説明

スナップリング組み付け検査装置

【課題】スナップリングが確実にリング溝底まで入り込んで組み付けられているか否かを正確に判定できるスナップリング組み付け検査装置を提供する。
【解決手段】スナップリングRが内周面のリング溝に組み付けられたケース内に、同軸方向に挿入される測定ヘッド4と、測定ヘッド4内で径方向に移動可能に設けられ、外径方向に移動することにより、スナップリングRの内周面に押接する第1当接部6aと、第1当接部6aの移動距離を検出し、検出した第1当接部6aの移動距離に基づきスナップリングRの内径D3を測定する内径測定部33、42と、を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リング溝へのスナップリングの組み付けが完全であるか否かを確認する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スナップリングのリング溝への組み付けが完全であるか否かを確認するための検査装置として、特許文献1に記載の治具が開示されている。この治具は、リング溝15が設けられた部品(以下、ケースという)12の端面およびスナップリング11に治具のストッパ部7、8がそれぞれ当接することにより、スナップリング11が全周にわたってリング溝15に入り込んでいるか否か、すなわちスナップリング11の入り不完全が生じているか否かをチェックする。同時に、リング溝15に落とし込まれてその弾性力(張力)により径方向に拡大したスナップリング11の内周側に、治具のスナップリングはみ出し確認部9が挿入されることにより、スナップリング11がリング溝15の底まで入り込んでいるか否か、すなわちスナップリング11のはみ出しが生じているか否かをチェックする。
【特許文献1】特開平07−205044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記治具において、はみ出し確認部9の外径は、スナップリング11の製造誤差やリング溝15の深さの公差等を考慮して、リング溝15に設置された状態のスナップリング11の内径よりも小さく設定されている。すなわち、はみ出し確認部9の外周とスナップリング11の内周との間には、各種公差を考慮した所定のクリアランスが設けられている。このため、加工時の切削粉等の夾雑物がリング溝15に挟まっている場合でも、夾雑物によるスナップリング11の内径の縮小分は上記クリアランスにより吸収され、上記治具はスナップリング11の内周を通り抜けてしまう。よって、上記治具によっては、リング溝15に夾雑物が挟まっていることが検出できない、という問題があった。
【0004】
ここで、リング溝に設置されたスナップリングの内径を実際に測定することにより、リング溝に夾雑物が挟まっているか否かを直接検出することも考えられる。しかし、ケース内でリング溝がケース開口部から深い位置に設けられている場合、実際にスナップリング内径を直接測定することは従来困難であった。
【0005】
本発明は上記課題に着目してなされたものであり、スナップリングが確実にリング溝底まで入り込んで組み付けられているか否かを正確に判定できるスナップリング組み付け検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のスナップリング組み付け検査装置は、ケース内周面のリング溝に組み付けられたスナップリングの組み付けを確認するスナップリング組み付け検査装置において、前記ケースと同軸方向に前記ケース内に挿入される測定ヘッドと、
前記測定ヘッド内で径方向に移動可能に設けられ、外径方向に移動することにより前記スナップリングの内周面に押接する第1当接部と、前記第1当接部の移動距離を検出し、検出した前記第1当接部の移動距離に基づき前記スナップリングの内径を測定する内径測定部と、を設けた。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明のスナップリング組み付け検査装置にあっては、リング溝に設置されたスナップリングの内径を実際に測定することにより、スナップリングが確実にリング溝底まで入り込んで組み付けられているか否かを正確に判定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実現するための最良の形態を、実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0009】
[装置の全体構成]
図1は、本実施例1のスナップリング組み付け検査装置1(以下、装置1)の検査対象となるケース2の軸方向断面図である。ケース2の軸をO' とする。ケース2には、装置1による検査の前工程において、ブレーキピストンBP、複数の摩擦板FP、リテーニングプレートRP、およびスナップリングR等が組み付けられている。以下、説明の便宜上、直交座標系を設定し、水平面内にx軸とy軸を設け、鉛直方向にz軸を設ける。鉛直上方をz軸正方向と定義する。
【0010】
ケース2は、底部2aと開口部2bとを有しており、コップ形状である。開口部2bにはオイルポンプカバー合わせ面2cがxy平面に平行に形成されている。ケース2はリング溝2dを有しており、スナップリングRは人の手によりリング溝2dに組み付けられた状態となっている。図1に示すように、リング溝2dは、ケース2の深い位置(z軸負方向側)の内周面に設けられている。スナップリング2からケース2の開口部2bまでのz軸方向空間には、まだ他の部品は組み付けられておらず、この状態で装置1による組み付け検査が行われる。以下、特に断りなくスナップリングRというときは、上記のようにリング溝2dに組み付けられた状態のスナップリングRを指すものとする。
【0011】
スナップリングRの上面(z軸正方向側面)からオイルポンプカバー合わせ面2cまでの間のz軸方向距離を、スナップリング組み付け高さH1と呼ぶ。スナップリング組み付け高さH1は、ケース2の仕様に応じて予め測定規格値H1*が設定され、その正常範囲(測定規格値H1*の上限および下限)が設定されている。
【0012】
ケース2は、スナップリング24が組み付けられ、かつ開口部2bがz軸正方向側に開口した図1に示す状態で、図外の搬送パレット(以下、ワークベースWB)に設置されている。ワークベースWBが図外のコンベアにより装置1の真下に搬入されると、装置1の後述する測定ヘッド部4がケース2の開口部2bから底部2aに向かって挿入される。その状態でスナップリングRの組み付け高さH1および内径D3の測定を行う。
【0013】
