説明

ステロール処方物の製造方法

本発明は、良好な湿潤性を有するステロール処方物を製造するための湿式粉砕方法に関する。本発明の方法では、a)タンパク質、タンパク質含有助剤、炭水化物、セルロース誘導体、糖アルコール、果実濃縮物および野菜濃縮物からなる群から選択される添加剤を、水または水性懸濁液媒体に溶解または分散させ、b)この溶液/分散体に、少なくとも1mmの平均粒径を有するステロール粒子および/またはスタノール粒子を添加し、c)このようにして得られた分散液を、ローター/ステーター原理によって作動するミルで均質化および微粉砕し、d)場合により、次いで乾燥する。ただし、ステロール粒子および/またはスタノール粒子は、最大50μmのD90%を有する粒度分布で最終処方物中に存在する。本発明の方法によって製造されたステロール含有処方物は、その良好な湿潤性の故に、複雑な技術を用いなくても食品に配合でき、飲料および乳製品に使用する際、優れた官能特性および感覚特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品の分野にあり、容易に湿潤させることができる植物ステロールを含む処方物の製造方法、この方法にしたがって製造された調製物、さらにこれらの処方物を含む製品、特に食品に関する。
【背景技術】
【0002】
コレステロール降下剤として使用される、わずかに水溶性の植物ステロールや植物スタノールを、食品調製物または医薬品に配合することができる多数の可能な処方法が、応用技術から公知である。
【0003】
多数の特許出願に、主に微粉化により粒径を小さくすることによって、ステロールの有効性を改善できる方法が記載されている。たとえば、ドイツ出願公開番号DE 102 53 111 A1には、水の中に容易に再分散させることが可能な、0.01〜100μmの平均粒径を有する粉状の植物ステロール処方物が記載されている。好ましくは、保護コロイドとして親水性助剤を使用する。該粉末の製造には、生態学と許容性の点で不利な有機溶媒を使用する。国際公開公報WO2005/074717 A1もまた、タンパク質と炭水化物を含むマトリックスの中にステロールを埋め込むことによって、ある種の保護コロイドを使用している。しかし、処方物中の全ステロール含有量は、助剤の割合が大きいことが原因で少ない。
【0004】
ステロールの粒度分布が0.1〜30μmであるステロール分散体のさらなる製造方法は、国際公開公報WO03/105611およびWO2005/049037に見出すことができる。この方法においてそうであるように、ステロール粒子単独をやたら微粉化することは、良好な配合を実現するには不十分である。微分散粒子の生体利用効率は表面積を大きくすることによって改善し得るが、特に、微粉化された粒子は湿潤性が乏しく、容易に凝集してしまい、通常は水面に浮遊する。多くの場合、粉砕されたステロールは、激しい混合を必要とする特殊な方法を使用しないと飲料の中に分散させることができない。しかし、これらの装置は、通常、末端消費者、食品製造業者は入手することができない。
【0005】
したがって、多くの製造業者は、ステロールの微粉化を乳化剤の付加的な使用と組み合わせている。その一例は、選択された乳化剤との混合物中で最大15μmの粒径を持つステロールとステロールエステルを含有する、欧州特許EP 0897671 B1において特許請求された調製物である。ここでは、水相の中でのステロールに対する乳化剤の重量比は1:2未満である。
【0006】
国際特許出願公開公報WO03/086468 A1には、低いタンパク質含有量を有し、乳化剤としてモノグリセリドおよびジグリセリドを含有する、粉状のステロールエステル処方物が開示されている。たとえ、これらが優れた許容性を特徴とし、かなり以前から食品用の乳化剤としてすでに知られていたとしても、乳化剤の量を減らすか、あるいはさらには、これらを完全に除外する試みが行われる。なぜなら、乳化剤は、食品の中に存在する他の物質の生体利用効率にも影響を及ぼすか、あるいは、処方物の安定性に悪影響を与える可能性があるからである。
【0007】
