説明

ステロール誘導体、並びにそれらの合成及び使用

構造式I又はIIを有するステロール誘導体が開示される(該式において、Rは本発明の記載の通りに定義される)。それらの合成法及び抗腫瘍使用も開示される。特に、RがOである式Iの化合物(すなわち、化合物CL168-6)は、抗腫瘍治療指数が49.3である。本化合物は、免疫学的疾患、及び、肝臓癌や肺癌などの癌の予防及び治療用薬剤の調製のために使用できる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学及び生物学分野における製剤化合物、特に、一般構造式I及びIIを有する抗腫瘍剤CL168、並びにそれらの合成方法と使用に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍は、ヒトの健康にとって有害な主要疾患の一つであり、各種疾患の死亡率において第2位に来る。多数の臨床的慣行から、化学的治療及び放射線治療は、腫瘍細胞を殺戮する際に同時に、正常細胞に対しても大きな傷害作用を及ぼすことが実証されている。これらの治療は、ヒトの造血細胞系及び免疫機能に重大な損傷を与えるので、容易に患者の死につながる。腫瘍細胞は全て血管系に依存するので、血管形成は、腫瘍の成長及び転移において重要なステップとなる。一次腫瘍及び二次腫瘍のいずれにおいても、その成長直径が2 mmを超えると血管形成が起こり、すると腫瘍は急速に成長し、転移が起こる(非特許文献1)。
【0003】
現在、腫瘍を治療する薬剤は、主に三つのタイプに分類できると考えられる、すなわち、細胞毒性薬剤、放射線治療と化学治療の補助剤、及び血管形成阻害剤である。当今、血管形成阻害剤は、きわめて有望な抗腫瘍剤の一型である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Folkman J. what is the evidence that tumors are angiogenesis department?(「腫瘍が血管形成区画であるという証拠は何か」) J Natl Cancer Inst. 1990, 82:4-6.
【非特許文献2】Ribatti D, Vacca A, et al. The chick embryo chorioallantoic membrane as a model for in vivo research on anti-angiogenesis.(「抗血管形成に関するインビボ研究用モデルとしてのニワトリ胚の漿尿膜」)Curr Pharm Biotechnol. 2000 Jul;1(1):73-82.
【非特許文献3】Gretten TF,Korangy F, et al. Molecular therapy for the treatment of hepatocellular carcinoma.(「肝細胞癌治療のための分子療法」)Br J Cancer. 2009 Jan 13;100(1):19-23.
【発明の概要】
【0005】
CL168と名付けられた、本発明の化合物は、新しい構造骨格、明瞭な活性、及び特異的な抗腫瘍標的を有する、化合物群の1タイプであって、数百の天然産物の構造的修飾体の中から、CAMモデル(非特許文献2)及びVEGF(非特許文献3)から成る選択基準に基づいて選ばれた化合物である。薬理学実験から、これらの化合物は、著明な抗腫瘍作用を有する(なかでもCL168-9は抗腫瘍治療指数が49.3である)こと、及び、肝臓癌、肺癌などの癌、及び免疫学的疾患の予防及び治療用薬剤の調製に使用できること、が示されている。
【0006】
本発明の目的の一つは、一般式Iによって示されるCL168、及びそれらの中間産物調製用の合成経路を提供することである。
【0007】
本発明の第2目的は、一般式IIによって示されるCL168、及びそれらの中間産物調製用の合成経路を提供することである。
【0008】
本発明の第3目的は、抗腫瘍及び免疫改善研究における、一般式I及びIIのCL168及びそれらの中間産物の応用を提供することである。
【化1】

【化2】

【0009】
本発明の目的は、下記の手順によって実現することが可能である。
一般構造式Iによって表される化合物CL168は、下記の工程:
(1) 有機溶媒にコレステロール(化合物2)を溶解し、ある温度において触媒の支援下に、該コレステロールを無水酢酸と反応させることによってコレステリルアセテート(化合物3)を生成すること;
(2) 有機溶媒に化合物3を溶解し、ある温度において触媒の支援下に、化合物3を臭化物試薬と反応させることによって7-ブロモコレステン-3-オルアセテート(化合物4)を生成すること;
(3) 有機溶媒に化合物4を溶解し、ある温度において塩基による除去反応によって7-デヒドロコレステン-3-オルアセテート(化合物5)を生成すること;
(4) 有機溶媒に化合物5を溶解し、ある温度において塩基によって化合物5を加水分解することによって7-デヒドロコレステロール(化合物6)を生成すること;
(5) 有機溶媒に化合物6を溶解し、ある温度において酸化剤によって化合物6を酸化することによって5α,8α-環状2酸素-6-コレステン-3-オル(化合物7)を生成すること;
(6) 有機溶媒に化合物7を溶解し、ある温度において酸化剤によって化合物7を酸化することによって5α,8α-環状2酸素-6-コレステン-3-オン(化合物1、すなわち、CL168-6)を生成すること、
を含む方法によって調製することが可能である。
【0010】
前述の工程(1)〜(6)における反応式は下記の通りである:
【化3】

【0011】
上式において、工程(1)では、有機溶媒は、それぞれ2-20炭素を含む下記の化合物:エーテル、アルコール、アルカン、芳香族炭化水素、ケトン、ハロゲン化アルキル、アミド、ニトリル、エステル、又は、各種混合比を有する、それらの混合物、から成る群から選ばれ;温度は-20℃から250℃であり;触媒は、硫酸などのプロトン酸、又は、ピリジンなどの有機塩基であり;無水酢酸に対する化合物2のモル比は1:1-20である。
【0012】
上式において、工程(2)では、有機溶媒は、それぞれ1-20炭素を含む下記の化合物:芳香族炭化水素、アルカン、エーテル、ケトン、ハロゲン化アルキル、アミド、ニトリル、エステル、又は、各種混合比を有する、それらの混合物、から成る群から選ばれ;温度は-10℃から150℃であり;臭化物試薬は、ブロモスクシンイミド(NBS)、臭化水素、又は臭化アセチルであり;触媒は、トリフェニルフォスフィン、又は、290 - 800 nmの波長を有する光源であり;臭化物試薬に対する化合物3のモル比は1:1-10である。
【0013】
上式において、工程(3)では、有機溶媒は、それぞれ1-20炭素を含む下記の化合物:芳香族炭化水素、アルカン、エーテル、ケトン、ハロゲン化アルキル、アミド、ニトリル、エステル、又は、各種混合比を有する、それらの混合物、から成る群から選ばれ;温度は0℃から150℃であり;触媒は、ピリジン又はトリエチルアミンなどの有機塩基であり;有機塩基に対する化合物4のモル比は1:1-10である。
【0014】
上式において、工程(4)では、有機溶媒は、それぞれ2-20炭素を含む下記の化合物:エーテル、アルコール、アルカン、芳香族炭化水素、ケトン、ハロゲン化アルキル、アミド、ニトリル、エステル、又は、各種混合比を有する、それらの混合物、から成る群から選ばれ;温度は0℃から150℃であり;触媒は、硫酸を代表とするプロトン酸、又は、水酸化ナトリウムを代表とするプロトン塩基である。
【0015】
上式において、工程(5)では、有機溶媒は、それぞれ1-20炭素を含む下記の化合物:芳香族炭化水素、アルカン、エーテル、ケトン、ハロゲン化アルキル、アミド、ニトリル、エステル、又は、各種混合比を有する、それらの混合物、から成る群から選ばれ;温度は0℃から150℃であり;触媒は、エオジンY、トリフェニルフォスフィン、又は、290 - 800 nmの波長を有する光源である。
【0016】
上式において、工程(6)では、有機溶媒は、それぞれ1-20炭素を含む下記の化合物:芳香族炭化水素、アルカン、エーテル、ケトン、ハロゲン化アルキル、アミド、ニトリル、エステル、又は、各種混合比を有する、それらの混合物、から成る群から選ばれ;温度は-20℃から100℃であり;硫酸又はクロム酸液が酸化剤の代表である。
【0017】
一般構造式IIによって表される化合物CL168は、下記の工程:
(1) 有機溶媒にコレステロール(化合物2)を溶解し、ある温度において触媒の支援下に、該コレステロールをR-供与試薬(Rは、C2-25アルキル基、アリール基、電子供与基若しくは電子求引基によって置換されるアリール基、C3-6アルキニル基、アルケニル基、C3-9シクロアルキル基、C3-9置換ヘテロシクロアルキル基、C1-20脂肪アシル基、芳香族アシル基、スルフォニル、シナモイル、カフェオイル、ガロイル、フェルロイル、ベンゾイル、L-脂肪族アミノアシル、又は、L-芳香族アミノアシルを表す)と反応させることによって化合物3を生成すること;
(2) 有機溶媒に化合物3を溶解し、ある温度において触媒の支援下に、化合物3を臭化物試薬と反応させることによって化合物4を生成すること;
(3) 有機溶媒に化合物4を溶解し、ある温度において塩基による除去反応によって化合物5を生成すること;
(4) 有機溶媒に化合物5を溶解し、ある温度において酸化剤によって化合物5を酸化することによって化合物6を生成すること;
を含む方法によって、調製することが可能である。
【0018】
前述の工程(1)〜(4)における反応式は下記の通りである:
【化4】

