説明

スナップ嵌合センサ構体

【課題】センサ本体に、熱可塑性材料の外面と接触する領域(すなわち、タッチアウト領域)がある場合、タッチアウトの危険を排除し且つセンサ構体を製造する場合に必要とされる労力を最小限に抑えるスナップ嵌合センサ構体の提供。
【解決手段】センサ本体を損傷するおそれがある漏れ流路又は漏れ開口部の形成を防止するように、球形スナップ嵌合を使用して熱可塑性センサ筐体30にスナップ嵌合することが可能である熱可塑性センサ本体モールド21を有するセンサ本体インサート20を具備する2分割センサ構体40の構成。センサ本体インサート20は、感知装置18、ワイヤ16、圧着箇所14及びセンサ端子12の一部を含めて、センサ本体の少なくとも一部を被覆する熱可塑性センサ本体モールド21を含んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセンサ構体に関し、特に、スナップ嵌合センサ構体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車工業を含むいくつかの工業分野において、例えば、温度を含む種々のパラメータを監視するためにセンサが使用される。例えば、化学物質及び過酷な天候条件を含めて、センサが動作しなければならない周囲環境によって起こる損傷又は腐食からセンサ本体(例えば、温度を測定するためのサーミスタ構体)を保護するために、通常、センサは、センサ本体を封入するセンサ筐体を有する。センサ筐体は、センサ本体を保護するのに加えて、センサ筐体を受け入れるための開口部を有する部品に装着され且つその部品と係合するように通常構成される。例えば、センサ筐体は、センサが装着される部品の開口部にあるねじ山と係合するためのねじ山を有してもよい。
【0003】
センサ本体に必要な保護及び受け入れ側部品と係合するための構成を実現するために、センサ筐体は、センサ本体を被覆し且つ受け入れ側部品と係合する形状に形成される射出成形熱可塑性材料を使用して通常製造される。センサ筐体は、成形型に熱可塑性材料を注入することにより形成されるのが好ましい。センサ本体に、熱可塑性材料の外面と接触する領域(すなわち、タッチアウト領域)がある場合、熱可塑性材料によるセンサ本体のそのような領域の被覆が薄いか又はまったくないと、周囲環境に通じる望ましくない漏れ流路又は他の開口部が形成されてしまうので、熱可塑性材料は、そのような領域を形成することなくセンサ本体を十分に封入することが望ましい。時間の経過に伴って、漏れ流路又は開口部は、化学物質、過酷な天候条件など(短絡、大きな抵抗又は開回路の原因となる)によってセンサ本体の損傷及び腐食を発生させる。
【0004】
しかし、多くの場合、タッチアウト領域の形成を回避することは難しい。例えば、典型的な製造過程において、センサ本体は熱可塑性材料の注入前にセンサ筐体の射出成形型の中心に配置される。熱可塑性材料の注入中、熱可塑性材料の力はセンサ本体を当初の中心位置から射出成形型の一方の側に押し出すか又は移動するので、センサ本体は射出成形型のその側と接触する状態になる。その結果、センサ本体を被覆するためにそのタッチアウト箇所を通って流れることができる熱可塑性材料の量は制限される。タッチアウトの危険に加えて、この典型的な製造過程では、熱可塑性材料の注入前にセンサ本体を射出成形型の中に慎重に位置決めしなければならないので、集中して労力を費やすことが必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,038,741号公報
【特許文献2】米国特許第5,438,877号公報
【特許文献3】米国特許第5,823,843号公報
【特許文献4】米国特許第5,920,193号公報
【特許文献5】米国特許第5,980,330号公報
【特許文献6】米国特許第6,435,017号公報
【特許文献7】米国特許出願公開第2004/0042845号明細書
【特許文献8】欧州特許第0,612,667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タッチアウトの危険を排除し且つセンサ構体を製造する場合に必要とされる労力を最小限に抑えることは有益だろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
