説明

スパッタリング用ターゲットおよび半導体装置の製造方法

【課題】均一な面内膜厚を有した薄膜を堆積させるとともに、使用効率の良いスパッタができるスパッタリング用ターゲットを提供すること。
【解決手段】実施形態のスパッタリング用ターゲットは、薄膜形成に用いられるターゲット原子を含んで構成されている。また、スパッタリング用ターゲットは、前記ターゲット原子がスパッタされるスパッタ面側の表面にスパッタ面の中心からの距離に応じた同心円状の厚みを持たせることによって前記スパッタ面が湾曲させられるとともに、湾曲させられた前記スパッタ面の表面に複数の凹凸形状部が形成されている。そして、前記凹凸形状部は、前記スパッタ面の凹部位置から所定の角度で斜め方向に叩き出されたターゲット原子を前記凹凸形状部の側壁に衝突させることで、前記斜め方向に叩き出されたターゲット原子が前記スパッタ面から放出されることを防いでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、スパッタリング用ターゲットおよび半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタリング装置は、イオン化させた元素をスパッタリング用ターゲットの表面に衝突させ、そこからスパッタされるスパッタ粒子(ターゲット原子)を基板(ウエハなど)に堆積させて成膜を行う装置である。
【0003】
このようなスパッタリング装置では、ターゲット原子がスパッタリング用ターゲットから様々な方向に叩き出されるので、斜め方向からウエハ上に入射するターゲット原子が多くなる。これにより、ウエハ上に堆積する膜の面内膜厚が不均一になる。このため、均一な面内膜厚を有した薄膜を堆積させることが望まれている。
【0004】
また、スパッタリング用ターゲットの面内消費分布は、スパッタリング装置毎に種々の傾向を示す。そして、スパッタリング用ターゲットの面内領域のうち一部の領域でも寿命になると、そのスパッタリング用ターゲットは使えなくなる。このため、スパッタリング用ターゲットを効率良く使用することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−126783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、均一な面内膜厚を有した薄膜を堆積させるとともに、使用効率の良いスパッタができるスパッタリング用ターゲットおよび半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、スパッタリング用ターゲットが提供される。スパッタリング用ターゲットは、薄膜形成に用いられるターゲット原子を含んで構成されている。また、スパッタリング用ターゲットは、前記ターゲット原子がスパッタされるスパッタ面側の表面にスパッタ面の中心からの距離に応じた同心円状の厚みを持たせることによって前記スパッタ面が湾曲させられるとともに、湾曲させられた前記スパッタ面の表面に複数の凹凸形状部が形成されている。そして、前記凹凸形状部は、前記スパッタ面の凹部位置から所定の角度で斜め方向に叩き出されたターゲット原子を前記凹凸形状部の側壁に衝突させることで、前記斜め方向に叩き出されたターゲット原子が前記スパッタ面から放出されることを防いでいる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、実施形態に係るターゲットが用いられるスパッタリング装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】図2は、実施形態に係るターゲットの概略構成を示す図である。
【図3】図3は、実施形態に係るターゲットの第1例および第2例を示す図である。
【図4】図4は、実施形態に係るターゲットの第3例および第4例を示す図である。
【図5】図5は、実施形態に係るターゲットの第5例および第6例を示す図である。
【図6】図6は、実施形態に係るターゲットの第7例を示す図である。
【図7】図7は、実施形態に係るターゲットの第8例を示す図である。
【図8】図8は、実施形態に係るターゲットの第9例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、実施形態に係るスパッタリング用ターゲットおよび半導体装置の製造方法を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
