説明

ステロールを含む安定したコーティング剤

(a)ステロール及び(b)溶媒を含む摂取可能なコーティング剤。コーティング剤は、摂取可能な基材を、そうでなければ基材の分解をもたらす悪条件から保護するために使用できる。好ましくは、溶媒は共沸溶媒を含む。別の態様において、本発明は、摂取可能なコーティングと摂取可能な基材とを含むコーティングされた基材を提供する。コーティング剤は、あらゆる好適な基材をコーティングするために使用できる。好適な基材には、ビタミン類、アミノ酸類、ミネラル類、植物化学物質、カロチノイド類、医薬品、塩類、栄養素、生理学的活性剤、及びこれらの混合物を挙げることができるが、それらに限定されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定したコーティング剤、特にステロールを含む安定したコーティング剤を対象とする。コーティング剤は、摂取可能であり、栄養素及び医薬品のような摂取可能な基材をコーティングするために使用できる。
【背景技術】
【0002】
多くの消費者は、より栄養のある食品を望んでいる。この需要に応えて、食品産業は、健康上の利益が追加された食物を提供するために、ビタミン類のような添加栄養素を含有する製品を開発してきた。しかし、これらの食品の多くを調製するのに使用されるプロセスは、栄養素の一体性に悪影響を与える条件に栄養素を暴露しうる。
【0003】
栄養添加物類として使用される多くのビタミン類及び他の基材は非常に不安定であり、従ってこれらのプロセスに耐えることができない。これらの基材は、周辺光、過剰の酸若しくは塩基、水分、加熱、酸素、又は化学的に不相溶の基材類の存在のような条件に暴露されたとき、通常、反応するか、又は分解する。これらの反応の結果、基材は、完全に又は部分的にその栄養価を失い、従って望ましい健康上の利益を提供することができなくなる。
【0004】
例えば、多様な食物に栄養素を加えることが望ましい。しかし、そのような食物が調理する(例えば、フライにする)ことを介して加熱条件に付される場合、栄養素は、熱分解及び/又は酸化を経験して、ビタミンの著しい損失がもたらされる。
【0005】
栄養基材の一体性を維持するため、コーティング材料を使用して基材と悪条件との間に保護バリヤーを形成することが、当該技術分野において多く試みられてきた。幾つかの手法は、セルロース誘導体及び脂質物質を栄養素に噴霧すること、又は栄養素を栄養素と反対の極性を有する液体担体類と混合することが包含される。他の手法は、栄養素を溶融マトリックスと接触させてビードレッツ(beadlets)を形成する、高速ディスクプロセスを使用した。なお他の手順は、栄養素を圧縮性錠剤形成材料と共に圧縮する、又は栄養素カプレットに保護皮膜を適用するような技術を含んでいる。例えば、米国特許第4,182,778号;同第4,943,437号;同第5,008,118号;同第6,432,448B1号及び同第6,555,145B1号を参照すること。
【0006】
従来技術のコーティングは、通常、機械的圧縮、水分、及び保存状態に対する保護を対象としていた。しかし、これらの試みは、完全に満足できるものではなかった。例えば、そのようなコーティングは、過剰な加工温度から栄養素を保護することができなかった。更に、一旦コーティングされると、栄養素は、完全な生物学的利用能を提供するために摂取後の適切な時間にコーティング剤から放出されることがなかった。多くの従来の適用において、栄養素は、口腔又は胃で放出されて、早期の分解、栄養素と栄養素の相互作用、又は味覚の問題をもたらす。その他の適用において、栄養素は、腸の最大吸収点を超えて放出される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、摂取可能な基材、特にビタミン類のような栄養素を、加熱及び他の環境の影響から保護するコーティングを提供することが望ましい。また、栄養素が生物的に大いに利用される消化器系の一部で栄養素を放出する、そのようなコーティングの実施形態を提供することが望ましい。
【0008】
本発明のこの目的及びその他の目的は、以下の開示から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開発は、(a)ステロール及び(b)溶媒を含む摂取可能なコーティング剤を提供する。コーティング剤は、摂取可能な基材を、そうでなければ基材の分解をもたらす悪条件から保護するために使用できる。更に、コーティング剤は小腸の胆汁酸塩類で分解し、従ってビタミン類のような基材をそれらが生物的に大いに利用される消化器系のある点において吸収できるようにする。