以下、装置1の全体構成を図2、図3に基づき説明する。図2は、装置1の(z軸負方向側)部分をy軸正方向側から見た正面図である。図3は、装置1の全体をx軸負方向側から見た正面図であり、部分的に断面図を示す。溝部測定用リニアゲージ33に対して高さ測定用リニアゲージ31の方向をx軸正方向、装置取付部58(図3参照)に対して溝部測定用リニアゲージ31の方向をy軸正方向、測定ヘッド部4に対して基部3の方向をz軸正方向とする。
【0014】
装置1は、図外の部材に取り付けられた基部3と、ケース2に挿入される測定ヘッド部4と、を有している。
基部3は、高さ測定用シリンダ30(図3参照)と、高さ測定用リニアゲージ31と、溝部測定用シリンダ32と、溝部測定用リニアゲージ33と、測定ヘッド部4をxy平面内で位置決めするフローティング機構34(図3参照)と、を有している。
測定ヘッド部4は、円筒形状の測定ヘッドハウジング40と、測定ヘッドハウジング40の内周に摺動可能に収容された円筒形状のスライドブロック41と、スライドブロック41の内周に摺動可能に収容された円筒形状の押し込みドリフト42と、を有している(図3参照)。
【0015】
スライドブロック41は、測定ヘッドハウジング40の内周に摺接する円筒形状のスライドブロック軸部41aと、軸部41aのz軸負方向端に設けられ、測定ヘッドハウジング40の外部に位置する円盤形状のスライドブロック先端部41bと、を有している(図3参照)。
【0016】
測定ヘッドハウジング40の外周面にはコイルスプリング43が巻回されている。コイルスプリング43のz軸正方向端は測定ヘッドハウジング40の段部40aに設置されており、コイルスプリング43のz軸負方向端はスライドブロック先端部41bのz軸正方向側面に設置されている。コイルスプリング43はその弾性力により、スライドブロック41を測定ヘッドハウジング40に対してz軸負方向側に付勢している。
【0017】
測定ヘッドハウジング40のz軸正方向端には、ロア支持板50がxy平面に対して平行に固定設置されている。ロア支持板50のz軸負方向側面の外周縁には、複数の(本実施例1では3個の)基準受けパッド50aが設置されている。基準受けパッド50aのz軸負方向側面は、測定ヘッド部4がケース2内に挿入される際、ケース開口部2bのオイルポンプカバー合わせ面2cに当接する。
【0018】
図1に示すように、ロア支持板50には中継板50bが接続されており、中継板50bにはロケートピン50cが設置されている。ロケートピン50cは、z軸負方向側に向かって突設されており、ケース2のz軸正方向側面に設けられている図外のロケート穴に嵌合する。
【0019】
ロア支持板50のz軸正方向側面には、z軸方向に延在する複数の(本実施例1では3本の)支柱51a、51b、51cが固定設置されている。支柱51a〜51cのz軸正方向端には、アッパ支持板52がxy平面に対して平行に固定設置されている。
【0020】
スライドブロック41のz軸正方向端には、高さ測定用リニアゲージ連結板53がxy平面に対して平行に固定設置されている。高さ測定用リニアゲージ連結板53のz軸正方向側面には、z軸方向に延在する複数の(本実施例1では4本の)支柱54a〜54dが固定設置されている(図2において54a、54bのみ示す)。支柱54a〜54dのz軸正方向端には、溝部測定用シリンダ支持板55がxy平面に対して平行に固定設置されている。
【0021】
エアシリンダである溝部測定用シリンダ32は、円筒形状の固定部32aと、固定部32aの内周にz軸方向に摺動可能に設置されている可動部32bと、を有している。溝部測定用シリンダ支持板55のz軸負方向側面には、固定部32aが固定設置されている。可動部32bのz軸負方向端は、押し込みドリフト42のz軸正方向端に接続されている。また、押し込みドリフト42のz軸正方向端には、溝部測定用リニアゲージ連結板56が固定設置されている。
【0022】
高さ測定用リニアゲージ31および溝部測定用リニアゲージ33はともに磁気式のデジタルゲージであり、図外の測定子を内蔵した直方体の固定部31a、33aと、それぞれ固定部31a、33a内を貫通し、固定部31a、33aに対してz軸方向に摺動可能に設置されている可動部31b、33bと、を有している。両ゲージ31、33の測定結果は、図外のパネルに表示される。
【0023】
高さ測定用リニアゲージ31の固定部31aは、図外のブラケットを介してアッパ支持板52に固定設置されている。高さ測定用リニアゲージ31の可動部31bのz軸負方向端は、高さ測定用リニアゲージ連結板53に接続されている。溝部測定用リニアゲージ33の固定部33aは、ブラケット57を介して溝部測定用シリンダ支持板55に固定設置されている。溝部測定用リニアゲージ33の可動部33bのz軸負方向端は、溝部測定用リニアゲージ連結板56に接続されている。
【0024】
フローティング機構34は、上部34aおよび下部34bを有している。上部34aと下部34bとの間には、x軸方向およびy軸方向に転動可能にベアリング34cが設置されており、ベアリング34cが転動することにより、xy平面内で上部34aが下部34bに対して浮き子のように相対移動可能となっている。下部34bは、アッパ支持板52のz軸正方向側面には設置されている。
【0025】
エアシリンダである高さ測定用シリンダ30は、固定部30aと、固定部30aの内周にz軸方向に摺動可能に設置されている可動部30bと、を有している。固定部30aのy軸負方向側には、装置取付部58が設けられている。可動部30bのz軸負方向端には、ブラケット59を介してフローティング機構の上部34aが接続されている。
【0026】
(測定ヘッド部)
以下、図3、図4に基づき測定ヘッド部4の構造を説明する。図4は、測定ヘッド部4をz軸負方向側から見た正面図である。図3のスライドブロック先端部41bの断面図は、図4におけるA-O-A' 断面を示す。
【0027】
測定ヘッドハウジング40の内周面にはブッシュ40bが設けられている。スライドブロック軸部41aは、ブッシュ40bに摺接する。スライドブロック軸部41aの内周面にはブッシュ41kが設けられている。押し込みドリフト42は、ブッシュ41kに摺接する円筒形状の押し込みドリフト軸部42aと、押し込みドリフト軸部42aのz軸負方向端に設けられ、スライドブロック先端部41bの内部に突出する押し込みドリフト先端部42bと、を有している。
【0028】