【0019】
上式において、工程(1)では、有機溶媒は、それぞれ2-20炭素を含む下記の化合物:エーテル、アルコール、アルカン、芳香族炭化水素、ケトン、ハロゲン化アルキル、アミド、ニトリル、エステル、又は、各種混合比を有する、それらの混合物、から成る群から選ばれ;温度は-20℃から250℃であり;触媒は、硫酸などのプロトン酸、又は、ピリジンなどの有機塩基であり;無水酢酸に対する化合物2のモル比は1:1-20であり;
【0020】
上式において、工程(2)では、有機溶媒は、それぞれ1-20炭素を含む下記の化合物:芳香族炭化水素、アルカン、エーテル、ケトン、ハロゲン化アルキル、アミド、ニトリル、エステル、又は、各種混合比を有する、それらの混合物、から成る群から選ばれ;温度は-10℃から150℃であり;臭化物試薬は、ブロモスクシンイミド(NBS)、臭化水素、又は臭化アセチルであり;触媒は、トリフェニルフォスフィン、又は、290 - 800 nmの波長を有する光源であり;臭化物試薬に対する化合物3のモル比は1:1-10であり;
【0021】
上式において、工程(3)では、有機溶媒は、それぞれ1-20炭素を含む下記の化合物:芳香族炭化水素、アルカン、エーテル、ケトン、ハロゲン化アルキル、アミド、ニトリル、エステル、又は、各種混合比を有する、それらの混合物、から成る群から選ばれ;温度は0℃から150℃であり;触媒は、ピリジン及びトリエチルアミンなどの有機塩基であり;該有機塩基に対する化合物4のモル比は1:1-10であり;
【0022】
上式において、工程(4)では、有機溶媒は、それぞれ1-20炭素を含む下記の化合物:芳香族炭化水素、アルカン、エーテル、ケトン、ハロゲン化アルキル、アミド、ニトリル、エステル、又は、各種混合比を有する、それらの混合物、から成る群から選ばれ;温度は0℃から150℃であり;触媒は、エオジンY、トリフェニルフォスフィン、又は、290 - 800 nmの波長を有する光源である。
【0023】
上記のようにして得られたCL168-6(5α,8α-環状2酸素-6-コレステン-3-オン)は、インビトロにおいて、ヒトのヘパトーム細胞HepG2及びヒトの肺癌細胞A549の増殖に対し著明な抑制作用を有する。
【0024】
上記のようにして得られたCL168-6(5α,8α-環状2酸素-6-コレステン-3-オン)は、腫瘍の血管形成に対し著明な抑制活性を有する。
【0025】
上記のようにして得られたCL168-6(5α,8α-環状2酸素-6-コレステン-3-オン)は、腫瘍保持マウスの生存時間を延長し、該マウスの脾臓指数S180を増す。
【0026】
上記のようにして得られたCL168-6(5α,8α-環状2酸素-6-コレステン-3-オン)は、インビボにおいて低い毒性を示し、マウスのLD50は1479 mg/kgである。
【0027】
上記のようにして得られたCL168-6(5α,8α-環状2酸素-6-コレステン-3-オン)は、経口、注入、及び外部投与の剤形に調製することが可能であり、腫瘍の予防及び治療のために使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】CAM血管に対するCL168-6の作用を示す。
【図2】マウスの生存曲線を示す。
【図3】各種用量群のマウス腫瘍を示す。
【図4】マウスの眼球血液注のVEGFの検出結果を示す。
【図5】カスパーゼ3、8、9の24時間の検出結果を示す。
【図6】カスパーゼ3、8、9の48時間の検出結果を示す。
【図7】タンパク標準曲線を示す。
【図8】p53の発現レベルを示す(n=3)。
【図9】bcl-2の発現レベル(n=3)を示す。
【図10】VEGFの発現レベルを示す(n=3)。
【図11】P21の発現レベルを示す(n=3)。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明のいくつかの実施例を、限定的にではなく例示の為に以下に記述する。
【0030】
〔調製例1 コレステリルアセテート(化合物3)の合成〕
コレステロール(11.58 g, 30.00 mmol)、トルエン(60 ml)、無水酢酸(5.67 ml, 60.00 mmol)、及びピリジン(1 ml, 12.41 mmol)を、100 mlの反応フラスコに入れ、マグネチックスターラーにより攪拌し、114℃に加熱し、環流して原材料が残らなくなるまで反応させた。この反応液を冷却し、2倍量の塩酸液(0.10%)で2回洗浄し、2倍量の飽和塩化ナトリウム液で2回洗浄し、2倍量の蒸留水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムによって乾燥し、次いで、減圧蒸留によってトルエンを回収したところ、最終的に白色固体(12.84 g)が得られた。収率は100.0%であり、この化合物3の水素及び炭素NMRスペクトルは下記の通りである。
1HNMR(500MHZ,CDCl3 ):0.68(s,3H,H-1 8),0.86(d,3H,J=2HZ,H-26),0.87(d,3H,J=2HZ,H-27),0.9 1 (d,3H,J=4.4HZ,H-2 1 ), 1 .02(s,3H,H- 1 9),2.03(s,3H,H-2’),2.32(dd,2H,H-4),4.60(m, 1 H,H-3),5.39(t,1H,H-6);
13CNMR(500MHZ,CDCl3 ):36.6(C-1),3 1 .9(C-2),74.0(C-3),39.7(C-4),140.0(C-5),122.7(C-6),28.2(C-7),3 1 .8(C-8),50.0(C-9),38. 1 (C-10),21 .0(C-1 1),37.0(C-12),42.3(C-13),56. 1(C-14) ,24.3(C-1 5),27.8(C-16),56.7(C-17),1 1 .9(C-1 8),19.3(C-19),35.8(C-20),1 8.7(C-21),36.2(C-22), 23.8(C-23),39.5(C-24),28.0(C-25),22.6(C-26),22.8(C-27),170.6(C-1 '), 21 .5(C-2').
【0031】
〔調製例2 7-デヒドロコレステン-3-オルアセテート(化合物5)の合成〕
コレステリルアセテート(4.28 g, 10.00 mmol)、四塩化炭素(30 ml)、及びNBS(1.78 g, 10.00 mmol)を、50 mlの反応フラスコに入れ、蛍光に暴露し、74℃で環流し、原材料が残らなくなるまで反応させた。この反応液を冷却し、空気ポンプろ過を課し、少量の四塩化炭素で洗浄し、減圧蒸留によって四塩化炭素を回収したところ、最終的に橙黄色の油状液体が得られた。
この橙黄色油状液体をトルエン(50 ml)及び2,6-ジメチルピリジン(5 ml)に加え、100 mlの反応フラスコに入れ、マグネチックスターラーにより攪拌し、114℃に加熱し、環流して原材料が残らなくなるまで反応させた。この反応液を冷却し、2倍量の塩酸液(0.10%)で2回洗浄し、2倍量の飽和塩化ナトリウム液で2回洗浄し、2倍量の蒸留水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムによって乾燥し、次いで、減圧蒸留によってトルエンを回収し、無水エチルアルコールに溶解し、結晶化を繰り返したところ、3.54 gの白色固体が85.5%の収率で得られた。化合物5の水素及び炭素NMRスペクトルは下記の通りである。
1HNMR(500MHZ,CDCl3): 0.62(s,3H,H-18), 0.87(d,3H,J=2HZ,H-26), 0.87(d,3H,J=2HZ,H-27), 0.94(d,3H,J=4.4HZ,H-21), 0.99(s,3H,H-19), 2.04(s,3H,H-2’),2.38(m,1H,H-4a),2.50(m,1H,H-4b) 4.70(m, 1 H,H-3),5.39(d, 1 H,J=2HZ ,H-7),5.59(d, 1 H,J=2HZ ,H-6)
13CNMR(500MHZ,CDCl3):36.6(C-1), 28.1(C-2), 72.8(C-3), 37.9(C-4), 141.6(C-5), 120.2(C-6), 116.2(C-7), 138.5(C-8),46.0(C-9),39.5(C-10), 21.5(C-1 1), 37.1(C-12), 42.9(C-1 3), 55.4(C- 14),23.9(C-15),28.1(C-16),55.8(C-17),11.8(C-18),18.4(C-19),36.2(C-20),16.2(C-21),36.1(C- 22), 23.0(C-23), 39.1 (C-24), 28.1 (C-25),22.6(C-26),22.8(C-27), 170.6(C-1 '), 21.0(C-2').
【0032】
〔調製例3 7-デヒドロコレステロール(化合物6)の合成〕
7-デヒドロコレステン-3-オルアセテート(化合物5)(2.07 g, 5 mmol)、エタノール(50 ml)、及び水酸化ナトリウム液(10%, 50 ml)を、250 mlの反応フラスコに入れ、原材料が残らなくなるまで80℃で反応させた。この反応液に減圧蒸留によって残留エタノールを回収し、1倍量の酢酸エチルで1回抽出し、蒸留水で中性となるまで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。酢酸エチルの回収後、得られた固体を、エタノールによって繰り返し結晶化したところ、1.85 gの5,7-ジエンコレステロールが96.4%の収率で得られた。化合物6の水素NMRスペクトルは下記の通りである。
1HNMR(500MHZ,CDCl3 ):0.62(s,3H,H-1 8),0.86(d,3H,J=2HZ,H-26), 0.88(d,3H,J=2HZ, H-27),0.94(s,3H,H-19), 1 .22(d,3H,J=1 2HZ, H-21 ) ,2.33(dd, 1 H,H-4a),2.49(dd, 1 H,H-4b),3 .66( m, 1H,H-3),4.03(m, 1H,3-OH), 5.39(m,1 H,H-7),5.68(dd,1 H, H-6).
【0033】
〔調製例4 5α,8α-環状2酸素-6-コレステン-3-オル(化合物7)の合成〕
5α,8α-ジエンコレステロール(1.15 g, 約3 mmol)、エオジンY(200 mg, 約0.31 mmol、アルコールに溶解)、及び無水エタノール(100 ml, 10.00 mmol)を、250 mlの反応フラスコに入れた。空気を反応液中に通気した後、後者を蛍光に暴露して原材料が残らなくなるまで反応させ、ある一定量が達成されるまで無水エタノールを蒸留により回収し、放置して結晶化させたところ、0.94 gの5α,8α-環状2酸素-6-コレステン-3-オルが75.3%の収率で得られた。
1HNMR(500MHZ,CDCl3 ): 0. 80(s,3H,H- 1 8),0. 85(d,3H,J=2HZ,H-26),0.88 (d,3H,J=2HZ, H-27),0.88(s,3H,H-19),0.91(d,3H,J=12HZ,H-21),3.97(m,1H,H-3), 6.23(d,1H,J=7HZ,H-7), 6.51 (d, 1 H,J=7HZ,H-6);
13CNMR(500MHZ,CDCl3):36.0(C-1),28.3(C-2),66.5(C-3),39.4(C-4),82.2(C-5), 135.4(C-6),130.8(C-7),79.5(C-8),51.1(C-9),35.2(C-10),20.6(C-11),34.7(C-12), 44.8(C-13), 52.0(C-14), 23.4(C-15),30.1(C-16),56.4(C-17),12.7(C-18),18.2(C-19),36.9(C-20),19.0(C-21), 36.9(C-22), 23.8(C-23),37.0(C-24),28.0(C-25),22.6(C-26),22.8(C-27).
【0034】
〔調製例5 5α,8α-環状2酸素-6-コレステン-3-オン(化合物1、CL168-6)の合成〕
5α,8α-環状2酸素-6-コレステン-3-オル(化合物7)(0.62 g, 約1.5 mmol)を、100 mlの反応フラスコ注でアセトン(50 ml)に溶解し、氷水浴下にクロム酸液をゆっくりと滴下し、原材料が残らなくなるまで反応させた。この反応液を、氷水混合物(600 ml)に注ぎ入れ、攪拌し、一晩放置し、次いで空気ポンプでろ過した。ろ過ケーキをエタノールによって繰り返し結晶化したところ、0.62 gの5α,8α-環状2酸素-6-コレステン-3-オンが96.1%の収率で得られた。
1HNMR(500MHZ,CDCl3 ): 0. 85(s,3H,H- 1 9),0. 88(d,3H,J=2HZ,H-26),0. 89 (d,3H,J=2HZ, H-27),0.92(d,3H,J=6.5HZ,H-2 1 ), 1.07(s,3H,H- 1 8), 3.97(m, 1 H,H-3), 6.29(d, 1 H,J=8.5HZ,H-7), 6.59(d, 1 H,J=8.5HZ,H-6);
13CNMR(500MHZ,CDCl3 ):36.7(C-1),35.3(C-2),207.0(C-3),43 .6(C-4),83.4(C-5),134.2 (C-6), 131.6(C-7),80.0(C-8),5 1 . 1(C-9),39.4(C-10),20.5(C-1 1),37.3(C-12),44.9(C-1 3), 51.4 (C-14),23.8(C-15),28.2(C-16),56.4(C-17),12.8(C-18),18.5(C-19),35.2(C-20),17.5(C-21),35.9(C-2 2),23.5(C-23),39.3(C-24),28.0(C-25),22.5(C-26),22.8(C-27).
【0035】
〔結果実施例1 ヒトのヘパトーム細胞HepG2、ヒトの肺癌細胞A549、及びヒト不死化線維芽細胞NIH3T3の増殖に対するCL168-6の作用の、MTTアッセイによる評価〕
1.材料
1.1 腫瘍株
ヒトのヘパトーム細胞HepG2及びヒトの肺癌細胞A549は、生存性を獲得するようPLA感染病施設(PLA Institute of Infectious Disease)によって培養されたものであり、一方、ヒト不死化線維芽細胞NIH3T3は、軍事医科学院(Academy of Military Medical Sciences)から購入した。
1.2 実験薬剤
CL168-6(我々自身によって調製されたものである)は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって評価したところ98%以上の純度を有しており、従って、実験要件を満たしていた。あらかじめ密封し、4℃で保存しておいた前記CL168-6の粉末を、ジメチルスルフォキシド(DMSO)に溶解し、1 ml/mgの保存液を取得し、後の使用に備えた。
【0036】
2.方法
2.1 細胞培養
ヒトのヘパトーム細胞HepG2、及びヒトの肺癌細胞A549及びNIH3T3細胞を回収し、培養フラスコにおいて継代培養した。細胞が対数相に成長したならば、実験の開始が可能である。この細胞を、高圧ろ過トリプシンで消化して細胞含有懸濁液を調製し、0.4%トリパンブルーによって3分間染色し、次いで、血球カウンターによってカウントした(生存細胞は着色しないが、死亡細胞は青色に染まる)。トリパンブルー排斥によって評価される生存細胞のパーセントは、全て、最大98%を超えていた。
2.2 細胞増殖の抑制に関する実験
対数相にある3種類の細胞を、1×104/ml (200 μL/ウェル)の密度で96ウェルプレートに撒き、次いで、5% CO2培養ボックス中で37℃で24時間培養した。培養液は吸引・廃棄した。種々の濃度(4%仔牛血清添加DMEM培養液による調製の最終濃度は、それぞれ、10 μg, 5 μg, 2.5 μg, 及び0 μg/mLである)のCL168-6 200 ulを加えた。その際、各濃度について、6個の平行ウェルを用意した。24時間及び48時間の培養後、それぞれ、100 ulの上清を注意深く吸引・廃棄した。MTS(20 μl/ウェル)を加え、均等に混ぜ合わせた。この混合物を、5% CO2培養ボックス中で37℃で1時間培養した。492 nmにおける吸光度を、定量的酵素免疫測定法(ELISA)によって定量した。実験は3回繰り返した。成長抑制率は下記のようにして計算した。
成長抑制率(%)=[(対照群の平均OD値−治療群の平均OD値)/対照群の平均OD値]×100%
【0037】
3.結果
CL168-6は、インビトロで培養されるヒトのヘパトーム細胞HepG2及びヒトの肺癌細胞A549の増殖に対し、用量依存性を示す、著明な抑制作用を有する。関連結果を表1−1に掲げる。HepG2細胞とA549細胞について、2.5 μg/mlの濃度の本薬剤によって24時間治療されると、抑制率はそれぞれ、52.85%及び48.69%であった。抑制率は、薬剤濃度の上昇につれて増す;薬剤濃度が10 μg/mlの場合、上記の2種類の細胞に対する抑制率は、それぞれ、最大64.39%及び62.40%であり;48時間後で、用量が2.5 μg/mlの場合には、HepG2及びA549細胞に対する抑制率は、それぞれ、59.83%及び51.91%であり;濃度が10 μg/mlの場合には、HepG2及びA549細胞に対する抑制率は、それぞれ、73.67%及び69.67%であった。NIH3T3細胞の状況と比べると、HepG2及びA549に対するCL168-6の抑制は、異なる濃度及び治療時間を有する群間において有意差(p < 0.05)を示す。この実験結果は、細胞に対するCL168-6の抑制作用が優れた選択性を有し、且つ、その作用が、薬剤濃度及び投薬時間と正の相関を有することを示す。
〔表1−1〕 3種類の細胞株の増殖に対するCL168-6の抑制作用

【0038】
4.結論
CL168-6は、ヒトのヘパトーム細胞HepG2及びヒトの肺癌細胞A549の増殖を有意に抑制することが可能である。
【0039】
〔結果実施例2 腫瘍血管形成に対するCL168-6の作用の、CAMアッセイによる評価〕
1.材料
1.1 動物
German Roman有精卵(各重量50-60 g、Embryo Experimental Center of China Agricultural Universityから購入)。
1.2 実験薬剤
CL168-6(我々自身によって調製されたものである)は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって評価したところ98%以上の純度を有しており、従って、実験要件を満たしていた。前記CL168-6の粉末は、密封し、4℃で保存した。
スラミンは、SIGMA社から購入した。
【0040】
2.方法
2.1 評価対象サンプルの調製方法
あらかじめホールパンチャーによって直径5 mmのディスク状に成形した滅菌ゼラチンスポンジを、サンプル担体として使用した。CL168-6を70%エタノールに溶解し、2 mg/5 ml濃度の溶液を調製した。三つの用量群を用意した。すなわち、上記溶液の5 μl(2 μg/胚の投与容量を有する低用量群)、10 μl(4 μg/胚の投与容量を有する中用量群)、及び20 μl(8 μg/胚の投与容量を有する高用量群)を、それぞれ、定量的液体輸送機によってゼラチンスポンジスライスに輸送させた用量群を用意した。これらのスポンジスライスは、滅菌環境下に乾燥した。
2.2 胚のインキュベーション及び胚性卵の気室除去のためのプロセス
滅菌卵を、その気室を上方に向けて37℃孵卵器の中に納めた。7日目、この胚をスーパークリーンベンチに納め、エタノールで滅菌し、次いで、歯科用ドリルを用いて該胚の頂上に小孔を形成した。該孔の周囲の卵殻及び卵膜を丁寧に取り除き、約1.2 cm × 1.2 cmの開口を形成する。サンプル添加部位の決定後、気室と黄身の間の分離位置において、気室膜を注射針によって注意深く穿刺した。この穿刺孔を通じて、1-2滴の滅菌水を注入し、これによって、気室膜及びCAM膜は分離され、気室膜の上層をピンセットでそっと取り除くと、下層のCAM膜が暴露された。
2.3 サンプル添加プロセス
薬剤含有担体を、CAM膜と卵黄嚢膜との接合区域において、血管が比較的少ない部位に置き、次いで、透明な滅菌接着テープによって密封して72時間インキュベーションを続けた。
2.4 血管測定
上記インキュベーション後、気室頂上に留めてあった透明な接着テープをピンセットでそっと剥がし;メタノール/アセトン(1:1, 1-2 ml)混合液を静かに加え;室温を10分間定常に維持した。次いで、CAM膜を注意深く剥がし、ガラススライド上に載せ、観察・写真撮影した。血管形成に対する化合物の作用は、担体によって照射された大、中、小血管の数をカウントすることによって評価した。
2.5 統計処理
データは全て、SPSS 11.0ソフトウェアパッケージによって統計学的に分析した。計数データの比較は、χ2検定によって証明した。P < 0.05であったので、全て統計的に有意であった。
【0041】
3.結果
図1は、CAM血管に対するCL168-6とブランクコントロールの作用を示す。
CL168-6の三つの用量群の微少血管の数を、それぞれ、ブランク群のものと比較した;3群全てにおいて有意差が見られ、用量依存性が示された。結果を表2−1に掲げる。表は、化合物が、血管形成に対してある程度の抑制作用を有することを示す。
〔表2−1〕 血管分析[X(血管数)±S]に基づくCAM血管に対するCL168-6の作用を示す統計表