可溶性と分散性を改善する他の方法(たとえば、エマルジョン、マイクロエマルジョン、分散体、懸濁液としての処方、または、シクロデキストリンまたは胆汁酸塩での錯化)が、国際特許出願公開公報WO99/63841 A1に示されている。提案されている支持体は、PEG、PVP、コポリマー、セルロースエーテルおよびセルロースエステルである。また、予め混合された形態で粉状ステロール用支持体として食品原料物質を直接使用することが、EP 1 003 388 B1に開示されている。非エステル化ステロールおよびスタノール用の支持物質としてのタンパク質の選択は、WO01/37681に開示されている。
【0008】
特に、それらのエステル化誘導体よりもはるかに疎水性が高い非エステル化ステロールおよびスタノールの処理は、その製造方法に厳しい要求を課す。加えて、粉砕された遊離ステロールには、これらが低い最小点火エネルギー(MIE<3mJ)を有するという欠点があり、したがってこれらの生成物は点火に対して極めて感度が高いものとして分類される。したがって、遊離ステロールを使用する場合には、相応の安全措置に留意しなければならない。
【0009】
ステロール含有微粒子の可能な製造方法は、欧州特許EP 1148793 B1に見出し得る。同方法は、高エネルギーでの均質化に基づく。しかし、水性懸濁液媒体をベースとして同方法により製造された粉末は適切ではない均質性を有しており、再分散可能であるとしても困難を伴う。多くのステロール含有粉末処方物の欠点は、保存中に遊離ステロールが凝集挙動を示すことである。保存中、特に該処方物を加圧下で保存するならば、著しい凝集または塊の形成が観察され、その後に処理できるようにするためには、抑制されなかった固体凝集物を再び粉砕しなければならない。
【0010】
国際特許出願公開公報WO2006/020980 A1には、ステロール粒子の凝集物が記載されている。その製造方法は、接着性顆粒の大きさを拡大する造粒法であり、微粉化されたステロール粒子を、結合剤が部分的にまたは完全に溶解された懸濁液媒体で湿潤させる。残される凝集物が150〜850μmの大きさとなるように、湿潤後、懸濁液媒体を除去する。この方法には装置の高度な使用が必要であり、得られる凝集物が所望される安定性を持つためには、極めて正確に制御されなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】ドイツ出願公開番号DE 102 53 111 A1
【特許文献2】国際公開公報WO2005/074717 A1
【特許文献3】国際公開公報WO03/105611
【特許文献4】国際公開公報WO2005/049037
【特許文献5】欧州特許EP 0897671 B1
【特許文献6】国際特許出願公開公報WO03/086468 A1
【特許文献7】国際特許出願公開公報WO99/63841 A1
【特許文献8】EP 1 003 388 B1
【特許文献9】WO01/37681
【特許文献10】欧州特許EP 1148793 B1
【特許文献11】国際特許出願公開公報WO2006/020980 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、簡単で迅速な方法を使用して製造でき、食品への非エステル化ステロールおよび/またはスタノールの良好で迅速な分散および配合を可能にし得るステロールおよび/またはスタノールを、高い含有量で含むステロール含有処方物を提供することである。該処方物は、食品において優れた感覚特性と官能特性を有するはずである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、易湿潤性ステロール処方物を製造するための湿式粉砕方法であって、
a)タンパク質、タンパク含有助剤、炭水化物、セルロース誘導体、糖アルコール、果実濃縮物および野菜濃縮物によって形成される群から選択される添加剤を、水または水性懸濁液媒体の中に溶解または分散させ、
b)この溶液/分散体に、少なくとも1mmの平均粒径を有するステロール粒子および/またはスタノール粒子を添加し、
c)得られた分散体を、ローター/ステーター原理によって作動するミル中で均質化および微粉砕し、