スライドブロック先端部41bは、第1部材41cおよび第2部材41dを有している。第1部材41cはスライドブロック軸部41aのz軸負方向端に締結され、第2部材41dは第1部材41cのz軸負方向側面に締結されている。第2部材41dの外周縁には、軸方向当接部410がスカート状に形成されている。軸方向当接部410の先端部411はz軸負方向に突出しており、そのz軸負方向先端面はリング形状となっている(図4参照)。この先端面は、ケース2に測定ヘッド部4が挿入された後、スナップリングRの上面(z軸正方向側面)に当接する。
【0029】
軸方向当接部410の外径D1は、スライドブロック先端部41bの最大外径をなしており、その大きさは、ケース2の内径D2よりも小さく、かつ(リング溝2dに組み付けられた状態の)スナップリングRの内径D3よりも大きく設けられている。
スナップリング内径D3は予め測定規格値D3*が設定され、その正常範囲(測定規格値D3*の上限および下限)が設定されている。
【0030】
また、軸方向当接部410の先端部411の先端面から基準受けパッドのz軸負方向側面までのz軸方向距離を、測定ヘッド長H2と定義する。コイルスプリング43の付勢力によりスライドブロック41が測定ヘッドハウジング40に対してz軸負方向に最大限変位している状態では、測定ヘッドハウジング40のz軸正方向端と溝部測定用リニアゲージ連結板53とが当接している。この状態で、H2は最大値H2max(以下、測定ヘッド全長という)となる。
【0031】
スライドブロック先端部41bの内部には、複数の(本実施例1では6個の)溝部測定端子6a〜6fが、測定ヘッド部4の軸Oに関して対称に、放射状に収容されている。
【0032】
第2部材41dの軸Oの周りには、z軸方向に軸方向孔412が形成されている。また、第2部材41dの径方向には、軸方向孔412と連通して、溝部測定端子6a〜6f をそれぞれ収容する6個の径方向孔41e〜41jが放射状に形成されている。径方向孔41e〜41jは、軸方向当接部410のz軸負方向側において、第2部材41dの外周面に開口している。
【0033】
溝部測定端子6a〜6fはそれぞれ同様の形状を有しているため、以下、図3および図4に示す溝部測定端子6aを例にとって説明する。溝部測定端子6aは、y軸負方向側からy軸正方向側に向かって順に、基部60aと、スライド部61aと、先端部62aと、を有している。
基部60aは、楔形状であり、軸方向孔412の内部に配置されている。
スライド部61aは、棒形状または直方体形状であり、径方向孔41eの内部に摺動可能に収容および支持されている。
先端部62aは、板形状であり、径方向孔41eのy軸正方向側の開口部から突出している。先端部62aのz軸方向厚さは、スライド部61aよりも肉薄に形成されており、スナップリングRのz軸方向厚さとほぼ等しい。
【0034】
スライド部61aには、リターンスプリング63aが巻回されている。リターンスプリング63aは、そのy軸正方向端が軸方向孔412の内周面に設置され、そのy軸負方向端が基部60aのy軸正方向側面に設置されている。リターンスプリング63aは、溝部測定端子6aを軸方向孔412の内周面から軸中心Oに向かって(y軸負方向に)付勢している。溝部測定端子6aがリターンスプリング63aの付勢力に抗して径方向孔41eの中を外径方向(y軸正方向)にスライドすると、リング溝2dに組み付けられたスナップリングRの内周面に先端部62aが当接する。
【0035】
先端部62aの上面(z軸正方向側面)のz軸方向位置は、軸方向当接部410の先端部411の先端面よりも僅かにz軸負方向側に偏倚している。よって、先端部62aのy軸正方向側の先端面は、溝部測定端子6aがy軸正方向側に移動すると、軸方向当接部410の先端部411に当接することなく、その真下にあるスナップリングRの内周面に押接される。言い換えると、軸方向当接部410の先端面がスナップリングRの上面(z軸正方向側面)に当接すると、スナップリングRの内周面と、溝部測定端子6aの先端部62aの先端面とは、z軸方向において略同位置になるように設けられている。
【0036】
図4に示すように、z軸方向から見て、6個の溝部測定端子6a〜6fの各先端部62 a〜62fの先端面は、同一円周上に位置している。溝部測定端子6aについてみると、スライド部61aと先端部62aのx軸方向幅は同じ大きさに設けられている。基部60aのx軸方向幅は、スライド部61aのx軸方向幅よりも大きく設けられている。
【0037】
図3に示すように、基部60aのyz平面における断面は台形状に形成されており、基部60aのy軸方向幅は、z軸正方向側に向かうほど小さい。すなわち、基部60aの内径側(y軸負方向側、軸中心Oの側)には、z軸に対して傾斜する傾斜面60gが形成されている。傾斜面60g は、y軸負方向側かつz軸正方向側を向いている。他の溝部測定端子6b〜6fについても同様に、傾斜面60h〜60lが形成されている。
【0038】
押し込みドリフト先端部42bは、正六角柱から円柱をくり貫いたコップ形状を有しており、軸方向孔412の内部に開口している。押し込みドリフト先端部42bの外周は、z軸方向に延在する6枚の側板42c〜42hが辺々結合することにより、z軸方向から見て正六角形に形成されている。
【0039】
図3に示すように、側板42cのyz平面における断面は台形状に形成されており、側板42cのy軸方向幅は、z軸負方向側に向かうほど小さい。すなわち、側板42cの外径側(y軸正方向側)には、z軸に対して傾斜するテーパ面42iが形成されている。テーパ面42i は、y軸正方向側かつz軸負方向側を向いている。他の側板42d〜42hについても同様に、テーパ面42j〜42nが形成されている。
【0040】
テーパ面42i〜42nは、軸方向孔412の内部で、それぞれ傾斜面60g〜60lと面同士で当接している。図3に基づき具体的に説明すると、テーパ面42i(のz軸負方向側部分)は、傾斜面60a(のz軸正方向側部分)と面接触している。図4の斜線部分により、この面接触部分を示す。なお、テーパ面42iのz軸に対する(時計回り方向の)傾角と、傾斜面60aのz軸に対する(時計回り方向の)傾角とは、大きさが等しく設けられている。よって、これらの面42i、60aが面接触した状態では、押し込みドリフト42の軸Oが延在する方向と溝部測定端子6aのスライド部61aが延在する方向とが直交している。
【0041】
[装置の作用]
装置1は、xy平面内において測定ヘッド部4をケース2に対して位置決めする測定ヘッド位置決め機構と、スナップリング組み付け高さH1を測定する高さ測定機構と、リング溝2dに組み付けられたスナップリングRの内径D3を測定する溝部測定機構と、上記高さH1および内径D3が正常範囲内にあるか否かを判定する異常判定機構と、を有している。
【0042】
