説明

スパイラルパッキンおよびそれを用いる回転軸の封止方法

【課題】装着性、取出し性に優れるパッキンおよびこれを用いる回転軸の封止方法を提供すること。
【解決手段】スパイラルパッキンは、その両端に等しい所定の角度で傾斜する傾斜端部を有するひも状のパッキン素材からなる環状のパッキンであって、少なくとも2層のスパイラル状に巻き付けられて環状体を構成し、前記傾斜端部が周方向の対応する位置に来るように構成され、パッキン全体の高さが、ほぼ(パッキン素材の径方向の厚さ)×(層の数)となっている。回転軸の封止方法は、上記スパイラルパッキンを、パッキン押え側から見たときにスタフィングボックス底部側に進行するように回転軸の回転方向と同方向に巻き付けて装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転軸の封止に用いられるスパイラルパッキンおよび該スパイラルパッキンを用いる回転軸の封止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バルブステムまたは回転軸からの漏れを防止するためにパッキンが使用されている。このようなパッキンは、軸径とスタフィングボックス内径と同一寸法のリング成形品(ドーナツ状)または編組品をパッキン1リング当たりの長さに切断したもの(紐状)を、1リングずつ切り口を90〜120°ずらしてスタフィングボックス深さに応じて数リング装着して使用されている。
【0003】
このような従来のパッキンには、スタフィングボックス深さに応じてパッキンのリング数を決めるため装着時に使用リング数を間違うことがある、パッキンの切り口を1リングずつずらして取付ける必要がある、使用後のパッキンの取出しが困難でありスタフィングボックスの奥のパッキンを取り出す際には専用工具を必要とする等の問題があった。
【0004】
このような従来技術における問題点を解決するために本発明者は鋭意検討した結果、スタフィングボックスの深さに応じて、連続した編組品をスパイラル状に一体成形し、必要リング数分のパッキン高さと同一にすることで、使用するパッキンを1つにし、切り口をずらす必要がなく、取出し性に優れ、なおかつシール性能を向上させたスパッキンが得られることを見出して本発明を完成するに至った。
【0005】
なお、スパイラルパッキンとしては、プランジャポンプのプランジャシール等に使用されるものが提案されているが(特許文献1参照)、このスパイラルパッキンは単体のパッキンをスパイラル状にするものであり、使用するリング状パッキン全体分を一本のパッキン素材でスパイラル形状として一体成形している本願発明とは異なるものである。
【特許文献1】特開2000−329233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、装着性、取出し性に優れるパッキンおよびこれを用いる回転軸の封止方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るスパイラルパッキンは、その両端に等しい所定の角度で傾斜する傾斜端部を有するひも状のパッキン素材からなる環状のパッキンであって、少なくとも2層のスパイラル状に巻き付けられて環状体を構成し、前記傾斜端部が周方向の対応する位置に来るように構成され、パッキン全体の高さが、ほぼ(パッキン素材の径方向の厚さ)×(層の数)となっていることを特徴としている。
【0008】
本発明に係る回転軸の封止方法は、上記スパイラルパッキンを、スタフィングボックス内の回転軸に装着するに際し、パッキン押え側から見たときにスタフィングボックス底部側に進行するように回転軸の回転方向と同方向に巻き付けて装着することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るスパイラルパッキンは、切り口をずらす必要がなく、使用リング数の間違
い等の装着ミスを少なくすることができる。また、本発明に係るスパイラルパッキンは、連続したスパイラル状であるため、専用工具を使用しなくても全てのパッキンを容易に取出すことができる。
【0010】
本発明に係る回転軸の封止方法は、従来の方法に比べシール性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係るスパイラルパッキンおよび回転軸の封止方法について具体的に説明する。図1(A)、(B)は本発明に係るスパイラルパッキンを示す概略斜視図であり、図2は本発明に係るスパイラルパッキンの製造に用いられるパッキン素材を示す概略斜視図である。
【0012】
本発明に係るスパイラルパッキンは、図1に示すように、その両端に等しい所定の角度で傾斜する傾斜端部を有するひも状のパッキン素材からなる環状のパッキンであって、少なくとも2層のスパイラル状に巻き付けられて環状体を構成し、前記傾斜端部が周方向の対応する位置に来るように構成されている。
