説明

ステージ機構

【課題】長寸法で、真直案内精度の高いステージ機構を提供する。
【解決手段】第1と第2の弾性支点平行リンクは、それぞれ両端部に弾性ヒンジ部を備え、連結機構の中心線に対称に配置された4個の平行リンクを有し、第1の弾性支点平行リンクの1つの頂点は、可動部の一端と結合し、第1の弾性支点平行リンクの前記1つの頂点に対抗する他の1つの頂点は、第2の弾性支点平行リンクの1つの頂点に結合され、第2の弾性支点平行リンクの1つの頂点に対抗する他の1つの頂点は、フレームに結合され、少なくとも2組の第1と第2の弾性支点平行リンク機構部は、モータの軸の回転に応じて連結機構を介して可動部を所定の距離だけ一方向に適宜移動させると共に前記モータの軸の回転に基づく軸周りの回転に対しては、剛性を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステージ機構に関し、特に、LCD基板やウエハ等に形成される配線パターンの線幅及び、高さ(厚み)等を測定する測定装置のオートフォーカス用のステージ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶基板やウエハのパターン測定等の高精度2次元測定には、テレビ顕微鏡で被測定点を計測する測定装置が使用される。この測定装置は、被測定点がテレビ顕微鏡の視野内に来るように、被測定物またはテレビ顕微鏡を位置決めするXYステージ機構と、被測定物を合焦点下に位置決めするためのZステージ機構と、合焦点制御のためのオートフォーカス装置と、テレビ顕微鏡の視野内の被測定物の位置を算出するための画像処理装置と、XYステージの移動量と視野内の被測定位置とを合算して被測定寸法を算出するコンピュータ装置等で構成されている。例えば、後述する図1、図2に示すような測定装置である。
【0003】
このような液晶基板や液晶基板用マスク、薄膜磁気ヘッド焼付ウエハ等の高精度2次元測定では、形成されたパターンを数10mmから1000mm程度の長さにわたって、例えば、0.2μm以内の測定再現性をもって測定することが求められている。このような測定には、被測定物または顕微鏡をXYZステージで位置決めし、被測定物をテレビ顕微鏡で撮像し、撮像視野内の被測定点の位置と、レーザ干渉計等で読み取ったXYステージの位置とから、被測定点間の距離を測定する方式の2次元測定器が使用されている。2次元測定器において、XYステージで位置決めした被測定物をテレビ顕微鏡で撮像する際、フォーカス状態を最良にするためオートフォーカス制御を行うが、オートフォーカス制御時に被測定点または対物レンズを顕微鏡の光軸に沿って遠近(Z軸)方向に移動させて最適フォーカス点に位置決めする。オートフォーカス時のZ軸方向の移動時に真直移動の再現誤差があると、測定対象となる範囲が広い(あるいは長い)場合に、測定位置の誤差となる。つまり、Z軸方向の移動時に真直移動の再現誤差があると、フォーカス調整をする場合に、毎回、測定すべく指定されたX−Y座標の位置で正確に合わないことになる。このため、測定対象物が広い(あるいは長い)場合、高い真直案内精度のZステージが必要になる。この一例として、特許文献1及び2には、2重平行リンク機構(詳細は後述)で構成したZ軸方向の微動ステージに関する技術が記載されている。
【0004】
さて、従来の高精度2次元測定器のZ軸方向のオートフォーカス用微動機構は、被測定物の段差やソリを含んだ長寸法を測定するために、移動量が100〜400μm前後で、位置決め精度0.02μm、真直案内精度0.1μm、真直案内に再現性0.05μm以内の精度を有する微動機構が使われてきた。このような精度及び移動量を得るために、種々検討され、駆動源は圧電素子の伸縮を拡大して移動量を得る方法が用いられた。
【0005】
しかしながら、最近では、例えば、地上波デジタルTVのLCD基板のように被測定物の大型化によりソリ等が大きくなり、微動機構に要求される変位量が数倍、例えば、1500μmと大きくなってきている。このような長寸法の測定において、従来の技術で用いられた圧電素子を駆動源とする微動機構では変位拡大率が20〜30倍となる。しかし、変位拡大率が20〜30倍の圧電素子は、ヒステリシスの影響が顕著に表れ、必要な位置決め精度が得られないという問題がある。また、ヒステリシスの影響を除去するために変位計を設け、圧電素子の駆動結果、即ち、変位量を検出し、その変位量検出結果に基づいて圧電素子を再駆動して位置決めする方法を用いているが、高速、高精度にオートフォーカスするためには、フォーカス信号を基に、圧電素子を駆動して合焦点位置に変位させる必要がある。しかし、フォーカス信号と共に変位信号を用いて制御するにしても圧電素子のヒステリシスは、高速、高精度位置決めの阻害要因となっている。
