説明

ストラットマウント

【課題】軽量化を図りつつ、ゴム弾性体の耐久性を向上させたストラットマウントを提供することにある。
【解決手段】ショックアブソーバ100のピストンロッド103の上端に取り付けられる内筒金具2と、内筒金具2に弾性部材4を介して連結される外筒金具3とを具え、前記弾性部材4は、内筒金具2および外筒金具3の両者に一体的に取り付けてなり、ショックアブソーバ100と車体との間に配設され、前記内筒金具2は、筒部2aと頂部2bとよりなり、筒部2aの開口端部に径方向外側に延びるストッパ部9を具え、前記弾性部材4の下面側で、内筒金具2と外筒金具3との間に窪み8aを設け、前記ストッパ部9は窪みより径方向外側まで延在するとともに、外筒金具と軸方向にて対向してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショックアブソーバのピストンロッドと、車体との相対振動を軽減するストラットマウントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車体と、車体を支持する車軸との間には、路面からの車体への振動伝達を軽減するために、図4に斜視図で示すような、ショックアブソーバ100と車体とを、通常ストラットマウント101と呼ばれる防振ブッシュを介して連結することが行われている。
【0003】
このようなストラットマウント101は、例えば、特許文献1に記載された図5に断面図で示すような、コイルスプリング102に内挿したショックアブソーバ100を連結する内筒22と、内筒22の外周側に間隔をおいて配置されて車体に取り付けられる外筒23とを、それらの間に配置したゴム弾性体24で連結してなり、ショックアブソーバの一端部を車体に弾性支持させるとともに、コイルスプリング102の支持荷重を内筒22からゴム弾性体24を介して、車体に弾性支持させるべく機能する。
【0004】
しかるに、このようなストラッドマウントでは、ゴム弾性体24の、内筒22および外筒23に対する接着端面での剪断および圧縮等の弾性変形量が大きく、その弾性変形が内筒22と外筒23との間に位置するゴム弾性体24の表面付近に集中して弾性体の耐久性が低下するおそれがあり、耐久性を確保するためにゴム弾性体24に窪みを設けることが有効であるが、例えば横方向へのスライド方式の割り型でストラッドマウントを製造した場合には、ストッパ部分の軸方向上方に位置するゴム弾性体がアンダーカット形状になり、そこに窪みを成型することが困難であった。
また、窪みを設けた後にストッパ部を別部材で配設した場合には、ストラットマウント全体の重量が増加するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−116078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、軽量化を図りつつ、ゴム弾性体の耐久性を向上させたストラットマウントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のストラットマウントは、ショックアブソーバのピストンロッドの上端に取り付けられる内筒金具と、内筒金具に弾性部材を介して連結される外筒金具とを具え、前記弾性部材は、内筒金具および外筒金具の両者に一体的に取り付けてなり、ショックアブソーバと車体との間に配設されるものであって、前記内筒金具は、筒部と頂部とよりなり、筒部の開口端部に径方向外側に延びるストッパ部を具え、前記弾性部材の下面側で、内筒金具と外筒金具との間に窪みを設け、前記ストッパ部は窪みより径方向外側まで延在するとともに、外筒金具と軸方向にて対向してなることを特徴とするものである。
【0008】
ここで、窪みとは、内筒金具と外筒金具との間に位置するゴム弾性体の、軸方向で最も下面より軸方向上方に入り込んでいるものをいう。
【0009】
このようなストラットマウントにおいてより好ましくは、前記内筒金具には、前記内筒金具の筒部側の開口端部を折り曲げ加工になるストッパ部を設ける。
【0010】
また好ましくは、前記窪みを、内筒金具の筒部側全周にわたって環状に設ける。
【0011】
そしてまた好ましくは、前記外筒金具の下端面に第一ストッパゴムを設ける。
好ましくは、前記ストッパ部の上端面に第二ストッパゴムを設ける。
【0012】
ところで、前記内筒金具は、頂部にピストンロッドの上端を取り付けるピストンロッド取付面を有し、前記ピストンロッド取付面は、弾性部材の、外筒金具より軸方向内側の、上面の最低高さと下面の最高高さとの平均高さとして定義される弾性部材中心高さより高い位置に形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のストラットマウントは、内筒金具が、筒部と頂部とよりなり、筒部の端部に径方向外側に延びるストッパ部を具えることで、外筒金具の下方側への移動を制限して、外筒金具の内筒金具に対する下降限界位置を特定することができ、車体の、周囲部品との余計な干渉を防止することができる。
【0014】
また、弾性部材の下面側で、内筒金具と外筒金具との間に窪みを設け、前記ストッパ部は窪みより径方向外側まで延在するとともに、外筒金具と軸方向にて対向することで、弾性部材の下面側で、内筒金具と外筒金具との間に窪みを設けることで、弾性部材の表面付近の弾性変形を窪み表面の全体にわたって分散させて、局所的な大きな変形を回避することで、弾性部材の耐久性を向上させるとともに、弾性部材への窪みの形成により弾性部材の軽量化を図ることができる。その結果、ストラットマウントの耐久性と軽量化を両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のストラットマウントの一の実施形態を示す、中心軸線を含む縦断面図である。
【図2】本発明のストラットマウントの他の実施形態を示す、中心軸線を含む縦断面図であり、(b)は(a)のb−b線に沿う断面図である。
【図3】本発明のストラッドマウントの製造の作動工程の一例を示す断面図である。
【図4】ショックアブソーバとストラットマウントとの組み合わせ例を示す斜視図である。
【図5】従来のストラットマウントを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しながら本発明のストラットマウントを詳細に説明する。
なお、本発明の実施形態のストラットマウントは、図3に示すストラットマウント101に代えて、ショックアブソーバ100と車体との間に配設されるものである。
【0017】
図1のストラットマウント1では、内筒金具2と、その径方向外方にその外側に間隔をおいて配置された外筒金具3とを具え、これらの内筒金具2および外筒金具3の両者に弾性部材4を、例えば加硫接着等によって一体的に取り付ける。
なお、図において、紙面の上側が車両上側に、紙面の下側が車両下側に対応するものとする。
【0018】
ここで、内筒金具2は、鉄やアルミニウム等の金属製で、下側に向かって次第に大径化する筒部2aと、この筒部2aの小径側の上側開口部を閉塞する頂部2bとよりなる、下側に開放する向きに配置した倒立カップ形状である。この内筒金具2は筒部2aの外周面と頂部2bの一部を弾性部材4のライニング層で覆われている。
なお、ライニング層は、内筒金具2の筒部2aの、下側開口部付近まで延びており、その先端は覆われていないか、バリ程度のものが延びる程度とすることができる。
【0019】
図示の外筒金具3は、鉄やアルミニウム等の金属製の円筒状部材であり、内筒金具2を、軸平行でかつ同軸状に取り囲むように配置されて、弾性部材4内に完全に埋没される。
【0020】
このストラットマウント1の、内筒金具2の頂部2b側には、上側に開放したカップ状をなし、内筒金具2の軸方向の上限位置を特定する上側ストッパ金具5を配設する。
内筒金具2は、ピストンロッド103の上端に締め付け固定され、車体側部品6は、外筒金具3の上側に位置する、弾性部材4の車体取付面7で位置決めされる。
【0021】
このようなストラットマウント1は、内筒金具2が、ショックアブソーバ100のピストンロッド103に固定される一方、外筒金具3が、自動車の車体に装着されることにより、ショックアブソーバ100を車体に対してピストンロッド103と車体との間に入力される上下方向(軸方向)や左右、前後方向(軸直角方向)の振動が、弾性部材4の弾性変形に基づいて吸収および減衰され、併せてショックアブソーバ100の振動減衰作用により、車輪側から車体側に伝達される振動を低減させることができる。また、コイルスプリング102を車体に対して弾性的に連結支持することで、コイルスプリング102を通じて車輪側から車体側に伝達される振動を吸収することもできる。
【0022】
そして、このストラットマウント1では、弾性部材4の下面側の、内筒金具2と外筒金具3との間に窪み8aを配設し、好ましくは上面側に上面窪み8bをも配設し、より好ましくは、これらの窪み8a,8bを内筒金具2の全周にわたって連続させて環状に形成する。
【0023】
これらの窪み8a,8bの深さは、特に限定されるものではないが、少なくとも、ピストンロッド103と車体との間での、上下方向の振動入力に対して弾性部材4に、局部的な大きな変形が生じるのを緩和できる程度での深さで形成することが好ましい。
【0024】
また、このストラットマウント1では、内筒金具2の筒部側の下端部分をフランジ状に折り曲げて、ストッパ部9を形成し、このストッパ部9は窪みより径方向外側まで延在するとともに、外筒金具3と軸方向にて対向する。
【0025】
好ましくは、内筒金具2の折り曲げの起点となる部分より先端側には、弾性部材を設けないか、またはバリ程度の厚さのものとすることで、内筒金具2の端部が拡径したことに起因する残留応力により、弾性部材が加工時や使用中にはがれ落ちるおそれを低減することができる。
【0026】
また好ましくは、特に内筒金具2の末端を折り曲げて拡径した場合に、外筒金具3の軸方向の下端に第一ストッパゴム10aを設けることができ、この構成によりストッパ部9と外筒金具3等との衝突時の異音や、弾性部材と外筒金具3の接着面が破損するおそれを低減することができる。
この第一ストッパゴム10aは外筒金具3の全周にわたって連続または不連続で配置することができる。
【0027】
図2(a)は、本発明のストラットマウントの他の実施形態を示す、中心軸線を含む縦断面図であり、(b)は(a)のb−b線に沿う断面図である。
なお、先の図に示したストラッドマウントと同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0028】
この実施形態では、ストッパ部9端部まで弾性部材が延びて、先端に厚みをもたせて第二ストッパゴム10bを形成する。
これにより、残留応力により弾性部材が加工時や使用中にはがれ落ちるおそれを低減することができつつ、第二ストッパゴム10bにより、ストッパ部9と外筒金具3等の衝突時の異音の異音や、弾性部材と外筒金具3の接着面が破損するおそれを低減することができる。
また、この第二ストッパゴム10bは、図では内筒金具2の筒部2aの下端開口部より外側で、ストッパ部9の全周にわたって不連続であるが、連続で配置することができる。
【0029】
図3は、本発明のストラッドマウントの製造の一例を示す作動工程を示す断面図である。
なお、先の図に示したストラッドマウントと同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0030】
従来は内筒金具にストッパ部を予め形成した後に、内筒金具の外表面に未加硫ゴム等を配置して加硫成型を行うこととしていたため、ストッパ部の型抜きのためには、加硫型を横方向へスライド方式の割り型とすることが必要となり、スライド形式および大型化により、加硫型のコストが上昇するとともに、特にストッパ部付近に位置する弾性部材部分に窪みを形成することが困難となり、結果として、ゴム体積の増加が余儀なくされていたが、図に示す実施形態では内筒金具2の筒部側の下端部分を事後的にフランジ状に折り曲げてストッパ部9を形成することで、上下方向(軸方向)に型抜きされる加硫型で形成した後にストッパ部9を形成することができ、複雑な機構を要さずに単純上下抜き型の使用により型コストを低減するとともに、弾性部材4の下面側の窪み8aを容易に形成することができる。
また、この構成により、部材を増やして重量を増加したり、溶接など弾性部材の耐久性に影響する工程を加える必要がなく、耐久性を向上させることができる。
【0031】
このようなストッパ部9の形成に当たっては、例えば、ストラットマウントの下方向に伸ばした内筒金具2を弾性部材4で被覆した後に、上下型抜き型になる加硫型で加硫して、さらに内筒金具2の筒部側の下端部をフランジ状に折り曲げて変形させることで、ストッパ部9を形成することができる。
【0032】
ところで、このストラットマウント1でより好ましくは、内筒金具2の頂部2bに、ピストンロッド103の上端を取り付けるピストンロッド取付面2cを形成して、このピストンロッド取付面2cの高さhを、弾性部材4の中心高さhより高い位置とする。
【0033】
この場合、弾性部材4の中心高さhとは、弾性部材4の、外筒金具3より半径方向内側の部分における、上面の最低高さhと、下面の最高高さhとの平均高さをいうものとする。より具体的には、弾性部材4の、上面の窪み8bの最下点と、弾性部材の下面の窪み8aの最上点との平均高さである。
【0034】
ピストンロッド取付面2cは、弾性部材4の中心高さhより高い位置に配置することで、弾性部材4をピストンロッド103の上端に対比して低くすることができ、このことによって、外筒金具3の上側に位置する車体取付面7を、ピストンロッド取付面2cに対して低く位置させることができる。その結果、ショックアブソーバ100に対して車体を低い位置で支持することができる。これは、車体の軽量化要求を実現してゆく中で、高い位置に配置されている部品の方が低い位置に配置されている部品よりも軽量化が容易であることに起因して、車体の重心位置が上昇するのを抑えることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 ストラットマウント
2 内筒金具
2a 筒部
2b 頂部
2c ピストンロッド取付面
3 外筒金具
4 弾性部材
5 上側ストッパ金具
6 車体側部品
7 車体取付面
8a 窪み
8b 上面窪み
9 ストッパ部
10a 第一ストッパゴム
10b 第二ストッパゴム
22 内筒
23 外筒
24 ゴム弾性体
100 ショックアブソーバ
101 ストラットマウント
102 コイルスプリング
103 ピストンロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショックアブソーバのピストンロッドの上端に取り付けられる内筒金具と、内筒金具に弾性部材を介して連結される外筒金具とを具え、前記弾性部材は、内筒金具および外筒金具の両者に一体的に取り付けてなり、ショックアブソーバと車体との間に配設されるストラットマウントにおいて、
前記内筒金具は、筒部と頂部とよりなり、筒部の開口端部に径方向外側に延びるストッパ部を具え、前記弾性部材の下面側で、内筒金具と外筒金具との間に窪みを設け、前記ストッパ部は窪みより径方向外側まで延在するとともに、外筒金具と軸方向にて対向してなることを特徴とするストラットマウント。
【請求項2】
前記内筒金具には、前記内筒金具の筒部側の開口端部を折り曲げ加工になるストッパ部を設けてなる請求項1に記載のストラットマウント。
【請求項3】
前記窪みを、内筒金具の筒部側全周にわたって環状に設けてなる請求項1または2に記載のストラットマウント。
【請求項4】
前記外筒金具の下端面に第一ストッパゴムを設けてなる請求項1〜3のいずれかに記載のストラットマウント。
【請求項5】
前記ストッパ部の上端面に第二ストッパゴムを設けてなる請求項1〜4のいずれかに記載のストラットマウント。
【請求項6】
前記内筒金具は、頂部にピストンロッドの上端を取り付けるピストンロッド取付面を有し、前記ピストンロッド取付面は、弾性部材の、外筒金具より軸方向内側の、上面の最低高さと下面の最高高さとの平均高さとして定義される弾性部材中心高さより高い位置に形成してなる請求項1〜5のいずれかに記載のストラットマウント。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−127430(P2012−127430A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279674(P2010−279674)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】