装置1による検査工程のおおまかな流れを、図5のフローチャートに基づいて説明する。以下の検査工程は、自動的に行われる。
【0043】
ステップS1で、測定ヘッド部4の位置決めをする。測定ヘッド部4が下降してケース2に挿入されるとともに、ロケートピン50c(図2参照)がケース2のロケート穴に嵌合する。その後、フローティング機構34により測定ヘッド部4の正確な位置決めをする。
ステップS2で、スナップリング組み付け高さH1を測定する。高さ測定機構により、前工程においてケース2に手で組み付けられていたスナップリングRを、z軸方向におけるリング溝2dの位置まで確実に押し込む。同時に、スナップリングRのz軸方向位置(高さH1)を測定する。測定結果は、測定規格値H1*およびその正常範囲とともにパネルで作業者に表示される。
ステップS3で、上記測定結果に基づき、スナップリングRが全周にわたってリング溝2dに嵌め込まれているか否か(入り不完全の有無)を判定する。具体的には、異常判定機構により、上記高さH1の測定値が正常範囲であるか否かを判定する。正常範囲内であればステップS4に移り、正常範囲外であれば、ステップS7に移る。
ステップS4で、スナップリング内径D3を測定する。溝部測定機構により、スナップリングRをリング溝2dの溝底まで確実に押し広げる。同時に、スナップリング内径D3を測定する。測定結果は、測定規格値D3*およびその正常範囲とともにパネルで作業者に表示される。
ステップS5で、上記測定結果に基づき、スナップリングRがリング溝2dの底まで確実に嵌め込まれているか否かを判定する。具体的には、異常判定機構により、上記内径D3の測定値が正常範囲であるか否かを判定する。正常範囲内であればステップS6に移り、正常範囲外であれば、ステップS7に移る。
ステップS6では、OKランプを点灯する。溝部測定用シリンダ32の出力圧をゼロにした後、測定ヘッド部4を上昇させてケース2から抜き取る。そして、コンベアによりワークベースWBを払い出す。
ステップS7では、NGランプを点灯するとともにブザーを鳴らす。ここでは、ワークベースWBを払い出さない。
【0044】
以下、上記各ステップS1〜S5における装置1の作用を説明する。
【0045】
(測定ヘッド位置決め)
測定ヘッド位置決め機構は、ロケートピン50cおよびフローティング機構34により構成されている。
【0046】
前工程において既に人の手でスナップリングRが組み付けられているケース2は、ワークベースWBに設置された状態でコンベア上を搬送され、装置1による検査のため、鉛直上方(z軸正方向)に開口部2bが開口した状態で装置1の下に搬入される。ここで、高さ測定用シリンダ30は、装置取付部58を介して装置1以外の部材に設置されており、高さ測定用シリンダ30のxy平面内における位置は固定されている。一方、コンベアに対するワークベースWBのxy平面上の位置、またはワークベースWBに対するケース2のxy平面上の位置には、多少のバラツキや誤差が生じている。このため、測定ヘッド部4の軸Oと、測定ヘッド部4の下に搬入されたケース2の軸O' との間には、ズレが発生する。よって、ケース2に対する測定ヘッド部4の位置決めを精度よく行うことができず、スナップリング内径D3を正確に測定できないおそれがある。
【0047】
よって、実際に測定を行う前に、測定ヘッド部4の位置決めを行う。まず、測定ヘッド部4がケース2に挿入される際、ロケートピン50cが、ケース2のロケート穴に嵌合する。これにより、ケース2に対する測定ヘッド部4のxy平面内における位置決めを大まかに行う。なお、上記ロケート穴は、装置1の位置決め用に別途設ける必要はなく、もともとケース2に備えられているロケート穴を利用してもよい。ロケート穴の内径はロケートピン50cの外径に対して大きめに設けられ、遊びが設けられている
【0048】
その後、フローティング機構34による測定ヘッド部4の正確な位置決め、すなわち測定ヘッド部4の軸Oとケース2の軸O'とを合わせる作業がなされる。図外のセンサが検出したケース2の位置情報に基づき、フローティング機構34の下部34bが上部34aに対してxy平面内で所定値だけ変位する。これにより、下部34bに接続された装置部分、すなわち測定ヘッド部4のx軸方向およびy軸方向における位置が調整される。
【0049】
ここで、上記ロケート穴とロケートピン50cとの間には遊びが設けられているため、フローティング機構34がx軸およびy軸ともに有効に作用する(フローティング機構34の位置決め作用がロケートピン50cによって妨げられない)。よって、測定ヘッド部4とケース2との軸合わせが正確に行われるため、後述するスナップリング内径D3の測定時において、どの測定ポイント(6個の溝部測定端子6a〜6f)においても測定バラツキがなくなる。
【0050】
(高さ測定)
高さ測定機構は、高さ測定用シリンダ30と、高さ測定用リニアゲージ31と、測定ヘッド部4(測定ヘッドハウジング40およびスライドブロック41の軸方向当接部410)と、から構成されている。
【0051】
測定ヘッド全長H2maxは、スナップリング組み付け高さH1よりも大きく設定されている。よって、測定ヘッド部4がケース2に挿入されると、まず、スライドブロック先端部41bの軸方向当接部410(の先端部411)がスナップリングRの上面に着座する。着座後、高さ測定用シリンダ30がエア圧を出力することにより、可動部30bをz軸負方向に移動させ、測定ヘッドハウジング40をz軸負方向に押し下げる。これにより、コイルスプリング43がスライドブロック先端部41bをz軸負方向に付勢する。
【0052】
前工程においてスナップリングRが既にリング溝2dの位置まで押し込まれていた場合、その時点でスナップリングRは、自身の弾性力(張力)により径方向に広がってリング溝2dに嵌合する。よって、スライドブロック先端部41bがスナップリングRに着座すると、スライドブロック41のz軸負方向へのそれ以上の変位は規制される。一方、前工程においてスナップリングRがリング溝2dの位置まで押し込まれていなかった場合、コイルスプリング43の上記付勢力(押し込み荷重)によりスナップリングRがリング溝2dの位置まで押し下げられたとき、スナップリングRはリング溝2dに嵌合する。その後、スライドブロック41のそれ以上の変位は規制される。それに対し、コイルスプリング43の上記付勢力(押し込み荷重)によってスナップリングRがリング溝2dの位置まで押し下げられないときにも、スライドブロック41のそれ以上の変位は規制される。
【0053】