【0006】
また、他の方法として、大きな変位を得るために、モータの回転をネジに伝えネジの回転によって変位を得る方法があるが、この方法ではネジの振れ回り(中心軸に対する振れや回転)の影響で、変位時の真直案内精度が得られない。従って、長寸法で、真直案内精度の高いステージ機構の実現が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−47931
【特許文献2】特開2001−281374
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上、上述したように変位量を得るための従来技術の圧電素子は、ヒステリシスの影響が顕著にあらわれ、必要な位置決め精度が得られない。
【0009】
また、大きな変位量を得るための他の方法として、モータの回転をネジに伝え、ネジの回転によって変位を得る方法がある。しかし、この方法では、ネジの振れ回りの影響で、変位時の真直案内精度が得られず、長寸法で、真直案内精度の高いステージ機構の実現が望まれている。
【0010】
本発明の目的は、長寸法で、真直案内精度の高いステージ機構を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、移動量1500μm、移動分解能8nm、真直案内精度0.01μm以内、真直案内の再現性0.05μm以内の精度を有するステージ機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明のステージ機構は、フレームと、該フレームに固定されたモータの軸の回転により一方向に移動する可動部と、該可動部と前記モータの軸とを連結する連結機構および前記フレームと前記可動部を結合する少なくとも2組の第1と第2の弾性支点平行リンクを有し、前記第1と第2の弾性支点平行リンクは、それぞれ両端部に弾性ヒンジ部を備え、前記連結機構の中心線に対称に配置された4個の平行リンクを有し、前記第1の弾性支点平行リンクの1つの頂点は、前記可動部の一端と結合し、前記第1の弾性支点平行リンクの前記1つの頂点に対向する他の1つの頂点は、前記第2の弾性支点平行リンクの1つの頂点に結合され、前記第2の弾性支点平行リンクの前記1つの頂点に対向する他の1つの頂点は、前記フレームに結合され、前記少なくとも2組の第1と第2の弾性支点平行リンク機構部は、前記モータの軸の回転に応じて前記連結機構を介して前記可動部を所定の距離だけ一方向に適宜移動させると共に前記モータの軸の回転に基づく軸周りの回転に対しては、剛性を保持するように構成されている。
【0013】
また、本発明のステージ機構は、前記可動部と前記モータの軸とを連結する連結機構は、更に、前記連結機構の中心線に対称に配置された二重平行板バネ案内機構と、直交する2組の切り欠き部を有するように構成されている。
【0014】
また、本発明のステージ機構は、前記フレームと、前記少なくとも2組の第1と第2の弾性支点平行リンクおよび前記可動部は、鋼製の厚板により切り出された一体構造で構成されている。
【0015】
また、本発明のステージ機構は、更に、前記可動部の移動方向に平行でかつ可動部の中心を通る中心線に対称に可動部の外側の両脇に配置された第1と第2の2組の鋼体部を有し、前記第1の1組の鋼体部は、前記第1の弾性支点平行リンクの残りの2つの頂点と前記可動部の他端を結合し、前記第2の1組の鋼体部は、前記第2の弾性支点平行リンクの残りの2つの頂点を結合するように構成されている。
【発明の効果】
【0016】
以上、説明したように本発明によれば、長寸法で、真直案内精度の高いステージ機構を実現することができる。また、本発明のステージ機構は、移動量1500μm以上、移動分解能8nm、真直案内精度0.01μm以内、真直案内の再現性0.05μm以内の精度を有する極めて高精度のステージ機構を実現できるので、その効果は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例の2次元測定器の概略構成を示す正面図である。
