった。Imaxの正確な値は測定できず、というのはそれはデキサメタゾンの無限に高いレベルの阻害であるからである。こうして、適用した最大デキサメタゾン濃度(10−6mol/l)で観察された増殖のパーセンテージ阻害を、Imaxの指標として使用する。実際には、Imaxと、用量応答曲線から取得した最大阻害の見積もり漸近値(Hearing SD et al(1999)Clin Endoctrinol Metab 84:4149-54)の間の良好な一致がある。10−7mol/lのデキサメタゾンの濃度は、グルココルチコイド活性の観点から、標準的用量での静脈内治療で達成されたヒドロコルチゾンの血清濃度とほとんど等しい。こうして、インビボバシリキシマブのこの濃度でのバシリキシマブのステロイド感作化効果はまた、興味深くあり得る。それぞれの対象についてのリンパ球増殖アッセイの結果を、表2にまとめ、これはバシリキシマブのLSSに及ぼす影響を示す。対象は、ステロイド感受性の桁の減少を示す(左の最も感受性のものについて)。
【0050】
【表2】

【0051】
4人の対象がステロイド感受性(Imax>60%;対象1−4)であり、そして4人はステロイド耐性(Imax<60%;対象5−8)である。Imaxに及ぼす影響から、すべてのステロイド耐性対象について、LSSはバシリキシマブによって調節されそしてすべてステロイド感受性となることが見出される。さらに10−7mol/lデキサメタゾンの濃度でのリンパ球の%抑制への影響がまた見出される。
【0052】
バシリキシマブによるリンパ球ステロイド感受性の調節は同等に、自己免疫肝炎、喘息、湿疹、血管炎、側頭動脈炎、全身性紅斑狼瘡、白血病、糸球体腎炎、多発性硬化症、類肉腫およびクローン病を有するステロイド耐性患者のステロイド感受性を変化させるのに適用可能であり、というのはこれらの状態のすべてにおいて、ステロイド治療ヘの少ない応答は、ステロイド耐性リンパ球と連関しそうであるからである。リンパ球ステロイド感受性の、バシリキシマブによる、ステロイド耐性リンパ球をステロイド感受性とする調節は、ステロイド治療に以前は非応答性の患者を、ステロイドを使用して首尾良く処置するのを可能とするであろう。加えて、ステロイド感受性患者であって、ステロイド治療に応答するのが期待されるものは、もしバシリキシマブで処置するならば、ステロイド治療に対してより急速に応答するであろう。
【0053】
実施例2:
末梢血液リンパ球を、32人の対象から(25人の健康なボランティアおよび7人の無活動潰瘍性大腸炎を有する患者)、41回、浮揚性密同遠心分離を使用して単離する。リンパ球ステロイド感受性を、デキサメタゾン(DEX)の、ファイトヘマグルチニン刺激したリンパ球に及ぼす抗増殖性効果を測定することによって、評価する。最大ステロイド誘導性抑制を、コントロールリンパ球増殖(Imax)の%として表現する。Imaxを、バシリキシマブ(1mg/l)の不存在および存在下で測定する。バシリキシマブの添加は、DEXの抗増殖性効果を有意に増強した(Wilcoxon sifned-rank tes,p<0.0001)。
【0054】
【表3】

すべて8人のステロイド耐性対象(Imax<60%)を、バシリキシマブの添加によってステロイド感受性に調節する(インビトロ)。こうして、バシリキシマブは、顕著なインビトロのステロイドを増強する効果を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステロイド感受性患者における、自己免疫肝炎、喘息、湿疹、血管炎、側頭動脈炎、全身性紅斑狼瘡、白血病、糸球体腎炎、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、類肉腫またはクローン病の予防または処置するために使用するための、配列中に、超可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を含む少なくとも1つのドメインを含む少なくとも1つの抗原結合部位を含むCD25結合分子であって、当該CDR1はアミノ酸配列Arg−Tyr−Trp−Met−Hisを有し、当該CDR2はアミノ酸配列Ala−Ile−Tyr−Pro−Gly−Asn−Ser−Asp−Thr−Ser−Tyr−Asn−Gln−Lys−Phe−Glu−Glyを有し、かつ当該CDR3はアミノ酸配列Asp−Tyr−Gly−Tyr−Tyr−Phe−Asp−Pheを有する分子とステロイドの組合せ。
【請求項2】
CD25結合分子がバシリキシマブまたはダクリズマブである、請求項1に記載の組合せ。
【請求項3】
CD25結合分子がバシリキシマブである、請求項1に記載の組合せ。
【請求項4】
潰瘍性大腸炎の処置のための、請求項1、2または3に記載の組合せ。

【公開番号】特開2009−102367(P2009−102367A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328042(P2008−328042)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【分割の表示】特願2002−579494(P2002−579494)の分割
【原出願日】平成14年4月5日(2002.4.5)
【出願人】(301046765)ユニバーシティ・オブ・ブリストル (3)
【Fターム(参考)】