d)適切である場合には、次いで乾燥する、
ことを含み、ただし、ステロール粒子および/またはスタノール粒子は、最大50μmのD90%を有する粒度分布で最終処方物中に存在する、湿式粉砕方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の方法は、遊離非エステル化ステロールおよびスタノールを用いて粉末を製造することも可能にする。これにより、要求の高い装置を用いることなく、食品(特に、飲料)の中で、室温で、親油性の有効成分を容易にさらに処理することができるようになる。粉末は凝集傾向が低く、したがって、優れた流動性を有する。粉末は、優れた均質性を特徴とし、その改善された湿潤性によって、高度な技術的手段を用いずともさらに処理することができ、最終処方物の中での均一な分布も迅速に達成される。親水性添加剤でのステロール表面の被覆によって、官能特性と感覚特性は明らか改善される。被覆された粉末は歯および口腔粘膜に長く留まらず、したがって、有効成分を含む食品において相当な味の低下を招く不快なステロールの味が完全に抑えられる。
【0015】
タンパク質、タンパク含有助剤、炭水化物、糖アルコール、果実濃縮物および野菜濃縮物のような親水性添加剤を使用することによって、溶解特性および分散特性が改善されるばかりではなく、驚くべきことに、これらの粉末はまた、高い凝集傾向を有する純粋な粉砕ステロールと比較して高い保存安定性も示す。
【0016】
本発明の方法は、非エステル化ステロールおよびスタノールの処理において、有機溶媒の使用または処方物の加熱を回避することを可能にし、水性媒体であるにもかかわらず、特に、レシチン、モノグリセリド、ジグリセリド、ポリソルベート、ステアリル乳酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、乳酸エステルおよびポリグリセロールエステルのタイプの高い表面活性を有する乳化剤の削減を可能にする。親水化助剤、特に、カゼイン塩、粉乳、またはアラビアゴムの低い乳化特性は、製造される粉末の均質性、容易な再分散性および加工性を確保するには十分である。さらなる乳化剤の削減により、他の食品構成成分との起こり得る不適合性を低減することによってさらなる処理が簡単となり、消費者との不適合性の発生が減少する。
【0017】
本発明の方法の特定の利点は、1つの操作工程において粉砕と被覆を行うことである。ステロール粒子を砕くための湿式粉砕方法の使用により、粉末爆発の高いリスクが回避される。最初に使用されるステロールおよび/またはスタノールの粒径は、第1に粉末爆発を回避するために、そして第2に良好な取り扱い性を確保するために、比較的大きい。したがって、完成した顆粒(これは極めて高い保存安定性を有する)を使用することができる。好ましくは、平均粒径は1mmより大きい。この大きさでは、粒径の測定を従来のふるいによる分析によって行う。最終処方物の中のステロール粒子および/またはスタノール粒子は、湿式粉砕後、最大50μmのD90%、好ましくは最大40μmのD90%、そして特に好ましくは最大30μmのD90%を有する粒度分布で存在する。粒度分布は、ベックマン・コールター社製機器LS 230型を使用して測定し、体積分布として計算した。測定は水性懸濁液の中で行った。
【0018】
処理要件を低く保つためには、この粉砕度にいたる粉砕に必要な時間は、最長2時間、好ましくは最長1時間でなければならない。処理は通常、2〜3bar未満(43.5psi未満)で進行する。そして、ペースト状の塊から圧縮された塊を処理することもできる。
【0019】
この場合に使用されるミルは、ローター/ステーター原理に基づく。歯付きコロイドミルのみならず、Ultra-Turrax、コランダムミル、穴あきディスクミル、またはリングボールミル(ここでは、ボールがローターとハウジングの間の間隙に設置されている)も本発明の方法に適している。歯付きコロイドミルは、特に効果的であることが証明されている。粉砕に対する導入エネルギーは、第1に、粉砕材料を極端に加熱せずに十分に粉砕することを可能にし、第2に、粒子の低い帯電をもたらすべき大きさでなければならないという意見に基づき、これらのミルが特に適していることが証明されている。高性能ミルによって発揮される剪断力は、ステロールの粉砕についての欧州特許EP 1148793 B1から公知であるように、粒子の塊の形成を伴わない良好な保存安定性の要件を満たしていない。加えて、これらは親水化添加剤による均一な表面被覆には不向きであることが証明されている。