【図2】本発明の一実施例の2次元測定器の概略構成を示す平面図である。
【図3】本発明の一実施例のステージ機構の概略構成を示す平面図である。
【図4】本発明の一実施例のステージ機構の概略構成を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施例のステージ機構の動作を説明するための図である。
【図6】本発明の他の一実施例のステージ機構の概略構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明を実施するための一実施例を、以下の実施例に基づき図面を参照しつつ説明する。
【0019】
まず、図1及び図2を用いて、本発明の全体構成を説明する。図1は、本発明の一実施例の2次元測定器の概略構成を示す正面図であり、図2はその平面図である。図1及び図2の2次元測定器は、テレビ顕微鏡1、Z軸方向微動機構2、Z軸粗動ステージ3、Z軸コラム4、ベース5、XYステージ6、ワークテーブル7、X軸反射鏡9、Y軸反射鏡10、レーザ測長器11、12から構成されている。
【0020】
テレビ顕微鏡1はZ軸方向微動機構2に取り付けられ、Z軸方向微動機構2はZ軸粗動ステージ3に取り付けられている。Z軸粗動ステージ3はZ軸コラム4に取り付けられており、Z軸コラム4はベース5に取り付けられている。ベース5には、XYステージ6が設けられており、XYステージ6にはワークテーブル7が固定されている。ワークテーブル7には、被測定物8が取り付けられる。ワークテーブル7の被測定物の外側には、Z軸方向位置が被測定面と同じ位置にX軸反射鏡9及びY軸反射鏡10が設けられている。また、ベース5には、X軸測定用レーザ測長器11及びY軸測定用レーザ測長器12が設けられている。
【0021】
動作を説明する。コンピュータ(図示せず)によって被測定物8の所定の測定位置が指定され、指定された被測定物8の所定の測定位置がテレビ顕微鏡1の視野内に入るようにXYステージが被測定物8を位置決めし、被測定物8が位置決めされると、オートフォーカス装置(図示せず)によって、Z軸方向微動機構2がテレビ顕微鏡1をZ軸方向に位置決めし、テレビ顕微鏡1にコントラストのよい被測定物8の画像を得る。なお、Z軸粗動ステージ3は、前もって大まかなフォーカス位置を調節する。
【0022】
次に、図3〜6を用いて、本発明の一実施例のZ軸方向微動機構2(以下、ステージ機構2と称す。)を説明する。
【0023】
図3は、本発明の一実施例のステージ機構2の概略構成を示す平面図であり、図4は、図3の中心軸上の断面図である。図3のステージ機構2は、顕微鏡等が搭載される可動部101、フレーム30、ボールネジ60、ボールネジナット61、ネジ軸62、連結棒80、モータ90、カップリング110、弾性支点平行リンク340、350、360、370、2重平行板バネ720、740を有する。ステージ機構2は、顕微鏡1等を取り付ける可動部101、Z軸粗動ステージ3に取り付けられる歪低減用プレート402、可動部100とフレーム30を連結する弾性支点平行リンク340、350、360、370、ボールネジ60の軸ブレを低減させる2重平行板バネ案内機構(2重平行板バネ720、740)、ボールネジ60の移動を可動部100に伝える連結棒80から構成されており、中心線100に対して軸対称の構造である。
【0024】
弾性支点平行リンク340、350の構成について説明する。まず、弾性支点平行リンク340について詳細に説明する。弾性支点平行リンク340(以下、第1の弾性支点平行リンクと称する。)は、リンク341a、リンク342a、リンク341b、リンク342bで構成され、各リンクの両端部は、弾性ヒンジ部を構成している。これら弾性ヒンジ部は、各リンクが薄くなっている部分であり、薄くなっている方向には、バネ機構を備え、厚み方向には、剛性を有している。なお、リンク341a、リンク342a、リンク341b、リンク342bは、略平行四辺形の各辺を構成している。以下に説明する他の弾性支点平行リンクについても同様である。この第1の弾性支点平行リンク340の詳細を後述する図5に示す。そして、第1の弾性支点平行リンク340のリンク341aは、可動部101の一端と結合されると共に、鋼体部341c(これについては後述する。)を介してリンク341bに連結されている。同様に、第1の弾性支点平行リンク340のリンク342aも可動部101の一端と結合されると共に、鋼体部342c(これについても後述する。)を介してリンク342bに連結されている。ここで、第1の弾性支点平行リンク340が可動部101の一端と結合される部分を第1の頂点と称することにする。また、リンク341bとリンク342bは、鋼体部102で結合されている。この鋼体部102と結合されている部分を第1の弾性支点平行リンク340の第2の頂点と称することにする。この第1の弾性支点平行リンク340は、後述するように可動部101の軸方向の動きに連動して、軸方向に第1の弾性支点平行リンク340の第1の頂点と第2の頂点との距離が伸縮する構成になっている。
【0025】
次に、弾性支点平行リンク350について詳細に説明する。弾性支点平行リンク350(以下、第2の弾性支点平行リンクと称する。)は、リンク351a、リンク352a、リンク351b、リンク352bで構成され、各リンクの両端部は、弾性ヒンジ部を構成している。これら弾性ヒンジ部の構成は、前述の第1の弾性支点平行リンクと同様である。そして、第2の弾性支点平行リンクのリンク351aは、鋼体部351cを介してリンク351bと連結されている。さらに、リンク351bは、フレーム30に連結されている。同様に、第2の弾性支点平行リンク350のリンク352aは、鋼体部102に結合されると共に、鋼体部352cを介してリンク352bと連結されている。さらに、リンク352bは、フレーム30に連結されている。ここで、第2の弾性支点平行リンク350が第1の弾性支点平行リンク340の第2の頂点と結合される部分を第1の頂点と称することにする。また、第2の弾性支点平行リンク350がフレーム30と結合されている部分を第2の弾性支点平行リンク350の第2の頂点と称することにする。
【0026】
次に、弾性支点平行リンク360(以下、第3の弾性支点平行リンクと称する。)、370(以下、第4の弾性支点平行リンクと称する。)について説明する。まず、第3の弾性支点平行リンク360は、リンク361a、リンク362a、リンク361b、リンク362bで構成され、各リンクの両端部は、前述と同様に弾性ヒンジ部を構成している。この第3の弾性支点平行リンク360の詳細を後述する図5に示す。そして、第3の弾性支点平行リンク360のリンク361aは、可動部101の他端と結合されると共に、鋼体部341cを介してリンク361bに連結されている。同様に、第3の弾性支点平行リンク360のリンク362aも可動部101の他端と結合されると共に、鋼体部342cを介してリンク362bに連結されている。そして、リンク361bとリンク362bは、鋼体部103で結合されている。即ち、可動部101は、前述した第1の弾性支点平行リンク340と第3の弾性支点平行リンク360および鋼体部341c、342c、102および103により保持され、軸100の案内方向には真直案内精度が確保される構成となされている。しかも、可動部101は、連結棒80の移動により適宜移動し得るように保持されている。
【0027】
次に、第4の弾性支点平行リンク370について説明する。第4の弾性支点平行リンク370は、リンク371a、リンク372a、リンク371b、リンク372bで構成されている。そして、各リンクは、それぞれ鋼体部351c、352cと鋼体部104とを結合している。この第4の弾性支点平行リンク370は、鋼体部351c、352cを介して第2の弾性支点平行リンク350と結合し、第2の弾性支点平行リンク350の真直案内精度を確保している。なお、本実施例では、第4の弾性支点平行リンク370は、それぞれリンク371a、リンク372a、リンク371b、リンク372bで構成するとして説明したが、鋼体部351c、352cと鋼体部104を一体に構成したコ字状の鋼体部で構成する。
【0028】