(実施形態)
図1は、実施形態に係るターゲットが用いられるスパッタリング装置の概略構成を示す断面図である。スパッタリング装置100は、ウエハWなどの基板(スパッタによる成膜対象)を大気と隔離するチャンバ5を有しており、チャンバ5内には、ウエハWを載置するステージ2が設けられている。また、チャンバ5には、プラズマ発生用ガスSを導入するガス導入口3およびチャンバ5から排気Hを放出する排気口4が設けられている。なお、プラズマ発生用ガスSとしては、例えば、アルゴンまたは窒素などの不活性ガスを用いることができる。
【0011】
また、チャンバ5内には、ウエハWに対向するようにしてターゲット(スパッタリング用ターゲット)1Aが配置され、ターゲット1Aの背面側には、ターゲット1Aの近傍で磁界Gを発生させる磁石7が配置されている。なお、磁石7は、ターゲット1Aの背面上において回転軸8の周囲を回転可能なよう構成されている。回転軸8は、ターゲット1Aの面内中心とウエハWの面内中心とを結ぶ軸と同軸である。ここで、ステージ2はグランド電位に接続され、ターゲット1Aは直流電源6に接続されている。
【0012】
また、ターゲット1Aは、薄膜形成に用いられるターゲット原子Pを含んで構成されている。ターゲット原子Pとしては、例えば、Al、Cu、Ta、Ti、NiまたはCoなどの金属原子や、これらを組み合わせた金属原子を用いることができる。
【0013】
ターゲット1Aのうちターゲット原子Pを放出する側の面である上面(表面)は、ドーム状に隆起するよう構成されている。例えば、ターゲット1Aは、その中心部が最も厚く、周辺部に近付くに従って薄くなる形状を有している。
【0014】
また、ターゲット1Aの表面全体には複数の凹部5aが一様に形成されている。各凹部5aは、例えば、ターゲット1Aの表面から裏面に向かって所定の深さを有した筒状の穴を設けることによって形成されている。また、各凹部5aは、ターゲット1Aがスパッタリング装置100に配置された場合に、凹部5aの側壁面で囲まれた筒状領域の軸方向が鉛直方向となるよう形成されている。換言すると、凹部5aは、ターゲット1Aの裏面に対して垂直な方向に設けられている。
【0015】
このような構成により、凹部5aは、ターゲット1Aから斜め方向に叩き出されたターゲット原子Pを側壁に衝突させる。別言すれば、スパッタ面の表面から所定の角度で斜め方向に叩き出されたターゲット原子Pを側壁に衝突させることでターゲット原子Pがターゲット1Aから放出されるのを遮る凹部5aがスパッタ面の表面に複数形成されている。したがって、ターゲット原子Pがターゲット1Aから大きく斜め方向にずれて放出されることがなくなる。
【0016】
スパッタリングにてウエハW上に薄膜を形成する際には、ステージ2上にウエハWが載置される。そして、チャンバ5内を排気しながらプラズマ発生用ガスSを導入し、直流電源6を介してターゲット1Aに直流電圧を印加することで、プラズマ発生用ガスSをプラズマ化させる。
【0017】
そして、回転軸8の周囲で磁石7を回転させ、磁石7にて発生された磁界G内にプラズマを収束させながら、プラズマ化されたイオン原子をターゲット1Aに衝突させることで、ターゲット1Aからターゲット原子Pが叩き出される。凹部5aの表面からスパッタされた粒子(ターゲット原子P)は、等方的に散乱するが、凹部5aの側壁面がコリメートの役割を果たすので、垂直成分を持つターゲット原子Pが支配的になる。これにより、ターゲット1Aから叩き出された垂直成分を持つターゲット原子PがウエハWに入射して付着することでウエハWに薄膜が形成される。
【0018】
このように、本実施形態では、ターゲット1Aの表面に凹部5aを設けることにより、凹部5aから斜め方向に叩き出されたターゲット原子Pを凹部5aの側壁に衝突させているので、ターゲット原子Pがターゲット1Aから放出されるのを防止することができる。このため、ターゲット1Aから垂直方向に叩き出されるターゲット原子Pの個数を増大させることができ、ウエハWに垂直に入射するターゲット原子Pの割合を増大させることができる。この結果、ウエハW上に形成された開口部のオーバーハングを低減し、カバレッジの面内均一性を向上させることが可能となる。したがって、例えば、ビアホールやトレンチの側壁に形成される膜が薄くなるのを防止し、密着性を向上させたり断線を防止したりすることができる。
【0019】