上記のようにスライドブロック41のz軸負方向への変位が規制される一方、H1とH2maxとの差の距離だけ測定ヘッドハウジング40はz軸負方向に移動し続ける。すなわち、コイルスプリング43が圧縮されると同時に、測定ヘッドハウジング40がスライドブロック41に対してz軸負方向に変位する。これにより、基準受けパッド50aのz軸負方向側面がケース2のオイルポンプカバー合わせ面2cと当接する。当接すると、測定ヘッドハウジング40のそれ以上のz軸方向変位は規制される。
【0054】
コイルスプリング43の圧縮量、すなわちスライドブロック41に対する測定ヘッドハウジング40のz軸負方向への変位量ΔHは、高さ測定用リニアゲージ31により測定される。測定ヘッドハウジング40に固定設置された高さ測定用リニアゲージ31の固定部31aは、測定ヘッドハウジング40とともにz軸負方向へ変位する。一方、スライドブロック41に接続された可動部31bは、スライドブロック41とともにz軸負方向への変位が規制されている。よって、上記変位量ΔHの分だけ、固定部31aが可動部31bに対してz軸負方向に移動し、高さ測定用リニアゲージ31においてこの移動量ΔHが測定される。
【0055】
測定ヘッド全長H2maxから変位量ΔHを差し引いた値が、スナップリング組み付け高さH1の測定値として算出される。
【0056】
(溝部測定)
溝部測定機構は、溝部測定用シリンダ32と、溝部測定用リニアゲージ33と、測定ヘッド部4(押し込みドリフト42および溝部測定端子6)と、から構成されている。
【0057】
高さH1の測定後、高さ測定用シリンダ30の出力エア圧をゼロとする。このとき、スライドブロック先端部42bの軸方向当接部410は、測定ヘッド部4の自重によりスナップリングRの上面に当接したままである。ここで、溝部測定用シリンダ32がエア圧を出力し、押し込みドリフト42をz軸負方向に押し下げる。押し込みドリフト先端部42bに形成された6個のテーパ面42i〜42nにはそれぞれ溝部測定端子6a〜6fの傾斜面60g〜60lが面接触している。テーパ面42i〜42nが傾斜面60g〜60lに押接することにより、溝部測定端子6a〜6fがそれぞれ外径方向に向かってスライドする。
【0058】
溝部測定端子6aについてみる。テーパ面42iがz軸負方向に変位すると、傾斜面60aがy軸正方向への力を受ける。よって、溝部測定端子6aが、リターンスプリング63によるy軸負方向への付勢力に抗して、y軸正方向(外径方向)へスナップリングRの内周面に向かって変位する。すなわち、テーパ面42iが傾斜面60aに対して摺動することにより、押し込みドリフト42のz軸負方向への変位が、溝部測定端子6aのy軸正方向への変位に変換される。テーパ面42iのz軸に対する(時計回り方向の)傾角の大きさをαとすると、押し込みドリフト42のz軸負方向への変位量Δzに対して、溝部測定端子6aはy軸正方向へΔz・tanαだけ変位する。
【0059】
ここで、スライドブロック先端部41bがスナップリングRの上面に着座しているとき、溝部測定端子6a〜6fの先端部62a〜62fの高さ(z軸方向位置)は、スナップリングRの内周面の高さと一致している。よって、溝部測定端子6a〜6fが外径方向へ変位することにより、その先端部62a〜62fがスナップリングRの内周面に押接し、スナップリングRの内周面を外径方向に押圧する。これによりスナップリングRが押し広げられ、リング溝2dの溝底まで確実に嵌め込まれる。
【0060】
同時に、溝部測定端子6a〜6fの外径方向への変位量に基づき、スナップリングRの内径D3を測定する。押し込みドリフト42のz軸方向変位量Δzは、溝部測定用リニアゲージ33により測定される。一方、上記のように、溝部測定端子6a〜6fの外径方向への変位量Δz・tanαと、押し込みドリフト42のz軸方向変位量Δzとは容易に換算できる。よって、測定した押し込みドリフト42の変位量Δzを、溝部測定端子6a〜6fの変位量に換算し、これに基準の所定値を加えた値を、スナップリングRの内径D3の測定値として算出する。
【0061】
押し込みドリフト42のz軸方向変位量Δzは、溝部測定用リニアゲージ33により測定される。スライドブロック41に固定設置された溝部測定用リニアゲージ33の固定部33aは、スライドブロック41とともにz軸負方向への変位が規制されている。一方、押し込みドリフト42に接続された可動部33bは、押し込みドリフト42とともにz軸負方向へ変位する。よって、押し込みドリフト42のz軸負方向への変位量Δzの分だけ、可動部33bが固定部33aに対してz軸負方向に変位し、溝部測定用リニアゲージ33においてこの変位量Δzが測定される。
【0062】
ここで、テーパ面42i〜42nは、それぞれ傾斜面60g〜60lと面接触している。よって、押し込みドリフト先端部42bのz軸方向移動に対して、溝部測定端子6a〜6fの移動方向がxy平面内でふらつくことがない。すなわち、溝部測定端子6a〜6fが、押し込みドリフト先端部42bの正六角形の各辺に対して直角方向に移動するように規制されている。よって、溝部測定端子6a〜6fの先端部62a〜62fがガタツキなく確実にスナップリングRの内周面に密着する。したがて、スナップリングRをリング溝2dの溝底まで確実に押し広げることができるとともに、スナップリング内径D3を正確に測定することができる。
【0063】
(異常判定)
異常判定機構は、高さ測定用リニアゲージ31および溝部測定用リニアゲージ33にそれぞれ接続して設けられた図外の判定装置により構成されている。高さ測定機構および溝部測定機構の測定結果、すなわち高さH1および内径D3の測定値が正常範囲内にあるか否かを判定し、スナップリングRの組み付けが確実に行われているか否かを判断する。
【0064】
スナップリング組み付け高さH1の異常判定では、まず、高さ測定用リニアゲージ31の測定値H1を測定規格値H1*と比較し、測定値H1の大きさが予め設定された正常範囲内であれば、スナップリングRがz軸方向においてリング溝2dの位置に確実に取り付けられていると判定する。すなわち組み付け位置が正常であり、スナップリングが全周にわたってリング溝2dに嵌め込まれているため、入り不完全は発生していない、と判断する。一方、正常範囲外であれば、スナップリングRがリング溝2dの位置まで確実に押し込まれておらず、入り不完全が発生している、と判定する。なお、いずれの場合も、測定値H1を測定規格値H1*およびその正常範囲とともにパネルで表示する。
【0065】