【0010】
好ましくは、溶媒は共沸溶媒を含む。一つの実施形態において、共沸溶媒は、約8.2〜約9.2のヒルデブランド溶解度指数を有する。別の実施形態において、共沸溶媒は、約1.0〜約2.1のスナイダー極性指数を有する。
【0011】
特定の実施形態において、ステロールは、(a)スチグマステロール及び(b)約40℃〜約170℃の融点を有するステロールを含む。
【0012】
別の態様において、本発明は、摂取可能なコーティングと摂取可能な基材とを含むコーティングされた基材を提供する。一つの実施形態において、摂取可能なコーティングは、約100℃〜約170℃の耐熱性を有する。別の実施形態において、摂取可能なコーティングは、約0.1〜約10のpH耐性を有する。さらに別の実施形態において、摂取可能なコーティングは、約95%〜約100%酸化抵抗値を有する。そしてさらに別の実施形態において、摂取可能なコーティングは、約0%〜約1%の水溶性指数を有する。
【0013】
コーティング剤は、あらゆる好適な基材をコーティングするために使用できる。好適な基材には、ビタミン類、アミノ酸類、ミネラル類、植物化学物質、カロチノイド類、医薬品、塩類、栄養素、生理学的活性剤、及びこれらの混合物を挙げることができるが、それらに限定されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
A.定義
本明細書で使用する時、「共沸」は、乾燥の時点を通して本質的に一定に保たれる、蒸気−液体組成物を有する溶媒混合物を意味する。
【0015】
本明細書で使用する時、「ステロール」は、1つの又は2つ以上のステロールの組み合わせを意味する。本明細書で使用する時、用語「ステロール」には、ステロール類、スタノール類(ステロール類の環飽和誘導体)、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0016】
本明細書で使用する時、「溶媒」は、1つ又は2つ以上の溶媒の組み合わせを意味する。
【0017】
本明細書で使用する時、「食物」は、食品又は飲料品を意味する。
【0018】
これらの定義は、異なる意味が明白に指定されない限り、本明細書の全体を通して適用することが意図される。
【0019】
特に指定がない限り、百分率は全て重量に基づく。
【0020】
本明細書で引用される全ての文献は、その関連部分において参考として組み込まれ、あらゆる文献の引用は、それが本発明に対する従来技術であることを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0021】
B.コーティング剤構成成分
本発明は、(a)ステロール及び(b)溶媒を含む摂取可能なコーティング剤を提供する。一つの実施形態において、コーティング剤は、約0.001%〜約20%のステロール及び約80%〜約99.999%の溶媒、好ましくは約10%〜約20%のステロール及び約80%〜約90%の溶媒を含む。好ましくはステロールと溶媒の比率は、約5:95より大きく、より好ましくは約15:85よりも大きい。
【0022】
1.ステロール
コーティング剤はステロールを含む。ステロールは、単独又は混合物のいずれかで使用される、1つ以上のステロールであることができる。あらゆる好適なステロールが使用できる。好適なステロール類の例には、シトステロール、スチグマステロール、及びカンペステロールのような植物ステロール類が挙げられる。特定のステロール類が、望ましい最終特性及び用途に基づき、単独又は混合物での使用のために選択できる。例えば、ステロール類は、組成溶融点、結晶化、脆砕性、展性、及び凝集性に基づき選択できる。
【0023】
一つの実施形態において、ステロールは、少なくとも2つのステロール類の混合物を含む。好ましくは、混合物におけるステロールは、それぞれ約40℃〜約170℃の融点を有する。特定の実施形態において、混合物におけるステロールのうちの1つは、スチグマステロールである。
【0024】
別の実施形態において、スチグマステロール及び約150℃〜約170℃の融点を有する他のステロールのうちの少なくとも1つが使用される。この実施形態において、増強された耐熱性が望ましく、従って選択されたステロール類は、コーティングされる基材及び適用温度よりも高い融点を有する。一つの実施形態において、カンペステロール、シトステロール、又はこれらの混合物のような、ワックス状の質感を付与するステロールが使用される。
【0025】
2.溶媒