図2は、実施形態に係るターゲットの概略構成を示す図である。図2の(a)では、ターゲット1Aの断面構成の一部を模式的に示し、図2の(b)では、図2(a)に示した断面構成の一部拡大図を示している。
【0020】
凹部5aの形状は、凹部5aの底面5bから垂直方向に叩き出されたターゲット原子Pの進行を妨げることなく、凹部5aの底面5bから斜め方向に叩き出されたターゲット原子Pを効果的に凹部5aの側壁面に衝突させる形状としておく。このため、ターゲット1Aに形成される凹部5aの断面形状は、例えば矩形としておく。
【0021】
また、凹部5aの底面5bから斜め方向に叩き出されたターゲット原子Pがターゲット1Aから放出される個数を減らすために、たとえば、凹部5aのアスペクト比を3以上、凹部5aの深さBを15〜90mmの範囲内、凹部5aの幅Aを5〜30mmの範囲内とする。ここでの凹部5aのアスペクト比は、凹部5aを介して隣り合う凸部との距離(=凹部5aの幅)Aと、凸部の高さ(=凹部5aの深さ)Bとの比で定義することができる。
【0022】
凹部5aの底面5bから斜め方向に叩き出されたターゲット原子Pがターゲット1Aから放出される個数を減らすためには、凹部5aのアスペクト比は大きい方が好ましいが、凹部5aのアスペクト比が大きくなると、凹部5a間の隔壁の強度を保持するために凹部5a間の隔壁を厚くする必要がある。
【0023】
一方、凹部5a間の隔壁の頂上面5cからは、ターゲット原子Pが様々な方向に叩き出されるため、ターゲット1Aから斜め方向に放出されるターゲット原子Pの個数を減らすためには、凹部5a間の隔壁を薄くすることが好ましい。このため、凹部5aのアスペクト比は、例えば凹部5a間の間隔(=凹部5a間の隔壁の厚み)Cを考慮して決められる。なお、ターゲット1Aの表面に凹部5aを格子状に配列することにより、凹部5a間の隔壁を薄くした場合においても、凹部5a間の隔壁の強度を維持しつつ、凹部5aのアスペクト比を大きくすることができる。
【0024】
また、凹部5a間の隔壁の頂上面5cから斜め方向に放出されるターゲット原子Pの割合を減らすため、凹部5a間の間隔Cは、たとえば凹部5aの幅Aの1/4以下とし、1〜5mmの範囲内とする。
【0025】
また、ターゲット1Aから斜めに放出されるターゲット原子Pの割合を減らすために、凹部5aの幅Aは、例えばターゲット1Aの直径の1/20程度とする。具体的には、ターゲット1Aがシリサイド形成用の場合、凹部5aのアスペクト比を例えば3〜4の範囲内とし、凹部5aの底面5bからのターゲット原子Pの最小放射角θmを例えば70〜80°の範囲内になるようにしておく。
【0026】
また、ターゲット1Aが配線層或いはコンタクトホールのバリアメタル形成用の場合、アスペクト比の高い開口部内に成膜を行うためシリサイド形成工程よりも要求される条件が厳しくなる。このため、凹部5aのアスペクト比を例えば4以上に設定し、凹部5aの底面5bからのターゲット原子Pの最小放射角θmを例えば70〜80°の範囲内になるようにしておく。
【0027】
なお、上述した凹部5aのアスペクト比、凹部5aの深さB、凹部5aの幅A、凹部5a間の間隔は一例であり、凹部5aの形状や寸法は、何れの形状や寸法でもよい。
【0028】
つぎに、ターゲット1Aの具体的な構成例について説明する。図3は、実施形態に係るターゲットの第1例および第2例を示す図である。図3の(a)は、ターゲットの第1例であるターゲット1Aの上面図と断面図の関係を示している。また、図3の(b)は、ターゲットの第2例であるターゲット1Bの上面図と断面図の関係を示している。なお、図3の(a)に示す断面図(下側の図)は、ターゲット1Aをa1−b1で切断した場合の断面図であり、図3の(b)に示す断面図(下側の図)は、ターゲット1Bをa2−b2で切断した場合の断面図である。
【0029】
図3の(a)に示すように、ターゲット1Aは、ドーム状の表面形状を有するとともに、ドーム状の表面には凹部5aが所定の間隔(例えばマトリックス状)で複数形成されている。ターゲット1Aの表面のうち凹部5a以外の領域が頂上面5cである。ターゲット1Aは、頂上面5cがドーム状の表面形状をなすとともに、凹部5aの各底面が頂上面5cのなすドーム状の表面と略平行に並ぶよう形成されている。換言すると、各凹部5aの底面が並ぶ面は、ターゲット1A(頂上面5c)の表面と平行な面である。ここでの凹部5aは、底面が概略円形を有するとともに、側壁面が円柱の側壁面と略同じ形状を有している。換言すると、凹部5aは、上面側が開口した概略円筒状をなしている。ターゲット1Aでは、凹部5aと頂上面5cとによって、ドーム状の表面に凹凸形状が形成されている。