【0020】
したがって、本発明による製造設備の装置についての出費は極めて少ない。粉砕の際の粉砕材料の冷却は省略することができ、材料の熱応力は低い。加えて、粉塵爆発のリスクは、湿式粉砕の使用により極めて低いレベルまで低減される。
【0021】
本発明の湿式粉砕方法を使用することにより、上記の有利な特性を有するステロール含有量が極めて高い粉末を製造することが可能になる。この場合、有機溶媒の使用とステロール粒子の加熱は回避される。水性分散体は分散体の全重量に基づいて、少なくとも20wt%、好ましくは少なくとも30wt%、特に好ましくは少なくとも40wt%、特に少なくとも50wt%のステロールおよびスタノール濃度を有する。
【0022】
これらの分散体を乾燥することが好ましい。このためには、従来の乾燥方法、たとえば、真空乾燥または噴霧乾燥が適している。親水化のためだけに添加剤を使用し、ステロールの表面を添加剤で被覆するので、粉末の中のステロールの全含有量は極めて高い。乾燥後に得られる粉末は、実際には、乾燥粉末の重量に基づいて、少なくとも75wt%、特に好ましくは少なくとも85wt%、特に少なくとも90wt%のステロールおよび/またはスタノールを含有する。
【0023】
したがって、本発明の方法によって製造され得る少なくとも90%のステロール/スタノール含有量を有する粉末は、単にステロール含有量に基づけば、粉砕または微粉化されたステロール/スタノールと同等である。しかし、これらの粉砕または微粉化されたステロール/スタノールと比較すると、本発明の粉末は以下の利点を特徴とする:本発明の粉末は、より自由に浮遊し、高い剪断力を加えることなく水中に容易に分散され得る。したがって、さらなる処理を行う企業、たとえば乳製品製造業者は、食品に配合するために該企業で日常的に使用されている撹拌器を使用することができる。
【0024】
最大50μmの粒径の支持体の量(最大10%)は全ての粒子を被覆するには不十分であるので(たとえば、50μmの粒子(0.0079mm2/粒子の表面積)については、およそ63%の支持体が10μmの厚みの被膜を得るためには必要であり、30μmの粒子については、この量は支持体材料のおよそ78%にのぼる。)、本発明の方法によって製造される粉末の良好な水分散性は驚くに値する。
【0025】
加えて、本発明の粉末は、塊を形成することおよびケーキングすることなく保存され得る。粉砕されたステロールはケーキングする傾向が極めて強い。このことは、比較的長い保存期間後、使用前に強力な力を加えることによって砕かれなければならない塊が生じるという事実をもたらす。加えて、保存は、増大された最小発火エネルギーのおかげでより安全になる。粉砕されたステロールおよびスタノールの場合には、これは1mJ>MIE<3mJの極めて低い値を有する。
【0026】
本発明の調製物は、支持体が少量(10%)であってもなお、著しく安全である:3mJ>MIE<10mJ。
【0027】
最終処方物のステロール含有量は、使用される親水性添加剤の量に依存する。添加剤とステロール/スタノール画分の重量比は1:3〜1:20が有利であり、好ましくは1:9〜1:15、特に好ましくは1:14〜1:16である。
【0028】
また、分散体と比較して、粉末には、第1に有効成分の含有率が非常に高いこと、保存安定性が明らかに改善されること、そして、特に水性媒体の場合には、微生物学的安定性が顕著に高まるといった利点がある。
【0029】
支持体の画分が低いので、最終的な配合表のごくわずかな変化および効果が期待される。これは、多量のマトリックスが原因で媒体/マトリックス(油、牛乳、脂肪クリーム)が有意な効果を有さない、分散体とは対照的である。
【0030】
