説明

ストレージ装置及びストレージ装置のデータ消去方法

【課題】記録されているデータを上書き消去する際に費やす時間を短縮する。
【解決手段】ディスクアレイ装置2は、パリティを用いてデータを冗長に記録するRAIDが構成されたハードディスクドライブ部25と、ハードディスクドライブ部25にデータを記録する指示を受信するとハードディスクドライブ部25に当該データを冗長に記録するデータ処理部22Aと、ハードディスクドライブ部25に記録されているデータを上書き消去する指示を受信するとランダムパターンのデータを生成するデータ生成部22Bと、当該ランダムパターンのデータを生成した後、ハードディスクドライブ部25に記録されているパリティを除くデータの格納場所を読み出し、その読み出したデータの格納場所に対してランダムパターンのデータを用いて上書き消去する処理をする上書き処理部22Cとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録しているデータを消去可能に構成されたストレージ装置及びそのストレージ装置のデータ消去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスクアレイ装置等のストレージ装置に搭載された複数のハードディスクドライブを用いてパリティを有するRAID(Redundant Arrays of Inexpensive (もしくはIndependent) Disks)を構成し、データ保存の信頼性を高める技術が知られている。
【0003】
このようなRAIDが構成されたストレージ装置に記録されているデータを更新する場合、例えば、4キロバイト程度の小ブロックのライト処理を行なうときは、更新対象となるデータと更新前のパリティとを記録部から読み込み、そして、更新対象となるデータ、更新前のパリティ、更新後のデータに基づいて更新パリティを作成した後、更新データ及び更新パリティを記録部に書き込むという手順が必要となる。
【0004】
また、このようなストレージ装置に記録されているデータを例えば乱数データを用いてデータを上書き消去する場合も、既述のデータの更新時と同様にパリティの更新処理を行なう必要がある。
【0005】
なお、ストレージ装置に記録されているデータを消去する技術に関連するものとして、ストレージ装置内のハードディスクコントローラが発生させた乱数データを用いて、ハードディスクドライブに記録されている特定のデータを消去する技術(例えば、特許文献1参照)、完全消去コマンドを導入し、ホストからストレージ・デバイスへのデータ転送を必要とすることなく、ストレージ・デバイスのストレージ空間の特定のエリアの消去を制御する技術(例えば、特許文献2参照)が知られている。さらに、パリティを有するRAID構成において、データを記憶するユニットとパリティを記憶するユニットとを識別情報にて識別することができる技術(例えば、特許文献3参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−031268号公報
【特許文献2】特開2007−011522号公報
【特許文献3】特開2008−198049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
RAIDが構成されたストレージ装置の廃棄時に、例えば情報漏洩防止を目的としてストレージ装置に記録されている全てのデータの消去を行なうことが一般的に行なわれている。データ消去の方法として、電気的、磁気的にストレージ装置内のハードディスクドライブを塗りつぶす第1の方法、又はハードディスクドライブを物理的に破壊する第2の方法、及びハードディスクドライブに記録されているデータを上書き消去する第3の方法が考えられる。
【0008】
このうち、作業環境面及び費用対効果を考えると、上記第3の方法が最も現実的である。
【0009】
しかしながら、上記第3の方法により全てのデータを上書き消去する場合、消去処理に時間を要する点が問題となっていた。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、記録されているデータを上書き消去する際に費やす時間を短縮することができるストレージ装置及びストレージ装置のデータ消去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ストレージ装置において、パリティを用いてデータを冗長に記録するRAIDが構成された記録部と、前記記録部にデータを記録する指示を受信すると、前記指示に基づいて前記記録部に前記データを冗長に記録するデータ処理部と、前記記録部に記録されているデータを上書き消去する指示を受信すると、ランダムパターンのデータを生成するデータ生成部と、前記データ生成部で前記ランダムパターンのデータを生成した後、前記記録部に記録されているパリティを除くデータの格納場所を読み出し、その読み出したデータの格納場所に対して前記ランダムパターンのデータを用いて上書き消去する処理をする上書き処理部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、記録されているデータを上書き消去する際に費やす時間を短縮することができるストレージ装置及びストレージ装置のデータ消去方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態におけるストレージシステムの構成を示す図である。
【図2】同実施の形態における上書き消去処理を示すフローチャートである。
【図3】同実施の形態におけるハードディスクドライブ部に記録されているパリティとデータとを説明するための図である。
【図4】図3におけるデータを上書き消去した状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、ストレージシステム100の構成を示す図である。図1に示すように、ストレージシステム100は、上位装置であるサーバ1と、このサーバ1と接続されたストレージ装置であるディスクアレイ装置2とを含んで構成されている。