【0030】
また、図3の(b)に示すように、ターゲット1Bは、ドーム状の表面形状を有するとともに、ドーム状の表面には凸部13が所定の間隔(例えばマトリックス状)で複数形成されている。ターゲット1Bの表面のうち凸部13以外の領域が底面14である。ここでの凸部13は、概略円柱状をなしている。ターゲット1Bでは、凸部13と底面14とによって、ドーム状の表面に凹凸形状が形成されている。
【0031】
このように、ターゲット1A,1Bは、ドーム状の表面形状を有している。また、ターゲット1Aでは、概略円筒状の凹部5aが複数形成され、ターゲット1Bでは、概略円筒状の凸部13が複数形成されている。
【0032】
図4は、実施形態に係るターゲットの第3例および第4例を示す図である。図4の(a)は、ターゲットの第3例であるターゲット1Cの上面図と断面図の関係を示している。また、図4の(b)は、ターゲットの第4例であるターゲット1Dの上面図と断面図の関係を示している。なお、図4の(a)に示す断面図(下側の図)は、ターゲット1Cをa3−b3で切断した場合の断面図であり、図4の(b)に示す断面図(下側の図)は、ターゲット1Dをa4−b4で切断した場合の断面図である。
【0033】
図4の(a)に示すように、ターゲット1Cは、ドーム状の表面形状を有するとともに、ドーム状の表面には凹部15が所定の間隔で複数形成されている。ターゲット1Cの表面のうち凹部15以外の領域が頂上面16である。ここでの凹部15は、底面が概略矩形状を有するとともに、側壁面が四角柱の側壁面と略同じ形状を有している。換言すると、凹部15は、上面側が開口した概略角筒状をなしている。ターゲット1Cでは、上面側から見た場合に、各凹部15の長手方向が所定の方向に沿って平行に並ぶよう配置されている。具体的には、各凹部15の長手方向がa3−b3に対して垂直となるよう各凹部15が配置されている。
【0034】
また、図4の(b)に示すように、ターゲット1Dは、ドーム状の表面形状を有するとともに、ドーム状の表面には凹部17が所定の間隔で複数形成されている。ターゲット1Dの表面のうち凹部17以外の領域が頂上面18である。ここでの凹部17は、底面が概略正方形状を有するとともに、側壁面が四角柱の側壁面と略同じ形状を有している。換言すると、凹部17は、上面側が開口した概略角筒状をなしている。ターゲット1Dでは、上面側から見た場合に、ターゲット1Aの各凹部15の位置に凹部17が配置されている。
【0035】
なお、ターゲット1C,1Dにおいて、凹部15,17を凸部にしてもよい。具体的には、ターゲット1Cに、凹部15の底面と同様の上面形状を有した四角柱状の凸部を設けてもよい。また、ターゲット1Dに、凹部17の底面と同様の上面形状を有した四角柱状の凸部を設けてもよい。
【0036】
図5は、実施形態に係るターゲットの第5例および第6例を示す図である。図5の(a)では、ターゲットの第5例であるターゲット1Fの上面図を示している。また、図5の(b)は、ターゲットの第6例であるターゲット1Gの上面図を示している。
【0037】
図5の(a)に示すように、ターゲット1Fには、凹部21が複数形成されている。ターゲット1Fの表面のうち凹部21以外の領域が頂上面22である。ここでの凹部21は、底面が概略円環状を有するとともに、内側の側壁面および外側の側壁面が円柱の側壁面と略同じ形状を有している。各凹部21の中心は、ターゲット1Fの中心と同じ位置であり、これにより各凹部21が同心円状に並べられている。
【0038】
なお、ターゲット1Fにおいて、凹部21を凸部にして構成してもよい。具体的には、ターゲット1Fに、凹部21の底面と同様の上面形状を有した円環柱状の凸部を設けてもよい。
【0039】
また、図5の(b)に示すように、ターゲット1Gには、凹部23が複数形成されている。ターゲット1Gの表面のうち凹部23以外の領域が頂上面24である。ここでの凹部23は、底面が概略三角形状または概略扇形状を有するとともに、側壁面が三角柱または扇柱の側壁面と略同じ形状を有している。例えば、凹部23の底面が概略三角形状の場合、概略三角形状の頂点は、ターゲット1Fの中心近傍に位置し、且つ隣接する凹部23の側壁面同士が互いに略平行になるよう、各凹部23は並べられている。
