説明

ステージ装置およびその制御方法

【課題】試料と副ステージを確実に密着させても、試料を破損する危険の少ないステージ装置の制御方法を提供する。
【解決手段】試料9を載置する主基台1と、主基台1に対向配置された副基台7と、副基台7上のアクチュエータ6と、副基台7からバネで吊り下げられるアクチュエータ6によって制御される副ステージ8と、副基台7と前記副ステージ8との間の距離を計測する距離センサとを備え、試料9の厚さ方向の公差を接触時最大位置決め誤差と定義したとき、アクチュエータ6の各出力推力制限値FL[p]を、予め求めた試料が存在しない場合の各出力推力に試料9が許容する押し当て力を加えた値とするステップと、副ステージ8の位置許容偏差を副ステージ8に設定された位置許容偏差に接触時最大置決め誤差を加えた値とするステップ等の5ステップより試料9にアクチュエータ6が接触したと判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面と平面を密着させて作業を行う機能を有し、平面位置決めおよび姿勢制御をするためのステージ装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の平面位置決めおよび姿勢制御をするためのステージ装置(以下、「平面位置決めおよび姿勢制御装置」と呼ぶ。)は、レーザ干渉計などの精密な距離計測が可能な距離センサやピエゾ素子などの精密動作が可能なアクチュエータを用いて精密に位置制御されている(例えば、特許文献1参照)。
図6において、61は主基台であり、主基台61上には主ステージ62が設置され、主ステージ62の上方には3個の距離センサ63が配置される。この距離センサ63がレーザ干渉計などを使用している。この距離センサ63によって計測された距離は変換回路64、制御回路65を経由して電圧信号として出力され、アクチュエータであるピエゾ素子66に印加されることによって副基台67上の副ステージ68の位置および姿勢を制御している。この例では、3個の距離センサ63が計測した距離に比例した電圧がピエゾ素子66に印加されているのであって、主基台上61上の主ステージ2の位置および姿勢に比例した力がピエゾ素子66に印加されているということになる。
このように、従来の平面位置決めおよび姿勢制御装置では、位置および姿勢を合わせるべき主ステージ面の位置および姿勢を計測して、副ステージ面を駆動するという手順がとられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−88010号公報(第2−3頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の平面位置決めおよび姿勢制御方法では、試料などの搭載された位置および姿勢を計測される主ステージと、位置決めおよび姿勢制御を実際に行う副ステージは個別のものであり、駆動される副ステージの位置情報はフィードバックされていなかった。
また、大きくは主ステージ上に搭載された試料等が副ステージと接触するということは想定されておらず、副ステージのみの通常の位置決めと主ステージ上に搭載された試料等の被接触平面への接触を伴う位置決めの場合には同じ手順をとっていたのである。例えば、特許文献1のような制御方法で、副ステージと主ステージ上に搭載された試料が接触する場合には、副ステージの位置および姿勢のフィードバックがないために被接触平面である試料に密着できない、あるいは接触対象である副ステージを必要以上に押し付けてしまい試料の破損の危険性が高まるという問題があった。
また、仮に副ステージの位置および姿勢のフィードバックを制御に用いるとすると、主ステージの位置および姿勢とともに、副ステージの位置および姿勢も計測する必要があり、コストが高くなったり、構造が複雑になったりするという問題もあった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、被接触平面を持つ試料と接触平面を持つ副ステージを確実に密着させるとともに、試料を破損する危険を減少させ、被接触平面と接触平面の接触を容易に検出する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題を解決するため、本発明は、次のようにしたのである。
