説明

ステーブクーラの補修構造および補修方法

【課題】溶損による漏水発生部を有するステーブクーラであっても、その損耗を充分に緩和する。
【解決手段】第1のステーブクーラ1と、第1のステーブクーラ1の上方に配置される第2のステーブクーラ12と、第1のステーブクーラの下方に配置される第3のステーブクーラと備えるステーブクーラの補修構造である。(i)第1の管2のうちで、高炉の炉内原料との接触による摩耗、あるいは熱負荷による損耗により第1の管2の一部が破損することにより発生した漏水発生部3aから第1の給水口2aまたは第1の排水口2bまでの区間である不健全部3を除いた健全部14に連通して設けられるとともに、健全部14との間で冷却水を流通させる短絡水路を内部に有する第1の短絡管9-1と、(ii)健全部14および第1の短絡管9-1を流通する冷却水を、第2の冷却水路13または第3の冷却水路との間で流通させるためのバイパス管とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉炉壁に設置されるとともに内部に冷却水路を有するステーブクーラの補修構造および補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉の炉体鉄皮は、内張りされる多数の耐火物によって、保護される。これら耐火物を保護するとともに耐火物が消失した時の炉体鉄皮を保護するため、冷却手段が設置される。
または、炉体鉄皮を保護するため、冷却手段のみが設置される。
このような冷却手段としてステーブクーラ(「クーリングステーブ」などともいわれる。本発明明細書では、「ステーブ」ともいう。)が多用される。
【0003】
図5は、高炉炉壁の内部近傍に設置されるステーブ100aの概略を示す縦断面図である。
同図に示すように、ステーブ100aはステーブ本体100bを有する。ステーブ本体100bは、鋳鉄製又は銅、銅合金製の冷却板である。ステーブ本体100bは、冷却水路100cとしてパイプを内蔵する。あるいは銅、銅合金に孔加工を行い、冷却水路を形成する。図5では、図面を簡略化するために冷却水路100cが1本しか図示されていないが、通常、1個のステーブ100aに冷却水路100cが4本程度設けられる。ステーブ本体100bの炉内面側(図5における左方側)には凹凸部が設けられている。耐火物100dは凹部に埋設される。耐火物100dは、炉内からの抜熱を減少するとともに、ステーブ本体100bへの炉内の急激な熱負荷を回避する。
【0004】
ステーブ100aは、おおよそ、縦2m、横1m、厚さ0.15m程度の寸法を有する。ステーブ100aは、炉体への設置の際には、通常、炉体の円周方向に複数列、上下方向に複数段設置される。
【0005】
図6は、炉体の上下方向へ5段、円周方向へ1列設置されたステーブ100aの設置状況の概略を示す説明図である。
同図に示すように、給水本管101から最下段のステーブ冷却水路の下部を介して給水された冷却水は、最下段のステーブ100aの冷却水路の上部から、一つ上の段のステーブ100a(実線で示す)の冷却水路100cの下部に流れ、この冷却水路100cの上部から、さらに一つ上の段のステーブ100aの下部から給水される。このようにして、最上段のステーブ100aの冷却水路を介して、排水本管102に回収される。
【0006】
図6は、上下方向へ5段、円周方向へ1列設置されたステーブにおいて、1系統の給排水系統を示しており、他の3系統については図示していないが、同様な給排水系統を有している。
【0007】
ステーブ本体100bの炉内原料との接触による摩耗、あるいは熱負荷による損耗により減肉し内部の冷却水路100cが破損して炉内へ漏水すると、操業に多大な影響を生じる。炉内への漏水を伴うような冷却水路100cの破損が発生したステーブ100aの根本的な補修は、いうまでもなく、このステーブ100aを交換することである。しかし、冷却水路100cが破損したステーブ100aの交換は、長時間の減尺休風作業を伴う大掛かりな補修作業を要するため、容易に実施できない。
【0008】
したがって、ステーブ100aの冷却水路100cの破損を検知した場合には、作業員が、冷却配管100cが破損したステーブ100aを、冷却水流通系から切り離して(本明細書ではこの切り離しを「縁切り」という)このステーブ100aへの給水を減じて、炉内への冷却水の流出を最小限に止めるといった、応急的な対策が求められる。