スナップリング内径D3の異常判定では、まず、溝部測定用リニアゲージ33の測定値D3を測定規格値D3*と比較し、測定値D3の大きさが予め設定された正常範囲内であれば、スナップリングRがリング溝2dの溝底まで確実に嵌り込んでおり、組み付け深さが正常であると判定する。一方、正常範囲外であれば、リング溝に嵌まり込んだ夾雑物やスナップリングR自体の張力不足等によりスナップリングRの縮径が発生しており、スナップリングRがリング溝2dの溝底まで確実に押し込まれていない、と判定する。なお、いずれの場合も、測定値D3を測定規格値D3*およびその正常範囲とともにパネルで表示する。
【0066】
ここで、いずれか1個でも溝部測定端子6の(外径方向への)移動が妨げられれば、これにより押し込みドリフト42のz軸負方向への移動も制限される。押し込みドリフト42の移動制限は、測定値D3の異常として検出される。言い換えれば、測定値D3に異常が発生している場合には、各溝部測定端子6a〜6fが担当しているスナップリング内周範囲のいずれかにおいて、夾雑物が嵌り込む等によりスナップリングRの縮径が発生している。本実施例1では、溝部測定端子6が6個であるため、スナップリング内周範囲2πのうち、1個の溝部測定端子6が担当する範囲はπ/3である。
【0067】
(フールプルーフ治具)
装置1は、フールプルーフ治具を有している。図6は、溝部測定端子6a〜6fの測定精度の保証確認を行うための治具7の正面図である。治具7は、スナップリングRと同様のリング形状を有しており、その内周面には1個の突出部7aが設けられている。治具7の外径は、ケース2の内径D2と略同じ大きさに設けられ、治具7の内径は、スナップリング内径D3の測定規格値D3*と同じ大きさに設けられている。突出部7aの径方向長さrは、リング溝2dに嵌り込んだ夾雑物を想定した所定の大きさに設定されている。治具7の厚さは、スナップリングRの厚さと同じ大きさに設けられている。
【0068】
装置1の所定の稼動周期ごとに治具7をケース2に設置し、その状態で装置1を稼動させる。その測定値を所定の判定基準値と比較し、その結果に基づき、装置1の測定機能、主に各溝部測定端子6a〜6fの測定機能が正常であるか否かを判定する(治具7のフールプルーフ機能)。
【0069】
まず、リング溝2dにスナップリングRが完全に組み付けられた状態のケース2において、スナップリングRの上面に、溝部測定端子6a〜6fのいずれか1個(例えば6aとする)の外径方向位置に突出部7aが配置されるように治具をセットする(1枚重ねて置く)。セットされた状態において、治具7の内周面は、突出部7aが設けられた箇所を除いて、スナップリングRの内周面と同一面をなしている。言い換えると、突出部7aにより、リング溝2dに噛み込んだ夾雑物によるスナップリング縮径を擬似的に実現している。次に、この状態で測定ヘッド部4をケース2に挿入して、スナップリング内径D3を測定する。
【0070】
溝部測定端子6aの外径方向位置に突出部7aが位置しているため、突出部7aの径方向長さrの分だけ、測定値D3は測定規格値D3*よりも小さくなるはずである。よって、計算上、測定規格値D3*から突出部7aの径方向長さrを差し引いた判定基準値D4*が予め設定され、その正常範囲(判定基準値D4*の上限および下限)が設定されている。判定基準値D4*と測定値D3とを比較し、測定値D3が上記正常範囲内であるときは、溝部測定端子6aが精度良くスナップリング内径D3を測定できている、と判定する。そして、装置1の所定の稼動周期ごとに、突出部7aに対応して配置する溝部測定端子6a〜6fを順に変更していく。これにより各溝部測定端子6a〜6fの測定精度の保証確認を行う。
【0071】
なお、測定規格値H1*から治具7の厚さを差し引いた判定基準値H3*が予め設定され、その正常範囲(判定基準値H3*の上限および下限)が設定されている。スナップリングRの上面に治具7をセットした状態で、装置1によりスナップリング組み付け高さH1の測定を行うことで、高さ測定機構の測定精度の保証確認を行うこともできる。すなわち、判定基準値H3*と測定値H1とを比較して、測定値H1が上記正常範囲内であるときは、装置1が精度良くスナップリング組み付け高さH1を測定できている、と判定する。
【0072】
[実施例1の効果]
実施例1のスナップリング組み付け検査装置1は、以下に列挙する効果を有する。
【0073】
(1)ケース2と同軸方向にケース2に挿入される測定ヘッド部4を有し、ケース2の内周面のリング溝2dに組み付けられたスナップリングRの組み付けを確認するスナップリング組み付け検査装置1において、測定ヘッド部4の内部で(測定ヘッド部4の)径方向に移動可能に設けられ、外径方向に移動することによりスナップリングRの内周面に押接する溝部測定端子6a〜6fと、溝部測定端子6a〜6fの移動距離を検出し、検出した溝部測定端子6a〜6fの移動距離に基づきスナップリングRの内径D3を測定する溝部測定機構(内径測定部)と、を設けた。
【0074】
よって、リング溝2dに組み付けられたスナップリングRの内周面を溝部測定端子6a〜6fによって直接に押圧するため、リング溝2dの溝底までスナップリングRを確実に押し込み、密着させることが可能であり、スナップリングRがリング溝2dから外れることを防止できる。また、リング溝2dに設置されたスナップリングRの内径D3を実際に直接測定し、寸法管理を行うため、リング溝2dに夾雑物が挟まっているか否かを確実に検出することが可能であり、スナップリングRが確実にリング溝底まで嵌まり込んで組み付けられているか否かを正確に判定できる。
【0075】
(2)測定ヘッド部4の内部で(測定ヘッド部4の)軸方向に移動可能に設けられた押し込みドリフト42と、測定ヘッド部4の内部で押し込みドリフト42の軸方向移動を溝部測定端子6a〜6fの径方向移動に変換する機構(方向変換部)と、を設け、溝部測定機構(内径測定部)は、押し込みドリフト42の移動距離を検出し、検出した押し込みドリフト42の移動距離を溝部測定端子6a〜6fの移動距離に換算することとした。
【0076】
よって、ケース2においてリング溝2dがケース開口部2bから深い位置に設けられている場合でも、測定ヘッド部4をケース2に挿入した際、押し込みドリフト42の軸長の分だけ、溝部測定端子6a〜6fをケース2の深い位置に配置することができる。したがって、このような場合でも、リング溝2dに組み付けられたスナップリングRの内周面を直接に押圧することが可能となり、リング溝底までスナップリングRを確実に押し込むことができる。また、スナップリング内径D3を実際に直接測定することが可能であり、リング溝2dに夾雑物が挟まっているか否かを確実に検出できる。
【0077】