【0040】
なお、ターゲット1Gにおいて、凹部23を凸部にして構成してもよい。具体的には、ターゲット1Gに、凹部23の底面と同様の上面形状を有した概略三角柱または概略扇柱の凸部を設けてもよい。
【0041】
図6は、実施形態に係るターゲットの第7例を示す図である。図6では、ターゲットの第7例であるターゲット1Hの断面図を示している。図6に示すように、ターゲット1Hは、ドーム状の表面形状を有するとともに、ドーム状の表面には凹部25が所定の間隔で複数形成されている。ターゲット1Hの表面のうち凹部25以外の領域が頂上面26である。ここでの各凹部25は、凹部25の各底面が同一面内に並ぶよう配置されている。各凹部25の底面が並ぶ面は、ターゲット1Hの裏面と平行な面である。
【0042】
なお、凹部25の形状や配置は、凹部5a、凹部15、凹部17、凹部19、凹部21、凹部23の何れの形状や配置と同じであってもよい。また、ターゲット1Hの凹部と凸部を入れかえてもよい。すなわち、ターゲット1Hにおいて、凹部25を凸部にしてもよい。
【0043】
図7は、実施形態に係るターゲットの第8例を示す図である。図7では、ターゲットの第8例であるターゲット1Iの断面図を示している。図7に示すように、ターゲット1Iは、ドーム状の表面形状を有するとともに、ドーム状の表面には凸部28が所定の間隔で複数形成されている。ターゲット1Iの表面のうち凸部28以外の領域が底面27である。さらに、ターゲット1I内の凸部28の各底面近傍には、凸部28を上面側から見た場合に、S極の磁石S1とN極の磁石N1とが交互に並ぶよう配置されている。
【0044】
なお、ターゲット1Iを用いてスパッタリングを行う場合には、スパッタリング装置100は、磁石7、回転軸8を備えていなくてもよい。また、ターゲット1Iのうち磁石S1,N1以外の形状は、ターゲット1A〜1Hの何れの形状と同じであってもよい。換言すると、ターゲット1A〜1Hに磁石S1,N1を配置してもよい。
【0045】
図8は、実施形態に係るターゲットの第9例を示す図である。図8では、ターゲットの第9例であるターゲット1Jの上面図を示している。ターゲット1Jは、図4の(a)に示したターゲット1CにS極の磁石S2とN極の磁石N2とを交互に配置したターゲットである。具体的には、ターゲット1J内の凸部の各底面近傍には、凸部を上面側から見た場合に、S極の磁石S2とN極の磁石N2とが交互に並ぶよう配置されている。
【0046】
なお、本実施の形態では、ターゲットの構成例としてターゲット1A〜1Jについて説明したが、ターゲット1A〜1Jの構成を組み合わせたターゲットを用いてもよい。例えば、ターゲットの表面をドーム状の表面形状とし、ドーム状の表面のうち、中心部近傍に凹部5aを配置し、外周部近傍に凹部17を配置してもよい。
【0047】
また、本実施の形態では、ターゲット1A〜1Jの表面形状が1つのドーム状である場合について説明したが、表面形状は1つのドーム状以外の形状であってもよい。例えば、ターゲットを、ターゲットの表面に2つ以上の山を形成した構造(表面形状)としてもよい。この場合の各山は、ターゲットの中心部を軸とした同心円状に並べられる。換言すると、ターゲットに形成される山は、円環状の峰または半球形状の山であり、各山の中心がターゲットの中心となる。
【0048】
また、ターゲットの表面形状を上述した山と谷を組み合わせた形状としてもよい。換言すると、ターゲットに対し、ターゲット原子Pがスパッタされるスパッタ面側の表面にスパッタ面の中心からの距離に応じた同心円状の厚みを持たせることによってスパッタ面を湾曲させておけばよい。また、ターゲットの表面形状は、同心円状の山と谷に限らず、山と谷をターゲット内で回転対象となるよう配置してもよい。
【0049】
また、図1、図3、図5、図8では、凸部の頂上面、凹部の底面がドーム状の表面と略平行に並ぶよう配置される場合について図示したが、凸部の各頂上面や凹部の各底面は、ターゲットの裏面と平行な面としてもよい。
【0050】
スパッタリングでは、スパッタリング装置100毎やターゲット材質毎にターゲットの消費されやすい位置が異なる。このため、ターゲットの表面形状は、例えば、スパッタリング装置100やターゲット材質に応じた形状に形成しておく。また、凹部や凸部の位置または大きさを、変更することにより、ウエハWへのスパッタ膜の堆積分布を制御してもよい。