コーティング剤は、溶媒を含む。一つの実施形態において、好ましい溶媒は共沸溶媒である。共沸溶媒は、最大限のステロールの可溶化を提供し、結晶化の際にステロールの揮発が可能となるのに十分に高い蒸気圧を有する。蒸発が起きると、溶媒の共沸性が発揮され、これがコーティングプロセスの際にステロールを擬似可溶性状態に維持し、乾燥プロセスの際に結晶化の制御を可能にし、それによって優れた均一のコーティングがもたらされる。
【0026】
あらゆる好適な溶媒が使用できるが、好ましい溶媒は、約8.2〜約9.2のヒルデブランド溶解度指数及び約1.0〜約2.1のスナイダー極性指数を有する。更に溶媒は、好ましくは非塩素化されている。加えて溶媒は、好ましくは、単独及びステロールが添加されているものの両方において、単一相である。
【0027】
一つの実施形態において、溶媒は、70%のヘキサンと30%のエタノールの初期混合物を含み、それによって、後に続く乾燥の際にそれぞれ66.8:33.2の共沸モル比がもたらされる。別の実施形態において、初期溶媒は、8%の酢酸エチル及び92%のエタノールを含み、それによって、後に続く乾燥の際にそれぞれ54:46の共沸モル比がもたらされる。この特定の溶媒は約8.7のヒルデブランド溶解度指数及び約1.6のスナイダー極性指数を有する。
【0028】
3.任意成分
本発明のコーティング剤は、追加的に、これらには限定されないが、崩壊剤、着色剤、不透明剤(opaquants)、風味剤、又はこれらの組み合わせのような賦形剤のようなあらゆる好適な任意成分を含んでもよい。
【0029】
崩壊剤には、これらには限定されないが、クロスカルメロースナトリウム、デンプン、デンプン誘導体、粘土類、ゴム類、セルロース、セルロース誘導体、アルギン酸塩類、架橋ポリビニルピロリドン、グリコール酸ナトリウムデンプン、微結晶セルロース、炭酸カルシウム、又はペクチンのようなあらゆる好適な崩壊剤を挙げることができる。
【0030】
本明細書で記載されている好ましいコーティング剤は、通常、小腸の胆汁酸塩類に暴露されたときのみに溶解し、こうして消化管に基材が放出される。崩壊剤は、基材が例えば胃の中に早期に放出されることが望ましい場合に、コーティング剤に含まれることができる。従って、コーティングされた基材が胃に到着すると、崩壊剤は、コーティング剤を分解し、こうして基材を放出する。好ましくは、崩壊剤が添加される場合、これらはコーティング剤の約10%未満を構成する。一つの実施形態において、崩壊剤は、ステロール又は溶媒で湿潤又は可溶化されず、むしろこれらはコーティング剤中に懸濁剤として提供される。本発明の特定の実施形態において、炭酸カルシウムがコーティング剤に添加され、それは胃液又は胃酸の影響でステロールコーティングの破壊を引き起こす。これは、小腸へ入る前に基材の放出をもたらす。
【0031】
本明細書のコーティング剤は、コーティングされた基材の色を変更又は変えるために着色剤又は不透明剤を含んでもよい。これらに限定されないが、二酸化チタン、食用色素類、レーキ類、天然植物性着色剤、酸化鉄類、ケイ酸塩類、硫酸塩類、水酸化マグネシウム、及び水酸化アルミニウムのようなあらゆる適切な着色剤が使用されてもよい。好ましくは、着色剤が添加される場合、これらはコーティング剤の約0.01%未満を含む。
【0032】
本明細書で記載されているコーティング剤は、また、コーティングされた基材の香味に寄与するか又はそれを向上するために任意に風味剤を含むことができる。これらには、これには限定されないが噴霧乾燥香料のような天然及び合成、及びこれらの混合物の香料を挙げることができる。好ましくは、風味剤が添加される場合、これらはコーティング剤の約0.05%以下を含む。
【0033】
C.コーティング剤の作製方法
本発明は、また、コーティング剤を作製する好ましい方法に関する。この方法は、ステロール又はステロール混合物を溶媒と混合してコーティング剤を形成することを含む。
【0034】
ステロール及び溶媒は、ステロールを溶媒に溶解することにより組み合わされる。一つの実施形態において、コーティング剤は、約0.001%〜約20%のステロール及び約80%〜約99.999%の溶媒、好ましくは約10%〜約20%のステロール及び約80%〜約90%の溶媒を含む。一つの実施形態において、ステロールと溶媒の比率は、約5:95より大きく、好ましくは約15:85よりも大きい。
【0035】
約8.2〜約9.2のヒルデブランド溶解度指数及び約1.0〜約2.1のスナイダー極性指数の溶媒が使用されない場合、典型的には約3%のステロールしか溶解しない。しかし、約8.2〜約9.2のヒルデブランド溶解度指数及び約1.0〜約2.1のスナイダー極性指数を有する溶媒を使用すると、溶媒中でステロールの約15%〜約20%の最大溶解を達成する、ステロールのより大きな溶解を可能にする。コーティング剤として組み合わされたステロールと溶媒の混合物は、溶媒の沸騰温度より少し低い温度で加熱できる。この温度は、好ましくはコーティングプロセスの間維持され、追加的なステロールの可溶化をもたらす。
【0036】
D.コーティングされた摂取可能な基材
本発明は、また、コーティング剤の特に好ましい用途である、コーティングされた基材を対象とする。コーティングされた基材は、(a)コーティング剤及び(b)摂取可能な基材を含む。摂取可能な基材は、マトリックス中の固体又は液体のようなあらゆる好適な形態であることができる。従って、基材の大きさ及び形状は、使用される特定のコーティング方法にこれらが関係する場合でしか関連性がない。
【0037】
あらゆる好適な基材が本明細書で使用できる。例えば、好適な基材には、ビタミン類、アミノ酸類、ミネラル類、植物化学物質、カロチノイド類、医薬品、塩類、栄養素、生理学的活性剤、及びこれらの混合を挙げることができるが、それらに限定されない。
【0038】
基材にはあらゆる栄養素を挙げることができる。栄養素には、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB13、ビタミンB14、ビタミンB15、リポ酸、ニコチン酸、ニコチンアミド、パントテン酸、葉酸、p−アミノ安息香酸、ビオチン、コリン、イノシトール、ビタミンC、及びこれらの混合物;又は上記の栄養素のカルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、鉄、銅若しくは亜鉛塩誘導を挙げることができるが、それらに限定されない。基材には、また、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、又はビタミンKのような油溶性栄養素の水溶性誘導体、及び誘導体により水溶性になる他の栄養素、並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0039】
基材には、また、酵素類、アミノ酸類、ペプチド類、ポリペプチド類、ポリペプチドホルモン類、植物化学物質、カロチノイド類、ミネラル類、塩類、及びこれらの組み合わせを挙げることができるが、それらに限定されない。アミノ酸類には、α−アミノ酸類、β−アミノ酸類、他のアミノ酸類、ペプチド類、又はこれらの混合物を挙げることができるが、それらに限定されない。ポリペプチド類にはインスリンを挙げることができる。基材には、また、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、鉄、銅又は亜鉛塩、上記のアミノ酸類の塩酸塩(hydrochrolates)又は硝酸塩のような他の塩類、リン酸又は酢酸のエステル類のような誘導体、上記のアミノ酸類の2種以上で形成される塩類、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0040】
植物化学物質には、硫化アリル類、インドール類、グルコシノレート類、スルファホラファン(sulfaforaphane)、フタリド類、シリマリン、モノテルペン類(例えば、リモネン)、エラグ酸、フェノール類、フラボノイド類(例えば、ケルセチン、イソフラボン)、ポリアセチレン類、イソチオシアネート類、チオシアネート類、フィチン酸、サポニン類、グリチルリチン、カテキン類、チオール類、オマンノヘプトロース(omannoheptulose)、及びこれらの混合物を挙げることができるが、それらに限定されない。カロチノイド類には、リコピン、β−カロチン、シプトキサンチン(cyptoxanthin)、ゼアキサンチン、及びこれらの混合物を挙げることができるが、それらに限定されない。
【0041】
ミネラル類には、カルシウム、マグネシウム、マンガン、ホウ素、クロム、コバルト、銅、鉄、モリブデン、セレン、ケイ素、亜鉛、及びこれらの混合物を挙げることができるが、それらに限定されない。塩類には、フッ素、ヨウ素、塩素、又はこれらの混合物を含有するものを挙げることができるが、それらに限定されない。
【0042】
基材には、また、あらゆる好適な医薬品を挙げることができる。
【0043】
E.コーティングされた基材の作製方法
スプレー及びパンコーティングを含むあらゆる好適な方法が、コーティングされた基材を作製するために使用できる。コーティング剤で基材をコーティングする好ましい方法は、ラクソ・ウルスター(Lakso Wurster)(商標)流動床塗布機(Fluid Bed Coater)(本明細書では「ウルスター(Wurster)」と呼ぶ)を使用する。
【0044】