次に、ボールネジ60は、ボールネジナット61が2重平行板バネ案内機構720、740に取り付けられ、ボールネジ60が回転すると、2重平行板バネ案内機構720、740が移動する。ここで2重平行板バネ案内機構720、740の構造について、簡単に説明する。2重平行板バネ案内機構720、740は、フレーム3と鋼体部701、702、703、バネ部721、722、741、742で構成されている。そして、連結棒80の一端は、鋼体部703に固定されている。また、鋼体部703は、ボールネジナット61に固定されている。即ち、鋼体部701、702は、バネ部721、722、741、742を介してフレーム3と結合している。また、鋼体部703は、バネ部721、722、741、742を介してそれぞれ鋼体部701、702に結合している。そして、フレーム3、鋼体部701、702、703、バネ部721、722、741、742は、鋼材の厚板を切削することにより一体形成で構成されている。このように構成されているので、2重平行板バネ案内機構720、740は、中心線100に対して左右対称構造になっているので、移動方向の真直案内精度を確保することができる。
【0029】
また、2重平行板バネ案内機構720、740と可動部101は、連結棒80で連結されており、連結棒80の上端及び下端近くには、図3の平面図で、垂直な方向と、これに対して90°交差する方向の切り欠き部が設けてある。これによって2重平行板バネ案内機構720、740で除去しきれない、ボールネジ6の軸からの振れや軸回りの影響及び、2重平行板バネ案内機構720、740と可動部101を連結する際の組み立て誤差の影響を除去する。
【0030】
更に、フレーム30には、歪低減用プレート402(図4に示す。)が固定ボルト403で固定されている。
【0031】
次に、本発明の一実施例の動作について説明する。図5は、本発明の一実施例の動作を説明するための図である。本発明は、弾性支点平行リンク、モータによるネジ駆動等を採用することにより、高精度真直案内精度や大きな変位量を得るステージ機構を実現している。
【0032】
まず、図示しない制御部からのオートフォーカス信号に基づいて、図示しないマイクロステップモータドライバにパルス列が印加され、マイクロステップモータドライバからモータ90にパルス列が与えられる。モータ90は、このパルス列にしたがって回転し、カップリング110を介してボールネジ60のネジ軸62を回転させる。この時、10μm程度の軸からの振れや軸回り(以下、振れ回りと称する。)が発生する。ネジ軸62が回転すると、2重平行板バネ案内機構720、740に固定されたボールネジナット61にねじ込まれるため、回転に伴ってボールネジナット61が軸100に沿って移動するが、このとき、左右対称配置された2重平行板バネ案内機構720、740により軸100方向に案内され、ボールネジ60の回転に伴う軸ブレに起因するボールネジナット61の振れ回りは殆ど無くなるまで押さえられる。さらに、残った振れ回りや2重平行板バネ案内機構720、740と可動部101を連結する際の組み立て誤差の影響等を90度交差する切欠きを設けた連結棒80によって除去される。
【0033】
さて、ネジ軸62の回転による軸100方向の移動は、連結棒80を介して可動部101に伝えられ、可動部101が移動する。次に、可動部101は、連結棒80を介して移動するが、中心線100に沿って前述した第1の弾性支点平行リンク340、第2の弾性支点平行リンク350、第3の弾性支点平行リンク360、第4の弾性支点平行リンク370により案内される。これによって可動部101は、長寸法で、真直案内精度の高い変位を実現していることについて以下説明する。
【0034】
可動部101が矢印方向(図5に示す。)に移動すると、第1の弾性支点平行リンク340のリンク341aおよびリンク342aは、可動部101に結合しているそれぞれの端部がネジ軸62から離れる方向に移動し、それぞれの他端が剛体部341cおよび剛体部342cに結合しているため、剛体部341cおよび剛体部342cもネジ軸62から離れる方向に移動する。また、剛体部341cおよび剛体部342cに結合しているリンク341bおよびリンク342bも同様にネジ軸62から離れる方向に移動し、リンク341bおよびリンク342bに結合している剛体部102も同様にネジ軸62から離れる方向に移動する。そして、リンク341a、リンク342a、リンク341bおよびリンク342bは、それぞれ同一寸法で作られており、また、中心線100に対して軸対称の平行四辺形を構成している。このため、第1の弾性支点平行リンク340を構成するリンク341a、341b、342a、342bは、それぞれ変形量が等しく、真直案内精度を高く保持しながら軸100方向に変位する。本実施例では、この場合、リンク341aおよびリンク342aは、図5に示すように約200μm移動する。同様にリンク341bおよびリンク342bも図5に示すように約200μm移動する。従って、第1の弾性支点平行リンク340は、軸100方向に400μm移動することができる。
【0035】
同様に、第2の弾性支点平行リンク350のリンク351a、リンク352a、リンク351b、リンク352bについても、第1の弾性支点平行リンク340と同様に変形し、軸100方向に400μm移動することができる。
【0036】
従って、可動部101が800μmの距離を軸100方向(矢印方向)に可動した場合、リンク341a、リンク341b、リンク342a、リンク342b、リンク351a、リンク351b、リンク352a、リンク352bのヒンジ部分(くびれ部分)のたわみによってそれぞれ200μmの変位を生じ、可動部101側が800μm移動する。このように、同一寸法のリンク341a、リンク341b、リンク342a、リンク342b、リンク351a、リンク351b、リンク352a、リンク352bが等量かつ中心線100に対して対称に変位する。そして、これら第1と第2の弾性支点平行リンク340、350は、フレーム30の垂直方向には剛性を有している。従って、これに案内される可動部101は中心線100に沿って真直案内精度を高く保持しながら移動する。
【0037】
なお、上記実施例では、第1の弾性支点平行リンク340および第2の弾性支点平行リンク350について説明したが、可動部101の他端に結合された第3の弾性支点平行リンク360は、可動部101が矢印方向に移動する時、可動部101の他端を真直案内精度高く保持する機能を有している。また、第4の弾性支点平行リンク370は、鋼体部351c、352cを介して第2の弾性支点平行リンク350と結合し、第2の弾性支点平行リンク350の真直案内精度を確保している。
【0038】
一方、可動部101が800μm矢印(図5に示す。)の反対方向に可動した場合も、前述と同様にリンク341a、リンク341b、リンク342a、リンク342b、リンク351a、リンク351b、リンク352a、リンク352bは、逆方向(矢印の反対方向)に動くことは勿論である。
【0039】
さて、先に説明したように、近年、被測定物は大型化しており、これに伴いステージ機構に要求される変位量も益々大きくなっている。本発明は、大きな変位量を得ることが特徴である。前述した実施例では、可動部101の変位量は800μmであるが、さらに大きな変位量を得る場合について、図6及び7を用いて説明する。
【0040】
図6は、本発明の他の一実施例のステージ機構の概略構成を示す図である。図6のステージ機構は、図3に示したステージ機構を構成する弾性支点平行リンクがn個で構成されている。尚、弾性支点平行リンク以外の構成については、図3に示したステージ機構と同じであるので、ここでは、詳細な説明は省略する。
【0041】
図6に示すステージ機構は、可動部101とフレーム30とをn個の弾性支点平行リンク750−1、750−2、・・・750−nをシリーズに結合して構成されている。ここで、弾性支点平行リンク750−1は、前述の第2の弾性支点平行リンク350と同様に、第2の頂点は、フレーム30と結合されている。そして、弾性支点平行リンク750−nは、前述した第1の弾性支点平行リンク340と同様に、第1の頂点は、可動部101の一端と結合されている。そして、弾性支点平行リンク750−1と弾性支点平行リンク750−nとの間に弾性支点平行リンク750−2、・・・750−(n−1)個の弾性支点平行リンク750がシリーズに結合される。このようにすると前述したように、弾性支点平行リンクは、リンクのヒンジ部分のたわみによってリンク1個当たり、例えば、200μmの変位を得ることができる。したがって、弾性支点平行リンク750の1個当たりの変位は、リンク2個分に相当する400μmとなる。図6のように弾性支点平行リンクの数がn個の場合、400μm×nの変位を得ることができる。そこで、例えば、1600μmの変位が必要な場合では、弾性支点平行リンク750を4個で構成すればよい。
なお、図6において、弾性支点平行リンク760、770−1、770−2、・・・770−(n−1)は、可動部101の他端に位置する弾性支点平行リンクを示す。ここで、弾性支点平行リンク760は、前述の第3の弾性支点平行リンク360に対応し、弾性支点平行リンク770−1、770−2、・・・770−(n−1)は、前述の第4の弾性支点平行リンク370に対応する。
【0042】
以上、説明したように、弾性支点平行リンクの数を増やすことによって、変位量を増加させることができる。したがって、液晶基板、マスク、磁気ヘッド等、特に被測定物が長い寸法を有し、かつ、被測定点が微細な寸法測定器のオートフォーカス用微動Z軸に最適なステージ機構を提供することができる。また、必要とされる変位量に応じて、弾性支点平行リンクの数を調整することにより、所望の変位量を得ることのできるステージ機構を実現できる。
【0043】
また、可動部101、フレーム30、弾性支点平行リンク340、350、360、370及び2重平行板バネ720、740等は、鋼製の厚板から切り出した一体構造で構成すると、より真直案内精度の高いステージ機構を実現することができる。また、可動部101が可動した際、フレーム30に例えば、約20μm程度の歪みが発生するような場合、十分な精度を得られない。そのような場合、フレーム30と歪低減用プレート402を複数の固定ボルトで固定し、歪の低減を図ることができる。
【0044】
上記のようにして、例えば、鋼材の板厚を20mmで製作した場合、ヒンジ部分の曲げ応力は、44N/mmであり、許容曲げ応力が80〜120N/mmのため、ステージ機構として十分な精度を得ることができる。
【0045】
以上、説明したように本発明によれば、移動量1600μmあるいはそれ以上、移動分解能8nm、真直案内精度0.01μm以内、真直案内の再現性0.05μm以内の精度を有する微動ステージ機構を実現することができる。
【0046】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は、ここに記載された微動ステージ機構の実施例に限定されるものではなく、他の微動ステージ機構にも適用できることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0047】
1:テレビ顕微鏡、 2:Z軸方向微動機構、 3:Z軸粗動ステージ3、 4:Z軸コラム、 5:ベース、 6:XYステージ、 7:ワークテーブル、 9:X軸反射鏡、 10:Y軸反射鏡、 11、12:レーザ測長器、 30:フレーム、 60:ボールネジ、 61:ボールネジナット61、 62:ネジ軸、 80:連結棒、 90:モータ、 101:可動部、 110:カップリング、 340、350、360、370、750:弾性支点平行リンク、 402:歪低減用プレート、 720、740:2重平行板バネ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、該フレームに固定されたモータの軸の回転により一方向に移動する可動部と、該可動部と前記モータの軸とを連結する連結機構および前記フレームと前記可動部を結合する少なくとも2組の第1と第2の弾性支点平行リンクを有し、前記第1と第2の弾性支点平行リンクは、それぞれ両端部に弾性ヒンジ部を備え、前記連結機構の中心線に対称に配置された4個の平行リンクを有し、前記第1の弾性支点平行リンクの1つの頂点は、前記可動部の一端と結合し、前記第1の弾性支点平行リンクの前記1つの頂点に対抗する他の1つの頂点は、前記第2の弾性支点平行リンクの1つの頂点に結合され、前記第2の弾性支点平行リンクの前記1つの頂点に対抗する他の1つの頂点は、前記フレームに結合され、前記少なくとも2組の第1と第2の弾性支点平行リンク機構部は、前記モータの軸の回転に応じて前記連結機構を介して前記可動部を所定の距離だけ一方向に適宜移動させると共に前記モータの軸の回転に基づく軸周りの回転に対しては、剛性を保持することを特徴とするステージ機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−256074(P2010−256074A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103996(P2009−103996)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】