第1発明であるステージ装置の制御方法の発明は、試料を載置するための主基台と、前記主基台の上側に対向配置された副基台と、前記副基台上に設けられた3つのアクチュエータと、前記副基台からバネを介して吊り下げられるとともに、前記3つのアクチュエータによって位置および姿勢が制御される副ステージと、前記副基台と前記副ステージとの間の距離を計測する距離センサと、を備え、前記副ステージを前記試料に接触させるステージ装置において、前記試料の厚さ方向の公差を接触時最大位置決め誤差と定義したとき、以下のステップ(1)〜(5)を含むことを特徴とするものである。
(1)前記3つのアクチュエータの各出力推力制限値FL[p]を、予め求めた、前記試料が存在しない場合に位置決め処理した場合の前記各出力推力に前記試料が許容する押し当て力を加えた値とする第1のステップ。
(2)前記副ステージの位置許容偏差を、副ステージに設定された位置許容偏差に、前記接触時最大置決め誤差を加えた値とする第2のステップ。
(3)前記副ステージの位置決め目標位置を、試料が理想試料である場合の接触位置に、前記接触時最大置決め誤差を加えた値とする第3のステップ。
(4)前記3つのアクチュエータの各出力推力Fを、前記推力制限値FL[p]以下に制限しながら、前記副ステージを降下させる第4のステップ。
(5)前記各出力推力Fのいずれかが、前記推力制限値FL[p]を超えた場合、当該アクチュエータの位置決め目標位置を現在位置へと変更し、前記試料に該アクチュエータが接触したと判断する第5のステップ。
第2発明は、前記第1発明のステージ装置の制御方法において、前記第5のステップ(5)に代えて、以下のステップ(6)としたことを特徴とするものである。
(6)前記各出力推力Fのいずれもが、推力制限値FL[p]を超えることなく位置決めが完了した場合、前記試料に該アクチュエータが接触したと判断する第6のステップ。
第3発明であるステージ装置の発明は、試料を載置するための主基台と、前記主基台の上側に対向配置された副基台と、前記副基台上に設けられた3つのアクチュエータと、前記副基台からバネを介して吊り下げられるとともに、前記3つのアクチュエータによって位置および姿勢が制御される副ステージと、前記副基台と前記副ステージとの間の距離を計測する距離センサと、を備え、前記副ステージを前記試料に接触させるステージ装置において、前記3つのアクチュエータの各出力推力制限値FL[p]を、予め求めた、前記試料が存在しない場合に位置決め処理した場合の前記各出力推力に前記試料が許容する押し当て力を加えた値とするステップを処理する第1の処理手段と、前記副ステージの位置許容偏差を、副ステージに設定された位置許容偏差に、前記接触時最大置決め誤差を加えた値とするステップを処理する第2の処理手段と、前記副ステージの位置決め目標位置を、試料が理想試料である場合の接触位置に、前記接触時最大置決め誤差を加えた値とするステップを処理する第3の処理手段と、前記3つのアクチュエータの各出力推力Fを、前記推力制限値FL[p]以下に制限しながら、前記副ステージを降下させるステップを処理する第4の処理手段と、前記各出力推力Fのいずれかが、前記推力制限値FL[p]を超えた場合、当該アクチュエータの位置決め目標位置を現在位置へと変更し、前記試料に該アクチュエータが接触したと判断するステップを処理する第5の処理手段と、を備えたことを特徴とするものである。
第4発明は、前記第3発明のステージ装置において、前記第5の処理手段に代えて、前記各出力推力Fのいずれもが、推力制限値FL[p]を超えることなく位置決めが完了した場合、前記試料に該アクチュエータが接触したと判断するステップを処理する第6の処理手段としたことを特徴とするものである。
第5発明である搬送装置の発明は、前記第3または第4発明のステージ装置を備え、前記副ステージが前記試料を吸着し、水平方向へ移動することにより、前記試料を搬送することを特徴とするものである。
第6発明である検査装置の発明は、前記第3または第4発明のステージ装置を備え、前記ステージ装置に載置された試料を検査することを特徴とするものである。
第7発明である平面加工装置の発明は、前記第3または第4発明のステージ装置を備え、前記ステージ装置に載置された試料の平面を加工することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
前記第1および第3発明によると、アクチュエータ出力推力は、第1のステップ、および第3のステップにより移動するために十分な推力を確保すると同時に試料が許容する押し当て力以下に制限されるので、試料を破損する危険性を減少することができる。
また、許容押し当て力が小さい場合であっても、最低限の移動に対する推力は確保されているので、確実な位置決めを行うことができ、確実に副ステージと試料を密着させることができる。
さらには試料が最大公差分薄いとしても、第3のステップによって目標位置がこの場合の副ステージと試料の接触面の位置に設定されているため、確実に試料と副ステージを接触させることができる。
また、試料が最大公差分厚いとしても、第2のステップによって位置許容偏差がこの場合を想定して設定されているため、副ステージは異常を検出することなく確実に接触面である副ステージと被接触面である試料を接触させることができるのである。
また第5のステップによって、出力推力が制限値以上となった場合には、試料と副ステージが接触したと判断される。このため、容易に接触状態を判断することができ、出力の微分値を用いて接触を検出するような場合に比べて、レベルで判断するため耐ノイズ性を向上することができる。
以上によって、試料の厚さ方向の公差があったとしても安全、かつ確実に試料と副ステージを接触させ、その接触状態を検出することができる。
また、前記第2および第4発明によると、試料が最大公差分薄い場合には、推力が制限値以上となることなく位置決めが完了するが、この場合であっても第6のステップによって接触したと判断されるので確実に接触状態を検出することができる。
また、前記第5〜第7の用途発明によると、前記第3および第4発明の効果を得て、各用途装置の目的を確実、容易に果たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の方法を適用する平面位置決めおよび姿勢制御装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の方法を適用する平面位置決めおよび姿勢制御装置の機構部を示す側面図である。
【図3】本発明における副ステージ移動時の位置と推力の関係を示すグラフである。
【図4】本発明の前処理手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の主要処理手順を示すフローチャートである。
【図6】従来の方法を適用した平面位置決めおよび姿勢制御装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の方法の具体的実施例について、図に基づいて説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は、本発明の方法を実施する平面位置決めおよび姿勢制御装置の構成を示す構成図である。
図において、100は本発明の方法を実施する平面位置決めおよび姿勢制御装置である。7は副基台であり、副基台7上(図においては、「下」であるが、便宜上、以下「上」と呼ぶ。)に、アクチュエータ6を介して副ステージ8が設置されている。副ステージは、その自重をキャンセルするために、バネ(不図示)を介して吊り下げられている。
また、同様に副基台7上には距離センサ3が設置されており、副基台7と副ステージ8間の距離を計測する。距離センサ3で計測された距離は変換回路4によって、例えば光信号から電圧信号などの形態に変換され、コントローラ10へと入力される。コントローラ10では距離センサ3によって得られた距離情報と、上位コントローラ11から受信した目標位置情報を基に位置制御が行われており、アクチュエータ6への出力を決定し、制御回路5へと推力情報を出力する。制御回路5は受信した推力情報を電圧へと変換し、アクチュエータ6へ電圧を印加する。電圧を印加されたアクチュエータ6はそれぞれ副基台7に対する副ステージ8の位置および姿勢を変位させ、その結果が再び、距離センサ3によりコントローラ10にフィードバックされる仕組みとなっている。また1は主基台であり、主基台1上に、試料9が設置されている。試料9は任意のもので構わないが、例えば、半導体ウエハ、レチクル、ガラス基板等である。
なお、アクチュエータ6はピエゾ素子とは限定されず他のアクチュエータでもよく、例えばボイスコイルモータなどが用いられる。また距離センサ3はレーザ干渉計、リニアスケール、静電容量センサなどの距離センサであっても構わない。また、特許文献1とは異なり距離センサは主基台1上ではなく、副基台7上に設置されている。
【0010】
ここで、図1に示す平面位置決めおよび姿勢制御装置100は、試料9を搬送する搬送装置に適用することが可能であり、図示しない駆動機構、例えばリニアモータによって副基台7は水平方向に自在に移動可能である。この場合、副ステージ8には、試料9を吸着するための図示しない吸着機構、たとえば真空吸着機構が備えられている。搬送装置のように副ステージ8と試料9が接触しなければならないような装置においては、アクチュエータ6が動作して副ステージ8が変位して充分に試料9へ接近し、接触した後、図示しない吸着機構を動作させ試料9を副ステージ8へと吸着させる。