本発明の方法によって製造されるステロール含有処方物は、食品、特に、牛乳、乳飲料、ホエー飲料、ヨーグルト飲料、マーガリン、果汁、果汁混合物、果汁飲料、野菜ジュース、炭酸飲料および非炭酸飲料、豆乳飲料、またはタンパク質を多く含む液体の食品代替飲料、ならびに、醗酵乳調製物、ヨーグルト、ヨーグルト飲料またはチーズ調製物に簡単な方法で配合できるが、医薬品にも簡単な方法で配合できる。
【0031】
使用される添加剤が果実濃縮物または野菜濃縮物である場合には、2つの変法が可能である。1つの変法においては、果実濃縮物または野菜濃縮物(あるいは、果実ピューレまたは野菜ピューレまたは果物の果肉または野菜の果肉)を、懸濁液媒体の中に予め分散させ、したがって、希釈することができる(工程a)。もう1つの変法においては、果実濃縮物または野菜濃縮物をステロールおよび/またはスタノールのための懸濁液媒体として直接使用することができ、結果として、ステロールおよび/またはスタノールだけを濃縮物に加え、得られる分散体をローター/ステーターミルの中で砕き、均質化することができる。この場合、工程a)に列挙されたさらなる添加剤は必要ない。
【0032】
得られる処方物は、ステロールおよび/またはスタノールの高い含有量を有する。これらは通常、降伏点を有する。したがって、これらは固体であるが、剪断によって再び液化させることが可能であり、その結果、これらは、最終的な食品処方物の中で簡単な手段によって直接さらに処理することができる。
【0033】
したがって、本発明はさらに、濃縮物に基づいて、少なくとも1wt%、好ましくは少なくとも5wt%、そして特に好ましくは少なくとも15wt%のステロールおよび/またはスタノールを含む、果実濃縮物および野菜濃縮物に関する。これらの濃縮物は、さらなる処理に有利である粘稠度を有するためには、最大85wt%、好ましくは最大75wt%、そして特に好ましくは最大65wt%の水含有量を有する。その中に存在するステロール粒子および/またはスタノール粒子は、最大50μmのD90%、好ましくは最大40μmのD90%、特に好ましくは最大30μmのD90%を有する粒度分布を有する。
【0034】
本発明はさらに、上記組成のステロール/スタノール処方物を含む食品調製物に関する。該調製物は、好ましくは、飲料および乳製品に使用される。この場合、食品の全重量に基づいて、0.1〜50wt%、好ましくは1〜20wt%の粉状の被覆調製物が含まれる。
【0035】
ステロールおよび/またはスタノール
本発明では、植物ステロールおよび植物スタノールと称される、植物および植物原料から得られたステロールを使用する。公知の例は、エルゴステロール、ブラシカステロール、カンペステロール、アベナステロール、デスモステロール、クリオナステロール、スチグマステロール、ポリフェラステロール、カリノステロール、シトステロールおよびそれらの混合物である。これらの中でも、β−シトステロールおよびカンペステロールを使用することが好ましい。同様に、スタノールと称される水素化された飽和形態のステロールが使用される化合物であり、ここでは、β−シトスタノールおよびカンペスタノールも好ましい。植物原料源としては、とりわけ、大豆、キャノーラ、パーム核、とうもろこし、ココナツ、セイヨウアブラナ、サトウキビ、ひまわり、オリーブ、綿、大豆、ピーナッツの種子および油、またはトールオイル製品に由来する製品が役立つ。
【0036】
タンパク含有助剤および/またはタンパク質
使用されるタンパク含有助剤およびタンパク質は、好ましくは、粉乳および/またはホエー粉末および/またはカゼインおよび/またはカゼイン塩である。商業的に入手可能な全乳および乾燥によってそれぞれの牛乳の品質グレードから得られるスキムミルク粉末のような粉乳が特に適している。これらは、他のタンパク質との混合物として、または単独の支持体として使用することができる。他のタンパク質を添加するか、またはタンパク質を支持体としての粉乳の代わりに使用する場合には、これらには、天然の動物源および植物源から得られた単離タンパク質が含まれ、粉状調製物の製造中に添加される。タンパク質の可能な供給源は、コムギ、大豆、ハウチワマメ、トウモロコシのような植物であるか、あるいは、卵または牛乳のような動物起源の供給源である。