(3)押し込みドリフト42の軸方向移動を溝部測定端子6a〜6fの径方向移動に変換する機構(方向変換部)は、押し込みドリフト先端部42bに設けられたテーパ面42i〜42nと、溝部測定端子6a〜6fの(測定ヘッド部4の)内径側の基部60a〜60fに設けられ、テーパ面42i〜42nと当接する傾斜面60g〜60lと、を有することとした。
【0078】
よって、上記移動方向の変換は、テーパ面42i〜42nと傾斜面60g〜60lとの摺接(およびリターンスプリング63の付勢力)のみによって行われ、かつ両方向の移動量の換算は三角関数を用いた単純な式により行われることとなる。したがって、上記移動方向の変換のための複雑な機構や、両方向の移動量を換算するための複雑な演算則を別途設ける必要がない。すなわち、簡便に方向変換を実現でき、かつ移動量の換算が容易な機構であるため、装置1の簡素化や小型化を図ることができる。
【0079】
(4)溝部測定端子6a〜6fを測定ヘッド部4の軸Oに関して対称に複数個(本実施例1では6個)設けることとした。
【0080】
このように複数個設けることにより、1個の溝部測定端子6がリング溝2dへの押し込みおよび内径D3の測定を担当するスナップリング内周範囲が狭まる。このため、リング溝2dの底までスナップリングRの全体を確実に押し込むことができ、かつリング溝2dに挟まった夾雑物によるスナップリングRの縮径をより確実に検出できる。また、測定ヘッド部4の軸Oに関して対称に溝部測定端子6a〜6fが配置されているため、スナップリングRの縮径を均等に、すなわち何れの位置に縮径が生じたとしても同じ確率で、検出可能である。したがって、測定結果の信頼性を向上できる。
【0081】
(5)テーパ面42i〜42nと傾斜面60g〜60lとは面同士で接触することとした。
【0082】
よって、溝部測定端子6a〜6fが(測定ヘッド部4の)径方向に移動するように規制されることとなり、その先端部62a〜62fがスナップリングRの内周面に対して平行に当接することとなる。したがって、先端部62a〜62fをガタツキなく確実にスナップリング内周面に密着させることが可能になるため、スナップリングRをリング溝底まで確実に押し広げることができるとともに、スナップリング内径D3を正確に測定することができる。
【0083】
(6)押し込みドリフト先端部42bの径方向断面を正多角形(本実施例1では正六角形)に形成し、その各辺を構成する側板42c〜42hの外周にそれぞれテーパ面42i〜42nを設け、テーパ面42i〜42nにそれぞれ対応して溝部測定端子6a〜6fを配置し、傾斜面60g〜60lを、テーパ面42i〜42nと平行に設けた。
【0084】
よって、測定ヘッド部4の軸Oに関して対称に溝部測定端子6a〜6fが複数個配置されるため、上記(4)と同様の効果を有する。また、テーパ面42i〜42nと傾斜面60g〜60lとが面接触するため、上記(5)と同様の効果を有する。さらに、スライドブロック41がテーパ面42i〜42nを介して溝部測定端子6a〜6fからそれぞれ受ける反力が測定ヘッド部4の軸Oに関して対称になる。このため、軸Oに対するスライドブロック41の軸のズレが抑制され、その結果、スナップリング内径D3を正確に測定することができる。また、テーパ面42i〜42nと傾斜面60g〜60lとがそれぞれ平面として形成されているため、それぞれ曲面として形成した場合に比べて、加工や面合わせが容易である。
【0085】
(7)スライドブロック41(ケース2に挿入される測定ヘッド本体)に設けられ、スナップリングRの上面(z軸正方向側面)にz軸負方向に押接する軸方向当接部410の先端部411と、スライドブロック41(ケース2に挿入される測定ヘッド本体)に対してz軸方向に摺動可能に設けられ、オイルポンプカバー合わせ面2cにz軸負方向に当接する基準受けパッド50aと、を設け、先端部411と基準受けパッド50aのz軸負方向側面との間の軸方向距離H2の測定結果に基づき、オイルポンプカバー合わせ面2cからスナップリングRの上面までの軸方向距離H1を測定する高さ測定機構を設けた。
【0086】
すなわち、スライドブロック41の外周に摺動可能に設けられた測定ヘッドハウジング40には基準受けパッド50aが設置されており、この基準受けパッド50aやスライドブロック先端部41b等により、高さ測定機構が構成されている。また、スライドブロック41の内部には、押し込みドリフト42や溝部測定端子6a〜6fが収容されており、これらにより溝部測定機構が構成されている。このように高さ測定機構と溝部測定機構とが一体に組合わされているため、装置1をコンパクト化できる。また、検査工程において、測定ヘッド部4をケース2に一回挿入するだけで、高さ測定と溝部測定とを連続して自動的に行うことができる。このため検査時間の短縮を図ることができ、効率がよい。
【0087】
(8)測定ヘッド部4に接続され、測定ヘッド部4をケース2に対してxy平面内で移動させて測定ヘッド部4の軸Oの位置を調整するフローティング機構34を設けた。
【0088】
溝部測定機構によるスナップリング内径D3の測定結果は、ケース2の軸O' と測定ヘッド部4の軸Oとがズレていないことにより正確なものとなる。よって、測定ヘッド部4をケース2に挿入する前段階として両者の軸合わせをすることとした。これにより、スナップリングRをリング溝2dの底まで均等に押し広げることができる。また、内径D3の正確な測定結果が得られ、スナップリングRが確実にリング溝底まで入り込んで組み付けられているか否かをより正確に判定できる。
【0089】
[他の実施例]
以上、本発明を実施するための最良の形態を、実施例1に基づいて説明してきたが、本発明の具体的な構成は実施例1に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
【0090】
例えば、実施例1では、押し込みドリフト先端部を正六角形に形成し、それに対応して溝部測定端子を6個設けることとしたが、先端部を他の正n角形(n≧3)に形成し、それに対応して溝部測定端子をn個設けることとしてもよい。この場合、1個の溝部測定端子がカバーするスナップリング内周の範囲は、角度で表すと2π/nとなり、例えばn=3のとき、120°の範囲である。要は、リング溝のいずれかの位置に夾雑物が挟まって発生するスナップリング縮径を、いずれかの位置にある溝部測定端子が検出できればよいのであり、この検出が可能な溝部測定端子の個数、言い換えれば上記スナップリング内周の範囲を設定すればよい。個数が多いほど検出精度は向上する。しかし、この個数は、スナップリングのサイズ(内径)や、要求される検出精度等の考慮要素により適宜選択されるものであり、必ずしも実施例1のように6個に限定する必要はない。