ウルスターを使用する好ましい方法において、コーティングされる基材は、約150μmを超える大きさである。フィードチューブ及びスプレーノズルが特定の用途のために調整される。次にウルスターに基材が装填される。空気流の流入が開始され、温度が約52℃(125°F)又は溶媒の沸点未満に設定される。次にウルスターが温められ、噴霧空気が約54℃(130°F)及び約138kPa(20psi)に設定される。ウルスターを通る流動化空気流量は、約20標準立方フィート毎分(SCFM)〜約40SCFM(約9.4L/秒〜約18.9L/秒)に制御される。次にコーティング剤が、ウルスター中のベース粒子に約12g/分(0.2g/秒)〜約18g/分(0.3g/秒)の流量で塗布される。このプロセスは、望ましい量のコーティング剤が塗布されるまで続けられる。塗布されるコーティングの濃度は、基材の多孔性及びコーティングされた基材の意図される用途に左右される。流出ガス温度が約43℃(110°F)を超えてあらゆる残留溶媒を蒸発させるまで、高温空気流が続けられる。次にコーティングされた基材がウルスターから取り出され、ふるいにかけられる。当業者は、所望のコーティングを達成するために、装置の変数及び設定(幾つかの例としては、流入/流出温度、空気流量、及びコーティング剤が塗布される速度)を操作できることが留意されるべきである。共沸溶媒の使用が、欠陥のない連続的且つ本質的に均一なコーティングを提供するのに役立つことを留意することが重要である。
【0045】
F.コーティングされた基材の特性
コーティングは、化学反応物質にバリヤーを提供することができ、そして食物配合物中の水と脂質の両方に抵抗性であることができる。この利益は、例えば、ビタミンのような特定の基材が添加物として望ましい食品において有用である。ビタミンをコーティングすることは、栄養価を失わせることなく食品を高温に付すことを可能にすることができる。加えてコーティング剤は、ビタミンが特定の条件に暴露されたときに不必要な溶解、水和、又は加水分解が起きないような水不透性を提供すること、及び酸素不安定性栄養素が酸素への暴露に耐えることができるような酸化抵抗性を提供することができる被覆を形成することができる。またコーティングは、油不溶性であることができ、従って、栄養素の酸化がより急速に進行する脂質相へ脂質可溶性栄養素が逃散するのを防ぐことができる。
【0046】
一つの実施形態において、コーティングは、約100℃〜約170℃の耐熱性を有する。別の実施形態において、コーティングは、約0.1〜約10のpH耐性を有する。さらに別の実施形態において、コーティングは、約95%〜約100%の酸化抵抗値を有する。そしてさらに別の実施形態において、コーティングは、約0%〜約1%の水溶性指数を有する。
【0047】
コーティング剤を使用する別の利点は、保護及び水相中の場合での配合構成成分の間の不必要な反応の抑制であることができる。本発明の一つの実施形態において、カルシウムは、歯牙侵食の治療用の直鎖ポリホスフェート(SHMP)を含有する飲料で使用されるためにコーティングされる。一般に、SHMPは、カルシウムイオンと結合する。従って、カルシウム−SHMP結合作用を抑制しないと、SHMPは、歯牙侵食抑制のために利用することができない。カルシウム供給源をコーティング剤でコーティングすることにより、そして小型の、すなわちナノ粒子として利用できるようにすることにより、カルシウム−SHMP結合作用を防ぐことができ、カルシウムを、飲料中で最小限の沈殿及び最小限の審美性の損失で懸濁することができる。
【0048】
別の実施形態において、β−カロチンがコーティングされ、通常はβ−カロチンが分解する加工条件に付されるペットフードで使用される。一旦コーティングされると、極めて揮発性のβ−カロチンは、水又は酸素と相互作用しない。また、コーティングされた基材の味覚は抑制され、それはコーティングがかなり展性であり、従って衝撃により分解しないからである。従って、β−カロチンの嫌な味及び色が閉じ込められる。
【0049】
G.分析方法
1.耐熱性
耐熱性は、当該技術分野において既知の可視融点(高温段階での光学顕微鏡分析)法を使用してコーティングの融点を評価することを伴う。試料は顕微鏡に載せられ、毎分10℃ずつ増加し、コーティングの溶融の開始は、基材上に液体がたまるか又は光沢あるつやが現れるのを見ることにより決定される。
【0050】
2.酸化抵抗性