【0037】
スキムミルク粉末は、本発明において特に好ましい。なぜなら、これは十分な親水化特性を有しており、したがって、飲料および乳製品(特に、ヨーグルトのような発酵製品)の製造に別の方法で通例使用されている、冒頭に記載されたような食品乳化剤の欠点を同時に示すこともないからである。加えて、スキムミルク粉末は、典型的な不快なステロールの味を最もうまく隠し、この添加剤を含む処方物は、他の助剤と比較して官能特性が改善されている。
【0038】
炭水化物
炭水化物として使用される化合物には、食品として適している全ての多糖類および単糖類、たとえば、グルコース、スクロース、フルクトース、トレハロース、マルトース、マルトデキストリン、シクロデキストリン、転化糖、パラチノース、ラクトース、グアーガム、キサンタン、ペクチン、デンプン、デンプン誘導体および化工デンプン、アルギン酸塩、カラギーナン、小麦グルテンおよびアラビアゴムが含まれる。好ましくは、アラビアゴム、グアーガムのようなガラクトマンナン、キサンタン、デンプンおよびデンプン誘導体ならびに化工デンプン(OSAデンプン)が炭水化物として使用され、特に好ましいものはアラビアゴムである。
【0039】
他の助剤
他の助剤として、本発明の調製物は、抗酸化剤、保存剤および流れ改良剤を含有することができる。可能な抗酸化剤または保存剤の例は、トコフェロール、レシチン、アスコルビン酸、パラベン、ブチル化ヒドロキシトルエンまたはブチル化ヒドロキシアニソール、ソルビン酸または安息香酸、ならびにそれらの塩である。好ましくは、トコフェロールを抗酸化剤として使用する。
【0040】
流れ調整剤および流れ改良剤としては、二酸化ケイ素を使用することができる。
【0041】
粉末の全重量に基づいて。ただし、これらは、レシチン、モノグリセリド、ジグリセリド、ポリソルベート、ステアリル乳酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、乳酸エステルおよびポリグリセロールエステルによって形成される群より選択される高い表面活性を有する乳化剤は含有しない。
【実施例1】
【0042】
2400gの脱イオン水をFrymaミル(Fryma(ラインフェルデン在)、MZ 80R型、ギャップ幅:240μm)のホッパーに導入し、その中に、120gのスキムミルク粉末(噴霧乾燥されたスキムミルク粉末ADPIグレード、供給業者:Almil(ハートホンブルク在))を分散させ、分散体を4Uで循環させながら均質化した。1800gのステロール混合物(トールオイル/セイヨウアブラナステロール70/30、顆粒約2mm)を添加した。ギャップをゆっくりと閉じ(最小設定)、混合物を30分間循環させながら均質化した。この場合、温度は24℃から53℃に上昇した。
【0043】
得られた分散体の一部を、60°/1mbarで真空乾燥した。その後、真空乾燥された粉末の粒度分布をレーザー回折法によって測定した(ベックマン・コールター、LS 320型)。これにより、25μmのD90%を得た。
【0044】
別の一部を噴霧乾燥した(APV Anhydro型3 S噴霧乾燥システム(二流体ノズル:3mm、Anhydro)、入口温度:185℃、出口温度:90℃、圧力:2bar)。
【実施例2】
【0045】
2700gの脱イオン水をFrymaミル(Fryma(ラインフェルデン在)、MZ 80R型、ギャップ幅:240μm)のホッパーに導入し、その中に、138gのアラビアゴム(全固形分94%)を分散させ、分散体を4Uで循環させながら均質化した。2000gのステロール混合物(トールオイル/セイヨウアブラナステロール70/30、顆粒約2mm)を添加した。ギャップをゆっくりと閉じ(最小設定)、混合物を30分間循環させながら均質化した。
【0046】
得られた分散体の一部を、60°/1mbarで真空乾燥し、別の一部を噴霧乾燥した(APV Anhydro型3 S噴霧乾燥システム)。
【0047】
その後、真空乾燥された粉末の粒度分布をレーザー回折法によって測定した(ベックマン・コールター、LS 320型)。これにより、24μmのD90%を得た。
【実施例3】