【0009】
特許文献1には、ステーブの冷却水路の溶損部分を縁切りする作業時間を短く、かつ、安全を確保することを目的として、ステーブの給水配管および排水配管それぞれに三方弁を設けておき、これら三方弁の間にバイパス配管を設ける発明が開示されている。この発明によれば、ステーブの冷却配管が溶損した場合には、冷却水をバイパス配管に流通させることによって冷却水路に破損を生じたステーブ以外のステーブの冷却水路に冷却水を流通させ、溶損した冷却水路を有するステーブを迅速に縁切りすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−152379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1に開示された発明では、溶損が発生した冷却水路を有するステーブは、破損部を含むその冷却系統全体が機能しなくなり、全く冷却されないこととなってしまう。このため、特許文献1により開示された発明であっても、縁切り後に何らかの溶損抑制手段を講じる必要がある。本発明者らは、以下の検討を行った。
【0012】
図7は、ステーブクーラ1の内部の冷却水路2の破損後の損耗抑制方法であるフレキシブルチューブ6の挿入法を示す説明図である。なお、図7および後述する図8における符号1はステーブクーラであり、符号2は冷却水路(管)2であり、符号3aは漏水発生部であり、符号4は炉体鉄皮であり、符号5は耐火物である。
【0013】
本発明者らは、まず、図7に示すようにフレキシブルチューブ6の挿入を実施し、ステーブクーラ1への通水を継続することを行った。この方法では、熱伝導率の確保のために、フレキシブルチューブ6とステーブクーラ1の内部の冷却水路2の内面間に熱伝導率の高い耐火物7を充填した。しかしそれにも関わらず、フレキシブルチューブ6の冷却効果は、通常の破損していない冷却水路の冷却効果よりも低いため、ステーブクーラ1の損耗進行が加速された。また、冷却水路2の破損が一部であっても、フレキシブルチューブ6は水路全体に挿入するため、冷却効果の低下はステーブクーラ1全体に及ぶ。
【0014】
図8は、上記フレキシブルチューブ6が破損した後に、ステーブクーラ1に替わる炉体保護装置としてピン冷却盤8を設置した状況を示す説明図である。
フレキシブルチューブ6が破損した場合、ステーブクーラ1への通水を停止し、ステーブ1に替わる炉体保護装置として、冷却盤や図8に示すようなピン冷却盤8を設置したが、冷却盤やピン冷却盤8による冷却効果は局部的であるため、炉体保護機能が低下する。
【0015】
いずれにしても、これらの方法では、冷却水路が破損したステーブクーラ1の損耗を、何も対策を講じない場合よりは緩和できるものの、その緩和効果は不充分である。
このように、従来の技術では、縁切りされたステーブクーラの損耗は、破損していない健全部も含めて、いっそう激しくなる。本発明の目的は、破損による漏水発生部を有するステーブクーラであっても、炉内への漏水を防止しながらその損耗を充分に緩和することができるステーブクーラの補修構造および補修方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、破損による漏水発生部を有するステーブクーラであっても、その一部に破損が発生していない健全部が残存することに着目して鋭意検討を重ねた結果、従来の技術のように漏水発生部を有するステーブクーラを完全に縁切りするのではなく、漏水発生部を迂回して健全部に冷却水を流通させれば、健全部の冷却効果は維持が可能で、炉内への漏水を解消しながら不健全部の損耗を充分に緩和できることを知見し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。
【0017】