【0042】
4.結論
CL168-6は、腫瘍の血管形成に対し有意な抑制作用を有し、この作用は薬剤の量に依存する。
【0043】
〔結果実施例3 腫瘍保持腹水マウスS180とH22に対するCL168-6の抗腫瘍作用〕
1.材料
1.1 動物及び腫瘍株
健康な雌性Balb/Cマウス(各重量18-22 g)は、軍事医科学院のExperimental Animal Center(確認番号SCXK-(Military)2007-004)から購入した。マウスのヘパトーム細胞H22は、生存性を獲得するよう我々の研究室によって培養されたものであり;マウス肉腫細胞S180は、中国医学施設、302病院(Institute of Chinese Medicine of 302 Hospital)によって提供されたものであり;腫瘍保持腹水マウスS180、H22は7日に1回継代培養した。
1.2 実験薬剤
CL168-6(我々自身によって調製されたものである)は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって評価したところ98%以上の純度を有しており、従って、実験要件を満たしていた。前記CL168-6の粉末は、密封し、4℃で保存した。
注射用シクロフォスファミド:Shanxi Pude Pharmaceutical Co., Ltd.によって製造されたもの。
【0044】
2.プロセス
2.1 動物モデルの確立
あらかじめ7日間接種を行った腹水マウスS180及びH22を頚部切断によって屠殺し、それぞれから、腹水を滅菌条件下に得た。得られた腹水は、培養液RPMI1640によって2回洗浄し、滅菌生理的食塩水において2×107 /ml懸濁液に調製した。細胞S180の懸濁液は、40匹のマウスの右腋下に皮下接種し(1匹当たり0.1 ml)、固体腫瘍モデルを作製し;一方、細胞H22の懸濁液は、滅菌条件下に条件付け手段によって40匹のマウスの腹腔内に接種し(1匹当たり0.2 ml)腹水腫瘍モデルを作製した。
2.2 実験群
90匹のマウスを、3種類9群にランダムに分割した。第1種の群は正常なコントロール群であり、第2種の群は、陽性(シクロフォスファミド)コントロール群、陰性コントロール群、低用量群、及び高用量群を含む、S180固体腫瘍群であり、第3種の群は、陽性(シクロフォスファミド)コントロール群、陰性コントロール群、低用量群、及び高用量群を含む、H22腹水群である。各群には10匹のマウスがいた。実験は3回繰り返した。
2.3 薬剤投与
CL168-6はコーン油中の懸濁液として調製した。低用量群には16 mg/kgの用量を注入し、高用量群には32 mg/kgの用量を注入し、陰性コントロール群には同じ容量のコーン油を注入し、陽性コントロール群にはシクロフォスファミド注射液を0.02 g/(Kg.d)の用量で注入した。使用した注入容量は、1匹のマウス当たり0.1 mlであり、注入は、1日置きに15日間腹腔内注入として行った。この15日間、マウスの全体的活動、毛並み、糞などを毎日観察した。最終投与の24時間後、S180を皮下接種したマウスは頚部切断によって屠殺し、該マウスから腫瘍、胸腺、及び脾臓を取り出した。最終投与後、H22を腹腔に接種したマウスは、毎日、従来通り連続飼育し、計量し、生存時間を観察し、それを、陰性群の全てのマウスが死ぬまで行った。
2.4 マウスの生存延長率の計算
腹水接種の24時間後、腹水モデル群のマウスの体重及び腹囲量を測定した。薬剤投与及び養育は、種々の群に従って続行され、体重及び腹囲は連日測定され、それを死亡の1日前まで行った。体重増加(g)及び腹囲増加(cm)を計算した。実験は、腫瘍接種当日に開始し、陰性コントロール群の全マウスが死亡した日に終了させた。死亡時間を記録し、生存延長率を計算した。
生存延長率(%)=[(治療群の平均生存日−陰性コントロール群の平均生存日)/コントロール群の平均生存日]×100%
2.5 脾臓指数及び肝臓指数の計算
固体腫瘍群の全マウスにおいて投与を完了した後、マウスを屠殺し、その脾臓及び肝臓を電子天秤によって計量した。脾臓指数は、各群のマウスの脾臓重量(mg)をマウスの体重で割った商と等価であり、一方、肝臓指数は、マウスの肝臓重量(100 g)をマウスの体重(g)で割った商と等価である。
2.6 腫瘍抑制率の計算
薬剤投与停止の翌日、固体腫瘍陰性コントロール群のマウスは、計量し、頚部切断によって屠殺し、その際、眼球瀉血によって血清を収集しその後の実験における使用に備えた。腫瘍組織を摘出し、電子天秤によって計量した。腫瘍抑制率は下記に従って計算した。
腫瘍抑制率(%)=[(陰性コントロール群の平均腫瘍重量−治療群の平均腫瘍重量)/コントロール群の平均腫瘍重量]×100%
2.7 統計処理
データは全て、SPSS 11.0ソフトウェアパッケージによって統計学的に分析した。計数データの比較は、χ2検定によって確認した。P < 0.05であったので、全て統計的に有意であった。
【0045】
3.実験結果
3.1 諸群におけるマウスの体重、腹囲、及び生存時間の変化
表3−1に示すように、CL168-6低及び高用量群のマウスは、陰性コントロール群よりも長い生存時間を有しており、関連する生存延長率は、それぞれ、37.11%及び51.55%であった。治療群のマウスの腹囲の増加は、陰性群よりも小さく、これらの治療マウスの正常な成長は、前記増加による悪影響を受けなかった。シクロフォスファミド注入群のマウスの体重の増加は緩慢で、僅かに3.42 gの増加であるが、一方、正常群のマウスの体重増加は6.72 gであった。図2は、H22腹水マウスの生存時間に関する統計的チャートを示す。
〔表3−1〕 諸群のマウスの体重、腹囲、及び生存時間に及ぼすCL168-6の作用(x±s)