なお、図1に示す平面位置決めおよび姿勢制御装置100は試料9を検査、または加工する装置に適用することもできるが、この場合は、アクチュエータ6が動作して副ステージ8が変位して充分に試料9へ接近、接触し所定の検査、加工を行うこととなる。
このときに、図2(a)に示すように試料9が副ステージ8と接触する上面の位置および姿勢が理想的である場合には、その位置および姿勢を目標値として位置決めを行えば良い。しかしながら、現実には試料9および主基台1には厚さに対する公差ΔT(図2(b))や、傾きに対する公差Δθ(図2(c))が存在する。このため理想位置を目標位置として副ステージ8を位置決めした場合には、公差ΔTがマイナスの値であり、試料9が理想よりも薄い場合に副ステージ8は試料9に接触せず、公差ΔTがプラスの値であり、試料9が理想よりも厚い場合には、副ステージ8は試料9を押し込み、余計な力を試料9に加えてしまう。
また、傾きの公差であるΔθが存在する場合には、副ステージ8は試料9に対して片あたりしてしまい試料9を押し込むばかりか、試料9の被接触平面である上面に密着することもできない。
【0011】
図3は平面位置決めおよび姿勢制御装置100(図1)における各アクチュエータ6の位置と推力の関係を示すグラフである。なお、F[p]は、推力が位置の関数であることを表すものである。
直線o−a−bは、試料9がある場合の推力の位置変化を示し、直線o−a−cは、試料9がない場合の推力の位置変化を示している。
この図に示すように、主基台1上に試料9がない場合と、試料9がある場合とでは、副ステージ8と試料9が接触した位置(a点)以降においては推力が異なる。これはコントローラ10内において位置制御が行われているためである。すなわち、a点以降、直線o−a−bの方が推力が大きくなるのは、試料9に副ステージ8が接触した後も目標位置pへ移動しようとして、推力Fを発生するためである。
なお、直線o−a−cが推力一定でなく、右肩上がりであるのは、副ステージがバネ(不図示)を介して吊り下げられているためである。バネを介して吊り下げられていなければ、推力は一定となる。
【0012】
図4および図5は本発明による平面位置決めおよび姿勢制御装置100(図1)を制御する処理手順を示すフローチャートである。
図4は図3に示す試料9が主基台1上にない場合の推力データを取得する前処理の方法を説明したフローチャートであり、図5は本発明の位置決め方法を示す主要処理部分を示すフローチャートである。この図を用いて本発明の方法を順を追って説明する。
【0013】
はじめに、図4について説明する。
なお、試料9があると判断すると本データ取得は行わない(ステップ401)。試料9が存在するかどうかは、上位コントローラ11からの指令に基づいて判断しても構わないし、試料9に対して有無センサを設置し、そのセンサ情報に基づいて判断しても構わない。
図3において試料9に接触した場合の位置と推力、試料9がない場合の位置と推力を比較できるように副ステージ8の位置に対する各アクチュエータ3の推力を予め、前処理として取得しておく必要がある。ここで、便宜上、試料に押し当てる方向=下方向を正方向とする。このため、目標位置は、理想試料の被接触平面の位置に接触時最大位置決め誤差である試料9の厚さ方向の公差を加えたものである必要がある(ステップ402)。この値は、試料9が最大公差ΔTだけ薄い場合にも、副ステージ8が試料9と接触する位置である。
位置決め動作をコントローラ10により開始した後(ステップ403)、現在位置=目標位置となるまで(ステップ406)、各センサ3から得られた現在位置pに対する各アクチュエータ6の出力推力Fを取得し(ステップ404)、移動時所要推力F[p]として保存する(ステップ405)。なお、出力推力Fは、コントローラ10内にて位置制御された結果として制御回路5へ出力される推力Fであり、これを取得、保存する。この前処理は装置立上げ時に一度行っておけばよく、試料9がない場合の推力に経年変化がないとすればこの前処理結果を図示しない不揮発性メモリに記録しておき繰返し使用すればよい。
【0014】
次に、図5について説明する。
まず、上位コントローラ11からの指令によって、位置決め動作を開始する(ステップ500)。この位置決め動作が試料9への接触動作であるかどうかの判断は、上位コントローラ11からの指令によるものであってもよいし、試料9に対して設置された図示しない有無センサからの情報と、位置目標値との演算によるものであっても構わない。