【0051】
半導体装置(半導体集積回路)を製造する際には、スパッタリング装置100が、ターゲット1A〜1Jを用いてウエハW上へのスパッタリングを行う。このときスパッタリングされるウエハWには、例えば所定の回路パターンが形成されている。ウエハWへのスパッタリングによってウエハW上にスパッタリング膜が成膜された後、ウエハW上にレジストが塗布されて、このウエハWにフォトマスクを用いた露光処理が行われる。その後、ウエハWが現像されてウエハW上にレジストパターンを形成される。そして、レジストパターンをマスクとしてスパッタリング膜がエッチングされる。これにより、スパッタリング膜を用いた回路パターンがウエハW上に形成される。半導体装置を製造する際には、上述したスパッタリングなどの成膜、露光処理、現像処理、エッチング処理などがレイヤ毎に繰り返される。
【0052】
このように実施形態によれば、ターゲットの表面に複数の凹部や凸部が設けられているので、スパッタ粒子の指向性を向上させることが可能となる。また、ターゲットの表面がドーム状に形成されているので、ターゲットを効率良く使用してスパッタできる。したがって、ターゲットを効率良く使用しつつ、均一な面内膜厚を有した薄膜(フラットな膜)をウエハ上に堆積させることが可能となる。
【0053】
また、ターゲットの表面がドーム状であるので、ターゲットの表面が平面である場合よりも、ウエハW上にスパッタリングされる薄膜を平坦に形成することが可能となる。これは、ターゲットの表面がドーム状の場合、ターゲットの外周部(中心部以外)がウエハWの外側を向いているからである。ターゲットの外周部がウエハWの外側を向いていることにより、ウエハWの中心部には、薄膜が形成されにくくなる。このため、ウエハWの中心部が、ウエハWの外周部よりも厚く成膜されることを緩和できる。そして、ターゲットの表面に複数の凹部や凸部が設けられていることと、ターゲットの表面がドーム状であることの相乗効果により、平坦な薄膜をウエハ上に堆積させることが可能となる。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1A〜1J…ターゲット、5a,15,17,19,21,23,25…凹部、5b,14,27…底面、5c,16,18,20,22,24,26…頂上面、13,28…凸部、100…スパッタリング装置、N1,N2,S1,S2…磁石、P…ターゲット原子、W…ウエハ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜形成に用いられるターゲット原子を含んで構成され、
前記ターゲット原子がスパッタされるスパッタ面側の表面にスパッタ面の中心からの距離に応じた同心円状の厚みを持たせることによって前記スパッタ面がドーム状の形状を含んだ構成となるよう前記スパッタ面が湾曲させられるとともに、湾曲させられた前記スパッタ面の表面に複数の凹凸形状部が形成され、
前記凹凸形状部は、前記スパッタ面の凹部位置から所定の角度で斜め方向に叩き出されたターゲット原子を前記凹凸形状部の側壁に衝突させることで、前記斜め方向に叩き出されたターゲット原子が前記スパッタ面から放出されることを防ぐことを特徴とするスパッタリング用ターゲット。
【請求項2】
前記凹凸形状部は、それぞれマトリックス状に所定の間隔で前記スパッタ面の表面に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング用ターゲット。
【請求項3】
前記凹凸形状部は、それぞれ円環形状を有するとともに、前記スパッタ面の表面に所定の間隔で同心円状に並べられていることを特徴とする請求項2に記載のスパッタリング用ターゲット。
【請求項4】
前記凹凸形状部のうち、各凸部の底側にN極の磁石とS極の磁石とが交互に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスパッタリング用ターゲット。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1つに記載のスパッタリング用ターゲットを用いて半導体装置を製造することを特徴とする半導体装置の製造方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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