【0046】
3.2 諸群におけるマウスの肝臓指数及び脾臓指数の変化
表3−2に示すように、シクロフォスファミド群の腹水マウスの肝臓指数及び脾臓指数は、それぞれ、陰性コントロール群のマウスのものよりも低く、従ってそれらは統計的に有意であった。一方、CL168-6の低用量及び高用量群の指数は全て、陰性コントロール群のものよりも大きかった。
〔表3−2〕 腹水マウスの肝臓指数及び脾臓指数に対するCL168-6の作用(x±s)

【0047】
3.3 インビボにおけるCL168-6の抗癌活性
CL168-6は、S180肉腫マウスの体重増加に対して何の効果も及ぼさなかった一方、陽性コントロール群マウスの体重増加はほんの僅かであった。低及び高用量群の腫瘍保持S180肉腫マウスの腫瘍抑制率は、それぞれ、44.33%及び54.58%であり、陰性コントロール群と比較すると、高用量群は統計的に有意であった。結果を表3−3に示す。図3に、全群のマウスの腫瘍実体を示す。
〔表3−3〕 マウスのS180肉腫に対するCL168-6の抑制作用(x±s)

【0048】
3.4 諸群におけるマウスの肝臓及び脾臓指数の変化
表3−4に示すように、シクロフォスファミド群のS180マウスの肝臓指数及び脾臓指数は、それぞれ、陰性群のものよりも低く、従ってそれらは統計的に有意であった。一方、CL168-6の低及び高用量群のマウスの脾臓指数は、陰性群のマウスのものよりも高く、両者の間には有意差があった。しかしながら、関連肝臓指数の間には有意差は無かった。
〔表3−4〕 S180マウスの脾臓指数及び肝臓指数に対するCL168-6の作用(x±s)