センサ本体を損傷するおそれがある漏れ流路又は漏れ開口部の形成を防止するように、球形スナップ嵌合を使用して熱可塑性センサ筐体にスナップ嵌合することが可能である熱可塑性センサ本体モールドを有するセンサ本体インサートを具備する2分割センサ構体が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の特徴を理解できるように、ある特定の実施形態を参照することにより本発明を詳細に説明する。実施例のうちいくつかは添付の図面に示される。しかし、添付の図面は本発明のある特定の実施形態のみを例示するにすぎないので、本発明の範囲を限定すると考えられてはならず、本発明の範囲は他の同等に有効な実施形態を含むことに注意すべきである。図面は必ずしも縮尺どおりではなく、一般に、本発明のある特定の実施形態の特徴を示すことに重点が置かれる。従って、本発明を更に理解するために、添付の図面と関連させて以下の詳細な説明を参照することができる。
【図1】図1は本発明の例示的な一実施形態のセンサ本体を示した図である。
【図2】図2は本発明の例示的な一実施形態のセンサ本体インサートを示した図である。
【図3】図3は本発明の例示的な一実施形態のセンサ筐体を示した横断面図である。
【図4】図4は本発明の例示的な一実施形態のセンサ構体を示した部分横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
屋外気温(OAT)センサのセンサ構体を一例として本発明を説明するが、本発明に係る2分割構造と組み合わせて使用するのに適する多様な異なる種類のセンサ構体に本発明を使用可能であることが理解されるだろう。
【0010】
図1は、本発明の例示的な一実施形態のOATセンサ用センサ本体10(例えば、サーミスタ構体)を示す。本実施例において、抵抗の変化によって温度を感知するために使用される感知装置18(例えば、セラミックNTCサーミスタ)は、1対のワイヤ16を介して1対のセンサ端子12に接続可能である。ワイヤ16は圧着箇所14でセンサ端子12に圧着可能である。センサ本体10、特に感知装置18を周囲環境から保護するために、センサ本体10を被覆するように熱可塑性材料を使用可能である。
【0011】
図2は、本発明の例示的な一実施形態のセンサ本体インサート20(雄形)を示す。センサ本体インサート20は、感知装置18、ワイヤ16、圧着箇所14及びセンサ端子12の一部を含めて、センサ本体10の少なくとも一部を被覆する熱可塑性センサ本体モールド21を含んでもよい。一実施形態において、熱可塑性センサ本体モールド21はセンサ本体10を被覆するように成形されてもよい。センサ本体モールド21は、センサ本体10を被覆する機能及びセンサ筐体30と接触する機能の双方を実現してもよい。
【0012】
第1の機能、すなわちセンサ本体10を被覆する機能に関して、センサ本体モールド21は、中心部でセンサ本体10と接触し且つセンサ本体10を被覆するセンサ本体カバー22を含んでもよい。センサ本体カバー22は、センサ本体10の感知装置18を被覆し且つ「タッチアウト」を許容する先端部23を含んでもよい。第2の機能、すなわちセンサ筐体30と接触する機能に関して、センサ本体モールド21は、周囲に弓形リング24を含んでもよい。弓形リング24の少なくとも一部は、センサ本体カバー22より大きい直径を有し、以下に説明されるように、球形スナップ嵌合を使用してセンサ筐体30と接触することが可能である。弓形リング24は、センサ本体カバー22の一部に沿って延出することにより、弓形リング24とセンサ本体カバー22との間に開いた空間を形成してもよい。この弓形リング24は、弓形リング24の可撓性を向上する複数のアーム26を弓形リング24に形成する1つ以上の大きさを調整可能な溝穴28(すなわち、開口部)を含んでもよい。この構造により、組み立て中に力が加わった場合に弓形リング24とセンサ本体カバー22との間の開いた空間を通してアーム26がセンサ本体カバー22に向かって湾曲できる。
【0013】
図3は、本発明の例示的な一実施形態のセンサ筐体30(雌形)を示した横断面図である。センサ筐体30は、図2に示されるセンサ本体インサート20と係合し且つセンサ本体インサート20を受け入れるような形状に形成されたセンサ筐体空胴31を含んでもよい。例えば、センサ筐体空胴31は、センサ本体カバー22の先端23を受け入れるための先端33を含んでもよい。同様に、センサ筐体空胴31はセンサ筐体空胴31を取り囲む弓形内面34を含んでもよい。組み立て中にセンサ本体モールド21の弓形リング24が変形して、センサ筐体空胴31を取り囲む隆起部35を乗り越えた後に弓形リング24を受け入れるような形状に弓形内面34は形成される。センサ本体インサート20がセンサ筐体30に挿入される距離を制御するために、弓形内面34の後に段差36が配置されてもよい。一実施形態において、センサ筐体30を受け入れるための開口部を有する部品に配置されたねじ山と係合するように、センサ筐体30の外面にねじ山38が形成されてもよい。