本発明は、図1〜3により示すように、両端に第1の給水口2aおよび第1の排水口2bを有する第1の冷却水路2を内蔵する第1のステーブ本体1aを備えるとともに高炉の炉体鉄皮4の内部近傍に設置される第1のステーブクーラ1と、両端に第2の給水口13aおよび第2の排水口(図示しない)を有する第2の冷却水路13を内蔵する第2のステーブ本体12aを備えるとともに第1のステーブクーラ1の上方に配置される第2のステーブクーラ12と、両端に第3の給水口および第3の排水口を有する第3の冷却水路を内蔵する第3のステーブ本体を備えるとともに第1のステーブクーラ1の下方に配置される第3のステーブクーラ(第3のステーブクーラは第1のステーブクーラ1と同じ構成を有するので図示を省略する)と備えるステーブクーラの補修構造であって、
(i)第1の冷却水路(管)2のうちで、炉内原料との接触による摩耗、あるいは熱負荷による損耗により第1の冷却水路の一部が破損することにより発生した漏水発生部3aから第1の給水口2aまたは第1の排水口2bまでの区間である不健全部3を除いた健全部14に連通して設けられるとともに、健全部14との間で冷却水を流通させる短絡水路を内部に有する第1の短絡管(「バイパス用ピン」ともいう)9−1と、
(ii)健全部14および第1の短絡管9−1を流通する冷却水を、第2の冷却水路13または第3の冷却水路との間で流通させるためのバイパス管(図示しない)と
を備えることを特徴とするステーブクーラの補修構造0である。
【0018】
別の観点からは、本発明は、両端に第1の給水口2aおよび第1の排水口2bを有する第1の冷却水路2を内蔵する第1のステーブ本体1bを備えるとともに高炉の炉体鉄皮4の内部近傍に設置される第1のステーブクーラ1と、両端に第2の給水口13aおよび第2の排水口を有する第2の冷却水路13を内蔵する第2のステーブ本体12aを備えるとともに第1のステーブクーラ1の上方に配置される第2のステーブクーラ12と、両端に第3の給水口および第3の排水口を有する第3の冷却水路を内蔵する第3のステーブ本体を備えるとともに第1のステーブクーラ1の下方に配置される第3のステーブクーラとを、炉体鉄皮4の内部近傍に設置された高炉の操業時に、炉内原料との接触による摩耗、あるいは熱負荷による損耗によって第1の冷却水路の一部が破損して漏水発生部3aが発生した後に、
炉体鉄皮4および第1のステーブ本体1aをいずれも穿孔して、漏水発生部3aから第1の給水口2aまたは第1の排水口2bまでの区間である不健全部3を除いた健全部14に、健全部14との間で冷却水を流通させる短絡水路を内部に有する第1の短絡管9−1を、健全部14に連通して設け、さらに、
健全部14および第1の短絡管9−1を流通する冷却水を、第2の冷却水路13または第3の冷却水路との間で流通させるためのバイパス管を設けて、
第3の冷却水路、健全部14、第1の短絡管9−1、バイパス管および第2の冷却水路13の順に、もしくは、第3の冷却水路、バイパス管、第1の短絡管9−1、健全部14および第2の冷却水路13の順に、冷却水を流しながら第1のステーブクーラ1を補修することを特徴とするステーブクーラの補修方法である。
【0019】
本発明では、図1〜3に例示されるように漏水発生部3aが第1の排水口2bに近い位置に存在する場合には、第1の短絡管9−1が、漏水発生部3aよりも第1の給水口2aの側の第1の冷却水路2に連通して設けられるとともに、バイパス管が、第1の短絡管9−1と第2の給水口13aとを接続することが好ましく、図1〜3に例示されるのとは異なり漏水発生部3aが第1の給水口2aに近い位置に存在する場合には、第1の短絡管9−1が、漏水発生部3aよりも第1の排水口2bの側の第1の冷却水路2に連通して設けられるとともに、バイパス管が、第3の排水口と第1の短絡管9−1とを接続することが好ましい。
【0020】
本発明では、第1の短絡管9−1が、炉体鉄皮4に設けられた穿孔部4aに隙間を有して挿設されるとともに、第1のステーブ本体1aに設けられた穿孔部1bに取り外し可能かつ密封状態で取り付けられるようにしてもよい。この場合、第1のステーブ本体1aに設けられた穿孔部1bの内径よりも大きな外径を有する山形部9が、穿孔部1bに取り付けられる前の第1の短絡管9−1の外面に環状に設けられ、かつ、穿孔部1bに取り付けられた後の第1の短絡管9−1の外面が、山形部9の頂部9aが潰れることにより、メタルタッチで穿孔部1bの内面に接触することが好ましい。これにより、穿孔部1bと第1の短絡管9−1との間からの漏水が防止される。
【0021】