【0013】
本発明に係るスパイラルパッキンは、後述するように装着する回転軸の回転方向により用いられる巻き方向が異なるため、図1(A)、(B)に示すように右巻きと左巻きがある。
【0014】
このパッキンの層数(巻き回数)は、使用するスタフィングボックスの深さに依存し、当該スタフィングボックスに通常用いられるリング状のパッキンの数と同じ層数を有するように構成される。したがって、本発明に係るスパイラルパッキンのパッキン全体の高さは、ほぼ(パッキン素材の径方向の厚さ)×(層の数)である。
【0015】
このような本発明に係るスパイラルパッキンは、例えば図2に示すような両端を所定の角度(θ)、好ましくは30〜60°の角度で切断した傾斜端部を有する所定の長さパッキン素材5を、スパイラル状(右巻き又は左巻き)に前記傾斜端部が周方向の対応する位置に来るように金型に挿入し、プレスで一体成形することにより製造することができる。ここで用いられるパッキン素材としては、リング状パッキンの素材として従来公知のもの、例えば膨張黒鉛糸、カーボン繊維、フッ素樹脂繊維、アラミド繊維等の繊維を八編み、袋編み、格子編み等に編組したものが用いられ、これらの編組体は潤滑剤等を含浸させたり、表面処理をしたりしてもよい。
【0016】
次に、本発明に係る上記スパイラルパッキンを用いる回転軸の封止方法について具体的に説明する。図3(A)は本発明に係るスパイラルパッキンをスタフィングボックスに装着した状態を示す概略断面図であり、(B)は(A)の回転軸とスパイラルパッキンのみを示した概略斜視図である。
【0017】
スパイラルパッキン1は、図3(A)に示すようにスタフィングボックス3内に装着される。スパイラルパッキン1の層数はスタフィングボックス3の深さに依存し、当該スタフィングボックス3に通常用いられるリング状のパッキンの数と同じ層数を有するものが1つ用いられる。
【0018】
このときスパイラルパッキン1は、右巻き又は左巻きのパッキンを適宜選択し、図3(B)に示すように、パッキン押え4側から見たときにスタフィングボックス3底部側に進行するように回転軸の回転方向(矢印で示す方向)と同方向に巻き付けて装着する。
【0019】
このように本発明に係るスパイラルパッキンを特定の方向に取付けることにより、複数
のリング状のパッキンを用いた場合、スパイラルパッキンを上記方向とは逆の方向に装着した場合に比べ流体の漏れを少なくすることができる。
【0020】
また、本発明に係る回転軸の封止方法では、リング状パッキンを用いる場合に必要なリング数分のパッキン高さと同じ高さになるようにスパイラル状に巻き付けたスパイラルパッキンを1つのみ使用しているので、リング状パッキンを用いる場合のように切り口をずらして装着する必要がなく、取出し性に優れ、かつシール性能に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(A)、(B)は本発明に係るスパイラルパッキンを示す概略斜視図である。
【図2】本発明に係るスパイラルパッキンの製造に用いられるパッキン素材を示す概略斜視図である。
【図3】(A)は本発明に係るスパイラルパッキンをスタフィングボックスに装着した状態を示す概略断面図であり、(B)は(A)の回転軸とスパイラルパッキンのみを示した概略斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
1 … スパイラルパッキン
2 … 回転軸
3 … スタフィングボックス
4 … パッキン押え
5 … パッキン素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その両端に等しい所定の角度で傾斜する傾斜端部を有するひも状のパッキン素材からなる環状のパッキンであって、少なくとも2層のスパイラル状に巻き付けられて環状体を構成し、前記傾斜端部が周方向の対応する位置に来るように構成され、パッキン全体の高さが、ほぼ(パッキン素材の径方向の厚さ)×(層の数)となっていることを特徴とするスパイラルパッキン。
【請求項2】
請求項1に記載のスパイラルパッキンをスタフィングボックス内の回転軸に装着するに際し、パッキン押え側から見たときにスタフィングボックス底部側に進行するように回転軸の回転方向と同方向に巻き付けて装着することを特徴とする回転軸の封止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−349147(P2006−349147A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−179484(P2005−179484)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000229564)日本バルカー工業株式会社 (145)
【Fターム(参考)】