説明

ストロボ装置

【課題】IGBTのオフに同期して放電発光管の残留電流がトリガ回路に流れると、ノイズパルスが発生し、放電発光管の導電コートが破壊されて、放電発光管の発光不良を生じる。
【解決手段】引き下げコンデンサ104とトリガコンデンサ105の間にダイオード112が配置されて、残留電流が経路aを介してトリガコイル108に流れることを阻止している。つまり、ダイオード112のカソード端子が、引き下げコンデンサ104、サイリスタ105のアノード端子に接続され、ダイオードのアノード端子がトリガコンデンサ107に接続されて、引き下げコンデンサからトリガコンデンサへの電流の流れを阻止しているため、IGBT102がオフになってもノイズパルスの発生が防止され、放電発光管の発光不良が生じない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラのためのストロボ装置、特にフラット発光可能なストロボ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シャッターが開放されている間、制御型スイッチング素子、たとえば、ゲート絶縁型バイポーラトランジスタ(IGBT)を連続的にスイッチングして微小発光を繰り返し、見かけ上、フラットな光を被写体に照射、発光する、いわゆるフラット発光可能なストロボ装置が知られている。たとえば、特開平6−302389号公報では、図3に示すように、Xe管のような放電発光管6の放電経路内にIGBT7を配置し、このIGBTを短い周期でオン/オフさせることによって、見かけ上のフラット光を照射するストロボ装置が開示されている。また、このストロボ装置の電気回路では、放電発光管6のカソード端子(陰極)とトリガ用サイリスタSCR1のアノード端子(陽極)の間にコンデンサC7を挿入し、トリガ用サイリスタがオンになると、放電発光管6に対してメインコンデンサの充電電圧の2倍の電圧が印加されるようにした、いわゆる倍電圧回路も設けられている。
【0003】
この公知の構成によれば、メインコンデンサC5が充電された状態で、IGBT7のゲート端子にIGBT駆動信号(SCONT)が供給されると、IGBT7がオンして、メインコンデンサC5→放電発光管6→ダイオードD5→IGBT7の放電経路が形成される。ここでCPU1からサイリスタSCR1にトリガ制御信号(STRG)が供給されてサイリスタSCR1がオンすると、トリガコデンサC6→サイリスタSCR1→トリガトランスT2の1次側の経路に電流が流れ、トリガトランスT2の2次側に起電力が発生して放電発光管6にトリガ信号が印加される。そして、このトリガ信号によって放電発光管6の放電が誘起され、放電電流が流れて発光が行われる。
【特許文献1】特開平6−302389号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特開平6−302389号公報記載の公知の回路構成では、IGBT7のオフに同期して放電発光管6の残留電流が、引き下げコンデンサC7→トリガコンデンサC6→トリガコイルT2の1次側という経路で流れ、トリガトランスT2の2次側にノイズパルスが発生する。そして、フラット発光時にはこのノイズパルスが短い周期で放電発光管6のトリガ端子に印加されることになる。
一般に、放電発光管の表面には導電コートが施されており、ノイズパルスがトリガ端子に繰り返し印加されると、トリガ端子と放電発光管の接点部分が発熱して導電コートが破壊されやすく、導電コートが破壊されると、トリガ信号を印加しても導通不良によって放電発光管が発光しないという不具合が生じる。
本発明は、ノイズパルスの発生を防止して放電発光管の発光不良を防止したストロボ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、残留電流の流れを阻止するダイオードを倍電圧回路とトリガ回路との間に配置したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に係る本発明によれば、残留電流の流れを阻止するダイオードが倍電圧回路とトリガ回路との間に配置されているため、ノイズパルスの発生が防止され、放電発光管の表面の導電コートも破壊されず、放電発光管の発光不良が生じない。
【0007】
請求項2に係る本発明によれば、ダイオードが引き下げコンデンサからトリガコンデンサへ流れる電流を阻止するように配置されているため、ノイズパルスの発生が確実に防止される。
【0008】
請求項3に係る本発明によれば、ダイオードのカソード端子が、引き下げコンデンサ、サイリスタのアノード端子に接続され、ダイオードのアノード端子がトリガコンデンサに接続されているため、引き下げコンデンサからトリガコンデンサへの電流の流れが阻止され、ノイズパルスの発生が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明では、ダイオードを倍電圧回路とトリガ回路との間に配置して倍電圧回路からトリガ回路への残留電流の流れを阻止することにより、放電発光管の導電コートを破壊するノイズパルスの発生を防止している。
【実施例】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。図1は本発明の実施例に係るストロボ装置の主要回路を示す回路図であり、キセノン管(Xe管)のような放電発光管100、ダイオード101、ゲート絶縁型バイポーラトランジスタ(IGBT)102、が直列に接続され、IGBTは、メインコンデンサ111に蓄積された電荷を放電発光管に対して瞬間的に放電して放電発光管の発光を制御する。
【0011】
メインコンデンサ111は、昇圧電源回路(図示しない)に接続されて、たとえば、330Vの電圧が充電される。この状態で、スイッチング素子としてのIGBT102のゲート端子に、CPUなどからなる制御回路(図示しない)からIGBT駆動信号(SCONT信号)を供給すると、IGBTがオンとなり、メインコンデンサ111→チョークコイル110→放電発光管100→ダイオード101→IGBT102という経路で放電経路が形成される。
【0012】
この放電経路が形成された状態で、制御回路からサイリスタ105のゲート端子にトリガ制御信号(STRIG信号)が供給されてサイリスタ105がオンになると、トリガコンデンサ107の電荷がサイリスタ105、トリガコイル108(1次側)の経路で放電される。すると、トリガコイル108の2次側に起電力が発生し、放電発光管100に接触するトリガ端子にトリガ信号が印加され、このトリガ信号によって放電発光管の放電が誘起され、放電電流が流れて発光が行われる。このように、サイリスタ105、トリガコンデンサ107、トリガコイル108から放電ループが形成され、サイリスタ、トリガコンデンサ、トリガコイルからトリガ回路が構成される。
【0013】
また、引き下げコンデンサ104はIGBT102がオンした際に放電発光管100のカソード側電位を−330vに引き下げるためのものであり、倍電圧回路を構成する。
【0014】
ダイオード101はIGBT102がオンのときに、逆流電流が流れるのを阻止するものであり、抵抗103は発光終了時に放電発光管100のカソード側を初期化(0V)するために設けられている。また、ダイオード109はチョークコイル110の逆起電力を放電するループを形成するものである。これらは本発明には直接関係しないためその詳細な説明は省略する。
【0015】
本発明のストロボ装置では、倍電圧回路の引き下げコンデンサ104と、トリガ回路のトリガコンデンサ107との間で、放電発光管100からの残留電流がトリガ回路に流れ込まないような向きにダイオード112を配置したことに大きな特徴がある。
【0016】
図2は放電発光管の発光のタイミングチャートを示し、図2(A)は実施例のタイミングチャートを、図2(B)は公知例でのタイミングチャートを示す。
ダイオード112のない回路構成に生じる不具合について説明すると、ダイオード112が存在しなければ、フラット発光制御を行うと、図2(B)に示すようにIGBT102のオフに同期してノイズパルスNzが発生して放電発光管100のトリガ端子に印加される。なお、Trは発光用トリガパルス(トリガ信号)を示す。IGBT102がオフとなると、放電発光管100の残留電流が引き下げコンデンサ104→トリガコンデンサ107→トリガコイル108という経路aで流れるために、ノイズパルスNzが発生する。
【0017】
一般に、導電コートが放電発光管の表面に施されており、フラット発光時に上述の理由によって放電発光管のトリガ端子にノイズパルスが繰り返し印加されると、トリガ端子と放電発光管の接点部分が発熱して導電コートが破壊されるという問題がある。そして、導電コートが破壊されると、トリガ信号を印加しても導通不良によって放電発光管100が発光しないという不具合(発光不良)を生じる。
【0018】
そこで、本発明においては、図1に示すように、引き下げコンデンサ104とトリガコンデンサ105の間に残留電流を阻止するようにダイオード112を配置して、残留電流が経路aを介してトリガコイル108に流れることを阻止している。つまり、ダイオード112のカソード端子が、引き下げコンデンサ104、サイリスタ105のアノード端子に接続され、ダイオードのアノード端子がトリガコンデンサ107に接続されて、引き下げコンデンサからトリガコンデンサへの残留電流の流れを阻止している。そのため、図2(A)に示すように、IGBT102がオフになってもノイズパルスが発生せず、放電発光管表面の導電コートが破壊されることもなく、導通不良が生じないから、放電発光管100の発光不良も生じない。
【0019】
このように、本発明では、ダイオード112を特定の位置に配置するだけで、ノイズパルスの発生が確実に防止され、公知例に対して顕著な効果が簡単な構成で得られる。
【0020】
上述した実施例は本発明を説明するためのものであり、本発明は実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、変形や応用が可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明によれば、ダイオードを所定の位置に配置するだけで放電発光管の発光不良の原因となるトリガノイズパルスの発生が防止され、放電発光管の発光制御に関する光学分野に本発明が広範囲に応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例に係るストロボ装置の主要回路図を示す。
【図2】放電発光管の発光のタイミングチャートを示し、(A)は実施例のタイミングチャートを、(B)は公知例でのタイミングチャートを示す。
【図3】公知のストロボ装置の回路図を示す。
【符号の説明】
【0023】
100 放電発光管(Xe管)
102 IGBT(ゲート絶縁型バイポーラトランジスタ)
104 引き下げコンデンサ
105 サイリスタ
107 トリガコンデンサ
111 メインコンデンサ
112 残留電流を阻止するダイオード