さらに本発明では、第1の短絡管9−1における第1の冷却水路2の側の端部は、第1の短絡管9−1の軸方向について閉止されるとともに、第1の短絡管9−1の軸方向の側面に第1の冷却水路2に接続する開孔を有し、かつ、第1の短絡管9−1における第1の冷却水路2の反対の側の端部は開放されることが好ましい。これにより、健全部14に冷却水を流通させても、漏水発生部3aからの漏水が防止される。
【0022】
また本発明では、図2に例示されるように、さらに、不健全部3の第1の管2、および、不健全部3の第1の管2に連通して設置された第2の短絡管9−2それぞれの内部に挿設され、かつ内部に冷却水を流通させるフレキシブルチューブ6を備えることが好ましい。これにより、不健全部3の損傷の進行をさらに遅らせることが可能である。
【0023】
さらにまた本発明では、図3に例示されるように、さらに、不健全部3に設置されたピン冷却盤8を備えることが好ましい。これにより、不健全部3の損傷の進行をさらに遅らせることが可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、溶損による漏水発生部3aを有するステーブクーラ1であっても、第1の短絡管9−1およびバイパス管を設置して、冷却水を漏洩することなく、不健全部3を迂回して健全部14への通水を実現することができるので、炉内への漏水を確実に防止しながらステーブクーラ1の健全部14は本来の冷却効果が維持され、不健全部3の損耗も緩和することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明に係るステーブクーラの補修構造の一例を示す説明図であり、第1のステーブクーラ本体に第1の短絡管(バイパス用ピン)を設けることにより、冷却水路を変更する状況を示す。
【図2】図2は、本発明に係るステーブクーラの補修構造の他の一例を示す説明図であり、第1の短絡管(バイパス用ピン)を用いることにより、漏水発生部にのみフレキシブルチューブの挿入を行うことを示す。
【図3】図3は、本発明に係るステーブクーラの補修構造のさらに他の一例を示す説明図であり、第1の短絡管(バイパス用ピン)を用いることにより、不健全部発生部にのみピン冷却盤を設置する状況を示す。
【図4】図4は、第1の短絡管のシール機構を示す説明図である。
【図5】図5は、高炉炉壁の内部近傍に設置されるステーブの概略を示す縦断面図である。
【図6】図6は、炉体の上下方向へ5段、円周方向へ1列設置されたステーブの設置状況の概略を示す説明図である。
【図7】図7は、ステーブクーラの内部の冷却水路の破損後の損耗抑制方法であるフレキシブルチューブの挿入法を示す説明図である。
【図8】図8は、フレキシブルチューブの破損後にステーブクーラに替わる炉体保護装置として設置するピン冷却盤を示す補修方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るステーブクーラの補修構造0の一例を示す説明図であり、第1のステーブクーラ本体1aに第1の短絡管(バイパス用ピン)9−1を設けることにより、冷却水路を変更する状況を示す。図2は、本発明に係るステーブクーラの補修構造0の他の一例を示す説明図であり、第1の短絡管(バイパス用ピン)9−1を用いることにより、不健全部3にのみフレキシブルチューブ6の挿入を行うことを示す。さらに、図3は、本発明に係るステーブクーラの補修構造0のさらに他の一例を示す説明図であり、第1の短絡管(バイパス用ピン)9−1を用いることにより、漏水発生部3にのみピン冷却盤8を設置する状況を示す。
【0027】
図1〜3における符号1は第1のステーブクーラを示し、符号1aはステーブクーラ本体を示し、符号2は第1の冷却水路を示し、符号3aは漏水発生部を示し、符号4は炉体鉄皮を示し、符号5は耐火物を示し、符号6はフレキシブルチューブ6を示し、符号8はピン冷却盤を示し、符号9−1は第1の短絡管(バイパス用ピン)を示す。
【0028】
補修構造0は、第1のステーブクーラ1と、第1のステーブクーラ1の上方に配置される第2のステーブクーラ12と、第1のステーブクーラ1の下方に配置される第3のステーブクーラとを備える。なお、第3のステーブクーラは第1のステーブクーラ1と同じ構成を有するので図示を省略する。
【0029】
第1のステーブクーラ1は、図1〜3に示されるように、高炉の炉体鉄皮4の内部近傍に設置される。第1のステーブクーラ1は第1のステーブ本体1aを備える。第1のステーブ本体1aは、第1の冷却水路2を内蔵する。第1の管2は、両端に第1の給水口2aおよび第1の排水口2bを有する。
【0030】
第2のステーブクーラ12は第2のステーブ本体12aを備える。第2のステーブ本体12aは、第2の冷却水路13を内蔵する。第2の管13は、両端に第2の給水口13aおよび第2の排水口(図示しない)を有する。
【0031】
さらに、第3のステーブクーラは第3のステーブ本体を備える。第3のステーブ本体は、第3の冷却水路を内蔵する。第3の冷却水路は、両端に第3の給水口および第3の排水口を有する。
【0032】
本発明に係る補修構造0は、第1の短絡管(バイパス用ピン)9−1を有する。第1の短絡管(バイパス用ピン)9−1は、炉内原料との接触による摩耗、あるいは熱負荷による損耗冷却水路により発生した漏水発生部3よりも第1の給水口2aの側に、第1の給水口2aの側の第1の冷却水路に連通して設けられる。第1の短絡管(バイパス用ピン)9−1は、第1の給水口2aから供給される冷却水を流通させる短絡水路を内部に有する。
【0033】
このように、第1の短絡管(バイパス用ピン)9−1は、第1の管2のうちで漏水発生部3aから第1の給水口2aまたは第1の排水口2bまでの区間である不健全部3を除いた健全部14に連通して設けられる。そして、第1の短絡管(バイパス用ピン)9−1は、健全部14との間で冷却水を流通させる短絡水路を内部に有する。
【0034】
本発明では、第1の短絡管9−1が、炉体鉄皮4に設けられた穿孔部4aに隙間を有して挿設されるとともに、第1のステーブ本体1aに設けられた穿孔部1bに取り外し可能かつ密封状態で取り付けられるようにしてもよい。
【0035】
図1〜3に示すように、第1のステーブクーラ1の本体1aに1箇所の孔を穿設し、後部の配管と繋がる水路を有する第1の短絡管(バイパス用ピン)9−1を、漏水発生部3よりも第1の給水口2aの側に設け、この第1の短絡管(バイパス用ピン)9−1を介して冷却水を上段の他のステーブクーラ(第2のステーブクーラ)12へバイパスする。これにより、第1のステーブクーラ1の補修を不健全部3に限定し、健全部14への通水を継続して冷却効果の維持を図ることができる。図1〜3に示すような補修方法を実現するには、第1のステーブクーラ1と第1の短絡管(バイパス用ピン)9−1との間をシールし、漏水することなく冷却水をパイパスすることが好ましい。
【0036】
第1の短絡管(バイパス用ピン)9−1は、その外形は炉体鉄皮4の穿孔部、および第1のステーブクーラ本体1aの穿孔部に取り外し可能に取り付け可能とするために、長尺の円柱形状であることが好ましい。
【0037】
第1の短絡管9−1における第1の冷却水路2の側の端部が、第1の短絡管9−1の軸方向である炉内側について閉止されるとともに、第1の短絡管9−1の軸方向の側面に第1の冷却水路2に接続する開孔を有し、かつ、第1の短絡管9−1における第1の冷却水路2の反対の側の端部は開放されることが好ましい。これにより、健全部14に冷却水を流通させても、漏水発生部3aからの漏水が防止される。
【0038】
第1の短絡管9−1の他端9bが開放されることによって、第1の短絡管9−1の給水部または排水部として、外部配管と接続することができる。また、第1の短絡管9−1のもう一方の他端が、炉内側に対して炉内への漏水を避けるために閉止されているとともにこのもう一方の他端の側面から外部に対して開孔していれば、健全部14である、漏水発生部3よりも第1の給水口2aの側の第1の冷却水路に接続することができるからである。
【0039】
第1の短絡管9−1の材質は、銅もしくは銅合金製、または鋳鉄製などが好適である。
第1のステーブ本体1aに設けられた穿孔部1bの内径よりも大きな外径を有する山形部9aが、穿孔部1bに取り付けられる前の第1の短絡管9−1の外面に環状に設けられ、かつ、穿孔部1bに取り付けられた後の第1の短絡管9−1の外面が、山形部9aの頂部9bが潰れることにより、メタルタッチで穿孔部1bの内面に接触することが好ましい。
【0040】