【0015】
ディスクアレイ装置2は、ホストディレクタ部21、CPU(Central Processing Unit)部22、データ保存部であるキャッシュメモリ部23、ディスクディレクタ部24及び記録部であるハードディスクドライブ(HDD)部25を含んで構成される。また、CPU部22は、ホストディレクタ部21、キャッシュメモリ部23及びディスクディレクタ部24とそれぞれ通信可能に接続されている。
【0016】
サーバ1は、ディスクアレイ装置2に対してデータの書き込みの指示、データの読み出しの指示、及びデータを上書き消去する指示等の各種指示を発行する。ディスクアレイ装置2は、サーバ1から発行された各種指示を受信すると、当該指示に基づく処理を実行する。
【0017】
次に、ディスクアレイ装置2の各部について説明する。
【0018】
ハードディスクドライブ部25は、複数のハードディスクドライブ251,252,253,・・・,を有しており、これら複数のハードディスクドライブ251,252,253,・・・,によりパリティを用いるRAIDが構成され、データを冗長に記録するように構成されている。
【0019】
ホストディレクタ部21は、サーバ1がディスクアレイ装置2に対して各種指示を発行した際に、インターフェイス処理を行ない、当該インターフェイス処理後のデータをCPU部22に送信する。
【0020】
CPU部22は、データ処理部22A、データ生成部22B及び上書き処理部22Cを有している。
【0021】
データ処理部22Aは、ハードディスクドライブ部25にデータを記録する指示を、ホストディレクタ部21を介してサーバ1から受信すると、従来と同様のデータ記録処理を実行する。すなわち、データ処理部22Aは、更新対象となるデータと更新前のパリティとを記録部から読み込み、そして、更新対象となるデータ、更新前のパリティ、更新後のデータに基づいて更新パリティを作成した後、更新データ及び更新パリティを記録部に書き込む処理を実行する。この処理により、データ処理部22Aは、パリティを用いてデータを冗長にハードディスクドライブ部25に記録することができる。ただし、例えば情報漏洩防止のためにディスクアレイ装置2のハードディスクドライブ部25に記録されているデータを上書き消去する場合、データ処理部22Aは、上記データ記録処理を実行しない。
【0022】
この場合、データ処理部22Aに代わって、データ生成部22B及び上書き処理部22Cが後述する上書き消去処理を実行する。
【0023】
キャッシュメモリ部23は、データ生成部22Bが作成したランダムパターンのデータを一時的に保存する。
【0024】
ディスクディレクタ部24は、データ処理部22Aの指示に基づいて、ハードディスクドライブ部25に記録されているデータ及びパリティの読み込み、ハードディスクドライブ部25へのデータ及びパリティの書き込みを実行し、上書き処理部22Cの指示に基づいて、ハードディスクドライブ部25に記録されているデータの格納場所の読込み、ハードディスクドライブ部25の当該データの格納場所へのランダムデータの書き込みを実行する。
【0025】
次に、ストレージシステム100の動作について説明する。図2は、ストレージシステム100の上書き消去処理を示すフローチャートである。
【0026】
サーバ1はランダムパターンのデータによるハードディスクドライブ部25に記録されている全てのデータを上書き消去する指示をディスクアレイ装置2に出す(301)。
【0027】
ホストディレクタ部21は、サーバ1とディスクアレイ装置2との間でインターフェイス処理を行う(302)。この処理により、ディスクアレイ装置2で全てのデータを上書き消去する指示が受信され、当該全てのデータを上書き消去する指示がCPU部22へと伝えられる。
【0028】
全てのデータを上書き消去する指示をCPU部22が受け取った場合、データ処理部22Aによる処理は実行されず、データ生成部22Bによりデータ消去の際に用いられるランダムパターンのデータが作成される(303)。
【0029】
CPU部22のデータ生成部22Bで作成されたランダムパターンのデータはキャッシュメモリ部23で一時的に保存される(304)。
【0030】
次に、CPU部22の上書き処理部22Cは、ディスクディレクタ部24を介してハードディスクドライブ部25からパリティを除くデータの格納場所を全て読み込み、その読み込んだ全ての格納場所に対して、キャッシュメモリ部23に一時的に保存されているランダムパターンのデータを読み出して上書き消去する処理を実行する(305)。
【0031】
次に、上記305における上書き消去する処理の具体例について図3及び図4を参照して説明する。図3は、図1におけるディスクディレクタ部24とハードディスクドライブ部25とを示す図である。ここで、図3に示すように、ハードディスクドライブ部25は、ハードディスクドライブ251〜256によりRAID6が構成されており、パリティを有するRAID構成となっている。
【0032】
ハードディスクドライブ251〜256は、パリティ(P,Q)とパリティを除くデータ(D)が記録されている。
【0033】
ランダムパターンのデータを用いてハードディスクドライブ部25に記録されている全てのデータを上書き消去する場合、ディスクディレクタ部24は、上書き処理部22Cの指示に基づいて、ハードディスクドライブ251〜256それぞれからパリティ(P,Q)を除くデータ(D)の格納場所を全て読み込み、その読み込んだ全てのデータ(D)の格納場所に対してランダムパターンのデータによる上書き消去を行う。すなわち、ハードディスクドライブ部25のハードディスクドライブ251〜256のデータ(D)の領域にランダムパターンのデータが書き込まれ、パリティを除くデータ(D)の領域はランダムパターンのデータにより上書き消去される。
【0034】