酸化不安定性基材において、この一般的手法は、コーティングされた基材の酸化安定性を測定するために使用される。実際の分析方法はコーティングされた特定の基材に特有であるが、試験方法は下記を含む。コーティングの前に基材における酸化不安定活性物質の濃度をアッセイする。コーティングした後の活性基材の濃度を再測定し、同時に増加したコーティング量を明らかにする。注:コーティングの際に活性物質の損失が最小限になるように管理するべきである。コーティングされた基材における活性物質の濃度を確定する。コーティングされた基材を周囲温度及び空気に12か月間曝すことにより、コーティングされた基材の酸化抵抗性を決定する。コーティングされた基材における活性物質の濃度を再測定する。
【0051】
酸化抵抗値:
【0052】
【数1】

【0053】
3.pH耐性
このパラメータは、ASTM E70−97(2002)、「ガラス電極による水溶液でのpHの標準試験法(Standard Test Method for pH of Aqueous Solutions with the Glass Electrode)」に従って決定される。
【0054】
4.水溶性指数
水溶性指数(WSI)は、アンダーソン(Anderson)ら、1969年、ロール及びエクストルージョンクッキングによるコーングリットのゼラチン化(Gelatinization of Corn Grits by Roll and Extrusion Cooking)、現代シリアル科学(Cereal Sci. Today)14:4〜12の改変された方法を使用して測定される。2gの試料が25mLの水と混合され、遠心管に入れられる。試料混合物が水浴において30℃で30分間加熱され、次に渦式混合機を使用して5分間混合される。次に混合物は、314rad/秒(3,000RPM)で10分間遠心分離される。WSIは、下記の方程式を使用して決定される:
WSI%=(上澄み中の溶解した固体の重量/原試料中の乾燥試料固形分の重量)×100
【0055】
5.ヒルデブランド溶解度指数
このパラメータは、米国特許第5,120,369号で記載された方法に従って測定される。
【0056】
6.スナイダー極性指数
このパラメータは、「通常の液体の溶媒特性の分類(Classification of the Solvent Properties of Common Liquids)」、L.R.スナイダー(Snyder)、クロマトグラフィージャーナル(J. Chromatogr.)92,223(1974年);クロマトグラフィー科学ジャーナル(J. Chromatogr. Sci.)、16,223(1978年)に従って決定される。
【実施例】
【0057】
本発明は、次の非限定的な実施例により説明される。
【0058】
(実施例1)
ラクソ(Lakso)(商標)ウルスター(Wurster)流動床塗布機での10%β−カロチンビードレットのコーティング
18cm(7インチ)の上昇管が10mmの隙間で設置される。ベース材料を装填し、空気流を30SCFM(14.2L/秒)に設定し、流入温度を49℃(120°F)に上げる。15重量%のステロールを85重量%の溶媒に溶解し、この混合物(コーティング剤)を加熱し、コーティングの際に54℃(130°F)に維持する。この溶媒は、66.8%のヘキサンと33.2%のエタノールのモル混合物での乾燥の際に、共沸混合物を形成する。スプレーノズル及び組立部品は49℃(120°F)に予備加熱される。噴霧圧は、20/50/70ノズルを使用して138kPa(20psi)である。コーティング剤の流量は13g/分(0.22g/秒)である。塗布の間の流出温度は41℃(105°F)である。コーティングを全て塗布するプロセスを続ける。全てのコーティング剤が塗布された後に乾燥を続ける。流出温度が43℃(110°F)に上昇した時、流動空気への加熱を止める。流出温度が41℃(105°F)に下がるまで空気流を続ける。コーティングされた材料を取り出し、必要であればふるいにかけて微粉及び粒塊を取り除く。
【0059】
500gのβカロチン、BASF(登録商標)(微粉を取り除くためにふるいにかけた)(BASF社(BASF Corp.)、米国ニュージャージー州マウント・オリーブ(Mt. Olive))
500gのフィトステロール*混合物、ADM(登録商標)(ADM、米国イリノイ州ジケーター(Decatur))
870gのエタノール200プルーフ、アアペール(Aaper)(登録商標)(アアペール・アルコール(Aaper Alcohol)、米国ケンタッキー州シェルビービル(Shelbyville))
2030gのヘキサン、J.T.べーカー(J. T. Baker)(登録商標)(J.T.ベーカー化学社(J.T. Baker Chemical Co.)、米国ニュージャージー州フィリップスバーグ(Phillipsburg))