第1の短絡管9−1と第1のステーブクーラ本体1aとの間のシール方法として、第1の短絡管9−1本体と第1のステーブクーラ本体1aの穿孔部(ピン挿入孔)にネジ加工またはタップ加工を行うことが考えられる。しかし、炉体周囲は非常に狭く、工作機械を搬入して第1のステーブクーラ本体1aの現場加工を行うことは非常に困難である。
【0041】
図4は、第1の短絡管9−1のシール機構を示す説明図である。
図4に示すように、第1のステーブ本体1aに設けられた穿孔部1bの内径よりも大きな外径を有する山形部9aを、穿孔部1bに取り付けられる前の第1の短絡管9−1の外面に環状に設けておき、第1のステーブクーラ本体1aへ挿入することによって山形部9aの頂部を潰して、第1のステーブクーラ本体1aと第1の短絡管9−1とをメタルタッチで接触させ、第1のステーブクーラ本体1aに対する穿孔加工がコアボーリング等の簡易な穴加工であっても、第1の短絡管9−1とのシールを可能な構造とすることが好ましい。
【0042】
第1の短絡管9−1の寸法の一例を挙げると、外径が75mmに対して山形部9aの高さ2.5mm、山形部9aと隣の山形部9aの裾部との間隔が8mmであることが好ましい。
【0043】
なお、山形部9aの寸法は、上述したシール機能を発揮できる寸法であればよく、炉体鉄皮4や第1のステーブクーラ本体1aの穿孔部の形状にも依存するので、上記の形状に限定する必要はない。
【0044】
漏水発生部3aを有する第1のステーブクーラ1の第1の冷却水路において、漏水発生部3aの影響を受けない健全部14に、炉体鉄皮4および第1のステーブクーラ本体1aそれぞれの穿孔部を形成する。上述したようにこれら穿孔部に第1の短絡管9−1を挿設する。挿入に際して、ロックタイト(ヘンケル社製の商品名)に代表される、潤滑剤や接着剤機能を有するペースト材を第1の短絡管9−1の外周に塗布することが、メタルタッチによるシール機能をより効果的に発揮するために、好ましい。
【0045】
また、本発明に係る補修構造0は、図示しないバイパス管を有する。バイパス管は、第1の短絡管9−1の排水口9bと、第1のステーブクーラ1とは異なる第2のステーブクーラ12の第2のステーブ本体12aに内蔵される第2の冷却水路13を構成する第2の管13の第2の給水口13aとを連通させる。
【0046】
このように、バイパス管は、健全部14および第1の短絡管9−1を流通する冷却水を、第2の冷却水路13または第3の冷却水路との間で流通させる。
本発明に係る補修構造0は、図2に示すように、さらにフレキシブルチューブ6を備えていてもよい。フレキシブルチューブ6は、不健全部3の第1の管2、および、不健全部3の第1の管2に連通して設置された第2の短絡管9−2それぞれの内部に挿設され、かつ内部に冷却水を流通させる。これにより、不健全部3の損傷の進行をさらに遅らせることが可能である。
【0047】
本発明に係る補修構造0は、図3に示すように、さらに、不健全部3に設置されたピン冷却盤8を備えていてもよい。これにより、不健全部3の損傷の進行をさらに遅らせることが可能である。
【0048】
本発明に係る補修構造0の、上記以外の各部は、公知のステーブクーラ設置構造と同じでよく、当業者にとっては周知であるので、本発明に係る補修構造0の、上記以外の各部の説明は省略する。本発明に係る補修構造0は、以上のように構成される。次に、本発明に係る補修方法を説明する。
【0049】
図1〜3に示すように、第1のステーブクーラ1と、第1のステーブクーラ1の上方に配置される第2のステーブクーラ12と、第1のステーブクーラ1の下方に配置される第3のステーブクーラとを、炉体鉄皮4の内部近傍に設置された高炉の操業時に、炉内原料との接触による摩耗、あるいは熱負荷による損耗によって第1の冷却水路の一部が破損して漏水発生部3aが発生する。
【0050】
漏水発生部3aが発生した後、炉体鉄皮4および第1のステーブ本体1aをいずれも穿孔して、漏水発生部3aから第1の給水口2aまたは第1の排水口2bまでの区間である不健全部3を除いた健全部14に、健全部14との間で冷却水を流通させる短絡水路を内部に有する第1の短絡管9−1を、健全部14に連通して設ける。
【0051】