図4は、図3を用いて説明した処理が行われたことにより、パリティを除く全てのデータが上書き消去された状態を示している。図4に示すように、図3で示したハードディスクドライブ部25のハードディスクドライブ251〜256からパリティ(P,Q)を除くデータ(D)が全て上書き消去されている。これは、ハードディスクドライブ部25に記録されている全てのデータを上書き消去する際に、パリティ(P,Q)の再計算を実行せず、パリティ(P,Q)を除くデータ(D)のみを全て上書き消去しているためである。
【0035】
この実施の形態によると、ディスクアレイ装置2のハードディスクドライブ部25に記録されている全てのデータをランダムパターンのデータによって上書き消去をする場合、ディスクアレイ装置2において、更新前のパリティの読み込み、パリティの更新及び更新パリティの書き込み処理を行わないため、ハードディスクドライブ部25に記録されている全てのデータを上書き消去するために費やす時間を短縮することができる。
【0036】
このため、例えばディスクアレイ装置2を廃棄する際に、情報漏洩防止のためにハードディスクドライブ部25に記録されている全てのデータの消去をランダムパターンのデータによる上書き消去により実行する場合、従来技術と比較して短時間で行なうことができる。
【0037】
また、ハードディスクドライブ部25に記録されている全てのデータを消去する際に上書きするランダムパターンのデータの作成はサーバ1が実行するのではなく、ディスクアレイ装置2のデータ生成部22Bが実行するため、データの上書き消去時にサーバ1にかかる負荷を低減することができる。
【0038】
なお、上記実施の形態では、ハードディスクドライブ部25にRAID6が適用されている場合について説明したが、本発明は、これに限られるものではなく、RAID6以外のRAIDでもパリティを有するRAIDがハードディスクドライブ部25に構成されている場合に適用することができる。
【0039】
また、上記実施の形態では、情報漏洩のためにハードディスクドライブ部25に記録されている全てのデータを消去する場合について説明したが、本発明は消去の目的に関わらずハードディスクドライブ部25に記録されている全てのデータを消去する場合に適用することが可能である。
【0040】
更に、上記実施の形態では、上書き消去する指示によってハードディスクドライブ部25に記録されているデータ(D)の領域が全て上書き消去される場合で説明したが、本発明は、これに限られるものではなく、ハードディスクドライブ部25に記録されているデータの一部(例えば、ハードディスクドライブ部25に複数のRAIDグループが構成されている場合は、そのうちの1つのRAIDグループ)の領域を消去する場合にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、データの上書き消去を行なうストレージ装置及びこのストレージ装置のデータ消去方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1・・・・サーバ
2・・・・ストレージ装置
21・・・ホストディレクタ部
22・・・CPU部
22A・・データ処理部
22B・・データ生成部
22C・・上書き処理部
23・・・キャッシュメモリ部
24・・・ディスクディレクタ部
25・・・ハードディスクドライブ部
100・・ストレージシステム
251〜256・・ハードディスクドライブ
P,Q・・パリティ
D・・・・データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パリティを用いてデータを冗長に記録するRAIDが構成された記録部と、
前記記録部にデータを記録する指示を受信すると、前記指示に基づいて前記記録部に前記データを冗長に記録するデータ処理部と、
前記記録部に記録されているデータを上書き消去する指示を受信すると、ランダムパターンのデータを生成するデータ生成部と、
前記データ生成部で前記ランダムパターンのデータを生成した後、前記記録部に記録されているパリティを除くデータの格納場所を読み出し、その読み出したデータの格納場所に対して前記ランダムパターンのデータを用いて上書き消去する処理をする上書き処理部と、
を備えるストレージ装置。
【請求項2】
前記上書き消去する指示は、前記ストレージ装置と通信可能に構成された上位装置から受信すること、
を特徴とする請求項1に記載のストレージ装置。
【請求項3】
前記データ生成部は、前記上書き消去する指示を受信したタイミングで前記ランダムパターンのデータを生成すること、
を特徴とする請求項2に記載のストレージ装置。
【請求項4】
前記データ生成部が生成した前記ランダムパターンのデータを一時的に保存するデータ保存部を備え、
前記上書き処理部は、前記データ保存部に一時的に保存された前記ランダムパターンのデータを用いて前記上書き消去する処理を行うこと、
を特徴とする請求項3に記載のストレージ装置。
【請求項5】
前記上書き消去する指示は、前記記録部に記録されている全てのデータを上書き消去する指示であること、
を特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のストレージ装置。
【請求項6】
パリティを用いてデータを冗長に記録するRAIDが構成された記録部を有し、前記記録部にデータを記録する指示を受信すると、前記指示に基づいて前記記録部に前記データを冗長に記録するストレージ装置のデータ消去方法であって、
前記記録部に記録されているデータを上書き消去する指示を受信すると、ランダムパターンのデータを生成するステップと、
前記ランダムパターンのデータを生成した後、前記記録部に記録されているパリティを除くデータの格納場所を読み出し、その読み出したデータの格納場所に対して前記ランダムパターンのデータを用いて上書き消去する処理をするステップと、
を有するストレージ装置のデータ消去方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate