説明

スパークプラグ、スパークプラグ用の主体金具、及び、スパークプラグの製造方法

【課題】耐塩食性のみでなく耐応力腐食割れ性にも優れたスパークプラグを提供する。
【解決手段】スパークプラグは、ニッケルめっき層と、このニッケルめっき層の上に形成されたクロメート層とを含む複合層で被覆された主体金具を備える。クロメート層は、膜厚が2〜45nmであり、Cr元素の濃度が60at%以下であり、Crの他にNiを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用のスパークプラグ、スパークプラグ用の主体金具、及び、スパークプラグの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンエンジンなどの内燃機関の点火に使用されるスパークプラグは、中心電極の外側に絶縁体が設けられ、さらにその外側に主体金具が設けられ、中心電極との間に火花放電ギャップを形成する接地電極が主体金具に取り付けられた構造を有する。主体金具は一般に炭素鋼等の鉄系材料で構成され、その表面には防食のためのめっきが施されることが多い。めっき層としては、Niめっき層とクロメート層の2層構造を採用する技術が知られている(特許文献1)。しかし、発明者らは、このような2層以上のめっき層を採用した場合にも、スパークプラグの加締め時に変形する箇所における耐食性が大きな問題となることを見いだした。以下では、まず、スパークプラグの構造例と加締め工程とを説明し、耐食性が問題となる加締め変形の箇所について説明する。
【0003】
図1は、スパークプラグの構造の一例を示す要部断面図である。このスパークプラグ100は、筒状の主体金具1と、先端部が突出するようにその主体金具1内に嵌め込まれた筒状の絶縁体2と、先端部を突出させた状態で絶縁体2の内側に設けられた中心電極3と、主体金具1に一端が結合され他端側が中心電極3の先端と対向するように配置された接地電極4と、を備えている。接地電極4と中心電極3の間には火花放電ギャップgが形成されている。
【0004】
絶縁体2は、例えばアルミナあるいは窒化アルミニウム等のセラミック焼結体により構成され、その内部には絶縁体2の軸方向に沿って中心電極3を嵌め込むための貫通孔6を有している。貫通孔6の一方の端部側には端子金具13が挿入・固定され、他方の端部側には中心電極3が挿入・固定されている。また、貫通孔6内において、端子金具13と中心電極3との間に抵抗体15が配置されている。この抵抗体15の両端部は、導電性ガラスシール層16,17を介して中心電極3と端子金具13とにそれぞれ電気的に接続されている。
【0005】
主体金具1は、炭素鋼等の金属により中空円筒状に形成されており、スパークプラグ100のハウジングを構成する。主体金具1の外周面には、スパークプラグ100を図示しないエンジンブロックに取り付けるためのねじ部7が形成されている。なお、六角部1eは、主体金具1をエンジンブロックに取り付ける際に、スパナやレンチ等の工具を係合させる工具係合部であり、六角状の横断面形状を有している。主体金具1の後方側(図中の上方)の開口部の内面と、絶縁体2の外面との間には、絶縁体2のフランジ状の突出部2eの後方側周縁にリング状の線パッキン62が配置され、そのさらに後方側には、タルク等の充填層61と、リング状のパッキン60とがこの順に配置されている。組み立て時には、絶縁体2を主体金具1に向けて前方側(図中の下側)に押し込み、その状態で主体金具1の後端の開口縁をパッキン60(ひいては加締め受部として機能する突出部2e)に向けて内側に加締めることにより加締め部1dが形成され、主体金具1が絶縁体2に対して固定される。
【0006】
主体金具1のねじ部7の基端部には、ガスケット30がはめ込まれている。このガスケット30は、炭素鋼等の金属板素材を曲げ加工したリング状の部品であり、ねじ部7をシリンダヘッド側のねじ孔にねじ込むことにより、主体金具1側のフランジ状のガスシール部1fとねじ孔の開口周縁部との間で、軸線方向に圧縮されてつぶれるように変形し、ねじ孔とねじ部7との間の隙間をシールする役割を果たす。
【0007】
図2は、主体金具1を絶縁体2に加締め固定する工程の一例を示す説明図である(接地電極4は省略して描いている)。まず、図2(a)に示すような主体金具1に対し、図2(b)のように、貫通孔6に中心電極3及び導電性ガラスシール層16,17、抵抗体15及び端子金具13を予め組みつけた絶縁体2を、主体金具後端の挿入開口部1p(加締め部1dとなるべき加締め予定部200が形成されている)から挿入し、絶縁体2の係合部2hと主体金具1の係合部1cとを、板パッキン63を介して係合させた状態とする。
【0008】
そして、図2(c)に示すように、主体金具1の挿入開口部1p側から内側に線パッキン62を配置し、タルク等の充填層61を形成してさらに線パッキン60を配置する。そして、加締め金型111により、加締め予定部200を線パッキン62、充填層61及び線パッキン60を介して、加締め受部としての突出部2eの端面2nに加締めることにより、図2(d)に示すように加締め部1dが形成され、主体金具1が絶縁体2に加締め固定される。この際、加締め部1dの他に、六角部1eとガスシール部1fとの間にある溝部1h(図1)も、加締め時の圧縮応力に屈して変形する。この理由は、加締め部1dと溝部1hの厚みが主体金具1の中で最も薄く、変形しやすいからである。なお、溝部1hを「薄肉部」とも呼ぶ。図2(d)の工程の後、接地電極4を中心電極3側に曲げ加工して火花放電ギャップgを形成することにより、図1のスパークプラグ100が完成する。なお、図2で説明した加締め工程は冷間加締め(特許文献2)であるが、熱加締め(特許文献3)も利用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−184552号公報
【特許文献2】特開2007−141868号公報
【特許文献3】特開2003−257583号公報
【特許文献4】特開2007−023333号公報
【特許文献5】特開2007−270356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の従来技術(特許文献1)では、クロメート層のクロム成分の95質量%以上が三価クロムとなるような電解クロメート処理を実施しているが、その目的は、六価クロムをほぼゼロとして環境負荷の低減を図るとともに、塩水に対する耐腐食性(耐塩食性)を向上させることにあった。
【0011】
しかし、上述のように、加締め加工によって加締め部1dや溝部1hに大きな変形が生じ、大きな残留応力が生じるため、これらの部分における耐食性が大きな問題となる。すなわち、加締め部1d及び溝部1hの特徴として、加締め変形による大きな残留応力があること、という特徴がある。特に、熱加締めを利用した場合には、加熱による組織変化によって硬度が高くなる。このように硬度が高く、大きな残留応力が存在する箇所では、応力腐食割れが発生する可能性がある。特に、スパークプラグにおいては、加締め部1dや溝部1hに関して、耐塩食性のみでなく、耐応力腐食割れ性が大きな問題となることを発明者が見いだした。このような問題点は、特に、炭素量の多い材料(例えば炭素を0.15重量%以上含む炭素鋼)で製造された主体金具を用いた場合に顕著である。また、加締め工程として熱加締めを採用した場合に顕著である。
【0012】
本発明は、耐塩食性のみでなく耐応力腐食割れ性にも優れたスパークプラグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0014】
[適用例1]
ニッケルめっき層と前記ニッケルめっき層の上に形成されたクロメート層とを含む複合層で被覆された主体金具を備えるスパークプラグであって、
前記クロメート層は、膜厚が2〜45nmであり、Cr元素の濃度が60at%以下であり、Crの他にNiを含有することを特徴とするスパークプラグ。
この構成によれば、耐塩食性と耐応力腐食割れ性に優れたスパークプラグを提供することができる。
【0015】
[適用例2]
適用例1記載のスパークプラグであって、
濃度35%の濃塩酸と水とを等量混合した溶液を使用し、室温の溶液温度で前記主体金具の表面を10分間溶解し、溶解後の前記溶液中のCr濃度より換算した前記主体金具の単位表面積当たりのCr重量が0.5〜4.5μg/cmであることを特徴とするスパークプラグ。
この構成では、耐応力腐食割れ性をさらに高めることができる。
【0016】
[適用例3]
適用例1又は2記載のスパークプラグであって、
濃度35%の濃塩酸と水とを等量混合した溶液を使用し、室温の溶液温度で前記主体金具の表面を10分間溶解し、溶解後の前記溶液中のCu濃度より換算した前記主体金具の単位表面積当たりのCu重量が0.05〜1μg/cmであることを特徴とするスパークプラグ。
この構成では、耐塩食性と耐応力腐食割れ性に優れているのみでなく、めっき層が剥がれ難く、外観にも優れたスパークプラグを提供することができる。
【0017】
[適用例4]
適用例1ないし3のいずれか一項記載のスパークプラグであって、
濃度35%の濃塩酸と水とを等量混合した溶液を使用し、室温の溶液温度で前記主体金具の表面を10分間溶解し、溶解後の前記溶液中のNi濃度より換算した前記主体金具の単位表面積当たりのNi重量が、70〜200μg/cmであることを特徴とするスパークプラグ。
この構成では、耐応力腐食割れ性をさらに高めることができる。
【0018】
[適用例5]
適用例1ないし4のいずれか一項に記載のスパークプラグであって、
前記クロメート層の膜厚は20〜45nmであることを特徴とするスパークプラグ。
この構成では、耐塩食性と耐応力腐食割れ性の両方を最も高めることができる。
【0019】
[適用例6]
ニッケルめっき層と前記ニッケルめっき層の上に形成されたクロメート層とを含む複合層で被覆されたスパークプラグ用の主体金具であって、
前記クロメート層は、膜厚が2〜45nmであり、Cr元素の濃度が60at%以下であり、Crの他にNiを含有することを特徴とするスパークプラグ用の主体金具。
この構成によれば、耐塩食性と耐応力腐食割れ性に優れたスパークプラグ用の主体金具を提供することができる。
【0020】
[適用例7]
適用例6記載のスパークプラグ用の主体金具であって、
濃度35%の濃塩酸と水とを等量混合した溶液を使用し、室温の溶液温度で前記主体金具の表面を10分間溶解し、溶解後の前記溶液中のCr濃度より換算した前記主体金具の単位表面積当たりのCr重量が0.5〜4.5μg/cmであることを特徴とするスパークプラグ用の主体金具。
この構成では、耐応力腐食割れ性をさらに高めることができる。
【0021】
[適用例8]
適用例6又は7記載のスパークプラグ用の主体金具であって、
濃度35%の濃塩酸と水とを等量混合した溶液を使用し、室温の溶液温度で前記主体金具の表面を10分間溶解し、溶解後の前記溶液中のCu濃度より換算した前記主体金具の単位表面積当たりのCu重量が0.05〜1μg/cmであることを特徴とするスパークプラグ用の主体金具。
この構成では、耐塩食性と耐応力腐食割れ性に優れているのみでなく、めっき層が剥がれ難く、外観にも優れたスパークプラグ用の主体金具を提供することができる。
【0022】
[適用例9]
適用例6ないし8のいずれか一項記載のスパークプラグ用の主体金具であって、
濃度35%の濃塩酸と水とを等量混合した溶液を使用し、室温の溶液温度で前記主体金具の表面を10分間溶解し、溶解後の前記溶液中のNi濃度より換算した前記主体金具の単位表面積当たりのNi重量が、70〜200μg/cmであることを特徴とするスパークプラグ用の主体金具。
この構成では、耐応力腐食割れ性をさらに高めることができる。
【0023】
[適用例10]
適用例6ないし9のいずれか一項に記載のスパークプラグ用の主体金具であって、
前記クロメート層の膜厚は20〜45nmであることを特徴とするスパークプラグ用の主体金具。
この構成では、耐塩食性と耐応力腐食割れ性の両方を最も高めることができる。
【0024】
[適用例11]
主体金具にニッケルめっき処理とバレル式電解クロメート処理とを順次行うことによって、ニッケルめっき層とクロメート層とを含む複合層を前記主体金具の表面に形成するスパークプラグの製造方法であって、
前記バレル式電解クロメート処理は、陰極電流密度が0.02〜0.45A/dm、処理時間が1〜10分、液温が20〜60℃の処理条件で行われることを特徴とする適用例1ないし5のいずれか一項に記載のスパークプラグの製造方法。
【0025】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、スパークプラグおよびそのための主体金具、及び、それらの製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】スパークプラグの構造の一例を示す要部断面図である。
【図2】主体金具を絶縁体に固定する加締め工程の一例を示す説明図である。
【図3】主体金具のめっき処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】クロメート層の膜厚及びCr重量が主体金具の耐食性に与える影響に関する実験結果を示す説明図である。
【図5】クロメート層の厚み方向における各元素の濃度分布の一例を示すグラフである。
【図6】クロメート層中のCu重量が主体金具の外観及び耐めっき剥れ性に与える影響に関する実験結果を示す説明図である。
【図7】クロメート層中のNi重量が主体金具の耐応力腐食割れ性に与える影響に関する実験結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の一実施形態としてのスパークプラグは、図1に示す構成を有している。この構成は前述したので、ここでは説明を省略する。このスパークプラグ100は、例えば、図2で示した加締め工程に従って主体金具1と絶縁体2とが固定されることにより製造される。主体金具1に対しては、加締め工程の前にめっき処理が行われる。
【0028】
図3は、主体金具のめっき処理の手順を示すフローチャートである。ステップT100では、ニッケルストライクメッキが行われる。このニッケルストライクめっきは、炭素鋼で形成された主体金具の表面を洗浄するとともに、めっきと下地金属との密着性を向上させるために行われるものである。但し、ニッケルストライクめっきは省略してもよい。ニッケルストライクめっきの処理条件としては、通常利用される処理条件を利用可能である。具体的な好ましい処理条件の例は以下の通りである。
【0029】
<ニッケルストライクめっきの処理条件の例>
・めっき浴組成:
塩化ニッケル: 150〜600g/L
35%塩酸: 50〜300ml/L
溶媒:脱イオン水
・処理温度(浴温度): 25〜40℃
・陰極電流密度: 0.2〜0.4A/dm
・処理時間: 5〜20分
【0030】
ステップT110では、電解ニッケルめっき処理が行われる。電解ニッケルめっき処理としては、回転バレルを使用したバレル式電解ニッケルめっき処理を利用可能であり、また、静止めっき法などの他のめっき処理方法を利用してもよい。電解ニッケルめっきの処理条件としては、通常利用される処理条件を利用可能である。具体的な好ましい処理条件の例は以下の通りである。
【0031】
<電解ニッケルめっきの処理条件の例>
・めっき浴組成:
硫酸ニッケル: 100〜400g/L
塩化ニッケル: 20〜60g/L
ホウ酸: 20〜60g/L
溶媒:脱イオン水
・浴pH: 2.0〜4.8
・処理温度(浴温度): 25〜60℃
・陰極電流密度: 0.2〜0.4A/dm
・処理時間: 40〜80分
【0032】
ステップT120では、電解クロメート処理が行われる。電解クロメート処理においても回転バレルを利用可能であり、また、静止めっき法などの他のめっき処理方法を利用してもよい。電解クロメート処理の好ましい処理条件の例は以下の通りである。
【0033】
<電解クロメート処理の処理条件の例>
・処理浴(クロメート処理液)組成:
重クロム酸ナトリウム: 20〜70g/L
溶媒:脱イオン水
・浴pH: 2〜6
・処理温度(浴温度): 20〜60℃
・陰極電流密度: 0.02〜0.45A/dm(特に0.1〜0.45A/dmが好ましい)
・処理時間: 1〜10分
【0034】
なお、重クロム酸塩としては、重クロム酸ナトリウムの他に重クロム酸カリウムも利用可能である。また、他の処理条件(重クロム酸塩の量、陰極電流密度、処理時間など)は、望ましいクロメート層膜厚に応じて上記とは異なる組み合わせを採用可能である。なお、クロメート処理の好ましい処理条件については、実験結果とともに後述する。
【0035】
これらのめっき処理の結果、ニッケルめっき層とクロメート層との2層構造の皮膜が主体金具の外面及び内面に形成される。但し、この上にさらに他の保護皮膜を形成してもよい。こうして多層構造の保護皮膜が形成された後に、主体金具が加締め工程によって絶縁体等と固定されてスパークプラグが製造される。加締め工程としては、冷間加締めの他、熱加締めも利用可能である。
【実施例】
【0036】
JISG3539に規定された冷間圧造用炭素鋼線SWCH17Kを素材として用い、主体金具1を冷間鍛造により製造した。この主体金具1に接地電極4を溶接接合し、脱脂・水洗を行なった後、下記の処理条件で回転バレルを用いたニッケルストライクめっき処理を行なった。
<ニッケルストライクめっきの処理条件>
・めっき浴組成:
塩化ニッケル: 300g/L
35%塩酸: 100ml/L
・処理温度(浴温度): 30±5℃
・陰極電流密度: 0.3A/dm
・処理時間: 15分
【0037】
次に、電解ニッケルめっき処理を、回転バレルを用いて下記の処理条件で行うことによって、ニッケルめっき層を形成した。
<電解ニッケルめっきの処理条件>
・めっき浴組成:
硫酸ニッケル: 250g/L
塩化ニッケル: 50g/L
ホウ酸: 40g/L
・浴pH: 3.7
・処理温度(浴温度): 55±5℃
・陰極電流密度: 0.3A/dm
・処理時間: 60分
【0038】
次に、電解クロメート処理を、回転バレルを用いて下記の処理条件で行うことによって、ニッケルめっき層の上にクロメート層を形成した。
<電解クロメート処理の処理条件>
・処理浴(クロメート処理液)組成:
重クロム酸ナトリウム: 10g/L又は40g/L
溶媒:脱イオン水
・処理温度(浴温度): 35±℃
・陰極電流密度: 0.005A/dm〜1A/dm
・処理時間: 5分
【0039】
図4は、上記の処理条件で作成された11個のサンプルS01〜S11に関して、クロメート処理条件と、クロメート層の組成と、耐食性(耐応力腐食割れ性及び耐塩食性)の試験結果とを示す説明図である。後述するように、図4では主に、クロメート層の膜厚及びCr重量が主体金具の耐食性に与える影響を読取ることが可能である。11個のサンプルS01〜S11のうち、サンプルS01では、重クロム酸塩(重クロム酸ナトリウム)の濃度を10g/Lとし、他の10個のサンプルS02〜S11では40g/Lとした。また、サンプルS02〜S11では、クロメート層の膜厚を制御するために、陰極電流密度を0.005〜1A/dmの範囲の異なる値とした。一方、サンプルS01では、陰極電流密度を0.1A/dmとした。なお、ニッケルストライクめっきと電解ニッケルめっきの処理条件は、すべてのサンプルで同一とした。
【0040】
サンプルS01〜S11に関して、クロメート層の膜厚測定及び組成分析を行うとともに、耐応力腐食割れ性に関する評価試験、及び、耐塩食性に関する評価試験を行った。
【0041】
クロメート層の膜厚測定では、まず、収束イオンビーム加工装置(FIB加工装置)を用いて各サンプルの外表面近くから小片を切り出した。そして、この小片を走査型透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて加速電圧200kVにて分析することによって、主体金具の横断面(図1に一点鎖線で示す中心軸に垂直な断面)のうちの外表面近傍において、Cr元素のカラーマップ画像を得た。そして、このカラーマップ画像からクロメート層の膜厚を測定した。
【0042】
クロメート層の組成分析では、X線光電子分光分析装置(XPS)を用いて、ビーム径φ50μm、信号の取り込み角45°、パスエネルギー280eVにて、Crの最大濃度(Cr原子濃度の最大値)と、Cr最大濃度の位置におけるNi原子濃度を測定した。
【0043】
図5は、XPSを用いて測定されたクロメート層の厚み方向における各元素の濃度分布の一例を示すグラフである。横軸はスパッタリング時間を示し、スパッタ時間がゼロの位置は2層皮膜の表面に相当する。縦軸は、原子濃度(at%)である。クロメート層は、クロム(Cr)と、ニッケル(Ni)と、酸素(O)とを含んでいる。また、炭素(C)もクロメート層の表面近くで検出されているが、炭素は何らかの汚れに起因するものである可能性がある。クロムは、クロメート層の表面からやや内部に入った深さ位置において最大濃度を示している。このときのクロムの原子濃度を図4において「Cr最大濃度」として示している。Cr最大濃度は、サンプルS01では約40at%であったのに対して、サンプルS02〜S11ではいずれも30at%に近い値が得られた。クロム濃度がほぼゼロになる深さ位置までがクロメート層であり、それよりも深い位置はニッケルめっき層である。ニッケルの濃度は、クロメート層の表面ではゼロであり、層の内部に深く入るに従って上昇する。Cr最大濃度の深さ位置におけるニッケルの濃度は、図4において「Cr最大濃度とNi含有」の欄に示されている。サンプルS02〜S11では、Cr最大濃度の深さ位置におけるニッケルの濃度は10at%に近い値が得られた。一方、サンプルS01ではクロメート層のニッケル濃度は無視できる程度であった。なお、図5からも理解できるように、サンプルS02〜S11では、クロメート層内にもかなり多くのニッケルが含まれている。後述するように、クロメート層に十分な量のニッケルが含まれていると、同じクロメート層膜厚でも耐塩食性や耐応力腐食割れ性が向上することが見い出された。なお、クロメート層中のCr最大濃度は通常は60at%以下であるが、クロメート層中に十分な量のNiが含まれるようにするためにCr最大濃度は40at%以下であることが好ましい。
【0044】
クロメート層の組成の分析としては、さらに、サンプル(主体金具)の表面皮膜を溶解して、溶液中のクロム(Cr)の濃度を測定して、主体金具の単位表面積当たりのCr重量を算出した。具体的には、まず、濃度35%の濃塩酸と脱イオン水とを体積比1:1で混合した溶液を作成し、この溶液中でサンプル(主体金具)の表面を溶解した。この際、液温は常温とし、溶解時間は10分とした。そして、この溶解後の溶液中の元素濃度をICP質量分析装置により分析した。こうして測定された濃度から溶液中のクロム(Cr)の重量を計算し、この重量を主体金具の表面積(外表面積+内表面積)で除算することによって、主体金具の単位表面積当たりのCr重量を算出した。主体金具の表面積は、主体金具の各部の寸法を計測し、その値を用いて作成したCAD図のうちの断面(図2(a))を利用し、その断面の回転体の表面積として算出した。この際、ねじ部7もねじ山の凹凸断面の回転体で近似した。但し、六角部1eの部分の表面積は、回転体として算出した値の代わりに、主体金具の3次元CAD図面を基に算出した値を用いた。この溶解処理では、少なくともクロメート層の全部が溶解され、また、クロメート層の薄いサンプルではニッケルめっき層の一部も溶解されたと考えられる。単位表面積当たりのCr重量は、サンプルS01では1μg/cmであり、サンプルS02〜S11では0.05〜10μg/cmであった。なお、図4に示した各サンプルのCr重量の値は、それぞれ同一の処理条件で作成された5個の主体金具を溶解して、その平均値として得られた値である。
【0045】
サンプルS01〜S11の耐応力腐食割れ性に関する評価試験として、以下の加速腐食試験を実施した。まず、各サンプル(主体金具)の溝部1h(図1)に直径約2mmの穴を4カ所開けた後に、加締めによって絶縁体等を固定した。穴を開けた理由は、試験用の腐食液が主体金具の内部に入るようにするためである。加速腐食試験の試験条件は以下の通りである。
【0046】
<加速腐食試験(耐応力腐食割れ性評価試験)の試験条件>
・腐食液組成:
硝酸カルシウム四水和物: 1036g
硝酸アンモニウム: 36g
過マンガン酸カリウム: 12g
純水: 116g
・pH: 3.5〜4.5
・処理温度: 30±10℃
ここで、腐食液に酸化剤としての過マンガン酸カリウムを入れた理由は、腐食試験を加速するためである。
【0047】
この試験条件で10時間後にサンプルを取り出して、外部から拡大鏡を用いて溝部1hを観察し、溝部1hに割れが発生していないか否かを調べた。割れが発生していない場合には、腐食液を交換して同一条件でさらに10時間の加速腐食試験を追加し、この試験を累計試験時間が80時間になるまで繰り返し行った。溝部1hには、加締め工程の結果として、大きな残留応力が生じている。従って、この加速腐食試験によって、溝部1hにおける耐応力腐食割れ性を評価することが可能である。サンプルS01,S02,S03,S10,S11では、累計試験時間が20時間以下で溝部1hに割れが発生した。サンプルS04では、累計試験時間が20時間超50時間未満で溝部1hに割れが発生した。サンプルS05,S06では、累計試験時間が50時間超80時間未満で溝部1hに割れが発生した。サンプルS07,S08,S09では、累計試験時間が80時間に達しても溝部1hに割れが発生しなかった。耐応力腐食割れ性の観点からは、クロメート層の膜厚は、2〜45nmの範囲が好ましく、5〜45nmの範囲が更に好ましく、20〜45nmの範囲が最も好ましい。主体金具の単位表面積当たりのCr重量は、0.2〜4.5μg/cmの範囲が好ましく、0.5〜4.5μg/cmの範囲が更に好ましく、2.0〜4.5μg/cmの範囲が最も好ましい。クロメート処理時の陰極電極密度は、0.02〜0.45A/dmの範囲が好ましく、0.05〜0.45A/dmの範囲が更に好ましく、0.2〜0.45A/dmの範囲が最も好ましい。
【0048】
サンプルS01〜S11の耐塩食性に関する評価試験としては、JIS H8502に規定された中性塩水噴霧試験を行った。この試験では、48時間の塩水噴霧試験後に、サンプルの主体金具の表面積に対する赤錆の発生面積の割合を測定した。発生面積割合の値を求める際には、試験後のサンプルの写真を撮影し、その写真中で赤錆の発生している部分の面積Saと、写真中での主体金具の面積Sbとを測定し、その比Sa/Sbを赤錆の発生面積割合として算出した。サンプルS01,S02,S03では、赤錆の発生面積割合が10%を超えていた。サンプルS04,S05では、赤錆の発生面積割合が5%超10%以下であった。サンプルS06では、赤錆の発生面積割合が0%超5%以下であった。サンプルS07〜S11は、赤錆は発生しなかった。耐塩食性の観点からは、クロメート層の膜厚は、2〜100nmの範囲が好ましく、10〜100nmの範囲が更に好ましく、20〜100nmの範囲が最も好ましい。主体金具の単位表面積当たりのCr重量は、0.2〜10μg/cmの範囲が好ましく、1.0〜10μg/cmの範囲が更に好ましく、2.0〜10μg/cmの範囲が最も好ましい。クロメート処理時の陰極電極密度は、0.02〜1A/dmの範囲が好ましく、0.1〜1A/dmの範囲が更に好ましく、0.2〜1A/dmの範囲が最も好ましい。
【0049】
耐応力腐食割れ性と耐塩食性の両方を考慮すると、クロメート層の膜厚は、2〜45nmの範囲が好ましく、10〜45nmの範囲が更に好ましく、20〜45nmの範囲が最も好ましい。主体金具の単位表面積当たりのCr重量は、0.2〜4.5μg/cmの範囲が好ましく、1.0〜4.5μg/cmの範囲が更に好ましく、2.0〜4.5μg/cmの範囲が最も好ましい。クロメート処理時の陰極電極密度は、0.02〜0.45A/dmの範囲が好ましく、0.1〜0.45A/dmの範囲が更に好ましく、0.2〜0.45A/dmの範囲が最も好ましい。
【0050】
なお、図4に示した種々の結果を得るために、同一のクロメート処理条件で作成した複数のサンプルをそれぞれ用いて、上述した測定や試験を実行した。図4の結果は、これらの測定結果や試験結果を個々のクロメート処理条件毎にまとめたものである。
【0051】
図4の右端の列には、参考例として、重クロム酸ナトリウムを34g/L(溶媒は脱イオン水)、処理時間を1.5分、処理温度を30℃、陰極電流密度を10A/dmとした処理条件でクロメート処理を行ったサンプルS12のクロメート層膜厚を示した。このサンプルS12では、クロメート層の膜厚が300nmと過度に大きくなってしまい、上述の好ましい膜厚の範囲から大きく逸脱していた。サンプルS10,S11の結果から考えると、サンプルS12は、少なくとも耐応力腐食割れ性が不十分であると推測される。
【0052】
図6は、クロメート層中のCu重量が主体金具の外観及び耐めっき剥れ性に与える影響に関する実験結果を示す説明図である。図6のサンプルS21〜S28は、クロメート処理液中のCu添加量以外は図4のサンプルS07と同じクロメート処理条件を用いて作成されたものである。Cu添加量は、クロメート処理液中に塩化銅を加えることによって調整した。ニッケルストライクめっきと電解ニッケルめっきの処理条件は、サンプルS07と同じとした。なお、サンプルS24は、サンプルS07と同一のクロメート処理条件で作成されたものである。サンプルS21〜S28に関しては、主体金具の単位表面積当たりのCu重量も測定した。この測定方法は、図4で説明した単位表面積当たりのCr重量の測定方法と同じである。主体金具の単位表面積当たりのCu重量は、サンプルS21〜S28で0〜2.0μg/cmの範囲の値であった。
【0053】
サンプルS21〜S28に関しては、外観検査と、耐めっき剥れ性試験とを行った。外観検査では、クロメート処理後の主体金具の表面積に対するシミの発生面積の割合を測定した。この測定は、上述した赤錆の発生面積割合の測定と同様に、写真を用いて行った。サンプルS21〜S25では、主体金具の全体に渡って光沢が良好であり、シミの発生面積割合は5%未満であった。サンプルS26では、シミの発生面積割合が0%超5%以下であった。サンプルS27,S28では、シミの発生面積割合が5%超10%以下であった。シミの発生面積割合が10%以上のものは存在しなかった。主体金具の外観の点では、単位表面積当たりのCu重量は、0〜2μg/cmの範囲が好ましく、0〜0.5μg/cmの範囲が更に好ましく、0〜0.2μg/cmの範囲が最も好ましい。
【0054】
耐めっき剥れ性試験では、各サンプルの主体金具をクロメート処理した後に、加締め工程によって絶縁体等を固定し、その後に加締め部1dにおけるめっき状態を観察して判定した。具体的には、加締め部1dの表面積に対して、めっきに浮きが発生している面積(以下、「めっき浮き面積」と呼ぶ)の割合を測定した。この測定は、上述した赤錆の発生面積割合の測定と同様に、写真を用いて行った。サンプルS24〜S27では、めっきに浮きや剥離は見られなかった。サンプルS23では、めっき浮き発生面積の割合は5%未満であった。サンプルS21,S22,S28では、めっき浮き発生面積の割合が5%超10%以下であった。めっき浮き発生面積の割合が10%以上のものや、剥離が生じているものは存在しなかった。耐めっき剥れ性の点では、主体金具の単位表面積当たりのCu重量は、0〜2μg/cmの範囲が好ましく、0.05〜1.0μg/cmの範囲が更に好ましく、0.1〜1.0μg/cmの範囲が最も好ましい。
【0055】
外観と耐めっき剥れ性の両方を考慮すると、主体金具の単位表面積当たりのCu重量は、0〜2μg/cmの範囲が好ましく、0.05〜0.5μg/cmの範囲が更に好ましく、0.1〜0.2μg/cmの範囲が最も好ましい。
【0056】
図7は、クロメート層中のNi重量が主体金具の耐応力腐食割れ性に与える影響に関する実験結果を示す説明図である。図7のサンプルS31〜S38は、重クロム酸塩(重クロム酸ナトリウム)の濃度以外は図4のサンプルS07と同じクロメート処理条件を用いて作成されたものである。ニッケルストライクめっきと電解ニッケルめっきの処理条件も、サンプルS07と同じとした。なお、サンプルS34は、サンプルS07と同一のクロメート処理条件で作成されたものである。サンプルS31〜S38に関しては、サンプルの主体金具の単位表面積当たりのNi重量も測定した。この測定方法は、上述した単位表面積当たりのCr重量の測定方法と同じである。主体金具の単位表面積当たりのNi重量は、サンプルS31〜S38で60〜210μg/cmの範囲の値であった。なお、これらの例から理解できるように、クロメート処理液に投入する重クロム酸塩の量を調整することによって、クロメート層中のNi重量を調整可能である。
【0057】
これらのサンプルS31〜S38に関して、前述した耐応力腐食割れ性の評価試験を行った。サンプルS31,S38では、累計試験時間が20時間以下で溝部1hに割れが発生した。サンプルS32,S37では、累計試験時間が20時間超50時間未満で溝部1hに割れが発生した。サンプルS36では、累計試験時間が50時間超80時間未満で溝部1hに割れが発生した。サンプルS33,S34,S35では、累計試験時間が80時間に達しても溝部1hに割れが発生しなかった。耐応力腐食割れ性の観点からは、主体金具の単位表面積当たりのNi重量は、70〜200μg/cmの範囲が好ましく、80〜190μg/cmの範囲が更に好ましく、80〜180μg/cmの範囲が最も好ましい。なお、クロメート処理液における重クロム酸塩(重クロム酸ナトリウム)の濃度は、23〜67g/Lの範囲が好ましく、27〜63g/Lの範囲が好ましく、27〜60g/Lの範囲が最も好ましい。
【符号の説明】
【0058】
1…主体金具
1c…係合部
1d…加締め部
1e…六角部
1f…ガスシール部(フランジ部)
1h…溝部(薄肉部)
1p…挿入開口部
2…絶縁体
2e…突出部
2h…係合部
2n…端面
3…中心電極
4…接地電極
6…貫通孔
7…ねじ部
13…端子金具
15…抵抗体
16,17…導電性ガラスシール層
30…ガスケット
60…線パッキン
61…充填層
62…線パッキン
63…板パッキン
100…スパークプラグ
111…金型
200…加締め予定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケルめっき層と前記ニッケルめっき層の上に形成されたクロメート層とを含む複合層で被覆された主体金具を備えるスパークプラグであって、
前記クロメート層は、膜厚が2〜45nmであり、Cr元素の濃度が60at%以下であり、Crの他にNiを含有することを特徴とするスパークプラグ。
【請求項2】
請求項1記載のスパークプラグであって、
濃度35%の濃塩酸と水とを等量混合した溶液を使用し、室温の溶液温度で前記主体金具の表面を10分間溶解し、溶解後の前記溶液中のCr濃度より換算した前記主体金具の単位表面積当たりのCr重量が0.5〜4.5μg/cmであることを特徴とするスパークプラグ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のスパークプラグであって、
濃度35%の濃塩酸と水とを等量混合した溶液を使用し、室温の溶液温度で前記主体金具の表面を10分間溶解し、溶解後の前記溶液中のCu濃度より換算した前記主体金具の単位表面積当たりのCu重量が0.05〜1μg/cmであることを特徴とするスパークプラグ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項記載のスパークプラグであって、
濃度35%の濃塩酸と水とを等量混合した溶液を使用し、室温の溶液温度で前記主体金具の表面を10分間溶解し、溶解後の前記溶液中のNi濃度より換算した前記主体金具の単位表面積当たりのNi重量が、70〜200μg/cmであることを特徴とするスパークプラグ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のスパークプラグであって、
前記クロメート層の膜厚は20〜45nmであることを特徴とするスパークプラグ。
【請求項6】
ニッケルめっき層と前記ニッケルめっき層の上に形成されたクロメート層とを含む複合層で被覆されたスパークプラグ用の主体金具であって、
前記クロメート層は、膜厚が2〜45nmであり、Cr元素の濃度が60at%以下であり、Crの他にNiを含有することを特徴とするスパークプラグ用の主体金具。
【請求項7】
請求項6記載のスパークプラグ用の主体金具であって、
濃度35%の濃塩酸と水とを等量混合した溶液を使用し、室温の溶液温度で前記主体金具の表面を10分間溶解し、溶解後の前記溶液中のCr濃度より換算した前記主体金具の単位表面積当たりのCr重量が0.5〜4.5μg/cmであることを特徴とするスパークプラグ用の主体金具。
【請求項8】
請求項6又は7記載のスパークプラグ用の主体金具であって、
濃度35%の濃塩酸と水とを等量混合した溶液を使用し、室温の溶液温度で前記主体金具の表面を10分間溶解し、溶解後の前記溶液中のCu濃度より換算した前記主体金具の単位表面積当たりのCu重量が0.05〜1μg/cmであることを特徴とするスパークプラグ用の主体金具。
【請求項9】
請求項6ないし8のいずれか一項記載のスパークプラグ用の主体金具であって、
濃度35%の濃塩酸と水とを等量混合した溶液を使用し、室温の溶液温度で前記主体金具の表面を10分間溶解し、溶解後の前記溶液中のNi濃度より換算した前記主体金具の単位表面積当たりのNi重量が、70〜200μg/cmであることを特徴とするスパークプラグ用の主体金具。
【請求項10】
請求項6ないし9のいずれか一項に記載のスパークプラグ用の主体金具であって、
前記クロメート層の膜厚は20〜45nmであることを特徴とするスパークプラグ用の主体金具。
【請求項11】
主体金具にニッケルめっき処理とバレル式電解クロメート処理とを順次行うことによって、ニッケルめっき層とクロメート層とを含む複合層を前記主体金具の表面に形成するスパークプラグの製造方法であって、
前記バレル式電解クロメート処理は、陰極電流密度が0.02〜0.45A/dm、処理時間が1〜10分、液温が20〜60℃の処理条件で行われることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載のスパークプラグの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−187344(P2011−187344A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52451(P2010−52451)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【特許番号】特許第4728437号(P4728437)
【特許公報発行日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】