一方、試料9への接触動作ではない場合は、図5の右側に示すフローで処理を行うが、これは単純な位置決め動作の処理である(詳細は省略する)。
試料9への接触動作である場合は、図5の左側に示すフローで処理を行う(ステップ501)。
次に、各アクチュエータの推力制限値FL[p]を設定する。各アクチュエータの推力制限値FL[p]は、図4のフローにて取得した位置pに対する推力F[p]に、試料9が許容する押し当て推力Fplを加えた値とする(ステップ502)。これは現在位置pによって動的に変動する値であり、位置決め動作完了まで変動しつづける。このように推力を制限しておくことによって、各アクチュエータは試料9へ副ステージ8が接触するに充分な推力を確保しつつ、同時に試料9に対して必要以上に力を加えることを防ぐことができる。
次に、位置許容偏差を設定する。一般的な位置決め制御においては、制御系や機構の異常を検出するために、位置指令と現在位置の偏差を監視し、その値がシステムとして許容される値を超えると異常であると判断する。試料9への接触を伴わない動作において、この値はまさにシステムとして許容される値そのものを設定しておく(ステップ513)。
一方で、試料9への接触を伴う動作において許容される偏差は、副ステージ8に設定された許容偏差に、接触時最大位置決め誤差を加えたものである(ステップ503)。
このようにすることで、試料9への接触を伴わない動作の場合には、システムが求める精度を確保しつつ、接触を伴う場合には試料9の公差を加えることで、試料9に密着するために、副ステージ8の位置および姿勢が理想試料の被接触平面の位置から逸脱した場合であっても正常動作であることを保証することができる。
次に、目標位置を設定する。
ステップ402と同様に目標位置は理想試料の被接触平面の位置に接触時最大位置決め誤差である試料9の厚さ方向の公差を加えたものである必要がある(ステップ504)。
このように試料9の公差を考慮することで、確実に副ステージ8と試料9が密着する位置へ目標位置を設定することができる。
【0015】
推力制限値、位置許容偏差、目標位置を設定した後、位置決め動作を開始すると(ステップ505)、出力推力Fとその位置を監視し(ステップ506)、出力推力Fが、ステップ502で設定した推力制限値FL[p]を超えた場合には、該当アクチュエータ3の目標位置を現在位置へと変更する(ステップ527)。 その後、接触と判断する(ステップ509)。もしくは、出力推力Fが推力制限値FL[p]を超えることなく正常に位置決めが完了した場合にも(ステップ507)、同様に接触したと判断する(ステップ509)。
"接触"と判断したアクチュエータ3においては、試料9を押し付ける適正な推力Fcに、図3における試料がない場合の推力を加えたもの以下に出力推力Fを制限し(ステップ509)、位置決め動作を終了とする(ステップ510)。
この試料9を押し当てる適正な推力Fcが試料押し当て許容推力Fpl以下に設定されている場合には、このように推力制限値を変更することが望ましいが、このような値が設定されていない場合には、Fcは試料押し当て許容推力Fplそのものである。
この図4および図5の処理を3つの各アクチュエータ3に対してそれぞれ、または同時に行い、すべてのアクチュエータの位置決め動作が終了すると副ステージ8は試料9に完全に密着した状態となる。
【0016】
このように、各アクチュエータの移動に必要な推力を確保しつつ、確実に試料9と副ステージ8が接触する目標値に対して位置決め動作を行うので、搬送動作や検査などの場合に重要となる試料9への確実な平面での密着動作をすることができ、なおかつ試料9への押し付け力を制限しているので試料9の破損危険性を減少させることができるのである。
また、接触動作時には最終的に試料9への適正な押し付け力にて押し付け動作を行っているため、確実な密着を保持することができる。
【符号の説明】
【0017】
1 主基台
2 主ステージ
3 距離センサ
4 変換回路
5 制御回路
6 アクチュエータ
7 副基台
8 副ステージ
9 試料
10 コントローラ
11 上位コントローラ