(*フィトステロール:融点140℃、ブラジカステロール3.2%、カンペステロール11.1%、スチグマステロール16.1%、B−シトステロール44.0%、シトスタノール2.1%、ワックス7.7%)
【0060】
(実施例2)
33.3%のスチグマステロール及び66.6%のシトステロールによるビタミン混合物(栄養素A、D、及びK)のコーティング
操作条件は全て実施例1と同じである。この実施例では、17%のステロール混合物が溶媒に溶解される。
【0061】
500gのビタミン混合物、BASF(登録商標)(BASF社(BASF Corp.)、米国ニュージャージー州マウント・オリーブ(Mt. Olive))
100gのシトステロール、シグマ(Sigma)(登録商標)(シグマ化学社(Sigma Chemical Co.)、米国ミズーリ州セントルイス(St. Louis))
50gのスチグマステロール、シグマ(Sigma)(登録商標)(シグマ化学社(Sigma Chemical Co.)、米国ミズーリ州セントルイス(St. Louis))
596gのヘキサン、J.T.べーカー(J. T. Baker)(登録商標)(J.T.ベーカー化学社(J.T. Baker Chemical Co.)、米国ニュージャージー州フィリップスバーグ(Phillipsburg))
261gのエタノール200プルーフ、アアペール(Aaper)(登録商標)(アアペール・アルコール(Aaper Alcohol)、米国ケンタッキー州シェルビービル(Shelbyville))

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング剤であって、
(a)ステロール;
(b)溶媒、
を含むコーティング剤。
【請求項2】
前記溶媒が共沸溶媒を含む、請求項1に記載のコーティング剤。
【請求項3】
前記共沸溶媒が、8.2〜9.2のヒルデブランド溶解度指数を有する、請求項2に記載のコーティング剤。
【請求項4】
前記共沸溶媒が、1.0〜2.1のスナイダー極性指数を有する、請求項3に記載のコーティング剤。
【請求項5】
前記共沸溶媒が、ヘキサン及びエタノールを含む、請求項4に記載のコーティング剤。
【請求項6】
前記共沸溶媒が、酢酸エチル及びエタノールを含む、請求項4に記載のコーティング剤。
【請求項7】
前記ステロールが、
(a)スチグマステロール;及び
(b)40℃〜170℃の融点を有するステロール、
を含む請求項1に記載のコーティング剤。
【請求項8】
前記ステロールが、
(a)スチグマステロール;及び
(b)40℃〜170℃の融点を有するステロール、
を含む請求項4に記載のコーティング剤。
【請求項9】
(a)0.05重量%〜20重量%のステロール、好ましくは10重量%〜15重量%のステロール;及び
(b)80重量%〜99.95重量%の溶媒、好ましくは85重量%〜90重量%の溶媒、
を含む請求項7に記載のコーティング剤。
【請求項10】
コーティングされた基材であって、
(a)請求項1〜9のいずれか一項に記載のコーティング剤;及び
(b)摂取可能な基材を含み、好ましくは前記摂取可能な基材が、ビタミン類、アミノ酸類、ミネラル類、植物化学物質、カロチノイド類、医薬品、塩類、栄養素、生理学的活性剤、及びこれらの混合物から成る群から選択される、
コーティングされた基材。
【請求項11】
前記コーティング剤が、
(1)100℃〜170℃の耐熱性と、
(2)好ましくは0.1〜10のpH耐性と、
(3)好ましくは95%〜100%の酸化抵抗値と、
(4)好ましくは0%〜1%の水溶性指数と、
を有する請求項1〜10のいずれか一項に記載のコーティングされた基材。
【請求項12】
コーティングされた基材であって、
(a)摂取可能なコーティングであり、前記摂取可能なコーティングが、
(1)100℃〜170℃の耐熱性と、
(2)好ましくは0.1〜10のpH耐性と、
(3)好ましくは95%〜100%の酸化抵抗値と、
(4)好ましくは0%〜1%の水溶性指数と、
を有する摂取可能なコーティング;及び
(b)摂取可能な基材、
を含むコーティングされた基材。

【公表番号】特表2007−530585(P2007−530585A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505206(P2007−505206)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/009946
【国際公開番号】WO2005/094610
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】