【0091】
また、実施例1では、押し込みドリフト42の軸方向移動を溝部測定端子6a〜6fの径方向移動に変換する機構として、テーパ面42i〜42nと傾斜面60g〜60lとを設け、両者が摺接することにより方向変換することとしたが、他の機構を設けることとしてもよい。
【0092】
さらに、実施例1では、テーパ面42i〜42nと傾斜面60g〜60lとをそれぞれ平面として形成し、これらを平行に設けて両者が面接触することとしたが、例えば押し込みドリフト先端部42bを円錐形状とすることによりテーパ面42i〜42nを曲面として形成し、傾斜面60g〜60lをそれに対応する凹曲面として、両者が面接触することとしてもよい。また、実施例1では、テーパ面42i〜42nと傾斜面60g〜60lとは面接触することとしたが、線接触することとしてもよい。
【0093】
実施例1では、高さ測定用リニアゲージ31および溝部測定用リニアゲージ33として、接触式リニアゲージを用いることとしたが、非接触式リニアゲージを用いることとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】スナップリングが組み付けられたケースの軸方向断面図である。
【図2】装置の部分正面図である(y軸方向)。
【図3】装置の全体正面図であり(x軸方向)、部分的に断面図を示す。
【図4】測定ヘッド部の軸方向正面図である(z軸方向)。
【図5】装置による検査工程の流れを示すフローチャートである。
【図6】装置の測定精度の保証確認を行う治具の正面図である。
【符号の説明】
【0095】
1 スナップリング組み付け検査装置
2 ケース
2c オイルポンプカバー合わせ面
2d リング溝
4 測定ヘッド部
6a〜6f 溝部測定端子
34 フローティング機構
41 スライドブロック
41b スライドブロック先端部
42 押し込みドリフト
42b 押し込みドリフト先端部
42i〜42n テーパ面
50a 基準受けパッド
60a〜60f 基部
60g〜60l 傾斜面
61a〜61f スライド部
62a〜62f 先端部
410 軸方向当接部
411 先端部
R スナップリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内周面のリング溝に組み付けられたスナップリングの組み付けを確認するスナップリング組み付け検査装置において、
前記ケースと同軸方向に前記ケース内に挿入される測定ヘッドと、
前記測定ヘッド内で径方向に移動可能に設けられ、外径方向に移動することにより前記スナップリングの内周面に押接する第1当接部と、
前記第1当接部の移動距離を検出し、検出した前記第1当接部の移動距離に基づき前記スナップリングの内径を測定する内径測定部と、を設けたこと
を特徴とするスナップリング組み付け検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスナップリング組み付け検査装置において、
前記測定ヘッド内で軸方向に移動可能に設けられた押し込み部と、
前記測定ヘッド内で前記押し込み部の軸方向移動を前記第1当接部の径方向移動に変換する方向変換部と、を設け、
前記内径測定部は、前記押し込み部の移動距離を検出し、検出した前記押し込み部の移動距離を前記第1当接部の移動距離に換算すること
を特徴とするスナップリング組み付け検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載のスナップリング組み付け検査装置において、
前記方向変換部は、
前記押し込み部の先端に設けられたテーパ面と、
前記第1当接部の内径側の基部に設けられ、前記テーパ面と当接する傾斜面と、を有すること
を特徴とするスナップリング組み付け検査装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載のスナップリング組み付け検査装置において、
前記第1当接部を前記測定ヘッドの軸に関して対称に複数個設けたこと
を特徴とするスナップリング組み付け検査装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載のスナップリング組み付け検査装置において、
前記テーパ面と前記傾斜面とは面同士で接触すること
を特徴とするスナップリング組み付け検査装置。
【請求項6】
請求項3ないし5のいずれか1つに記載のスナップリング組み付け検査装置において、
前記押し込み部の先端の径方向断面を正多角形に形成し、前記正多角形の各辺を構成する複数の部材の外周にそれぞれ前記テーパ面を設け、
複数の前記テーパ面にそれぞれ対応して前記第1当接部を配置し、
前記傾斜面を、前記テーパ面と平行に設けたこと
を特徴とするスナップリング組み付け検査装置。
【請求項7】
請求項2ないし6のいずれか1つに記載のスナップリング組み付け検査装置において、
前記測定ヘッドに設けられ、前記スナップリングの上面に軸方向に押接する第2当接部と、
前記測定ヘッドに対して軸方向に摺動可能に設けられ、所定のケース基準面に軸方向に当接する第3当接部と、を設け、
前記第2当接部と前記第3当接部との間の軸方向距離の測定結果に基づき、前記ケース基準面から前記スナップリングの上面までの軸方向距離を測定する組み付け高さ測定部を設けたこと
を特徴とするスナップリング組み付け検査装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1つに記載のスナップリング組み付け検査装置において、
前記測定ヘッドに接続され、前記測定ヘッドを軸直方向平面内で前記ケースに対して移動させて前記測定ヘッドの軸位置を調整する位置決め機構を設けたこと
を特徴とするスナップリング組み付け検査装置。
【請求項9】
ケース内周面のリング溝に組付けられたスナップリングの組付けを確認するスナップリング組み付け検査方法において、
前記ケースと同軸方向に前記ケース内に測定ヘッドを挿入する第1工程と、
前記測定ヘッド内で径方向に移動可能に設けられた第1当接部を外径方向に移動させることにより、前記スナップリングの内周面に前記第1当接部を押接する第2工程と、
前記第1当接部の移動距離を検出し、検出した前記第1当接部の移動距離に基づき前記スナップリングの内径を測定する第3工程と、
を設けたこと
を特徴とするスナップリング組み付け検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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