【0048】
被覆とその後の噴霧乾燥を伴ったステロールの湿式粉砕:
3055gの水を、室温で、歯付きコロイドミル(Fryma/MZ 80R型)のホッパーに入れた。ギャップを開放(位置0.9)して、ミルを始動させ、195gのスキムミルク粉末を添加し、循環させながら懸濁および溶解した。1750gの植物ステロール(トールオイル/セイヨウアブラナステロール70/30、顆粒1〜2mm)をゆっくりと添加し、その中で混合した。
【0049】
ミルのギャップを徐々に閉じた(最終:位置0.0)。最終位置で、粉砕をさらに30分間、循環させながら続けた(循環ポンプ処理量:5L/分/最終温度 48℃)。得られた揺変性の均質な分散体を、その後噴霧乾燥した(APV Anhydro型3 S噴霧乾燥システム)。
【実施例4】
【0050】
果実の果肉中のステロールの湿式粉砕:
3440gのマンゴーピューレ(Doehler、水分含有量70%)を、室温で、歯付きコロイドミル(Fryma/MZ 80R型)のホッパーに入れた。ギャップを開放(位置0.9)して、ミルを始動させ、マンゴーピューレを循環させながら通過/粉砕した。640gの植物ステロール(トールオイル/セイヨウアブラナステロール70/30、顆粒1〜2mm)をゆっくりと添加し、その中で混合した。ミルのギャップを徐々に閉じた(最終:位置0.0)。最終位置で、粉砕をさらに30分間、循環させながら続けた(循環ポンプ処理量:3L/分/最終温度47℃)。
【0051】
これにより、非常に細かく砕かれたステロール画分を有する均質な果実ペーストが生じた。生成物は降伏点を有していたが、震盪すると再び液体になった。したがって、果実ペーストは濁った果汁/果実飲料に配合するのに非常に適している。ステロール画分は、従来のステロール粉末の疎水性特性を損なうことなく、この方法で問題なく導入することができる。極めて細かく砕かれたステロール粒子は果汁の中で視覚的に知覚されることはない(クリーム状にならない/色の差は生じない)。果汁中の湿式粉砕ステロール粒子の食感は、求められているとおりの自然なものである。
【0052】
分散試験
得られた粉末を、同等の粒度分布の粉砕ステロールと比較するため、牛乳と水の中に分散させた。このために、試験用のおよそ250mlの液体をガラス製のビーカーに入れ、撹拌した(およそ100rpm)。撹拌した液体に、2.5gのそれぞれの粉末を添加し、分散挙動を評価した。
【0053】
被覆したステロールは、低温の水(15℃)にも高温の水(60℃)にも、そしてまた牛乳(18℃)にも、極めて容易に分散させることができたが、未処理のステロールは、ほとんど分散せず、その疎水性表面が原因で液体表面に残留した。
【0054】
官能評価によって、水中のカプセル化されたステロールは、自然な味を有しており、歯茎および口腔に長く留まらないが、未処理の粉末は、口腔粘膜に取り残され、通常は好ましからぬステロールの味に加えて、不愉快な感覚を残すことが明らかになった。
【0055】
得られた粉末は、従来の細かく砕かれたステロールと比較して、改善された自由浮遊挙動、改善された水への撹拌性(stirrability)、そして高いかさ重量(bulk weight)を特徴とする。乾燥された生成物は、90%を超えるステロール含有量を有する。実施例1においては、乾燥粉末のステロール含有量は93%である。粉末は、水、ジュース、牛乳などのような水性系に単純に撹拌することによって導入可能である。
【0056】
分散体は降伏点を有しており、容易に撹拌可能であり、そして、冷却水、ジュース、牛乳などのような水性系に簡単に添加することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
易湿潤性ステロール処方物を製造するための湿式粉砕方法であって、
a)タンパク質、タンパク含有助剤、炭水化物、セルロース誘導体、糖アルコール、果実濃縮物および野菜濃縮物によって形成される群から選択される添加剤を、水または水性懸濁液媒体の中に溶解または分散させ、
b)この溶液/分散体に、少なくとも1mmの平均粒径を有するステロール粒子および/またはスタノール粒子を添加し、