さらに、健全部14および第1の短絡管9−1を流通する冷却水を、第2の冷却水路13または第3の冷却水路との間で流通させるためのバイパス管を設ける。
この後、(a)第3の冷却水路、健全部14、第1の短絡管9−1、バイパス管および第2の冷却水路13の順に、もしくは、(b)第3の冷却水路、バイパス管、第1の短絡管9−1、健全部14および第2の冷却水路13の順に、冷却水を流しながら、第1のステーブクーラ1を補修する。これにより、健全部14は本来の冷却効果が維持され、不健全部3の損耗の進行も遅らせることが可能である。
【0052】
この際、必要に応じて、図2に示すように不健全部3にフレキシブルチューブ6を設置したり、図3に示すように不健全部3にピン冷却盤8を設置してもよい。これにより、不健全部14の損傷の進行をさらに遅らせることが可能である。
【0053】
本発明によれば、漏水発生部3が発生したステーブクーラ1に対して冷却水の給水を、従来のように完全に切り離すのではなく、フレキシブルチューブ6の挿設やピン冷却盤8の設置は冷却水路が使用できない不健全部3に限定し、冷却水路2が使用できる健全部14へは第1の短絡管(バイパス用ピン)9−1との間で冷却水を継続して流すことができるので、従来の補修方法において問題であった冷却効果の低下を解決することができる。
また、健全部の冷却効果を維持することより不健全部も熱伝導で冷却され損耗が抑制される。
【0054】
以上の説明では、図1〜3に例示されるように漏水発生部3aが第1の排水口2bに近い位置に存在する場合を例にとったため、第1の短絡管9−1が、漏水発生部3aよりも第1の給水口2aの側の第1の冷却水路2に連通して設けられるとともに、バイパス管が、第1の短絡管9−1と第2の給水口13aとを接続する。しかし、本発明はこの形態に限定されるものではなく、図1〜3に例示されるのとは異なり漏水発生部3aが第1の給水口2aに近い位置に存在する場合には、第1の短絡管9−1が、漏水発生部3aよりも第1の排水口2bの側の第1の冷却水路2に連通して設けられるとともに、バイパス管が、第3の排水口と第1の短絡管9−1とを接続すればよい。
【符号の説明】
【0055】
0 本発明に係る補修構造
1 第1のステーブクーラ
1a 第1のステーブクーラ本体
1b 穿孔部
2 第1の冷却水路
2a 給水口
2b 排水口
3 不健全部
3a 漏水発生部
4 炉体鉄皮
4a 穿孔部
5 耐火物
6 フレキシブルチューブ
7 フレキシブルチューブ保護用耐火物
8 ピン冷却盤
9−1 第1の短絡管(バイパス用ピン)
9b 排水口
9−2 第2の短絡管(バイパス用ピン)
10 バイパス用ピンの山形状シール機構
11 メタルタッチ部位
12 第2のステーブクーラ
12a 第2のステーブクーラ本体
13 第2の冷却水路
13a 給水口
14 健全部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に第1の給水口および第1の排水口を有する第1の冷却水路を内蔵する第1のステーブ本体を備えるとともに高炉の炉体鉄皮の内部近傍に設置される第1のステーブクーラと、両端に第2の給水口および第2の排水口を有する第2の冷却水路を内蔵する第2のステーブ本体を備えるとともに前記第1のステーブクーラの上方に配置される第2のステーブクーラと、両端に第3の給水口および第3の排水口を有する第3の冷却水路を内蔵する第3のステーブ本体を備えるとともに前記第1のステーブクーラの下方に配置される第3のステーブクーラと備えるステーブクーラの補修構造であって、
前記第1の管のうちで、前記高炉の炉内原料との接触による摩耗、あるいは熱負荷による損耗により前記第1の管の一部が溶損することにより発生した漏水発生部から前記第1の給水口または前記第1の排水口までの区間である不健全部を除いた健全部に連通して設けられるとともに、当該健全部との間で冷却水を流通させる短絡水路を内部に有する第1の短絡管と、
前記健全部および前記第1の短絡管を流通する冷却水を、前記第2の冷却水路または前記第3の冷却水路との間で流通させるためのバイパス管を備えることを特徴とするステーブクーラの補修構造。
【請求項2】
前記第1の短絡管は、漏水発生部よりも前記第1の給水口の側の前記第1の冷却水路管に連通して設けられるとともに、前記バイパス管は、前記第1の短絡管と前記第2の給水口とを接続する請求項1に記載されたステーブクーラの補修構造。