【0049】
4.結論
4.1 CL168-6は、S180マウス肉腫の成長を有意に抑制することが可能である。
4.2 CL168-6は、腫瘍保持マウスの脾臓指数を有意に改善することが可能である。
4.3 CL168-6は、腫瘍保持マウスの生存時間を延長することが可能である。
4.4 CL168-6は、H22マウスに発生する腹水を消失させる又はその発生を遅らせることが可能である。
【0050】
〔結果実施例4 CL168-6の抗腫瘍機構に関する研究〕
腫瘍細胞のアポトーシス機構を研究すること、腫瘍細胞の信号伝達経路を選択的に阻止すること、及び、腫瘍細胞の自律的増殖調節機構を破壊することは、従来から腫瘍治療研究における活発なテーマとなっている。P53、Bcl-2、P21、VEGFは、腫瘍細胞の成長又はアポトーシスにおいてその発現を左右する重要な分子である。本実験は、CL168-6の抗腫瘍機構を分子レベルで調べた。
【0051】
I. 実験材料(詳細については、結果実施例1及び3を参照されたい)
II. 実験プロセス
1. マウス眼球血清におけるVEGFの検出(詳細については、結果実施例1及び3を参照されたい)
上記4群、すなわち、陰性コントロール群、陽性CTXコントロール群、高用量群(32 mg/kg)、及び低用量群(16 mg/kg)において、腫瘍の摘出前に、マウスの眼球瀉血によって血液を収集した。
1.1 試薬、サンプル、及び標準を調製する;
1.2 調製サンプル及び標準を加え、37℃で90分反応させる;
1.3 プレートを2回洗浄し、ビオチニル化抗体作業液を加え、37℃で60分反応させる;
1.4 プレートを3回洗浄し、ABC作業液を加え、37℃で30分反応させる;
1.5 プレートを5回洗浄し、TMBカラー液を加え、暗黒中37℃で15分反応させる;
1.6 TMB停止液を加え、450 nmにおいてOD値を測定する;
【0052】
2.カスパーゼ3、8、9活性の定量
2.0 μg/mlのCL168-6を、HepG2細胞に対し24時間及び48時間作用させた。
2.1 サンプルの収集
2.1.1 HepG2細胞は、細胞培養液中でトリプシンによって消化した。得られた混合物(600 g)を4℃で5分遠心し細胞を収集した。上清を注意深く吸引除去した。残留物を、分解産物に添加した(100 μl/2×106 細胞)PBSで1回洗浄し、次に、この沈殿物を再懸濁した後、15分間氷冷した。
2.1.2 得られた混合物(16000 g)は、4℃で15分遠心した。
2.1.3 上清を、氷浴にて予冷した遠心管に移した。
2.2 カスパーゼ3活性の検出
2.2.1 pNA及び適量のAc-DEVD-PNA(2 mM)を取り出し、それらを氷浴に移しその後の使用に備えた。
2.2.2 反応系は下記の通りであった。

2.2.3 37℃で120分インキュベートし、A405によってカスパーゼ3を検出する;
2.2.4 カスパーゼ8、9を検出するために、Ac-IETD-PNA (2 mM)及びAc-LEHD-PNA (2 mM)をそれぞれ加える;
【0053】
3.腫瘍細胞のVEGF、P53、P21、Bcl-2活性を検出する(β-アクチンを内部参照とする)
タンパク電気泳動(ウェスタンブロット)法を使用する。
3.1 全細胞タンパクの抽出
先に摘出してあった大豆大の腫瘍組織を細切し、予冷しておいた組織粉砕器に入れた。400 μlの組織分解液を加えた。10分間丁寧に粉砕した後、混合物を、1.5 mlの遠心管に移し、次いで、該管を15秒間激しくボルテックス攪拌した後、混合物を10分間氷上に置き、繰り返し振動させた。20分の遠心(12000 rpm)後、上清を収集し、予冷したエッペンドルフ管に移し、次いで、別々に容器に納め、-80℃で凍結保存し、各種抗体の活性レベルの検出に備えた。
【0054】
3.2 タンパク定量:BCAタンパクアッセイによる
3.2.1 標準シリーズの調製(表4−1)
キット中の標準をその仕様に従って連続希釈し、2000 μg/ml, 1500 μg/ml, 1000 μg/ml, 750 μg/ml, 500 μg/ml, 250 μg/ml, 125 μg/ml, 及び25 μg/mlの濃度を有する標準液を調製した。
〔表4−1〕 標準液の調製

【0055】
3.2.2 作業液の調製
溶液A及び溶液B(50:1)を混合してその後の使用に備えた。
3.2.3 検出対象サンプルは20倍希釈に希釈した。10 μlのサンプル及び10 μlの標準を、それぞれ、96ウェルELISAプレートの三つのウェルに加えた。200 μlの作業液を加え混ぜ合わせた。この混合物を37℃で30分反応させた。
3.2.4 ELISAプレートを取り出し、室温に冷却し、562 nmにおいて吸光度値を測定した。標準に従って標準曲線を引き、測定されるサンプルのタンパク含量は、この標準曲線を用いて計算した。
【0056】
3.3 タンパク電気泳動
3.3.1 タンパクサンプルの調製
適量の各サンプルを、4タンパクサンプルバッファー及び1タンパクサンプルバッファーに加え、それぞれ、容量300 μl、濃度3.7 μg/mlとなるように混ぜ合わせ、熱水中で3〜5分加熱して変性させ、短時間高速で遠心し、次いで-20℃で保存してその後の使用に備えた。
3.3.2 12%分離ゲル及び4%重層ゲルの調製及びゲルの注入:表4−2を参照されたい。
〔表4−2〕 分離ゲル及び重層ゲルの調製