c)得られた分散体を、ローター/ステーター原理によって作動するミル中で均質化および微粉砕し、
d)適切である場合には、次いで乾燥する、
ことを含み、ただし、ステロール粒子および/またはスタノール粒子は、最大50μmのD90%を有する粒度分布で最終処方物中に存在する、湿式粉砕方法。
【請求項2】
タンパク質またはタンパク含有助剤が、粉乳および/またはホエー粉末および/またはカゼインおよび/またはカゼイン塩から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の易湿潤性ステロール処方物を製造するための湿式粉砕方法。
【請求項3】
添加剤として、炭水化物が、グルコース、スクロース、フルクトース、トレハロース、マルトース、マルトデキストリン、シクロデキストリン、転化糖、パラチノース、ラクトース、グアーガム、キサンタン、ペクチン、デンプン、デンプン誘導体、化工デンプン、アルギン酸塩、カラギーナン、小麦グルテンおよびアラビアゴムによって形成される群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の易湿潤性ステロール処方物を製造するための湿式粉砕方法。
【請求項4】
添加剤としてアラビアゴムまたはスキムミルク粉末を使用することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の易湿潤性ステロール処方物を製造するための湿式粉砕方法。
【請求項5】
前記ステロール粒子および/またはスタノール粒子が、最大50μmのD90%を有する粒度分布で最終処方物中に存在することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の被覆ステロール粉末の製造方法。
【請求項6】
工程c)で使用されるミルが歯付きコロイドミルであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の易湿潤性ステロール処方物を製造するための湿式粉砕方法。
【請求項7】
添加剤とステロール/スタノール画分の重量比が1:3〜1:20であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の易湿潤性ステロール処方物を製造するための湿式粉砕方法。
【請求項8】
水性懸濁液媒体として果実濃縮物または野菜濃縮物を直接使用し、工程a)に列挙された別の添加剤はいずれも添加しないことを特徴とする、請求項1に記載の方法と同様の、易湿潤性ステロール処方物を製造するための湿式粉砕方法。
【請求項9】
少なくとも1wt%のステロールおよび/またはスタノールを含む、果実濃縮物または野菜濃縮物。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の方法によって得られる、ステロールおよび/またはスタノール含有分散体。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれかに記載の方法によって得られる、ステロールおよび/またはスタノール含有粉末処方物。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれかに記載のステロール調製物を0.1〜50wt%含む食品。

【公表番号】特表2010−511391(P2010−511391A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539637(P2009−539637)
【出願日】平成19年11月24日(2007.11.24)
【国際出願番号】PCT/EP2007/010229
【国際公開番号】WO2008/067923
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(505066718)コグニス・アイピー・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (191)
【氏名又は名称原語表記】Cognis IP Management GmbH
【Fターム(参考)】