【請求項3】
前記第1の短絡管は、漏水発生部よりも前記第1の排水口の側の前記第1の冷却水路管に連通して設けられるとともに、前記バイパス管は、前記第3の排水口と前記第1の短絡管とを接続する請求項1に記載されたステーブクーラの補修構造。
【請求項4】
前記第1の短絡管は、前記炉体鉄皮に設けられた穿孔部に隙間を有して挿設されるとともに、前記第1のステーブ本体に設けられた穿孔部に取り外し可能かつ密封状態で取り付けられる請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載されたステーブクーラの補修構造。
【請求項5】
前記第1のステーブ本体に設けられた穿孔部の内径よりも大きな外径を有する山形部が、前記穿孔部に取り付けられる前の前記第1の短絡管の外面に環状に設けられ、かつ、前記穿孔部に取り付けられた後の前記第1の短絡管の外面は、前記山形部の頂部が潰れることにより、メタルタッチで前記穿孔部の内面に接触する請求項4に記載されたステーブクーラの補修構造。
【請求項6】
前記第1の短絡管における前記第1の冷却水路の側の端部は、該第1の短絡管の軸方向について閉止されるとともに、該第1の短絡管の軸方向の側面に前記第1の冷却水路に接続する開孔を有し、かつ、前記第1の短絡管における前記第1の冷却水路の反対の側の端部は開放される請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載されたステーブクーラの補修構造。
【請求項7】
さらに、前記不健全部の前記第1の冷却水路、および、該不健全部の第1の冷却水路に連通して設置された第2の短絡管それぞれの内部に挿設され、かつ内部に冷却水を流通させるフレキシブルチューブを備えることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載されたステーブクーラの補修構造。
【請求項8】
さらに、前記不健全部に設置されたピン冷却盤を備えることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載されたステーブクーラの補修構造。
【請求項9】
両端に第1の給水口および第1の排水口を有する第1の冷却水路を内蔵する第1のステーブ本体を備えるとともに高炉の炉体鉄皮の内部近傍に設置される第1のステーブクーラと、両端に第2の給水口および第2の排水口を有する第2の冷却水路を内蔵する第2のステーブ本体を備えるとともに前記第1のステーブクーラの上方に配置される第2のステーブクーラと、両端に第3の給水口および第3の排水口を有する第3の冷却水路を内蔵する第3のステーブ本体を備えるとともに前記第1のステーブクーラの下方に配置される第3のステーブクーラとを、炉体鉄皮の内部近傍に設置された高炉の操業時に、当該高炉の内部からの熱負荷によって前記第1の冷却水路の一部が破損して漏水発生部が発生した後に、
前記炉体鉄皮および前記第1のステーブ本体をいずれも穿孔して、前記漏水発生部から前記第1の給水口または前記第1の排水口までの区間である不健全部を除いた健全部に、当該健全部との間で冷却水を流通させる短絡水路を内部に有する第1の短絡管を、前記健全部に連通して設け、さらに、
前記健全部および前記第1の短絡管を流通する冷却水を、前記第2の冷却水路または前記第3の冷却水路との間で流通させるためのバイパス管を設けて、
前記第3の冷却水路、前記健全部、前記第1の短絡管、前記バイパス管および前記第2の冷却水路の順に、もしくは、前記第3の冷却水路、前記バイパス管、前記第1の短絡管、前記健全部および前記第2の冷却水路の順に、冷却水を流し前記第1のステーブクーラを補修すること
を特徴とするステーブクーラの補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−158788(P2012−158788A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18046(P2011−18046)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】