【0014】
一実施形態において、熱可塑性センサ筐体30は射出成形されてもよい。熱可塑性材料の多数の流れの前端が一体に集まり、溶融しないように、センサ筐体30に複数の小さな開口部を形成する領域である接合線又は他の領域の形成を回避するために、一実施形態において、熱可塑性材料は、センサ本体インサートのセンサ筐体30の先端33の端でせき止められる噴出流れとして成形型に注入されてもよい。
【0015】
図4は、本発明の例示的な一実施形態のセンサ構体40を示した部分横断面図である。本発明を更にわかりやすく示すために、図2のセンサ本体インサート20(横断面図ではない部分)は、図3のセンサ筐体30の横断面部分に既に挿入された状態で示されている。図3に示されるように、センサ本体インサートの先端23にある感知装置18がセンサ本体カバー22の表面に当接又は近接した場合(例えば、センサ本体インサート20の成形中に感知装置18のタッチアウトが起こった場合)であっても、感知装置18がセンサ筐体30により完全に封入されているように、センサ本体インサート20はセンサ筐体30により周囲環境から保護される。
【0016】
センサ本体インサート20をセンサ筐体30に組み付けるために、センサ本体インサート20はセンサ筐体30に軸方向に押し込まれてもよい。これにより、溝穴28により形成される弓形リング24のアーム26は、センサ筐体空胴31の隆起部35に接触する。センサ本体インサート20がセンサ筐体空胴31に軸方向に押し込まれるにつれて、隆起部35により加えられる半径方向の力は弓形リング24(例えば、アーム26)を弓形リング24とセンサ本体カバー22との間の開いた空間を通してセンサ本体カバー22に向かって湾曲させる。組み立て中に、隆起部35を乗り越えるように弓形リング24を動かし、センサ筐体空胴31を取り囲む弓形内面34に当接させるのに十分な軸方向の力がセンサ本体インサート20に加わると、センサ本体インサート20及びセンサ筐体30は、センサ筐体30からのセンサ本体インサート20の離脱を阻止する球形スナップ嵌合を形成する。組み付け後のセンサ筐体30からセンサ本体インサート20の取り外しには、センサ本体インサート20に損傷を与えるような軸方向の大きな取り外し力がかかる。センサ本体インサート20を意図的にセンサ筐体30から取り外そうとすることによってセンサ本体インサート20は損傷すると考えられるので、故障した部品を交換しようとする前に顧客がセンサ構体40に対して誤った取り扱いをしたか否かを判断する上で、損傷の事実は有用である。
【0017】
センサ本体インサート20及びセンサ筐体30の材料としていくつかの異なる熱可塑性材料が使用されてよい。センサ本体インサート20及びセンサ筐体30の材料として選択される特定の熱可塑性材料、並びに弓形リング24、隆起部35及び弓形内面34の構造として選択される形状及び構成(例えば、半径、溝穴の数など)は、特定の球形スナップ嵌合により必要とされる組み立て力及び取り外し力の大きさを判定する要因であってもよい。いくつかの実施形態において、センサ本体インサート20は剛性センサ筐体30より高い可撓性を有してもよいが、他の実施形態において、それとは逆の構成(すなわち、センサ本体インサート20の剛性が高く且つセンサ筐体30の可撓性が高い)が使用されてもよい。一実施形態において、センサ本体インサート20はPA66(すなわち、ポリアミド6/6又はナイロン6/6)から製造されてもよく、センサ筐体30はPBT GF30(すなわち、30%ガラス繊維強化ポリブチレンテレフタレート)を使用して製造されてもよい。接合線なしの成形の場合、PBT GF30を選択すると非吸湿性特性が得られるので、感知装置18に水分が浸入しなくなる。他の実施形態において、センサ本体インサート20及びセンサ筐体30の双方に、類似の曲げ係数及び伸び特性を有する他の熱可塑性材料が使用されてもよい。
【0018】
図4に示されるセンサ構体40の例示的な構造と共に使用される熱可塑性材料のこの特定の組み合わせは、センサ本体インサート20をセンサ筐体30に組み付けるために約50lbsの軸方向組み立て力を必要としてもよい。ある特定の範囲の許容しうる組み立て力及び取り外し力(例えば、組立工程を自動化できるようなある特定の組み立て力)を規定するように、熱可塑性材料が選択され且つ球形スナップ嵌合が設計されてもよい。
【0019】