【0057】
分離ゲル及び重層ゲルの調製時、ゲルの固化が早くなりすぎないよう、ゲルの注入前にTEMEDを加える必要がある。先ず、分離ゲルをガラスの中間層の中に注入し;次いで、ゲルの上面を、平坦なゲル表面を維持するよう蒸留水でシールする。次に、分離ゲルが硬化し、蒸留水が吸い出された後、混合物を蒸留水で数回洗浄し、重合化されないアクリルアミドを取り除く。最後に、再び蒸留水が吸い出された後、サンプル添加コームを、その前端が分離ゲルより0.5 cm離れるように挿入する。
3.3.3 サンプル添加
ゲルが室温で硬化した後、電気泳動バッファーを電気泳動タンクに注入し;サンプル添加コームの取り外しの後、適切な容量のアッセイ対象サンプルを、それぞれ、細胞原形質タンパクの濃度に応じて、マイクロピペットによってコームウェルに加えた。
3.3.4 電気泳動
サンプルの添加後、電源を接続し、先ず電圧を120 Vに設定し、この期間に、サンプルを、重層ゲルの中に一線として重層し、該サンプルの前端を分離ゲル中に進入させ;次に、電圧を100 Vに設定し、この期間に、定電圧電気泳動を120分実行し、最後に、ブロモフェノールブルー指示薬がゲルの下端に達した時点で電源を切った。
【0058】
3.4 ウェスタンブロットによる分析
3.4.1 電気転移
PVDFフィルムを、先ず無水アルコールに30秒浸して透明とし、次に、蒸留水に10分浸し、最後に、Whatmanペーパーと共に転移バッファーに浸した。ゲルを取り出した。フィルターペーパー、ゲル、PVDFフィルム、及びフィルターペーパーを、ペーパーの両側のサイズの一致を確保することによって短絡路を回避するようにして順番に重ね、電気転移タンクの中に、ゲルが陰極方向に、PVDFフィルムが陽極方向になるようにして、挿入した。電気転移は、80V、4℃で3時間行った。
3.4.2 封印
電気転移後、PVDFフィルムを取り出し、5% BSAブロッキングバッファー(1 TBST溶液に溶解)によって室温で3時間封印し、TBSTによって、それぞれ10分ずつ3回振動洗浄した。
3.4.3 第1抗体との反応
第1抗体を、TBSTによって1:200の比で希釈し、次いで、PVDFフィルムと4℃で一晩反応させた。翌日、室温で1時間平衡させた後、反応混合物をTBSTで3回洗浄した。
3.4.4 第2抗体との反応
対応するHRP-接合第2抗体を、TBST液によって1:2000の比で希釈し、PVDFフィルムと室温で2時間反応させ、次いで、TBSTによって3回洗浄した。
3.4.5 現像及び定着
基質液A及びBを1:1比で混合した。この混合液をPVDFフィルムに滴下し、室温で5分インキュベートし、フィルム上の過剰液を除去した後、残留物質は、プラスチックラップで、PVDFフィルムと該プラスチックフィルムの間に気泡が生じないように包んだ。その後の手順は、重ね合わせ、露出、現像、1分間の二重蒸留水洗浄、及び1分のスナップショットを含む。
3.4.6 スキャンされた現像写真について、Alpha Ease FC4.0ソフトウェアによる光学濃度分析を行った。この分析では、B-アクチンバンドの平均光度を内部参照値とし、結果を、β-アクチンに対する対応タンパクレベルの比として示した。
【0059】
4.統計処理
データは全て、SPSS 11.0ソフトウェアパッケージによって統計学的に分析した;正規分布データ及びばらつきの均一性は、t検定によって調べた。データが、正規分布又はばらつきの均一性に合致しない場合は、ノンパラメトリック検定を用いた。
【0060】
III. 実験結果
1.マウス眼球血清におけるVEGFの検出
表4−3及び図4に示すように、高用量群マウスの血清VEGFの光学濃度の値(OD値)は0.1937で、陰性コントロール群のOD値0.2200と比べると、P = 0.0037であり;低用量群の場合、陰性コントロール群と比べると、P = 0.0259であり、両方とも統計的有意であった。
〔表4−3〕 VEGF活性の検出結果(x±s)

【0061】
2.カスパーゼ3、8、9の活性の定量
CL168-6をHepG2細胞に対し24時間及び48時間作用させた後、カスパーゼ3、8、9の活性を定量し、その結果を表4−4及び図6に示した。
〔表4−4〕 カスパーゼ3、8、9のOD値

3種のカスパーゼの活性は有意に増加せず、従って、統計的有意ではなかった。
【0062】
3.タンパク電気泳動
3.1 細胞抽出タンパク濃度の定量(図7)
タンパク標準曲線をBSA標準の濃度(x)及び吸光度(y)に従って引いた。この標準曲線を用いて線形方程式Y = 2.22x − 0.02を得た。上式において、Yは希釈サンプルの濃度を表し、xは吸光度を表す。図3.3に示すように、その相関係数r = 1.00は、この線形方程式の優れた相関を意味する。対応するタンパク濃度(x)は、定量された吸光値(y)に基づいて計算した。
3.2 P53タンパクレベルの発現
タンパク電気泳動の間、各ウェル中のサンプルのタンパク総量は互いに一致していた。3群とは、陰性コントロール群、陽性コントロール群(CTX)、及びCL168-6実験群である。β-アクチンは内部参照標準とした。実験群では、P53の相対的発現レベルは0.74 ± 0.03であり;一方、陰性コントロール群では、該レベルは0.32 ± 0.05であり、この2群の間には有意差があった、P = 0.002(図8)。
3.3 bcl-2の発現レベル
実験群では、bcl-2レベルの相対的発現レベルは 0.75 ± 0.04であり;一方、陰性コントロール群では、該レベルは0.31 ± 0.01であり;P = 0.000;二つの群の間の差は統計的有意であった(図9)。
3.4 VEGFレベルの発現
実験群では、VEGFの相対的発現レベルは0.46 ± 0.08であり;一方、陰性コントロール群では、該レベルは0.71 ± 0.05であり、この2群の間には有意差があった、P = 0.04(図10)。
3.5 P21の発現レベル
実験群では、P21の相対的発現レベルは0.79 ± 0.07であり;一方、陰性コントロール群では、該レベルは0.76 ± 0.06であり、この2群の間には有意差は無かった、P = 0.73(図11)。
【0063】
IV. 結論
本実験研究から、CL168-6は、腫瘍保持マウスの眼球血液においてVEGFレベルを下げることが可能であり;同時に、該腫瘍中のVEGFタンパク発現レベルも下降傾向を持つことが示された。CL168-6は、VEGF活性を下げることによって腫瘍増殖を抑制することが可能である。
【0064】
我々の実験から、CL168-6は、カスパーゼ3、8、9の活性に対し著明な活性を持たないことが示された。HepG2細胞におけるCL168-6誘発アポトーシスは、これら3種の酵素の活性化に依存しない可能性のあることが想像される。
【0065】
本実験では、コントロール群と治療群のP21タンパクの発現レベルに統計的有意差が無かったことから、予備的ではあるが、CL168-6の腫瘍抑制作用は、P53 → P21の信号伝達経路を通じて実現されるものではないと結論することが可能である。
【0066】
本実験において、治療群のBcl-2タンパクの発現レベルは、陰性コントロール群のものよりも有意に低いことが認められた。CL168-6は、Bcl-2タンパクの発現レベルを下げることによって腫瘍抑制作用を実現することが可能であると結論することができる。その特異的機序についてはさらに探求する必要がある。
【0067】
P53遺伝子は2つの型を持つ。一つは野生型p53、すなわち、wtp53であり、他方は変異型p53、すなわち、mtp53である。Wtp53は、癌抑制遺伝子であり、細胞周期の調節に関与する可能性があり、細胞の正常な成長維持の過程において重要な役割を果たす。我々の実験結果から、治療群のP53タンパクの発現レベルは、陰性コントロール群のものよりも有意に高いことが示された。従って、予備的ではあるが、CL168-6は、腫瘍保持マウスにおいてwtp53の発現レベルを増し、Bcl-2及びVEGFのタンパク発現を抑制し、そうすることによって抗腫瘍作用を発揮すると結論することができる。
【0068】
〔毒性実施例1〕
I. 実験項目:マウスにおける腹腔内注入LD50(KORBER法)
II. 実験材料
ICRマウス[雄性/雌性 = 1/1、18 − 22 g、動物認可番号:SCXK(Beijing)2007-0001];
CL168、白色粉末(我々による調製)、使用前にサラダ油によって希釈
III. 実験法
ICRマウス(SPF級)(体重範囲18 − 22 g、Vital River Laboratories (VRL)、北京、中国によって供給されたもの)を使用した。合計五つの治療群を設け、2000 mg/kgを最高用量とし、他は0.8倍で減少させた、すなわち、1600 mg/kg、1280 mg/kg、1024 mg/kg、及び819.2 mg/kgとした。マウスはランダムにこれらの群に分配した。各群は、10匹のマウスを含み、半分が雄、半分が雌であった。各マウスに腹腔注入した(0.2 ml/10 g)。3-7日観察し、各群における様々な動物反応及び死亡マウスの数を記録した。LD50及び信頼限界は、各群における動物の死亡率に基づいてKarber変法(Korbor)によって計算した。
【0069】
IV. 実験結果
投与後12時間では死亡は見られなかった。7日間の各群におけるマウスの死亡状況を下表に掲げる。
〔実施例の表:CL168マウスの腹腔内注入LD50