【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電発光管を発光させるための電荷を保持するメインコンデンサと、上記放電発光管にトリガ信号を供給するトリガ回路と、上記放電発光管のカソードに接続された倍電圧回路とを具備するストロボ装置において、
上記倍電圧回路と上記トリガ回路の間に、上記倍電圧回路から上記トリガ回路に流れ込む残留電流を阻止するためのダイオードを配置したことを特徴とするストロボ装置。
【請求項2】
上記トリガ回路は、トリガコイル、トリガコンデンサ、サイリスタから形成される放電ループを有し、
上記倍電圧回路は、上記放電発光管のカソード端子と、上記サイリスタのアノード端子に接続された引き下げコンデンサとを有し、
上記ダイオードは上記引き下げコンデンサから上記トリガコンデンサへの電流の流れを阻止するように配置されていることを特徴とした請求項1記載のストロボ回路。
【請求項3】
上記ダイオードのカソード端子は、上記引き下げコンデンサと上記サイリスタのアノード端子に接続され、
上記ダイオードのアノード端子は上記トリガコンデンサに接続されていることを特徴とする請求項2記載のストロボ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−164567(P2006−164567A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−350260(P2004−350260)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(504371974)オリンパスイメージング株式会社 (2,647)
【出願人】(300093467)トーカドエナジー株式会社 (21)
【Fターム(参考)】