以上、最良の態様を含めて本発明を開示するため並びに任意の装置又はシステムの製造及び使用及び取り入れられている任意の方法の実施を含めて当業者による本発明の実施を可能にするために、実施例を使用して本発明を説明した。本発明の特許性の範囲は添付の特許請求の範囲により定義され、当業者には明らかである他の実施例を含んでもよい。そのような他の実施例は、特許請求の範囲の用語と相違しない構造要素を有する場合又は特許請求の範囲の用語と実質的に相違しない同等の構造要素を有する場合は特許請求の範囲の範囲内に含まれることを意図する。
【符号の説明】
【0020】
10 センサ本体
12 センサ端末
14 圧着箇所
16 ワイヤ
18 感知装置
20 センサ本体インサート
21 センサ本体モールド
22 センサ本体カバー
23 センサ本体インサート先端
24 弓形リング
26 アーム
28 溝穴
30 センサ筐体
31 センサ筐体空胴
33 センサ筐体先端
34 弓形内面
35 隆起部
36 段差
38 ねじ山
40 センサ構体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ端子(12)に接続された感知装置(18)を具備するセンサ本体(10)と;
前記センサ本体(10)と、前記センサ本体(10)の少なくとも一部を被覆する第1の熱可塑性材料から製造されたセンタ本体モールド(21)とを具備するセンサ本体インサート(20)であって、前記センサ本体モールド(21)は、前記センサ本体(10)の前記少なくとも一部と接触し且つ前記センサ本体(10)の前記少なくとも一部を被覆するセンサ本体カバー(22)と、前記センサ本体カバー(22)の少なくとも一部より大きい直径を有し且つ前記センサ本体カバー(22)の前記少なくとも一部の周囲に延出することにより、前記センサ本体カバー(22)との間に開いた空間を形成する弓形リング(24)とを具備するセンサ本体インサート(20)と;
第2の熱可塑性材料から製造され、前記センサ本体インサート(20)を受け入れるセンサ筐体空胴(31)を具備するセンサ筐体(30)であって、前記センサ筐体空胴(31)は、前記センサ本体モールド(21)の前記弓形リング(24)を受け入れるような形状に形成された前記センサ筐体空胴(31)を取り囲む弓形内面(34)と、前記弓形内面(34)に近接する前記センサ筐体空胴(31)を取り囲む隆起部(35)とを具備するセンサ筐体(30)とを具備し、
センサ構体(40)の組み立て中、前記センサ本体インサート(20)が前記センサ筐体空胴(31)に軸方向に押し込まれることにより、前記隆起部(35)は、前記弓形リング(24)に半径方向の力を加え、前記弓形リング(24)を前記センサ本体カバー(22)に向かって湾曲させ且つ前記弓形リング(24)を前記隆起部(35)を乗り越えるように移動させ、前記弓形内面(34)に当接させることにより、球形スナップ嵌合を形成するセンサ構体(40)。
【請求項2】
前記センサ本体モールド(21)の前記弓形リング(24)は、前記弓形リング(24)の可撓性を向上するために前記弓形リング(24)に複数のアーム(26)を形成する複数の溝穴(28)を更に具備する請求項1記載のセンサ構体(40)。
【請求項3】
前記センサ筐体空胴(31)は、前記センサ本体インサート(20)が前記センサ筐体空胴(31)に挿入される距離を制御するために前記弓形内面(34)の後に配置された段差(36)を更に具備する請求項1記載のセンサ構体(40)。
【請求項4】
前記第1の熱可塑性材料はポリアミド6/6である請求項1記載のセンサ構体(40)。
【請求項5】
前記第2の熱可塑性材料はガラス繊維強化ポリブチレンテレフタレートである請求項1記載のセンサ構体(40)。
【請求項6】
前記センサ本体モールド(21)は前記センサ筐体(30)より高い可撓性を有する請求項1記載のセンサ構体(40)。
【請求項7】
前記センサ本体モールド(21)は前記センサ筐体(30)より低い可撓性を有する請求項1記載のセンサ構体(40)。
【請求項8】
前記センサ構体(40)は温度センサである請求項1記載のセンサ構体(40)。
【請求項9】
前記感知装置(18)はセラミックNTCサーミスタである請求項1記載のセンサ構体(40)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−137823(P2011−137823A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291906(P2010−291906)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】