100 本発明の方法を実施する平面位置決めおよび姿勢制御装置である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を載置するための主基台と、前記主基台の上側に対向配置された副基台と、前記副基台上に設けられた3つのアクチュエータと、前記副基台からバネを介して吊り下げられるとともに、前記3つのアクチュエータによって位置および姿勢が制御される副ステージと、前記副基台と前記副ステージとの間の距離を計測する距離センサと、を備え、前記副ステージを前記試料に接触させるステージ装置において、
前記試料の厚さ方向の公差を接触時最大位置決め誤差と定義したとき、以下のステップ(1)〜(5)を含むことを特徴とするステージ装置の制御方法:
(1)前記3つのアクチュエータの各出力推力制限値FL[p]を、予め求めた、前記試料が存在しない場合に位置決め処理した場合の前記各出力推力に前記試料が許容する押し当て力を加えた値とする第1のステップ。
(2)前記副ステージの位置許容偏差を、副ステージに設定された位置許容偏差に、前記接触時最大置決め誤差を加えた値とする第2のステップ。
(3)前記副ステージの位置決め目標位置を、試料が理想試料である場合の接触位置に、前記接触時最大置決め誤差を加えた値とする第3のステップ。
(4)前記3つのアクチュエータの各出力推力Fを、前記推力制限値FL[p]以下に制限しながら、前記副ステージを降下させる第4のステップ。
(5)前記各出力推力Fのいずれかが、前記推力制限値FL[p]を超えた場合、当該アクチュエータの位置決め目標位置を現在位置へと変更し、前記試料に該アクチュエータが接触したと判断する第5のステップ。
【請求項2】
前記第5のステップ(5)に代えて、以下のステップ(6)としたことを特徴とする請求項1記載のステージ装置の制御方法:
(6)前記各出力推力Fのいずれもが、推力制限値FL[p]を超えることなく位置決めが完了した場合、前記試料に該アクチュエータが接触したと判断する第6のステップ。
【請求項3】
試料を載置するための主基台と、前記主基台の上側に対向配置された副基台と、前記副基台上に設けられた3つのアクチュエータと、前記副基台からバネを介して吊り下げられるとともに、前記3つのアクチュエータによって位置および姿勢が制御される副ステージと、前記副基台と前記副ステージとの間の距離を計測する距離センサと、を備え、前記副ステージを前記試料に接触させるステージ装置において、
前記3つのアクチュエータの各出力推力制限値FL[p]を、予め求めた、前記試料が存在しない場合に位置決め処理した場合の前記各出力推力に前記試料が許容する押し当て力を加えた値とするステップを処理する第1の処理手段と、
前記副ステージの位置許容偏差を、副ステージに設定された位置許容偏差に、前記接触時最大置決め誤差を加えた値とするステップを処理する第2の処理手段と、
前記副ステージの位置決め目標位置を、試料が理想試料である場合の接触位置に、前記接触時最大置決め誤差を加えた値とするステップを処理する第3の処理手段と、
前記3つのアクチュエータの各出力推力Fを、前記推力制限値FL[p]以下に制限しながら、前記副ステージを降下させるステップを処理する第4の処理手段と、
前記各出力推力Fのいずれかが、前記推力制限値FL[p]を超えた場合、当該アクチュエータの位置決め目標位置を現在位置へと変更し、前記試料に該アクチュエータが接触したと判断するステップを処理する第5の処理手段と、
を備えたことを特徴とするステージ装置。
【請求項4】
前記第5の処理手段に代えて、前記各出力推力Fのいずれもが、推力制限値FL[p]を超えることなく位置決めが完了した場合、前記試料に該アクチュエータが接触したと判断するステップを処理する第6の処理手段としたことを特徴とする請求項3記載のステージ装置。
【請求項5】
請求項3または4記載のステージ装置を備えた搬送装置において、
前記副ステージが前記試料を吸着し、水平方向へ移動することにより、前記試料を搬送することを特徴とする搬送装置。
【請求項6】
請求項3または請求項4に記載のステージ装置を備えた検査装置において、
前記ステージ装置に載置された試料を検査することを特徴とする検査装置。
【請求項7】
請求項3または4記載のステージ装置を備えた平面加工装置において、
前記ステージ装置に載置された試料の平面を加工することを特徴とする平面加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−231555(P2010−231555A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79101(P2009−79101)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】