【0070】
V. まとめ
CL168-6についてKarber変法(Korbor)によって計算されたLD50は1479.11 mg/kgであり、95%信頼限界は、1304.19 − 1677.49 mg/kgであった。
【0071】
〔毒性実施例2〕
I. 実験項目:CL168の抗腫瘍治療指数
II. 実験材料:結果実施例2及び毒性実施例1を参照。
III. 実験法:結果実施例2及び毒性実施例1を参照。
IV. 実験結果:結果実施例2及び毒性実施例1を参照。
V. 結果実施例2から、高用量(30 mg/kg)のCL168を使用すると、固体腫瘍S180に対する抑制率は54.58%であり、H22腹水癌マウスの生存率は51.55%であり;低用量(15 mg/kg)のCL168を使用すると、固体腫瘍S180に対する抑制率は44.33%であり、H22腹水癌マウスの生存率は37.11%であると認められる。毒性実施例1と組み合わせると、CL168のLD50は1479.11 mg/kgであり、その治療指数(TI)は約49.3であることを見て取ることができる。
VI. 要約
「CL168の治療指数(TI)は約49.3である」という事実は、CL168が高い安全性と、著明な抗腫瘍作用を有することを示す。
【0072】
〔処方例1〕
10 gのCL168-6、及び、適切な注射用賦形剤(凍結乾燥粉末及び滅菌パック乾燥粉末を含む)を混ぜ合わせ、注射(凍結乾燥粉末及び滅菌パック乾燥粉末を含む)プロセスによって抗腫瘍注射薬として調製した。
【0073】
〔処方例2〕
10 gのCL168-6、及び、適切な錠剤用賦形剤(徐放錠剤、基質錠剤、コート錠剤、分散性錠剤などを含む)を混ぜ合わせ、錠剤(凍結乾燥粉末及び滅菌パック乾燥粉末を含む)プロセスによって抗腫瘍錠剤として調製した。
【0074】
〔処方例3〕
10 gのCL168-6、及び、適切なカプセル用賦形剤を混ぜ合わせ、カプセルプロセスによって抗腫瘍カプセルとして調製した。
【0075】
〔処方例4〕
10 gのCL168-6、及び、適切な乳剤用賦形剤(マイクロエマルジョン、ナノエマルジョンなどを含む)を混ぜ合わせ、乳化(マイクロエマルジョン、ナノエマルジョンなどを含む)プロセスによって抗腫瘍乳剤として調製した。
【0076】
〔処方例5〕
10 gのCL168-6、及び、適切な顆粒用賦形剤を混ぜ合わせ、顆粒プロセスによって抗腫瘍顆粒として調製した。
【0077】
〔処方例6〕
10 gのCL168-6、及び、適切な調節放出製剤用賦形剤を混ぜ合わせ、調節放出製剤プロセスによって抗腫瘍調節放出製剤として調製した。
【0078】
〔処方例7〕
10 gのCL168-6、及び、適切な経口液剤用賦形剤を混ぜ合わせ、経口液剤プロセスによって抗腫瘍経口液剤として調製した。
【0079】
〔処方例8〕
10 gのCL168-6、及び、適切なリピドソーム用賦形剤を混ぜ合わせ、リピドソームプロセスによって抗腫瘍リピドソームとして調製した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般構造式I
【化1】

(上式において、Rは、酸素(すなわち、化合物CL168-6)、硫黄、NH、又は、SO2を表す)
によって表される化合物CL168。
【請求項2】
一般構造式II
【化2】

(上式において、Rは、C2-25アルキル基、アリール基、電子供与基若しくは電子求引基によって置換されるアリール基、C3-6アルキニル基、アルケニル基、C3-9シクロアルキル基、C3-9置換ヘテロシクロアルキル基、C1-20脂肪アシル基、芳香族アシル基、スルフォニル、シナモイル、カフェオイル、ガロイル、フェルロイル、ベンゾイル、L-脂肪族アミノアシル、又は、L-芳香族アミノアシルを表す)
によって表される化合物CL168。
【請求項3】
請求項1の化合物の調製方法であって、下記の工程:
(1) 有機溶媒にコレステロール(化合物2)を溶解し、ある温度において触媒の支援下に、該コレステロールを無水酢酸と反応させることによってコレステリルアセテート(化合物3)を生成すること;
(2) 有機溶媒に前記化合物3を溶解し、ある温度において触媒の支援下に、化合物3を臭化物試薬と反応させることによって7-ブロモコレステン-3-オルアセテート(化合物4)を生成すること;
(3) 有機溶媒に前記化合物4を溶解し、ある温度において塩基による除去反応によって7-デヒドロコレステン-3-オルアセテート(化合物5)を生成すること;
(4) 有機溶媒に前記化合物5を溶解し、ある温度において塩基によって前記化合物5を加水分解することによって7-デヒドロコレステロール(化合物6)を生成すること;
(5) 有機溶媒に前記化合物6を溶解し、ある温度において酸化剤によって前記化合物6を酸化することによって5α,8α-環状2酸素-6-コレステン-3-オル(化合物7)を生成すること;
(6) 有機溶媒に前記化合物7を溶解し、ある温度において酸化剤によって化合物7を酸化することによって5α,8α-環状2酸素-6-コレステン-3-オン(化合物1、すなわち、CL168-6)を生成すること、
を含み、ここに、該方法の上述の工程(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、及び(6)における反応式が下記の通りであることを特徴とする、方法。
【化3】

【請求項4】
請求項2の化合物の調製方法であって、下記の工程:
(1) 有機溶媒にコレステロール(化合物2)を溶解し、ある温度において触媒の支援下に、該コレステロールをR-供与試薬(Rは、C2-25アルキル基、アリール基、電子供与基若しくは電子求引基によって置換されるアリール基、C3-6アルキニル基、アルケニル基、C3-9シクロアルキル基、C3-9置換ヘテロシクロアルキル基、C1-20脂肪アシル基、芳香族アシル基、スルフォニル、シナモイル、カフェオイル、ガロイル、フェルロイル、ベンゾイル、L-脂肪族アミノアシル、又は、L-芳香族アミノアシルを表す)と反応させることによって化合物3を生成すること;
(2) 有機溶媒に前記化合物3を溶解し、ある温度において触媒の支援下に、化合物3を臭化物試薬と反応させることによって化合物4を生成すること;
(3) 有機溶媒に前記化合物4を溶解し、ある温度において塩基による除去反応によって化合物5を生成すること;
(4) 有機溶媒に前記化合物5を溶解し、ある温度において酸化剤で化合物5を酸化することによって化合物6を生成すること;
を含み、ここに、該方法の上述の工程(1)、(2)、(3)、及び(4)における反応式が下記の通りであることを特徴とする、方法。
【化4】

【請求項5】
腫瘍疾患の予防及び治療用薬剤の調製における、請求項1の化合物の使用方法。
【請求項6】
免疫学的疾患の予防及び治療用薬剤の調製における、請求項1の化合物の使用方法。
【請求項7】
腫瘍疾患の予防及び治療用薬剤の調製における、請求項2の化合物の使用方法。
【請求項8】
免疫学的疾患の予防及び治療用薬剤の調製における、請求項2の化合物の使用方法。

【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−500277(P2013−500277A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521935(P2012−521935)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【国際出願番号】PCT/CN2010/070213
【国際公開番号】WO2011/011984
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(512023258)
【Fターム(参考)】